Paper Must Be

01 風のシンジ

presented by るしざわあまる様


 あの時から一時間もすると、自らの状況を理解する。
 つまり自分が自分ではなく、新たな器に入ったと言うことだ。
 で、不安になったのは能力のこと。
 今まで使えていた“紙”が使えるのかどうか……僕はまず、それを試すことにした。

「兄さん、そこのティッシュとってくれる?」
「ん」

 “シンジ”はその場から動かずに棚からティッシュの箱を取って僕に渡してくれる。
 そしてティッシュを一枚取ると、硬化させてみる。
 ……よし、大丈夫。
 まったく問題は無いみたいだ。

「あれ?」

 何だか違和感がある。
 とてつもなく重要なことを、今見落としたような気がした。
 ……そう、“シンジ”の行動で、だ……けど。

「……は?」

 ああ、そうか。
 その場から動かずに棚から取ったことだ。
 って、どうやって?

「……兄さん、どうしてティッシュ、動かないで取れたの?」
「何?まだ寝ぼけてるの?……僕は風を操れるって、知ってるでしょ?」

 知らねえよ。
 って、どういう原理で風を操ってるんだか……。
 まあ、人の事はいえないけどさ。
 僕はティッシュ箱からティッシュを全て取り出し、腕に装着する。
 うーん、ティッシュじゃ心元無いけど……ないよりかは遥かにマシかな。

「……シュウ、何してるの?」
「え?プロテクターにしてるの」
「……はぁ?」
「あれ、僕は紙を使えるんだけど……知ってたよね?」

 あ。
 しらねぇよ、って顔してる。
 と言うことは、この世界の“シュウ”は紙使いじゃなかったんだね。

「兄さんが風使えるんだもの、特に問題は無いでしょ?」
「まあ、それはそうだけど……」

 紙、ねぇ……。
 そうつぶやいて上の空。
 まあ、放っておこう。
 とりあえずまとめ。
 僕の世界に戻るのはほとんど不可能って思って良いと思う。
 で、ついでに言うとこの世界で暮らすためにはシンジではなく“シュウ”として生活するほか無い。
 この世界の“シンジ”は風使い。
 うーん……とりあえず、こんな所か。

「まあいいや」

 良いのかよ。
 まあ、良いけど。
 ……ああ、僕と思考回路が同じなのか。
 それなら納得も出来る……と思う。

「ねえ」
「ん」
「今日、何曜日だっけ」
「日曜だけど?」

 日曜日か。
 ならお休みだよね。
 ……うーん、お店は変わらない……よね?
 まあ、それ以前にここはどこなんだろう。
 第二……だと思うんだけど。
 ああ、そうか。
 僕が引き取られた家の人たちが、厄介払いと言わんばかりに建てた小屋ね。

「兄さん、家作るからお金くれる?」
「何千万掛かるんだよ……」
「千二百円」

 あ、“シンジ”の目が点になってる。

「とりあえず、頂戴」
「……うーん、分かった。なくさないでよ?」

 大丈夫大丈夫♪
 僕は千二百円きっちり貰うと、服を着てから外に出る。
 ええと、先ずは小学校に行って……。
 ああ、ここだここだ。
 で、小学校の校門を出て左に七百メートル。
 今度は右に百二十メートル進んで、左の路地に入る。
 ……あった。
 大橋特殊用紙販売所。

