第弐幕
presented by マルシン牌様
荒涼とした大地に数え切れぬほどの簡略された墓標が立ち並んでいる。その一角に碇ゲンドウと碇サクラは居た。
「六年振りだ。ユイ、サクラが来てくれた」「お久しぶりです」二人はそろって頭をその目的の墓標へ下げた。
「二人で来るのは初めてだ。ユイ、サクラはお前に良く似たぞ」感慨深げにゲンドウは呟く、ユイの墓標に頭を下げたままだった。
「母さんには悪いけど私顔覚えてないのよね。それに遺体が無いって話だったし…。此処に母さんが眠っているなんて想像できない」
サクラの呟きに対し、ゲンドウは持論とも言える言葉をサクラへ掛けた。
「人は思い出を忘れることで生きていける。だが、決して忘れてはならない事もある。
ユイはその掛け替えのないものを私に教えてくれた。私はその確認のために此処へ足を運んでいる」
「そう。そういえば写真とか無いの?」「残念だが残っていない。この墓もただの飾りだ」
「もしかして全部捨てちゃったって事?」「すべては心の中だ。今はそれでいい」
(ったく、写真くらいは残しなさいよね。『心の中で』というのは私だってシンジの事忘れてないわ。だけど写真があるのにそれを捨てちゃう神経ってのが判らないわね)
長い間がその場を包む。墓標に二人佇んでいると飛行音と共に上空に輸送機が到着した。ゲンドウを迎えに来たのである。
「時間になった。私は先に帰る」「そう、お気をつけて。また本部で会いましょう」「ああ」
ふと、輸送機を覗きこんだサクラはレイの姿があるのを見つけてしまった。
(レイ…。これから食事なのかしら…まぁ良いわ。今は司令とも会話の機会与えておかないと)
サクラはゲンドウとレイを乗せた輸送機を見送った後、葛城一佐が待つ駐車スペースへ足を向けた。
「お待たせしました。葛城一佐。帰りましょう」
サクラの言葉で判る通り、葛城は今朝ネルフ本部からの通達で階級が一つ上がって一佐となったのである。
「これからの予定は朝の時点で通達した通り本部で訓練よ」「了解です」
車に乗り込み、ちょっとしたドライブを楽しみながら、たわいもない会話で盛り上がっていた。
そんな中、葛城のケータイの呼び出し音が響いた。ハンズフリーで応答する。
「はい、葛城」応答はしたが、車の目の前に大きな大砲の破片が降り注いだのである。ハンドルを切りながらそれを回避する葛城一佐。
「わぁあああっととと!なんですって!」その葛城の慌て振りにサクラはピンと来た。「まさか、使徒?」
海上には数多くの戦艦がその使徒に攻撃を加えていた。その使徒はなんというか今までの使徒の中で一番ユニークである。第三使徒や第六使徒よりもユニークだ。
頂上部に時計をイメージしたような物がありその少し下にコアらしき物がある。胴体部分に該当するであろう部位はシンメトリックなオブジェな感じである。
二本の線上の脚部があり、海上を歩くとそこは氷上と化し沈むことは無い。戦艦は連続して砲撃を加えているがそれが無意味なのは明らかである。
ATフィールドをこの使徒ももっているからだ。既に戦艦は何隻も被害を受けている。先の葛城の車の前方に降り注いだ大砲の一部はその大破させられた戦艦の一部のようだ。
その戦艦大隊の攻撃が煩わしくなったのか使徒は反撃を加えた。
頭頂部の時計のようなものがグルグル回り脚部からエネルギーを放出したのか突如として戦艦が真っ二つに爆発していくその数十隻以上である。
『相模湾沖にて、第七使徒を捕捉。第二方面軍が交戦中。三分前に、非常事態宣言が発令されました』
発令所ではこの使徒を第七使徒として対処をし始めていた。オペレーターの一人は葛城一佐へ状況を説明している。
それを葛城一佐も了解し、対応を説明する。葛城の車の速度は半端無い、急いでいる事は判るがここまで運転が雑だとサクラも愚痴の一つ言いたくなる。
