出会いの時は「はじめまして」
別れの時は「さようなら」

二つの数は等しくて…
一緒の時間は限りがあって…

笑って、怒って、喜んで…
重ねた思いの数だけ心に残る


これは少年と死神の物語






天使と死神と福音と

第拾参章 〔神友〕
T

presented by 睦月様







『それではお前はあの中でずっと眠っていたというのか?』

重い声が暗い室内に響く
室内にはモノリスが円を描くように配置されていた。
その中心には一人の少年が立っている。

「そのとおりです。」
『・・・ここでの偽称は死を意味する。たとえ子供だからといって容赦はされんぞ?』
「何を持ってあなた方がぼくの言葉を嘘と考えているかはわかりませんが、あの何もない真っ白な空間では他にすることがなかったんですよ。」
『・・・初号機のレコーダーは止まっていた。』
「だからなんです?」

ゼーレの召喚に応じてこの場所に出頭したシンジの答えはにべもない。
まったく臆することなく自然体で答えている。

『確認するが今言ったことに嘘は無いな?』
「もちろん」

シンジは笑顔で即答した。
もちろん大嘘だ。
正直に話す義理はない。

『信じられんな…』
「・・・どういう意味で?」
『何故そんな反抗的な態度を取るのかと聞いておられるのだ!!』

他のゼーレのメンバーがシンジとキールの会話に割り込んできた。
かなりいらだっているらしい。
口調が荒れている。

『人類を守るチルドレンでありながらネルフに所属せず。あまつさえ独断で動き、初号機を消失しかかるとは何事だ!!』
「・・・そちらこそ何を言っているんです?ぼくがネルフに所属しない事と命令を無視する権利は最初に六分儀司令とぼくとで正式に交わされた契約です。他人にどうこう言われる必要は無いと思いますけど?」
『生意気な事を言うな!!』
「文句なら六分儀司令にどうぞ、ぼくに文句を言われても困ります。」

かなりヒートアップしているようだがシンジは澄ました顔で平然としている。
こういうものは先に感情的になったほうの負けだ。
交渉ごとや話し合いにおいては冷静な人間が常に主導権を握ることが出来る。

『・・・もうよい』
『しかし議長・・・』
『よいと言っている』

キールのモノリスがたしなめると場に沈黙が落ちた。

『・・・ご苦労だったな、碇シンジ・・・下がれ』
「いきなり呼び出した上に報告書にもあることを直接ぼくの口から聞くなんて用心深いんですね?」
『我々はそういう立場にある。・・・碇シンジ、君にもそのあたりを自覚してほしいものだな』

その言葉にシンジは肩をすくめて答えとした。
モノリスを見回す片方の目が細められる。

「…一つだけ言っておこう。」

ブギーポップが表に出てきたようだ。
なにか言いたいことがあるらしい。

「あまり執着し過ぎると命の持つ本来の輝きを汚してしまう」
『『『『『……』』』』』
「恐ろしいのはわかるが誰もが受け入れていくものだ。…他人も…自分も…。」
『・・・・・・何が言いたい?』
「別に・・・生れ落ちる場所や在り方は選べなくても死に場所や死に方は選べるということだよ。」

そう言うとブギーポップの姿が消えて室内がモノリスだけになった。
ブギーポップが退席したのだ。

ブギーポップがいなくなった会議場・・・微妙な沈黙が空間に満ちる。
去り際に放たれた一言はゼーレを困惑させるに十分だった。

『な、何なのだあ奴は!!』
『まさか我らの秘密に気づいているというのか!!』

ゼーレのメンバーは口々にシンジの事を話し合う。
どうやら直接会うことでシンジの特異性を再認識したようだ。

『静まれ…』
『しかし議長…』
『言いたい事はわかっている』

キールが黙るのに合わせて他のメンバーも口をつぐんだ。
議長に逆らう気はないらしい。

『…今回は碇シンジの召喚がかなったのだ。碇シンジがどう言う人間性をしているかわかっただけでよしとしよう。』
『はっ、しかし六分儀に統和機構などの存在を知られてしまいましたが』
『かまわん、あれだけでは大した事はわかるまい』

統和機構はゼーレですらその存在の全貌を把握する事の出来ない組織だ。
調べるにしてもかなりの時間に加えて金と人が動く。
そうなればいくらゲンドウでも秘密裏にとは行くまい。
やりようはいくらでも有る。

