天使と死神と福音と

第肆章 〔Fate to turn around〕
V

presented by 睦月様


ブギーポップが振り向いた先にいたのは20代前半の女性だった。
肩甲骨の下あたりまで伸ばした黒髪が印象的だ。
顔はととのっていて硬質的な印象を受ける美人、服装は黒の皮製のライダースーツのようなつなぎを着ている。

「・・・俺を呼び出すとは・・・相変わらずいい度胸してるなおまえ・・・それと俺の名前は霧間凪だ。」

目の前の彼女は男のような口調で話す。
ブギーポップも慣れているのか特に気にしない。

「そっちも相変わらずらしいね、5年ぶりかな?」
「ま、そのくらいにはなるだろう・・・・・お前が浮かんでこなくなって・・・」
「お別れも言えなかったが・・・期待なんかしちゃいなかったんだろう?」
「言いたかったのか?」

二人はそろって苦笑する。
お互いに二人の関係はそんな馴れ合いの関係じゃないことを自覚しているのだ。

「ところでどうやって入ってきたんだい?」
「運搬業者にまぎれて入った。あとはスーツを着ていれば誰の連れかなんてわからん」
「なるほど・・・・”いま”の僕のことは説明の必要はないだろう?」
「ああ、まさかネルフの重要人物とはな・・・しかしばれてないのか?監視されていると言っていただろう?」
「その点は問題ない、協力者がいる・・・君にも紹介しようと思っているんだが。」
「協力者?」

霧間凪はいぶかしげな顔で辺りを見回した。
自分が知る限りこいつはいつも単独で世界の敵を狩っていた。
今回自分に協力を頼んできた事さえ本来ありえない事なのだ。

「・・・どこにいるんだそいつは?」
「・・・・・・ここにいますよ」

その言葉に凪は思わず正面のブギーポップを見た。
そこにいたのはいつもの微笑を浮かべ、ブギーポップの格好をしたシンジだ。

「・・・・・おまえだれだ?」
「あ、わかりましたか?やっぱり付き合いの長い人は違いますね、今まで誰にも気づかれたことないんですが・・・・」

凪の言葉にシンジが嬉しそうに笑うのを見て凪は確信した。
目の前にいるのはブギーポップじゃないほかの誰かだ。
なぜならば

(あいつはこんな笑い方をしない)

凪の警戒している姿にシンジは苦笑する。
知らないのも問題だが知っているからこそ警戒してしまうのだろう。

「はじめまして霧間凪さん、碇シンジといいます。」

その無防備な言葉と笑顔に凪は毒気を抜かれた。
これがシンジと凪のファーストコンタクトだった。

混乱している凪が落ち着くのを待ってからシンジは現状を簡単に説明した。
エヴァの事・・・ネルフの事・・・シンジとブギーポップの関係と今の状況・・・・・etc
話が進むたびに凪の表情が厳しくなる。

「・・・・・・碇って言ったな?」
「は、はい」
「・・・あいつを出せ」

誰をと聞き返すまでもない。
凪に逆らう危険性を感じたシンジは素直に交代する。
シンジの気配が自動的なものを帯びた。

「・・・・・おまえ・・・・・素人を巻き込んだのか?」
「仕方なかったんだよ、選択肢が無くってね。」
「それにしてもやりようがあるだろう?!」
「残念ながらこのイレギュラーはどうしようもないんだ。」

凪の形相にブギーポップは飄々と答えている。
対する凪はどんどん険しい顔になって行った。

「それとも世界の危機をほっとけと言うのかい?」
「くっ・・・しかし・・・・」
「まってください」

いきなりシンジが体の主導権を奪って表に出てきた。

「ブギーさんに協力しているのはぼくの意思です。強制されてるわけじゃありません!」
「・・・そうは言ってもお前は自分から戦いを望んだわけではないだろう?」
「たしかにそうですが・・・」
「それとも”世界を救う”なんて英雄願望でもあるのか?言っておくがあんなのは漫画の中だけの話だぞ?」

凪の言葉は辛辣だ。
自分がとっくに普通という境界線を越えた生き方をしているのでその困難さも苦しみも実感として分かっている。
そしてブギーポップと共にあると言う事は強制的にこっち側に参加させられる事を意味している。
英雄になりたいなどとほざく勘違いをしたガキなど無駄死にするだけの世界だ。

