新世紀エヴァンゲリオン Enemies of Female

第八話 買い物と朝食と

presented by Red Destiny様


「あれえ、シンさんは一体どこに行ったのかなあ。」
宴会の翌日、シンジはミサトの引っ越しの手伝いをしていた。ちなみにレイは荷物が無いので、その身一つだけ。これには、シンジもビックリ。まあ、口には出さなかったが。
「あーあ、手伝ってくれてもいいのになあ。」
引っ越しに、男手が多いに越したことはないため、シンジはぼやく。実際、ミサトの荷物は結構重く、作業は思った以上に大変だ。
「まあまあ。シンはお仕事みたいだから。」
そこにマユミが来て、兄をフォローする。
「そうなの。じゃあ、仕方ないよね。」
シンジもそういうことならと、きっぱり諦めた。
「それよりも、碇君。今日は買い物に付き合ってほしいんですけど。」
「えっ、どういうこと。」
マユミは、レイの服が少ないこと、そのため引っ越しの手伝いが終わったら買い物に行きたいこと、荷物持ちが欲しいこと、などをかいつまんで話す。
「いいよ、僕で良かったら。」
女の子に頼まれると、なかなか断れないシンジ。だが、お気に入りになった美少女のレイが一緒ということで、少なからず下心があったのも事実。



「どうですか、碇君。」
買い物に付き合わされたシンジは、レイの服を買うのにも付き合わされた。そして、レイの試着姿を何度も見せられて、マユミに感想を求められた。
「うーん、なかなかいいと思うよ。」
マユミの選んだ服は結構センスが良くて、レイの雰囲気にぴったりのものばかり。こうやって見ると、この子達は思った以上に可愛いんだねと、シンジは感心する。
マユミは、最初は人懐っこく話しかけてきていい感じだったが、その後無理やりお酒を飲まされて嫌な感じになって、寝顔を見て可愛いなと思うようになって、どう思ったら良いのか分からない。
レイにしても、第一印象はとっても良かったが、可愛いけど割合無口だなあと思って、お風呂で体を洗ってくれて嬉しいけど恥ずかしい気持ちになって、寝顔を見てやっぱり可愛いなと思うようになって、今ではもっと仲良くなりたいなと思う。

「じゃあ、これも買いましょ。綾波さんも、碇君も気に入った服の方がいいですよね。」
「ええ、そう思うわ。」
シンジが考え事をしている間にも、このようにして服を買い漁ったため、レイの服が一気に増えていく。



翌朝、シンジは身支度を済ませて朝食にありつくことにした。食堂に行くと、マリューがにこやかな顔をして待っている。
「シンジ君。今日も和食でいいかしら。」
「ええ、そうですね。お願いします。」
マリューがメイドに食事の指示をすると、5分もしないうちに食事が出て来る。ご飯に味噌汁、そして焼き魚というメニュー。お新香や海苔もついている。

「さあどうぞ、シンジ君。一緒に食べましょうね。いただきます。」
シンジの前の席に座ったマリューがにっこりと笑う。マリューはやっぱりというか、洋食だ。
「あ、はい。では、いただきます。」
シンジは少し慌ててしまうが、マリューは何事も無かったかのように笑顔を浮かべている。マリューさんて大人だなあと、シンジは感心した。
こうしてシンジはマリューと二人でご飯を食べることになったが、それは長続きしない。次々に他の住人が現れたのだ。

「「「おはようございまーす。」」」
最初にアサギ、マユラ、ジュリの3人が連れ立って現れる。
肩に少しかかる金髪を持つアネゴ肌のアサギ、ボーイッシュな髪型で活動的な印象を残すマユラ、ピンクのメガネが似合うチャーミングでセミロングの髪のジュリ、三人三様の魅力的な美女で、誰がいいかと聞かれても迷うほど。
「私は昨日と同じ奴ね。マユラとジュリも一緒のでいいわ。」
アサギはメイドに言うと、マリューの右に座る。マユラとジュリは、マリューの左に並んで座る。

「あっ、おはようございます。」
「おはようございます。」
今度は、マユミとレイが現れる。マユミはシンジの右に、レイはシンジの左に座る。レイが隣に座った時、シンジの顔に僅かに笑みが浮かぶ。