(ったく私怨だからって使徒対応に全力注いでこっちで事故ったら意味ないじゃん)
そんなサクラの愚痴など聞こえていないのか葛城一佐は初号機の出撃準備をオペレーターに伝えるが、オペレーターは違う案を出した。
『いえ、既にタスク02を実行中です』「タスク02?まさか!」驚いたように空を見上げる。サクラも察したのか同じく空を見上げる。
(ようやくおいでなすったわね。ユーロ空軍のエース、式波・アスカ・ラングレー大尉。貴女の好きそうなシチュエーションじゃない。
せいぜい頑張る事ね、こっちの世界の私。ガギエルじゃない分楽勝よ)
空では戦闘輸送機から分離した赤色のエヴァが使徒殲滅に動いていた。その淀みない操縦技術は先の五号機パイロットよりもさらに上の感じがする。
「やはり弐号機!?」「へぇ、ユーロ空軍のエースのお出ましってやつ?」「そうみたいね、でもちょっち、不安だわ。貴女達とそりが合うかどうか」
葛城一佐もサクラも使徒と交戦する彼女の不安は無いようだ。事前情報を二人とも知っているため安心してみていられるのだ。サクラはそれに輪を掛けて楽しそうである。
「お手並み拝見、式波先輩♪」
赤いエヴァ弐号機は輸送機から降ろされたクロスボウらしき武器を手に取ろうとするがそれを第七使徒が数えきれないほどの触手なような物を出し、襲い掛かる。
それを弐号機はアクロバット飛行により回避する。
(わぉ、式波先輩かっこいい♪)
サクラは相変わらずその姿に『流石私』とその場に彼女がいれば皮肉と罵られるであろうその言葉を込めてその戦いを見守っている。
状況は弐号機が有利であった。クロスボウの攻撃により、一撃でコアを破壊する。
「へぇ、流石はエース。狙撃も一撃必殺ね」「違う、あれはデコイだわ」
葛城一佐の指摘通りだった。いつまでたっても爆発せずそれどころか使徒が再生したのである。ただし、胴体下部にあった円形の物体が頭頂部の代わりになった。
(ってこれじゃ、似て非なるかもだけど、イスラフェル要素付き?大丈夫かしら、まぁあの円形の物体が本物かな)
サクラの不安はすぐに消え、本体を見つけると安心したように終局への段取りを眺めていた。弐号機は連続射撃を加えATフィールドに矢を固定し、それを確認した弐号機は蹴りこんだ。
「どぉおりいやぁぁぁ!」
弐号機パイロットの咆哮と共に弐号機の脚部にATフィールドを纏い、無数の矢を蹴りこみ最後の一つになり、さらに加重を掛け、使徒のATフィールドを突き破りコアを破壊し使徒は崩壊したのであった。
「状況終了!」(お見事♪式波先輩)上出来な弐号機パイロットにサクラはすこぶる機嫌が良かった。
戦闘を終え、本部移送となった弐号機とそのパイロットを迎えにサクラとレイは葛城一佐と共に同行していた。
「レイ、弐号機パイロットの操縦すごかったんだよ」「そう?碇さんよりも凄いの?」「そうよ、私よりも操縦上手」
(まぁ性格はどうだか知らないけど)
因みに此処に鈴原兄妹と相田ケンスケの姿は居ない。何よりサクラが申し出を断固拒否したことが原因だ。
機密情報にも該当するユーロ空軍エースパイロットをネルフ内施設で会わせるのはどうかと思ったため。
プライベートならば会わせることは可能ではあるが今回のケース使徒戦後はそれを不可能にした。
彼らはエヴァの新型機体を観れるという前情報に、がっかりした様子ではあったがこの後彼らには埋め合わせが後に作られる。
「お見事でした。式波先輩」
サクラが弐号機パイロットへ挨拶する。弐号機パイロットはエヴァに仁王立ちした状態でサクラ達を見下ろし、自信満々に胸を反らせていた。
「と〜ぜん。零号機と初号機は開発過程のプロトタイプとテストタイプ。この弐号機とは性能の差があるわよ」
その言葉にサクラはカチンと来た。式波は途中でエヴァから降り、サクラと対峙している。
