第弐話 騎士の降臨
presented by クマ様
注) この話は、数年間SSを読み漁ってきたクマが書いたものですが、自分で考えて書いたつもりで、実は以前に読んだSSの文章を思い出し、気付かずに書き込んだ可能性があります。
そういった作品を盗作だと断罪する方は、掲示板に書き込まず、直接メールで言ってきてください、でないとまた掲示板が荒れてしまいます。
初号機内。
シンジはエントリープラグのにいた、黒尽くめのままで、インターフェイスのみをつけて。
そこへ通信をつないで、エヴァの説明を始めるナオコ。
『シンジ君、エヴァは基本的にパイロットとのシンクロ、つまり、A10神経と呼ばれるものをエヴァの操縦系統に接続することによって、パイロットの思考をトレースして動くように出来ているわ』
「つまり、思ったことがそのまま動作になるんですか?」
『ええ、そういう事よ。
でも、それは完全に一体になるということではないの。シンクロ率によっては貴方が思ったことをエヴァが行動に移すには多少の誤差が出てくるわ。
それと、神経接続をしているという事は、エヴァが受けたダメージもフィードバックされることになる訳だから、シンクロ率によってはかなりの痛みも貴方に伝わってしまうから注意してちょうだい』理解が早くて助かるわ、とでもいう風な感じの口調になるナオコ。
「・・・・・・痛みが伝わるなんて、なんて欠陥兵器・・・・・・」
『ウッ!』
シンジははっきり聞こえるように呟く。 わかっていたが、改めて聞かされると頭痛がする。
ここでシンジはふと思いついた。 前回の時はこんな説明してくれたかな?と。
そう、前回はこんな簡単な説明を、ド素人のシンジに対してやっていない。 説明する暇はあった(リツコは疑問が残るがミサトには(知っているかどうかは別にして)あった)のに、だ。 副司令兼技術部長がナオコだからだろうか?
実際のところ、ナオコだから、と言うところもある。 ショタに走ったナオコが、できるだけシンジの精神的負担を減らそうとしているのだ。
『次に、エヴァの動力は電気なの。 背中のアンビリカブルケーブルがその供給元。
ただ、外部電源が外れてしまった場合、自動的に内部電源に切り替わり、通常で5分、最大出力で1分しかもたないから気を付けてちょうだい』「・・・・・・何をどう気をつけると?」
『・・・・・・ごめんなさい、気の付けようもないわね・・・・・・』
「わかってくれますか。 ところで武器は?」
『・・・・・・ないわ・・・・・・』
「は?」
謝るナオコに、へ〜〜、けっこう可愛い、などというミカが聞いたら泣き出しそうなことを考えていたシンジだが、この言葉にはさすがのシンジも己が耳を疑った。
ちなみにナオコ、どう見ても三十台前半ぐらいにしか見えない。
『いくつか設計のおわった武器があるにはあるんだけど、作戦部の書類が出来てこないせいで、予算がおりないのよ。
技術部としての予算もギリギリだし、ちょっとでも浮いた分は整備部にまわしているから、部品すら揃えられないのよ』おそらく、プログレッシブナイフとパレットガンのことだろう。
しかし今なんと言いました? 部品すらない?
ここでふとシンジは思いついたことを口にした。
「もしかして、技術部と作戦部って、仲悪いんですか?」
『良い、とは言えないわね。
あそこの部長は、一個人としては悪い人じゃないと思うんだけど、人の上に立つのは・・・・・・仕事をせずに他の部署に顔を出しては、邪魔ばかり。 そのせいで仕事が遅れているのに、管理職の者に文句ばかり。
作戦部の書類のせいで、止まってる仕事だってかなりあるわ。 そのせいで、外からの苦情も着ているはずなんだけど、全然直らないのよ。
せめて後一週間遅く着任してくれれば、日向副部長の書類になってこんなことにはならなかったんだけど、こうなるなら手を回しておくんだったわ』この言葉で全てを理解した。
前回武器関係がしっかり(?)出来ていた理由は、リツコが勝手に書類を偽造したんだろう。 しかし副司令でもあるナオコは自分の仕事で手一杯、更には仕事が溜まれば嫌々ながらすると思っていたようだ。
しかし普通こんな話をするか? エヴァのパイロットってことは作戦部の所属、その部長の欠点ばかり上げている。
「・・・・・・と言う事は、僕にアレと素手で戦えと言う訳ですか?」
『・・・・・・ごめんなさい』
ナオコが心底すまなそうに答え、視線を発令所の上段部、つまりはゲンドウのほうへ向ける。
(いったいなに考えてるのよ、この髭親父!)
