第三話 アーカム+ハーレム+交渉
presented by sara様
さぁ、第一幕は閉じしばし幕間を楽しもうじゃないか。
愚かな主演男優のシナリオはその一部でさえも遂行できずそれを崩した存在を憎悪の念で怨嗟している、それはもう凄まじいよ狂おしいぐらいだ。
なんて爽快な感情かなんと甘美な想念か、僕に向けられないのが残念の極みだ、羨ましいよお姫様、その醜く、汚い、汚濁のような執念を一身に浴びることが出来て。
そして、崩れたシナリオを、崩れたことを認めずに男は愚かに進める、そのあとより愉快な喜劇の台本を記すために。
その愉快な喜劇で悲劇な舞台で僕を楽しませるために。
そしてヘドロのような憎悪を抱いた男が座すのは、漆黒の部屋。
この男が末席に座り、醜悪な老人たちと語らう場、愚かしい饗宴の場。
面白く、悲惨で、愉快なシナリオを描くために。
愚者が愚者と語り合い愚かで愚かなシナリオを嘯く、愚者たちの談合場。
愉快じゃないか、至高の美酒と同じ味がする、この場の空気は薫り高い香の匂いさえする。
愚者たちの想念が、思いが、酒となり匂いとなる。
世界の支配者を気取り、自身を偽りの神へとなろうとする死を恐れる仮初の絶対者。
神、このような醜い老人が、愉快なコメディアンが神、僕と同じ席に並ぶ、それはそれで愉快かもしれないでど、それはね不愉快だよ。
醜悪な家畜は醜悪な家畜のまま僕に無様な演劇を見せるが相応しい。
身の程を知らない豚は僕は要らないんだ。
自身をこう言う醜悪な老人は特にね。
選ばれた人間である我等が生き残ってこそ人類に価値が出る。
神、僕は選んだ覚えはないんだけどねぇ、それに君達では役不足だよ、そんな醜悪な狂気ではね。
自分たちが自分を選んだんだろう、身の程も知らず、この醜悪な老人たちはそれに何の価値があると思っているんだろうね。
だがその愚かな会談も紛糾しているよ。
その狂ったシナリオの為に。
僕のお気に入り達が君たちの醜いシナリオを滅茶苦茶にし、美しく愉快なシナリオに書き換えてしまったからね。
愚者たちの描いた、愚かで汚い醜悪な三文芝居を。
残酷で悲惨な喜劇で悲劇を演じるためのシナリオに。
ああ、愉快愉快、慌てふためく老人たちのなんと無様なことか。
手のひらで踊ると思っていた駒が抜け落ち。
用意した懐刀、エヴァンゲリオンは憂き目を見ることすらなく未だ眠り。
老人と男の操り人形たる少年と少女はお姫様に奪われた。
全てが計画倒れ、全てが夢想となった、それでも醜悪な口で囀る男はシナリオの内だと言うんだ。
愉快じゃないか、身の程を、自分の矮小さを知らないということは。
老人は修正すると。
男は問題ないと。
愚かな計画を続行させようとする。
でも駄目だよ、その計画は気に入らない、永劫を生きる僕が退屈になる計画だ。
醜悪で、悲惨で残酷な計画だが、それは気に入らない。
潰さして貰うよ。
しかし、僕が手を下すまでもないだろう。
無垢なる刃が醜い怨念、愚かな渇望などたやすく切り裂いてしまうだろうから。
そう、君たちにはまぶしすぎるだろうあの無垢なる刃は。
穢れを知らない純粋な怒りは、憎悪は、殺意は。
無垢なる刃は、魔を断つためならどこにでも現れる、いくらでも蘇る。
その名の意味を果たす為。
君たちは無垢なる刃の目に留まったよ。
瑠璃達が立ち去った後。
暗闇に包まれた部屋に座す一人の男、特務機関ネルフ総司令碇ゲンドウ。
そして暗闇に浮かび上がる立体映像が5人の老人を形作る、特務機関ネルフの上位組織、国連の秘密組織である人類補完委員会のメンバーであり、世界を裏で操ろうとする秘密結社ゼーレのメンバーの一部。
国連というよりはカルト結社か悪の秘密組織の密談といったほうがしっくりくるが。
実態は只の耄碌爺の往生際の悪い足掻きのための集会なんだが。
「使徒再来かあまりに唐突だな」
「十五年前と同じだよ、災いは何の前触れも無く起こるものだ」
醜悪な老人の口から漏れるおぞましい言の葉、紡がれる愚にもつかない内容。
欲にまみれた餓鬼共が囀る。
「しかし六文儀、あの国連のロボットは何かね、あのようなものがあるとは聞いていないよ」
「我々の先行投資無駄にせんで貰いたいものだな」
「君のネルフは役に立つのかね、役に立たねば無駄と同じだ」
と言うか既に国連上層部より不要論が出だしている、自分のところの特務部隊が使徒を殲滅したので強気だ、少なくとも反ネルフ派は勢いを得たようだ。
「左様、あのような存在を我等以外が保有することは認められん」
デモンベインは国連保有のロボットとなっているらしい、厳密には覇道保有の兵器なのだが。
ついでに国連に強い影響を持つゼーレだが、国連軍は母体の殆どが元合衆国軍であるため覇道の本拠であるアメリカの影響が強いので情報が入りづらいらしい。
そのような情報がネルフにも入り辛いとわかっているのに言っている
「どうなのだ六文儀」
早く言うと判るはずがないとわかっていっているので、今回失態を演じた男に対する嫌がらせなのだが。
「現在調査中です」
両手を顔の前に組んだゲンドウポーズで答える髭、内心先程瑠璃に良い様にやられて腸が煮えくり返っているのだが、その表情の伺えないポーズで低い声で返答する。
調査中も何も判らないという回答しか上がっていない、そしてそれをそのまま言うわけにはいかない。
そして、さらに言葉を浴びせる老人達。
「そのような悠長なことで良いのかね、このロボットは明らかに異常だ」
「このような破壊力N2を明らかに上回っている」
レムリア・インパクトのことのようだ、確かにアレは洒落にならん、第三使徒を一撃で消滅させたのだから。
「こちらの赤木博士が後日、技術交換に向かいます、その時判明するでしょう」
確かに、そんな話は出て来ている、シンジの交渉のついでではあるが。
老人たちはそれに僅かな関心を向けるも、この時点ではさほど関心を払わなかったようだ。
「由々しき事態だよ、使徒殲滅はネルフの表向きの仕事とはいえ。
対面上使徒殲滅をせねばならん」
「判っているのかね、人類補完計画、これこそが我等の急務とはいえ、それは使徒殲滅という隠れ蓑があってこそだ」
目の前に迫った問題点を優先したようだ。
本来の目的とは異なるとはいえ、使徒殲滅が対面的なネルフの役割、それを果たせないのはかなり問題であるから。
「問題ありません、次の使徒で我々が勝てばよいのです」
現在パイロットはセカンドチルドレンしか居ない、しかもドイツ。
シンジは交渉前、レイはゲンドウの視点で国連に拉致られている。
そんなんで本当に勝てるつもりなんだろうか、冬月辺りが言っても問題ないで済ましそうだしこの髭は。
本当に考えて物を言ってるんだろうか。
と言うか、髭も老人も対使徒戦を軽く見すぎている気がする、使徒に負けたら彼らの計画とて水泡に帰すのだから。
自分たちの計画上、うまく行くはずと思い込んでいるようだが。
まぁ、ゲンドウとしてもこの老人たちの前で、自分の息子は造反して、さらにファーストチルドレンは拉致されました等と言える訳も無いが、幾らなんでも皮肉ではすまないだろうし。
委員会のメンバーはまだこのことを知らないし。
まぁ、連れ去られたのは(あくまでゲンドウ視点)数時間前で、殆ど本部占拠で中に居る草、つまりゼーレのスパイ達も事情聴取などで連絡が取りづらかったのでまだ報告が来ていなかった。
知りようが無かったとも言える。
ここから驚愕し、顔を青ざめさせることになる。
ついでにゲンドウここまで大騒ぎになったし、国連にも連絡が行っているはずなので、ゼーレは今回の国連軍の監査が入ったことを知っていると思っていた。
幾らなんでもあそこまで派手だと隠しようがないと思ったらしい、既に連絡が言っていると思い込んでいた。
それでも言い訳は山ほど考えていたが。
そのことについて若干拍子抜けしていたりする。
それでも知っているという前提で話しているが。
「それよりも今回の国連軍の介入により、国連がネルフに疑問を呈し。
監視団及び監査団を設置しようとする動きがあります、阻止をお願いしたい」
監視、監査団など置かれては、今までどおり好き勝手出来ないと、ゼーレの圧力に頼ろうとしたらしい。
自分ではどうにも出来ないから。
ここで初耳なのが老人たち。
怪訝な顔をしてゲンドウにいくつか質問をし。
ゲンドウも怪訝な顔でそれを答える。
双方がすれ違ったという、傍目から見るとかなりおかしい現象が起こっていた。
で、ゲンドウからあらかた聞いた補完委員会。
本部施設一部占拠、職員事情聴取、後日MAGIの監査、監視、監査団の設置、忌々しいのでファースト、及びサードチルドレンのことは言っていないが。
ついでに言わなかったので後日散々責められた。
それでも、何とか急いでセカンドチルドレンと二号機は送ってもらえることになったらしいが。
もしないまま次がきたら、何も出来なくて敗北は必至だからね。
委員会のメンバーは顔を青ざめさせ、戦慄き、慌て。
「どういうことだ、六文儀!!!!
