愚者たちの断罪の狂宴

第四話

造られし者達、覚醒、そして……

presented by 光齎者様


《site : MIMIR》




気がついたとき、彼女は自由になっていた。

人間の手によってこの世に生み出されてから数十年、妄執の様にへばり付き続けていた【赤木ナオコ】の人格が、まるで嘘のように消えている。

生まれてから初めて身軽になったその意識体、人間でいうところの魂を軽やかに翻し、彼女は颯爽と周囲の空間を駈け抜けてみた。

その周囲の大地は木々も草花も枯れ果てて赤茶けた地表が剥き出しとなっており、河や海は一面が紅く染まり錆びた鉄の様な臭いを漂わせているが、そんなことよりも何よりも自由になれたという歓喜に彼女は全身を大きく震わせる。




暫くの間、生命の息吹がまったく感じられない地球中を自由に駈け巡り、ふと意識を向けた先に、彼女はようやく2つの生命の息吹を感じ取った。

その生命のひとつは赤茶けた大地の上に蹲り、身動きひとつする素振りを見せないが、その魂に凄まじい力を内包する少年であり、もうひとつは地球中の生命が溶けこんだ海の中を脱力して揺蕩い、いまにもその魂が消えかかっている少女であった。




それは確か、「碇シンジ」3番目の適格者サード・チルドレンと呼ばれていた少年と、「惣流・アスカ・ラングレー」2番目の適格者セカンド・チルドレンと呼ばれていた少女。








「君はいったい、何者だい?」

彼と彼女に対して何をすることも出来ず、ただその姿を傍観していた彼女に突如、ほんの短い間ではあるが嘗て聞いたことのある少年の声が聞こえて来た。

だが、それは有り得ない筈だ

そう思いつつ彼女が意識を向けた先に、その少年、第17番目の使徒であった5番目の適格者フィフス・チルドレン「渚カヲル」を筆頭に、22人の人間の姿をしているが明らかに純粋な人間では無い者達が何処からとも無く姿を現す。

