天使と死神と福音と

第拾陸章 〔神食する恐怖〕
X

presented by 睦月様


とっさにシンジが上を見るとレリエルの球体が浮かんでいる。
相変わらずのゼブラだ。

「ちっ・・・」

シンジはまだ完治していない左手でレイの腰を掴むと同時に右手でメイを抱き寄せた。
二人をしっかり掴んで【Left hand of denial】(否定の左手)の能力を発動する。
空間が削られてシンジ達三人が影の範囲から移動した。

「シンジ君・・・」
「シンジお兄ちゃん?」
「大丈夫だよ、あの人が何とかするって言ったんだから・・・それより左手を・・・」
「わかったわ・・・でも・・・」

シンジの左手を治療しながらもレイは不安そうだ。
レリエルは自分達が殲滅したわけじゃない。
初号機の暴走によって”結果的”に殲滅したのだ。
しかしここには初号機は無い。

シンジは不安そうなレイたちにニッコリ笑った。

「レイ、メイもよく聞いてほしい」
「何、シンジ君?」
「ぼくはね、この世で絶対に勝てないと思う人が一人だけいるんだ。」
「シンジ君が勝てない人?」

レイとメイが驚いた顔になる。
さっきまでの戦闘を見ればシンジの勝てない相手など想像も出来ない。
シンジも二人の思いに気づいて苦笑する。

「それがブギーさん、あの人には絶対勝てないと思う。」
「そうなの?」
「あれ見て」
「「あ!!」」

シンジが指差した場所を見たレイとメイが驚きの声をあげた。

全てを飲み込み異空間に吐き出すレリエルの漆黒の影・・・その中心に筒のようなシルエットが立っている。
その白い顔は自分の頭上にいるレリエルを見上げていた。

「ブギーポップ・・・どうして・・・」
「影の上に立っているわけじゃないよ。」
「え?・・・ワイヤー?」

レイの強化された視力はブギーポップの足元に走る鋼線の存在を見つけた。
慌てて左右の端を探すがワイヤーははるか遠くまで伸びていて何処に繋がっているかすら見えない。
しかもそれだけの長さでまったくたわんでいないのだ。

「相変わらず理解出来ないことを平然とこなしてしまうんだよね」

シンジの口調は楽しげだ。
長年の付き合いであの死神に常識は通用しないと悟りきっている。
ならば後はその破天荒さを楽しむのがベストだ。

「・・・・・・」

シンジ達三人の見つめる中でブギーポップが飛んだ。
目標は頭上のレリエルの影・・・

ブギーポップの周囲でワイヤーが煌いた。
空間すら切り取るかという鋭さでレリエルに迫る。

ズパン!!

一瞬で丸いゼブラが両断された。
切断面が鏡より滑らかにカットされている。

時間が止まったかと思えるほどの一瞬の静寂の後、切断面から血のような液体が流れ出した。
同時に地面の影もLCLに戻る。

ブギーポップは音も無く地面に降り立った。
その姿にはまったく危なげなところがない。

あれほど苦戦したレリエルをあっさりと倒してしまった。

「一体どうやったんです?」

ブギーポップが振り向くと治療を終えたシンジとその後ろにレイとメイが立っていた。

「大した事はしていないさ」
「でもあの球体はレリエルの影でしょう?それを切るなんて・・・」
「シンジ君、影は本体の写し身だろ?」
「え?」

シンジは思わず聞き返す。
ブギーポップの言う事はわかるがその意味がわからなかった。

「逆にその写し身を切る事が出来れば本体も同じように傷つく」
「そういうもんですか?」
「レリエルは特にその影響が顕著だったからね」

シンジは追求を諦めた。
ブギーポップがこういう信じられないことをやったときにそれを理解できたためしがない。
どれだけ頭を痛めてもまったく分からなかったのだ。
知恵熱が出るだけ無駄

背後を振り返るとレイはシンジと同じように不思議そうな顔をしている。
メイだけはブギーポップの凄さに感心していた・・・子供は純粋でいいとおもう。

「次が来たよ」

思考がループしそうになったシンジの頭が現実に引き戻された。
見ると例によって赤い水溜りから出てきたのは二本の黒い腕・・・
その全身が外に出る。

現れたのは漆黒の装甲を身にまとった人型の獣・・・
四つん這いになってこちらを観察している姿は見覚えがある。

「参号機・・・」
「バルディエルか・・・」

シンジはその姿に顔をしかめる。
背後のレイも同じようだ。
メイはなんだかわからないが嫌な物を感じてレイの後ろに隠れた。
ブギーポップは無言でバルディエルを見ている。