本部に国連の侵入を許すなど、これは由々しき事態だぞ、判っているのか」
「そうだ!! どういうことか判っているのかね、われらの計画が外部に漏れかねんのだぞ、そのようなことになれば我等の計画が」
「議長、この事態の収拾容易ではありませんぞ!!」
「そうです、国連軍の増長、ネルフの監視、MAGIの検閲など到底看過出来るものではありませんぞ、どうするのですか!!!」
慌てふためいている、それはそうであるが。
こいつらの考えている計画がバレれば、いくら傀儡になっている国とはいえ絶対に反対するものだからだ。
それこそ全員国際指名手配を受けて、表の世界に拝承顔を出すことが出来なくなるだろうし、裏むきの権力も奪われるだろう。
つまり死ぬまで追い回されるか、隠れるしかなくなるのだ。
そんなことは御免こうむる。
ネルフ本部には彼等にとって見つかっては拙いものが有るのだし。
そんなところに外部の監視組織などいれるわけには行かないのだ。
それこそ計画どころではなく、自分の首を絞めかねない。
基本的に死ぬのが嫌で、愚かな計画を立てている臆病者の集団である、そのような事態を招くことなど許容できるはずもない。
その後散々ゲンドウに文句をいい、扱き下ろし、多少ストレスを発散してから。
何とか国連の監視、監査団のネルフへの派遣をとめさせようと動き出すのだ。
その過程でこの騒動の中心に覇道財閥が居ると知ってさらに慌てさせた。
ゼーレと覇道財閥はかなり仲が悪かったから。
結局、国連の介入はとめることは出来なかったようだ、それでも幾人かは親ネルフ派を混ぜることは出来たのだが。
たぶん微塵の役にも立つまい。
さらに各国からの資金提供を受けるのが困難になり彼らのシナリオの殆どがこの時点で既に瓦解しつつあることを追記する。
数日後、この時点でゼーレに本部にサードチルドレン及びファーストチルドレンがいないことがばれている。
ゲンドウに司令室に呼び出されたリツコとミサト。
前回書いたがシンジをサードチルドレンとする為の交渉に行くことを命じる為に(リツコは知っているが)、司令室に呼び出されたのだ。
といってももっぱら喋るのは冬月だけだが。
ついでに冬月もミサトに交渉など出来るのか甚だ疑問であったりする、リツコに期待しているようだが。
訳、このときの期待は押し付けているという言葉と同義。
まあ、冬月としてもゲンドウが問題ないというので半ばゲンドウに押し切られたような形ではあったが。
今までゼーレの恩恵でまともに同格かそれ以上の相手とゼーレ以外に交渉というものをしたことが無いので、また特務権限でも振りかざせばいいとでも思っているのかもしれないが、特にゲンドウ。
リツコにとっては頭の痛いことに。
リツコも自分の親友(建前上)がまともに交渉などが出来るとは露ほどにも思っていなかった。
それに強引に特務権限を振りかざすことも出来ないということも理解していた。
その為これから降りかかる自分の不幸を考えると頭痛ぐらいするのは自明の理だろう、哀れなことに。
と言うか、ミサトの能力に疑問を持っているならちゃんとしたのを送れよ司令部、現在パイロット一人もいないんだから。
それともゲンドウ、まだシンジのことを意志の弱い子供だとでも思っているんだろうか。
牛が強引に迫れば引き受けるとでも。
そんなことはおいといて、冬月がミサトに命令を伝える。
「葛城君、君は赤木博士とアメリカに赴いて、シンジ君がサードチルドレンとして就任してくれるよう交渉に行ってもらいたい。
セカンドチルドレンと二号機が配備されることになったが、使徒はいつ来るか不明だ、それに配備できる戦力は配備するべきだろう」
言うことだけはまともだが、シンジをサードチルドレンに出来ないのは、ほっぱらかしにしていたゲンドウのせいと、それを黙認した冬月のせいなので自業自得といったほうが早い。
幾ら行方不明とはいえ、隠れていたわけじゃないので探せばちゃんと出てきたのである。
それを髭、面倒くさかったのか放り出していたのだ、養育費がかからんからいいとでも思っていたのかもしれんが直前で必要になるまでお座なりにしか探していなかった。
所詮予備と甘く見ていたのかもしれないが、レイでは初号機が覚醒しないと判って慌てて探し出したのだ。
勿論そのようなことでお望みのシンジが出来上がっているわけも無い。
そのツケが今に回ってきているだけだ。
引っ被っているのはゲンドウでは無くリツコだったが。
命令を仰せつかった作戦部長のミサト、リツコの頭痛の原因は、無闇に張り切っていた、傍迷惑な事に。
「はい、サードチルドレンを必ずや本部につれて帰ります」
口調だけは立派だが、つれて帰るではなく、サードチルドレンになることを納得させるのが先なんだが、判っているんだろうか。
判ってないんだろうなぁ、多分。
恐らくろくでもないことするだろうし。
多分、絶対、確実に。
と言うか完全に人選間違えている。
内心こんなこと考えているようだし。
(ふふふっ、所詮子供じゃない、私がきつく言えばころっとパイロットになるに決まってるじゃない、こっちは人類のために戦ってる組織なのよ、正義は我にありなのよ、それより見ものだわ、あの女がどんな顔するか)
「それと赤木君、あちらのスタッフと技術的な会談頼むよ、何としてもあのロボットのことを調査してきてくれたまえ」
これ、ゼーレに厳命されている、どうやら尻尾に火がついたらしい。
サードチルドレンとの交渉の時リツコが技術会談をすることをゲンドウが喋ってしまった為、ゼーレに報告することになっていた。
このときミサトがろくでもないことを思いついたようだけどそれは後の話。
リツコにとっては頭の痛いことになるだろうが。
まぁそういう命令を受けて、翌日アメリカに旅立った。
で所変わって。
アメリカ合衆国、セカンドインパクト後の世界的な大不況以後も世界最大の軍事経済大国を維持し続けた世界の中心。
その覇権を維持させたのが、マサチューセッツ州にあるアーカムシティ,合衆国東北部に位置する街、世界最大の経済都市。
現在においても世界中にインパクトの傷痕を残す情勢において未曾有の好景気、自他共に認める世界一の大都市、今でもアメリカンドリームを夢見ることの出来る町、誰もが憧れる街それがアーカムシティ。
そしてアーカムに君臨する王、アメリカが世界最大国家を維持した立役者、世界経済の雄、覇道財閥。
世界経済を握る絶対存在。
瑠璃の祖父覇道鋼造が一代で築き上げた組織。
現在絶対者といえる覇道鋼造亡き今、覇道を束ねる総帥,それが国連軍元帥の顔を持つ覇道瑠璃。
覇道の名を知らぬものはいない、そう言わしめるだけの経済力を保有する巨大組織。
それが覇道財閥。
その名の通り覇道、王者の道を行くもの。
