新世紀エヴァンゲリオン Enemies of Female

第七話 ジェノサイド・ステラ

presented by Red Destiny様


学校が終わると、シンジとレイはネルフへと向かう。シンジは、リツコから検査をしたいからと呼ばれていたためであり、レイも定期訓練などがあるためだ。だが、ネルフに向かう途中で連絡が入り、急遽予定を変更して会議室に向かうようにと指示された。

「急に予定変更だなんて、一体どうしたんだろうね。」
シンジが何気なく問いかけたが、レイも予想がつかないようで首を捻っていた。
「行けば分かると思うわ、多分……。」
「綾波さんでも分からないのか。まあいいか。どうせ僕は当初の予定だって分からないんだから。」
などと言いながら、多少の不安を抱えつつシンジ達が目的の会議室に向かうと、そこにはリツコやシン達が待っていた。

「よお、悪いなシンジ。それにレイちゃん。ちょっと二人に話したいことがあってな。」
シンのいつになく真剣な表情を見て、シンジは何事かと身構える。
「シンさん。一体何でしょう。」
シンジも、真剣な表情で問いかける。
「ああ、実はな……。」
シンは、ゆっくりと語り始めた。

シンジが正式に汎用人型決戦兵器−エヴァンゲリオン−のパイロットに選ばれたこと。
パイロットは14歳前後の子供しかなれないため、チルドレンと呼ばれること。
日本には、パイロットがシンジとレイ二人しかいないため、貴重な存在であること。
その割にはパイロットの警備体制が脆弱であるため、警備体制の強化を提案したこと。
提案がネルフに認められ、シンの直轄部隊がシンジとレイを守ることになったこと。
明日にもその部隊が到着し、訓練期間を経て1週間後から正式に配備されること。
これから間もなくその部隊の隊長予定者が到着するため、顔合わせをしておきたいこと。
その他の隊員との顔合わせは、1週間後になること。

以上のことを、シンジとレイにかいつまんで話したのである。

レイは、シンの言葉に対して特に反応を見せなかったが、シンジは違った。内心では本当のヒーローになったと、物凄く感謝感激していたからだ。シンジは今や人類の敵を倒すロボットのパイロットであり、まさに正統派ヒーロー。そのうえ専属のガードが付くなんて、まるで首相や大統領並の扱いで、まさに願ったり叶ったり。それが笑顔として表情に出ていたのだ。

「さあて、話はそんなところかな。で、何か質問はあるかな。」
シンの言葉に、シンジが待ってましたとばかりに幾つかの質問を投げかけた。

「あの、シンさん。警備って具体的に何をするんですか。」
 「主にネルフの外で、シンジとレイちゃんの側にいて、不測の事態に備えるんだ。」
−なんだ、予想通りの答えだ。
「学校ではどうするんですか。」
 「シンジ達と同じ教室にいることになる。」
−げっ、それはちょっと……。
「それって、ちょっと目立ちませんか。中学校の教室に大人がいるなんて、なんか変じゃないですか。」
 「誰が大人だって言ったんだ。警備するのは同じ子供だ。いわゆる少年兵だ。」
−なんだ、驚いて損した。
「ええっ、僕と同じような年齢なんですか。」
 「ああ、そうだ。その方が何かと警備にも都合が良いからな。」
−もちろん、ガードは男だよね。
「僕の警備をするのは、男の子なんですか。」
 「ああ、そうだ。シンジの場合、男が原則として警備を行う。だが、女の子も警備に加わることもある。レイちゃんは逆に、女の子が原則として警備を行う。だが、男が警備に加わることがある。」
−え、女の子?ゴリラみたいな女の子じゃなければいいけど。でも、嫌な予感がするな。
「その子達とは、どのように接すればいいんですか。」
 「あまり深く考えずに、普通に接すれば良い。そうだな、程々に仲の良いクラスメートっていう感じかな。」
−じゃあ、あまり気を遣わなくていいんだね。良かった。
「そうですか。分かりました。僕の質問はとりあえず以上です。」
シンジは、疑問の多くが解消されてほっと一息ついた。

シンは、今度はレイの方を見る。
「レイちゃんは何か質問があるかな。」
レイは、少し考える素振りをした後に聞いた。
「警備されている時は、何か気をつけることはありますか。」
 「いや、特に無い。空気みたいなものと思ってくれて構わない。」
「そうですか。私の質問はこれで終わりです。」

こうして二人の質問が終わった頃、タイミング良く、シンの部下のマユラが会議室に入ってきた。
「シン顧問。ステラ少尉をお連れしました。」
マユラの後から、ステラが続いて会議室に入ってきた。ナスのヘタみたいな髪型をした、金髪美少女だ。少々緊張した面持ちであるが、それがまた良かった。シンジは、ステラに一瞬見とれてしまう。そして、心底思った。ゴリラみたいな女の子ではなくて本当に良かったと。

