新世紀エヴァンゲリオン Enemies of Female

第十六話 GOSP誕生

presented by Red Destiny様


食事の後、シンジ達は学校へと出かけ、ミサトや他のメンバーもそれぞれ出かけて行った。家に残ったのは、メイド達を除くとシン、アスカ、ラクス、カガリ、マリュー、アサギの6人だ。

皆が出かけるのを見てアスカはニヤリと笑い、嫌がるシンを半ば強引に自分の部屋に連行して鍵をかけた。
「さあて、シン。聞きたいことがあるんだけど。さっきの様子じゃ、昨日のことを知っている子が結構いるようじゃない。どういうことかしら。」
アスカの言葉には、刺があった。シンがアスカとの約束を破って、昨日のことを皆に言い触らしていると思っていたからだ。アスカの目も、いつも以上につり上がっている。だが、シンの返事はアスカの予想とは違っていた。
「そうだな、こうなったらアスカには正直に言った方が良さそうだな。」
シンは、ゆっくりと語り始めた。

GOSPのメンバーは、主に学校など大人の目の届きにくい場所で護衛の主力となること。
それ以外の場所では、SSと呼ばれるスペシャリスト達が必要に応じて護衛に加わること。
SSは、アサギ、マユラ、ジュリ、ミリアリア、ステラ、フレイ、シホの7人であること。
この7人は、お互いに連絡を密にしており、そのために昨日の出来事が伝わったこと。
この7人とナタル准将、マナ、カナエ、ユウナという3人のGOSP隊員以外には、昨日の真実を知る者がいないこと。

それらのことをアスカに説明したのである。

アスカはしばらく黙っていたが、ウーンと唸った後、表情が徐々に柔らかくなっていく。
「ふうん、そういうカラクリがあったのね。道理で妙に隙の無い連中だと思ったわ。そういうことなら仕方ないか。でもね、なんで女ばっかりなのよ。」
アスカは、SSの中にシンの女がいると考えた。さすがに、全員がそうだとは見抜けなかったが。シンは、アスカの疑いの眼に対して、平然と答える。
「そりゃあ、当然だろ。護衛対象はアスカとレイ、それに妹達なんだ。護衛も女の方が都合がいい。シンジはああ見えても結構強いし、いざとなれば俺が守るさ。」
「へえっ、一応は筋は通っているわね。分かったわ。では、次の質問よ。さっきのあいつらの態度がおかしかったのはなんで?」
アスカの目が少し厳しくなる。アスカの勘は、シンが何か隠し事をしていると告げていた。だが、今度もシンは平然と答えた。
「アスカだから言うけどな、絶対に内緒だぞ。アサギ達は、どうやら俺に気があるらしいんだ。だから、ラクスやカガリが俺と仲良くするのが羨ましいようなんだ。」
シンの言い分に、アスカはまさかと驚いた。
「嘘でしょ!いや、気があるのは分かるけど、別にシンが妹と仲良くしたって羨ましく思うことはないじゃない。」
「それがな、ラクス達が俺の妹じゃないなんて噂を流す奴がいるらしくてな、どうやらそれを本気にしているようなんだ。いやあ、参ったよ。」
アスカはそれを聞いて、鼻で笑う。
「フン、バカバカしいわね。でも、確かにアンタ達、きょうだいにしては仲が良すぎるかもね。普通、アンタの年齢じゃあ、妹と一緒に寝るなんて変だわ。」
「そんなこと言ったって、しょうがねえだろ。俺は一人で寝たいっていうのによ。お前からあいつらに言い聞かせろよ。」
今度はシンが、盛大に頬を膨らませる。
「それはちょっとね。家族の問題に、アタシが首を突っ込むのはどうかと思うわ。それじゃあ、話はこれで終わりよ。」
アスカはそう言うと、さっさとシンを部屋から追い出した。