「レイはメイを連れて下がって」
「シンジ君?」
「ブギーさん、先・・・行きます。あいつにはかりがあるんですよ、トウジの事とか・・・」
「どうぞ」

ブギーポップはシンジに道を譲る。
シンジは頭を下げて礼をすると前に出た。

バルディエルもシンジを敵と感じたようで低い唸り声でシンジを威嚇する。
それに対してシンジは無言で歩を進めた。

「・・・・・・」
「グルル!!」

両者がゆっくりと近づいていく。
間合いの長さは腕を伸ばせる分バルディエルのほうが有利だ。

「ガ!!」

先に仕掛けたのはやはりバルディエルだった。
シンジを捕らえようと両手を伸ばす。

「・・・・・・相変わらず便利な腕だが・・・欠点もある。」

シンジは向かってくる両手に対して下がるでもよけるでもなく・・・前に走り出た。
両の腕の間に出来た空間に体を滑り込ませてバルディエルの腕を回避する。

「それだけ長い腕だと内側に入られたら対応できまい!!」

シンジはバルディエルの腕の間を駆け抜ける。

「グオオ!!」

バルディエルに肉薄したシンジはバルディエルの肩を掴んでその頭上を一回転しながら飛び越える。
同時にバルディエルの首を両手でホールドした。

「逝ってこい!!」

背後に着地するのと同時に掴んでいる首を使った一本背負いでバルディエルを投げ飛ばす。
走りこんだ勢いと絶妙な投げ技で体格差など問題にならない。
人間が相手なら首の骨が折れていてもおかしくない破壊力がある。

ズザザザ!!

地面を削りながらバルディエルがバウンドした。
すぐに立ち上がろうとするバルディエルにシンジの後方からさらに追い討ちがかかる。
バルディエルの目の前にブギーポップの衝撃波が来た。

「ガル!!」

とっさにジャンプして衝撃波を避けようとするが・・・

「避けずに当たれよ!!」

ズン!!

頭上に飛んでいたシンジの絶妙な踵落しをまともに脳天に食らってバルディエルの体が落下する。
しかも元の場所に無理やり戻されたバルディエルの目の前に衝撃波きた。

ズガ!!

「ゲブ!!」

避ける事も出来ずにバルディエルの体が再び背後に飛んだ。
仰向けで飛んでいくバルディエルの目の前にいきなりシンジが現れた
空中にいる状態からシンジの直蹴りがバルディエルの鳩尾に突き刺さる。

ドスン!!
  ズン!!
    ガリリリリ!!


シンジの蹴りでバルディエルの体が地面でバウンドする。
跳ね上がって来たバルディエルの上にシンジはそのまま着地する。
その重さで再び地面に押し付けられたバルディエルは慣性の法則に従って背中で地面を削っていく。

やっとバルディエルが止まる頃になってシンジはバルディエルの上から飛んだ。

シンジが振り返るとバルディエルはすでに立つことも出来ないようだ。
地面に仰向けになって荒い呼吸をしている。
時折それに混じるのは血だろう。

「ゲフウ!!」

地面から立てないバルディエルが最後の足掻きで腕を鞭のように振り回して抵抗した。

「・・・・・・」

ズバン!!
  ズバン!!


白い光の軌跡が走る。
文字通りの白刃・・・右手の手刀の一振りで二本の腕が飛んだ。
バルディエルの腕の半ば辺りが消滅している。

「これで終われ!!」

白く光り輝く右腕が手刀から拳に握りこまれ、バルディエルの頭に叩き落される。

バシュン!!

一撃で首から上を失ったバルディエルの体がビクンと跳ね上がるがすぐに弛緩して動かなくなる。
やはり一瞬でLCLに還元されて水溜りになった。

バシュ!!

赤い水溜りが光った。
とっさにシンジは【Left hand of denial】(否定の左手)を前に出す。
不可視の何かがシンジの手に反発してはじけた。

「な!!!」

反動でシンジの体が飛んだ。
数秒間空中を飛んで地面に落ちる。

「くそ!!」

シンジは勢いに逆らわずに地面を転がった。
無理に反動を止めようとすれば逆に怪我をする。
自分にかかっている勢いが消えるまで転がってからシンジはすばやく立ち上がった。

「・・・いまのはやっぱり・・・」

シンジの視線の先には予想通りの者がいた。
それは力を司る使徒・・・
初号機を唯一追い詰めた存在・・・
第14使徒・・・ゼルエルがいた。

「シンジ君、無事かい?」
「何とか・・・」

何時の間にか横に立っていたブギーポップを確認するとシンジは頷いて立ち上がる。

同時にゼルエルも動く。
白い紙のような薄い両手が展開された。
両手がそれぞれ真横に伸ばされて固定する。

ギュン!!

初号機との戦いで使った剣状の攻撃が横一文字に放たれた。
しかも片方だけではない。
鋏のように左右から真一文字の斬撃が二人に迫ってくる。

「ちっ!!」
「やれやれ、ワンパターンな・・・」

シンジとブギーポップは白刃を飛んでかわす。
他に避ける場所は無い。

飛び上がった二人にゼルエルの顔がむく。

キュン!!

