ユイはシンジが外の世界に戻った後、家の縁側に座ってお茶をすすっていた。
シンジが初号機にシンクロしてくれればまた会えるのだがせっかく会えた息子と別れるのは少し寂しい。

「それにしてもまたこの家にこれるなんて・・・」

ユイのいるこの武家屋敷は京都にあったユイの実家だ。
しかしもうユイの記憶の中にしかない。

ユイの実家は結構な資産家だったがユイはその全てを現金化し研究費に当てた。
この武家屋敷も今ではマンションになっているはずだ。

死海文書を解読したユイにとっては人類が滅ぶかもしれないと言う事態に金銭など意味はなかった。
全ては未来のため・・・しかし多少の寂しさはある。

「・・・ゲンドウさんにも困ったものね・・・シンちゃんに迷惑かけて・・・これはおしおきしないと」

とりあえずユイの閻魔帳にゲンドウの名前が載った。

ユイはシンジには言わなかったがゲンドウの本心をほぼ見抜いている。
ゲンドウはあれでかなり一途な男だ。
永遠の命や人類の補完など俗なもののためにこんな大それた事はしないだろう。
だとすればおそらく自分に原因がある。
補完され、全ての命が一つになれば自分に会うことが出来る。
あきれるがおそらくそのあたりだろう。

「愛されているって言うのは嬉しくはあるんですけどね・・・ゲンドウさん・・・それにしても・・・」

ユイはため息をついた。
この世界には他には誰もいないのだ。
苦痛とまでは行かないが退屈ではある。

「・・・・・・茶飲み友達でも居ればいいのだけれど」

そういうものを作れない事はないのだが所詮それは人形でしかない。
ユイが想像できる行動しかしないし予想できる会話しかしない・・・それでは幼女のおままごとと代わらない。

「あ〜〜〜シンちゃ〜ん、か〜むば〜っく」

なんとなくそんなことを言ってみる。
特に意味はない。
暇つぶしだ。

「だったら僕がお相手しょうか?」
「え?」

予想もしなかった返事に思わずあわててしまった。
視線を向けると小額低学年くらいの子供がいる。

「っつ!シンちゃん!!」

言ってからユイは気がついた。
目の前のこの子はシンジの姿をしているがシンジではない。
本物とはさっきまで会っていたのだ。
それにこのシンジは自分の記憶の中にあるシンジの姿であり、10年近く前のシンジだ。
だとすればこの子は・・・

「・・・そう、あなたがシンちゃんの言っていた・・・」
「そうだよ、碇ユイ・・・」

その子供はユイの中にあるシンジの記憶そのままの笑顔をユイに向けた。






天使と死神と福音と

第拾肆章 外伝 〔審判者〕

presented by 睦月様







「どうぞ、粗茶ですが」
「ありがとう」

ユイから湯飲みをもらった少年は感謝の言葉とともに受け取った。
もちろんこんな事に意味などはない。
この世界で物を食べると言う事は娯楽以上の意味を持たないからだ。
しかし別の意味はある。

(・・・なるほど、一応こちらの文化は理解しているわけね・・・)

ユイは何気ない行動からでも目の前の少年を観察していた。
むしろ本質と言うのはそういった何気ない部分に現れる。

この世界で食を勧められ、それを拒否せずに付き合ったということはまずこちらのもてなしの文化を理解していると言う事、そして当然だが敵意などを向けてきているわけではないと言う事がわかる。

「ただのお茶でよかった」
「え?」
「お茶漬けを出す時はさっさと帰れと言う意味なんだろう?君の実家の京都では?」

ユイは内心で驚いたがそれを外には出さなかった。
依然としてこの少年の正体はわからないのだ。
僅かな隙も見せる事は出来ない。

(・・・それにしても・・・)

ユイは考え込む。
この少年の知識の出所は一体どこだろうか?
確かにユイの実家は京都だしシンジだってそのくらい知っている。
調べればすぐに分かる事ではあるがなにか・・・

