第三話
presented by 美堂翔様
「あ、もしもし?ヘブンさん?」
マナは自分の携帯で電話をしている。
『あら、マナちゃんじゃない。珍しいわねどうかした?』
「シンジの仕事の仲介をして欲しいの・・・・・・・・」
『あら?シンジ君からの要請なんて珍しいわね・・・・OK。場所は?』
「第3新東京都市・・・・・・・・・NERV・・・・・・・」
『了解。明日向かうから・・・・・・』
「はい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・俺に何をさせたい・・・・・・・・親父・・・・・・・・」
シンジは病室の天井を見ながら呟く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シンジは目覚めてからゲンドウがなぜ自分を呼んだのかを考えていた。
・・・・・・・・・本当に人類の為か?・・・・・・・・・・・・否・・・・・あの臆病な男が人類のためなどと言う大義名分で動くはずがない。やはりEVA初号機にある母さんの魂が関係しているのか?・・・・・・・・・・・・・それに初号機・・・・・・・・俺はアレをどこかで見た事が有るはずだ・・・・・・・・・・・どこで見た?・・・・・・・・・・・・・・無限城に行く前・・・・・・・・・・・・・そう、俺がまだ叔父の家に住んでいる時か?・・・・・・・・・・・・嫌もっと前だ・・・・・・・・・アレは・・・・・・・・・・・・
シンジの思考は扉をノックする音で遮られる。
「はい。」
シンジが返事をすると白衣を纏った金髪黒眉・・・・・・・っと失礼。赤木リツコが入ってくる。
「調子はどうかしらシンジ君?」
「いえ、特に何も・・・・・・いつも通りです。」
「そう、ならこれから幾つか質問をするけど良いかしら?」
「ええ、良いですよ。ただしそちらが一つ質問する度に俺も一つ質問させてもらいます。無論俺が答えた数だけ答えてもらいますよ因みにウソついても分かりますんで。勿論俺もウソはつきません・・・(うそだけど・・・・・・・)」
シンジはそう言ってリツコにパイプイスを進め自分も上半身を起こす。
「わかったわ。最初にエヴァに乗った時の感じはどうだった?」
「感じ?ですか・・・・・・・・・そうですね・・・・・何か意志のようなものを感じました。」
「他には?」
リツコは質問を続ける。
「・・・・・・・・後は・・・・・・・得に何も・・・・・・次は俺の番ですね?もしかして今の質問は母さんを感じたと言って欲しいのですか?」
「いえ、率直な意見が聞きたかっただけよ。」
「(ウソか・・・・・・・・)まだ俺の番ですね。親父は何を考えているんですか?」
シンジは魔眼の能力の一つで(非公開)相手の心を読むというか見る。
「人類の滅亡サードインパクトを阻止するためよ。」
「ウソですね・・・・・・・・(これは突き詰めておこうか)。」
「なぜそう思うのかしら?」
リツコは眉をひそめる。
「今ので又質問一つ追加ですね。簡単ですよあの臆病な人がそんな大義名分で動く訳がない。あいつは自分にメリットがあることしかしない・・・・・・・・」
「人類を守る事はそのまま自分を守る事に繋がるわそれでは不服かしら?」
「わかりました。(う〜ん裏が有るなこれは・・・・・・・・・・・後でMAKUBEXに調べてもらおう・・・・・・・)後は最後にまとめて質問しますので先にどうぞ・・」
「わかったわ。あの時どうやってあの強化ガラスを割ったのかしら?」
「簡単ですよあのガラスを『殺した』んです。」
「殺した?」
「そう、俺の目は特殊でしてね。なぜこうなったのかは知りませんが。非常に特殊な超能力。概念武装?の一種で、万物に内包された死の概念を、線や点として視ることのできる魔眼。その魔眼の力によって見えた線や点を切る・突くことにより、その存在そのものを死に至らしめることができる能力らしいですよ。」
「つまり、ガラスが割れたから死んだのではなくガラスが死んだ為に割れたと言うこと?」
「ま、そうなりますね。」
「次にミサトの銃弾はどうやって受け止めたのかしら?人がどんなに己を鍛えても神経はそうはいかないわ。」
「あれも魔眼の一つです。知っているんでしょう?俺の通り名」
「ええ、最強の目を持つ仕事屋・・・・・・・・福音の魔眼でしょう?」
「ええ。他に何か聞きたい事はありますか?」
「いえ、それでA・Tフィールドを切った理由も分かったから特に無いわね。」
「それじゃ、俺の番ですね?その前に・・・・・・・・」
・・・・・・・・・リン・・・・・・・・
病室に鈴の音が響く。
「これで良し・・・・・・」
「今何をしたの?」
「目や耳を塞いだでけです。まずなぜ俺の質問に正直に答えない?」
シンジのけはいが変わる。先ほどの穏やかなけはいは無く裏の世界で動く時のけはいだ。
「な、何を・・・・・・・・・・・」
リツコは動揺する。
「もう一度聞きますが親父は何を考えている?そしてどうして・・・・・・・・母さんの魂が初号機にある?」
「それは・・・・・・・・・・・」
「初号機に母さんの魂があるのはおおよそ想像がつくどうせEVAの実験中にEVAに取り込まれたのだろう?