「ねえ、碇君。腕を組んで欲しいの。」
シンジは、レイと一緒に登校していたのだが、急にレイにそう言われて少し戸惑う。だが、レイが悲しそうな顔をしたため、慌てて頷いた。
「いいよ、レイさん。僕で良かったら。」
「碇君、嬉しいわ。そう、これが嬉しいっていう感情なのね。」
レイさんは、なんだか訳の分からないことを呟く人だなあ。でも、可愛いから別にいいやとシンジが思っていたら、レイが腕を組んできた。だが、直ぐにシンジの顔が赤くなる。シンジの腕に、レイの胸が当たるからだ。
「あの、レイさん。もうちょっと離れてくれないかな。」
シンジは困ってしまい、少し顔を歪めたのだが、レイは首を傾げるだけ。
「腕が痛いの?」
レイには、シンジの言いたいことが伝わらない。それに、シンジをからかっている訳ではないらしい。
「いや、違うけど。」
シンジの顔が、少し熱くなる。首を傾げたレイが、とても可愛く思えたからだ。レイの笑顔は、シンジのハートにクリティカルヒットした。
「腕を組むのが嫌なの?」
レイは、なおも聞いてきた。今度は、人指し指を唇にあてている。う〜ん、とってもかわいいなとシンジは思うが、言うべきことは言う。
「ううん、そうじゃなくて。」
「じゃあ、私のことが嫌なの?」
レイは、どんどん違う方向へと話を進めていく。どうやら、レイは全然気付いていないと思ったシンジは、たまらず言いたくないことを言う羽目になる。
「全然違うよ。ただ、レイさんの胸が僕の腕に当たるんだ。」
さすがに今度は分かってくれるだろうと思ったが、シンジの予想は大きく外れる。
「それは、気分の悪いことなの?碇君は、女の子の胸が嫌い?」
げっ、とシンジは思う。レイには、どうやら一般常識というものが通用しないようだ。確か、マユミさんがレイさんは一般常識に疎いようなことを言っていたっけ。でも、これはちょっと酷いかもと思う。シンジは、言葉に詰まってしまった。
「いや、違うんだ。なんて言うか、恥ずかしいんだよ。」
そう言って、シンジは顔を赤くした。だが、レイはますます首を傾げた。
「私は平気。だから、碇君も平気なはず。」
「はははっ、そうかもね。」
これ以上言っても無駄と悟ったシンジは、諦めてレイの胸の感触を楽しむことにした。



シンジとレイが仲良く登校している姿を、遠くで見つめる目があった。タロンという組織のエージェントである、ソネットとシンシアという二人の少女の目だ。
ソネットは、ストレートの長い髪で、蒼い瞳の冷たい感じの美人タイプ。地毛は何か分からないが、髪は金髪に染めている。
一方、シンシアはパーマをかけた短髪で、蒼い瞳の明るいヤンキータイプ。行動的な感じの可愛い娘だ。

「あれが、ネルフのチルドレンね。フン、あんな奴ら、私が……」
ソネットが何かをいいかけたが、慌ててシンシアが口を抑えた。
「ちょ、ちょっと。バカなこと言わないでよね。とある娘を暗殺するなんて言ったバカな組織が、今では跡形も無くなっているっていう話を忘れたの。ここではね、チルドレンに関しては例え悪口でさえも禁止よ。」
それを聞いて、ソネットもしまったという顔をする。シンシアは、口には気をつけてよねと言いながら、ソネットの口から手を放した。
「悪かったわね。私としたことが、不覚だったわ。我々の任務は、チルドレンの観察だったわね。決して彼らを傷つけてはならないという、上からの厳命もあったわね。」
ソネットの言葉に、シンシアは頷く。
「そうよ、忘れたの?『Enemy of Female』は、チルドレンを傷つける者は決して許さない。以前セカンドチルドレンが襲撃された時、仕掛けた組織はその存在の痕跡すら残さず消されたわ。しかも、怒り狂って敵だけでなく味方にさえ八つ当たりして、警護の者達の中にはリンチされた者もいるっていう話じゃない。噂じゃ、腕をへし折られたり、抹殺された娘もいるっていうわ。チルドレンに手を出すのは、あまりにもリスクが大きいわ。」

そう、裏の世界の人間には、チルドレンに手を出すと、怒り狂ったシンを敵に回すことになると思われていたのだ。そのうえシンを敵に回すと、飛鳥財団、国連、戦自、その他多くの組織や傭兵部隊を敵に回すことになる。タロンとしてもそうなっても負けるつもりはないが、無傷ではいられないだろう。さらには、敵対組織のウルクに漁夫の利を与えることは間違いない。だから、おいそれと手を出せないのだ。
しかも、以前チルドレンに手を出した組織は、シンから想像を絶するほど苛烈な反撃を受けている。他の場所に色々ちょっかいを出した組織は、殆ど反撃を受けていないにも係わらずにだ。
シンは、妹やシンの友人、シンと親しい女の子、妹の友人などに手を出した場合に、想像を絶する反撃を行うものと思われている。だから、シンの敵対組織でも、そのタブーにあえて触れようとする組織は滅多にない。そのタブーに触れた者は、例えシンの組織の身内の者であっても例外ではないことが分かっている。だから、部外者はなおさら手を出せないのだ。