「おひゃよ〜う。」
次はステラだ。ナスのヘタみたいな髪型をした、天然ボケな感じの金髪美少女が、眠そうな顔をしながらマユミの隣に座る。一昨日の晩、早々と酔って素っ裸になった時に、しっかりと豊かな胸を見てしまったのを思い出して、シンジは赤くなる。

「ふわあっ。おひゃよう。」
最後に、早くもこの家になじんでしまったミサトがやって来て、レイの隣に座る。

席順は、下記の通りである。
     アサギ マリュー マユラ ジュリ
┌−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−┐
└−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−┘
 ミサト レイ  シンジ  マユミ ステラ
こうしてシンジは女性陣に囲まれて、楽しい一時?を過ごすことになる。



朝食が終わって皆でお茶やコーヒーを飲んでいた時、シンジは気になったことを色々聞いてみることにした。ここで暮らすようになってからシンと話をする時間が無く、聞きたいことが聞けなかったからだ。

「あのお、シンさんは一体どこにいるんですか。」
シンジが聞いたら、途端にぎくしゃくとした雰囲気になった。アサギ達はシンが女の子とデートしてることを知っているからなのだが、そんなことはシンジに分かるはずが無い。皆嘘はつきたくないし本当のことも言えないので、何も言えないでいた。その中で、ただひとりマリューだけが落ち着いてにっこりしながら答える。
「シンはねえ、あんまり居場所を言わないのよ。だから、はっきりとしたことは分からないの。でもね、シンジ君の護衛部隊に関連した仕事をしているんじゃないかしら。」
シンはこの時、護衛部隊の女の子とデートしているから、全くの嘘ではない。だが、真実からはほど遠い。そんなこととは知らず、シンジはマリューの説明を鵜呑みにした。

「はあ、そうですか。そういうことならステラさん、何か聞いていませんか。」
今度は、シンジはステラに目を向けた。
「う〜ん、知らな〜い。私は、何も聞いてないよ〜っ。」
だが、ステラからは間の抜けた声で返事が返ってきた。一応、これが素のステラのようだ。シンジは少し肩を落とす。
「そうですか。でも、今日は帰って来るんでしょうね。」
再度聞いたシンジだったが、ステラの返事は変わらない。
「う〜ん、分かんな〜い。」
相変わらず間が抜けていた。シンジは止むなく、シンに聞きたかったことをこの場の皆に聞くことにした。

「あのお、こういうことを聞いていいのかどうか分からないんですが、皆さんとシンさんはどういう間柄なんですか。実は僕、シンさんから皆さんのことはあまり聞いていなくて、皆さんにどう接していいのか、良く分からないんです。」
シンジの問いかけに、またもやマリューが答える。
「そういえば、簡単な自己紹介しかしていなかったわね。シンとの関係ねえ、どう言ったらいいのかしら。やっぱり本人の口から言うのが一番いいのかしらね。でもまあいいわ。私が一通り言うから。」
「はい、お願いします。」

マリューは最初に自分を指した。
「じゃあ、私からね。シンが飛鳥財団という組織を経営しているのは知ってる?」
「はい、知っています。何をしているのかは聞いていませんけど。」
確かに以前、そんなことを聞いた覚えがシンジにはある。
「主な仕事は、会社経営よ。財団は色々な分野の会社を持っていて、多くの会社の経営を行っているの。それから、慈善事業も行っているわ。その財団の代表がシンなんだけど、シンは知っての通り色々と忙しいから、代わりに私が財団の実務を行っているの。簡単に言うと、シンが社長で私が秘書ね。社長が会社に出ないから、秘書である私がが会社の実務を行っているの。」
「へえっ、一体どれくらいの会社を経営しているんですか。」
「そうねえ、数万と言ったところかしら。年間利益は1社平均10億円と仮定して、合計するとおよそ数十兆円といったところね。」
「「ええっ!」」
これにはシンジだけでなく、ミサトも驚いて声をあげた。
「シンさんて、そんな大金持ちだったんですか。」
「どうりでこんな大邸宅が別荘に過ぎないわけよね。」
シンジは、「会社の利益=シンの収入」というちょっとした誤解をしていたが、マリューはあえて言わなかった。シンが大金持ちであることに変わりはないからだ。また、シンジはあることに気付いた。
「あの、もしかしてマリューさんの給料も結構高いんじゃないですか。」
「ええ、そうよ。今の年収は、20億円くらいかしら。」
「「に、にじゅうおく〜っ!」」
またもやシンジとミサトが、驚いて声をあげた。マリューもとんでもない大金持ちではないか。だが、少しして再びシンジは問いかけた。
「あの、大変失礼ですが、マリューさんて給料を使い切ってないですよね。いかほど蓄えがあるんですか。」
「そうねえ、私はあんまり無駄遣いはしないから、100億円ほどは残っているかしら。」
「「ひええーっ!」」
シンジとミサトは、思わずひっくり返りそうになった。

