第十章
presented by 流浪人様
「じゃあ今日は出会いを祝してカラオケでも行こうか」
「却下。金の無駄だ」
授業も終わり、シンジ、レイ、ロード、プリス、トウジ、ヒカリという面子で帰っていた。で、プリスの提案をロードが一蹴した。
「カラオケか〜。ふっふっふワシの美声を聴かせたろか?」
「寝言は寝て言いなよ。歌は人間の生み出した文化の極みなんだよ? 君にそれが分かるのかい?」
「グサッ!!」
シンジの辛らつな言葉にトウジは地面に蹲る。
「まぁ資金に関してはシンジ君持ちって事で」
「何で?」
サラッと言うプリスにシンジはジト目で睨む。プリスはフッと笑って、石ころを拾うとシンジの肩に手を回して来た。
「これを金塊にでも練成してさ〜」
「金塊でカラオケ行く気かい?」
しっかりと二人の会話を聞いていたロードは、ハァとため息を吐いた。
「あ! シンジく〜ん!」
その時、校門の所で一台の車からマヤが手を振っているのに気がついた。
「な! お、おいセンセ! あのお姉さんは誰や!?」
トウジはマヤを見て、シンジの胸に掴み掛かる。その際、微妙にヒカリがムッとするがトウジは気付いちゃいない。シンジは面倒そうに頭を掻き毟ると、
「まぁネルフ関係者だよ」
と無難に答えるとマヤの元へ行く。すると彼女の頭に乗っかっているパラケルススを抱きかかえて、顔の前に持ち上げると小声で尋ねた。
「どしたん?」
「いやまぁ……マヤ本人から訊いてくれや」
そう言われ、シンジはマヤに『何の用ですか?』と尋ねた。
「あ、そ、そのね……先輩がロード・ジャスティス君とプリス・フェイス君をネルフに連れて来るようにって……」
ロードとプリスを見ながら言ったマヤの言葉にシンジとロードとプリスは一瞬、表情を厳しくした。シンジはパラケルススを自分の頭に乗せると、マヤに尋ねた。
「何で二人なんです?」
「さぁ……詳しい事は知らないけど、幾つか質問したい事があるって……」
「へぇ〜……」
恐らくコード707に入っていない筈の人間が2年A組にいる事が感付かれたのだろう。その人間がシンジと親しいとなれば、彼の何かが分かるかもしれないので尋問にかけようというのがゲンドウの魂胆だとシンジは即座に理解した。
「別に構いませんよ」
「ああ。夕食までに帰してくれればな」
プリスとロードは特に問題なさそうに言った。
「じゃあ……悪いけど車に乗ってくれますか?」
「はいは〜い♪」
マヤに言われ、二人はとっとと車に乗り込んだ。
「あ、シンジ君。しばらくパラちゃん預かる?」
「そうですね〜……僕も懐かしいですし、しばらくお借りしますね」
「ええ。じゃあ、またネルフで」
そう言ってマヤは手を振ると、ウインドウを閉めて走り去って行った。シンジはパラケルススを頭に乗せたまま、車を見送る。
――さてさて……何を考えてるのやら……――
そんな事を心の中で呟きながら、シンジはレイ、トウジ、ヒカリと共に帰路に着いた。
「猫さん……」
「ニャ、ニャ〜」
パラケルススはジ〜ッと自分を見つめるレイに表情を引き攣らせていたりした。
「さて……幾つか訊きたい事がある」
ロードとプリスはネルフに着いた途端、黒服達に司令室へと連れて行かれ、目隠しをされ、両手両足を手錠で繋がれ、体を縄で拘束された。
今、司令室には二人以外にはゲンドウ、冬月しかいない。
「随分と手荒な歓迎をするんですね。ネルフって」
「すまんね。だが君らが何者か分からない内は仕方のない事なのだよ」
冬月が誠意のこもってない声で言った。ロードは軽く息を吐くと、その態度にゲンドウの眉がピクッと吊り上った。
「貴様らは何者だ?」
「何者もクソも……ごく普通の留学生です」
「嘘を吐くな。貴様らの経歴は全く無い……素直に吐けば楽になるぞ」
その楽になるというのは殺すと同意であるとロードとプリスは瞬時に悟った。沈黙するロードとプリスにゲンドウはニヤリと笑った。
「ロードとプリスが?」
「うん。連れてかれた」
レナはコーヒーを淹れながらシンジの話を聞いて僅かに驚いた。
「まぁ、そうなるとは思ってましたが……」