「でも、なんで彼はチルドレンを守るのかしらね。一体、どんな裏があることやら。元々彼は、ネルフとは敵対する勢力に属するはずでしょ。碇司令や冬月副司令のことは、陰ではゲドウとかエロジジイって呼んでるらしいのに。」
ソネットは、納得がいかない様子。
「一応、表向きの理由はあるわよ。彼の妹達とファーストやセカンドは親友らしいわ。サードは分からないけど、なにやら彼とはとっても仲が良さそうよ。」
シンシアが解説するが、当のシンシアもそれだけで納得している訳ではない。当然、ソネットが納得する訳がない。
「でもそれは、一発で嘘だって分かる理由だわ。狙いは、ネルフのオーバーテクノロジーね。それ以外には考えられないわ。でも、それだけの価値が本当にあるのかしらね。」
ソネットは、シンの狙いがネルフの機密だろうと当りを付けた。
「そんなの、どうでもいいんじゃない。私達は、任務を全うするだけよ。私はサードに近付いて仲良くなる。色仕掛けで私の虜にする。あなたは私を守る。それでいいじゃない。」
そこに、シンシアが釘を刺す。任務遂行に支障が出るような事は考えるなということだ。
「ええ、分かってるわ……。」
ソネットは静かに頷いた。



同じ頃、GOSPの殆どのメンバーは、シンからお小遣いを貰ってデートを楽しんでいた。隊員の多くは遊園地をデートコースに選んだ。何よりも、優先パスの使用によって待ち時間が殆ど無しで乗り物に乗れることや、遊園地に行ったことが無い女の子ばかりだったことも大きい。例外はただ一組、イサムとフウコだけである。

イサムは、非常にクールで理知的な少年だ。調子に乗りがちなフウコを良く戒めている。鋭い目をしており、冷たい感じがするが、気心の知れた者の前では優しい微笑みを見せることもある。
対するフウコは、キュートで明るく元気だが、少しおっちょこちょい的なところがある。美人という感じではないが、ハーフらしい顔つきで長い金髪を持ち、長身の可愛い娘だ。ゴスロリ系の服を好んで着ている。

そのイサム達は、何故か人気の無い山中を歩いていた。怪しさ満点の行動である。
「ん、もうっ!せっかく好きなデートコースを選べるのに、こんなとこに来てさあ。嫌になっちゃうわ。」
フウコは、盛大に頬を膨らませていた。それをイサムが任務だからと言って、まあまあとなだめる。
「そう言うなよ。監視されないのは、おそらく今日だけだ。だから、今のうちに出来ることはやっておかないとな。それよりも、話を合わせるんだぞ。いいな。」
イサムは、最後の言葉を言う時は真剣な表情になる。フウコも、イサムの表情を見て、幾分態度を変える。
「はいはい、分かってますよ。私達は、山の頂上で日の出を一緒に見ながらキスをして、愛を誓い合ったのよね。それから一緒に温泉に入ってイチャイチャして、その後は遊覧船に水上スキーにパラセーリング。それから遊園地に行って、最後にホテルよ。」
だが、それを聞いたイサムは顔をしかめる。
「おいおい、遊園地ってなんだよ。」
「いいじゃん。さっさとやることを済ませて、遊園地に行こうよ。」
にっこり笑うフウコに、イサムはため息をついた。
「分かったよ。早く終わったらな。」
「ようしっ!約束だからね。」
フウコは途端に元気になり、長い金髪を揺らして小走りになる。そんなフウコに、イサムは申し訳ない気持ちで一杯になる。
「悪いな、記念すべき日にこんなことさせて。相手も俺だし。」
それを聞いたフウコは、少し目を吊り上げる。
「フン!ニブチン。相手がイサムだから、私はOKしたっていうのに。」
「えっ。お前は、てっきりタツヤのことが……。」
イサムの声を、フウコが遮る。
「あんなシスコン、友達ならいいけど恋人はお断りよ。それくらいも分からないの?」
「そうか……。」
イサムは少し間を置いて言葉を続けた。なぜだか分からないが、自分の気持ちを言っておいた方が良いと思ったからだ。
「フウコ、大好きだよ。」
だが、フウコは返事をしない。ただ、顔を真っ赤にして微笑んでいた。