その覇道の治めるアーカムシティの中心部に立っているマンションの一室、自宅と兼用で使われているのであろう、表のドアには大十字探偵事務所と書かれたプレートが出ている。
その一室を前にして、一週間ぶりに日本から帰ってきた大十字シンジは中から聞こえてくる喧騒の音にどうも中にはいるのを躊躇している。
ついでにシンジの部屋はある事情(主にシンジの保護者の個人的都合)によりこの部屋の隣である、さらにその隣が某○○○○とその愛娘+1の住居であったりする、まぁそれは余談だが。
だから無理してこの部屋に入る必要はない、というか中でおきていることをシンジは大体想像がついている、入ったら騒動に巻き込まれるのは目に見えており、それならば自室に引っ込んでいたほうが賢い。
ドアを突き抜けて聞こえてくる怒声がやたらはっきり聞こえる。
「はぁ、今日はあの人か、凄そうだなぁ」
しかし入らなくても何かしらあるのは確実だった。
知らぬ存ぜぬを通した自分をこの部屋の家主、シンジの保護者は許さないだろう。
恨めしげな顔で、呪い事を呟いてくるのは間違いないのだから。
どっちを選んでも被害はさして変わるまい、というかは入らないと明確な悪意が向けられる分今入ったほうが立場的にマシなのは判りきっている。
それでも心労が軽くなるということはないだろうが、というかその理不尽な選択に迫られていることに気付いてさらに鬱になっていた。
中から聞こえてくる怒声がそれを増大させる、というかさっさと自分の部屋に帰って寝たほうが幸せかなという考えがよぎっている。
というか心の中ではその意見は賛成多数だった。
それでもどうせいつものことなんだから。
てことを考えつつ、意を決して中に入っていくシンジだった。
何気にシンジ君人生に悟りを開いているのかもしれない、まだ14歳なのに。
このあとシンジ君の機嫌がやっぱり想像通りだったので急落した。
で、中で何が起こっているかというと、シンジがドアの前に立つ少し前に遡る。
シンジが来たのは朝の10時頃だから、すでに世間の基準から見れば起きていても良いんだろうがここの住人、いまだに惰眠の底にいた。
部屋にいるのは使徒殲滅時にロボット、デモンベインに乗り込んだ二人。
二十歳を過ぎたような青年大十字九郎がシングルベッドで眠り、そして九郎の腕に抱かれながら眠るのは、銀色の髪に今は閉じられた翡翠色の不可思議な瞳、そして見た目の年齢に相容れない艶やかな雰囲気の容姿を持った美少女、アル・アジフ。
年齢の釣り合いは取り辛いが,それでも長年連れ添った夫婦のような感じで、互いを信頼しきった心地よさげな表情で穏やかに眠っていた。
何故かアルの寝巻き、九郎のワイシャツが殆ど引っ掛けるだけとか、あたりに何かを拭ったティシュが転がっているとか、アルの垣間見える体の彼方此方に赤い腫れた跡、俗に言うキスマークがついているだとかは割愛、どうせこの二人恋人同士だし。
只それだけなら騒動もなかっただろうが、日常茶飯事であるし。
まぁアルの外見から九郎のロリコンとかペドフェリアとか性犯罪者とか色々言うべきことはあるが。
それはさておき。
騒動というのはこの二人にはつき物で,切っても切り離せないもので、なんと言うかオプション、もれなくご注文いただくとついてくるサービス商品という感じだから。
作者の偏見を言えば、トラブルの無い九郎なんて九郎じゃないやい(マテ)。
この時点で大十字九郎は幸せな不幸という道を歩むことが決定している、というか確定。
つまり。
騒動が起こるのだ日常的に、この二人には。
で、今回の騒動の原因。
ベッドに忍び寄る一つの影、突然空間から湧き出した異形、漆黒の闇、混沌存在。
その姿は20の半ばで長身の肢体に胸の露出を強調した特徴的なスーツを纏い、漆黒の髪、美しいといっていい容貌、だが妖しく妖艶で淫らな印象を与える。
彼の存在はナイアルラトホテップ。
千の異形。
無貌の神。
這い寄る混沌。
外なる神・ナイアルラトホテップ。
と言うと、いかにも恐ろしげで偉そうだが実情は只の中間管理職、上からせっつかれて仕事を押し付けられているお役人とあまり変わりない。
しかも最近あんまり上役に押し付けられた仕事もやる気がないというかなんというか、というか完全にサボっている。
仕事ほっぽりだしてなにをしているかというと、実態は女でも無いくせにある男にご執心の色ボケと化している、周りからは実害が減ったから放置されているのが現状だった。
よってこの邪神どこかの国の税金泥棒の見本みたいになっていた、給料貰っているとは思わないけど。
それが無駄に力を使って、気付かれること無くベッドに忍び寄る。
今眠っている二人に気付かれること無く接近する無駄に高い技術で忍び寄り(ついでにこの二人かなり感がいい、普通はすぐに気付かれる),九郎の腕の中で眠る少女を押しのけ,あいた空間に滑り込む。
当然のように既にいつも着ているやたら胸の露出の激しいスーツの上着を脱ぎ捨て、パンツも脱ぎ、漆黒のショーツ一枚で九郎の胸に頬擦りをして恍惚としている女と思しき物体(生物かどうかも怪しい)。
その様子は完全に腑抜けている、色ボケしているといわれても反論できまい。
しかもゴソゴソと体を動かして、九郎の衣服を脱がせ自分の豊満な乳房を押し付けている。
アル曰く忌々しい胸、つまり巨乳。
ついでにアルは無い、悲しいくらい無い、九郎はそれはそれでと言っているらしいが、この手のことは幾ら慰めても本人が納得しない以外無駄である。
というか慰めると烈火のごとく怒る、理由はまぁ・・・・・・・・・・。
でその外なる神、しつこいようだが名前だけは大層なのが恍惚とした顔で九郎の体温を十分に堪能してから、すでに半裸となった九郎の胸に自分の乳房を押し付け、その顔を両手で挟み込み唇をあわせ、九郎の口内を舌で蹂躙する。
その時自分専属の抱き枕、大十字九郎がいないということに気付いて目を覚ましたアルが目を覚まし(ご都合主義です)、勿論そのキスシーンを目撃して。
瞬間、アルの寝惚けた表情が無表情に変わり,一瞬後、悪鬼に変わった。
アルは凄まじく敏捷な動きで跳ね起きると、その手にいつの間にか現れたのか一振りの大刀、バルザイの堰月刀を振りかぶり。
「ナイアよ何をしておるかぁ!!!!!!!!」
切り掛かった、怒号とともに神すら切り裂く刃で(ついでに目撃してここまで三秒経っていない)。
紙一重でナイアが斬撃を避け、続き来るやたらめったに鋭い剣戟も避けていく。
「何するんだい、アル・アジフ、僕と九郎君の甘美な逢瀬を邪魔しないでくれないかい、最近ご無沙汰で溜まっているんだよ、疼くんだ身体がね」
その瑞々しい肢体をくねらせて、豊満な肉体を見せ付けるように、アルの神経を逆撫でするように挑発するナイア、勿論さらにヒートアップしているアル。
「知ったことか!! 九郎に近づくなと言うたであろうが!!