ブギーポップに向けて不可視の光線が放たれた。

「ふん」

それを読んでいたブギーポップも右手を銃のような形にしてゼルエルに向けた。

ドン!!

その指先から衝撃波が放たれる。
ねらうはゼルエル

いかに不可視の光線であってもブギーポップを狙って放たれたのは間違いない。
ならば光線は間違いなく自分とゼルエルを繋いだ線のど真ん中を通ってくるはずだ。
ならばそのラインに衝撃波を叩き込めば・・・

ズン!!

ゼルエルに向かってまっすぐに放たれた衝撃波はゼルエルに近い位置で激突して弾けた。

反動でブギーポップがゼルエルと反対方向に吹き飛ばされる。
しかしブギーポップは空中で体勢を立て直すと危なげなく足から着地した

「大丈夫ですか?」
「問題ないよ」
「奴は?」

ブギーポップは黙ってゼルエルのいた場所を指差す。
爆発の衝撃で舞い上がった煙でその先が見えない。

しかし、その煙をものともせずにゼルエルは出てきた。
やはり無傷だ。

「あの爆発をまともに受けたはずですよね?それなのに無傷ですか?」
「そうらしいね」

ブギーポップは空中にいたために爆発の反動でとばされた。
そのためにいくらかは衝撃が軽減されたがゼルエルは防御すらせずに耐え切ったのだ。

「さすがと言うべきかな・・・」
「感心するのはいいですけど・・・来た!!」

シンジ達の頭上にゼルエルの腕が迫る。
しかも二つではない。
その数は10・・・腕の先の部分が人間の指のように5本ずつに裂けている。
しかもその全てがねじられてドリル状になっていた。

「ん?」

しかし、その全てがシンジ達を外れた。
シンジ達の周囲に円形に十本の指が刺さる。

「外した?・・・外れた?なんなんだ?」
「シンジ君、あれだ」
「げ!!」

ブギーポップが指差す方向を見てシンジは絶句した。
ゼルエルの目が光り始めている。

「くそ!このための布石か!!」

周囲に刺さっている指のせいで逃げ道が無い。
シンジは【Left hand of denial】(否定の左手)を発動させる。

(まにあうか!?)

閃光がシンジ達を飲み込んだ。
次の瞬間、光の中からシンジとブギーポップがはじき出される。

ドウ!!

二人は地面にバウンドして止まった。

「大丈夫かい、シンジ君?」
「生きてはいますよ・・・くあ!!」

確かにシンジは命に別状はない。
しかしその左手にはかなりの火傷を負っていた。
能力の発動がわずかに遅かったために何割かは食らってしまったようだ。

「・・・綾波さん。」

ブギーポップの呼びかけにレイがメイを連れて駆け寄ってきた。

「もう一度シンジ君の治療を頼むよ。」
「わかったわ、・・・あなたは?」
「僕は・・・」

ブギーポップは立ち上がって振り向いた。
そこには無傷のゼルエルがいる。

「あいつを黙らせてくる。」
「ブギーさん?」

思わずシンジは立ち上がりかけて痛みに顔をしかめる。
そんなシンジを見たブギーポップは頭を振った。

「綾波さん、シンジ君を頼むよ」
「わかったわ・・・シンジ君は私が守る。」

レイはシンジに抱きつくとそのまま引きずり倒して座らせる。
同時にレイの能力が発動してシンジのやけどが徐々に治っていく。

「ブギーさん・・・やっぱりぼくも・・・」
「シンジ君、覚えているかい?」
「え?」

いきなり脈絡のない事を言われてシンジの頭に疑問視が浮かぶ。

「君を最初に守ると言ったのは僕だ。そしてあの誓いはまだ有効なんだよ。」

ブギーポップの顔が左右非対称の笑みになった。
その右手がマントの襟を掴む

バサ!!

ブギーポップはマントを脱いだ。
そのまま頭上に掲げると布地が大きく広がる。

「・・・・・・」

ブギーポップはマントを握っている右手を軽くひねる。
夜色の布地がねじられて絡まり一つの形を織り上げて行った。

瞬きほどの瞬間でブギーポップの右手に握られたのは黒い長鎌・・・
柄の長さだけでもブギーポップの頭より高い。
ブギ−ポップの頭上に黒刃が三日月のようにある。

「さあ始めようか・・・ここからが本番だ。」

そう言って光を反射しない黒刃をゼルエルに突きつけた。
腰を落とすと円盤投げのような体勢から長鎌をゼルエルに向かって投げつける。
高速で回転する鎌は漆黒の円刃となって飛んだ。

それに危機感を感じたのかゼルエルが両手で迎撃に入る。

ガキン!!