「失礼しまーす」
「ん?……なんだ、坊主?」
「モニター登録したいんです」
「……ふむ、どこで聞いた?」

 ええと、どこだっけ。
 ああ、思い出した。

「小学校の新井山先生から」
「新井山か……良いだろう。登録料が掛かるが……」
「千二百円でしょ?」
「そうだ」

 僕は“シンジ”から貰った千二百円を渡し、用紙に記入する。
 危うく碇シンジと書きかけたが、今はシュウだ。

「坊主、名前は……ほう、シュウってのか」
「はい」
「よし、じゃあ特殊用紙だが……今日はこれだ」

 渡されたのはひたすらに硬く、防水・防火が施された紙だった。
 うん、なんだかうれしい。
 ジャストに欲しいものが手に入ったって感じかな。

「じゃあ、それを……そうだなぁ、1トンくらい用意してくれますか?」
「ああ、構わねえ。……そんなにもてるのか?」
「はい」

 本当か?
 と訝しげな表情をされたが、奥から台車に乗っけて百キロずつ持ってきてくれた。
 うん、これだけあれば十分だな。

「じゃあ、一週間ほどしたらレポート提出します」
「ああ、よろしく頼む」

 最後ににっこりとぼくは笑って、紙を見る。
 すると、一つの束が風に飛ばされるかのようにバラバラになり、僕に向かってくる。
 僕は服を全て脱ぎ(下着もだ)、ついでにティッシュのサポーターもはずした。
 そして素肌に紙が当たると、徐々に服を形作ってゆく。
 下着、ズボン、シャツ、サポーターの順番だ。
 この間、十秒。
 マスターが固まっているけど無視して、僕は残り999キロの紙の束をひょい、と持ち上げた。
 そして家まで戻る。
 ……途中、変な目で見られたけど気にしないことにした。

「ただいまー。ちょっと風でさ、この小屋をどっかにふっ飛ばしてくれない?」
「ん」

 家に帰って、シンジに頼む。
 家具はどうする、と聞かれたけど、もう必要ないよ、と言うと問答無用で飛ばした。
 ……うーん、渋るかな、と思ったんだけど。
 まあ、信用してくれてるんだね。
 僕は担いでいた999キロの紙を地面に下ろすと、庭を見渡す。
 うーん……結構広いな。

「どのくらいあるんだろう」
「庭だけで36坪あるよ」

 へえ、そんなにあったんだ。
 じゃあ、30坪くらいの二階建てを作ろうかな。
 僕は家の完成形を想像する。
 内部まで、精密に……より、完璧に。
 そしてそれが出来上がると、紙に指示を与える。
 ……三十秒ほどたったかな。

「さ、出来たよ」

 僕は言う。
 目の前には、豪邸ともいえるほどの家が出来ていた。
 というか、僕たちを引き取ってる人たちの家よりも豪華。
 紙で作ったからとりあえず、白い。
 完璧な、混じりけの無い白さ。
 まあ、指示を与えればいくらでも変えられるけど。
 それに、中も色はつけてあるし。

「って兄さん?」
「……はっ!」

 正気に戻ったらしい。
 呆気に取られてたのかな?

「出来たよ。兄さんの部屋は二階の入って左側。僕の部屋は右側。左右対称なだけだけどね」

 水道とかも全部作ってある。
 全部紙で。
 水道管はどうした、とか言われそうだから先に言っておくと。
 小屋時代にも一応水道ガス電気は通ってた。
 だから、足りない分は紙で作ったけれど、問題は無いのだ。

「あ、これが鍵ね」

 僕は真っ白な鍵を渡す。
 無論、紙製だ。
 鍵までついてるの……?
 とか言いたさそうな顔で家へと入ってゆく。
 中に入ると、又も驚愕したようだ。
 一応間取りは、7LDK。
 二階は二人の部屋しかないけど、一回はリビング・ダイニング・キッチン・客間が5つある。
 え?
 何でそんなに客間があるんだって?
 気にしないで。
 なんとなく埋めただけだから。

「トイレはそことそこ、それに二階の中央。お風呂はそこだけ」

 僕がとりあえず機能説明をしたんだけど、聞いてるかどうかは謎だ。
 まあ、いいか。

「あれ?」

 何だか外が騒がしい。
 僕が玄関を開けて見てみると、僕たちを引き取ってるおじとおばがいた。

「あれ、どうしたんです?」
「どうしたもこうしたも……なんだ、この家は!」
「家です」
「そうじゃない!」

 いや、言ったって信じてくれないでしょ?

「たしか放任主義なんですよね。なら、出て行ってください。僕たちの家です」

 そういって、僕は玄関を閉めた。
 ついでに鍵も。
 何だか外でわめいてるけど、僕は無視してシンジの元へ戻った。

「ってシュウ、その服は……」

 今頃気づいたの?
 ちょっと遅くない?