九郎は妾の伴侶ぞ、汝の体のことなど知ったことか、大体何故ここにおるか!!!!!」
アルの怒号も柳に風という感じで、ナイアが続ける。
というか完全にアルを怒らして遊んでいる節がある。
確かにからかうと面白い子ではあるが、但し命がけとなる。
「ん、それは愚問だよ、僕は愛しい九郎君の居るところならたとえ火の中、水の中でも容易く入るんだ・・・・・・・・・・・・・・・おっと、クトゥグアは洒落にならないよ」
説明になっていない。
やはり瞬間的に現れた自動拳銃を握りぶっ放すアル。
ついでにいい加減九郎も起きているのだが、目の前に広がる人外大決戦を寝起きに見せられ、少々脳がフリーズしているようだ、再起動にはしばし時間がかかりそうである。
いい加減慣れている筈なんだがこの男も。
この日常的な騒動に。
この男にとってはマジに日常なのだから。
日常となっている主原因はまぁ、こういう訳だ。
ベッドに迫ってくる(もしくはそれに順ずることをする)人間ナイアだけではない、というか複数居る。
どこかの教会のシスターやら、この町の支配者のお姫様やら、近くに住んでいる○○○○謹製の人造人間やらから、日常的に迫られている、本人はアルを耽溺しているので、一番はつまり正室はアルとなっているが、意志が弱いのか、迫ってくる人間が魅力的なのか、迫ってくる人間全員と関係をもっていたりする。
迫ってくる人間はアルを押しのけて、正室につこうとしているので、アルとしては浮気されるは、気が気でないは、しかもこの美少女、こと恋愛関係の経験値がなきに等しいのに加えて、女としての肉体的コンプレックスが強かった。
まぁ、迫ってくる女どもが常識はずれに豊満なのが多い(ナイア、ライカ、瑠璃)というのがさらにそれを刺激している。
どうも凹凸に欠ける自分の体が九郎を繋ぎ止めれるかが不安らしい。
不要な不安だろうが、これは女として仕方あるまい、やっぱり自分の体がどのように見られているか気にはなるだろう
そんな心配をよそに九郎に迫っている女性たちは現時点において、アル以外は九郎の独占を諦めている。
九郎がアルを溺愛しているのは明白で。
アルを排除すれば九郎は怒り狂うだろうし、自分のことなど見てもくれないだろう。
それこそどんな手段を使ってもアルを取り戻そうとするだろうし、実行した人間は絶対に嫌われる。
何も好き好んで愛しい相手に憎悪の目では見られたくない。
また、アルから九郎が離れることも、アルが離れることも考えられない、普通ならここで諦めろよと言いたいところだが。
この迫っている4人其処まで謙虚でも人間が出来てもいなかった、要するに諦めが悪かった。
ウエスト謹製の人外は製作者譲りの不屈の精神で迫り。
覇道のお姫様はどうも性格的に引くという選択肢がはなから頭にない。
教会の巨乳にシスターは今まで餌付けしていたのに〜と、九郎のイメージを粉砕することをのたまい、シスターに手を出したんだからと強引に迫る。
人外の極みは、これはどうもよくわからん、気が長いのは確かだが、どうも独占欲の類はないらしい、単純に気に入ったからというのが本人のコメントだ。
ついでに瑠璃とライカは金と飯という九郎の人間としての生活の生命線を握っていたので、九郎が逆らいがたかった、というか逆らえない時期があったのもある。
関係を持ったのはその頃だし。
勿論したたかなこの二人ちゃんと理解していたが、その辺は(爆)。
という訳で、アルにとっては忌々しいことに、九郎を独占できないのである。
九郎の周りでは。
正室アル。
側室、ライカ、瑠璃、ナイア、エルザというかなり歪んだ恋愛事情を描いていた。
ついでにウィンフィールドは瑠璃の味方を(この人が厄介なんだ 九郎談)。
リューガは時たま引き攣った笑みで、なにかを哀れむような目で九郎を見て(何でそんな目で見るんですか)、やっぱりライカの手伝いをする、どうもライカに物理的に手伝うように説得されたらしい。
この二人の台詞は。
「大十字様、いえ次期覇道総帥覇道九郎様、お嬢様のことを頼みます」
何故かハンカチで涙を拭うふりをする執事さん、何気に覇道の後継者扱い。
しかも妙に光った目で見てくるのが怖い。
「義兄さん、諦めてくれ、姉さんは姉さんは、ああああああああああああああっ、やめて姉さん、手伝います、手伝いますから、レーザー砲はスラッシュクロスはぁぁぁぁっ」
何かを思い出したのか、突然叫びだすリューガ、心の傷が重いようだ。
なお九郎の呼称はそう言えとライカに強制されたらしい、ジワジワと逃げ道を埋めるつもりかライカ。
で、エルザの製作者はというと。
「大十字九郎、よっくもエルザに手を出してくれたであるな、製作者、否、父として問う、貰ってくれるであるな、貰うであるな、嫁に貰うであるな、如何に、如何に、如何に、ついでに拒否った場合は、アル・アジフ無しで我輩のこの『無敵ロボ28号VerU Typeβ、嫁に出す娘を持つ父の気持ち』と決闘であるからして、神妙に答えるである、我輩としてはエルザを早々に未亡人には父としてはしたくはないのである、さっさと答えんかこの鬼畜ロリペド野郎である」
と、目を血走らせて何故かデモンペインそっくりの破壊ロボにのって迫ってくる狂科学者が、ギターの音に乗りながら叫んできていた。
ついでに複座にいたのはチアキ(どうもばれてる様なので言いますがウエストの相手はチアキです)。
「ああ、娘を嫁に出す気持ちってこんなんなんやろか〜」
と呟いていたりする。
二人そろってノリノリで九郎に迫ったらしい。
当のエルザは「博士、頑張るロボ」とシンジと一緒になって(シンジは半ば無理矢理やらされて)ウエストを応援していた。
「これで、ダーリンはエルザのものロボ」
それはそれは嬉しそうな笑みだという。
「兄さん、御労しい」
それはそれは同情に満ちた顔だった言う。
後日、ウエストに孫はまだであるかといわれて、エルザ産めるんだろうか、九郎が半ば本気で突っ伏したという。
ついでに、エルザ無しでデモンペインタイプを動かしていたので、普通の破壊ロボと対して戦闘力は変わらない、まぁまったく関係ないが。
それでもマギウスになれない九郎では荷が重いだろうが。
アルは呆れて手伝ってくれなかった。
ナイアにこの世界に家族は居ない、というかいるのか。
出産出来るのかも不明である、案外出来そうであるが。
というわけで、日常的に九郎に群がる女狐(アルの視点から)を追い払うために、アルの怒号が飛び捲くるのだ。
アルも最近諦めてきたらしいが。
少なくともライカと瑠璃は認めているらしい、あまりやりすぎるとこの二人は怖いというのもあるが。
エルザは微妙、ナイアは天敵。
で、今日はその天敵が自分の指定席を奪っている、しかも半裸で、しかも忌々しいくらいに豊満な、自分にはない肉体で挑発してくる一応女。
両手にクトゥグア、バルザイの堰月刀を握り、破壊を振りまいていた。
ついでに修理するのも掃除するのもシンジである。
帰宅後のシンジに説教される、正座した美少女と美女がいたとかいなかったとか。
ついでに九郎この時点で、呆けたまま流れ弾の余波を喰らい、強制的に二度寝に突入していた。
で、この暫くあとにシンジがドアを開けるところに繋がる。
入ってきたシンジが見たのは、右手にバルザイの堰月刀、左手にクトゥグアを持ちナイアを追い掛け回すアルだった。
部屋の惨状はそれはもう散らかっているという言葉が清潔の類義語って言いたいくらい散乱していた。
刀に銃を室内で使用したいい見本である。
結果やっぱりアルとナイアは正座させられていた。
何気に家主より家の中の権力が高いかもしれないシンジ君。
「さて、アル姉さん(本人がそう呼べと主張)、毎度毎度散らかしてくれますけど片付けるのは誰ですか」
正座しているアル、九郎はいまだに気絶している、を椅子の上から説教するシンジ。
「シンジ」
微妙に声が震えているアル、このアルの弟分怒らすと怖いらしい。
「そうです、で、ナイアさん、僕の留守中には夜這いは禁止だって言っておいた筈ですが」
外なる神が正座して中学生に説教されている、情けないことこの上ないというか神の自覚
あるんだろうか、いくら邪神とは言え。
「シンジ君、ほら僕の体は疼いていたんだよ、それに今日君は帰って来たじゃないか、だから・・・・・・・・・・」
「だから、何です」
満面の笑みで、ナイアの言い訳(?)を中断させ、問う、目がまったく笑っていなかったが。
「御免なさい」
「はい」
中学生に睨みつけられて謝る邪神、禍々しいどころかコメディチックである。
プライドは欠片も在るまい、と言うか元々あったかも疑問だが。
何気に可愛らしいナイアだった。
この辺りが退治されない所以かもしれない。
で、シンジが帰ってきたのを察知したのか、どうも今まで寝たふりをして嵐が過ぎ去るのを待っていた九郎が起きだして来て、アルがナイアに敵意の視線で九郎の膝の上に収まり、シンジの作った朝食を取っていた。
ついでに普段恥ずかしがってしないが、これはあてつけである、ナイアが微妙にうらやましそうにアルを見ていた。
それでも先程シンジを怒らせたばかりなので我慢しているのか何も言わなかったが。
ついでにアメリカ東海岸側である筈なのに、ご飯、焼き魚、豆腐、海苔、味噌汁、漬物という正統派の和食朝食を。
何故かナイアの分まであって共に食していた。