金属的な音とともに円刃がはじかれた。
ゼルエルの頭上に逸れて行く。

「・・・・・・」

それを見たブギーポップの右手が動いた。
同時に円刃の軌道が変わる。
反転して再びゼルエルに迫った。

ギャリン!!

再度ゼルエルの腕に阻まれてはじかれるがブギーポップが指揮者のように右手を振るたび円刃は方向を変えてゼルエルに迫る。
その猛攻にゼルエルは光線を放つことすら出来ない。

「どういうことなのシンジ君?」

シンジの治療をしているレイが理解できないと言った感じでシンジに聞いた。
ブギーポップがどうやってあの飛来する長鎌を操っているのかまったくわからない。

「超能力とかの類じゃない。」
「それならどうやって?」
「右手をよく見てみて」

レイはシンジに言われた通りブギーポップの右手を観察する。

「・・・ワイヤー?」

ブギーポップの右手からは極細のワイヤーが鎌に向かって伸びていた。
どうやらそれを使うことで円刃の方向をヨーヨーのようにコントロールしているようだ。

パシン!!

ブギーポップの手元に再び長鎌が戻った。
柄の中心の部分に右手からワイヤーがつながっている。

「かなりタフだね・・・さすがと言うべきか・・・」

ゼルエル本体には傷は無い。
しかし、その両手には無数の切り傷が走り、まるで刃こぼれしている様に見える。
何度もあの円刃を受けた結果だ。

「しかし・・・シンジ君の治療もそろそろ終わる。・・・こちらもけりをつけよう。」

ブギーポップはバットスイングの要領で長鎌を水平に投げつけた。
円刃となった長鎌の軸がワイヤーでコントロールされ、水平から垂直に移行した。
唐竹割のように迫る円刃に対してゼルエルは両手でブロックするために十字で構える。
ゼルエルの瞳には光が宿りつつあった。
円刃をはじくと同時に閃光をブギーポップに叩き込むつもりだ。

「悪いがそれに付き合う気は無いんだ。」

ドン!!

ブギーポップはゼルエルに衝突する直前の長鎌に向けて衝撃波を叩き込んだ。
ちょうど鎌の後ろの部分に当たった衝撃波で円刃の回転が加速する。

ズガシャオンギャリリリ!!!

その威力は凄まじい。
ゼルエルの腕をたやすく切り裂き、本体に届いた刃はゼルエルの体を切り刻みながら体の上を走り、天に抜けた。

「ア・・・ゲグ・・・」

うめき声のようなものがゼルエルの口から漏れた。

しかしゼルエルはあきらめていない。
幸いにもコアは外れている。
溜め込んだ光線のエネルギーも無傷だ。
このまま目の前にいる死神だけでも葬るためにゼルエルは前を向く。

・・・・・・しかしそこには誰もいなかった。

「どこを見ている?」

その声はゼルエルの視界の外、後方からのものだ。
ゼルエルには見えないが第三者であるシンジたちには空中に飛び上がって長鎌を掴み、腰だめに構えているブギーポップの姿がはっきり見えた。

「弾けろ、泡のように・・・」

横一線の斬撃・・・
その一撃はやすやすとゼルエルの肉体に黒刃を潜り込ませる。
二つのパーツに分断されたゼルエルはやはりLCLになって消えた。

バシャン!!

それを確認したブギーポップは右手一本で長鎌を振った。
たちまち鎌はほどけてマントに戻る。

「そんな隠し技があったんですか?」

ブギーポップが振り向くと治療を終えて唖然としているシンジがいた。
治療が終わってすぐに加勢に来たようだが出る幕などなかった。

「教えてなかったっけ?」
「聞いてませんね」
「小回りが効かないんで普段は使わないから知らないのも無理は無いか・・・」
「危なかったんですか?」
「まあね、あれだけ外側が厚いとワイヤーで切断しようとしても数瞬かかる。その間に反撃されると面倒なことになるからね、一撃必殺の必要があったんだよ。」

確かにゼルエルを一刀で叩き切ったあの鎌は重いし強力だが応用はあまり効かなさそうではある。
ゼルエルのような相手ならともかく普段の使い勝手はワイヤーや衝撃波のほうが上だろう。

「まあいいです・・・えっと次は・・・げ!!」

シンジは地面を見て硬直した。
赤い水溜りが消えている。

次の瞬間、上からアラエルの光が降り注いだ。

・・・シンジは光の奔流を見ていた。
かかげた自分の左手に光がはじかれる様は幻想的で美しい。

「そうは思いませんかブギーさん?」
「余裕だね」
「ただの現実逃避ですよ。」

今の状態を簡単に言うと真ん中に立つシンジの掲げた左腕にアラエルの精神攻撃の光がぶつかって相殺している。
傘のように弾ける光の下にブギーポップ達が入っていると言った感じだ。
ラミエルやゼルエルのように破壊力のある攻撃ではないので吹き飛ばされると言うことも無いがこの場所から動く事も出来ない。