「そんなことはいやってほどわかってますよ。伊達に5年もブギーさんと付き合ってません。」
「それならわかるだろう?主人公が死なないのはご都合主義の通るフィクションの世界だけだ。」
「ぼくは世界を守るなんて妄想は見てません。ただ自分や周りの人を守るための方法が他になかっただけです。」

凪がシンジの言葉に意外そうな表情をする。
予想外の答えだったらしい。

「自分や周りの人を守るため?そのためにエヴァンゲリオンってのに乗っているっていうのか?」
「そうですよ、他に理由が必要ですか?」
「・・・・死ぬかもしれないぞ?」
「守るということは死んでも守ると言う事ではありません。ちゃんと生きて帰ることまで含めてです。」
「本気か?」
「もちろんですよ。遠足でも言うでしょう?帰るまでが遠足ですって、それと同じですよ。」

シンジの答を聞いた凪は呆気に取られた。
目の前の少年は命がけの戦いを遠足と同じだと言ったのだ。
現実逃避や正しく現状を理解していないわけでは無い。
それを分かった上でのこの言葉

しばらく呆けていたかと思えば凪はいきなり笑い出す。
シンジの答がよほど面白かったようだ。

「クククククッなるほど・・・・・お前はわかっているんだな・・・・碇・・・・いや、シンジお前は面白い奴だ。俺が保障してやる。」

凪の言葉を聞いたシンジが再びブギーポップと変わる。
片方の瞳を細めるような左右非対称の笑いを浮かべた。

「どうだい?彼は面白いだろう?」
「ああ、面白い奴だ。なかなかいないぞ?案外当たりくじかもな?」
「・・・・人をくじ扱いしないでください。」

再びシンジが主導権をとる。
さすがにクジ扱いされると良い気はしない。

「シンジか・・・まぎらわしいな・・・・」
「仕方ないですよ、本来ぼくはブギーさんと同時に表に出る事は出来ないはずなんですが」
「たしかにな・・・・俺もそう思っていたんだが」

凪はシンジの言葉に首をかしげた。
真剣な顔にコマ送りのように瞬間で変わった凪はさっきまで大爆笑していた人間と同一人物とは思えない。

「以前の人は知らなかったんでしょう?」
「ああ、それは間違いない、前はあいつ女だったんだが気づいてさえいなかったと思う。あいつが出てくることでおこる矛盾は記憶の中で都合よく書き換えられていた。」
「そうですか・・・・・・」
「しかし・・・・まさか体の持ち主が起きてないと体の主導権が取れない上に精神の同調がなければ全力を出せないとは・・・・シンジ、お前よく生き残っていられたな?」

凪の疑問はもっともだ。
彼女も世界の敵や合成人間と戦った事がある。
その力や能力は明らかに人間を超えている者達が殆どだ。

これだけの悪条件のハンデを背負ってブギーポップと一緒に戦ってこれたというだけで十分に賞賛されるべき事だろう。

「最初はぼくは足を引っ張ってばかりだったんです。今生きてここにいるのはブギーさんのおかげです。」
「・・・・あいつがね、今はどうなんだ?」
「何とか足を引っ張らない程度には・・・ぼくもある能力が使えるようになったので」
「能力?・・・・・・・なんだそれ?」
「気になるかい?」

シンジと入れ替わったブギーポップが楽しげに聞いて来た。

「シンジ君の能力はなかなか面白い能力だ。」
「?・・・・・どういう能力なんだ?」
「ただ教えるのもつまらないな、ここはひとつ君の洞察力を試したい。」

ブギーポップは親指と人差し指と中指を立てて凪に向けた。

「これから3回シンジ君に能力を使ってもらう。」
「・・・・・それを見て俺に能力の正体を当てろって事か?」
「ご名答、乗るかい?」

凪はしばらく考えた後、不敵な笑いを浮かべた。

「・・・・・いいだろう」
「勝手に話がすすんでいますねえ〜?」

ブギーポップがひっこんだ代わりに出てきたシンジがあきれた声を出す。
はっきり言って彼は当事者だ。
なのに扱いがスルーされている気がするのは気のせいじゃないだろう。