どうやらゲンドウをとっくに見捨てた様子のナオコ、視線は正しくそう語っていた。
『第一次接続開始』
『エントリープラグ注水』
床から湧き上がって来るオレンジ色の液体。
「(おっと、慌てて見せないと)赤木さん、これはなんですか!? まさか水攻め?」
『ごめんなさい、それはLCLよ。それが肺で一杯に満たされれば直接血液に酸素を取り込んでくれるわ』
「そうですか」
すぐに溜まっていくLCLはシンジの顎をこえ、それを口から肺に取り込む。
コポッ…
肺から吐き出された気泡が上っていく。
「ウゲェ、血の味だ」
『我慢しなさい。男の子でしょ!』
回線の向こうから聞こえるミサトの声。
この女、実は今の今まで使徒の姿をモニターで見ていて、二人の会話をまるで聞いていなかった。
その為自分の勤務態度を上官にどう思われているか、現状がどうなっているか、まるで理解できていない。 そう、モニターを見ながらこんなセリフを吐いていたのだ。 『なんで武装ビルが出来ていないのよ! 技術部はなにやってんの!? 仕事やんないなんてぶったるんでるわ! 私を見習いなさいよ!!』
あんた見習ったらNERVはおしまいだ。
「じゃあ、ミサトさん、あとでエントリープラグで水攻め、体験してくれますね?」
ミサトはシンジの提案を一瞬だけ想像し、こみ上げてくる吐き気に思わず口を押さえる。
『うっ、ゴミン。 それはちょっち遠慮するわ・・・・・・』
「自分に出来ないことを子供にやらせないでほしいですね」
シンジは嫌味たっぷりに言い放った。
発令所内
「主電源接続」
「第二次コンタクトに入ります」
「A−10神経接続異常無し」
「思考形態は日本語を基礎言語としてフィックス」
「初期コンタクト総て問題無し」
「双方向回線開きます」
「起動境界せって、えぇっ!? こ、こんなことって!?」
モニター上のデータを読み上げていく童顔でショートカットのオペレーター・伊吹 マヤは、目の前のデータに驚きの声を上げる。
「どうしたの、伊吹二尉? 早く報告しなさい」
「少々お待ちください、現在再チェック中です、チェック完了! シンクロ率0.61%で安定、エヴァ初号機、起動しません!!」
「まさかっ!? そんなの有り得ないわ!」
予定外に低い、と言うよりありえないシンジのシンクロ率に、オペレーター席に座るマヤを押し退け、モニターに食いつくナオコ。
それはそうだろう、他人を拒絶し、自分の殻に閉じこもっている自閉症ならともかく、人と触れ合うことの出来る人間なら、確実に1%台後半は出るのがシンクロ率だ。 そしてシンジには京都に友人がいる。 恋人らしき人物も3人(内一名は奥さん?)確認されている。
それが0.61%、はっきり言って異常だ。 マヤがMAGIを疑い、再チェックしなおすのもわからないでもない。
そしてこの原因を知る唯一の存在、NERV総司令閣下が尊大に命じた。
「エヴァ初号機発進」
実はこの男、シンクロ率を若干(半分以下になる程度)落とし、フィードバックを多少(血がにじむ程度の擦り傷が激痛に感じる程度)上げるプログラムを初号機に仕込んでいた。
「へ? 司令、よろしいので?」
「かまわん!使徒を倒さなければ、人類に未来はない!!」
「なっ!司令、待ってください!!」
「この状態でなんて、死んでこいと言っているようなものです!」
この言葉に焦ったのは、気に掛けている少年を乗せている副司令、作戦部副部長、そして意外なことにこの人物が。
「このまま出したら、シンジ君が死んじゃいます!」
「?伊吹二尉? あなたもしかしてシンジ君を知っているの!?」
『伊吹さんって、もしかして第二であったマヤさん?』
「やっぱり御神の、シンちゃん! ちょっとま「いいから発進させろ! これは司令命令だ!!」そんな!」
この再度の命令に、喜色満面になったのは、歪んだ復讐に燃える作戦部長葛城 ミサト。
彼女は書類を見ない。
読まないのではなく、見ない。 表紙でも見れば、自分に必要な書類かどうか、重要書類かどうか分かるのだが見ない、だからどんな書類かも知らない、知らないから重要度も分からない、だから動かないエヴァに、出撃を命じられる。
「日向君、エヴァンゲリオン初号機、発進!」
「再考願います!」
「ええいっ! どきなさい!(ドガッ!)初号機、発進!(ドン!)」
まともな軍人が上官命令に逆らってまで、止めさせようとする。 つまりそれほどヤバい事なのだが、復讐にトチ狂ったミサトは止まらなかった。
頚椎への一撃でマコトを黙らせ、発進させるミサト。
「「何やってるの(んですか)!? 葛城一尉!!」」
二人の驚愕を置き去りに、初号機は今、打ち出された。
再びエントリープラグ
「グウウ! 一声かけるくらいの気配りも出来ないの!?」
突然の発進に、シートに押し付けられるシンジ。 はっきり言ってかなりのGがかかっている。
ガコンッ!!