「・・・不思議そうな顔をしている・・・何処で知ったのか気になるのかな?」
「・・・ええ気になるわね」
「君の記憶から引っ張り出したものだ」
「・・・なるほど・・・女の過去を覗くなんて趣味がよくないわね・・・あなたはだれ?」

少年はユイの言葉に軽く笑った。

「やっと聞いたね?何時聞いてくるかと思っていたんだ。」
「確かに自己紹介はコミュニケーションの基本ね、初めまして碇ユイです。」

そういうとユイは少年に向かって頭を下げた。
応えるために少年の笑った口が開く。

「初めまして碇ユイ・・・”私”は君らが第二使徒と呼ぶ存在・・・リリスだ。」

その瞬間、周囲の風景が変わった。

ガタン・ゴトン・ガタン・・・

いつの間にか武家屋敷が夕日の差し込むレトロな電車内に変わっている。

ユイは息を呑んだ。
予想していなかったといえば嘘になるがここまであらかさまに自分の正体を明かすとは思わなかった。
気がつけばユイは座席に座り、反対側の座席にはリリスと名乗った少年が座っている。

「・・・リリスは・・・レイちゃんのはずよ」
「うん、それも間違いではない。しかし正しい意味でリリスというのは私のことだ。」
「?・・・どういうこと?何を言っているの?」
「焦ってはいけないよ碇ユイ、順をおって話をしようじゃないか」
「・・・お願いするわ」

リリスは頷いた。
どうもこの状況を楽しんでいるようだ。

「最初に私が目覚めた時・・・その時すでに私は肉体から切り離されてこの模造品の中にいたのだよ。」

リリスの言葉にユイが顔をしかめる。
シンジ達は最初からこの初号機には魂が宿っていたといっていた。
それは正しかったのだ。
初号機にはリリスの魂が宿っていた。

「難しい顔をしているな、ならば何故自分が引き込まれたかわからないと言った顔だ。」
「ありていに言えばそうね・・・何故?」
「それに関してはリリンなら誰でもよかったんでね、君がたまたま都合がよかっただけだ。それ以上の意味も理由もない。」

歯に衣着せぬというのはこういうことを言うのだろう。
目の前のリリスはまったく隠そうとしていない。
ユイの顔が険しくなる。

「そう睨むものではないと思うけどな、目覚めたらいきなり体をいじくられていた私よりはましと言うものだろう?」
「うっ」

リリスの言う事は確かに正論だ。
人類のためなどと言うものはそもそも人類ではないリリスには通じない。
ユイの顔が青くなったのを見たリリスが苦笑する。

「そうおびえなくてもいいよ碇ユイ、私は何も今すぐリリンをどうこうしようとは思っていない。」
「・・・・・・”今すぐ”?」
「ふふっ、それは君たちリリンしだいだ。」
「・・・・・・どういうことかしら?」

リリスは笑っている。
だが笑いと言うものはいろいろな感情を含む事がある。
怒り、悲しみ、嘲笑、蔑み
ただ相手が笑っているからといって友好的とは限らない。

「私は目覚めた時、自分が肉体から切り離されているのを知ってさすがに驚いたよ。確かに怒りも覚えたがそれ以上に興味がわいた」
「興味?」
「君らリリンはわざわざ未完成な方向に進化した種だ。その力は我々と比べて脆弱に過ぎる。それなのにだ、私を肉体から切り離すと言う離れ業までやってのけ、あまつさえ自分達の道具として利用しようとしていた。まあこれは最初に君が私にシンクロした時点で私の中に流れ込んできた情報からわかったのだがね」
「そう・・・」

ユイはリリスの言葉を整理した。
この目の前の少年姿のリリスはとりあえず人類をどうこうしようとは思っていないらしい。
当面の害意はないと見ていいだろう。
しかしこの口ぶりだとすでに何かをやったようでもある。