コード707に入っていないイレギュラーなのだから当然だろうとレナは言って、シンジとレイにコーヒーを渡した。
「碇君……」
「ん?」
ふとコーヒーを飲んでるとレイに話しかけられ、彼は彼女に顔を向けた。
「あの二人は……何者なの?」
「そりゃ僕が知りたいよ」
チラッとレナを方を見て苦笑いを浮かべて答えるシンジ。レナはニコッと微笑むと、セカンドインパクト前に流行ったゲームをしているルイとリンネの下へと向かった。
「きゃあああ! リンネ! ハメ技はやめてぇぇぇぇ!!」
「とどめは……ちょうひっさつわざ」
「ひょええええ!!」
0歳児に等しいリンネに負ける元・東方の三賢者ルイ……。シンジはあんなのの血を引いてると思うと、ちょびっと悲しくなった。
「おい、シンジよ」
「ん?」
その時、テーブルの下でミルクを飲んでいるパラケルススが話しかけてきた。
「ロードとプリスっつったか? 放っといて良いのかよ?」
「良いのかとは?」
「あの髭がどんな野郎かは俺らが一番、良く知ってるだろう? 幾つか質問なんてのは建前で拷問の一つや二つかけて後は処分だろうが」
そう言われ、シンジは「まぁね〜」とコーヒーを啜った。
「けどホムンクルスだし、死にはしないでしょ」
「けどよ〜、ホムンクルスってバレるのは拙いんじゃねぇか?」
「あ……」
シンジはハッとなって、カップを口に持って行ったまま固まった。言われてみればそうだった。シンジは溜め息を吐くとカップを置いた。
「しょうがない……不本意だけど助けに行くか」
「ま、あの作戦部長に遭遇しないよう気を付けるんだな」
「な〜に、呑気に留守番しようとしてたんだ?」
シンジはジト目でパラケルススを睨み付けると、掴み上げて頭の上に乗せた。
「ちょっとは協力したまえ」
その言葉にパラケルススは面倒臭そうに舌打ちした。
「碇君……」
「あ、綾波。僕、ちょびっと出掛けて来るね。晩御飯までには帰るから」
レイはコクッと頷いて、両手でカップを持ってコーヒーを飲んだ。
――猫さん……――
その瞳は、ずっとシンジの頭の上のパラケルススに向けられていたが。
「シンジ様〜、帰りにスーパーのタイムバーゲンで、タマゴ買って来てくださいね〜」
バキッ!!
ゲンドウの蹴りがロードの鳩尾に入った。現在、ロードとプリスは冷たい司令室とは別の部屋に入れられ、ゲンドウから手痛い扱いを受けていた。
そこはゲンドウ専用の拷問室で、ドグマより少し上の地下に造られた。この部屋はMAGIの目も届いておらず、完璧にゲンドウの私室となっている。
「吐く気になったか?」
ゲンドウはロードの顔をグリグリと踏み躙りながら言った。ロードとプリスは完璧に拘束され、目隠しもされている為、身動きが取れない。
が、二人とも全く動じなかった。
――この臭い……――
――死体……か――
ロードとプリスは部屋に満ちている臭いに表情を顰めた。見えないが部屋の何処かに死体が幾つか転がっているのだろう。血と肉の腐った臭いが部屋には満ちていた。
ゲンドウは全く動じない二人に僅かに怒りを見せ、床に転がっている日本刀を拾うと、おもむろにロードの足に突き刺し、グリグリと回した。ロードの足からは血が噴出すが、悲鳴一つ上げない。
「これでも吐く気は無し……か。なら手足を切り落としてやろうか」
「やめといた方が良いですよ……」
ゲンドウが言うと、今まで黙っていたプリスが口を開いた。
「何かを成す為には代価が必要なんです。貴方が誰かを殺し、傷付けた分、確実にその代償が貴方に帰って来ます」
早い話、悪い事をすれば自分に悪い事が起こるという事である。
「ふん。ようやく口を開けば説教か? 馬鹿が……そのようなもの今まで無かったわ……」
「だとすると一気に帰って来ますね。まぁ、その兆候は現れてるんじゃないですか? 貴方の息子によってシナリオが大きく外れているという事に」
「!! 貴様、やはり何か知ってるな……」
「指摘されて動揺する事なら最初からしなければ良いのにな……」
僅かに動揺を見せたゲンドウに足を突き刺されたロードがゲンドウの足下で言った。
「貴様ら……」