『エヴァ初号機、リフト・オフ!』
『まずは歩くことを考えなさい!!』
いきなり地表に叩き出し、しかも使徒とは目と鼻の先。 そして出てきた命令はまずは歩け? 作戦部、技術部、その他発令所のオペレーターはもちろん、実は回線が繋がったままの戦自、及び国連軍の士官達は、そろって目を丸くしていた。(なぜ回線が繋がっているかは後ほど)
シンクロ率が異常に低く、起動できないと言っているのに、そのセリフは無いだろうと。
そして動かないと言う事実を理解しない(しようとしないのではない、しないのだ)ミサトは、更に言い放った。
『ちょっと、何やってんのよ! 歩けって言ってんだからさっさと歩きなさい!!』
「そうは言いますけど、これ動きませんよ? 壊れてるんじゃないんですか?」
『ぬわぁんですって!?(『葛城ぶちょ』ドゴッ! ドサッ) ちょっと待ちなさいよあんたっ! NERVが手ぇ抜いてるってぇの!?
技術部は副司令の管轄よ!? ンなわけないじゃないのよ! 文句言ってないでさっさと命令に従いなさい!』そう、技術部は手を抜いていない。 手抜きしているのは作戦部だ。
? 誰か報告に来た人が、沈められたみたいだけど? ゲンドウの所にも行っている? 『緊急時だ、無視しろ、問題ない』? 緊急時の連絡ほど重要だと思うけど。
「そうは言っても、動かないものは動かないんですから、どうしようもありませんよ」
『操縦桿動かさずに、何ふざけたこと言ってんのよ! 遊びじゃないのよ、しっかりやんなさい!!』
このセリフには、聞いている全員(シンジやシンジ経由で聞いている天使たちを含む)が目をむき、耳を疑った。
操縦桿を動かす? シンクロシステムとは、いったい何と何をシンクロさせるシステムだ? 何のためにシンクロさせるシステムだ?
何も知らない小学生ですら、シンクロシステムと聞いてアニメのような操縦桿操作は思い浮かべまい。
事実、後にシンジ達と同居することになる某美少女は、『シンクロシステム? ようわからんけど、ガン○ムのサイコ○ュシステムみたいなモンなん?』と言っている。
全員が(ゲンドウですら)呆然とする中、未だに歩けとわめき続けるミサト。 そんなとき、
ドスドスッ!
『『『「・・・・・・へ?・・・・・・」』』』
動く筈の無い機体の、操縦方法で意識を飛ばしている間に、どうやら使徒が攻撃する気になったらしい、エヴァに向かって光のパイルを打ち出してきた。
『ちょっと、なにボーっとやられてんのよ、さっさと反撃しな『あ〜〜〜っ! 私のエヴァが、初号機が壊れた〜〜〜!!』・・・ふ、副司令、兵器を戦場に出せば、壊れるも『動かない物を戦場に出すのは、兵器を使わずに捨てるようなものよ!!』』
この場合は副司令が正論だろう。
ドスドスドスドスドスッ!!