「これ?紙だよ」
「……やっぱりか」

 当然ね。
 僕にとって、紙は無くてはならないんだもの。
 服って形で持っておくのも、一つの方法なんだよ。
 と説明すると、シンジは自分の部屋に入っていった。
 部屋にはベッド、机、椅子、テーブル、本棚、棚、箪笥、クローゼットなど、いくつかの家具がある。
 全部紙だけど、色をつけてあるので気にならないだろう。

「って、紙なんだよね……炎とか、大丈夫?」
「まったく問題ないよ。紙自体防火防水だし、僕の力が残ってる限りは1200万度くらいなら何とかなるはずだし」
「へえ……で、力はどのくらいのこるの?」
「そうだなぁ、一年位かな?」

 試したこと無いけど、そのくらいは持つよ。
 ……あれ、今日は日曜日……だったよね。

「まさか」

 僕は壁に穴を開けて、外に出る。
 勿論、壁は修復しておいたけど。
 で、おじとおばがまだ外でワーワー言ってたので聞いてみた。

「もしかして、手紙来てない?」
「ああ、そうだった。さっさと読んで出て行くんだな」

 僕は後半を無視して、手紙を受け取って中に入っていった。
 そして手紙を開けてみると、こうかかれている。
 『二人とも、来い ゲンドウ』と。
 うーん……父さんって、来い、意外にも書けたんだ。

「兄さん」
「ん」

 ベッドに横になってる“シンジ”に僕は言った。

「父さんから手紙。第三まで来いだって」
「……父さん、が」

 そうだよ、父さんが。
 あの殺人機に乗せようと、またしてるんだね。
 まあ、急ぎの用事でもないし。

「とりあえず、今日はゆっくりしようよ。新居なんだし」
「ん」

 そういって、シンジは眠ってしまう。
 ……そこまですごしやすいのかなぁ。
 まあ、あの小屋もかなり狭かったし。
 とりあえずシンジが寝てしまったので、僕だけで準備することにした。


 翌日。
 今日は月曜日で、学校があるんだけど、僕たちはお休みした。
 何故って?
 そりゃ、準備があるからだよ。

「シュウ、気をつけてね」
「へ?」

 何を藪から棒に。

「昨日の夜、銀行強盗があったんだって。犯人、いまだに逃走中だってさ」
「へえ?」

 銀行強盗かぁ。
 まったく、酷いことをする人も居るもんだね。
 さて、僕もそろそろ本を入れないと。

「シュウ」
「なに?」
「その本、いつ買ったの?」
「昨日」
「お金は?」
「銀行から貰ってきた」

 僕はあっさりそう答える。
 なんだか“シンジ”が白くなっているけど、気にしないことにする。
 本はとりあえず百冊用意した。
 全部百科事典だけど。
 無論、トランクには入らないから紙で作ったバッグに入れてある。
 重さは……200キロくらいかなぁ?

「兄さん、準備は?」
「あ、う、まだ。ちょっと待ってて」
「うん」

 うーん、いっそ“シンジ”の服も紙で作っちゃおうかな。
 紙の予備になるし。
 まあ、つかったら……裸になるけど。
 ま、いいや。
 今度相談してみよう。

 十分後。

 準備を終えたシンジが僕の元へとやってくる。
 うーん……僕もシンジで居たいんだけど。
 まあ、仕方ないや。
 今度からは、心から兄さんって呼んでもいいかもしれないな。

「お待たせ。そろそろ行こうか」
「うん。あ、その前に、この家どうする?」

 僕が聞くと、何が何やら分かっていないようだ。
 どうしたものかなぁ?

「分解して持ってくもよし、このまま放置するもよし」
「なるほど。……もって行こうよ」

 やっぱりね。
 かなり気に入ってるみたいだったし。

「わかった。ちょっと家から離れててね」
「ん」

 僕は家から2メートル離れると、白いブロックをイメージする。
 そして、紙に指示を与えて……目の前にブロックが完成して、家が綺麗サッパリ無くなった。
 質量保存の法則のせいか、999キロは変わらなかったけど。

「じゃあ、行こう」
「ん」

 僕とシンジは歩き出す。
 目指すはリニアの駅だ。
 勿論、車なんて物は無いから歩きだけど。

 ……何分あるいただろう。
 かなり歩いたような気がする。
 時計を見てみると、一時間も経っていた。
 うーん、こんなに遠かったっけ……。
 ……一時間?

