新世紀エヴァンゲリオン Enemies of Female

第五話 歓迎会と戦勝祝

presented by Red Destiny様


「うわあ、シンさんの家って大きいんですね。驚きましたよ。」
シンジは、口を大きく開けたうえに目をまん丸くした。シンジが連れて行かれた所にあったのは、まさに大邸宅と言える代物。ゴルフ場よりも広い庭に、3階建てながら50部屋以上はあろうかという大きな家で、今までシンジが住んでいた離れよりも数百倍は広い。だが、シンは事も無げに言う。
「シンジ、これは別荘だよ。俺の自宅はドイツなんだ。自宅はもっと広いぜえ。」
「ええっ、本当ですかっ!」
シンジは、飛び上がらんばかりに驚いた。いかにシンが大金持ちであるのか、思い知らされる。だが、まだそれは序の口。玄関から中に入ると、シンジの前には20人ほどの美少女達が待ち構えていた。しかも、全員がメイド服!!!今ここにケンスケがいたら、目を輝かせながら写真を撮りまくるに違いない。

「「「「お帰りなさいませっ!!!!」」」」
少女達は、シンジ達に向かって一斉に頭を下げる。シンジは、こんなに大勢の美少女を一度に目にした事がないため、びっくりして口をパクパクしながら動きが止まってしまう。そのため、シンがやれやれと言いながら口を開いた。
「ああ、ただいま。みんな、こいつがシンジだ。俺の弟分だからよろしくな。」
少女達は、シンジに向かってよろしくお願いしますと再び頭を下げる。シンジも恥ずかしさに顔を赤くしながらも、それに応えて頭を下げる。だが、悪い気はしない。むしろ、ちょっぴり嬉しいくらい。

「で、こっちがアサギだ。こいつもよろしく頼む。」
シンは、シンジに続いてアサギを紹介する。
「アサギ・コードウェルです。今日からお世話になりますので、よろしくお願いします。これからも、私の仲間が何人か加わる予定ですので、私共々よろしくお願いします。」
アサギが頭を下げると、小さな笑い声がして、茶髪で碧眼の美少女が一歩前に出た。

「アサギさん、お久しぶりですね。心配しなくても大丈夫ですよ。私からみんなには言ってありますから。」
「まあ、ミリアリア。あなたがここの手配をしたの?」
アサギの顔がぱっと明るくなる。ミリアリアは、アサギと同じ学園出身の後輩にあたり、長い付き合いになる。アサギよりも3歳年下だが、仲間の中でも最も気心が知れていた。肩にかからない程度に髪を伸ばしており、前髪を真ん中で分けているためおでこが少し見えるが、大人しい感じの美少女だ。普段は優しいが、キレると実は怖かったりする。そんなことなど露知らぬシンジは、また美人のお姉さんの知り合いが増えると単純に喜んで、鼻の下を長くする。

「ええ、そうです。マリューさんに頼まれまして。」
ミリアリアは、にっこり笑う。マリューもアサギと同じ学園出身であり、アサギの先輩にあたるとても優秀な女性だ。ちなみに、この3人は一時期一緒に住んでいたこともあり、気心は知れている。
「それじゃあ、何も心配いらないわね。で、他のみんなはもう来ているのかしら。」
「いえ、残念ながら今日はアサギさんだけです。でも他のみんなも1週間以内には集まるはずです。ふふふっ、賑やかになりますよお。」

そこで、ちょっと心配になったシンジが、シンにこっそりと耳打ちした。
「あの、シンさん。ここって、男はどれ位いるんですか。」
「俺とお前だけさ。良かったなあ、シンジ。美女や美少女に囲まれて暮らすなんて、夢みたいだろう。」
ニヤリと笑うシンに、シンジはなんだか嬉しいような哀しいような、何だか不思議な感じがした。