「あの、僕はどうすれば?」
『ちょっと待って、今回収『その必要は無い』司令!?』
『ここで我々が敗れれば後がない。 シンジ、使徒を倒せ』
シンジの言葉にエヴァの回収指示を出そうとするナオコだが、それを遮るゲンドウ。
しかし動かないエヴァで使徒を倒せとは・・・・・・まあ暴走させるつもりだし(ゲンドウポーズでニヤリ笑いしてるし)、このままいけば暴走確実なんだろうけど、シンクロしていないと言うことは、シンジが母親を求めていないように、ユイもシンジを息子として認めてないのでは? でなければシンジを求めるユイが、シンクロしようとしてシンジに干渉してシンクロ率が乱れるような気がするが。
そんなことを言い合っている間にも、初号機はいい様に攻撃を受け続けている。 そして近づいてきた決定的瞬間。
『ジオフロント上空に巨大な飛行物体! これは国連ロシア方面軍の、エアフォート!? エアフォートからモーターヘッド降下! 反応確認、A・トールです!!』
『司令、ロシア方面軍総司令官ギラ大将から、通信です!!』
発令所巨大な飛行要塞から降下してくる濃い緑色の巨大なロボット、セカンドインパクト以降突如として(表に)現れだした、マイトと呼ばれる天才達が心血を注いで完成させた、MHが、今使徒の後ろ、ある程度距離を置いたところに降り立った。
そして通信用スクリーンに現れた、禿頭の将校。
『NERVに問う、未だ国連軍に指揮権がありながら、なぜ君達はエヴァンゲリオンとやらを出撃させた?』
「(? N2使用後指揮権は速やかにNERVに移行と、事務総長は言っていたぞ?)どういう、ことでしょう?」
『君たちは作戦妨害をしていると言っているのだよ、イカリ君』
そう、戦自が敗退した後、指揮権はそのまま国連に返還。 しかし国連はNERVに指揮権を移させず、未だ使用されていない人類最強の真の汎用人型決戦兵器MHの投入を決定、所有する各方面軍の内で最も戦場に近い場所に配備していたロシア方面軍に、指揮権を移譲したのだ。
ゲンドウは状況がつかめていないようだが、実はエヴァ発進直後にこの事を(ゲンドウ宛に通信が入っていることやエアフォート共々)秘書官が伝えようとしていた。 それをゲンドウ(とミサト)は、無視してしまったのだ。
返事が出来ずに悩んでいると、更なる追い討ちが襲い掛かった。
『貴官らには、もう一つ伝えることがある。
NERVにやたらと便宜を働きたがる事務総長と国連軍総司令官は、参謀本部及び国連議会からのMH投入の進言を無視、安全保障会議でも否決された筈のN2使用を強行したため、現在すべての職権を凍結、事態の終結後査問委員会に掛けられる事となった。
まあ、解任は避けられんだろうな。
事務総長代理にはミッション・ルース事務次官が、総司令官代行には私マイケル・ジョーイ・ギラが着くこととなった。
こちらから派遣したA・トール、帰還間際で投入できる機体が一騎だけというのが痛いが、この作戦が終わるまではNERVに指揮権は譲れん、と言うよりも既に譲るわけにはいかんな』「それは「ちょっとおっさんどういうことよ!!」」
ゲンドウの問いかけを遮るようにして怒鳴るミサト。 相手は大将、何階級離れているか分かって・・・・・・ないんだろうなあ〜多分。
ついでに言うと事務総長ユーバー・ルノダルと総司令官メイユ・スカ、あまりにNERV寄りで優遇しすぎる為、決議がまだながら既に不信任案が出ていた(その会議中だった)。 さらにはバックに付いていたのはSEELEではなくNERV、後ろ盾と言うには弱すぎる。 おそらく金を貰っただけだろう。
『どういうこと、とは?一尉』
不快げな表情など欠片も見せずに問い返すギラ大将。 一尉を強調したのは、階級差を思い出させて冷静さを取り戻させようとしたのだが、効果は期待できまい。
「いい、相手は使徒なのよ! 使徒はあたしの指揮じゃないと倒せないのよ!
そのあたしに指揮権を与えない? わかってんの!? 使徒を倒せないと人類滅亡なのよ!!
わかったらあたしに指揮権をよこしなさい!!」NERVではなく、小官ではなく、私ではなく、あたし。 つまり、組織や軍人、冷静(?)な私人ではなく、感情任せに暴走している自分以外に適任はいないと言い切っているわけだ。
なんとなくこのまま放り出したら、素手で使徒を殲滅してきそうな気がするのは作者だけか?
