ヱヴァンゲリヲン新劇場版 〜ASKA REVERSE〜

Destruction〜破

破章終劇

presented by マルシン牌様


惨劇は終わった。式波・アスカはダミーシステムの接続が切れた後もずっと操縦桿を握っていた。
アスカの手にはあのエントリープラグを握りつぶしたであろう感覚が幻影肢のような状態に陥っていたのだ。
無論、ダミーシステムによって引き起こされている。アスカ自らがやったわけではない。
確かに総司令の判断は正しい。しかし、この凄惨な状況は幾らなんでもやり過ぎであろう。
ダミーシステムは野生的に動作することを知らないアスカにとってこの凄惨さは堪えたのだった。
(サ…クラ…ゴメン。助ける事が出来なかった…)




この惨劇に一番近くに居た葛城二佐は何とか命は助かっていた。
頭部に軽い裂傷、腕の骨折程度で済んだのは不幸中の幸いといったところ。
辺り一面、レスキュー車両等のサイレンが響き渡る中、葛城二佐は担架の上で目を覚ました。
付き添っていたのは加持リョウジである。

「生きてる…」目を覚ました葛城二佐の第一声であった。

「良かったな…葛城」加持はそんな葛城二佐を見て安心した様子で呟いた。

目が覚めて少し間を置いた葛城二佐はふと親友の事を思い出した。

「リツコは?」「心配ない。君よりは軽傷で済んでいる」

「そう…良かった。サクラさんは?三号機は?」

加持の返答にほっと胸を撫で下ろすが、一番の懸案の三号機の事になると加持も黙るしかなかった。
そんな加持を見て葛城二佐は涙を零す。「まさか…使徒として?」

「ああ、使徒として処理されたよ…弐号機に…」「なんですって!?」





その日の夜、式波・アスカは冬月副司令にパイロットを降りる旨の上申書を提出し、ネルフを去って行った。
今の彼女はエヴァという兵器に疑いを持ち始めていた。
何よりも自身よりも使いこなせていた碇サクラという存在が使徒として操られるなど思ってもみなかったのだ。
そしてそれを殲滅せざるを得なかった自身の無力さがパイロットを降りる決意をさせたのだ。
そんな彼女が向かった先は赤木リツコと伊吹マヤが居る特殊隔離施設。




特殊隔離施設に碇サクラが収容されていた。細胞組織等に残った使徒の浸食の痕などがある彼女は此処で適切な処置を施していたのだった。
その施設に急いで駆け付けたアスカは赤木博士に静止させられる。

「アスカ。此処は貴女が立ち入って良い場所ではありません」

「そんな事どうだっていいでしょ?第一、私はサクラを看てやる義務ってのはあるんじゃない?」

そのアスカの有無を言わさぬ姿勢に赤木博士もため息を漏らして好きにするように言った。

「判ったわ。但し、見ているだけよ?何も出来ないのは貴女も判っているでしょ?」

その言葉にアスカは静かに窓際まで駆け寄って『碇サクラ』が居る暗部を覗き見たが、その禍々しいほどの施設とあって絶句するしかなかった。

「さっき到着して細胞組織の浸食痕、使徒からの精神汚染の可能性等を鑑みて当分の間、此処で隔離するしかない」

赤木博士は診断結果をアスカへ告げたのだった。その横で慌てて伊吹が赤木博士へ問う。

「万が一、処置って事は無いですよね?」

「それは無いわ。彼女は悪い言い方をすれば貴重なサンプル体。そんな彼女を処理できるわけはないわ」

アスカはそのやり取りに明らかに不満を持った。

(サクラはどんな事になったってサクラだわ。私はそう信じるんだから)