「それではっ!碇シンジの歓迎会、兼、戦勝祝を始めるぞっ!いいかーっ!」
「「「「いいぞーっ!」」」」
その晩、シンの号令で盛大な宴が開かれた。男はシンジとシンの二人だけ。後は美女か美少女だけ。畳の部屋にテーブルを3つほど並べているが、テーブルの上には豪華な食事が山のように積まれている。もちろんお酒も。もしもトウジがいたら、食事の量に大喜びしただろうし、ケンスケがいたならば、被写体の多さに狂喜乱舞したであろう。

ネルフからは、ミサト、リツコ、マヤ、レイ+今日ネルフに出向したばかりのナタルが参加して、5人で1つのテーブルを占領している。ちなみに、数週間前の起動実験失敗の際に新型の安全装置が作動したため、レイは特に怪我をしていない。もちろん、これはシンの差し金だ。
ここの住人としては、シンの仕事上の秘書であるマリュー・ラミアス、この家の留守を任されているミリアリア・ハウ、シンの妹の飛鳥マユミ+今日からここの住人になったアサギ・コードウェルの4人が参加し、これまた1つのテーブルを占領している。

宴会の前に一通り自己紹介は済んでいるのだが、やはりというか知り合い同士で固まって座ってしまう。このためか、シンジの隣はシンだけという状況だ。だが、宴が始まって直ぐに、シンが妹のマユミを呼びつけた。
「おーい、マユミ。ちょっとこっちに来い。」
「はっ、はーい。」
妹の山岸マユミ、……ではなく飛鳥マユミは、長い綺麗な黒髪を揺らしながら来た。メガネがとってもいい感じ。
「お前はシンジの隣に座れ。これから色々と仲良くしてやるんだぞ。」
そう言って、シンは席を立つ。いきなりのことに、シンジは声も出せなかった。シンさん待ってよ、と言いたかったのだが、そんなことを言う暇もなかった。いきなり知らない女の子が隣に座っても、何を話していいのか分からないから本音では断りたかったのだが、さりとて仮にもシンの妹に、自分の隣に来るなとも言えない。もちろんシンジには、洒落で「チェンジ」などと言える度胸も経験もない。・・・中学生だから当たり前か。
「はい、分かりました。よろしくね、碇君。」
シンジの心の中の葛藤を知ってか知らずか、マユミは右手を差し出してきた。
「え、ええっ。」
シンジは少し戸惑った後、おずおずと右手を差し出した。これでも今日はアサギやミサトと握手をしたので、少しは女の子との握手に慣れていた。今までのシンジだったら、おそらくこうはいかない。
「シンから聞きましたけど、私達同じクラスになるそうなんです。これから、仲良くしてくださいね。」
そう言いながら、マユミはシンジの手を握りしめる。シンジは、女の子の手を握ることなど滅多に無いため、恥ずかしさに顔を赤らめる。

と、そこへもう一人の客、これまた美少女のレイが現れた。レイもシンに言われてやって来たようだ。
「今のそれ、なあに?」
レイは、親友のマユミから色々と一般常識を教わっているのだが、まだまだ不十分。真顔で聞くレイに、マユミはにっこり微笑む。
「握手って言うんですよ。友情という絆を作るためのものです。レイさんも是非やって下さい。」
「絆……。分かったわ、私もそうするわ。」
レイも右手を差し出す。シンジは、レイの顔を見てさらに顔を赤らめた。同年代の女の子で、こんなに綺麗な女の子など見たことが無かったからだ。この娘、マユミさんよりもずっとイイ!そう思うシンジの心の中に、淡い下心が芽生えた。美人のお姉さん方には相手にされないかもしれないけれど、同じ歳の綾波ならば彼女に出来る可能性があるかもしれないと。
「あの、碇シンジです。よろしくね。」
「名前はさっき聞いたわ。」
などと、ちょっと話がかみ合わず、シンジは内心ドーンと落ち込んだのだが、一応握手を済ませた後は、3人で学校のことを話題にしておしゃべりをしながら食事を楽しんだ。レイに少しでも気に入られようとして、シンジにしては珍しく積極的に話をした。ほどなくして、これまたシンに言われてミリアリアとアサギがやって来た。このため、シンジは女性4人に囲まれて、恥ずかしくも嬉しい時間を過ごすことになる。