一方、とあるファミレスにて真っ青な顔をした男がいた。加持である。

「そ、そんなバカな。アスカの言う通り、俺の調査が間違っていたということか。」
加持は、今まで集めた自分の情報に多くの誤りがあったことに気付き、愕然としていた。加持の調べでは、GOSP隊員のうち少なくとも3人の少女がシンに酷いことをされたことになっていた。そのことから、その3人−マナ、カナエ、ユウナ−がシンに対して凄まじい憎悪を抱いていることにも。だが、真実は全く違ったのだ。
つい先程まで加持はその3人を尾行していたが、盗み聞きした3人の会話から驚愕の事実を知った。3人とも、シンのことが好きであるということを。そのうえ、カナエとユウナは以前からシンのことを知っていて、憧れていたという。まさに、加持の調査は穴だらけだったのだ。
「3人共、奴のことが好きだったとはな。この俺としたことが、大きなミスをしてしまったな。アスカの言うことを信じて、彼女達を尾行して良かった。奴のことは、一から調べ直す必要があるということか。」
加持の顔は、次第に真剣なものになっていく。だが、一つ大きく引っかかることがあった。ユウナという少女は、シンに『アスカを守るために、我が身を犠牲にすることも厭わないで』と頼まれたと言っていたのだ。
「GOSPは、アスカの弾除けだったのか。奴は、何故それほどまでにしてアスカを守ろうとするんだろう?」
加持はそれまで、シンが本気でアスカ達を守ろうとしているとは半信半疑だった。だが、さきほど盗み聞きした隊員達の会話を聞くかぎりでは、シンは大勢の女の子を自分に夢中にさせて、何でも言うことを聞く様に仕向けて、アスカを命がけで守る兵士に仕立てようとしている。シンではなく、アスカを。アスカの価値は、それほどまでに高いのだろうか。
「確かに、…………大好きな男を、女の子が裏切る可能性は殆ど無いか。女の子に夢と希望を与える一方で、狡猾な手段だとも言えるな。」
確かに、孤児でシンが初めて好きになった男であれば、他に縋るものが無くて、シンを盲目的に好きになって、何でもシンの言うことをきくようになってもおかしくない。だが、果たしてそれだけの理由なのだろうか。それに、何でアスカなのだろうか。アスカは、レイやシンジと比べて特別な何かを持っているのだろうか。加持はしばらく考えた後、結局今は考えてもしょうがないと結論付けて、その店を出た。



翌日の土曜日、シンジ達はGOSP隊員全員と、初めての顔合わせを行った。シンが最初に挨拶し、レイ、シンジ、アスカの順に紹介していった。
「み、みなさん。ぼ、僕は、い、碇シンジです。よ、よろしく、お願いしますっ!」
シンジはこの時、慌てて少しどもってしまう。挨拶した後で横を見てみると、レイは無表情だったが、アスカは腹を抱えて笑いを堪えていたので、シンジは恥ずかしさで真っ赤になってしまった。

次にシンは隊長のステラを紹介し、その後はステラが隊員を紹介していく。GOSP隊員は、ステラを除くと全部で20人だ。内訳は、男子7人に女子13人で、女子の方が多い。しかも、女の子は殆どが美少女ばかり。シンジは思わず目移りしてしまい、レイとアスカに睨まれてしまった。
もしも、レイやアスカと出会う前だったら、恐らくシンジはこの中の誰かに恋していたに違いない。それほどの美少女揃いだったのだ。だが、やはりレイやアスカ、それに加えてラクスという超絶スーパー美少女を見てしまうと、普通の?美少女ではシンジの心を動かすことは出来なかったようだ。
また、シンジはなんだかその場の雰囲気が甘ったるいことに気がついた。隊員の多くが上気した顔をしているし、笑顔の隊員が多かったのだ。そのことをアスカに聞いたところ、GOSP隊員に選ばれたのは名誉なことなので、興奮しているのだろうということだった。シンジは、自分達を守るのに選ばれるのが名誉なことであるという考え自体がそれまで無かったので、アスカの言葉にとても驚いた。