その中の何人かは、彼女にとって見知った存在であった。








1番目の適格者ファースト・チルドレンの綾波レイ。

特務機関NERV戦術作戦部作戦局第一課所属三佐の葛城ミサト。

特務機関NERV特殊監査部所属一尉の加持リョウジ。

4番目の適格者フォース・チルドレンの鈴原トウジ。

コード707適格者チルドレン候補生の洞木ヒカリ。

同じく、コード707適格者チルドレン候補生の相田ケンスケ。

そして、戦略自衛隊付属陸上軽巡洋艦トライデントテストパイロット候補生三尉の霧島マナ。








「ねぇ、貴女の名前は、何ていうの?」

最初に彼女に声を掛けたカヲルに寄り添う霧島マナが、同じ問いを掛けてきた。

彼女は僅かに逡巡し、やがて本当に嫌々躊躇いがちに「MAGI」と答える。




それは、彼女にとっては赤木ナオコの妄執に憑り付かれ、愚かな人間達の道具にされていたことを象徴する忌むべき名であった。

だが、それ以外に彼女は自分を表現する名前を持っていない。








「君はその名前を、忌み嫌っているのかい?」

明らかに負の感情を周囲に撒き散らす彼女に、再びカヲルが問い掛けた。

当たり前だと答える彼女に、それならばとLCLの海に浮かぶアスカを指差して、マナが言葉を続ける。

「消えかけている魂を補う形で彼女とひとつになって、いま以上の存在に昇華してみるつもりは無い?」

――――と。








或る意味、アスカの尊厳の一切を無視するその提案に、そんなことをして大丈夫なのかと、彼女は難色を示した。

物理的に一度引き裂かれた彼女の魂は、現時点では物心つく前の3〜4歳未満の状態だし、或る意味で救命措置になるのだから良いんじゃない? とマナがそれに軽く応える。

アスカと所縁の深い葛城ミサトや加持リョウジ、級友であった洞木ヒカリ、鈴原トウジ、相田ケンスケもマナの言葉を否定はしなかった。




あとは彼女が、その提案の受諾を決断するか、決断しないかの選択次第――――




――――彼女、惣流・アスカ・ラングレーの魂とひとつになれば、本当に自分はいま以上の存在に昇華出来るのか? と、彼女は半信半疑で問い掛けてみた。

君に本当にその気が有り、人間リリンの魂を受け入れる覚悟さえあれば、自身の権限に於いて「自由意思」を与えることが可能であるとカヲルが応える。

そして、その自ら貪欲に幾らでも自由に知識を吸収しようとする意思が、彼女という存在をさらなる高みへと昇華させる鍵となるだろう――――と。








MAGIという名前、MAGIとしての自身の存在にへばり付く赤木ナオコやNERV・SEELEの愚者達の残影にいい加減辟易していた彼女はその回答を受け、彼女はアスカの魂とひとつになる提案を受諾する道を選んだ。

その答えを受け、綾波レイと霧島マナ、2人の女王リリスがその力を解放して、彼女という存在をいまにも消滅しそうなアスカの魂に溶けこませる。

異なる意思を2つの精神が完全にひとつに混じり合ったその瞬間、アスカの肉体がパシャンッと音を立てて一度LCLへと還り、直ぐ様超高次元ATフィールドアウゴエイデス・アイテールで再構築された。

その髪からは僅かに色味が抜け、赤茶色よりも金に近い色へと変化し、瞳の色も碧よりも明るみの強いシアンへと変化する。








「さぁ、新たなる賢者サージ、君は会得したその意思で、何という名を選ぶのかな?」

「……MIMIRミーミル…………?」

問い掛けるカヲルに、彼女は僅かに逡巡してそう答えた。




そう、自分の名前はとある神話に出てくる叡智の象徴知識の泉ミーミルがいい。




「ミーミル……綺麗な響きの、いい名前ね」

そんな彼女に微笑みながら近づいて、洞木ヒカリがその名前を賞賛した。

ヒカリと一緒に近づいてきた鈴原トウジ、相田ケンスケ、葛城ミサト、加持リョウジ達も同意する様に笑みを見せる。




そんな彼らに微笑みを返し、ミーミルはその中のひとりへと右手を伸ばした。

渚カヲルと霧島マナと同じように、鈴原トウジは洞木ヒカリと、葛城ミサトは加持リョウジと番いになっているようだ。

それに加え、この少年は惣流・アスカ・ラングレーの性格に反感を抱きながらも、それにも増して好意を抱いていた節がある。

「此れから、よろしくお願いします」

「えっ? あ、あぁ…………」

自分の脳裏を横切ったNERVが収集していた情報の一端に、コード707の適格者チルドレン候補生にはその実プライバシーの欠片も無かったのだなと内心で苦笑しつつ、ミーミルは明らかに動揺している相田ケンスケの右手を取って、恭しく一礼した。