「ねえ、電車行っちゃったんじゃ……」
「……かも」

 まあ、いいや。
 次のに乗っていこうよ。
 そういうと、そうだね、と言ってお弁当を出し始めた。

「これは?」
「長旅になると思って。作ったんだ」
「さすが」

 僕は感謝して、食べようとした。
 テーブルと椅子が欲しいなぁ。
 でもここはホームだし……あ、そうだ。
 僕はテーブルと椅子をイメージする。
 そして紙のブロックに指示を与えて……はい、出来た。

「……シュウ、作ったの?」
「うん」

 だって、あったほうが食べやすいでしょう?
 僕がそういう前に、なるほど、とつぶやいていたので多分同じ事を考えたんだろう。

 と、そこに突然。
 ドォォォォォン、と何かが爆発するような音がした。

「何!?」

 僕がそう叫ぶと、シンジが僕を抱きかかえるかのようにして転がる。
 何からかよけてる……銃弾か!

「何で……!」

 僕は作ったばかりのテーブルと椅子を分解して、壁を作る。
 今回、厚さは100枚分ずつ取れたので、核だろうと何だろうと衝撃を通さない。
 しばらくは安全だろう。

「兄さん、何かしたの!?」
「いや……心当たりも無い」

 何なんだよぉ!
 ちょっとだけ壁に穴を開けて相手を見てみる。
 ……あ。

「警察……いや、治安維持隊かな」

 心当たり無いんですけど。
 ……ああ、もしかして銀行の……?

「兄さん」
「ん」
「ごめん、僕のせいみたい」

 うーん、どうしたら許してくれるかな?
 なんだかシンジがわめいてるけど、無視。
 ……いや、許してもらわなくてもいいや。

「……瞬」

 僕はただ一言、そうつぶやく。
 すると壁から正方形の紙が音速で飛び出した。
 その紙は襲撃者の腕や足を切り落とし、赤く返り血を浴びることも無く壁へと戻る。
 銃声が止んだ。
 おそらく、驚愕しているんだと思う。
 なぜか自分の足や腕が飛んだ……と、恐怖しているのかもしれない。

「シュウ、何をやったの?」
「紙の刃を飛ばして、足か腕を切り落とした」
「なるほど」

 ……あー、血の匂いがしてきた。
 と思いながらシンジを見ると、目を瞑っている。
 何をしてるの?と聞こうとしたら、突風が僕たちを襲った。
 ……なるほど、血の匂いを飛ばしてくれたのか。

「ありがと」
「いやいや」

 さて、そろそろ電車も来る頃だし。
 お弁当は食べれなかったけど、仕方ないよね。

「あ、来たよ」

 シンジが言う。
 それとほぼ同時に、電車がホームへ入ってきた。
 うーん、アナウンスが聞こえなかったのは……ああ、突風のせいか。

「さて、乗ろうか」

 そうだね。
 乗車券を確認すると……あれ?

「もしかしてこれ、貸切なんじゃぁ」
「……そうだね」

 ネルフ専用と書いてあるし。
 まあ、実際に貸切なんだろうね。
 ……カードが二枚は言っていたのはやっぱり兄弟だからかな?
 でも、あれに乗せたいならば一人を呼べば良いのに。
 ……なるほど、人質か。
 片方を人質にして、乗らないと殺すぞーとか脅すんだ。
 馬鹿らしい、僕たちは能力者。
 滅多なことじゃ死なないのにね。

「そうでもないよ」

 特急車両の席に座って、そうつぶやいているとシンジが割り込んできた。

「僕たちの力は完璧じゃないんだ」

 まあ、そりゃそうだけど。
 限定条件、風にはあるの?

「うん。密閉された空間では起こせないんだ」

 なるほど。
 どこかしらで外に通じてないといけないんだね。
 でも、僕の紙に限定条件って……あるのかなぁ?
 遠隔操作も出来るし、時限操作も出来る。
 水にぬれても問題ないし、燃えない。
 硬度は紙一枚で10センチの鉄板。
 ……死角が無いような気がする。

「いや。……発動まで、時間が掛かるでしょ?」

 あ、確かに。
 本当に危険が迫ったときは自動的に、0.0005秒くらいで防御だったかな。
 でも自分で反応しないといけないとなると、どうだろう。
 僕の反射能力は他の人より良いから、0.04秒くらい。
 で、力を込めるのに0.006秒。
 その後のアクションに0.7秒。
 つまり合計で0.746秒かかるのか。
 うーん、どうだろう。

「……は?」

 え?
 どうかしたの、兄さん。

「発動まで0.746秒……?」

 ちょっと青ざめてるんだけど。
 何かあったの?
 具合でも悪い?
 ……ああ、乗り物酔いか。

「違うって。僕の風は……4秒掛かるんだけど……」

 冷や汗なのかな。
 なんか汗かいてるよ?
 ……って、4秒も掛かるの?
 ちょっと掛かりすぎだよ。
 せめて1秒じゃないと、戦闘には使えないしさ……。

「訓練なんて、してないからね」

 なるほど。
 僕は一応訓練してたからなぁ。
 毎朝、簡単にだけど。
 でも風は先天性の素質でしょ?