「君を吸収したあと、私は自分の魂と記憶を分離した。」
「記憶と・・・魂?」

リリスの言葉にユイははっとした。
この状況で答えは一つしかない。

「まさか・・・レイちゃん?」
「そう、そして君と話している私はわずかな魂のかけらででっち上げた擬人格だ、私の全てはかりそめのものなんだよ。本来私と言う存在に姿かたちは存在しなかったのだから、この姿は・・・君の記憶の中にあった碇シンジの姿を借りている。そう言った意味では君らが綾波レイと呼ぶあれよりも記憶と僅かばかりではあるが魂の二つを備えた私のほうがリリスと呼べるのではないか?」

ユイは二の句が告げなかった。
レイの魂が零号機の中に分断されて存在すると聞いていたことから予想していなかったわけではない。
しかしそれに使徒としての記憶までついているとは・・・

「外側からさっき流れてきたのと同じようなプログラムが送り込まれてきた時、眠っていた君の無意識の部分と干渉して君の情報を持つ肉体が生まれた。分離した私の魂はその肉体に入って外に出たんだよ、もっとも記憶は全て私の方にあるために彼女はその事を覚えていないがね。」
「なぜそんな事を・・・」
「君の記憶でリリンのおおよその事は理解できたが所詮は”理解”どまりでしかない。」
「つまりあなたは経験を求めた?」
「その通り、外に出た私の魂は例えるならば真っ白いキャンバスと同じ、君らがそこに何を書き込むか・・・それは君らの自由、そして彼女の魂を縛っている入れ物である肉体が滅べばその魂はここに戻り私と融合する。その時、彼女が持ってくる綾波レイとしての記憶・・・それによって私は君らに触れ合う”経験”を手に入れる・・・しかしそれがもし私の期待はずれだったなら・・・」
「人類を滅ぼすつもりだったと言うこと?」
「まあそうなるかな、しかし滅ぼすと言うのは誤解だ。なに、たいしたことじゃない。もともと我々使徒はアダムを目的としている。そこに立ち戻るだけだ。結果としてリリンが滅ぶかもしれないと言う事・・・あくまで結果だ。」

ユイは何も言えなかった。
自分達はなんと危ういバランスの上に立っているのだろう
もし半歩でも道を踏み違えていたならこの世界はとっくに終わっていた。

「つまり君らが綾波レイと呼ぶあの存在は君らにとっての審判者だったのだよ。彼女次第でリリスはリリンを滅ぼすために動くかどうか決まるはずだった。」
「そんな・・・」

唖然としたユイにリリスが苦笑した。
完全に話の主導権はリリスにある。
東方三賢者であるユイでも少々相手が悪いようだ。

「しかし予想外な事は起こるものだ。私のこの人格が形成されたのはわりと最近なんだよ。あのゲンドウと言うリリンが何度も同じ手順を繰り返して肉体の予備を生産するのはさすがに予想出来なかった。人格の形成途中の私のほうでどうこうすることは出来なくてね、おかげで彼女の帰還はいまだ果たされていない。」
「・・・・・・」

確かにレイは一度死んでいる。
そのときにレイとメイが分かれたのだが、もしそのときにレイの予備の体がなかったとすればその魂は完全な状態でここに戻ってきていただろう。

「それでも大筋で変化はないはずだった。いざとなれば私のほうで強制的に取り込むと言う方法もあったし・・・」
「シンジをここに連れ込んだように?」
「そうだね、彼らは綾波レイが君のクローンだと思っていたから疑いもなくこの初号機のパイロットにした。後は彼女の中に経験がたまった所で一つに戻ればいいだけだったのだが・・・」

そこでリリスの顔に笑みが浮かぶ
さっきまで浮かべていた苦笑ではない。
楽しくてしょうがないと言った感じだ。

「でも、さらに予想外の事態が起こった。それも修正不可能に近い事が、綾波レイが私とのシンクロを拒否したのだよ。」
「拒否?・・・シンジが言っていたレイちゃんが初号機にシンクロできなくなった事?」
「そう、アレは私が彼女とシンクロを拒否したわけじゃない。”彼女が無意識にシンクロを拒否した”のだ。おそらく自分の本当の役割を無意識で理解した結果だろう・・・それは綾波レイの変化、彼女は私の予想を軽々と超えてしまったよ。どうしてか分かるかい?」
「シンジと・・・ブギーポップ・・・」
「その通り」