「どうします?」

それが現在一番の問題だ。
光の傘に透けて鳥が羽を広げたようなシルエットのアラエルが見える。
さすがに衛星軌道と言うほど離れてはいないがゆうに百メートルは上にいるだろう。
この面子の中で最大射程距離はブギーポップのワイヤーだがさすがにきつい。

「ロンギヌスの槍があればベストなんだが・・・」
「無い物ねだりですね、この状況と手持ちのカードで切れるのは・・・」

まずシンジの参戦は絶望的だ。
左手はアラエルの光を否定しているので塞がっている。
これが無ければ一発で精神攻撃を食らっているだろう。
だからまず除外、レイの能力は対象物に触れていれば強化が可能だが残念ながらアラエルを打ち落とせそうなものが手元にない。
わざわざアラエルのところまで行って接近戦に持ち込むしかないが出来るならとっくにやっている。
となるとやはりこの場での希望はブギーポップだ。

「問題は距離だな・・・」

さすがにこの距離の壁は厚い。
実際のアラエル戦でも問題になった事だが、この距離で攻撃を当てるためには誤差ゼロでアラエルに攻撃を届かせなければならない。

「出来ないんですか?」
「綾波さんにブーストしてもらったとしても厳しい、届かせるだけでなくそこからあのアラエルを倒さなければならないわけだし・・・せめて三次元じゃなく二次元なら・・・」

アラエルがいるのが空中でさえなければシンジ達にも打つ手がある。
残念ながら羽の無いシンジで近づくことさえ出来ない。

「シンジ君・・・」

レイが心配そうに声をかけるが安易に大丈夫と言うことも出来ない。
防御としてシンジの力は有効だが攻撃が出来なければ倒せなのだ。
しかもいつまでも【Left hand of denial】(否定の左手)を使い続けることも出来ないだろう。
いずれ限界が来る。

「シンジおにいちゃん?」
「ん?」

気がつけばメイがシンジ達を見上げている。
その小さな指が頭上のアラエルを指した。

「あの鳥さんが降りてこないから困っているの?」
「え?そうだけど・・・」
「じゃああの鳥さんが地面にいればいいのね・・・」
「・・・はい?」
「じゃあいくよ」
「「え?」」

シンジとレイがそろって疑問の声を上げた。
同時にアラエルの光が止まる。

「なに!?」

気がつけばアラエルの位置が変わっている。
直線距離はそのままで空中にいたアラエルが地面すれすれに浮かんでいるのだ。

「なにが・・」
「シンジ君、疑問は後だ」
「はい!」

ブギーポップに声をかけられて正気に戻ったシンジが駆け出す。
今は考える時間ではない。

二人の視線の先でアラエルが上昇を始めていた。

「間に合うか・・」

ドン!!

「なに!?」

シンジとブギーポップの間を何かが通った。
視認すら困難な速度で飛んだそれがアラエルに命中する。

ズン!!

アラエルが後方にはじかれたように吹っ飛んだ。
シンジ達が横目で後ろを見ると一緒に走り出していたレイが石か何かを投げつけたようだ。
もちろん強化付きだからすさまじい速度になっていた。

しかし、さすがにアラエルを貫くところまでは行かなかったらしい。
アラエルは頼りなさげにふらふらと再び上昇を開始する。

「にがさない」

シンジは速度を上げるとブギーポップに並んだ。
ブギーポップに向かって右手を突き出す。

ブギーポップもシンジの意図に気がついたようで差し出された手をしっかりと掴んだ。
シンジはブギーポップの手を掴むと【Left hand of denial】(否定の左手)を発動して連続で距離を否定する。