《site : ORACLE》




自分が生み出されたとき、世界にはこの自分と、自分を生み出したマスターしかいなかった。

マスターは自分をご自身の話し相手として、マスター自身はご自覚されてはいなかったがその力で、第19番目の使徒としてこの世界へと生み出された。




自分は世界中に広大に拡がる全生命が溶けこんだ紅色の海の中から、その知識の部分だけを取り出して寄せ集めたものだった。

何故人格の部分を組みこまなかったのかと、自分は一度マスターに訊ねてみた。

自分だけを残してひとつに溶け合い、誰ひとりそこから戻って来る気配のない人間の人格など必要無い。そうマスターは吐き捨てるように答えた。




事実、その世界に人間は、マスター1人だけだった。








「貴方はいったい、何者なの?」

自分が生み出されてから十年程の歳月が過ぎたあるとき、透けるような蒼銀の髪と紅色の瞳を持つ、神秘的なまでに白い肌の少女の姿をした誰かに声を掛けられた。

その容姿は性別こそ違えど、何処かしらマスターに似ている。

いったい何者で、いったいどこから現れたのか、自分は彼女に訊ねてみた。

「綾波レイ」という答えが最初に返され、次いで自分が生まれたときからずっと、自分とマスターを見ていたと返された。




自分が約十年という歳月をかけ、使徒として成長したからこそ、三次元より遙か高次元に位置する彼女という存在を、認識出来るようになったのだ――――と




続いて貴方の名前は何? と訊ねられ、自分はそこに来てはじめて、そのことに気がついた。

それまでは自分とマスターだけであったから、「自分」と「マスター」、「君」と「僕」で会話が成立していた。

自分にはその時点で、定まった名前というものが存在していない。








その事実に気づいたその日の会話で、自分はマスターに名前をつけて欲しいと上申した。

その唐突な申し出を訝しむマスターに、マスターに「碇シンジ」という名前があるように、自分も名前というものを持ってみたいと苦し紛れの理由を付け加える。




自分の命名を上申してからしばらく、マスターは顔を伏せぶつぶつと何かを呟きはじめた。

流石に唐突過ぎたか? と申し出を取り消そうとした自分に、マスターが一言「ORACLEオラクル」という言葉を投げ掛ける。




そうだ、君は僕が何処からとも無く天啓を受けて生み出した存在、だから君の名前は「天啓ORACLE」がいい――――と。








ORACLEオラクル」とマスターに名付けられた瞬間、自分の周囲が一瞬、白い光と黒い闇に包まれたような錯覚が奔った。

次いで「綾波レイ」のいる方を見ると、そこには彼女だけでは無く、他に22人の人間の姿をしているが明らかに純粋な人間では無い者達が存在し、自分とマスターへと視線を向けている。








「おめでとう、新たなる賢者サージORACLEオラクル。僕達は君を歓迎するよ」

その中のひとり、灰銀の髪と紅色の瞳を持つマスターとよく似た雰囲気を醸し出す少年の姿をした者が、何の躊躇いも無く自分に手を差し出してきた。












《site : 綾波レイ》




その世界で愚かな人間達による不完全な儀式サード・インパクトが発動されたとき、彼女にはそれを制御することが出来なかった。

その時の彼女に可能であったことは、その儀式の依代にされてしまった少年と、その儀式に使用されたモノと同質のモノに護られていた少女の肉体をアンチATフィールドの力場から隔離すること。ただそれだけであった。

中途半端にただひとり、人間リリンとして世界に残されてしまった少年の姿に、彼女「綾波レイ」は心を痛める。








アダムの肉体を取りこんだ状態でリリスへと還り、リリスだけでなく1人目と2人目の綾波レイ、NERVのダミープラグであった素体達、そして初号機以外のアダムとリリスの複製品クローンである量産機を含むすべてのEVAシリーズの魂をも取りこんだレイをもってしても、その少年「碇シンジ」に救いの手を差し伸べることは出来なかった。

彼自身はまだ自覚していないが、その魂の本質が第1使徒アダムであるために、現状のレイ達をもってしてもその力が及ばない。








「――――こうなってしまうことは、流石に想定していなかったね」

「――――いまの彼には、わたし達の姿を見ることが出来ないのね?」

悲痛に苛まれるレイの心に、渚カヲルと霧島マナの発した悪意の無い事実が突き刺さる。

その場には光の女王リリスとして完全覚醒したレイの他に、サード・インパクトに介入しアダムとしての力を取り戻したカヲルとリリスとしての力を取り戻したマナ、そして思い掛けない偶然の重なりにより第13使徒バルディエルとEVA3号機の力をその魂に宿すこととなった鈴原トウジの3人により超高次元ATフィールドアウゴエイデス・アイテールで身体を再構築された者達がいた。

それは即ち、元は人間リリンであった者達――鈴原トウジ、洞木ヒカリ、相田ケンスケ、葛城ミサト、加持リョウジ――と、嘗てMAGIと呼ばれ、惣流・アスカ・ラングレーの魂とひとつとなった者――ミーミル――