『それよりも問題なのは初号機の方だ。』

キールの言葉と友に空間にモニターが現れ、レリエル戦において虚数空間から帰還した初号機が映った。

『…暴走だな』
『さよう、現に救出された直後の碇シンジには意識がなかったという。これは信憑性のある情報だ。』
『…遅れに遅れたがやっと第一段階といったところか…』

しばらく全員がモニターに見入る。
レリエルの体を引き裂いてこの世界に帰還した初号機・・・まるで悪魔のようだ。

『…しかしこれは本来ならサキエルの時点で達成されているはずのプロセスだ』
『たしかに、修正は早急に行われなければ行けない』

言うまでもないことだ。

・・・しかし具体的な方法はまだ無い。
光明すら見えない迷宮のような状態に部屋には沈黙が下りた

『…策は有る』

キールの声が暗い空間に響く。
他のメンバーは黙って次の言葉を待った。

『…次の使徒…バルディエルをつかってチルドレン達に精神的なストレスを与える。それによって遅延していたプロセスの挽回を図る』

その言葉に答えるものはいなかった。
沈黙・・・それこそが同意の証というように……

『全てはゼーレの為に』
『『『『『全てはゼーレの為に』』』』』

全てのモノリスが消えて暗い闇だけが残った。

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「お疲れ様シンジ君」

ネルフを出たところでシンジは聞き覚えのある声に引き止められた
振り向くと声の主はやはりミサトだ。

「でもよかったの?報告は私がするつもりだったんだけれど?」
「いいんですよ、あの人たちもぼくがご指名だったんですから」

シンジはにこやかに笑って答える。

「そう?まあシンジ君がそれでいいならいいけれど…」

ミサトは心配そうな顔だ。

「報告も終わったんだったら早く帰りましょ」
「そうですね」

二人は並んで駐車場に向かった。

今回、シンジがゼーレに直接報告を入れるのはゼーレから名指しされたものだった。

いきなり自分たちの上役から呼び出されれば何事かと思うだろう。
しかも幹部であるミサトですらその全貌を把握していない上位組織だ
心配する理由には事欠かない。

それを聞いたときにはミサトがシンジの代わりに報告する予定だったがゲンドウがそれを許さなかった。

それでも使徒戦の後で疲労しているシンジの負担になるとミサトは食い下がったのだがほかでもないシンジ自身が自分で行くと言い出した。
その理由は…

(あれがゼーレですか…暗闇で会議をするなんて悪者のセオリーを自覚していますね)
(しかも自分の姿を出さずにモノリスとは・・・用心深いというべきか臆病者達というべきか・・・)

シンジがゼーレの召喚に応じたのは自分の目で彼らを見るためでもあった。
世界の敵と言うわけではないが邪魔な連中ではある。
一度どんな人間か会っておくのも悪くないと言う考えからだった。

(それにしても“輝きを汚す”って言うのはどういう事です?)
(…彼らのうち何人かは生きているとは言えないかもしれない…)
(どういうことですか?)
(相当無理して命をつないでいるようだ。それは生きているというより生かされているというべきだろう?)
(声しか聞こえなかったのにそんな事までわかるんですね?)

シンジとブギーポップが話している間にミサトのルノーの前にたどり着いた。
二人はさっさと乗りこむとルノーはマンションに向けて発車する。

(死を恐れるというのは生きる者にとって当然の事だ。人間は時々死んだ方がましという人もいるけれどね…)
(…過剰な延命をしてまで生きつづけたいって事でしょうか?)
(それ自体は悪い事ではないかもしれないけれどあまり執着しすぎるのもね…この世界にあるもの全てにとって本当に平等なのは死だけだというのに…)

運転席のミサトがシンジに話しかけた。
ずっと黙っていたので心配したらしい。

「シンジ君?つかれた?」
「…ミサトさん、生きるって大変ですね…」
「い、いきなりなに?」
「なんとなくです。中学生の憂鬱ですよ…」
「そう?…まあ、大変なんじゃあない?死ぬときは一瞬だしね〜」

