第一話 全ての始まり
presented by ピンポン様
一つの街を一望できる、ある高台に一人の少年が立っていた。少年の眼下には、いくつもの高いビルが所狭しと空に向かって突きだしている。
太陽が段々とその巨大な姿を隠していき、辺りを真っ赤に染め上げていた。
銀色の髪が光に反射して、その瞳と同じように紅く染まっていた。悲しさと寂しさを顔に浮かべ、少年の目から一筋の涙が流れ落ちた。
「……ここが僕の生まれた所……第三新東京市…………」
掠れるような小さな声で呟く。
少年の目からは止めどなく涙が流れ、彼の頬にはいくつもの涙の跡が付いており、顎から涙が滴って足下に小さな水たまりを作っていた。
――夏の終わりのある一日だった。
コンフォート17と名付けられたマンション。何十もの世帯がある中、碇と書かれたネームプレートが付いている家のある一室から目覚ましの音が聞こえてくる。
その音は暫く鳴り続けたが部屋から誰かが出てくるということは無かった。
「シュウジもしょうがないわね〜」
「ああ」
ユイとゲンドウは朝食を食べながら、自力で起きたことの無い息子を非難していた。だが、二人は慌てることなく黙々とご飯を食べていた。
朝食を食べ終わり、ユイがキッチンで洗い物をしていると、玄関から呼び鈴が聞こえ、出てもいないのに誰かが勝手に上がり込んできた。
「おはようごさいます! おばさま」
腰まで伸ばした母親譲りの赤い髪を揺らしながらアスカはキッチンに顔をだしユイに笑顔で挨拶する。
「おはようアスカちゃん。シュウジはまだ寝てるわ」
ユイも笑顔でアスカに返す。
アスカが来るのは毎朝の事なので、特に驚きもしない。
「それじゃあ、起こしてきま〜す」
家の中だというのに、サングラスをかけているゲンドウには一瞥もくれず、シュウジの部屋に向かっていく。
それに対してゲンドウが気にしてるのは内緒だ。
アスカははじけ飛びそうな勢いでドアを開け、未だ眠っているであろうこの部屋の主の待つベッドへと歩いていった。
そんな事などお構いなしにベッドの上から一人分の寝息が聞こえてきた。
布団の先からは柔らかそうな黒髪が見え隠れしており、中世的な顔の少年がすやすやと眠っていた。
彼女がそれを見ると一瞬だが穏やかな顔になった。しかし、ここに来た目的を果たすため思い切り肺に息を吸い込む。
「くぉーらバカシュウジ! いい加減起きなさい!」
溜めた息を一気に吐き出すかのように怒鳴りながら布団を剥ぎ取る。
最初の頃、アスカも優しく起こしていたのだが、それでは待ったくもって起きない事を身にしみて分かったので、こうして毎朝乱暴に起こしている。
シュウジが目をこすりながら寝ぼけ眼で怒鳴った人物を確認する。
「なんだアスカか……もう少し寝かせてよ……」
シュウジはアスカだと分かったから安心したのか、取られた布団をくるみ目を閉じた。
「いいからさっさと起きなさい!」
再び布団を奪い、先ほどより大きな声で怒鳴った。
シュウジがそれに反応して、もそもそと起き出した。
「ふぁ〜、おはよう。アスカ」
眠い目をごしごしとこすりながら体を起こす。
アスカからの返事が返ってこないのを怪訝に思い、彼女の顔を見ると真っ赤に染まって自分の下半身を見ていた。視線を追ってみると、そこには自分の小さな息子が、トランクスの社会の窓から顔を出しており、天に向かって自己主張してる姿が目に映った。
「う、うわ〜! な、何見てんのさ!」
急いで毛布を下半身に巻き付ける。
「何朝っぱらからナニ変なもん見せてんのよ!」
大声で怒鳴るが、羞恥のため顔が真っ赤になっているので迫力が無い。
「し、仕方ないだろ! 朝なんだから!」
こちらも見られて恥ずかしいのか真っ赤になっている。
「開き直ってんじゃないわよ!」
その後、シュウジの部屋の中に一つのかん高い音が鳴り響いた。
「それじゃ、行って来ます。おばさま」
「行って来ます……」