『貴官がどう思おうと、貴官らの最終兵器であるエヴァンゲリオンは大破、たとえ今から起動できたとしても動くことは出来まい。
戦力のないNERVに指揮権は譲れん』その言葉に発令所スタッフがそろってモニターを見ると、そこには頭部が半分吹き飛び、装甲のほとんどが吹き飛び、右腕は千切れ飛んでいる。 それだけでも酷いところだが、腹に大穴が開き、左腕と左足がありえないところで曲がっている。 人間でいう骨折だ。
「ぐっ! な、ならあんたらが指揮下に入んなさい! これは特務機関NERVとしての命令です!!」
指揮権上位にあり、特務権限の効かない方面軍司令官で総司令官代理を兼任する相手に命令をする一尉。 軍属経験があるとはとてもじゃないが思えない。
ちなみにNERVは軍事組織としては軍団レベルの位置づけになっている。 自前の総戦力は師団規模にもならず、増強旅団程度なのだが、対使徒戦用の特務機関という理由で、事務総長のゴリ押しで中将待遇を与えるためこの位置づけになった。
『貴官らの特務権限は我々には通用せん。
貴官のその態度は少々問題すぎるな。 後ほど正式な処分をとってもらおう。
バルンガ! ヤマギシ大佐に使徒殲滅を命令! 作戦開始だ!!』ヴツンッ!
「ちょっと待ちなさいよ! こらまて、待てって言ってんでしょうが!!」
A・トール内『ヤマギシ大佐、今ギラ大将から正式に命令が下された、すぐに使徒殲滅戦に移行してくれ。
油断は禁物だが、貴官と貴官のA・トールならば容易かろう』「了解しました、バルンガ司令。(クスッ)司令らしさが板について来ましたね、隊長さん」
モニターに映った、大きな鼻に丸眼鏡、ショートモヒカン(?)と言う容貌のバルンガ極東軍司令に、MHのコントロールの為に機械に体を拘束された、十四、五歳くらいの眼鏡の美少女が答える。
『やめてくれんか、マユミ君。 まったくギラ様もなぜ私のような憲兵隊長を軍司令なぞに・・・・・・』
「(クスクスクス)それは隊長さんが、有能で忠誠心に熱くて誠実で、部下に慕われているからです。 ずっと見てきた私は知っていますよ?」
心底困ったような表情のバルンガに、楽しそうに声をかける。
マユミのそのセリフにため息をつくバルンガを微笑みながら見つめ、少女は小さく呟く。
「さて、ついに使徒戦、ですね。
このまま戦えば勝てるでしょう、ですがそれで良いのでしょうか?
死海写本に在りしリリン達、かの者達は、旧人類たる呪われし騎士に守られ、生き残ることでよしとするのでしょうか?
やはり私は舞台から身を引き、この時代、新人類達の騎士に全てを委ねるべきなのでは?」聞こえてしまったバルンガは、途端に無表情になるが、その目には苦渋と憐憫の色が。
『戦闘準備完了しました。
使徒もこちらに向き直っています、どういたしますか?マスター』これはA・トールに乗るマユミのファティマ・コンコード。 彼女は今は戦闘中と割り切り、一切の感情を排している。
「そうですか、コンコード、回線をオープンにして下さい、NERVにも戦闘会話を聞く権利くらいあるでしょう。
もっとも今後の教訓にはなりえないでしょうが。」『? 了解。 回線、オープンに設定しました』
「では、ロシア方面軍AP騎士団スバース隊、マユミ・ヤマギシ大佐、いきます!」
初号機内「は〜〜、最初に来たのはマユミちゃんか〜。
自殺願望は消えたはずだから、使徒は殲滅してくれるだろうけど、第三に残るのかな?