シンジは頷いて目を閉じた。
ルノーは家路に続く道を走る。
この道と同じようにどこまでも続くように見える道もいずれは途切れる

それが行き止まりではなく死であるというだけだ。
それは遥かな過去からつながる連鎖の絶対条件…

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薄暗い司令室・・・そこに二人の人物がいた。

「シンジ君を老人達に引き合わせたようだな?」
「・・・向こうからの指名だ・・・無下にも出来まい?」

司令の椅子に座ったゲンドウが正面に立つ冬月の言葉に答える。
感情の篭っていない言葉に冬月が肩をすくめた。
いつものことなので腹も立たないが・・・

「よかったのか?シンジ君が何かを知っているとしたらそれがゼーレにばれるかもしれんぞ?」
「問題ない、シンジと老人たちとの話の内容はこちらでもモニターしていた。特に目新しい情報もない」
「それならばいいが・・・」
「それより統和機構という組織に関しての調査はどうだ?」

ゲンドウの言葉に冬月が頭を振った・・・左右に・・・
満足のいく収穫はなかったらしい。

「一応、名前くらいはわかったがそれ以上となるとなかなか難しいようだ」
「・・・存在しているのは間違いないのか?」
「ああ、しかしその存在理由も目的も不明だがかなりの影響力があるようだな・・・」
「そうか・・・」

冬月の言葉にゲンドウが頷く。
もともとあまり期待していなかったのか落胆した様子はない。
自分たちより遥かに広い情報網を持つゼーレにも調べられなかった組織だ。
むしろ統和機構の存在を裏づけられただけで十分調査したかいがある。

「お前本当にこの組織がシンジ君のバックにいると思うのか?」
「・・・わからん、しかし可能性があるということは無視も出来んという事だ。」
「確かにな、補完計画も当初の予定を大幅に狂わせてしまっている・・・老人達はどうするつもりだ?」
「さあな、しかし計画は希望でもある・・・彼らにとっても我らにとっても・・・違うか?」

ゲンドウは黙って正面を見る。
その顔は微動にしない。

冬月は黙ってその横顔を見ていた。

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碇邸の夕食時
いつものメンバーが顔をそろえて食卓を囲んでいる。

レイに破壊されたシンジの家は大改装を決行し、シンジの部屋以外は全てワンフロアーにしてしまったためかなり広いスペースが確保されている。
厨房も再建されてまさに食堂とその管理人のシンジという感じが強くなっていた。

ちなみにこの再建の費用はアスカも出している。
なんだかんだといっても世界に三人しかいないチルドレンであるアスカには給料が出る。
しかも子供の頃からチルドレンとして訓練を受けていたアスカにはそれなりのたくわえがあったのだ。

マンションでこういうことをすればいろいろ問題がありそうなものだがそこはそれ、ここはネルフの士官専用マンションであると言うことで無茶を通した・・・通ったではなく通しただ。

「それでどうだったの?」

アスカがシンジの家の居間で今日の事を聞いてきた。
ちなみにミサトは明日も早いからとすでに自分の家に退散している。

「どうだったっていってもな・・・まあ腹の探り合い?いきなり腹を割って話しましょうなんてことにはならないよ」

シンジの言葉に全員が脱力した。
確かにいわれてみればその通りだ。
連中もシンジのことを警戒しているのだから当然だろう。

アスカに代わって凪がシンジに話しかける。

「しかし直接呼び出したって事はそれだけお前の存在を意識しているって事だろう?」
「まあそうでしょうね、でも彼らにとってぼくはかなり微妙な位置にいます。力づくでどうこうって事は出来ないでしょう?」
「わからんぞ?そもそも連中が何を目的に動いているかも不明だ。場合によっては使徒の殲滅が終わった時点で用無しと処分される可能性もある。」
「・・・たしかに・・・」

ゲンドウもゼーレもシンジが何を目的に動いているのかを知らない。
しかし同時にシンジ達も彼らの真の目的がなんなのかその確証がもてないでいるのだ。
その目的しだいでは力技での解決は難しいかもしれない。

「なんにせよ油断はしないことだ・・・」

凪の言葉に全員が頷く。
用心し過ぎるということはない。

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・・・数日後
衛星軌道に浮かぶ衛星のレンズが小さな光を映した。
それは衛星から見ればとても小さな光だったが地上におけるその被害は甚大だった