月のタブハベースではこの予期せぬ『惣流・アスカ』の戦線離脱で混乱に陥っていた。

『まさか、あの『惣流・アスカ』が使徒に汚染されてしまうとは…渚よ。この修正どうなる?』

『左様、我々が目指す【人類補完計画】は彼女なしでは達せられないのだよ』

「問題は在りません。最悪、僕がその時のトリガーの役割を果たす…それでいいじゃないですか」

『確かにそれも視野には入れている。彼女のほうが確かなのだろう?我々にとって不確定要素は極力排したいのだ』

『今までも彼奴等の好き勝手によって計画に大幅な遅延等が発生しておる。これ以上不確定要素は増やしたくはない』

「なら、計画を前倒しして僕がこっちのアスカ達に助太刀でもしてみるかい?今の僕に勝てるのは『惣流・アスカ』だけだから」

くすりとカヲルは笑いながら、モノリスへ問いかけた。

『仕方あるまい…渚よ。すまぬが彼奴等の元へ向かってもらう』

モノリストップがそう苦心の表情がモノリス越しからも判るほどであった。







ネルフ本部発令所では伊吹らオペレーター達が今後のエヴァ運用体制等の調整に入っていた。
現在、エヴァ搭乗可能として登録されているのは綾波レイただ一人なのだ。
次の使徒がいつ来るか判らぬ状況で、しかしこの非常事態に彼らオペレーターチームはてんてこ舞いである。

「サクラさんもアスカも戦線離脱…まさかアスカがエヴァから降りるなんて思ってもみなかったな」

「レイも隔離施設に来ていたのよ…アスカと少しだけお話したそうよ」

「結局説得は無理だったって事か」

「アスカ、『サクラさんにずっと付き添う』ってレイに話したみたい」

「しかし、これでまたパイロットは一人きりか…次の使徒戦不安だな」

「『振り出し』に戻る…どころか、かなり事態は深刻よね…。
サクラさんとアスカが居ない今、レイだけじゃ不安よ」

「そうだな、冬月副司令も頭を抱えていたよ…。
でもちょっとした裏ソースであるんだが近いうちに新たな適格者が来るらしい。
それも適格者初の男の子だそうだよ」

「え、マルドゥック計画の最終段階ってまだのはずじゃ…?」

「上もこの異常事態に躍起になっているんだろう。
未だその存在を隠している『ゼーレ』とかいう上層組織からの出向らしい」






その頃、サクラとアスカが通っている第壱中学校でもその話題が上がっていた。

「碇さんと式波さんがネルフから脱退したってマジなんか?」

「ああ、なんでもネルフのやり方に異論が在ったらしい。ただそれ以上は戒厳令で閲覧不能だったよ」

鈴原と相田の二人からの情報ソースは瞬く間に第壱中全校生徒へ広まった。
『今彼女らがどこに居るのか』といった好奇心や不安になる生徒が続出したのである。
だが、それを制したのは情報を渡した彼ら二人。

「碇さんと式波さんは大丈夫や。彼女らがそんな一度や二度の失敗でへこたれる訳ないで」

鈴原の言葉は他の生徒達には威力がある。それほどまでに彼女らとの付き合いがあるからだった。
しかし、そんな話もここまでだった。緊急放送によって避難せざるを得なくなったのだ。

『只今、日本政府より非常事態宣言が発令されました。緊急条例に基づいて地下シェルターへ避難を開始してください』

この放送は鈴原たちにとって今一番聞きたくなかった放送である。
彼らは知っているのだ、今エヴァが扱えるのは綾波レイただ一人という事実を。







そんな外の様子を全く知らないアスカはただひたすらにサクラが居る隔離施設でじっとサクラが目覚めるのを待っている。そんな中、黒服の男性が数人やってくる。

「式波・アスカ・ラングレー大尉。エヴァの出撃命令が出されている。
今行けば先の問題を不問にすると碇総司令から言を貰っている」

そんな黒服たちにアスカは無言を貫き通した。それは完全なる否定である。そして彼女は呟いた。

「私が弐号機に乗らなくても機械でやってくれるでしょうに…」

その言葉を聞いた黒服たちはすぐに引き下がり、総司令に連絡を取ったのだった。






アスカが無言で否定した同じ時、既にサクラとの協力によってスパイ活動をしていた真希波が行動に移していた。

(サクラも式波さんも居ないとはね…こりゃ楽しい舞台じゃないの…。
さてと式波さんの機体に在るダミーシステムを欠陥品にしたし…。
後はお呼ばれされるまで待つしかないかな)