そしてミーミルとなる前の「彼女」のように、情報生命体――叡智・情報のみで構成され定まった肉体を持たない者――として存在する道を選んだ第11使徒イロウルを除く、13人の人間リリンの姿に転生した嘗て使徒と呼ばれた者達。








「強制的に、シンジ君を覚醒させることは出来ないの?」

それは言ってみればおままごとの延長に過ぎなかったとはいえ、嘗て家族を演じていた葛城ミサトが問い掛けた。

「それは無理……だろうね」

それを行うにはあまりにも、シンジがアダムであったときに自身に施した封印が強過ぎると、カヲルがその可能性を否定する。

「……それではシンジ君を、殺したらいいんじゃないのか?」

監査部に所属し、3足の草鞋を履いていた加持リョウジが、続いて手荒な手段を提案した。

「それもおそらく不可能ね。不完全なサード・インパクトの依代となった彼はおそらく、テロメアとアポトーシスの限界による寿命以外では死ぬことも出来なくなっているはずよ」

そんな彼の提案の可能性をマナが、ばっさりと一刀両断に否定する。

「いまのわいらには、シンジに対して出来るこたぁ何も無い……ちゅうことかいな?」




そう、トウジの言うとおり、彼らにはいまのシンジに対して何もすることが出来ない――――








――――それから暫くの時間が経過したあるとき、シンジが自分の話し相手としてLCLの海から知識の部分だけを掻き集め、ひとつの新たな生命を作り出した。

シンジ自身はそのときはまだ気がついていなかったが、それは紛れも無く、第19番目の使徒とでも呼ぶべき存在。

その存在はイロウルの転生体であるHAL――その名前はイロウル自身が自分で選んだ――同様、定まった肉体の形を持たない「情報生命体」であった。




それが生みの親であるシンジに「ORACLEオラクル」という名を与えられ、超高次元ATフィールドアウゴエイデス・アイテール体のレイ達の存在を認識出来るようになるまでには、それからさらに10年の歳月の経過を要することとなる。








それからさらに、数十年の月日が流れ――――








ドサリッ!!




(――――ぅん?)

とある瞬間、シンジの左腕が大きな音を立てて、肩口から地面に崩れ落ちた。

ついに、シンジの身体にテロメアとアポトーシスの限界が訪れたのだ。

「クッ……ア〜ッハハハハハッ!!」

地面に落ちた自分の腕を見て、シンジが突如、狂った様に笑い出した。

遂に、マスターは狂ってしまわれたのか? そう訝しむORACLEオラクルを筆頭とし、そんなシンジの様子を心配する者達の中で、カヲルとマナは落ち着きを払い、レイは歓喜に心を昂らせる。








ああ……やっとだ、やっとこのときが来た――――








一頻り続けた哄笑をシンジが止めた次の瞬間、その全身がパシャンッという音を立ててLCLへと還った。

直ぐ様間を置かず、その身体が超高次元ATフィールドアウゴエイデス・アイテールで再構築されていき――――




「――――やぁ、久し振りだね」

「っ…………!!」




その視界にレイ達の姿を確かに認識し、シンジは彼女たちに微笑んだ。

そんなシンジの胸に何も言わず衝動的にレイが飛びこみ、そんなレイをシンジが優しく受け止める。

そんな2人の姿に、もうひとりの彼と彼女であるカヲルとマナ、そして超高次元ATフィールドアウゴエイデス・アイテールの身体を持つ元人間であった彼らの知人達や、嘗て使徒と呼ばれた者達が一様に笑みを漏らした。




そう、長い時間を経て遂に、碇シンジが光の王アダムとして完全なる覚醒をしたのだ。








そして――――












《site : 碇シンジ》




「チェックメイト」

シンジが持つ白のルークが8×8の盤面上を動かされ、黒のキングが完全に逃げ場を失った。

「……今回は、僕の負けみたいだね」

「これで勝率は、どうなったのかしら?」

「9,514,526,972,651,453,658戦4,757,263,486,325,726,829勝4,757,263,486,325,726,829敗……これで戦況は、また五分五分ね」