おぼろげだがその時の事をさっき思い出した・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「そしてあの親父だ・・・・・・・・・・・・・どうせ母さんに会いたくてたまらないんだろう?
臆病で寂しがり屋だからな・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうせあの親父の事だからサードインパクトが起きる時のエネルギーでも使って母さんを助けるつもりだろう?今直実行しないのは駒が足りないのかそれともNERVの裏にもっと大きな組織があるのか・・・・・・・・・・・・違うか?」
「・・・・・・・・・・・・・・ち、違うわ・・・・・・・・・」
あまりの事にリツコは声が裏返っている。
「・・・・・・・・・・・大体は合ってるか・・・・・・・・・次に赤木リツコ・・・・・・・・・・・・・・あなたは何故そうまでして親父に尽くす?あいつの目にあるのは母さんと会う事だけ・・・・・・・・・・・いくらあなたが尽くしてもあいつは邪魔になれば容赦無く切り捨てる・・・・・・・・・・・それとも無理やり協力させられているのか?・・・・・・・・そうだな・・・・・・例えばいきなりレイプされてそれをネタに脅されているとか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「沈黙は肯定と取らせてもらうぞ・・・・・・・・・」
そこまで言ってシンジのけはいが再び変わる。
「赤木さん・・・・・・・・・・・・俺と組みませんか?」
「え!?」
「俺はあの男を許せません・・・・・・・・・・・・己の目的の為に使える物は使い不要に成れば捨てる・・・・・・・・・・・・それに・・・・・・・・似てるんですよ。今のあなたは昔の俺と・・・・・・・あの頃は人の顔色ばかり伺ってた誰かに捨てられるのが要らない人間だって思われるのが嫌で・・・・・・・・そんな俺の姿があの男に捨てられたく無いと言うあなたの姿と重なってね・・・・・・・・・・・」
シンジは微笑むだがその笑みは悲しみを写していた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
リツコは無言だ。
「でも俺は変わりました・・・・・・・・・・・・マナのおかげで・・・・・・・・・・・・・3年前まで俺は無限城であいつに会って・・・・・・・・・・話して・・・・・・・それまでの俺はあの場所で我武者羅に戦って傷つき・・・・・・人を殺して自分も傷つけて・・・・・・・・・・・・・そんな俺を救ってくれたのがマナでした・・・・・・・・・その後VOLTSに入って多くの人と触れ合って初めて思ったんです・・・・・・・・『生きていて良かった。俺には帰る場所があるんだって』ね・・・・・・・・・」
シンジがそこまで言い終わると突然リツコはシンジを抱きしめる。
「辛かったのね・・・・・・・・・・・今まで・・・・・・・・」
リツコは涙を流して話す。
「・・・・・・・・・でも今は幸せです・・・・・・・・・・・」
シンジは笑って答える。
「良いわシンジ君。あなたと組むわ。」
リツコはシンジを離すとシンジの目を見据えて答える。
「いいんですか?引き返せませんよ?」
「覚悟ならちゃんと出来ているわ・・・・・・・・それにあの男にこのまま利用されて死ぬなんて私のプライドが許さないの。」
リツコは笑ってウインクを決める。
「赤木さんごめんなさい・・・・・・・・・・・・」
シンジは目を伏せる。
「実を言うと俺の眼は相手の知られたく無い事とかも見る事ができるんです・・・・・・・・・俺が見たく無いと思っても見えてしまう・・・・・・・・・・・本当にごめんなさい」
シンジは頭を下げる。
「シンジ君顔を上げなさい。」
リツコは優しい口調だ。シンジは恐る恐る顔を上げる。
スパーン!!