笑顔のアスカとは対照的にシンジはブスッとした顔をしていた。
「はい。行ってらっしゃい」
穏やかに微笑み二人を見送るユイ。
アスカはどこか元気の無いシュウジの背を押しながら出ていく。
玄関から出ると壁に寄りかかり、蒼銀の髪をした少女が紅い瞳をこちらに向けていた。
「おっそーい! 全く何してたのよ!」
シュウジ達を待っていた少女が睨む。
「このバカが中々起きなかったのよ!」
アスカはシュウジに視線を向ける。
「まあそうだと思ってたけど。……? 碇君そのほっぺたどうしたの?」
シュウジの頬には真っ赤な紅葉がついていた。
「アスカにまた叩かれたんだよ……」
恨みがましい目をアスカに向ける。
「あんたが変なもん見せるから悪いんじゃない!」
先程の小型シュウジを思い出したのか、顔を赤くしながら叫ぶ。
「変なモノってなに?」
少女がシュウジに訊く。
「そ、それより早くしないと遅刻するよ」
彼は誤魔化すかのように階段に走っていく。
「もうこんな時間! 行くわよ! レイ!」
時計を見てシュウジに続くアスカ。
「ちょ、ちょっと待ってよ〜」
置いてかれたレイが焦って二人に向かって走っていった。
先程ホームルーム開始のチャイムは先ほど鳴ったが、3−Aと書かれたプレートが突き刺さっている教室の中に、担任の姿は見えなかった。このクラスの生徒は、担任がまだ来てないことを疑問に思うなどと無駄な事をしている生徒は一人を除いていなかった。その一人以外の生徒は各々好き勝手にしていた。
このクラスの学級委員長を務めているのがその一人だ。真っ黒な髪をおさげにし、そばかすがチャームポイントの洞木ヒカリだった。
ヒカリは遅れてくる担任にぶつぶつと文句を言っていたようだったが、二人の親友がまだ来てなかったので、今日だけは許すと心の中で言ったそうな。
視点を窓辺に変えると、二人の男子生徒が何やら話していた。
「シュウジ達おそいな〜」
メガネを掛けてそばかすを顔に張り付けている少年が、ビデオカメラを教室に向けながら呟いた。
その少年は「日常を撮るのが趣味だ!」と言い張り、いつもカメラやらビデオやらで女生徒をフィルムに収めていた。
「シュウジが寝坊でもしとるんやないか?」
真っ黒いジャージに身を包んだ校則違反者が答える。
彼の家が貧乏だから制服を着てこないわけではない。入学式の時に一度着てきて以来ずっとジャージなのだが、なぜジャージなのかは誰にも分からず、一中の七不思議の一つになっている。
その時、廊下から慌ただしい足音が聞こえ扉が勢いよく開いた。
「セーフ! ミサトはまだ来てないわね」
アスカの元気のいい声が教室中に響く。
後ろから息を切らせたシュウジとレイが続く。
「ハア、ハア、……つ、疲れた」
「な、何であんなに、ハア、ハア、飛ばしてるアスカが、ハア、い、息一つ切らしてないのよ……」
言葉通りアスカは息一つ乱れず余裕だった。
「あんた達とは鍛え方が違うのよ!」
と言い残してさっさとヒカリの元へと歩いていった。
疲れながらもレイが後に続く。
ヒカリにどうして遅くなったかのかと、色々訊かれてアスカの顔が真っ赤になっていたが気にしないでおこう。
それを見届けて、息を整えたシュウジがメガネとジャージに近づいていく。
「おはよう。トウジ、ケンスケ」
「おはようさん。それにしても遅かったやないか?」
「おはよう、シュウジ。また夫婦喧嘩でもしてたのか?」
トウジとケンスケが笑いながら訊く。
「夫婦喧嘩ってなにさ……僕とアスカはそんなんじゃないよ……」
溜息を吐きながらケンスケを見る。
その言葉にケンスケは怪しくメガネを光らせながら不敵に笑う。
「ほほう、誰も惣流とは言ってないんだけどなぁ。やっぱり惣流のことが好きなのか?」
メガネを中指でクイッと上げながらシュウジに詰め寄る。
最初、鈍感が売りのトウジは、なぜケンスケが不敵に笑っているのか分からず、気色悪いやっちゃなと思っていたが、メガネが言った言葉の意味を理解すると不気味に笑う。