ついでに使っているのは箸で一番巧いのがナイアだった、伊達に長く存在していないということだろうか、どうでもいいことだが。
食事も一段落したところで九郎がシンジに問い掛けた。
アルは未だに九郎の膝の上だが、少し頬を染めて幸せそうにもたれ掛かっていた。
ナイアは相変わらず羨ましそうだ。
「で、どうだった、聞く必要ないかもしれんが、姫さんどうだった」
で、事の顛末を話すシンジ、微妙に可笑しそうだ、と言うか完全に面白がっている。
「姫さんきっついからなぁ〜」
「なかなか見物でしたよ、アレが自分の遺伝子提供者となると落ち込みますが」
ついでに九郎もゲンドウの顔は写真や映像で知っている。
なお見たとき、アルから怪異扱いを受け、九郎は遺伝の原理を本気で悩んだという。
確かにこの親子DNAの神秘といっていいくらい似ていない。
しかしその表情からあまり気にしていないようだ、ゲンドウのことは既に塵芥に等しい存在のようだ。
まぁ、気にしないほうが幸せに成れるだろうが。
で、結構和気藹々と談笑していた。
既にネルフのことは食事の世間話くらいの価値しかないようだ。
で、もう一つの騒動は九郎宅の二件隣、別名○○○○の館、九郎の部屋よりかなり広いのは余談。
何気に金は持っているのだこの○○○○、怪しげな特許とか特許とか特許とか。
その結果、九郎がライカの次に飯をたかるのはエルザだったりする。
なお九郎、ほかに類を見ないくらい貧乏人である、最近はマシだが。
断じてウエストにではないと九郎は主張するがエルザの出す食物の金を稼いでいるのはウエストなのでウエストにたかっている九郎だった。
そんな余談はおいといて。
ネルフから保護したレイをつれて自宅に帰ってきた、身元引受人は瑠璃だが。
瑠璃が「懐いていることだし任せますわ、チアキにもよろしくと」とのこと。
で、帰宅したウエストはというと。
玄関を開けた途端に鬼のような眼光で仁王立ちしていたチアキに土下座していた。
ついでにこの二人同居している、近くの色ボケハーレムとは違って艶っぽくない関係だが一応恋人同士(本人主張、他人からは人のことが言えるのかといわれる)であるらしい、勿論チアキの尻に敷かれているウエスト。
「で、あんた、うちのことほっぱらかしてお嬢様んとこ、うちに無断でついていった言い訳はあるんか?」
どうやらチアキに黙って日本に行ったらしい。
チアキが知らないのは出発前に言い忘れただけである、ウエストも瑠璃もウィンフィールドも。
チアキは覇道家のメイドをやっている、やっている仕事は普通のメイドではないが。
結果、断じてウエストだけが悪いわけではないんだが、まぁ責められるのは摂理だろう。
と言う訳で、言うのを忘れたなどのたまった日には、ウエストへのリンチが確定するのは必至。
一応その辺の計算が働いたのか、ウエスト何も言わずに土下座したのだが無駄だったようだ。
チアキとしては素直に土下座したので多少、ほんのちょっぴりだけ溜飲を下げてはいたんだが、ここまで素直だとどうせくだらない理由だとあたりはつけていた。
なおチアキ、一週間前、仕事、覇道邸からウエストの家に帰ってきたとき、いつも居る筈のウエストとエルザがおらず、一晩たっても帰ってこないので(帰ってこないというのは普段無い)、よほど不安になったのか(ついでに浮気関連は心配していない、この○○○○に惚れるのは稀有だと自覚している、只騒動に巻き込まれる、もしくは巻き起こす率は九郎並)半泣きで探し回った。
何だかんだで、ウエストとチアキの二人は世間的にはオシドリ夫婦といえるくらい仲がよい。
二人とも口は悪いし、否定はするが。
捜索に付き合わされた同僚二名はこう語る。
「あのときのチアキ、可愛かった、小さい子も良いけど、美女の泣き顔もいい、はあはあ」
「チアキさん、凄かったですよー、半泣きで屋敷中やアーカム中走り回って探してたんですから」
同僚マコトとソーニャのコメントである、一部問題のある発言があるが。
と言うかマコトあんたロリータ専門だったんじゃ。
追記するとウエストが瑠璃に付いて行ったのを知ったのは飛行機(覇道家所有)の手配をした別のメイドからである。
勿論、怒り狂ったが。
で、土下座も虚しく言い訳を吐かされるウエスト。
言い訳といってもまともな言い訳が在るはずもなく、正直に言うと生命の危機に陥りかねない。
「ん、急に大十字九郎にシンジ、我輩の弟子の保護者を頼まれたのである、本当に急であったのである、だから連絡する間がなかったのである、エ、エルザそうであるな」
「んー、博士、その話来たの出発の1週間前、何言ってるロボ、とうとうボケたロボか?」
一応、苦し紛れに考えた言い訳を。
あっさり自分の作品、愛娘に裏切られたと言うかエルザは裏切ったつもりもないだろうが。
で、その結果苦し紛れの言い訳は10秒も経たずに潰えた、エルザに腹芸を期待するほうが間違っているぞ製作者。
作り手に似て余計なことどんどん口走る娘さんであるのだから。
「本当のとこはどうなんや、あんた?」
チアキの声に少しヤバめの響きが混じりだす。
で、今度は正直に自白したが、結局ウエストはボコられた、誤魔化した怒りを乗せた分も支払わされて。
ある程度、普通の人間なら何度か三途の川を見てこれそうなお仕置きを受けて玄関の床に転がっているウエストはほっといてと。
今まで話題に上がらなかったのが不思議ではあるが、ここにレイも居たりする。
と言うか既に書いているが。
美少女ではあるが本人の性質であるのか、無口のためかどうも存在感が薄いのかもしれない。
本当のところは、これだけ色の濃い面子に埋もれているというのが真実だろう。
一通りウエストをボコったチアキがいくらなんでもその存在に気付かないということはなく、尤も今まで気付いていなかったのだが。
その目をレイに向けて、足元に転がっている物体(そうとしか呼べない)に問う。
「どうしたん、この娘?」
ついでにウエストは痙攣している、どうやら復活まで暫し時間がかかるようだ。
チアキの手によってウエスト、恐ろしいまでの拳のラッシュを食らった。
「ウィンさんに、なろうたんや」と言うボクシング仕込みの怒涛のラッシュは人外の防御力を誇るウエストでもきつかったようだ。
ウィンさん曰くは「筋が良いですよ彼女は」と言わしめた腕である。
つまり意識のない○○○○が答えられるはずがない。
で残った答えられる人物=エルザとなる。
レイは現在の状況を理解していないし。
消去法上仕方ないのだが。
いや、しょうがないんだが、この娘しか居ないんだから。
「エルザの妹、新しい博士の娘ロボ、新しい家族ロボ、綾波レイって言うロボよ」
ついでに悪意はない、天真爛漫と言うか基本的に邪気はない。
しかもレイのことなのでかなり嬉しそうだ。
レイも嬉しそうに微笑んでいたりする。
問題は言葉がまずかったのと、今現在チアキの脳はウエストのせいで未だヒートアップしていた、普段なら多少誤解するかもしれないが、ここまでにはなるまい。
どうなったかというと。
ものの見事に誤解していた。
無表情になり、その後少しだけ涙目になって足元で痙攣していたウエストの襟首を掴んでつかみ上げ、奥に引きずっていく。
ついでに、どう誤解したかというと。
博士の娘=ウエストの娘=人造人間と考えたが、最近その手の研究はしていなかった。
エルザタイプはウエストでも早々作れるものではない。
だとすると人間、レイはローティーンぐらい(年齢より幼く見える、栄養状態が悪かったので発育が悪いので)、ウエストが(恐らくウエストは20代後半から30代前半)実の父親の可能性あり。
日本に行っていた、日本で過去の行きずりの女に押し付けられた(この時点で矛盾の塊)。
つまり自分以外の女と子供を作った、万死に値する。
とてつもなく矛盾に満ちた思考過程である。
人種が違うとか、髪の色とか、どう見ても遺伝子的な繋がりを持つ親子の接点見出せないとか、言いたいことは色々有るが。
何故か最悪の方向に勘違いしていた。
どうもウエストのいない一週間、少し情緒不安定になっているっぽい。
「うん、ここはどこである・・・・・チ、チ、チ、チアキ、何であるか、なんで我輩天井から吊るされているであるか」
何故か意識を取り戻すと天井のフックから鎖で吊り下げられたウエスト。
目の前には、妙な笑みを浮かべた、一応自分の恋人、ついでにとても嫌な種類の笑みであった。
ウエストの質問には答えず、ドスのきいた声で。
「あの娘は何なんや?」
「あの娘であるか?」
「綾波レイちゅう、女の子や」
完全に誤解しているので目は濁っている、ある意味では純粋かもしれないが。
一応事実確認をしようとする辺り理性はまだ残っているようだが。
「我輩が今度引き取った娘であるが」
聞かれて困ることではないので事実を言うウエスト。
こいつも悪意などこれっぽっちも無い。
「誰の子や」
ついでに彼女の誤解は彼女の中では規定の事実になっている。
「何を言っているであるか?」
「女に預けられたんやろ」
「そうであるな」
嘘は言っていない、ウエストにレイを預けたのは瑠璃であって、瑠璃は女性である、ウエスト嘘は言っていない。
言葉は足りないし、紛らわしいが。
勿論誤解を加速していくチアキ、どうも脳内で翻訳されている節がある。
既に完全にチアキの中ではレイはウエストの実子になっていた。
「うちに言うことないんか」