一方、リツコやマヤの所にはシンがいた。とある目的があったからだ。シンはリツコに高い酒をたらふく飲ませてご機嫌取りをしている。そして、リツコが酔っぱらった頃を見計らって話を切り出した。
「あの、赤木博士にお願いがあるんですが、話だけでも聞いてもらえませんか。」
リツコは、ゲンドウからシンのことを何でもいいから探って来いと言われて来ていたものだから、内心では警戒しつつも表面上は酔ったフリをして答えた。
「あら、なにかしら。」
「実は、俺の遺伝子を調べて欲しいんです。」
それを聞いた瞬間、リツコの顔が僅かに引きつった。これは、願ってもないことだったからだ。だが、表面上は動揺を完全に押し殺した。
「あら、どうしてかしら。」
「実は、俺の今の両親は本当の親じゃないらしいんです。それで、本当の親を懸命になって探して、ようやくある人物にたどり着いたんです。その人物と俺が親子かどうか、調べて欲しいんです。」
「あら、そんなことはあなたみたいな金持ちなら、簡単に出来るんじゃなくて。」
「いえ、駄目なんです。その人物の遺伝子情報が全く手に入らなくって。」
「どういうこと?」
「その人物の名前が、碇ユイだからです。」
「何ですって!」
リツコは動揺を隠せなかったどころか、思わず声を荒らげていた。
「えっと、シン君でいいかしら。今のはどういうことかしら。」
リツコは急に真面目な顔になった。それを見たシンは思わず笑いそうになったが、手の皮をつねって懸命に堪えた。
「それを言う前に、ちょっと邪魔者を消えてもらいます。」
シンは立ち上がると、マユミに向かって合図をする。すると、マユミはシンジを連れて宴会場から去って行った。
「これでいいでしょう。万一シンジに聞かれたら、ショックを受けるでしょうから。」

そして、シンは淡々と騙り始めた。

9歳の頃に、仲の良かった親戚のおじさんが亡くなったこと。
そのおじさんから、自分の本当の両親が別にいると聞いたこと。
その時から本当の両親探しを始めたこと。
1年ほどして母親と思われる女性を捜し当てたこと。
その女性が碇ユイという名前であることが分かったこと。
ユイの遺伝子情報を捜し求めたが、遂に見つからなかったこと。
ユイの一人息子が見つかったため、一目会いに行ったところ意気投合したこと。
シンジからの情報を元に調べたところ、ユイが既に死亡していたと判明したこと。
そのため自棄になって、かなり荒んだ生活を送ってきたこと。
死に場所を求めて、国連軍に入ったこと。
命をかえりみずに戦ううちに、却って多大な戦功を挙げてしまったこと
最近、ユイがネルフの前身であるゲヒルンに勤務していたことが分かったこと。
ネルフならばユイの遺伝子情報があるかもしれないと思って、ネルフに来たこと。

これらのことを一気に話すと、シンは目に涙を浮かべて懇願した。

「お願いです、赤木博士。僕は、自分の本当の母親が誰なのかどうしても知りたいんです。ですから、身勝手なお願いだと分かっていてもあえて頼みます。どうか、碇ユイと僕が親子かどうか調べて下さい。」
こんな猿芝居に引っかかる女なんて絶対いないと思いつつも、シンは、うるうると涙を流しながら頭を下げた。だが勢いが良すぎて、その拍子に危うく隠し持っていた目薬を落とすところだった。