そのうち、シンから各隊員の役割が言い渡されることになった。すると、シンジでも分かる位にその場に緊張が走った。隊員達の顔も、笑顔が消えて真剣になる。

「最初に、副隊長を発表する。レイ担当の副隊長は、破念シホ。」
「はいっ!」
茶色いおかっぱ頭で、鋭い目をした美少女が勢い良く立った。その美少女−シホ−は、レイの前に歩み寄り右手を差し出す。
「今から、あなたの護衛は私に任せてもらうわ。ヨロシクね。」
「ええ。」
レイも右手を差し出し、握手をかわす。

「次に、シンジ担当の副隊長だ。ムサシ・リー・ストラスバーグ。」
「はいっ!」
精悍で浅黒い顔をした美少年が席を立つ。
「よろしくなっ!」
そして、シホと同じようにシンジと握手した。

「最後に、アスカ担当の副隊長だ。フレイ・アルスター。」
「はいっ!」
くりっとした可愛い目をした赤いセミロングの髪をした美少女が、誇らしげに席を立つ。その美少女−フレイ−も同じようにアスカと握手した。

次に、シンは各隊の割り振りを発表した。
レイの担当は、シホ以下、ルナマリア、ユウナ、フウコ、イサム、他男女各1人の計7人。
シンジの担当は、ムサシ以下、ケイタ、ミナコ他3人の計6人。
アスカの担当は、フレイ以下、カナエ、他4人の計6人。
各隊の連絡係には、マナ。
各隊は6人又は7人。レイの隊は女子5人に男子2人。アスカの隊は女子4人に男子2人。シンジの隊は、男子3人に女子3人という編成だ。

シンジは、自分の隊の中で一番目立つ女の子であるミナコを見た。この子も結構可愛い。すると、それに気付いたのか、ムサシが小声で話しかけてきた。
「ミナコって言うんだ。俺の彼女なんで、手出しするなよ。」
「えっ、そうなの。でも、手なんて出さないよ。そういうのは苦手だから、安心してよ。」
そう言いながらも、シンジは冷や汗をかいていた。ムサシが言うくらいだから、おそらくレイやアスカも同じように思っているのだろうと。それは、残念ながら当りだった。シンジがチラリと横を見ると、レイとアスカが揃って睨んでいた。



顔合わせの後は、自己紹介である。別室に移り、シンジ、レイ、アスカの3人と向かい合う形で隊員達が座る。隊長のステラのことは全員知っているので、副隊長以下の紹介になった。もちろん、趣味や特技の紹介ではなくて、護衛任務における得意分野の紹介が主なものになる。

シホは、戦自に入ったのは1年前。格闘技も得意なうえ、銃の扱いも得意であるという。
ムサシは、戦自に入ったのは3年前。格闘技は大得意だが、銃の腕はいま一つらしい。
フレイは、戦自に入ったのは1年前。格闘技はそこそこ。銃は苦手だが、爆発物処理の専門家であるという。
戦自に入ったのは、1年前から3年前の者が殆ど。
男子隊員の全員と女子隊員の殆どは、格闘技が得意である。
銃の扱いについても、男女問わずに得意な者が多いようだ。

他にも、重要な事項についての話があった。そう!恋愛関係である。
レイの隊は、イサムとフウコに加えてもう1組のカップルがいる。シホ、ルナマリア、ユウナは恋人はいないが、想い人がいるという。
シンジの隊は、ムサシとミナコのカップルを含めて、3カップルだ。
アスカの隊は、2カップル。フレイとカナエは恋人はいないが、想い人がいるという。
連絡係のマナにしても、想い人がいるという。

要は、男子は全員彼女持ち。女子はカレシ持ち又は想い人あり。シンジはそのことを知ると、何故だか少しばかりほっとした。ふと横を見ると、アスカはほっとしていたが、レイは無表情だった。シンジは、レイが本当に自分のことを好きなのか、自信が持てなくなった。

なお、この日以降、GOSPはステラ中隊とも呼ばれるようになる。
各隊は隊長の名前を採って、シホ小隊、ムサシ小隊、フレイ小隊と呼ばれるのだ。



To be continued...


(あとがき)

とうとう、チルドレンを護衛する部隊−GOSP−が結成されました。一部、怪しい少年少女もいますが……。
また、GOSPにはフリーの女の子はいませんが、シンジに言い寄る女の子はいないのか?それとも……。

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