「ちょっちその言葉聞き捨てならないわね。アンタバカァ?私が操縦する初号機は今までに使徒を三体も殲滅しているのよ?そのパイロットに向かってその言葉は無いんじゃないの?」
「何よアンタ。アンタこそバカじゃないの?この弐号機が本物のエヴァよ。ナナヒカリの癖に生意気ね。戦績なんて私が超えて見せるわよ」
(やっばいかもね。こりゃ私よりも扱いにくいんじゃない。私以上に孤高を目指すとか…自滅行為じゃない…どうにかならないかしら)
式波・アスカと惣流・アスカの初対面は最悪なものとなった。「ならば実戦でそれを証明しなさいよ」
「そうね、私にとってナナヒカリとエコヒイキの二人は不要よ。私一人でこれからの使徒は倒していくわ」
(うっわ。こりゃ断然私のほうが性格いいんじゃないの?)「そう、なら期待していますよ、式波先輩♪」
「ええ、期待しなさいよね。おっと、ミサト久しぶり。この生意気なのがナナヒカリなんでしょ?で、そのナナヒカリを見つめているのがエコヒイキかしら」
「そうよ。なんだかんだ言って貴女は先輩なんだからもっと気楽にいきなさい」式波の言葉に頭を抱えながら返事を返す葛城一佐であった。
(やっぱり鈴原兄妹と相田を連れてこなくてよかったかな)サクラの内心は親友の事に気を取られていた。しかし、実情は式波・アスカが殲滅した使徒の事。
(それにしても第七使徒…ガギエルじゃなかった。それに簡単に攻略できたけどイスラフェルのような囮機能まである始末。こりゃ今後の使徒戦どうなるか判らないわね)
この使徒戦で確実にサクラが危惧した自身が過去いた世界との差異は確実なものとしてさらには今後の使徒戦ではどうなるかすらも怪しいと感じ始めていた。
レイと別れたサクラは一人、最寄りの駅の改札を出てそのまま帰宅しようとしていた。
使徒戦と式波・アスカの本部案内等があったため、葛城一佐らネルフ関係は現在大忙しでパイロットの訓練どころではないのだ。そんなサクラに声を掛ける人が現れた。
「失礼、ジオフロントのハブターミナルはこの改札で良いのかな?」振り返るとそこには懐かしいと言ったらなんだがサクラが一時憧れていた加持リョウジの姿があった。
(加持さん?そのケースの中身『アダム』?いや違う。そういう禍々しい物じゃないわね。なんだろうよく判らないわ。やっぱりこっちの世界での最終目的ってのが良く判らないわね)
薄らとサクラの瞳は紅みを帯びている。傍から見ればそれは視認できるようなものではない。
「ええ、そうですよ。四つ先の駅で乗り換えがあります。四つ先の駅では混み合った案内ではないので良く判ると思いますよ」
男は駅の路線図を見やり感慨深げに呟く。「たった二年離れただけで浦島太郎の気分だ。ありがとう、助かったよ。ところで、葛城は一緒じゃないのかい?碇サクラさん」
「へぇ〜。私も有名に成ったモノね。ええ、葛城一佐は本部でかかりっきりの案件があるそうよ」
「エヴァの起動と殲滅を確実にこなす。そして、人望も厚いと…噂が広まっている。他の支部ではかなり有名だ。葛城の件はそうか。ちょっくら挨拶でも出向いてみるかな」
そういってサクラが加持といった男は改札を通してホームへ向かった。そう、この男こそベタニアベースで五号機のパイロットと会話をしていた張本人である。
(加持さんが持ってたあのアタッシュケースの中身気になるわね…。ちょっと予定より早いけどそろそろ行動開始かしら…)
加持は何とか本部へ着いた早々に総司令室へ出向いていた。居たのは総司令と副司令、かなり重要な話らしい。
「いやはや、大変な仕事でしたよ。懸案の第三使徒とエヴァ五号機は予定通り処理を行いました。原因はあくまで事故。
ベタニアベースでのマルドゥック計画はこれで頓挫します。全て貴方のシナリオ通りです。それからゼーレ最新資料は先ほど…」
「拝見させてもらったよ。mark'06建造の確証は役に立った」冬月がその成果を加持に伝えた。