そうすると夜魔鬼神の一族がまた五月蝿いぞきっと」『(クスクスッ)その時はマユミさんを助けて差し上げるのでしょう?シン様』
アンビリカブルケーブルも切れ、外とは一切接触できない状態であるにもかかわらず、突如として開くモニター。 どうやら念話をモニターにつないだらしい。
そこに映っているのは、メイド服ではなく天使の状態のミカ。 彼女はシンジに私信の念話を送るとき、なぜかこの姿を送る。
『ミカエル、今どこで何をしているの?』
シンジはこの姿を見ると、どうしても昔の呼び方、ミカエルと呼んでしまう。
普通の状態で、外の天使たちの場合はこんなことは無いところを見ると、過去のトラウマなのだろう。 そしてそのことが、ミカから見ると壁を作られているように感じる結果となっている。 天使の状態でもミカと呼んでほしいからこの姿なのかもしれない。
『今はケイジ脇の整備員詰め所にいます。 みなさん良い方ばかりで、私のことを気遣ってくれていますわ。
赤木副司令は評判を落としてしまいました。 どうやら本当に、司令のセクハラからレイ様を守っていたようです。 『母親代わりを気取っていたくせに、涙一つ浮かべずにいやがって』などと言う方が複数見られました』シンジが今何を知りたがっているのか、自分が何をするべきかわかっているようだ。
実はここのレイ、ナオコが自宅に帰れる日には一緒に帰って泊まるなど、親子といっていい関係を築いていた。 その為表情は乏しいながらもしっかりとした感情を持ち始め、世話好きな委員長とは友情に近いものを持ち始めていた。
ただ最近は、デフォルトで入力されていた無に帰りたがる衝動と、ナオコ出張中に行った起動実験の事故による怪我の療養中にゲンドウが施した、薬まで使った強引なマインドコントロールが原因で、精神崩壊寸前だった。
『発令所のほうはどうなってる?』
『牛女はギラ大将に食って掛かっていますね。
日向二尉は、その以前に牛女に意見して沈められました。 まともな意見だったんですが』『う、牛女って・・・・・・』
人を決して貶さない筈のミカの牛女発言に、少々引き気味のシンジ。
話題を変えるべきと思ったシンジは、外のメンバーについて問いただす。
『司令や副司令はどうしている?
後、レイの魂は?』『髭は、今、初号機の状態を知って凍り付いていますね。 一時的にですが心臓も止まったようです。
このまま逝ってくれればよろしかったのですが。
副司令は、シン様のことを心配しておられます。
レイ様の魂は予定通り回収、ベルゼバブさんに渡してありますので御安心ください』そう、この時ナオコは『私のシンちゃんが、私のシンちゃんが・・・・・・』といって心配、と言うより放心していた。
『調査通り、か。
ナオコさんにはあとで後悔してもらおう、その上で、忘れることなく立ち直れるなら、未来を選ばせてあげよう。
じゃあミカエル、僕も僕の仕事をしておくよ、またあとで。 みんなに不振がられ無い様にね』『気をつけます、シン様。 では後ほど』
その言葉を最後に消えるミカ。
「さて、はじめるか」
そう呟いたシンジの容貌が一変した。 髪は銀髪に、瞳も銀色に変わる。
そして過剰シンクロでもしたかのように融けるようにして消える右腕。
右腕が元に戻ったとき、その掌には二つの痣があった。 そう、血のように赤い、豆粒ほどの小さな痣が。
発令所『では、ロシア方面軍AP騎士団スバース隊、マユミ・ヤマギシ大佐、いきます!』
「なによなによなによ、ちょっとあんた、何考えてんのよ! 使徒はあたしの指揮でなきゃ倒せないのよ! 勝手なことやってないであたしの指示仰ぎなさいよ、でないと助けてやんないわよ!