「ほうか、センセは綾波より惣流を狙ってたんやな?」
ジャージマンもシュウジに詰め寄る。
「な、何言ってんのさ!? 二人がいつも僕とアスカのことをからかってるから……」
「まあまあ、みなまで言うな。センセのことはちゃ〜んと分かっとるわ」
「そうだぜ、俺達も協力するから」
二人はウン、ウン、と頷き、シュウジの言葉を遮った。
「だから違うってば……」
この二人に何を言っても無駄だということを知っているので、諦めたように溜息をついた。
彼ら三人は、本気でバカなので皆から三バカと呼ばれている。一人一人バカの理由があるのだが、その話はまたいつかにでも。
すっかり忘れ去られた頃、前方の扉が開き、髪の毛を紫色にするというチャレンジャーが教室に入ってきた。
「ごっめ〜ん、ちょっち寝坊して。今日休んでる人いる? ……いない? っそ。じゃ、これでホームルーム終わりね。洞木さん、あとよろしく!」
葛城ミサトはドアの入り口で生徒の出席を確認して出ていった。
毎度のことなのでヒカリは何も言わないが、潔癖性の彼女には許せないらしく、たびたび教育委員会に訴えている。そのせいで減棒になったりしているが、ミサトは何故減棒されているか理解できないらしく、時々荒れて授業中にビールなど飲んでいる。勿論、こっそりヒカリがちくっている。
「あ〜もうこんな時間。早く帰ろっと」
時刻は午後五時を少し回ったところ、レイは一人で教室にいた。
なぜこんな時間に一人で学校にいるかと言えば、別に部活をやっているわけではない。彼女達(三バカ、アスカ、ヒカリ)は帰宅部でいつも一緒に遊んでいるのだが、今日はクラスの担任である、葛城ミサトの手伝いをしていた。
レイもミサトを手伝う気など無かったが「レイは日直だからちょっち残っててねん」などと帰り際に言われ、ただ日直だからという理不尽な理由で、ミサトの溜まってる仕事を手伝わされたのだった。
「まったく! 葛城先生もあのぐらい一人でやってよね! 皆帰っちゃったじゃない!」
ぶつぶつと文句を言いながら荷物を鞄に押し込んでいる。
「でも、アスカと碇君はネルフに呼ばれてたから、どっちにしろ一人だったわね」
鞄を手に取り歩き出す。
(今日は一人だしあそこに行こうかな)
そして校門から出ていつもとは違う道を歩き第一中学校を後にした。
辺りからは虫の鳴き声が聞こえ、人の気配が全然無い自然に囲まれていた。右を向くと木が山のように生えており、左にはどのぐらいの高さか分からないが崖があり、人が飛び越さないようにガードレールが続いている。
そんな所を、レイは一人で黙々と歩いていた。
第三新東京市を一望でき、この時間ならば太陽が地平線の彼方へと消えていくのが見え、夕日がとても綺麗に見える所がある。そこが彼女のお気に入りの場所であり、この先もう少し行けばそこに着くのだ。
ひょんなことからこの場所を見つけて以来、一人でいるとここに来ては景色を楽しんでいた。
軽く三十分は歩いて、彼女は目的の場所に着いた。
だがそこには先客がいた。
見た目(と言っても後ろ姿)はレイと同じくらいの歳の少年に見える。白いシャツを着ており、青いジーパンを履いていた。少年の背は彼女より高く、でもそれほど高いというわけではない。元が何色か分からないが、夕焼けに赤く染まった髪をしており、ただただ街を見下ろしていた。
誰もいないと思っていたレイは、ただ呆然と少年の後ろ姿を見ていたが、ここには自分と少年の二人しかいないことに気づき、襲われたらと思い慌てて帰ろうとした。
急な動作で足音が予想以上に大きく、少年がレイに振り向いた。
走り出そうとしていた彼女はその少年を見て、そこから逃げるということが頭からすっかり抜け落ちた。
振り返った少年の瞳から無数の涙が流れてるのを見たからだった。夕日を背景にしたその姿はとても綺麗で神秘的だった。
