第参幕
presented by マルシン牌様
サクラはアスカと自分との違いを昨夜の事で思い知った。はずだったのだがさらに思い知ることになる。学生生活でそれは顕著となっていた。
(私のように猫被りをしないのね、あの子…。恒例になった事と云えば今日も告白の嵐…よね。
まぁ、私もよく告白対象にされるんだけど…断固拒否と決めているのよね。私が愛したのは『碇シンジ』ただ一人。これからもそれは変わらない)
昼休み等になると男子がアスカへ告白しに来るのだが、アスカは持参している携帯ゲーム機に夢中になっている。
煩わしくなったのか見事なヤクザキックをかまし、男子を撃退。これには鈴原と相田も嘆息するしかなかった。第一印象は抜群なのに性格がきっかし合わないのだ。
それは元アスカの自分でもよく判る性質ではあったがこうもすっきりと表面に出されると気分はよろしくない。
彼女の性質を何となく把握したサクラだからこそではあるが。レイは相変わらず窓の外の変わらぬ景色を見ていた。普段はこれが彼女の日常だ。
そしてサクラは、鈴原、相田のほかに洞木らと談笑する毎日である。そこへアスカが加われば、サクラ対アスカの口喧嘩に発展するのは毎度のことになっていた。
「アンタバカァ?ナナヒカリの癖に私に文句をつけるとは何様よ」
「あのね〜。大尉殿が苦労している分野を教えるというのにバカとは云われたくないわね。
ったく漢字力がからっきしな式波先輩に懇切丁寧教えてあげるのにそれを無下にするなんて…学力考査で散々になるわよ?」
「ふん、ナナヒカリに教わるぐらいなら自力でやって見せるわよ」
「はいはい、頑張ってくださいね、式波先輩♪成果のほど期待していますよ」
式波・アスカは漢字力が元アスカの同時期よりはあったのだがそれでも読めないという欠点を抱えていた。
それを知ったサクラが教えるとアスカへ歩み寄ったのだがご覧の通りの有様。他の日も何かとアスカが難癖をつけ、口論となるから始末が悪い。
ただ、サクラはそんな学校生活も悪くないと感じているのは間違いなかった。以前はこういった事はシンジとのやり取りで慣れていたからという理由もあった。
アスカとのやり取りをふと学校の屋上で手すりに掴まりながら来日したての頃に重ねていたサクラであった。
(シンジ、私元気にやっているよ。これからはかなり危ない橋を渡ることになりそうだけどあの悲劇をこの世界で繰り返す事には絶対しないんだから。見守っていて、シンジ)
帰り際、加持リョウジが通学路で待ち伏せしていたのかやってきた。
「サクラさんちょっといいかい?」「ええ、なんでしょうか?」
「ああ、今度の休日此処へ招待したいと思ってな」手渡したのはパンフレットである。
「『日本海洋生態系保存研究機構』の施設ですか?」
「ああ、是非とも適格者の三人をと思っている。それから少人数だが親友たちも呼んでもいいぞ」
「判りました。葛城一佐同伴でしょうか?」その言葉に加持はふと重い雰囲気を出して応えた。
「いや葛城は来ないよ…思い出すからあそこへは行かないはずだ」「何でです?」
「セカンドインパクト…。彼女はあの出来事の目撃者でもある。だから此処へは来ない」「そう…なんですか」
「父親との確執が彼女にもあった。だが、最後はその父親に助けられた…。そんな過去を持つ葛城はあそこへ行かない…。とちょっと長話になったな。ま、そういう事だ」
「あ、はい。多分参加人数は今のところあと三人くらいだと思いますよ」
「そうか、手配しておこう。じゃ、現地で会おう」
夕食を食べ一時を過ごしていた時サクラは先の話題を切り出した。
「社会科見学?加持が?」「さっき、下校途中待っていたようで、みんなの事も誘えって言っていましたよ」
「あいつに関わると碌な事無いわよ」アルコールが入った葛城はそういって潰れてしまった。
携帯ゲーム機で遊んでいるアスカは葛城の言い分を聞いていたのか行かない事を表明するが、サクラとレイに言い包められた。
「じゃぁ、私パス〜」「二番目、この手紙には適格者強制全員参加って書いている」