ビービ−

発令所に警報が鳴り響いている。
ネルフの本部発令所に警報がなるという事態は=使徒の襲来を意味するのだが・・・

「とにかく第一支部の状況は無事なんだなっ!?良いんだよっ!!!偵察機の誤差はMAGIに判断させるっ!!!!」
「5番艇からの情報を送ってくれっ!!!最優先だっ!!!現地ノイズはこちらにっ!!!!」

オペレーターの席では青葉と日向が奮闘していた。
いろいろな情報が入ってきてくるのを処理するので手一杯だ。

やがて使徒の出現じゃないと知らされるまでネルフの混乱は続いた。

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「消滅っ!?」

冬月が司令室で取った内線からの報告を聞いたとたん声を荒げる。
いつも冷静な冬月が軽く取り乱すほどその報告は意外なものだった。

「確かに第二支部が消滅したんだなっ!?」
『はい。全て確認しました。消滅です』
「そうか・・・わかった」

聞き返した冬月に青葉が冷静な声で返す。
どうやら間違いないらしい。
返事をして冬月は受話器を戻した

「六分儀・・・どうする?」
「・・・ただの事故か・・・それとも何かの差し金か・・・」
「統和機構という組織を疑っているならシンジ君のほうに動きはなかったぞ?」
「わかっている・・・」

ゼーレからの要請でシンジの警護という名の監視はその規模を倍にしてある。
さすがに家の内部の盗聴は出来ないがシンジの出す郵便や電話の会話記録にまでその監視の目は伸びていた。
シンジがそんなそぶりを見せようとすれば必ず引っかかる。
現状シンジは地面の上にいながら孤島にいるのと変わらない。

もっともシンジにそんなことをする必要などまったく無いのだが・・・
仲間は全て自分の周りにいるし、なんでもない携帯電話での友人との会話は盗聴されてはいるが規制されているわけではないからだ。
ちなみにシンジは残暑見舞いや年賀状くらいしか手紙を書かないわけだから郵便物で連絡を取ったわけでもない。

「・・・組織側が独自に動いたとも考えられる。」
「考えすぎではないか?」
「・・・・・・これ以上計画に狂いを生じさせるわけには行かない・・・」

冬月は息子を疑いすぎだと言いかけて・・・やめた。
自分が言っても説得力などない。
すでにそんなことを言う資格はとうの過去に捨て去ってここまで来た。

「・・・・・・」

冬月は無言で部屋を出て行った。

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ネルフの幹部とオペレーターたちが分析室に集まっていた。

「まいったわね・・・。」
「上の管理部や調査部は大騒ぎ・・・総務部はパニクってましたよ」

ミサトのぼやきに日向が補足した。
どうやらネルフのあっちこっちで混乱が広がっているらしい。
それも仕方のないことだとは思うが。

「・・・で、原因は?」
「今だ解らず。手がかりはこの静止衛星からの映像だけで、あとは何も残ってないのよ」

リツコが合図をするとマヤがキーボードを操作した。
足元のモニターに映像が出る。

アメリカの第二支部があった場所を直上から映した映像だ。
今は巨大なクレーターになっている。
映像がコマ送りで消滅前の第二支部に切り替わる。
マヤがカウントを始めた。

「10・・・8・・・7・・・6・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・コンタクト」

マヤの言葉とともに映像の中心に光が生まれた。
光は赤い色彩を加えながら画面を埋め尽くして球状に広がる。

直後、静止衛星にまでその衝撃が届き画面が激しく揺れた。
わずかに画像が歪むとサンドストームに切りかわる。

ズズズズ・・・・・・・・・・・・・・・・ブツン

モニターがブラックアウトして分析室に静寂が降りた。
全員が目の前の映像に驚愕していてすぐに言葉が出せなかったのだ。

「・・・酷いわね」
「エヴァ四号機。ならびに半径89キロ以内の関連研究施設は全て消滅しました」
「数千の人間も道連れにね」

マヤの言葉を補足したリツコの声は冷え切っていた。
その瞳はただじっと事実だけを見ている。

「タイムスケジュールから推測して・・・。ドイツで修復したS2機関の搭載実験中の事故と思われます。予想される原因は材質の強度不足から設計初期段階のミスまで32768通りです」
「妨害工作の可能性も有るわね・・・。」