そう、真希波は事前にサクラからの任務を達成していた。
サクラはある程度こうなる事を予期して、ダミーシステムを動作不能にさせるという事を真希波へ任務として願っていたのだった。






突如として現れた使徒は今まで以上に露骨な姿である。第三使徒を覚えているだろうか。
あの形に似せた龍のような形状に、体躯一面、光の粒子を纏って彼らの弱点であるコアを隠蔽しようという努力の賜物も存在していた。まさに難攻不落な龍である。

「これが第十の使徒…死海文書外典に載っている使徒とイメージが違うが…」

「ああ、既に我々が予期したシナリオが通用しなくなっている。やはりサクラが何か知っていたかもしれん」

発令所最高層に陣取る司令と副司令はこの状況に冷静を保つのに精いっぱいだった。
しかし、ゲンドウが思っていたことは筋違いである。
サクラもまた、本来の第十の使徒はサクラが一番の敵として認めているゼルエル似の最強の拒絶タイプ型であるとゼーレ寄りの死海文書外典で知っていたのだ。
だが、この使徒はそれとは異質。
強いて言えば外見からしてサクラが知っているアルミサエルのような光を纏いコアを隠した感じを受ける外装付きのベタニアベースに居た第三使徒といったところである。
それも空を飛ぶから始末に負えない。

「第一種戦闘配置…目標の分析は終わっているか」

冬月がオペレーターに向かって確認を取る。

『分析パターン青、使徒に間違いありません』

オペレーターの確認完了の合図を以て発令所に緊張が走る。ゲンドウは額の嫌な汗をぬぐいながら努めて冷静に号を掛けた。

「第一種戦闘配置、弐号機はダミーシステム換装後、直ちに出撃。零号機パイロットもアラート待機だ」






その騒然とした中、対応に追われていたネルフ本部発令所より遥か遠くのタブハベースでは渚カヲルが新型プラグスーツを装着してその時を待っていた。

「やれやれ、シンジ君の父親も無謀な事をするよ…さて、時は来た。
惣流・アスカの奪還は僕の使命さ。彼らにアスカさん達の思いを潰すことはこの僕が許さない…」

『地対空迎撃戦用意』発令所のオペレーターが号を掛け国連軍が使徒へ攻撃を加えていった。
冬月はその詳細をオペレーターの一人へ確認する。

「目標は?」『現在、侵攻中。旧小田原防衛線を突破!飛行速度が戦自保有の戦闘機よりも速いです』

固定砲台の砲撃も敵はATフィールドで防御するのではなくその俊敏な体躯を使って回避していくのだ。これまでの使徒とは異質なものである。
しかし、使徒も回避だけではと思ったのか徐に体躯を捩じらせ、自身を回転させた。
その結果、戦闘機は巻き込まれ、ATフィールドを纏った風圧は固定砲台等をも巻き込んであたり一面を瓦礫の山にしたのだ。
使徒がついに第三新東京市中心部へ侵攻した同じ時、ゲンドウと冬月は凶報を耳にした。
『ダミーシステムの使用不可、完全なる不具合』という異常事態である。

「やはり、サクラは何かを知っていたか…」

ゲンドウは既に目星を付けていた。当初よりネルフの在り方に疑問を抱いていると感じてマークはしていたのだ。
だが、どうやってかは判らないがネルフのシナリオを徐々に壊していったのはサクラだと感じた。