「まあ、そうだね」

 紙は違うよ。
 紙は後天性の素質なんだよ。
 つまり、誰にだって劣性遺伝子として組み込まれてるわけ。

「へえ?つまり、シュウ意外にも紙使いは居るの?」

 いるよ。
 まあ、僕レベルの人は……そうだなぁ、ヨミコあたりかな?

「ヨミコ?」

 そ。
 ヨミコ・リードマンって名前だったかな?
 でもあれ、小説のキャラだからなぁ。
 R.O.D.って小説の。

「……小説……いつの?」

 セカンドインパクト前。
 結構有名だったんだよ。
 現実世界に紙使いは残念だけど聴いたことは無いな。

「……ふぅん。で、聞きたいんだけど」

 なに?

「……なんでそんなに詳しいのさ?」

 …………。
 いや、それはその。
 僕は冷や汗をかいていることに気づいた。
 あー、まずいなぁ。

「ほら、本を読んでたからさ」
「……いつ?」
「が、学校で」
「なるほど」

 何とか納得してくれたらしい。
 危ない危ない、次からは気をつけないと。
 ま、まあ。
 先天性の素質なんだし、風のほうが強くなるような気がするんだよね。

「そんなものなのかなぁ」

 そんなものだよ。
 きっとね。
 それにしても遠いね、第三は。
 まったく、あんなものに乗せるために僕たちを呼ぶだなんて……。

「……シュウ」
「……なに?」
「いや、なんでもないよ」

 シンジが顔を背ける。
 うーん、どうしたんだろう?
 ……あ、そうだ。

「あ、兄さん」
「ん」
「兄さんの服、紙で作らない?安上がりだし」
「……シュウが力を行使したら裸になるんじゃぁ」
「かまわないでしょ、見られて減るもんじゃ無し♪」
「絶対イヤ!」

 やっぱり拒否されたか。
 当然といえば当然。
 でも人前で裸になることがそんなにいやなのかなぁ?
 僕は大して困らないけど。
 ……あ、小学生と中学生の思考の違いか。
 一応、知識面では大学生並なんだけどな、僕も。
 ……それにしても遠いなぁ。

「ねえ、兄さん。寝ても良い?」
「かまわないよ。僕が起きてるからね」

 そ。
 なら、よろしくね。
 僕は紙のブロックをベッドの形に変えて、その上に寝転ぶ。

「いや、そうやって寝るのか?」
「当然」

 そして僕は、ベッドでゆっくりゆったりと眠り始めるのであった。



To be continued...


(あとがきと言う名のまとめ)

 1.セカンドインパクト前の小説『R.O.D.』

今でも大好評発売中。
宣伝してどうするという話ですが。


 2.紙使い

紙を自由に操る者。
全ての人間が劣性遺伝子として因子を持っている。
後天性の能力。
今作品では碇シュウ(シンジ、主人公)がこれ。


 3.風使い

風を自由に操る者。
AT細胞(後述)を持つものがまれに手にする能力。
先天性。
今作品では碇シンジ(主人公ではないほう)がこれ。


 4.AT細胞

ATフィールドとは関係ない。
アトロポス細胞の略語。
“リリン”としての覚醒をした人間の細胞のこと。
まれに特殊な能力を得ることがある。
又、遺伝する。
もちろんDG細胞とも関係ない。


 5.大橋特殊用紙販売所

謎のマスター、大橋セイヤが経営する個人店。
実は東方の三賢者に次ぐ科学者とさえ言われる天才。
しかしそのことをシュウが知っているかは謎。


 6.治安維持隊

戦自と警察の間に位置する組織。
強盗などの犯罪に対してのみ出動する。


 7.瞬

紙使い『シュウ』が編み出した技の一つ。
音速で飛び交う紙による攻撃。
本人曰く『初歩中の初歩』。


 8.殺人機

エヴァの事。


 9.1200円

300円が登録料、900円はポケットマネー。
大橋セイヤ曰く“金が無いと研究できねぇ”。

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