「アヤナミ レイに見捨てられ、自分が信じられるものが無くなった。もはや自分が信じれるのは妻だけ。ならば一刻も早くシンジの正体を暴いて心を砕かなければならない……違うか?」
「くっ!」
ゲンドウは歯を軋ませ、刀を抜くと思いっ切り振り下ろしたが、ロードは転がって避けた。そして、拘束された両手足の手錠を切ると、体を縛ってるロープも切り目隠しを外した。
――馬鹿な……どうやって……――
ゲンドウは電ノコを使っても切れない手錠がアッサリと切れた事に驚きを隠せない。ロードはプリスの分も切ると、自由になった二人はコキコキと間接を鳴らした。
「あ〜疲れた。ロード、傷は大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫だ」
「結構……」
プリスはニコッと微笑むと、部屋の隅を見て表情を顰めた。部屋の隅には全裸にされた女性の死体が幾つか転がっていた。どれも血塗れで、手足などを切り裂かれている。
「………随分と猟奇的な趣味をお持ちで」
「勘違いするな。奴らは俺を拒絶したから殺しただけだ」
「拒絶する人間は殺す……ですか」
恐らく彼女達はユイの代わりを求めたゲンドウの愛人達だろう。だが、彼女達はユイのように、ゲンドウを受け入れてくれず、誰よりも拒絶される事を恐れているゲンドウが殺したのだろう。死体の腐敗から見て、古いものは五年ぐらい経っている。
「これじゃあ肉が食べられなくなりますね……」
「こんな場所、とっとと脱出するぞ」
「逃がすと思ったか?」
ゲンドウがすかさず銃を二人に向けた。
「プリス」
「了解♪」
「!!」
プリスが頷いた瞬間、彼の姿は消え、ゲンドウは意識を失うのだった。
「失礼しま〜す」
「………何しに来たの?」
発令所では突然、現れたシンジをミサトが親の仇のような目で睨み付けて来た。パラケルススはシンジの頭の上で『会いたくなかった……』などと思ったりしている。
シンジはミサトを無視し、オペレーター席に座るマヤに尋ねた。
「ロードとプリスはどうしたんです?」
「え? あの二人だったら本部に着いたら保安部の人達に司令室へ連れて行って貰ったわ」
「………そうですか」
予想はしていたが、ゲンドウの短絡振りにシンジは溜め息を吐く。その際、チラッとリツコを見ると彼女はバツが悪そうに視線を逸らした。
此処に来る途中、携帯でゲンドウの居場所を探ったが彼は見つからなかった。だとすれば知ってそうな人間をシンジは見上げた。
「冬月副司令。司令は何処ですか?」
「君に言う必要は無いよ」
「ふ〜ん……」
シンジは目を細めて冬月を見ると、横目でリツコを見る。
――ちょっと驚かせてやるか……――
ニヤッと笑みを浮かべると、シンジはポケットから幾つかビー玉サイズの鉄球を取り出した。それを真上に放り投げ、両手を合わせると落下してきた鉄球を冬月に向かって殴り飛ばした。
すると鉄球は巨大な針状に変化し、司令塔に突き刺さった。
「ひっ!?」
冬月は思わず腰を抜かし、座り込んでしまう。発令所の人間はシンジのした事が信じられず、目を見開いて呆然となっている。
「さ、二人が何処にいるか話して……」
「た、大変です!!!」
突如、発令所に一人の黒服が駆け込んで来た。リツコが極めて冷静に『どうしたの?』と尋ねる。
「い、碇司令が!!」
「どうも〜♪」
どげしっ!!
すると黒服の背中を蹴り飛ばし、プリスがボロボロのゲンドウを担いで入って来た。
「い、碇司令!?」
「碇!」
「ちょっと!! アンタ、何やってんのよ!?」
リツコ、冬月、ミサトが三者三様に叫ぶ。が、プリスはハンカチで目許を拭うと、
「それはこっちの台詞ですよ。人を暗い地下に押し込んで拷問紛い……っていうか、拷問しちゃって、お婿にいけない体に辱められて……ヨヨヨ」
『なぁ!?』
まさか禁断の花園とか想像しちゃった発令所の面々は絶句する。マヤなんか頭を抱えて俯いたまま『不潔』と連呼している。
そんな中でシンジは一人――パラケルススもだが――、冷めた目でプリスを見る。
「うう………僕の貞操はロードの為に取っておいたのに」
「気色悪いこと言うな」
ごすっ!!