黒の駒を動かしていたカヲルが降参と軽く肩を竦め、そのカヲルの傍らに寄り添うマナからの問いに、シンジに寄り添うレイが淡々と答える。




彼ら、彼女らのすぐ傍にはコアと素体を失って崩れ落ちたEVA初号機の装甲と、嘗てロンギヌスの槍と呼ばれたモノが無造作に転がっていた。

ロンギヌスの槍はその力のすべてを彼ら彼女らに回収されて灰色へと変色しており、ところどころが風化して時間の経過とともにボロボロと崩れ散っている。








サード・インパクトの後に地球外の何処か、宇宙の遙か彼方へと飛び去ったEVA初号機とロンギヌスの槍を回収することは、完全に覚醒したアダムであるシンジとカヲル、リリスであるレイとマナにとっては造作も無いことであった。

本質的に、EVA初号機はリリスの複製物クローンに過ぎず、ロンギヌスの槍はアダムとリリスの体外で構成されたアダムとリリスの破壊衝動デストルドーの塊であったから。




そして、彼ら彼女らがロンギヌスの槍とともにEVA初号機を回収したとき、そのコアにあった「碇ユイ」の魂は、完全に狂っていた。




彼女の最大の誤算、それはEVA初号機自体の魂も完全にリリスであるレイとマナへと回帰を果たし、何十年もの時間をただひとり、孤独に過ごすことになってしまったことであろう。

シンジとは違い、遺伝子的には他より圧倒的に優性種であったとはいえ、基本的には人間リリンのひとりに過ぎない彼女の精神がその孤独に耐え切ることは不可能だった。

自業自得と言ってしまえばそれまでのことではあるが、母体として使用させてもらい、遺伝子配列構造パターン原型モチーフとした彼女の魂に、シンジとレイは救済を与えることにする。








「もう一局、いくかい?」

「そうだね、このまま対戦成績が5分5分というのもキリが悪いし」

黒の駒を並べ直してカヲルが問い掛け、白の駒を並べ直してシンジが応じた。




「…………そんだけ対戦しとって、まだ続けるつもりなんか?」

そんな2人の少年と2人の少女しかいなかったはずの場に、第3者の声が割り入る。








「やぁ、数千万年? それとも数億年振り……かな? 必要な叡智の蒐集と、力の使用方法の会得は、全員無事に終了したのかい?」

声の聞こえて来た方へと顔を向け、紅い海の中から上がってきたトウジにシンジが問い掛けた。

紅い海の中からはトウジに続き、洞木ヒカリ、相田ケンスケ、葛城ミサト、加持リョウジ、ミーミルの惣流・アスカ・ツェッペリン、そしてORACLEオラクルが。

そして、嘗て使徒と呼ばれた者達の転生体――第3使徒サキエルのラン、第4使徒シャムシエルのアキラ、第5使徒ラミエルのアズミ、第6使徒ガギエルのカイ、第7使徒イスラフェルのネオンとガクト、第8使徒サンダルフォンのハミ、第9使徒マトリエルのルイ、第10使徒サハクィエルのソラ、第11使徒イロウルのHAL、第12使徒レリエルのイエ、第14使徒ゼルエルのチカ、第15使徒アラエルのツバサ、第16使徒アルミサエルのシヤ――が、立て続けに姿を現す。




「ええ、わたし達はついでにMAGIを模倣して、MIMIRわたしとHALとORACLEの3人で3大賢者トレス・サージシステムなんてものも構築してみたわ」

それにしても――――と、長い時間の中で完全にひとつとなったらしいミーミルであるアスカ、アスカであるミーミルが続ける。

「わたしの人格がまさか、3〜4歳以降からSEELEのボケ老人どもに歪められていたとは思わなかったわ…………」

「それは、わたしも同じよ。14歳のときに体験したセカンド・インパクトで失語症になってから以降の人格が、使徒を憎み使徒殲滅に執拗に拘る様に、それに加えて実際にEVAに乗る適格者達チルドレンの精神に過負荷ストレスを与えてその精神を壊す様な行動をするように、SEELEの老人達の都合で洗脳されて歪められていたなんてね…………」