腕を組んだミサトが床の黒いモニターを見ながら呟く。

考えられる事ではある。
なんと言ってもネルフには敵が多い。
問題はその敵が同じ人類だと言うことだろう。

「でも、爆発ではなく・・・。消滅なんでしょ?つまり、消えたと」
「多分、ディラックの海に飲み込まれたんでしょうね・・・。先の初号機みたく」

疑問を口にした日向の言葉にリツコがやはり感情のこもらない声で答えた。
事実は変えられないと分かっているが気分が良くないのはどうしようもない。

「じゃあせっかく直したS2機関も」
「パーよ。夢は潰えたわね。」
「よくわからないものを無理して使うからよ。」
「・・・失敗は成功の母だなんていわないわよ」

冗談にもならないことを言ったリツコの視線も床のモニターから離れなかった。
その中心を穿たれてクレーターになった大地を・・・

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会議が終わった後ミサトとリツコはネルフ名物の長いエスカレータに乗っていた。

「・・・で、残った参号機はどうするの?」
「ここで引き取ることになったわ。米国政府も第一支部までは失いたくないみたいね」
「参号機と四号機はあっちが建造権を主張して強引に作っていたんじゃない・・・・・・今さら危ないとこだけ、うちに押しつけるなんてむしのいい話ね・・・」

ミサトはあきれた声で毒を吐く

エヴァの建造は当初各国が自国での製造を主張した。
しかし、エヴァは製造が高額なのとその特殊な製造方法からセカンドインパクト以降に条件を満たす国は少なかった。

セカンドインパクトを起こした使徒と唯一互角に戦える兵器・・・
それは冷戦時代の核の存在と似ているかもしれない。

局地防衛用のエヴァでは戦力としてたかが知れてはいるのだが、象徴としては申し分ない。
しかも局地防衛用ということは自国の首都に配備すればそれは難攻不落の要塞と化す。
今の第三新東京市のように・・・

そしてS2機関の搭載はエヴァという獣の鎖を解き放つ鍵・・・
永遠に動き続ける事が出来る動力源とN2にも耐える装甲にATフィールド・・・

実際、S2機関の四号機搭載実験をアメリカでやることになったのは彼の国が自国の強権を強めようと強固に主張したためでもある。
もっとも元からいろいろと一番が好きな国柄でもあるのだが・・・そういった経緯でアメリカで四号機の搭載実験に踏み切ったのだか今回は完全に裏目に出た

アメリカだけではなくほかの国々も出来れば自国のエヴァを保有した状態で使徒戦が終わってほしいと思っているに違いない。
そうすればエヴァを無傷で保有する事が出来る。

第一、参号機と四号機はほとんど完成していたためいつ第三新東京市に配備されてもおかしくはなかった。
完成間近だった事が四号機の搭載実験の要因の一つでもある。
要するに搭載実験にかこつけて自分の国に残しておきたかったのだ。
さらにS2機関を搭載できれば他の支部に対するアドバンテージにもなるし、その研究で四号機を保有し続けることが可能になるかもしれない。

そこまでして今まで渋っていたのにこの手のひらを返す速さはあきれるしかないのだがそこはそれ・・・エヴァもそれを保有する支部施設などの費用も馬鹿にならない。
今回の件と同じように参号機までが消滅してしまえばそれこそ支部建設の費用と土地の確保から始まった大量の資金提供も水の泡だ。
万が一にでもこの情報が漏れればいまだ不安定な世界情勢の昨今・・・世論がなんと言うか・・・さらにエヴァはその特性上維持し続けるのにも大量の金が必要だ。

アメリカ政府は完成した参号機を厄介払いとして本部に押し付けたというのが本当のところだろう。

「あの惨劇の後じゃ誰だって弱気になるわよ。」
「で、起動試験はどうするの?例のダミーなんとかを使うのかしら?」

ミサトの言葉にリツコは少し考え込む
一応、ダミープラグは起動が出来るくらいには仕上げてありはするが問題にならない。
本当に起動するだけでその後何が起こるかわからないのだ。
しかもコアの問題もある。

「これから決めるわ・・・」

リツコは無表情だったが内心頭を痛めていた。






To be continued...

(2007.08.18 初版)
(2007.08.25 改訂一版)
(2007.10.20 改訂二版)
(2007.02.17 改訂三版)
(2008.03.01 改訂四版)


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