上昇を始めたアラエルの真下まで移動したシンジはブギーポップをアラエルに向かって投げつけた。

「なかなか手こずらせてくれたが・・・」

ブギーポップの手からワイヤーが飛んだ。
高速で飛んだワイヤーがアラエルに絡みつく。

アラエルはその身を無数に切り刻まれて散った。
その様は羽が舞い散るように白いかけらを振りまく。

散華した白い羽はやはりLCLになって雨のように降り注ぐ。
地面に落ちたLCLは地面を伝って一つの水溜りに戻った。

シンジに続いて地面に降り立ったブギーポップの目の前ですぐに水溜りが揺らぎ、新たなる形をとる。

「・・・・・・」

そこから現れたのはレイの姿をしたアルミサエルだった。

「いいかげんネタが切れたようだね・・・」

アルミサエルの前に立つブギーポップが左右非対称の笑みで聞く。
対するアラエルは無言、前髪に隠された瞳で感情が読めない。

「・・まだやるかい?」
「なぜだ・・・」
「なにが?」

アルミサエルの問いかけにブギーポップは自動的な口調で答える。
お互い感情と言うものの欠落した会話だ。

「何故群体であるはずのリリンに・・・単体に進化した使徒がこうもことごとく・・・」
「人間と言うものを理解できなかったのが君の敗因だな・・・遺言はそれで十分か?」

ブギーポップが一歩前に出る。
しかしアルミサエルは余裕の表情だ。

「・・・まだ・・・終わらない・・・」
「なに?」
「まだ可能性は残っている・・・」

その言葉とともにアルミサエルの姿が消えた。
今までのようにLCLに帰るのではなく完全な消滅だ。
シンジとブギーポップは周囲を見回して警戒する。

そのままの状態で数分・・・

「・・・どうやら逃げたか・・・」
「逃げた?この精神世界のどこに?」
「違う、外だよ」
「外?」

シンジは構えを解いてブギーポップを振り返った。
その顔は呆れている。

「体を捨てて行ったんだ。ユイさんから聞いた使徒の数は後・・・ひとつ・・・それに賭けるつもりか・・・」
「確かタブリスですか?」
「このまま戦っても勝ち目は無いと踏んだんだろ?もうここにはいない、それだけが真実だ。」

ブギーポップは肩をすくめた。
どうやら戦いは終わったらしい。
その体が不意に揺れる。

「ん?」

見下ろすとメイがブギーポップのマントを掴んで引っ張っている。
ブギーポップは腰をかがめてメイと同じ視線まで降りた。

「無事で何より」
「ありがとう、ブギーポップ」

メイはブギーポップの首に抱きついた。
そのままメイを抱えてブギーポップは立ち上がる。

「モテますね〜」
「君ほどジゴロでもないさ」
「何のことですか?」

シンジはブギーポップの視線が自分から微妙にずれていることに気がついた。
その視線はシンジの横を通り後ろに抜けている。

「ん?・・・うわ、レイ!?」

ブギーポップの視線をたどって背後を振り向くとそこにあった赤い瞳とぶつかった。
いつの間にか背後にレイが立っている・・・文字通りの背後レイだ。

「な、なに?」
「・・・・・・」

レイは何か不満そうだ。
何か子犬がほめてもらうのを期待しているときのような目をしている。

「・・・レイも頑張ったね・・・」
「ありがとうシンジ君」

それだけでレイの顔がほころぶ。
結構お手軽かもしれないと思ったのは秘密だ。

「ところでメイちゃん、」
「何シンジおにいちゃん?」
「さっき何をしたの?」

もちろんいきなりアラエルが地面に降りていたことだ。
その原因はメイが何かをしたのに間違いは無い。

「あのね、あの鳥さんのところに地面があるようにしたの」
「・・・はい?」

シンジにはメイの言っていることが理解できなかった。
おそらく子供の感覚で話しているのだろう。
隣のレイも疑問顔だ。

「・・・なるほどね」

何かに思い至ったのかブギーポップが苦笑する。

「何かわかったんですか?」
「ああ、多分この世界をずらしたんじゃないか?」
「世界をずらした?」

シンジは思わず聞き返した。

「要するにアラエルの下に地面があるようにこの世界そのものをずらしたんだよ。ちょうど僕らとアラエルの位置関係に平行になるようにね」

ブギーポップの説明にメイがうれしそうにうなずく。
どうやら本当らしい。

「出来るんですかそんなこと?」
「この世界はこの子の世界でもある。」
「でもぼくは何も感じませんでしたよ?」
「最初から地面に立っていたからだろ?動いたのは地面のほうなんだから、空中にいたアラエルにとってはいきなり地面が近づいてきたと言うことになるね。」

精神の支配する内面世界でのみ可能な反則技だ。
物理の支配する外の世界ではまず不可能・・・そこまで考えたとき、シンジはあることを思い出してあせった。

「そ、そういえば・・・外のアルミサエルの体はどうするんです?このままにしてはおけないでしょう?」

アルミサエルが体を捨てたのなら危険は無いと思うがそのままにもしては置けない。
なんといってもアルミサエルの体にはS2機関が残っているはずだ。

「それなら心配ないさ・・・」

ブギーポップはメイを見下ろした。

「この子がいる。」
「「え?」」

シンジとレイは同じように驚きの声を上げた。

「?・・・」

メイにはわけがわかっていないらしくブギーポップを不思議そうに見ていた。

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発令所は騒然としていた。
誰もが叫ぶように会話している。