「…碇、どうするのだ。レイ君だけではあの使徒に勝てるどうか判らないぞ?」

「冬月先生…真希波を呼ぶ…」

碇ゲンドウはネルフ側の最後の適格者、真希波・マリ・イラストリアスを招聘する決断をした。
それに伴って弐号機のパーソナルデータを書き換える作業に入ったのだった。





黒服の男たちは急いで真希波が居る区画へ走っていく。すると、丁度良いタイミングで真希波が現れた。

「真希波・マリ・イラストリアス。総司令から出撃命令が出された。弐号機へ搭乗しろ」

その言葉に苦笑しつつ応える。「了解、やっと出番が来た♪」



真希波は弐号機があるケイジへ小走りで向かった。何より先ほどちょっとした細工を施してすぐの命令である。
マリの予想よりも若干早いお呼ばれで内心では冷や汗を流しているところ。

(あっぶなかった〜。もうちょっと命令が早かったら細工できてなかったじゃん)




使徒は誘導型N2爆雷と戦っていた。この誘導N2爆雷は高性能である。敵と認識すれば最後の最後まで目標を追い続けるのだ。
従って第十使徒のその俊敏な回避も大変苦労していた。そんな中で二基の誘導型N2爆雷が使徒へ当たり爆発を起こした。



葛城二佐もまた病み上がりの身体をおして、作戦指揮へ合流した。

「総力戦よ。要塞都市全ての迎撃設備を特化運用!僅かでも良い、食い止めて!」

そんな中で弐号機が戦場へ移送されるのを葛城が認めた。

「弐号機?アスカが乗っているの?」その葛城二佐の言葉に発令所オペレーターは否定する。

『いえ、乗っているのはユーロ支部の真希波・マリ・イラストリアスです』

その返答に困った顔をする葛城二佐。

「ちょっとあの子が乗っているって訳?あの問題児が?ユーロへの要請は済んでいるのよね?」

『はい、先ほど渋々といった感じでしたが許可を得ました』

「判ったわ。弐号機はジオフロント内で待機。レイもアラート待機から零号機プラグ内での待機へ移行!」

その葛城二佐の指示にレイとマリは了承する。

『OK、綾波さんだったけ?お互い、頑張らないとにゃ!』

「ええ、サクラさんと二番目の子の分も…」

使徒は更に追撃をこの要塞都市に加えていたが、誘導型N2爆雷は既に効果が見られないと判断されほぼ国連軍は詰んでいた。
使徒に通常兵器がこれほどまで効かないとなるとこれ以上は税金の無駄という事にもなりかねないのだ。
使徒はそんな国連軍を見切っていたのか反撃を加えていた。国連軍が保有する砲台を全てなぎ倒し、要塞都市を瓦礫の都市へと変貌させていった。
使徒は更に頭部から破壊光を照射し、ジオフロント内への侵入をも狙い始めていたのだ。