「うっそ、マジ?」「式波先輩はこういうの苦手だったりするわけ?」「ふん、行けばいいんでしょ?ったくエコヒイキもナナヒカリばっかり…」
宇宙空間の月の軌道上。宇宙飛行船一機に乗っているゲンドウと冬月は月にあるタブハベースの視察をしていた。
とはいえ、宇宙船からの視察とあってすべてを窺い知ることは出来ない。不満は彼らネルフ上位組織の愚痴に変わっていた。
「月面のタブハベースを目前にしながら上陸許可も出さんとはゼーレもえげつないことをする」
「mark'06の建造方式は他とは異なる。その確認だけで十分だ」「しかし、五号機以降の計画など無かったはずだぞ」
「おそらく、開示されていない死海文書外典がある。ゼーレはそれに基づいてシナリオ進行を進めるのだろう。そしてサクラもそれについて探っていると私は考えている」
「サクラ君もか?だが、ゼーレはこちらの究極の目的に気が付いているはずだが、サクラ君は…」
「ああ、確証を以て動いてはいない…だが、行動へ出るのは間違いない事実だ。その時の行動でこの世界の命運が決まるかもしれん。
それほどあいつは脅威になり得る…。それでもなお、我々は我々の道を行くだけだ。たとえ神の理と敵対することになってもだ」
ふとゲンドウは冬月へ持論を話していると機体の上に座る一人のシルエットを見た。遠目からは詳しく確認できなかったのだろう。冬月もシルエットに気が付いただけだった。
「ヒトか?…まさかな」冬月の呟きにシルエットはタイミングよくその宇宙船へ目を向け、挨拶をする。
「久しいね…貴方達の野望は僕らが潰してあげるよ…」
加持主催の社会科見学の当日。参加メンバーはサクラ、レイ、アスカ、鈴原兄妹、相田である。
更になぜか此処にペンペンの姿もあるのだが、それは葛城に言わせれば自分代行らしい。六人+一羽?が参加人数となった。
皆それぞれ、息抜きと題した社会科見学とあって羽目を外していた。その中で珍しく有名な場所への招待とあって相田は皆以上に興奮を隠しきれないでいた。
「凄い、凄すぎる!失われた海洋生物の永久保存と赤く染まった海を元の姿へと戻すというまさに神の如き大実験計画を担う禁断の聖地!
その表層の一部だけでも見学できるとは。まさに持つべきものは友達って感じ」
「ホントにサクラお姉さんありがとう、兄ちゃんも何とか言いなさいよ」
「ほんま感謝しとるんや。こうして妹も元気に過ごせるようなってな」
「それは招待してよかったわ。ま、相田ほどこの施設を観たいってのはそうそういないでしょうけど。ま、御礼は加持さんにって事なんだけどね」
サクラは興奮を抑えきれない友人を半分呆れながら眺めていた。そんな中で加持が一足先に施設内で待っていたのか窓ガラス越しにサクラへ合図する。
「皆揃っているな。じゃ、入る用意をするんだが、此処からがちょいと面倒なんだ」
(まさか…こういう加持さんって碌でもない事があるんだっけ…)
そのサクラの予想通りか。彼らに待ち受けていたものは単純明快。身体の掃除であった。外界からの菌を完全に処理する施設を何度も通される。これにはサクラは昔を思い出していた。
(これはイロウル戦時のあの一七回のクリーニングよりかはマシね)
全ての工程が終わり、漸くメインである水槽等がある部屋へ通される。
「ヒョォ〜でっかい水槽やなぁ」「兄ちゃん、カメやクラゲがいるよ…写真でしか見たことないからびっくり!」
「これがセカンドインパクト前の生き物達!凄いよ!!」思い思いに見学をするが、一人冷めた目で皆を見つめているのはアスカであった。
「子供がはしゃいじゃってバッカみたい」「ふふ、やっぱり式波先輩はこういったの苦手なの?」
「ナナヒカリはいつも私の邪魔ばかりするのね…目障りなのよアンタ」「そう?でも一人で遊んでいるよりもみんなで遊んだ方がいいと思わない?」
「はぁ、私はね。他人とね合わせるのって苦手…他人の幸せを見るのも嫌なのよ。私自身一人が好きってのもある。
だからこういった団体行動って好きじゃないの。ナナヒカリはそういったの判らないでしょうけど…」