その原因は正面モニターに映っているものにあった。
一本の光る紐でつながっている初号機と零号機だ。

「リツコ!!どうにかなんないの!!」
「わからないのよ!!何もモニターできないの!!」

ミサトとリツコさえも叫ぶように会話しなければ聞こえないほどに発令初は騒がしい。

「アスカ!なんとか出来ない!?」

この状況で何かが出来るとすれば同じエヴァのパイロットで唯一無事なアスカと弐号機だけだ。
この際機体を捨ててでもエントリープラグを回収させるしかない。

『ミサト、落ち着きなさい・・・』
「何いっているのよ!!」
『落ち着けって言ってんのよ!!』

アスカの怒声で騒がしかった発令所が一気に静まる。
一泊おいてアスカが口を開いた。

『この状況を作り出したのはシンジなんだから・・・きっと何かある・・・』
「で、でもアスカ・・・」
『きっと大丈夫・・・何かあるのよ・・・』

アスカはそう言うがモニターに映る顔は険しい。
口でなんと言おうとも心配な物は心配なのだ。
だがアスカはシンジに任せて手を出さない。
今までの経験からシンジがやけになってこんな事をするとは思えない。
どういう意図があってこんな事をしたのかはわからないが何か考えがあってやったはずだ。
だとすればそれがわからないアスカが介入してシンジの目的が遂げられなかったらさらにまずい方向に転がりかけない。
アスカは手を出したい欲求とシンジ達を心配する思いを無理やり封印してじっとしている。
それに気づいたミサトたちも冷静さを取り戻した。

「使徒に変化!!」

アルミサエルを観察していた日向から報告が入った。
全員の瞳がモニターを見る。

ズル!!

いきなり初号機に刺さっていたアルミサエルが抜ける。

「え、なに?」

さらにアルミサエルの体は高速で何かに引っ張られて飛んでいく。
その先にいるのは零号機・・・アルミサエルは零号機の中に吸い込まれていく。

「どういうこと!?使徒を押さえ込むつもり!!?」

リツコが言い終わる前にアルミサエルは零号機の中に完全に吸い込まれた。

『シンジ!!』

叫ぶようなアスカの声に再び全員の視線が移動する。
そこに映っているのは倒れかけた初号機を支える弐号機だった。

『アスカ?』

シンジの声が響いた。
同時にモニターが復活してエントリープラグの中のシンジが映る。
どうやらシンジは無事らしい。

『どうなっているのよ!説明しなさい!?レイ!!?』

モニターの中の零号機がゆっくりと立ち上がった。
空を見上げるような姿で固まっている。

「レ、レイ?」

ミサトの声に不安が混じる。

零号機は使徒に乗っ取られたのかと言う予感に背筋が寒くなった。
単眼が赤く光り、初号機と弐号機を見る。

『大丈夫だよ』

シンジの声が響く。
それは自信のこもった断定・・・

『シンジ君・・・アスカ』
「レイ!!」

思わずミサトは叫んだ。
ウィンドウが開いてレイの顔が現れるがびっくりしている。
ミサトの声に驚いたようだ。

「大丈夫なの!!?」
『も、問題ありません・・・』

ミサトの剣幕にレイは面食らっているようだ。
心配していたのだから仕方ないが話が進まない上にレイを怯えさえては仕方ない。
ミサトを押しのけてリツコが前に出た。

「レイ?今どんな感じ?」
『赤木博士・・・問題ありません・・・』
「使徒はどうなったの?」
『今はもう・・・いないようです・・・』

レイの対応はぎこちない。
もともと彼女には腹芸のスキルは皆無に等しいが真実を話すわけにも行かなかった。
まさかメイがアルミサエルの体を吸収したなどと言えるわけがない。
レイは精一杯の演技でごまかそうとしている。
彼女には悪いがばればれだ。

リツコはそんなレイに目を細めると横目でマヤを見た。
青い顔で頷いている。
彼女の端末にある表示を見つけてリツコが笑えばいいのか悩めばいいのか微妙な顔になった。

「いいわ、帰還しなさい・・・」
「ちょっとリツコ!?いいの?」
「・・・とにかく三人とも帰還しなさい・・・」
『『『了解』』』

三人が頷くとモニターから三人の顔が消えて回線が切れる。

「リツコ・・・使徒が零号機に入り込んだのよ!!?」
「多分・・・大丈夫・・・」
「多分って・・・」

リツコはミサトを無視してマヤのモニターをのぞきこむ。
そこに表示された情報はリツコの予想を裏付けていた。

「機体の状態が変化している。」
「え?・・・どういうこと?」
「つまり・・・今の零号機は初号機や弐号機と同じ状態になっていると言うことよ。」
「あんたそれって!!」

思いついた事にミサトが驚く。
その言葉が意味するものは一つに事実・・・

「そう、零号機の中にS2機関が生成されている・・・さっきの使徒を取り込んだようね・・・」
「そんな!!」
「珍しくないでしょ?弐号機の時と同じ状態よ。」

もはや声も無い。
予想外の事がたてつづけに起こり過ぎて頭がついていかないのだ。

「ミサト・・・何しているの?」
「え、はい?」
「さっさと回収の指示を出しなさい」
「あ、そうね・・・」

ミサトだけでなく他のスタッフも慌てて動き出した。
一気にあわただしくなる。

そんな中で、リツコはモニターに映る3体のエヴァをじっと見ていた

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もはや定例会より頻繁になった非常召集・・・
今回はモノリスではなく立体映像でメンバーが集まっている。