「すまないなシンジ」
「ま〜割と毎回なんでいいですけれどね、以前からああなんですか?」
「ああ、まったく変わっちゃいない」

二人して苦笑した。
共通項があるとお互いの理解も早い。
特に二人は以前からブギーポップに振り回されてきたのだ。
しばし笑った後、凪が表情を引き締めたことでシンジも真剣な顔になる。

「では一回目・・・行きます。」
「・・・・・やってくれ」

凪の言葉と共にシンジの姿が凪の視界から消える。
あわてて周りを見回すが影すらない。

トン
「っつ!!」

不意に肩に置かれた手に凪は反射的に地面を転がって距離をとった。
振り返った視界にシンジの姿がある。

「大丈夫ですか?」
「・・・・・シンジか・・・・・お前今何した?」

凪が驚きの表情で見ている。
自分はシンジから目をそらしていない・・・なのにシンジは掻き消えたように消え、自分の真後ろに現れた。

「・・・・・距離をなくしたんですよ。」
「距離をなくした?・・・・・お前の能力は空間移動か?」
「なぜそう思うんです?」
「お前が俺の背後に現れた瞬間、俺の周りの空気は動かなかった。高速移動なら風くらい起こるはずだ・・・なのにお前はいきなり消えて現れた。しかも距離をなくしたと自分で言ったじゃないか?」

シンジは凪の説明に頷く。
かなり慌てていたはずなのに冷静にシンジの能力を分析していたようだ。
凪も只者じゃない。

「・・・残念ですが違います。能力を応用すれば同じ事が出来ると言うことです。」
「・・・そうか・・・」
「大体、ぼくの能力で移動できるのは30Mといったところでしょうか・・・」

凪は冷や汗をかいた。
シンジは嘘を言ってるようには見えない。
つまりシンジの能力は空間移動すら応用で出来てしまうと言う事だ。
得体が知れない。

「二回目、いいですか?」
「・・・・・・ああ」

シンジは凪の返事を聞くと手近なコンテナに向かう。
電子ロックのついた頑丈な物を選ぶと手を触れた。

凪は見た。
シンジがコンテナの取っ手に手をかけ能力を使ったように見えた次の瞬間、ロックがはずれコンテナの扉が開くのを・・・・

「・・・・・これも応用か?」
「はい、鍵の閉まった状態の物に使うとその鍵が開きます。」

凪は近寄ってコンテナのロックを確かめた。
確かに電子ロックで本来カードキーか指紋照合でないと開かないはずの代物だ。

「・・・・・確かめたいことがある。」
「なんですか?」
「・・・・・お前の能力は本当にひとつなのか?」
「はい」

シンジが嘘を言ってないのなら”空間移動もどき”と”開錠もどき”は一つの能力の応用と言う事になる。
だがとてもじゃないが共通点があるとは思えない。

(・・・もっと根本的ななにかだ。)

二つの共通点を考えるが思い浮かばない。
凪が悩んでるのを見たシンジが話しかける。

「ヒントはいりますか?」
「・・・もらおう」
「ぼくの能力は状況に干渉します。」
「状況?」

つまりシンジは状況に干渉して距離をゼロにし、鍵を開けたということだ。
シンジの言葉と能力で出来たことを考えていると凪はあることに気づいた。

「シンジ?」
「なんですか?」
「一回目はお前の能力で距離をなくして、二回目は扉の鍵が閉まっているのに能力を使ったら開いたんだよな?」
「そうです。神に誓ってもいいですよ?最も神様の使いを殺してきたぼくに加護があるかは疑問ですがね」

凪はシンジの言葉にしばらく考え込んだ。
漠然とある可能性が浮かんでくる。

「わかりましたか?」
「・・・・・・まさか・・・・・・いや三回目を見てからにしょう。」
「そうですか・・・・」

シンジは頷くと凪の目の前に立ち両腕を広げた。

「では最後・・・三回目は凪さんがぼくに攻撃してください」

シンジの言葉を聞いた凪は問答無用で突進した。
自分の予想が正しいならシンジには自分の攻撃が当たらない。
攻撃するということも”状況”のひとつだ。

疾走からそのまま空中にとび、蹴りの体制に入る。
対するシンジは微動だにしない・・・・・あたる。

「やはり・・・そういうことか・・・」

凪は見た。
自分の足がシンジの体を貫く瞬間、足はシンジの体をつきぬけそのまま体全てがシンジを通りぬけた。
凪はシンジの後方で危なげなく着地する。

「・・・見事な着地ですね、予想していました?」
「ああ、いま当たるという状況をなかったことにしたんだろう?・・・確信したよ・・・とんでもない能力だな?」
「そうでもないんですけれどね、では言ってもらえますか?」