レイはその美しい姿を暫く呆然と眺めていた。
「こんにちは」
唐突にその少年は流した涙も拭かず、綺麗な微笑みを浮かべ口を開いた。
「え!? あ、その、こ、こんにちは」
まさか話しかけてくるとは思っていなかったレイは慌てて言葉を返す。
彼女の慌てた様子が面白かったのか、クスクスと笑う少年。
「わ、笑わなくてもいいじゃない!」
自分が笑われてることに気づき真っ赤になって怒る。
笑いが治まった少年は、自分が泣いてることに今気づいたかの様で慌てて涙を拭く。
「ごめんね。君の慌ててる姿が面白くてつい笑っちゃったよ」
少年は悪びれた様子もなく穏やかに微笑んだ。
「だ、だってこんな所に誰かいるなんて思わなかったから……声をかけてくるなんて思わなかったし……」
少年の微笑みにうっすらと頬を染めながら答える。
その時レイは、少年の瞳が自分と同じ紅い色だと気づいた。髪もよく見れば銀髪のように見える。
「あなたもアルビノなの?」
彼女は自分と同じような瞳や髪の色を見たことが無かった。
アスカは目は青く、赤い髪だが外国に行けば同じような人はたくさんいる。だがレイのように紅い瞳、蒼い髪の人など世界中探してもどこにもいないのである。
レイは初めて自分と同じ人を見て訊いてみたくなった。
「うん。君もそうなんだね?」
少年とレイの視線が交わる。
「ええ。今まで私以外で見たこと無かったからびっくりしたわ」
レイはこの少年が危害を加えなさそうと思い安心したように微笑んだ。
「そうなんだ。他にも僕の知ってる限り僕と同じ色をした友達がいるよ」
少年の言葉にびっくりしたような顔をする。
「へ〜、世界は広いのね……世界中で私だけだと思ってたのに」
二人とも笑いあう。
レイは右手を少年に差し出した。
「私、綾波レイっていうの。あなたは?」
「僕は碇シンジ。よろしくね綾波さん」
出された手をしっかりと握り返すシンジ。
「別にさん付けしなくていいよ。友達も呼び捨てだし。ふぅ〜ん、碇シンジ君って言うんだ……じゃあ私はシンちゃんって呼んでいい?」
「そう? じゃあ僕は綾波って呼ぶね。……ところで、どうして僕はシンちゃんなの?」
ちょっと戸惑った様子のシンジが訊き返す。
「私の友達にも碇って名前の男の子がいるから。それとも……嫌だった?」
上目遣いでシンジを見る。
レイを見たシンジは頬を赤くする。
「い、嫌じゃないよ! ただ、そんな風に呼ばれたこと無かったからびっくりして」
照れたのを誤魔化すかのように一気に言葉を繋げる。
「じゃあ、シンちゃんに決定! それと、シンちゃんの顔が赤いのはどうしてかな〜?」
元気良くシンジの呼び方を決めたと思ったら、急に悪戯っぽい顔になってシンジに詰め寄る。
「べ、別に何でもないよ! ほ、ほら今は夕方だからそれで赤く見えるだけだよ!」
僅かに後ずさり、明後日の方を向く。
「ホントに〜?」
「ホントだよ!」
レイが更に近づいていくが、シンジは後ろにガードレールがあり下がれない。
シンジは観念したようで、赤くなった顔をレイに向けた。
「あ、綾波が可愛かったからだよ」
恥ずかしいからかとても小さな声だった。
「えっ?」
一方レイは、シンジの顔が赤くなったので悪戯心がわきあがり、ちょっとからかってみようと思っただけで、そんなことを言ってくるとは露ほども思っていなかった。さらに真っ正面から真剣な顔で見つめられ真っ赤になった。
「な、何を言うのよ……」
彼女は顔を赤くして俯いた。
シンジはそれを見て、やっぱり可愛いなと思った。
「そういえば、綾波はこんな所に何しに来たの?」
ここは女の子一人で来るには何もすることの無い場所だ。
「え? あ、んと、私はここから見える夕日を見たくて……」
俯いてさっきの事を考えていたレイは、シンジの問に咄嗟に答えれなかった。
「そうなんだ?」
シンジが振り向いて夕日を見る。
「うん、ここから見る夕日がとても綺麗で……時間があればここに来てるの」