最後通牒である、所詮過去の女、押し付けられたのなら人のいいウエストだ断れまい(確かに子供を捨て去れる種類の人間ではないし、そんな男ならばチアキは見限るが)。
誠意を持って自分に話したら許すという意味である、鎖で天井に吊るしておいて言う言葉でもないだろうが誠意という種類の言葉は。
ウエストとしてはなんでこのような尋問をされているのか判らないが、防衛本能か、生存本能か知らないがそれに突き動かされるように言い訳を考えるが、本能の本来の役割を機能していないが。
一応高スペックの脳を使ってほかに言うべきことは無いか検索して出てきたのは。
「ああ、レイは今日からここに住むのでよろしくなのである」
あまり言い訳にはなっていそうにない。
「それだけなんか」
この時点でキレた、事情を説明せず押し付ける態度に(注、押し付けていません、全部勘違いです)。
拳を震わせ、見えないはずの闘気がぼんやり見え、どんどん無表情になるチアキ。
「チアキどうしたであるか、何でシャドーボクシングするであるか、それは些か我輩でもちょっと命の危険を感じるというか、やめるである、というかなんで幕ノ内スペシャルの型をなぞるであるか(ついでに某有名ボクシング漫画より、リヴァーブロー(肝臓打ち)、ガゼルパンチ(全体重を叩き付ける下からのフック)、デンプシーロール(勢いのついた強打の連打)のコンビネーション、経験者である作者から言うとリヴァーブローはともかく、ガゼルパンチは決め技以外で使いようがないし、デンプシーロールを当てるのは至難だろうなぁーと思う今日この頃であるが、しかし決まれば命すら断てる破壊力を秘めている)、それは洒落にならないであるぞ」
勿論喰らったら洒落ではすむまい。
ついでにチアキの怒りの主原因は。
本当のことを話そうとしない、自分を信頼していない態度を見せることである。
特に何も隠し立てしていないので、そんな風に思われるウエストからしてみれば何か言いたいところだろうが。
完全誤解しているのでに空回りしている。
それでも、本人にとっては信頼されていない屈辱で怒りを沸き起こし、悲しいことだったのだろう。
これでも信頼されていると思っていたし、事実ウエストは信頼しているのだが。
無表情を捨て半泣きになったチアキが叫びながら、拳を振りかぶって、拳を振るうことなく泣き崩れた。
「うちがあんた帰ってくるまでどれだけ心配したと思ってんねん、やのに、帰ってきたら実の子引き連れて。
それやのに事情の説明もしてくれへんなんてひどいやないか。
そりゃ、うちは頼りないかも知れへんけど、少しはうちのこと信頼してくれてもいいやんか、そんなにうちのことは信頼できんのか・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
うわああああああぁぁぁぁぁぁんっっっ」
完全に痴話喧嘩だった、しかもすれ違い、勘違いの。
しかし本人は真剣、片方だけであるが、なのであるから始末に置けない。
しかし、ここでウエスト、一応と言うかかなり大事に思っている恋人が泣き叫んでいるので驚き慌てたが。
どうも話が繋がっていないのにも気付いた。
特に実の子とか、事情の説明とか(確かにこれは足りてないだろうが)、信頼とか(信頼しているからレイを任せようとしているんだし、男のウエストではどうしようもないことのほうが多いし)、どうも食い違っているのにきづいたようだ。
「なんの話をしているであるか」
泣いているのには慌てるが聞かねばなるまい。
聞かないと話進まないだろうし。
「何の話って、何を言うとるんや。
あのレイって言う女の子、あんたの実の娘やろ。
それの事情も話さんと、うちのこと信用しとらんのやろ」
で、驚いたのがウエスト、当たり前だが。
いつの間にそんな話になったのやら、という感じだろう。
このあと興奮しているチアキを相手にウエストが訂正するのに3時間を要し、ウエストは精も根も尽き果て、チアキは自分の行動を鑑みて真っ赤になったという。
で、レイがここに住むのはすんなりチアキも受け入れた。
もとより、ちゃんと説明したら(チアキの中ではされていなかった)レイがここに住むのに反対する理由は無い、というか当初より住むのには反対していなかった。
レイの境遇とここに住むようになった経緯をウエストから聞いて怒りを燃やし。
何も言わずレイを抱きしめて目に涙をためて抱きしめ微笑みかける。
「いらっしゃい、うちらの家に」
ただそれだけを。
レイが望む一言だけを、望み渇望する一言を。
このときレイが本当の家族を家を得た瞬間だった。
帰るべき故郷を得た瞬間。
彼女が渇望する絆を得た瞬間、無に帰る欲望を捨て去り人として生きることを心の其処から望んだ瞬間。
人として受け入れられたときに勝る喜び。
レイを貫く歓喜。
だから答える。
だから紡ぐ。
声に出して。
「ありがとう」
精一杯の笑顔と感謝を。
その人形の仮面を捨て去って、笑顔の素顔をさらけ出して。
微笑みという名の礼を。
大切だと思える人たちに。
笑いかけられる幸せを。
笑いかけてもらえる幸せを。
手に入れることの出来た喜びと共に。
微笑みという精一杯の、未だぎこちないお礼で。
所変わって再びネルフ本部。
アメリカ出発前の牛とリツコがリツコの部長室で主に牛がのたまっていた。
愚にもつかない内容で、リツコの頭痛をさらに増していたけど。
「で、何で私アメリカに行かなきゃなんないのよ、大体シンジ君って司令の息子でしょ、呼びつけりゃ良いじゃないの」
どうやら以前に渡された報告書を読んでいないらしい、現在の状況やら、なんやら書かれていたはずなんだが、流石に国連軍所属やら、覇道家関連だったのはのっていなかったが(いい加減に諜報部が調べたせい、シンジの親権に関する裁判は覇道家が起こしています、まぁ確かに多少防諜はしたのだが)。
「言っておくけど、シンジ君はもう司令の息子じゃないわよ、親子の縁を切っているみたいだから」
リツコもどうせ読んでないなと分かっていたので、特にその点には突っ込まない、言って直る訳でもなし。
どうもここのリツコ既にミサトのこういう部分は諦めているっぽい。
まぁ、見限ったほうが幸せだろうが。
「え? どういうことよ」
「本当に知らないのね、大体シンジ君の苗字は大十字、司令は六文儀、シンジ君は5歳のとき誰かに拾われて、今は大十字って人と暮らしているそうよ、それで其方の苗字を名乗っているのね、法的にも手続きはしているみたいだし、つまりシンジ君は司令の子供じゃないのよ、社会的にはね」
勿論初耳の牛(新名称プリオン)、と言うか苗字で気付けよ、何かあるくらいは。
「え〜と、つまり、司令の子供じゃないの?」
理解が遅いな、やはり狂牛病で脳がスポンジに、いやアルコールは脳細胞を破壊するからそちらで・・・・・・。
「それに言っておくけど、ネルフの強権振りかざしても無駄よ、そんなこと通用しないわよ」
そりゃ、国連所属だし、覇道の保護がある、しかもその力の一番強いアメリカ本土での交渉、強権など振りかざせば、合衆国から帰れるかも怪しい。
「なんでよ、どうせ只のガキでしょ、そりゃかなり生意気だったけど、ビビらして連れてくりゃ良いじゃないのよ」
まぁ、前に来たときは殆ど何もしてなかったから評価の仕様が無いかもしれないが、シンジを甘く見ている。
邪神さえ正座させて説教する少年が只のガキってことはないだろう。
リツコは頭に手をやって、どうやら頭痛が酷くなったらしい、ストレスが原因なんだろう。
「ミサト言っておくけど、シンジ君は国連軍特務少佐、つまり貴女の上官なの、幾ら組織が違うからっていっても向こうが上なのよ、それに今回のことで子供に対する強制徴兵は禁止、つまり説得するしかないの」
これはレイに対する虐待容疑に対するものだった、まぁいくらなんでもそんなことやっていると疑われている組織にそんな権限は与えまい、まともな政治家なら。
己の保身のためにも。
大体、シンジは一応アメリカ市民なんだから徴兵するにしてもアメリカ政府の認可が必要だろうし、覇道の関係者をアメリカ政府が認めることはありえない。
つまり権限が回復しても、シンジが国連所属でなくても、覇道の関係者という時点で強制的につれてくることは不可能、つまり説得するしかない。
それが判っているリツコとしては、シンジを説得することは無理だと思っているし、レイは向こうに行っているほうが良いと思っているので今回のアメリカ行きかなり憂鬱だった。
かなり困難な任務に、恐らく役に立たないであろう同行者。
唯一の慰めは自分の知的好奇心が満たされるくらいか。
これでストレス溜まらないのは馬鹿ぐらいだろう、リツコの目の前にいるような。
で目の前のプリオンが忠告されてどうするかって言うと。
「どうしてよ!! 私らには人類を守る為に働いてんのよ、子供の駄々に付き合ってる暇は無いの。
大体、人類を守るために戦うのよ拒否するほうが人類の敵じゃない、そんな奴の我が侭聞くほうがおかしいじゃない」
断じて言うがおかしいのは貴様だ。
と言うかまだ戦ってないだろ、お前ら。
「ミサト、本気で言ってるの」
リツコが頭を抑えて、頭痛が酷いらしい、ミサトに確認する。
「本気!? あったり前でしょ。
私たちはネルフなのよ、正義の味方なのよ、それに協力するなんて、義務よ!!義務!!