「まあ、私の話はそれくらいにしましょう。会社になかなか来ない社長と秘書の関係だから、一緒に住んだ方が仕事が上手くいくという訳で、5年前から一緒に住んでいるのよ。それから、他の皆の話しをするわね。
アサギとジュリは、財団に所属する傭兵部隊の幹部なの。といっても主な仕事がシンと財団の連絡役なのよ。だから、シンの側にいる方が都合がいいの。今まではシンが国連軍にいたから、必要な時しか会っていなかったんだけど。今回、良い機会だから一緒に住むことにしたの。
マユラは、国連軍でシンの副官を長く務めていたの。それでシンと一緒にネルフへ出向することになってね。これからは主に国連関係の連絡役とかをすることになると思うけど、これまた良い機会だから一緒に住むことにしたの。
ミリアリアは、私の手伝いをしているの。そうねえ、2年前からかしら。それからね、私やシンと一緒に住むようになったのは。良く気がつく子で、とっても助かってるわ。
ステラは知っている人も多いと思うけど、シンジ君やレイちゃんの護衛部隊の隊長さんよ。だから、シンジ君やレイちゃんと一緒に住んだ方がいいだろうって事になったの。
葛城さんは、ここが女所帯で物騒だから用心棒代わりに一緒に住んでもらうことにしたの。
レイちゃんは、シンジ君と一緒の方が警護が楽だから一緒に住んでもらうことにしたの。
マユミはシンの妹だから、理由は必要無いわよね。
あとね、ついでだから近々もう2人一緒に住む子がいることを言っておくわね。フレイ・アルスターっていう子と破念シホっていう子よ。
フレイっていう子はね、マユラの知り合いなの。シホっていう子はジュリの知り合いなの。
それがね、今回シンジ君やレイちゃんの護衛部隊の隊員としてネルフに出向したらしいの。
ステラ以外にも護衛部隊の人が2人くらいはこの家に一緒に住んでもらった方が良いっていう話になってね。そんな訳だから、一緒に住もうってことになってるの。
とまあ、こんなところでいいかしら。」
とまあ、マリューは嘘は言わなかったが、真実を少し隠して言う。

「ええ、ありがとうございます。」
シンジが礼を言うと、マリューは急に真剣な顔になる。
「今言ったのが表向きの理由よ。これから裏の理由を話すわ。
私と一緒に住んでいるって言うとね、飛鳥財団の関係者は大抵便宜を図ってくれるわ。
アサギやジュリと一緒に住んでいるって言うとね、傭兵の世界でかなり顔が利くの。
シンやマユラと一緒に住んでいるって言うとね、国連軍の人は大抵便宜を図ってくれるわ。
ステラと一緒に住んでいるって言うとね、戦自の人は大抵のことは聞いてくれるわ。
葛城さんやレイちゃんと一緒に住んでいるって言うとね、ネルフの中ではかなり顔が利くの。
まあ、お互いにメリットがあるのよ。でもね、このことは内緒よ。」
マリューはそう言ってウインクした。だが、シンジはどうしても聞きたいことがあった。

「後一つ、どうしても聞きたいことがあるんですが、いいですか。」
「ええ、いいわよ。なにかしら。」
「本人がいないところでこんな話はしたくは無かったんですが。ミリアリアさんて、シンさんの恋人なんですか。」
「「「「「ブッ!」」」」」
シンジの言葉に反応して、マリュー以下5人ほどが吹いてしまう。シンジは、訳がわからず目が点になる。
「あら、どうしてそう思うのかしら。」
マリューは、にっこり笑って聞いてきた。
シンジは、ミリアリアのファーストキスの相手がシンであると、ミリアリア本人から聞いていたのだ。そのことを言うと、マリューはなぜか困った顔をした。

マリューは、いくらなんでも本当のこと−アサギ、マユラ、ジュリ、ミリアリア、ステラ、フレイ、シホ、その他大勢がシンのハートをゲットしようとして争奪戦を繰りひろげていること−は言えなかったのだ。



To be continued...


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