「結構です。そしてこれがお約束の代物。予備として保管されていたロストナンバー。神と魂を紡ぐ道標ですね」
加持が持ってきていたアタッシュケースが自動的に開く。そこにあったのは一枚のラミネートカード。
その内容物は人体経絡図のような感じを受ける。頭部になる部位にはカプセルのような物質がある。
「ああ、人類補完の扉を開く『ネブカドネザルの鍵』だ」ニヤリとドヤ顔で加持を見るゲンドウ。
「ではこれでしばらくは好きにさせてもらいますよ」
加持は苦笑しつつも要件を終えて総司令室を出た。扉が閉まり、冬月が碇へ問う。
「加持リョウジ主席監察官。信用に足る人物かね?」その問いに無言を貫いた碇ゲンドウであった。
その頃、一旦帰宅しようとしたサクラであったがもう一度ネルフ本部へ足を向けていた。碇サクラが行動開始したのである。
まずいつもの黒服の人の許可を得て、情報室で様々な情報を取り寄せた。現在サクラが使っているIDは精巧に偽造したIDである。
懸案であるはずMAGIの範疇に無い。それはサクラの使徒としての能力だ。
あのL-EEEへ連れて行かれた際ついでとばかりに使徒の能力を使って葛城ミサトが持つ上限levelIDを精巧にコピーしていた物。
役に立つときは必ず来るだろうと踏んでいたサクラはこうして今行動開始の折それを使っている。
従って今サクラはある程度無茶の出来るのだ。サクラが欲している情報は今この世界での最終目的がなんなのかである。
(ゼーレとネルフ、かなり違うわね。どちらも独自の目標がある。性質が悪いのはやはりネルフね。ゼーレのシナリオはかなり厳しいけど…それなりに筋は通っている。
なんだ、この世界のゼーレって良心的じゃないの。ならば私はゼーレを全面的に支援すればいいって事なんだけど…さて碇司令の思惑は…。
うんそりゃ馬鹿げた思想の持ち主ね。ふふ、私がそれを潰しますよ…さてどう料理しましょうか…)
赤木リツコは研究室で何やらPCと睨めっこしていた。そこに男の腕が掛かる。
「少し痩せたかな、りっちゃん?」「残念、1,570gプラスよ」「肉眼で確認したいな」
「良いけど、此処監視付きよ?」「no problem。既にダミー映像に切り替えてある」
旧友のその手回しの速さに感心する赤木博士。「相変わらず用意周到ね」「負け戦が嫌いなだけさ」
そう自信にあふれていた男に赤木は前面のガラスに目を向け忠告する。「でも負けみたいよ?」「ん?」
男もそれに倣い前面のガラスに顔を向けるとそこには葛城一佐の姿。かなりご立腹の様子。
「コワ〜イお姉さんが見ているわ。リョウちゃんお久しぶり」「や!しばらく」
部屋のドアが開き葛城が未だにご立腹の様子で入る。「何でアンタが此処にいるのよ!ユーロ担当でしょ?」
「特命でね。しばらくは本部で過ごすことになるよ。ま、再び三人で学生時代同様つるめるぞ?」
「昔に返る気は無いわよ!私はリツコに用があってきたの。アスカの件、人事部に話通しておいたから!」
ご立腹な葛城は要件だけ済ませてさっさと立ち去った。それを見ていた赤木がクスっと笑い加持を見た。
「ミサト、あからさまな嫉妬ね。リョウちゃん、勝算はあるわよ?」「はて、どうなるかな」
サクラは独自行動に時間を忘れ、気が付けば夕暮れになっていた。
(さてと、式波先輩はどこに住むことになる事やら…まさかミサトの部屋って訳ないわよね?それならそれで結構ラッキーなんだけど…お話しやすいし)
サクラは先に調べた情報にかなりの優位性を以て行動できるという確証を得、上機嫌である。それはゼーレにとっては優位に働き、ネルフには不利に働くという結末でもあるが。
(しっかし、真希波さんも加持さんもえらく無茶な行動していたわね。ベタニアベースのマルドゥック計画を破綻させるなんて…これじゃゼーレが黙っているわけないでしょ?)