「まずいな…碇」「ああ、我々に残された時間は無い…」

冬月とゲンドウは額を伝う嫌な汗を感じていた。



発令所は指揮系統に混乱を来し始めていた。

『目標、さらに増幅機能によってジオフロント内への侵攻を開始。二十六の特殊装甲板融解!』

その言葉にさらに冬月が呻く。

「二十六もある特殊装甲が一撃で融解されるとは…」

オペレーターの衝撃的な報告と同じくして発令所に葛城二佐が到着する。

「っち、ジオフロント内での決戦になりそうね…。真希波さん、お久しぶりね。判っていると思うけど単独先行は認めないわよ?」

真希波と葛城は知り合いらしい。その中で彼女が危惧するのは真希波の性格だった。

「了解♪んじゃまぁ、あの第三使徒っぽい何かを倒してくるか♪」

その通信をしていた最中、発令所の警報音が鳴り響く。

『目標、ジオフロント内へ侵入!エヴァ弐号機と会敵します!』





弐号機エントリープラグ内に居る真希波はふとサクラからの注意を思い出していた。

『マリ、貴女が乗るっていう弐号機にはちょっと特殊な装置があるらしいって情報、知っている?』

『ん?ああ。裏コードの事?それがどうしたの?』

『第十の使徒にはそれを起動させないと勝てないわよ…これははっきりとしているの。
無茶な戦法でもなんでもいい。あの使徒だけは必ず殲滅して…』

真希波はサクラの表情を察してかその裏コード起動についてはサクラの意向に添う形をとることに決めていた。

(プラグスーツも新型だし、アスカの弐号機に乗れるっては嬉しいなぁ。
さてと…サクラさんの事もあるんだけどありゃ大変な敵っぽいわ…。二十六の特殊装甲を一撃で消し去った使徒か)

「第五次防衛線を早くも突破…速攻で倒さないと本部がパーじゃん」

龍の頭のような部位がジオフロントを覗きこむとそのまま俊敏な体躯がうねり出し、弐号機へ駆けていく。
其れに対して弐号機は二挺のライフルを使って応戦するが、この使徒のATフィールドの強さは伊達ではなかった。
それは即ち、あのサクラの知るゼルエル以上の拒絶でもある。それを見せつけるかのように第十使徒は回避するのではなくそのまま受け止めていったのだ。

「ATフィールドが強過ぎるよ…。こっからじゃ埒があかないじゃん」

真希波はそうボヤキながら二挺のライフルを諦め、新型兵器、銃剣型の武器サンダースピアーを手に取り、使徒に向かって走る。

「これで行きますか。にゃ!」

至近距離まで使徒に近づくとサンダースピアーから短剣を発射させる。
使徒はそれを強力なATフィールドで防御するがその反動であたり一面地響きに包まれる。その時、漸く零号機がジオフロントへ現れる。

「弐号機の人。大丈夫?」「こっりゃ、ちょっと難しい相手だよ?」

通信をしていると、使徒は大きく咆哮をあげると、たった今やってきた零号機を巻き込みながらあたり一面を焼け野原にさせたのだった。



その衝撃は発令所にも届くほどであった。『本部地上施設消滅!第三基部損壊!』

「まずい、メインシャフトがむき出しに…」

愕然とモニタを見やる発令所に居る人達の中で、冷静さを何とか保ちつつ、オペレーターの報告を逐次聞いていたゲンドウと冬月はこの状況を打破できる術を失っている事に気が付いていた。

「終わりかね…?」「ああ、我々の負けだ…」





そんな発令所の様子と違って弐号機は最後の足掻きを実行した。

「いてて…零号機パイロットも応答無し…か。さてとサクラさんのご要望通りに成っちゃったなぁ…。
ヒトを捨てたエヴァの力か。見せてもらうじゃない!モード反転!裏コード、ザ・ビースト!!」

真希波がそう指示を出すとプラグ内が一転暗くなり弐号機は徐に拘束具を次々に外していき、禍々しいほどに姿形を野生的にさせていった。
それは奇しくもダミーシステムのような様相になっていく。

「我慢してよ、エヴァ弐号機。私も我慢する!」

通信もままならない発令所では生きているモニタを使ってその弐号機の姿に見入っていた。

『エヴァにこんな機能が?』『リミッター外されていきます。全て規格外です!プラグ内モニタ不能…ですが』

「そうね、彼女はプラグ深度マイナス値。精神汚染も厭わない覚悟の様ね」『ダメです。危険すぎます!』




「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ!!」

真希波がそう言い放ち発令所のモニタは切れた。野性的になった弐号機はそのまま使徒へ咆哮しながら突進して、使徒が張っているATフィールドを次々に破っていく。
しかし、この使徒のATフィールドは野生的となった弐号機よりも更に強固なものだった。ガラスを割るように幾度となく攻撃を加えるが決定打になるほどではなかった。