「ええ、判らないわよ。そうやって孤高を目指す哀れな軍人なんか知ったこっちゃないわよ。せいぜい自滅が良い処よ貴女はね。
けど、貴女は今一人?戦友と呼べる私やレイがいる。他人を頼るのも悪くないわよ」
ふとアスカはサクラの哀しげな表情を作って何か自分を抑えているように見えた。見えてしまった。サクラの持つ過去それに瞬間的に触れていたのであった。
形や意味は違っても行く先はサクラの結末に近いと取れるアスカのプライド。それを知ったサクラは自身の過去がどうであったか話したかったが、彼女に届くとは限らない。
それがどうにも歯がゆかったが、こうして遠巻きに忠告をしていたのだった。そのサクラが苦心してアスカへ語った忠告は残念なことに届いていなかった。
その結果が第八使徒別名『落下使徒』の際に顕著に表れるのであった。
「ま、そんな暗い話はここまでにして式波先輩行くよ。昼食食べに」
昼の弁当もこれまたサクラ謹製である。アスカやレイはいつもサクラの料理を食べているためそれほど驚かなかったが、初めて食べる鈴原兄妹、相田、加持は驚いた。
「これ碇さんが作ったの?」「マジかよ」「お姉さんすご〜い」
「ああ、見事な焼き方と味付けだな」「あの九割人造肉が調理次第でこうも美味しくなるとはまさに驚愕だよ」
「葛城一佐が料理苦手なの。それに式波先輩も出来ないっていうし、レイも今練習中。となると葛城邸では私しかできないのよ。皆が喜んでくれるから作る甲斐があっていいのよ」
レイの弁当だけが肉料理が無いのは既に基本となっている。それを隣で見ていた藍がレイに聞いた。
「あれ、綾波姉さんはお肉が入ってないのね」「ええ、私。肉が苦手だから」
「エコヒイキって肉料理が本当に苦手なのよ。ナナヒカリが矯正したいって言っているけど難しいみたいね」
「式波先輩は料理練習から始めないとね…お嫁にいけないわよ」
「ナナヒカリ、ケンカ売る気?」「ホントの事でしょ」「なんですって」
そんな毎度お馴染みのサクラ&アスカ騒動は在ったが昼食はのんびりとした感じで全員平らげた。
「で、話があるってどういうことだい?」
「ええ、一つ聞きたいことがあるの。この紅い海。セカンドインパクトでこうなったって私たちは習った…けどどうして赤く濁ったのかしら」
サクラは加持一人を誘い、施設外界の場所へきて本題に入っていた。
「それはだ。全てセカンドインパクトの衝撃とそれに伴った生命の血でこうなった。あの惨劇で我々人類と生命は絶滅寸前まで追い遣られた。
その血などがこうして海にながれ今の赤い海に変貌した。普通なら血液等は酸化など化学反応を起こしてしまうがそれすらも衝撃によってこの紅い状態のまま数十年現存する。
そんな赤い海から昔の青い海へと戻そうとする施設が此処だ。本来ならこの世界には君たちが知らない生命に満ち溢れていた。その一端でも知って欲しくて君たちを招待したんだ」
生命の血がこの紅い海の元と聞いてサクラは顔を歪めながらも何とか立て直して加持の言葉に納得した。
「そうだったんですか…そんな酷い状況を二度と起こさぬように私たちは戦っているのね…」
「ああ、子供に大人の事情を巻き込むのは些か気が引けるがな。だが、君たちのおかげでこの世界は守られている。大人はそのことに感謝せねばならない」
宇宙船に乗って今帰港しようとしていたゲンドウと冬月は昔あった南極付近のセカンドインパクト後の惨状を見に寄り道をしていた。
宇宙船から見た南極大陸は最早その原型など判らず黒く塗りつぶされた円形状が爆心地となっていた。その黒い円形地帯に微かに見える四つの十字架らしき物。
その周りは衝撃でそうなったのか円状に広がる人が立ち入ることのできないという程になった外界を遮断する地帯と化していた。
「これが母なる大地とは、痛ましくて見ておれんよ」
「だが、しかしこの惨状を願った者たちもいる。ヒトさえ立ち入ることの出来ぬ、原罪の穢れ無き浄化された世界だからな」
「私は、ヒトで穢れた混沌とした世界を望むよ」