リリスは本当に愉快そうだ。
おそらく興奮しているのだろう。
かなり饒舌になっている。

「もちろんそれ以前にも綾波レイには感情のようなものがあった。しかしそれはあまりにも稚拙で自己すら確立していなかった。ひとえに君の夫である碇・・・いや六分儀ゲンドウだったな、彼がそうなるように彼女を育てたせいだ。」
「・・・・・・」

ユイは何も言えなかった。
リリスの言う事は耳に痛いが全て真実である。
すべては夫であるゲンドウの差し金だ。

「しかしその状態は私にとっても好都合だった。」
「え?」
「余計な感情が入らないほうが純粋な情報を得る事が出来る。しかしだ、彼等との出会いで彼女は急速な成長を見せた。そうなったら公平な情報など望めまい?そもそも彼女がシンジ君たちのいるこの世界の滅びを求めると思うかね?」
「・・・なら今の状況は我慢ならないでしょうね?」

ユイの言葉にリリスがきょとんとする。
何を言われたのか数秒にわたってじっくり考えた。
しばらくするとリリスの顔に理解の色が浮かぶ。

「ああ・・・なるほど、碇ユイ、君は私が正確な情報が得られない事で不愉快になっているとそう言いたいのか?」
「違うのかしら?・・・審判者としてのレイちゃんの情報は信用が置けないのでしょう?」
「確かにそういう一面もなくはないな、今の彼女は審判者としては失格だ。しかし・・・」

リリスは身を乗り出してユイの顔を真正面から見た。
ユイのほうはいきなりじっと見られて戸惑った。

「むしろ私は喜んでいるのだよ。」
「よ、喜んで?」
「最初あれはまさに真っ白なキャンバスだった。他の誰かが物を書くためのね、しかし今はどうだ?書かれるべきそのキャンバスが勝手に自分に絵を描き始めたのだ。」
「え?」
「我々は唯一であるがゆえに子孫などは作れんからな、たとえ分身とはいえ今ではかなり差が出来てしまった。こうなると分身と言うより娘のようなものだ。感傷と笑うか?」
「・・・いいえ」

母として、リリスの気持ちを理解できる部分がある。
ユイにはそれ以上の理由は必要なかった。

「それじゃあ審判はなくなったということでいいのかしら?」
「さて・・・それはそれだ。他にも審判者としての資格を持つものはいる。それもリリンの中に」
「な!そ、それはだれ!?」
「碇シンジとブギーポップ」
「!!?」

ユイは驚きで声も出なかった。
いきなり自分の息子が世界の審判者だなどといわれればそれは驚く。
リリスは狼狽するユイにかまわず話を続けた。

「君らリリンは群体として進化した種だ。その強みはあくまで集団である事なのに・・・」
「だ、だから?」
「そのたかが一個体にあれほどの力と意思を持つとは・・・我々完成した存在である使徒にはこれ以上の進化は望めない。しかし君らリリンは不完全ゆえに進化の可能性がある。シンジ君はおそらくそのさいたる者だ。リリンの代表として彼以上の者はいないだろう?そのためにわざわざ自分から出向いてまで彼らの在り様を確認までしたんだから」
「・・・シンジがこの世界の滅びを望むと思うの?」
「彼の意思は関係ない」

ユイは驚いて何か言いかけたがその言葉を飲み込んだ。
まだリリスは全てを語ってはいない。

「碇ユイ、難しく考えずゲームと思えばいい」
「ゲーム?・・・勝利条件は?」
「碇シンジとブギーポップが世界の危機を回避する事」
「敗北条件は?」
「簡単だ。碇シンジの死はすなわちリリンの敗北、当然だろう?」

リリスは簡単に言い放った。
もしシンジが死ぬことになれば初号機は人類の敵に回ると言うことと同義だ。
リリスの話す内容はとんでもないものだったが本人にそれを気にした風はない。