零号機は既にケイジへ緊急収容されてしまった。零号機も既に修復不可能なほどにダメージが蓄積されており死に体と化していた。
綾波もまた重傷を負っており、戦線復帰は絶望的であった。弐号機もまた絶体絶命のピンチに陥った。
幾度となくATフィールドをガラスのように割るのだが使徒との我慢比べでしかないのだ。
ふと使徒は体躯を翻すとそのまま弐号機へ突進してきた。突如として反撃した使徒に対して、若干冷静さを失っていた真希波は反応が遅れてしまったのだ。
そのまま弐号機は左腕を失い、また頭部の一部も欠損するというダメージを受けてしまったのだった。
そのダメージは真希波へも伝わっており、痛みに耐えつつ何とか態勢を立て直そうとするが、時すでに遅しであった。
使徒はとどめを刺すかのように弐号機へ追撃にかかったのだ。




発令所に居る皆が全員が覚悟を決めていた。
既にこの使徒を対処するだけの力が残っておらず、さらに言えばネルフにあるシステムもほぼ壊滅状態の中であったからだ。

「エヴァ獣化第二形態。ヒトを捨て闘争に特化させても勝てない…これが私たちの限界なのね」

真希波もまた覚悟を決めていた。これでこの戦いによって人類は滅亡するという予測を以て。
だが、その衝撃が来なかった。ふと見上げると何か禍々しい槍が使徒に突き刺さっていたのだ。



発令所は更に息を呑んだ。突如として新たなエヴァが登場したのだ。
その中でそのエヴァを知るのは総司令と副司令。タブハベースで見た件のMark’06である。

「碇?」「ああ、ゼーレの切り札。ゼーレエヴァ適格者名簿01渚カヲルだ」


Mark’06に乗るカヲルは第十使徒を見て呟いた。

「惣流さんが居ない今この使徒に勝てるのは僕だけだよ」

遂に現れしサクラが知る最後のシ者『渚カヲル』。彼が現れたとき全て急転したのだった。



ヱヴァンゲリヲン新劇場版〜ASKA REVERSE〜『Quickening〜終局〜』江、続劇。






Quickening〜終局〜予告

突如現れたエヴァ六号機とそのパイロット。
閉鎖を余儀なくされた第三新東京市。
L-EEEへ目指すエヴァ六号機。
六号機は躍動し、残りの使徒を次々と殲滅していく。
そして完成されたエヴァ八号機とシナリオ完遂を急ぐゼーレ。
その完成されしシナリオと抗う少女達と目覚めた謎の女性。
全ての舞台が整った時終局へと向かう。
果たして、生きることを望む人々の物語は最後に何を齎すのか…。

マルシン牌処女作堂々の完結編始動!!

次回、ヱヴァンゲリヲン新劇場版〜ASKA REVERSE〜最終幕『Quickening〜終局〜』

さ〜て♪この次もサービスしちゃうわよ♪






To be continued...
(2011.12.17 初版)


(あとがき)

本作品を閲覧戴き誠にありがとうございます。

本作品は文字通りヱヴァンゲリヲン新劇場版の
再構成及び旧劇アスカ逆行という書き手も読み手も
一時は無謀とも思える作品を造りだしたマルシン牌です。

執筆開始前より無茶無謀な事をするという不安を以て
執筆し始めましたが、こうして破幕まで完結できた
事に多少の精神的な面で楽になりました。

今回、この作品は他サイトでも閲覧ができます。
折り入って、ながちゃん氏に掛け合いこうして
このサイトでも執筆出来る喜びは大変なモノがありました。

さて、本編では多少強引ではある箇所は散見していますが
次回は遂に最終幕となります。
未だ、原作は封したままの私が考えた完全オリジナルのエヴァの大団円と
なることは執筆当初からの目標でもあります。

エヴァ搭乗適格者達やネルフ、ゼーレの物語はどうなっていくのか
若輩者でありますが最終幕ご期待のほどお待ちください。
完結編は2012年1月末より始動致します。
閲覧ありがとうございました。



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