「ううっ、センパイ。泣ける話じゃないですか。私からもお願いします。どうか、調べてやって下さい。」

……引っかかる女がいた。いつの間にか涙で顔がぐしょぐしょになっていたマヤも、シンと一緒に頭を下げた。
「ええいいわよ、と言いたいところだけど、碇ユイ博士の遺伝子情報が残されているかどうかは私も調べないと分からないの。だから、努力はするけれど約束は出来ないわ。」
「ええ、それでもいいです。駄目なら、シンジと俺の遺伝子情報を比較してみます。それだけでも、何もしないよりはマシでしょうから。」
だが、シンの話を聞いているうちに、リツコはある疑問が浮かんできた。
「でも、シン君。お父さんの情報は無かったの?知りたくないの?」
リツコが聞くと、シンは唇を強く噛みしめ、顔を強張らせた。
「おじさんの話では、母さんはエロジジイに無理やり……。それまでキスもしたことが無かったらしいのに…。だから、僕には父さんはいりません。そんなゲス野郎のことなんか、知りたくもありません。」
「ご、ごめんなさい。そんなこととは知らずに、嫌なことを聞いてしまって。」
今度は、リツコが頭を下げた。



シン達がシリアスな話をしている時、もう一つのテーブルではミサトが酔ってナタル達に絡んでいた。
「なによーっ、アンタ。私よりも若いくせに准将ですって。生意気よーっ。」
そう言って、ナタルの背中をバシバシ叩く。
「は、はあっ。すみません。」
いくらミサトがナタルより年上でも、階級が下のミサトにナタルがここまで言われる筋合いは無い。ナタルはかなり頭に来ていたが、敬愛する人物にミサトと仲良くするようにと頼まれていたため、必死に耐えていた。

「まあまあ、葛城さん。お酒は楽しく飲みましょうよ。」
そこで、マリューが柔らかな調子で言う。マリューとはこの家を取り仕切っている女性で、こげ茶色のセミロングの髪型をしており、理知的なタイプの美人である。ナタルの我慢もそろそろ限界だと察したため、必死にその場を繕おうとしている。
「なによーっ、アンタ。乳がでかいからって、威張るんじゃないわよーっ。」
「は、はあっ。」
今度は、ミサトはマリューに絡みだした。酔ったミサトは、始末に負えない。
「アンタ、名前はなんて言ったっけ。」
「はい、マリュー・ラミアスと言います。」
「はれ、おかひいわね。シン君は、マニューってひってたけろ。」
そう、これは事実である。シンは、マリューのことを日本人に紹介する時は、必ずと言っていいほど『魔乳・ラミアス』と紹介し、後でネタにしているからだ。そう、マリューはミサトよりも胸が大きいのだ。いわゆる巨乳であるが、本人はあまり胸が大きいことを良く思っていないため、この話題になると機嫌が悪くなる。
「葛城さんの聞き違いでしょう。」
マリューは笑ってはいたが、こめかみに青い筋が立っている。
「はれ、ほうかひら。」
ミサトは既にかなり酔いが回ってきた。ろれつも回らなくなってきていた。これは、マリューにとって絶好の機会。
「そうそう、葛城さんに折入ってお話があるんですけど。」
「へ、なにかひら。」
「葛城さんは、かなりお強いと聞いています。それを見込んでお願いがあるんです。見ての通り、ここは女所帯。ここの治安がいいとはいえ、やっぱり私としては不安があります。ですから、 葛城さん達 に用心棒としてここに住んでいただきたいんです。」
「はひ、ひってんほよ。」
「もちろん、タダでとは言いません。家賃、光熱水費はいただきませんし、食事やお酒は食べ放題、飲み放題です。いかがでしょうか。」
「はんへすっへ!」
その時、ミサトの目が異様に輝いた。

結局、エビチュ飲み放題という条件に目のくらんだミサトは、シンジ達の監視をする必要があるという大義名分もあったことから、シンジ達との同居に同意したのである。



To be continued...


作者(Red Destiny様)へのご意見、ご感想は、メール まで