「カオスは人の印象に過ぎない。世界は全て調和と秩序で成り立っている」「ヒトの心が、世界を乱すか…」
翌朝の事だった。突如として現れた第八使徒の対応に追われているネルフ発令所に葛城一佐らオペレーターチームがいた。
『三分前にマウナケア観測所で補足。現在軌道要素を入力中』『目標を第三監視衛星が光学で捉えました。最大望遠で出します』
オペレーターがキーを押すと発令所メインモニターにその使徒が映し出された。その姿形に発令所が色めきたった。今までに無いほどの形。
球体のその使徒は光すらも遮っているらしい。さしずめブラックホール表面にも見える。その正体はATフィールドを纏った使徒の本体である。
それを見た葛城一佐がため息を一つ吐いた。
「光を歪めるほどのATフィールドとは、恐れ入るわね、で落下予想地点は?」
葛城一佐が一回オペレーターに尋ねるがそれも一瞬。「勿論、此処よね?」目的は判っている、それをわざわざ聞くのは野暮と云うもの。葛城一佐は一人自己完結したのだった。
「マギも再計算。ネルフ本部への命中確率は99.9999%(シックスナイン)です」
その伊吹の情報に葛城一佐は舌打ちする。宇宙空間に佇む使徒を一応とばかり国連軍がN2爆雷等によって使徒へ攻撃を加えてみるものの、光を歪めるほどの防御力の前では歯が立たない。
使徒殲滅はやはりエヴァしかないのである。葛城一佐らは作戦本会議室へ移動し、その様子衛星動画を見つめながらどうするか決定しようとしていた。
『N2航空爆雷も全く効いていないようです』「軌道修正は不可能ね」オペレーターの一人がそう結論付、葛城一佐は万事休すといった表情である。
「ATフィールドを一極集中して押し出していますからこれに落下時エネルギーも加算されます」「まさに使徒そのものが爆弾というわけね」
「第八使徒、直撃時の爆災推定規模は直径四十二万ジオイドマイナス一万五千レベル」
情報が想像以上だった。『第三新東京市は蒸発。ジオフロントどころかL-EEEまで丸裸にされます』
葛城一佐がそこまでの情報を得て、ふと上層部との連絡はどうなのか問うた。「碇司令は?」『使徒の影響で大気上層の電波が不安定です。現在、連絡不能』
「此処で独自に判断するしかないのね…日本国政府及び関係各省へ通達。ネルフ権限に於ける特別宣言D-17を発令。半径百二十キロ内の全市民は速やかに避難を開始」
『問題ありません。既に政府関係者から我先にと避難を始めていますよ』
この使徒襲来により、交通網は大渋滞、大混乱。国連軍も総力を挙げて日本国への支援を惜しみなくし、短時間での避難を完了させた。
暴動等一切無しの健全な日本国民である。これが諸外国でこのようになっていれば暴動の一つや二つあってもおかしくは無いであろう。
「マギのバックアップは松代に頼みました」「で、どうするつもり?」『いくらエヴァと云っても空を長時間飛ぶわけにもその武装は開発段階』
『空間の歪みがひどく、あらゆるポイントからの狙撃も事実上不可能です』『こんなベラボーな相手じゃ手の打ちようがありませんよ』
次々に葛城一佐へ報告と愚痴にも似た事を云うオペレーター達であった。が、葛城一佐は妙案ではなく一種の賭けに出る決意をしていた。
その一種の賭けのために下準備をしていた葛城一佐に助手を頼まれた赤木博士が問う。
「本気なの?」「ええ、そうよ」
「作戦と云えるの?このプランは、マギの検証でも失敗率は99%強。たとえ成功したとしてエヴァ三体の損失と出ているわ。技術部としては到底容認できるプランではありません」
「可能性は零ではないわ」「奇跡よりも地道な努力。我々はリリスと初号機を確実に保守運営する責務があるはずです」
「ほかにプランが無い以上この方法で成功させる。奇跡は誰だって人の意思によって起こせるわ」「葛城一佐!」
「現責任者は私です、私が判断するわ。それに使徒殲滅が私の仕事です」「仕事?私怨の間違いでしょ。貴女の使徒への復讐は」
葛城一佐と赤木博士の問答は最後まで平行線を辿るが、頑として葛城一佐は賭けに出るという持論を以てパイロットたちを呼び寄せた。