「初めましてっ!私、戦略自衛隊情報部所属、ステラ・ルーシェ少尉であります。今日付けでネルフに出向となりました。よろしくお願いしますっ!」
ステラは会議室に入るなり敬礼した。思ったよりも威勢の良い挨拶だった。シンジがはっと我に返ると、シンがステラに手を差し出していた。
「やあ、初めまして。俺は飛鳥シン、ネルフの顧問だ。君の上司にあたる。以後、俺のことはシンと呼んでくれ。よろしく頼む。」
「はっ。シン殿、よろしくお願いします。ん、飛鳥シンとおっしゃいましたが、西ヨーロッパ方面軍のシン・アスカ殿と、何かご関係がありますでしょうか。」
「ああ、それは多分俺のことだろう。」
シンは、苦笑いする。
「はっ、それは本当でありますか。私は、西ヨーロッパ方面軍のシン・アスカ殿やナタル殿のことを大変尊敬しておりました。そのシン殿の部下とは、身に余る光栄であります。シン殿のためならば、命を賭して任務を全うする所存であります。」
それを聞いて、ミサトやリツコは少しではあるが安堵した。ステラの物凄い評判を聞いていたことから、ネルフやシンの言うことを全く聞かない恐れがあると思っていたからだ。だが、今のステラの口調からは、そんなものは微塵も感じられない。
「ああ、そうだそれはありがたいな。だがな、一応言っておくが、任務に失敗したらお前を殺す。そのつもりでいろよ、分かったな。」
「はっ!承知しましたっ!」
ステラは喜々として答えたが、ミサト達の顔は一転して強張った。もちろんシンジも、シンの言葉が信じられなかった。



自己紹介やら部隊の説明やらに30分ほどかかったが、その後シンはステラを連れてゲンドウの所へと向かって行った。そのステラの姿が遠ざかって行くのを確認してから、ミサトは口を開いた。

「なあんだ。あの子ったら、普通の子っぽいじゃない。」
リツコもミサトに相槌を打った。ジェノサイド・ステラと呼ばれるほどの殺人鬼には、到底見えなかったからだ。
「そうね。ちょっと緊張していたみたいだったけど、それを割り引いてもそんな変な子には見えないわね。まあ、実際はどうか分からないけど。」
ミサト達の会話に、シンジはなんだか不安になる。ゴリラじゃないのはいいが、殺人鬼とは尋常ではない。
「あの、どういうことなんですか。あのステラさんていう人は、異常な人なんですか。」
シンジの不安そうな顔を見て、ミサトは慌てて否定した。ごまかしたとも言うが。
「ううん、そうじゃないのよん。軍隊を知らないシンジ君には分からないでしょうけど、あの年齢で少尉って凄いことなのよ。だから、どんな凄い子がやって来るのやらって思っていたのよ。でも、そんなに切れ者には見えなかったでしょ。」
「ええ、そうですね。」
確かに、ステラはシンジから見ても軍人らしくは見えない。

「それよりも、シン君よ。『お前を殺す。』なんて、おっとろしいことを言うようになったのね。」
ミサトが眉をひそめるのを見て、慌ててマユラが否定する。
「シンは、口では酷いことを言うけど、実際には酷いことはしませんよ。あんなことを言ったのは、何か考えがあってのことだと思います。基本的に優しい人ですから。」
「まあ、確かにそうよねえ。」
ミサトも、首を何度か縦に振る。リツコやマヤも、揃って頷く。シンジも、マユラの言葉に安心する。
「えっと、言い忘れましたけど、ステラさんは碇シンジ君や綾波レイさんと一緒に住むことになります。私もシンと一緒に住みますから、皆さん、一緒に住むことになりますね。どうか、今後ともよろしくお願いします。」
それを聞いて、ミサトは何だか嫌な予感がした。シンジも、また女の人が増えるのかと、半分嬉しく半分憂鬱な気分になった。



一方シンは、ゲンドウとステラの顔合わせを済ませると、ネルフ内に確保した自分専用の部屋へと向かった。その部屋ならば、盗聴器の類は無いからだ。部屋に入るなり、シンはステラに声をかける。