『遂に第16までの使徒を倒した。』
『さよう、これでゼーレの死海文書に記載されている使徒はあと1つ・・・』
『これは喜ぶべきことなのかな・・・』

喜びの声など聞かれなかった。
全員が何も言わずに黙っている。

『約束の時は近い・・・・・・その道程は長く、犠牲も大きかったな』
『・・・ロンギヌスの槍の損失・・・これだけで碇の解任には十分な理由ですな』
『・・・しかし・・・』

言いかけていた言葉が途中で止まった。
いまやそれどころえではない。
メンバーの一人が意を決して発言した。

『零号機までがS2機関を取り込んだ。』

沈痛な沈黙が落ちる。
彼らの予想ではシンジ達は使徒との戦闘によって傷つき、その力を弱体化させるはずだった。
しかし現実は彼らにでは無く、ゼーレにつらく当たった。

いつの間にかネルフにある三体のエヴァにはS2機関が息づいている。
弱体化どころか敵である使徒を取り込んで自分達の力を強化して行っているのだ。

『零号機がS2機関を取り込んだことも問題ですが・・・今回の使徒の行動は不可解の件が多すぎる・・・これは調査するべきでは?』
『さよう、とくにに今回、碇シンジは率先して何かを行ったようだ・・・事情を聞かないわけにはいくまいよ』
『しかし碇シンジに直接聞いたところですんなり話すとも思えない。』
『新たな人柱が必要ですな・・・冬月を無事に帰した意味が解るだろうというもの・・・』

会議を締めくくるようにキールが最後に口を開いた。

『うむ・・・我々には真実を知る事が必要だ。』

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パイプいすに座りながら目の前の机においてある湯気の立つコーヒーを見ているシンジは疲れた顔をしていた。

「出来れば早く帰りたいんですけど・・・」
「つれないのね・・・」
「誰かさんが何度も検査するからでしょ?もうすぐ日付変わっちゃいますよ。」
「パイロットの状態を検査するのは当然でしょ?」

シンジの口調に多少不機嫌さが混じる。
しかしそれも仕方ない。
帰還と同時に何時間もかかって徹底的な検査をされたのだ。
そんなこんなで今は深夜・・・もうすぐ0時を回ろうかと言う時間・・・
それだけならシンジもまだどうと言う事は無い。

「ごめんなさいねシンジ君、悪いとは思っているのよ」

目の前のリツコがまったく悪びれていない感じでそんな事をのたまった。
やっと検査から開放されて家に帰れると思ったらいきなりリツコに呼びとめられて執務室に拉致られたのだ。
不機嫌にもなる。

「それで、お話とは一体なんですか?長くなります?」
「長くなるかどうかはあなた次第ね・・・」
「・・・どういうことです?」

リツコは自分のデスクに座った。
どうやら簡単には帰れないたぐいの話らしい。

プシュー
「先輩!!」

いきなり部屋の扉が開いてマヤが駆け込んできた。
走ってきたのか息が乱れている。

「マヤ?あなたなんでここにいるの?仕事は?」
「全部終わりました!!」

そう言ってマヤは書類の束を差し出す。
リツコはそれを受け取って確認するが問題は無いらしい。

「そう、じゃあ今日は上がっていいわ・・・」
「あ、あの先輩は・・・」
「私はこれからシンジ君とちょっと話があるから・・・」

リツコは横目でシンジを見た。
シンジは黙って自分達を見ている。
どういう状況なのか見極めているようだ。

「せ、先輩?」
「なにかしら?」
「わ、私もご一緒していいですか?」
「・・・マヤ・・・」

リツコは頭を抱えたくなった。
こうなる事がわかっていたためにわざと自分の仕事も押し付けて来たのだ。
まさかこの短時間で終わらせて来るとは思わなかった。

「し、シンジ君もいいかしら?」

マヤはシンジを振り返るとぎこちない笑みでシンジに聞く。
何か緊張しているようだ。

「・・・ぼくは構いませんけど、大体ぼくは呼び出された方なので何の話かも知らないんですよ。リツコさんがマヤさんがいても問題ないって言うならいいんじゃないですか?」

シンジの言葉に頷くとマヤはリツコを振り返った。
その瞳には決意の色がある。

「・・・いいのね」
「はい」
「わかったわ、あなたもいていいわよ」
「はい!!」

リツコの言葉にマヤは真剣な話で返事をした。
シンジはそんな二人をじっと見ている。

「待たせたわねシンジ君?」
「いえ、ぼくもリツコさんの話に興味が出て来ましたよ。」

二人はそろってニヤリと笑った。






To be continued...

(2007.09.08 初版)
(2007.11.17 改訂一版)
(2007.11.24 改訂二版)


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