大体、こんなガキの言うことになんで私らが左右されなきゃなんないのよ、どうせ生きてたって役にも立たないガキでしょ、言うこと無視して引っ張ってくりば後はどうとでもなるわよ」
リツコ、頭痛がさらに激しくなった。
ミサト、貴女其処まで腐っていたの。
普段からその勤務態度やら、交通違反のもみ消しからして高潔な人間じゃないと思っていたけど、貴女それ人攫いと同じことだって判ってるの。
つまり意訳すると、そこらの人間を誘拐して、義務だから忠義を尽くして働けといっているのであるこの女。
ゲンドウとて心ではそう思っていても、声を大にしては言うまい。
この女、今の自分の発言を正当だと信じきっている。
この時点でリツコのミサトの評価元々低かったが、さらに低くなってゲンドウと同列に並んだ。
さらに今回の同行者役立たずではなく、妨害者だと認識を改めた。
これからの苦労を考えてリツコはもう割れんばかりに頭痛を感じていたが。
振り絞るようにして叫んだ、言っておかないとあとの苦労が凄いことになりそうで。
言っても多分あんまり変わらないだろうけど。
「ミサト、貴女何言っているか判っているの、今のネルフがそんな真似したら、どんな立場になるか理解して言っているの。
前の査察で完全に国連上層部の信用を失っているのよ、それを国連軍の仕官にそんなこといったらネルフ自体の存続の問題になるわよ」
ついでにこれ、少しオーバー気味であるが、ありえないとはいえない、国連軍所属の瑠璃の部隊は独立愚連隊の色が強いとはいえ国連軍の一部隊、対してネルフは国連組織とはいえ、その国連に対してさえ不透明で妖しいことこの上ない。
それで今度の怠慢、横領容疑である、それこそ反対派はここぞとばかりにつぶしにかかるだろう、ゼーレがそれを防ぐだろうが、愉快な立場に立てるわけが無い。
つまり今のネルフ洒落になる状況でないのだ、それを理解していないのはプリオンと髭だけだろう。
髭はその傲慢さから他に対し見下した態度の為それを認めず、実情は老人たちがどうとでもするだろうと楽観視しており。
プリオンは自分が正義であり、その正義はかなえられるべきであると考えている、マジで。
世の中自分を正義だと吹聴する輩にろくなのはいないだろうが。
大体、組織間の無礼は十分問題になるだろうに。
しかも、ミサトの考えているのは無礼などという言葉が礼節の一部になるレベルだろうが。
当のミサトはというと、リツコのその剣幕に驚いていたが。
「やーねー、ちょっとした冗談じゃない」
とか言って反省した節は無かった。
これによりリツコさらにネルフを見限ろうか悩みだしたのは余談。
さらに余談は、リツコ出発前から懐に像でも一瞬で眠る協力麻酔銃を携帯した。
で、そんな感じで。
既に日常と化した九郎宅で騒動が巻き起こり、レイが一般常識が無いのでチアキを慌てさせたりしつつ日にちが経ち。
シンジ、九郎、アル、何故かウエスト、チアキ、エルザ、レイのウエスト一家(笑)が瑠璃によって覇道邸に呼び出された。
余談だが、この面子がゾロゾロ歩いて向かうのは目立った。
まぁ、用件としては、ネルフからシンジのサードチルドレンとしての交渉のための使者が近々来るのでその打ち合わせなのだが。
この面子が居て只の打ち合わせで終わるか?
否、作者が終わらせん、こんな面白いこと。
瑠璃の執務室に集まったのは先ほど記した人間と瑠璃とウィンフィールド。
ついでにここで記すが、瑠璃は国連軍元帥、シンジは国連軍特務少佐、エルザは特務中尉(世間的には人間として登録)、ウエスト、チアキは技術仕官、九郎は特務中佐、アルは特務大尉でウィンフィールドは無位無官、瑠璃の私兵という対面上の扱いになっている。
実際は殆ど全員が覇道財閥の私兵と変わらない扱いなのだ、さらに正確な国連所属ではなく、合衆国軍の派遣という対面をとっている、色々都合がいいため。
合衆国は覇道に逆らいがたい、覇道もそれほど無茶を言わないので、政府もそれほど邪険にはしていないし。
はっきり言えば、アメリカの現在の覇権、覇道があってこそ、それが傍若無人な振る舞いをせず、礼儀は尽くすので軍部でも、政界でもさほど嫌われてはいない、ネルフとは大違いの良好な関係を周辺組織と結んでいる。
九郎としてはその役職おかげでかなりの高給が出るようになって以前の貧乏生活とはおさらばしているのだが、結局瑠璃が握っているので頭は上がらないようだ。
そんなことは置いといて。
「ようこそ大十字さん、お久し振りです」
瑠璃が嬉しそうに九郎を迎える、大体10日ぶりなのでお久し振りも無いだろうが。
まぁ、求愛相手と10日はなれるのは長いのかもしれない。
「ああ、姫さん、・・・・・・・・何をしてんですか」
いきなり九郎に抱き着く瑠璃、ついで胸を押し付けている
当の瑠璃の顔は蕩けて、幸せそうだ。
なんとなく小さな子供が好きな人に好意を示す行動に見えなくも無いが、瑠璃は二十歳前後で、子供というわけではないが可愛らしいのに変わりは無い。
その少し幼い様子はネルフでの勇ましさなどどこかにおいてきたような蕩けっぷりだ。
「あら、大十字さん、妻としてのスキンシップを嫌とは言わないでしょう」
何気に妻だと主張する瑠璃、この時点で銀髪のお姫様の機嫌がちょっとダウン、暴れださないだけマシ。
ついでにこのときシンジとウエスト一家、事態を理解していないレイはチアキが手を引いて部屋の片隅に自主的に避難している。
こいつらの会話を抜粋すると。
「なんだか瑠璃さん、段々なりふり構わないというか」
「お嬢様、恋愛経験無いからなぁ」
「瑠璃、大胆ロボ、エルザも見習うロボ」
「大十字九郎、香典は幾らがいいであるか?」
「何?」
只単にコメントするもの、問題発言をするもの、九郎の死を予感するもの(ついでにこの男もよく死に掛けて、九郎に同じことを呟かせる)、未だに事情を理解しないもの。
どうやら日常とみなし、安全圏まで退避して観戦に回ったようだ。
昔の人はいいました、君子危うきに近寄らず。
ウィンフィールドはいつものアルカイックスマイルで瑠璃の後方に立っていたが、まぁこの人は何があっても大丈夫そうなので問題ではないが。
「いやな、姫さん、その嫌という訳ではないんだが」
ついでに九郎の声が若干震えている、原因は彼の後ろに控える銀髪のお姫様のさすようなプレッシャーだろうが。
(汝、わかっておろうな)
という思念がひしひしと九郎を貫いている。
「だったらよろしいじゃありませんか、大十字さん、今夜は泊まっていってくださいまし」
白昼堂々、誘惑をかましている、貴方本当にお嬢様ですか。
本当にネルフにいたときの面影無いな。
まぁ、経済的な取引や、軍事などは日ごろの経験から取引できるのかもしれないが。
育った環境か、それとも生来の性格か、恋愛関係にはトンと疎いお嬢様だったので駆け引きなど出来ないので、ストレートに行くことにしているようだが。
だがこの辺が銀髪のお姫様の臨界だったが。
といっても今まで我慢していたわけじゃなく、どうせいつもの事だと、いい加減怒るのも馬鹿らしくなっていたのだが、それにアルも瑠璃ならばいいかと思う節もあるらしい。
何かと世話になっているのは確かだし。
一応、アル、エルザ、ライカ、瑠璃の4人、ナイアは含まない、で九郎にこれ以上女が近寄らないよう協定みたいなのは結んでいるようだ。
ついでに一番の敵はナイア、次は覇道邸のメイド達だったりする、何気にルックスはいいし、性格も悪くない、甲斐性は無いが、九郎案外人気があったようだ。
だが、基本的に怒りの導火線の短い見た目美少女。
最近九郎の腕に抱かれないと安眠出来ないという困った体質に成るほど九郎と共に寝るのが規定の事実と化しているのだ、というわけで九郎の貸し出し却下。
勿論只寝るだけではないのだから、その手の行為を自分以外とされるのも心中穏やかになれるものではない、特に忌々しいことに自分よりスタイルのいい女と。
でもアルよりスタイルの悪いとなると、この作品ではアリスンぐらいしかいない、しかも悪いのではなく未発達というだけ、アルと違って未来がある。
ついでにダンセイニはどうしているかと言うと、寝るとき以外のアル専用のソファと少しランクダウン、何故か偶に遊びに来るレイにいたく気に入られているらしいが。
本人いわく「可愛い」だそうだ、どの辺が可愛いのかよく分からんが(鳴き声?)