葛城邸に着いたサクラはそこにいたアスカと鉢合わせすることに。「何で式波先輩が此処にいるのよ?というよりこの荷物どういうこと?」
牛乳を飲みながら登場したアスカはサクラを一瞥する。
「ん?ああ、ナナヒカリ?アンタはお払い箱よ。ま、これから私単独で使徒殲滅するっていうんだし。アンタも楽になっていいんじゃない?」
「ほ〜。それはまた昼の蒸し返しってやつかしら?良いわよ次の戦闘、貴女のしたいようにしなさいよね」
(残念、アスカ。死海文書外典に載っている次の使徒はサハクイェルの特徴がある使徒らしいし三体同時防御でなきゃ成功出来ない作戦になるのよ。
そう考えると結構単純化されている世界よね。ゼーレに何があったのかしら)
「ええ、そうさせてもらうわ。しかしね〜。どうしてこう日本の部屋は狭いのかしら?荷物の半分も入らない。
それと日本人の危機感のなさにも呆れるわね、よくこんな鍵の無い部屋で暮らせるのよ」
部屋の扉を開け閉めしていると、葛城がやってきた。「日本人の身上は、察しと思いやりだからよ。そうよねサクラさん」
「ええ、式波先輩ももう少し私たちの事察してもらえたら嬉しいんだけどね」
「うっとおしいのよね。アンタはそこのゴミと一緒に出ていきなさいよ」
「ダメよ。サクラさんはもう少しここで同居って事になっているのよ」「マジ?」
「ええ、マジ。サクラさんとアスカに足りないのはその適切なコミュニケーションよ。同居してお互い知るっていうのもパイロットとして基本。
そうねレイも食事時は来るから手っ取り早くパイロット三人でお話し良いわね」
夕食は全てサクラの手料理である。今日からは式波アスカがいるという事で肉料理中心。
肉と野菜炒めの中華版である回鍋肉がメインである。ただ、レイは肉料理が苦手なので別に肉を外した野菜炒めで手を打っている。
「これナナヒカリが作ったの?」「そうよ。式波先輩もこれくらい作れるでしょ?」
その言葉にアスカは喉を詰まらせる。その様子を見たサクラはクスと笑う。
「へ〜。式波先輩って料理苦手なんだ」「うるさいわね…私だってこれくらい作れるわよ」
(よし、勝った!)「私も料理作ってみたい…」レイも料理に興味が湧いているのかサクラへお願いする。
「そうね。なら式波先輩と一緒に練習してみる?」「何で、私もなのよ。エコヒイキ一人で練習すればいいじゃない?」
「もしかして式波先輩。お嫁に行かなくていいの?」その言葉に再度詰まってしまったアスカであった。
夕食を終えて、先に風呂から出た葛城は早速ビールをあおっている。その横でのんびりとレイが座って、サクラは茶碗を拭いていた。そんな中アスカの悲鳴が響く。
「なんか変な生き物が風呂に居る!」
「式波先輩。その生き物ってね、ペンギンという鳥の仲間よ。セカンドインパクト以前に居たらしい生き物なんだって。名前はペンペン、すっごく可愛いんだから」
(うっわ。こっちの私、スタイル抜群じゃない…前の私とどっちが勝つか見てみたかったな。
ってこれシンジが見ていたらこのアスカ絶対蹴り飛ばしているでしょうね…よかったわ女で)
裸体を惜しげもなく晒すアスカに元アスカは見とれてしまっていた。そんなことに気付ず、サクラの説明に納得したのかアスカは風呂へ直行したのであった。
皆寝静まった夜、一人空を見上げるサクラがいた。
(さて、第八使徒戦どうなる事になるかしら。そういえば碇司令はもうすぐタブハベースへ行くはずね。ゼーレ本拠地の基地に何があるのかしらね…)
アスカはベッドの上で人形遊びをしていた。「あいつらとも違ぁう。私は特別ぅ。だから、これからも……一人でやるしかないのよ。アスカ」
それを壁際で聞いてしまったサクラは暗い顔で自室へ戻るのであった。(こっちのアスカ…私が言えた義理じゃないけど無理し過ぎよ…まぁ私が何とかしてやるしかないのかな)
To be continued...
(2011.11.05 初版)
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