「これから来襲する使徒はあと四体・・・アラエル、アルミサェル、タブリス・・・そして君らリリン・・・」

ユイはリリスが最後の使徒として自分たち人類・・・リリンの名前を挙げたことに息を呑んだ
それを見たリリスは満足そうに頷く。

「私が手を出さなくてもリリンは共倒れするかもしれん、ゼーレ・・・わたしはあれが嫌いだ。せっかくの限りある生だからこそ輝くのだという事を理解できぬ醜悪なリリンたち・・・」
「そんなことまで・・・」
「この内面世界はもともと私のものだ。隠し事など出来ないよ・・・もっともブギーポップのほうは気がついていて好きにさせていたようだがな、相変わらずえたいの知れない奴だ。」

リリスの顔は笑っていた。
言葉と裏腹にブギーポップやシンジに対して悪意を持っているわけではないらしい。

「一つだけ聞かせて・・・なぜシンジから強引にコントロールを奪ってまでS2機関を吸収したの?」
「あったほうがいいだろ?君らの移植は不完全で私のS2機関はほとんど冬眠状態だ。ゼルエルのS2を吸収する事でやっと通常の状態に戻ったんだよ。」
「う・・・」

どうやらこの話題はやぶへびだったらしい。
自分たちの技術が足りなかったためにリリスはその力を十分に使えなかったと言うことだ。
これは100%自分たちに責任がある。

しかしリリスに気にしてはいないようだ。
淡々とマイペースに話を進める。

「これから来る使徒達はS2機関など当たり前に持っている。ゲームはフェアーじゃないとね」
「それじゃああなたは私たちに協力してくれると?」
「ん?何故そんな結論になる?」
「え?で、でもあなたは・・・それにさっきゼーレは嫌いだと」
「たとえ嫌いでもわざわざ私が参加するいわれはあるまい?」

ユイが反論しかけるがリリスはお構い無しで言葉を重ねる。

「私はこれから完全に傍観者になるよ。この先・・・手は出さない。シンジ君を助けたかったら好きにしていい、この体は貸してあげる。」

そういうとリリスは座席を降りて次の車両に歩いていく。

「ま、待って、それならなぜ今まで何度もシンジを救ったの!?」

ユイの言葉にリリスは次の車両の扉の取っ手に手をかけた状態で首だけ振り向いた。

「そんなの言うまでもないじゃないか?」

リリスは取っ手をひねって扉を開いた。
その先には次の車両の車内が見えている。

「彼らのファンだからだよ。」

悪戯っぽく笑うとリリスは扉の先に進んだ。
あまりにも予想外のことを言われて呆けていたユイが扉の閉まる音で我に帰る。

「ち、ちょっと待って!!」

あわててリリスをおって走り出した。
扉の取っ手に手をかけ一気に開けると迷わずその中に入って行く。

「・・・・・・え?」

その先は見覚えのある場所だった。
見覚えのある武家屋敷とその庭・・・

ユイは自分の内面世界に戻ってきていた。

「・・・やってくれるわね・・・」

ユイは肩の力を抜いた。
どうも緊張していたらしい。
使徒と面と向かって話をしたのだ緊張するくらいは当たり前だろう。

「それにしてもファンからS2機関のプレゼント?スケールの単位が三つは違うわね」

人類を滅ぼす事さえ可能なほどのエネルギーを持ったS2機関をプレゼントされるなど人類史上初に違いない。

「それにしても・・・」

ユイはどうにも気恥ずかしかった。
自分の息子達が誉められるのは悪い気はしないがどうにも照れる。

ユイは頭上の空を見上げた。
おそらく今もリリスはこの世界のどこかで自分を見ているはずだ。

「・・・・・・安心していいわよリリス、あの二人はきっとあなたを退屈なんてさせない。」

ユイは自分の言葉を微塵も疑ってはいなかった。
彼等を見ていれば退屈などと言う言葉と縁遠くなるのは間違いない。
わが子ながら末恐ろしい限りだ。

その時ユイの周りに一陣の風が吹いた。
何処かで「わかっている」と笑われた気がする。






To be continued...

(2007.08.25 初版)
(2007.10.20 改訂一版)


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