こらあんた勝手に突っ込むんじゃないわよこの(ピー(検閲により削除))」モニター上のMHが、両手に持った二振りの剣を構え、突撃を開始すると同時に誰もが予想した通り、相手が上官であるにも拘らずに、自分の指揮下に入るよう喚いた挙句、今現在助けてもらっているんだから感謝しろよこらと言う視線をものともせず、接近戦用の武器しか持っていないA・トールに突っ込むなといいながら放送禁止用語を喚きだすミサト。
この女にはそんな事喚く前にエヴァの現状確認やパイロットの状態確認等やることが山ほどある筈なんだが、気付いていない。
そしてMHの剣が当たる瞬間、この女の口元が邪に歪む。
予想通りATフィールドが展開されたとき、喜悦に歪んだ顔で叫んだ、途中まで。
「ATフィールド! ATフィールドがある限り、使徒には手も『パキ〜〜ンッ!』あし、も、で『ドゴッ! ズ・ズゥ〜〜ン!!』なんでえぇ〜〜〜!!」
気持ちのいい音と共に、綺麗に割れたATフィールド。 そして勢いが殺されたため使徒を殴り飛ばしただけになった横薙ぎの一撃によって、完成していた無け無しの武装ビル複数を巻き添えに吹き飛ばされる使徒。
『あ、あら?、様子見のつもりでしたのに吹き飛ばしてしまいましたね』
『今のはわざとなのでは?』
今の一撃がただの様子見という、彼等の常識では考えられない事態に、唖然として声も出ない一同。
ふらつきながらもかろうじて立ち上がる使徒。 しかしこれがボクシングならドクターストップ確実なほどのダメージだ。
MHの側でもそれを理解したのだろう、マユミが叫ぶ。
『様子見するほどの事もありませんでした、一気に決めます!』
『イエス、マスター!』
その言葉と共に土煙を上げながら一気に詰め寄るMH。 使徒は何かする素振りは見せたのだが、上段からの一撃であっというまに真っ二つにされてしまった。
「あ゛、あ゛、あ゛、あ゛、使徒が、使徒が・・・・・・あたしの復讐が、父さんの仇が、あああ〜」
若干一名を除き、完全に呆けていたため静かなまま、響く声。
『使徒殲滅を確認、任務完了と判断。
これより帰還します』その言葉と同時に、上空に待機していたエアフォートがMHの上に現れ、使徒共々ゆっくりと回収を開始する。
この瞬間、発令所の大半がNERVの初戦敗北と、唯一の対使徒特務機関の価値が消えたことを知った。
MHは一騎だけではない、各国駐留の方面軍、その中でも中核部隊に配備が進められている最新の戦闘兵器なのだから。
To be continued...
(あとがきコーナー)
上記のとうり、まずは謝罪から。
まずは管理人様。 痛い話になってしまった為、無謀にも風邪で寝込んでしまった日に改訂したところ、設定変えてしまいました(馬鹿ですね、こいつ)。 このままでも辻褄合いますし、この方が面白くなりそうなのでこのまま逝かせて(誤字にあらず)下さい。
つぎにFSS御存知の皆様。 ギラやバルンガなど、FSSキャラが出てきましたが、FSS本編とは(たぶん(笑))関係ありません。 その役職にはまりそうな名前を勝手に借りただけで、オリキャラとして登場させます。 さらに今回登場して出続ける(?)予定なのはバルンガだけ、少し進んでからすか閣下、じゃなかったスカ閣下が出始めます。
続いてすべての読者様。 マユミちゃんが出てきましたが、この話の設定の都合上性格はオリジナルです。 こちらもオリキャラとして扱ってください。
次にナツミちゃんについて。 髭と保安部員による暴行、感想メールで初めて気が付きました、改訂ミスです。 実は投稿しなかったかなり痛い原作がありまして、プロローグ投稿後使えるのに気が付いて、大幅改訂(ほとんど書き直しになりましたが)して投稿したんですが、直し忘れてました。 ちゃんと救いますから御容赦ください。
最後に文章について。 冒頭でも書き込みましたが、今まで何年も色々なSSを読んできました。 そのうえでこの話を書き始めた(直した)のですが、才能のなさには自信があります。 その為、自分で考えたつもりで、実はどこかで読んだ文章を思い出して書き込んだ可能性もあります。
どこかで読んだようなセリフや文章を見つけた方、気に入らなければ掲示板ではなくメールでお知らせください。 自分の判断でになりますが、似すぎていると判断した場合は改訂か相手方の使用許可をいただきます。 掲示板では対応するまでの間に荒れの原因になり、最悪の場合このことが原因でここが閉鎖ということもありえます。
ただ、いくらメールでとお願いしたといっても、誹謗中傷のメールは一切無視します。 その点は御理解ください。
また掲示板で指摘されても掲示板上での返事をせずに対応をします。 こちらの反応に悪意ある解釈で書き込みをされては荒れの原因になりますので。 もちろん、似てはいるけどこの程度なら、と思ったらそのまま無視しますので。
それでは皆様、逝っちゃったシンジと、シン様至上主義者ミカが活躍(?)する第参話で会いましょう。
追伸実はクリスマス前には投稿できたんですが、はっきり言って上記の理由で投稿をためらいました。
自分の作品が元で荒れがひどくなったり、閉鎖になる原因の一つになったらさすがに嫌ですから。
この先もがんばりますので、見捨てないでください。
作者(クマ様)へのご意見、ご感想は、または
まで