シンジの言葉に凪は立ち上がっってシンジと向き合う。
少し緊張しながら凪は口を開いた。

「シンジ、お前の能力は打ち消しの能力・・・・違うか?」

凪の言葉を聞いたシンジは頷いた。

「正解です。ぼくは【canceler】と呼んでいますがね。現在進行形の状況をキャンセルする事が出来ると言うものです」
「・・・・・つまり一回目は俺の背後までの距離をキャンセルしたからその距離が一瞬でゼロになって瞬間移動のように俺の後ろに現れた・・・そうだろう?」
「はい、二回目はぼくが”扉に鍵がかかっている”と言う状況をキャンセルしたのでコンテナは鍵のかかっていない状況になって開いたんです。」
「そしてさっきは俺の攻撃が当たるという状況を撃ち消したのか・・・」

凪は深いため息をつく。
はっきりいってとんでもない能力だ。
敵として会っていたらどうなっていたか知れない。

「・・・参ったな・・・・なんでもありの能力じゃないか・・・・」
「違いますよ、確かに万能に近いですがね・・・・」
「何が違うんだ?」
「まず何かを生み出す事は出来ません。当然ですが、無いものを作り出したりは出来ませんね」
「まっそうだろうな・・・そうそう都合よくは行かないか・・・」

シンジは凪が理解したのを見て話を続ける。

「次に自分以外の対象に影響を与える場合対象物に触れている事が条件です。」
「・・・・何が出来る?」
「怪我をキャンセルしたり、さっき鍵を開けたのもそうですね。怪我はある程度まで”怪我している”状況をキャンセルして治せますが腕が吹っ飛んだとか足がもげたとかはさすがに無理ですね、それとなぜか死んだっていう状況だけはキャンセルできないんですよ」
「なるほどな・・・万能じゃないってことか」

シンジの説明に凪は何度も頷いた。
早々都合よくは行かないらしい。
それでも十分驚異的だとは思うが

「あと一度に使えるのは最大十二回までです。」
「なに?使用制限があるのか?」
「はい、大体2時間で一回づつ使えるように回復していきます。」
「・・・思ったより難しい能力のようだな・・・」

シンジの説明に納得がいったのか凪は顔を上げてシンジを真正面から見る。
それに応じるようにシンジにブギーポップが浮かんできた。

「どうだい?なかなかおもしろい能力だっただろう?」
「ああ、正直対抗策が思いつかん能力だな。」
「お互い理解しあったところで本題にはいっていいかい?」

凪とブギーポップの周りの空気が緊張する。
もともとこれが本題だ。

「・・・俺になにをさせたい?」
「とりあえずマルドゥック機関と言うのを調べてほしい。」
「なんだそれは?」
「その機関がシンジ君のエヴァのパイロットとしての才能を見つけたらしいが、正直胡散臭い」
「なるほど・・・シンジの話だとネルフもまっとうな組織とは思えんしな、あとは?」
「六分儀ゲンドウ、冬月コウゾウ、赤木リツコのプロフィールもたのむ」
「だれだ?」

凪の疑問にブギーポップはいつもの皮肉げな笑いで答えた。

「ネルフの悪だくみ3人組・・・・リツコさんはそうでもないと思いますが?」

途中からシンジが口を出したらしくブギーポップの口調がかわった。
同時に自動的なブギーポップの雰囲気もシンジの雰囲気に変わる。
事情を知る凪が見てもその早変わりは奇妙な光景だ。