レイもシンジの隣に並ぶ。
「ホントだ……すごく綺麗……」
「うん……綺麗……」
シンジとレイは、ここで二人でいるのが当たり前であるような錯覚に落ちていた。まるで地球が太陽を飲み込んでいるかのように、地平線にゆっくりと吸い込まれていく様を、二人は穏やかな顔で見ていた。
すっかり日も暮れて空には満点の星空が輝いていた。
暫く夕日を眺めていた二人だったが、レイが時計を見ると「もうこんな時間! お母さんに怒られる!」と言って、高台から降りてきていたのである。
二人は色々と話しをしながら夜の街を歩いていた。
レイは自分の事や家族、友達、学校のことなどを楽しそうにシンジに話していた。シンジは聞き役に回っていたが、彼女の話しを聞いてるだけでホントに楽しそうにしていた。シンジのことも聞いたレイだが、この街に住んでないとのことなので、自分の電話番号を教えていた。
大きな十字路に差しかかるとレイがシンジの方を向いた。
「シンちゃん、絶対電話してね! もし電話してこなかったら……」
「してこなかったら?」
「電話してきたら教えてあげる」
「それじゃあ絶対電話しなきゃいけないね」
二人は顔を見合わせて微笑む。
「じゃあシンちゃんまたね!」
「うん。またね綾波」
大きく手を振りながらレイは走り去っていた。
シンジはその後ろ姿が消えるまで見ていた。
「あの子がファーストチルドレン……」
そう呟く彼の表情からは何も読み取ることが出来なかった。
夜も更け、ユイがリビングで紅茶を飲みながらテレビを見ている。隣には風呂から上がったばかりのゲンドウがタオルで頭を拭いていた。風呂から上がったばかりだというのにサングラスを掛けたままである。
シュウジも先ほどまで一緒に家族団欒していたのだが、急にアスカが遊びに来て今は部屋で遊んでいる。彼女は暇さえあればシュウジの所に遊びに来ている。レイも頻繁に遊びに来るのだが、今日は一人で部屋に閉じこもっていた。
そんな永遠に続いて欲しいいつもの日常、だが一つのチャイムをきっかけに平和な日常は音を立てて崩れていった。
「こんな時間に誰かしら?」
ユイが立ち上がり玄関へと歩いていく。
玄関に向かう途中にもう一度チャイムが鳴る。「キョウコかしら? それともレイちゃん?」と呟き、相手を確認せず不用心に鍵を開けた。
「は〜い。どなた?」
彼女はドアを開けそこにいる少年を見て驚愕に目を見開き硬直した。
銀髪の髪に、紅い瞳、透けるような白い肌。そしてなにより彼女の息子、シュウジと瓜二つだったからだ。彼女の知る限りこのような外見の人物は一人しか知らない。
「ま、まさ、か…………シ、シンジ?」
ユイは喉の奧から掠れるような声を何とか絞りだした。
そこには穏やかに微笑んでいるシンジが立っていた。
「久しぶり? かな。母さん」
To be continued...
(2007.05.13 初版)
(2007.05.19 改訂一版)
(あとがき)
どうも、ピンポンです。前回の十二年後です。え〜とっ、本編では中2だったんですが、この作品では中3にしました。特に意味は無いんですけど……。『使徒が嫌い、でもエヴァは好き』の中には原作の使徒もエヴァも出ません。違う形で出てきます。僕はトウジのことはけっこう好きなんですが、ケンスケと委員長はあんまり好きじゃなかったりします(あとミサトも)。なので扱いがけっこうひどくなるかもしれません。レイを本編系にするか、リナレイにするか、かなり迷ったんですがリナレイにしました。リナレイ嫌いな人がいたらごめんなさい……僕はけっこう好きなんですよね……そういう訳でここまで呼んでくださった方々ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。あ、あと僕はLRSが好きなのでこの作品はLRSです。
作者(ピンポン様)へのご意見、ご感想は、または
まで