「ごふっ!」
勝手な事を抜かすプリスの首筋に突然、現れたロードが肘鉄をかます。その際の衝撃でゲンドウは顔面から床に激突してしまった。
プリスは首を押さえながらも微笑を絶やさず、言った。
「や、やぁロード……どうでした?」
「ふん、予想通りだ」
ピッと一枚の写真を取り出し、シンジに投げ渡した。シンジは首を傾げながら写真を見て、ハッと目を見開いた。
リツコも何だろうと気になってシンジの背中から覗き見ようとしたが、シンジは写真を細かく千切った。
そして、おもむろにゲンドウに歩み寄ると、気を失ってるゲンドウの髪を掴んで思いっ切り殴った。
「ぐ……」
ゲンドウは目を虚ろにしながらも気が付く。そして、シンジはボソッとゲンドウの耳元で囁いた。するとサングラスの奥でゲンドウの目が大きく見開かれるとシンジから離れた。
「サ、サードとその二人を捕えろ!!」
普段のゲンドウからは信じられないほど動揺した様子で叫ぶ事に発令所の面々は呆然としていたが、やがて武装した保安部員が発令所に雪崩れ込んで来た。
――数は……大体、五十人か――
シンジは廊下にまで溢れている保安部員を見てシンジはチラッとオペレーター達を見る。流石に彼らを守りながら戦うのは厳しいかと思う。
「シンジ君、安心してください。無理に隠そうとしなくても最初から疑われてるんです。それなら派手にやっちゃいましょう」
が、プリスが安心するよう声をかけるとシンジは少し驚いた様子を見せるが、軽く息を吐いた。
「それもそっか……だったら」
シンジは髪をかきあげて笑みを浮かべると、両手を合わせて床に手をついた。
ズドドドドドドドドドッ!!!
すると保安部の足下の床が壁のように盛り上がり、モーゼの十戒の如く廊下まで道ができた。
「捕まえたかったら追って来るんだね」
シンジはゲンドウに向かってアカンベーすると、ロード、プリスと共に発令所から飛び出して行った。
「お〜、追って来てますね〜」
迫り来る武装保安部を見ながらプリスが声を上げる。
「どうでも良いけど、二人とも何で傷だらけなの?」
シンジは拷問を受けたと思われるロードとプリスの傷が治っていない事に疑問を持ち、尋ねた。
「流石にホムンクルスだとバレるのは厄介だからな」
走りながらロードは答えると、シンジに尋ね返した。
「ところで、こっちはケージじゃないのか?」
「うん。ちょっと野暮用で」
『??』
楽しそうに言うシンジにロードとプリスは互いに首を傾げた。
「とうとう追い詰めたわよ〜」
ケージにミサトを筆頭に保安部員達がシンジ達を取り囲む。その中にはゲンドウ、冬月、リツコも混じっている。
「シンジ君、大人しく投降しなさい」
――そして私の復讐の手駒に……――
「前にも言いましたけど僕は貴女の下らない復讐の手駒になるつもりはありませんよ」
「な!?」
彼女の心情を読み取ったようにシンジが言った。
「下らないですって!!」
「貴女にとっては重要かもしれませんが、僕にとっちゃあ下らないです」
「この……!」
ミサトは頭に血が昇り、シンジに銃口を向け足を狙って撃った。が、シンジが両手を合わせて地面に触れると彼の前に壁が現れ、銃弾を弾いた。
『!!?』
誰もがその光景に驚愕した。やはり見間違いではない。先程の壁を創り出したのもシンジだ。やがて壁が崩れ落ちれ、シンジが言った。
「さて……このままじゃ僕は拘束されて髭が契約を無視するのは目に見えてますので選択肢を一つにしますね」
ニコッと微笑むと、シンジは後ろでLCLに沈んで佇む零号機に向かって歩き出した。
「シンジ! 何をする気だ!?」
「見てのお楽しみ〜♪」
楽しそうにシンジは両手を合わせると、LCLを凍らせた。それだけで皆は目を見開くが、LCLの上を歩き、やがて零号機の眼前にまで来る。
そして両手を合わせ、零号機に触れる。一瞬、零号機が光ったと思ったが、変化は見当たらない。シンジはニヤッと笑うと軽く零号機を小突いてダッシュして戻って来た。
すると零号機は音を立ててガラガラと崩れ落ちた。
『!!?』
目の前で零号機が崩れ落ち、皆は驚愕の色を隠せない。創るのに国一つ、二つの国家予算を上回るエヴァが一体、それこそダイヤモンドよりも硬いエヴァの装甲が、まるで砂のように崩れ落ちた。