「シンジ・・・・まぎらわしいし話が進まん」
「すいません」

シンジがひっこんだことで再びブギーポップが出てきた。

「すまないね、体の優先権は彼のほうが強い」
「・・・難儀な話だ・・・」
「たしかにね」

あきれた顔で自分を見る凪にブギーポップはいつもの皮肉げな笑みで応える。

「それで、その3人は何者だ?」
「ネルフの司令、副司令、技術部の責任者、それと調べるときに紛らわしいかも知れないが六分儀ゲンドウは少し前までは碇ゲンドウという名前だった。」
「碇?」
「そう、シンジ君の父親だ。」

凪がいぶかしげな表情をした。

「それはシンジが自分で調べたほうがいいんじゃないか?」
「・・・・・そういうわけにもいかない、なんせ彼を六分儀姓に戻し、勘当したのはこっちなんでんでね・・・」
「・・・・・聞いたほうがいいか?聞かないほうがいいか?」
「別にかまいませんよ」

ブギーポップの代わりにシンジが出てきた。
自分で話すつもりらしい。

「あの人は以前実験でぼくの母親を殺したことになっています。」
「っ!!」

凪が息を呑むがシンジは気にしない。
この話をしたときはみな凪のような反応をする。

唯一の例外はブギーポップだ。
「それは大変だったね」と軽く流されたのを覚えている。
シンジは気を取り直して話し始めた。

「10年位前になりますか・・・その後あの人はぼくを親戚に預けそのままほったらかし・・・・5年前までは墓参りであってましたがブギーさんとあってからは行ってません。だから第三に来たのが5年ぶりの再会ですね、しかも呼び出しの手紙が”来い ゲンドウ”というなんとも感動的な手紙でしたよ、」
「・・・そいつ・・・殴って良いか?」
「ご自由に、話を戻すとあの人は何かの目的のためにぼくを呼んだみたいです。」
「・・・・・目的?」

シンジは盛大なため息をついた。
はっきり言って身内の恥だ。

「何するつもりか知りませんがろくなことじゃないですよ。なんせ自分の息子を脅迫して駒にしようとしましたからね。大怪我した女の子を目の前に出してお前がエヴァに乗らないとこの子が乗るんだ!!心は痛まないか?!ってなもんです。」

凪の表情はすでに危険なものになっている。

「・・・・・もはや殴るだけじゃすまんな・・・」
「そのときは呼んでください。あの人には貸しはあっても借りはありませんから」
「・・・そうか・・・ほかの二人はどうなんだ?」
「冬月さんのほうは正直掴みきれてませんがあの人といつも一緒なのは間違いありません。リツコさんは会場で質問していた金髪の人で最近ほかに興味があることを見つけたみたいですね、二人とはすこし距離をとってるみたいです。まあ,あの人はクールぶっていますが本性はわかりやすい人ですよ。」

シンジは自覚していないようではあるが、凪は直感でリツコ興味の対象が目の前の少年だとわかった。
これほど謎だらけの人間が目の前にいればそれは興味を抱かないわけが無いだろう。

「わかった、その三人の情報はなんとかしよう。」
「おねがいします。ネルフ内部はぼくたちが調べますが・・・・あんまり派手に動くわけには・・」
「ああ、ただでさえ目立つ位置にいるんだ・・・・無理はするな」
「すいません・・・」

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シンジが管制室に戻ったときにはすべてが終わっていた。
モニターには停止したJAが映っている。
リツコの仕事は完璧のようだ。

「シンちゃん、遅かったわね」

ミサトの言葉に応えながらシンジは仕組まれた奇跡で停止したJAを見てぼーぜんとしている時田に心の中で謝り、早々に退席した。

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「・・・・・碇シンジ・・・・か」

地上で飛び去っていくヘリを見送る女性がいた。
名前を霧間凪・・・・・・炎の魔女だ。

「面白い奴だ・・・あいつ・・・本当に当たりくじをひいたのかもな・・・・」

凪の顔には愉快そうな笑みがあった。

やがてヘリは夕焼けの茜色の中に消えた。

こうして少年と死神・・・・・魔女は出会った。

それは邂逅であり再会・・・・・・

回り始めた運命がどこに止まるのか・・・・・・
それは神すら知らない・・・・・
決めるのは
老人ではなく・・・・
天使ではなく・・・・・
福音ではなく・・・・・・・

・・・・・・少年と死神・・・
なぜならば・・・


これは少年と死神の物語






To be continued...

(2007.06.16 初版)
(2007.06.23 改訂一版)


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