病室に軽い音が響く。
「・・・・・・・・・・・・・あなたが私の心を覗いた事は許さない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
でもね、あなたのその『眼』のおかげで私は変わる事ができる・・・・・・差し引きしてもプラスよ
でもね・・・・・・・・・・・私の心を覗いた料金は取らないとね?」
「はい。」
シンジは頬を抑えながら答える。
「・・・・・・・・・・・・・・赤木さん。」
「リツコよ・・・・・・・・・」
「え?」
「リ・ツ・コ。」
「あ、はい。リツコさん。親父に言っておいてください・・・・・・・・明日仲介者と契約に行くってね。」
「ええ、わかったわ。」
リツコはそう言うと立ちあがり出て行こうとする。
「そういえばシンジ君・・・・・・・・・住む所はどうする?」
「特に希望は無いですがあえていえばマナと隣同士か一緒に・・・・・・・・・・・」
「それならマナちゃんと一緒に私の家に来ない?」
「良いんですか?」
「ええ、一人で住むには広すぎるから私としてはあなた達と一緒に住めると嬉しいのだけど・・・・・・・・・」
「じゃあ、お願いします。」
「それからあなたの同僚が隣の病室に居るから気が向いたら会って上げて・・・・・・・・名前は綾波レイよ。」
「・・・・・・・・・・・分かりました。後で行ってみます。」
リツコはそう言うと病室を出て行く。
〜NERV会議室〜
「その腕はどうしたのかね碇君?」
人類補完委員会のメンバーの一人が尋ねる。
「問題有りません。」
ゲンドウはシンジに切り落とされた右腕をサイボーグ化していつもの体制で答える。
あの後すぐさまゲンドウの腕はNERVの最新のクローン技術を用いて修復が試みられたが失敗に終わり。その腕を機械化したのだ。普通に切り落とされたのであればNERVの技術で直す事はできるのだがゲンドウの場合は普通では無い。シンジの直死の魔眼で腕の結合自体が『死』んでしまった為こうなったのだ。
「そうか、15年ぶりの使徒。それの殲滅は賞賛に値するよ。」
「ありがとうございます。」
「だが初号機とNERVもう少し上手く使えんかね?先の戦闘による被害で国一つ傾くよ?」
「何でもあの玩具は君の息子に与えたそうではないか?それにその腕も息子にやられたと聞いたが?」
「問題有りません、所詮は子供です。」
「いくら子供と言えど君の息子は危険だ・・・・・・・・・『福音の魔眼』と言えば裏の世界でもTOPクラスの人物だ。」
「問題有りません、シンジは既に仕事としてEVAに乗る事を承諾して下ります。NERVの指揮下に入ってしまえば修正は可能です。」
「そうか、ならば何も言わぬ。」
今まで黙って居た人類補完委員会議長キール=ローレンツが口を開く。
「予算については考えておこう。解散・・・・・・・」
キールのホログラフとゲンドウだけがその場に残る。
「分かっているな碇?お前があらたなシナリオを作る必要は無い・・・・・・・・」
「は、分かっておりますキール議長。」
キールのホログラフが消えるとゲンドウは席を立った。
To be continued...
(ながちゃん@管理人のコメント)
美堂翔様より「エヴァンゲリオン『福音の魔眼』」の第三話を頂きました。
早々にリツコを抱き込みましたか。ちょっとばかし意外でしたね。
リツコも、アッサリとゲンドウへの妄執を断ち切ったし、シンジを抱擁する姿なんて、なんか良い人っぽいですよね。
でもこれで鬚の手駒がまた一つ離反・・・それに鬚は気付かない・・・包囲網がドンドン出来あがりつつあります。
右腕の欠損も良い気味、ザマーミロですよ。
シンジ君は、これからヘブンさんを介して、ネルフとの契約となるんでしょうけど、結構ボッタくるんでしょうね・・・(笑)。
何よりも、シンジ君がどんな条件、待遇を鬚に要求するのか、今から楽しみです。
物別れになったらなったで、鬚はいつもの強硬で強引な手段に出るだけだろうし、そうしたらシンジ君のほうも、VOLTSのメンバーあたりを第三に呼集するのかな?
ま、そうなったら面白いんですがねぇ♪(期待)
ようやくレイも登場(?)したし、続きが待ち遠しいですね。
次作を心待ちにしましょう♪
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