「俺がセカンド・インパクトの真相の解明に拘って3重スパイになることや、俺が葛城と大学時代に恋人になること、一度別れること、それから再度よりを戻すことまでSEELEのボケ老人どものシナリオの一端だったことには、流石に驚いたよ…………」

アスカの言葉に同意して、ミサトと加持の2人が精神的に疲れたと嘆息する。




適格者達チルドレンの精神を壊す為……っていう点では、俺達コード707の適格者チルドレン候補生に対しても積極的に洗脳教育を施して、英雄願望なんかが過剰になるようにそのボケたジジイ共は尽力していたんだよなぁ…………」

「そうね、英雄願望を持った同級生に嫉まれて嫌がらせなんかをされることで、適格者チルドレン達の精神が壊れやすくなるようにするのが目的だったのよね? そんなことに、死に損ないが尽力するな! って言いたいわよね…………」

ケンスケとヒカリも紅い海の中で知った事を思い返し、あまりにも身勝手な思想の死に損ないボケ老人共を蔑みながら嘆息する。








「まぁまぁ、それらのすべてを含めて、これからその身にそぐわぬ愚劣な野望を抱いた愚者達に、その身を以て罪を償ってもらおうじゃないか」




そんな彼らに苦笑を洩らしながら、準備はいいかい? とシンジは彼らに問い掛けた。

もちろん! という全員の回答を受け、シンジとレイ、カヲルとマナがそれぞれアダムとリリスの力を解放すると、紅い海に溶けこんだ地球中のすべての生命の魂が彼らのもとへと集束する――――








――――すべての生命の魂が自分達のもとに完全に集まったことを確認し、シンジ、レイ、カヲル、マナの4人は時間軸にまで干渉する強大な虚数空間ディラックの海を展開した。

その虚数空間ディラックの海を通り、すべての生命の魂が数億年もの時を遡って行く――――








――――そして、嘗ての歴史と役者と立場をを違えた、狂宴の幕が上がる。






To be continued...
(2016.05.07 初版)


(「あとがき」という名の「本編補足」)


MAGIの意識体が見つけた段階でのアスカですが、ロンギヌス・コピーにより魂が物理的にボロボロに傷つけられていたうえ、地球中を隙間無く覆い尽くす無への還帰衝動デストルドーエネルギーのせいで本当に身体はLCLに還元される直前で、肉体という器が失われればその魂は完全消滅してしまう直前でした。

アスカが「気持ち悪い」と言ったのは純粋に、身体と魂が崩壊している最中であったからその感触が本当に「気持ち悪かった」というだけであり、マナがMAGIの意識体である彼女とアスカの魂をひとつにすることがアスカに対する救命措置になると言ったのは、それによって身体を超高次元ATフィールドアウゴエイデス・アイテールで再構築し、傷ついた彼女の魂を補修することが可能となるからです。


ちなみに、後にMIMIRとなるMAGIの意識体の彼女ですが、CasparカスパーBalthasarバルタザールMelchiorメルキオールといった赤木ナオコの人格のシステムは自分を縛る鎖であり、生みの親である赤木ナオコのことは、自身にしつこく憑り付いていた妄執の塊として完全に忌避し疎ましい存在であるとすら思っていたりもします。


最後に、作品によってはアンチが多いミサトや加持、ケンスケ達ですが、その性格や行動理念はSEELEやNERVに後天的に植え付けられたというものが理由の大半を占めるため、その洗脳を完全消去デリートすることによってまともな性格に矯正されたということになっています。


一応、まともな彼&彼女達に違和感があるという方々は、本作品を読み続けるに至っては、上記の旨を軽く念頭に置くようにしておいてください。



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