「シ、シンジ、貴様何をした!?」
「零号機は破壊しちゃいました。これで貴方達が頼れる戦力は完全に僕だけになっちゃいましたね? それで僕を殺せるならどうぞ」
トンと自分の心臓に指を当てて挑発するシンジ。
「それとも……初号機も破壊しますか? どうせ、こんな大人連中なら死んでも良さそうだし」
「な!? い、いかん!! それだけは許さんぞ!!」
初号機を破壊と言われ、ゲンドウはうろたえた。
「じゃ、僕らは帰りますね。ああ、それと僕の友人にちょっかい出すのもやめてくださいね。その時は問答無用で初号機も破壊しますから」
そう言ってシンジ達は歩き出す。保安部員達が銃を構えるがゲンドウが絞るように『道を開けろ』と言って彼らは苦々しそうに道を開けた。
「シンジ……貴様、あの言葉はどういうつもりだ?」
「そっちこそ何を企んであんな事をしてるんだか」
すれ違い様にそんな遣り取りをし、ゲンドウは拳を強く握って唇を噛み締めたのだった。
「賢者の石の精製……か」
夕焼けの道の中、シンジ、ロード、プリスは帰路に着きながら話していた。
「ああ。リリスが磔にされている所に賢者の石を精製する練成陣があった」
プリスがネルフ内を掻き回してる間、ロードは地下のターミナルドグマに向かっていたのだ。シンジは彼らがリリスの存在を知っていた事には大して驚いていない。彼らには謎が多すぎ、多くの謎を知っていると既に悟り切っているからだ。
「あの拷問室にあった女性の死体の状態から見て、ここ一年ぐらい前のものがなかった。そう思ってターミナルドグマに降りたら案の定……」
「賢者の石の材料が生きた人間である事を知っている……か」
「まぁ陣が間違ってるし、錬金術の基本が分かってないから造れずに死体は放置してあったがな」
ちなみに拷問室と材料にされる予定だった女性の死体は丁重に葬っておいた。と、言ってもターミナルドグマのLCLに沈めただけだが。
「錬金術は“流れ”を理解しないと出来ませんからね」
「そういえば……ホムンクルスの核も賢者の石なんだよね〜。ロード、目潰し食らう?」
指を二本立てて厭らしく笑みを浮かべるシンジ。ロードは『遠慮する』と目を閉じて断った。
「そういえばロード、そろそろスーパーのタイムバーゲンじゃないんですか?」
「何?」
「ああああああああ!! そうだ! レナさんにタマゴ買って来てって言われたんだ!」
「待て、シンジ。今日は特にタマゴが安い日だ。主婦の方々はともかく、貴様には渡さん」
「甘いよ、ロード! バーゲンとは街の戦場! 弱肉強食の世界なのさ!」
「くっ! プリス! 先に帰って風呂を沸かしておいてくれ!!」
ダッシュで商店街へと向かうシンジをロードは急いで追いかけた。夕陽に消えていく二人の背中を見ながらプリスは目を細めて呟いた。
「う〜む……何だかホムンクルス離れしていってませんか、ロード。っていうか僕の能力なら商店街まですぐなのに……」
仕方がないので風呂を沸かしますかと呟きくと、プリスの体が光に包まれて消えていったのだった。
To be continued...
(ながちゃん@管理人のコメント)
流浪人様より「福音の錬金術師」の第十章を頂きました。
ここのゲンドウも、やはり最低の鬼畜野郎でしたね。読んでいて苛々してきました(笑)。
ドグマでは悪魔の所業をしているし・・・。
多少、ロードたちから酷い目に遭わされたようですが、まだまだ管理人の気が収まりません(笑)。
いっそのこと、ブチ殺して・・・いやそれだと後の楽しみが・・・うーむ・・・苛々、苛々〜〜。
せめてこれから徹底的に甚振って下さいね?お願いしますね?ねっねっ?
最近、パラケルススの出番が多くて、管理人は胸キュンです。
レイはパラケルススにご執心のようですね。グッドです。可愛いです。萌え萌えです。
猫好きに悪人はいません!これは大宇宙の真理なのですっ!
あ、でも金髪黒眉女は、マヤを平気で騙して悪事の片棒を担がせたから、管理人は大キライです。
ここにきて話が動いてきましたねぇ〜。これからの展開が楽しみです。
さあ、次作を心待ちにしましょう♪
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