「え〜!手で受け止める?」来日して本部の作戦の下での初陣であるアスカはその荒唐無稽ともいえるプランを提示され驚きに満ちた表情で葛城一佐へ聞いた。
「ええ、そうよ。落下使徒に対してエヴァのATフィールド全開を以て直接受け止めるプラン。
目標は位置情報等を攪乱させて補償観測の精確情報は期待できない、状況に応じ臨機応変に対応するため本プランはエヴァ三機による同時展開となります」
その葛城一佐の説明を受けアスカが反論する。「無駄よ!私一人で殲滅出来るもん!」
「そうね、式波先輩一人でできるプランじゃないわね。これは」アスカの隣で冷やかに言い放つのは初号機パイロットのサクラである。
「何よナナヒカリ。この間言った事忘れた訳?」「忘れてなんてないわよ。でもこのプランだと間違いなくエヴァ単機では成功しないでしょ」
アスカの物言いに呆れ混じりにサクラは葛城一佐へ確認を取る。
「サクラさんの言う通り。エヴァ単機でこの広大な落下予想地点を全て補えるわけがないの」「この配置の根拠は?」
葛城が説明するとレイが根拠について聞いてきた。それに対して葛城一佐は暗にこのプランが賭けであることをズバリと言い放った。
「女の感よ」「何たるアバウト」「アバウトでも勝算は零ではない…だからこのプランって事ね。因みにどの程度の勝率を提示されているんですか?」
アスカが問題外と切り捨てるが、葛城の性格を良く知るサクラは一応とばかり葛城に問いかけた。
「神のみぞ知るってとこかしら?」「ふ〜ん。まぁ他にプランは流石にこの短時間で練られるはずもなし。やるしかないわね」
「フン、だから他のエヴァは邪魔なの!人類を守るくらい私一人で十分よ!」
そういって作戦伝達室から出ていくアスカに、サクラが追いかける。
「ちょっと聞き捨てならない事言わないでくれる?」「ナナヒカリもうるさいわよ。ミサトの味方ばかりして」
「じゃ、死んでみるつもりで一人で出撃したらいいじゃない。私は一向に構わないわよ?まぁその後に見る光景は知れているでしょうけど…」
一気にドスの利いた声でそうアスカへ言い放つサクラ。その場の空気が一気に変わったのがアスカにも判ったのか。段々とその表情が青ざめていく。
「あ、アンタ…何者よ…」
「式波先輩がそんな分からず屋だとは思わなかったわ。この間も言ったでしょ?貴女には私とレイが居るのよ。冷静に考えて。今回のプランは貴女一人がやって出来るプラン?」
ドスの利いたサクラの声に頭の血が一気に冷えたアスカは葛城一佐のプランについて考えた。確かに広大な面積をカバーできるのかは厳しいだろう。
しかし、自身が優秀者として認めているアスカにとってソロでの戦闘がエースの証として自負する所以たる事についつい反論するアスカ。
「私に指図するんじゃないわよ!」
「戯言もいい加減にしたら?このプランでソロの成績でできるような物ではないってのは素人目からも明らか。
ならば戦友と共に戦って勝つってのが定石って事。そんな事は式波先輩が良く知っているんじゃないの?」
「ナナヒカリ、アンタ私の才能を甘く見ているんじゃないでしょうね?」
その返答にサクラは遂に堪忍袋の緒が切れたのかアスカに対し使徒の能力を使う羽目になった。
「甘く見ている?はっ、何寝ぼけた事言っているのよ、甘いのはアンタよ。本来なら私と貴女との実力の差は歴然なのよ。
ならいっそ見てみるかしら?私の能力の一端を。私であればソロであの落下使徒は倒せるわよ。貴女には無い力を使ってね」
(総司令と副司令が今宇宙空間に居る今ならあれが使える。第一八使徒リリンの覚醒したその力の全貌を。代償はそうね。初号機本体のみかしら)
そう言い残してその場を立ち去ったサクラ。立ち去った後アスカは茫然と見送るしかなかった。一種の金縛りにでもあったかずっとその場から動けないでいたのだった。
To be continued...
(2011.11.12 初版)
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