「やあ、ステラ。久しぶりだな。」
そう、実はシンとステラは初対面ではなかったのだ。だが、微笑むシンと対照的に、ステラは眉をひそめる。
「あの、私はなんでネルフに呼ばれたんですか。ご存じかとは思いますが、私の戦自での主な任務は、破壊工作やスパイ行為です。それも、つい昨日まではネルフ幹部暗殺の密命を受けていました。その私が、一体何でエヴァンゲリオンパイロットの護衛任務などするんですか。」
ステラのもっともな疑問に、シンはくすっと笑う。
「なんだ、そんなことか。ステラは、戦自に対してはいつでも暗殺任務を実行出来る状態にあると報告しておいてくれ。そうすると、次の暗殺者の選任が少しでも遅れるからな。一応言っておくが、俺もまだネルフの幹部の扱いについては迷っている。だから、今の状態が一番都合がいいんだ。」
「迷っているというのは、何故ですか。」
ステラは、首を傾げる。話が見えないからだ。
「まあ、ステラだから正直に言っておこう。シンジは俺の可愛い弟分だ。だから、あいつの親父を殺すのは、シンジが奴を見限った時だ。ミサトさんは情が移ったし、俺の本当の姉さんみたいな感じだから、殺すなんて論外だ。リツコは、生かしておいた方が利用価値が高い。そんなところかな。」
「では、副司令ならいいんですね。」
ステラは一瞬冷酷な笑みを浮かべるが、シンは慌てて首を振る。
「いや、そうでもない。ゲンドウを生かしておくなら、冬月も生かしておいた方が良いかもしれない。だから、しばらくは様子を見る。だがな、当分の間は殺しはするな。但し、エヴァのパイロットの命を狙う奴らは別だ。それに、シンジとアスカは、命がけで守れよ。いいな。」
「はい、分かりました。」
「それから、殺人暗示はどうした?戦自では、ネルフ幹部に出会った時は殺す様に催眠暗示を受けているはずだが。」
「はい、それならば既に解いてあります。」
「そうか、それは良かった。」
シンはそれを聞いてほっとする。少しだけ心配だったからだ。そんなシンに対し、ステラは恐る恐る声をかける。
「あの、積もる話しがあるんですが、今お時間はありますか。」
「う〜ん、今はまずいな。あまりここに長居すると、勘繰られる。今晩、時間があったらということでどうだ。」
「あ、はい。分かりました。では、失礼します。」
ステラはシンに一礼して部屋を出た。



「ふうっ、危なかった。」
ステラは、扉が締まると同時に大きなため息をついて、胸をなで下ろしていた。
シンには聞かれなかったが、ステラはエヴァパイロット−もちろんシンジやレイ−の暗殺指令も受けていたのだ。タリアには、そのことは絶対に秘密にするようにと言い含まれていたが、ようやくその理由が理解できた。シンは、エヴァのパイロットの命を狙う奴らは殺しても良いと言っていた。その時の口調から、もしも自分がパイロット暗殺の密命を受けたことが知れたら、ただでは済まないことが窺えたからだ。シンが以前、アスカを狙った組織を完膚なまでに叩き潰したことがあると、タリアからも聞いている。シンがどうやら、本気でパイロット達を守ろうとしていることがこれではっきりした。そうなると、ステラがすべきことは決まっている。かつて自分の生命を救ってくれたシンの恩に、今こそ報いる時だ。
「パイロット達は、ステラが守る。例え、ステラの命に代えても。」
ステラはこの時、シンのために命がけでシンジやレイ、アスカ達を守り抜くことを決意した。



なお、その晩も宴が開かれた。ミサト、レイ、ステラ、マユラ、ジュリの同居を記念しての歓迎会である。ちなみに、ジュリはアサギの補佐的な仕事をしているため、同居することになったピンクのメガネをかけた可愛い感じの女の子。その他の基本的なメンバーは、昨日と一緒だ。
その宴で早々とステラは酔っぱらい、いきなり素っ裸になってシンジを慌てさせた。このため、周りの者が服を着させ、シンがステラを寝室まで運んで行く。シンはいったんは宴に戻ったのだが、明日の準備があると言って早々に引き揚げた。
おかげで男はシンジ一人になったため、お姉さん方に色々とからかわれて、シンジは恥ずかしくも嬉しい思いをすることになる。



さて、日本から遠く離れた場所では、ウルクという組織のエージェント二人が、自分達の組織の本部に戻っていた。戻ってからしばらくして、二人は侯爵夫人と呼ばれる女性に呼ばれ、本部とは別の場所にある秘密基地を訪れた。

「「レドリー侯爵夫人、お呼びでしょうか。」」
二人は、レドリーと呼ばれる女性に一礼した。
「キヨコにタツヤ、久しぶりね。今日はね、二人に見せたいものがあるのよ。」
そう言って、レドリーは二人を基地のとある場所へと連れて行く。そこには、2体の巨大な生体兵器がたたずんでいた。

「ようやく完成したわ。我らが切り札の、ギルガメッシュとエンキドゥよ。」
その兵器は、エヴァンゲリオンとほぼ同程度の大きさであり、人型であったが、エヴァとは大きく異なっていた。2体とも、人間の美少女に極めて似通っていたのだ。体が大きくて羽が付いていることを除けば、外見は殆ど人間と変わらない。
ギルガメッシュは、蒼い髪に紅い目をしており、肌の露出が多い装備を身につけている。豊かな胸の殆どが露になっており、遠目には美少女がコスプレをしているようにも見える。
エンキドゥは紅い髪に紅い目という出で立ちだ。こちらは僅かに一部の肌が露出した装備を身につけている。だが、装備の上からでも、豊かな胸があるのが見てとれた。

「す、凄い……。これが、使徒XX(ツインエックス)計画によって生み出された、我々の切り札……。」
キヨコは、呆然と2体の兵器を眺める。タツヤも、驚きの余り、口を大きく開けたまま。

二人は、まだ知らない。この2体の開発コードネームが、サキエルXXとゼルエルXXであることを。



To be continued...


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