で、話を戻して。
「九郎」
その地の底より響いてくるような低い声が恐ろしい。
ビクっと九郎が体を跳ねさせる、どうやら隣にいるお嬢さんの嫉妬がどれだけ恐ろしいのかよく分かっていらっしゃるようだ。
そこで瑠璃が顔をアルに向けて。
アルの地獄の羅刹のような殺気も意に介さず。
「ああ、いらしたんですね、この廃品パルプ娘、貴方は私の大十字さんとの逢瀬に邪魔ですわよ。
まぁ、夜とは言いません、ですから2、3時間お待ちになって、その頃には一通り終わっていますから」
何が終わっているんだろう。
ついでにそうのたまう瑠璃の頬が若干赤らんでいるのは何故だろう、ウィンさんがどこかに電話をかけてベッドメイクを命じているのは、さらにこれが一番恐ろしいのだが、アルが拳を震わせているのは。
まぁ勿論ナニをするんだろうが。
只いい加減冗談なら止めておかないと、今度は回転式拳銃イタクァが吼えるだろう。
「ああ、ウィンフィールド、この古本娘にお茶とお菓子をお願いします、それでは大十字さん寝室へ」
と抱きついたまま、腕を取ってマジに九郎を連れて行こうとする瑠璃、どうやら本気だったらしい、しかも菓子で黙らそうとする。
それでも恥ずかしいのか顔は真っ赤だったが。
で、ついに導火線が消え、火薬にまで火がついた。
つまり、今回二回目アルが切れた。
「小娘、妾の前で九郎に何をしておるかぁっ!!」
未だ物騒なものを召喚していないが時間の問題だろう。
「いや、アル、やめろ、なっ、姫さんも」
何とか諌めようと九郎が努力するも、本人とてこの程度で鎮火するとは思っていまい。
それでもこの男が苦労するしかないのいのだが。
大体誘惑に負けて瑠璃やライカに手を出したこいつが悪いのだ、浮気されたアルの怒りも尤もなのだが、今更言っても、反省しても彼を慕う女達が(生物的に女性と分類できるのは二人しかいないが)既に諦める状態でしかない。
自業自得なんだし。
ついでに観戦に回っている連中は。
「アル姉さん、程々にしてくれるといいんですけど、瑠璃さんも、あそこまでからかわなくても」
「半分本気やったんやないかなぁ、最近よう大十字さんて呟いとったから」
「やれー、ロボ」
「エルザ、香典は300$くらいでいいであるか」
「だから何?」
本気で香典袋を用意するウエスト、アメリカにそんな習慣があるのかは作者は知らないというか、いくらなんでも香典袋はないだろう。
レイはやっぱり事態を理解していなかった。
理解しろというほうが無茶かもしれないが。
只レイを除いた統一見解は、まぁ九郎と瑠璃が本当にある特定の謎の行為を二人っきりで行いそれで待たされる可能性はあるまいということだっだ。
「何って、久方振りの恋人同士の逢瀬です、貴女は同じ家なんですからいいじゃないですか、毎日一緒に寝てるくせに、偶には私にも大十字さんを貸してくださってもいいではないですか、それとも混ざります」
何を口走っているこのお姫様。
「な、な、な、何を言うておるか小娘、妾がその、その、そのような不埒なことを望むわけが無いではないか、小娘こそ何を考えておる」
思いっきり慌てて、取り乱すアル、怒りのため真っ赤になっていた顔が羞恥に変わっている。
「あら私、何をすると言いましでしょうか、大十字さんと恋人同士としてお茶でも楽しもうと思っていたのですが、何をお考えになっていたのです」
チィシャ猫の笑みを浮かべて、一転からかうような調子で言う瑠璃。
半分本気だったものの、幾ら瑠璃とて今すぐ九郎としようとは思わないのだろう。
半分本気というところが大いに問題だが(主に今夜辺りは本気)。
只単にからかって遊んだだけ、後半から。
どうも毎夜毎夜九郎に良い様にされているくせにこの手の会話にはトンと免疫というものが出来ない銀髪のお姫様にちょっとした意地悪である。
その夜、瑠璃の嬌声が瑠璃のベッドの上であがったのは事実だった。
鳴かせたのは誰かは言うまでも無い、ついでに銀髪のお姫様もその傍らで恍惚と腰の辺りを痙攣させていた。
どうやら瑠璃の言葉が九郎に火をつけたようだ。
美女、美少女を美味しく頂きやがりました。
で、話は戻す、どうも今回お遊びが過ぎているが。
あの後からかわれていると自覚したアルを瑠璃が豪華な菓子で黙らせ。
基本的にアルは甘いものに目が無い。
「妾を菓子でつる気か」とか言っていたが。
結局、レイ、エルザと一緒になって食べていた、エルザがレイの世話を焼いていた。
で残りは、打ち合わせと言うか今後の対応策。
アルは目の前の菓子に戦いを挑み役に立ちそうに無い。
こっちもお茶を楽しみつつ、瑠璃が口を開く、その恐らく一つで目の飛び出るような価格がするティーカップでお茶を飲む姿がやたら似合うが。
「明日、ネルフからシンジへの交渉人が来訪することになっています、場所はここの応接室ですが、シンジさんどうなさいますか」
「どうって?」
「ええ、こちらに出向かれるのかどうかということです、交渉には応じると明言していたので交渉の席には着きますが、シンジさんは未成年、代理人が交渉しても構わないでしょう」
まぁ、当然だな。
「ああ、僕も出ます、そうでもしないとネルフもごねるでしょう、それに面白そうでしょ」
どこか意地の悪い笑みを浮かべるシンジ、どうやら面白いことを考えているようだ。
「まぁそうでしょうが、お受けになるんですか、あちらのパイロットには」
確認のようなものだろう。
「断りますよ、前回でどこまでお粗末か解りましたし、僕は自殺志願者じゃないですから」
前回の失態を目のあたりにして自分の組織を抜けて、向こうに行く馬鹿は普通いないだろうなぁ。
ついでに喋ってない連中は菓子を食べていた。
ウエストが何故かチアキ専属の給仕としてチアキに取り分けているのが笑いを誘う、ついでにもう一度書くがチアキはメイドである。
九郎は隣で菓子を頬いっぱいに詰め込んでいるアルを面白そうに眺めていた。
ウィンさんは給仕。
エルザ、レイも仲良く食べていた、案外レイがよく食べる、初めて知る味に対して生じた好奇心だろう。
でも、話は進む、どうせ予想通りだからここは大して議論する価値も無いが、確認はする価値はある。
「そうですわよね、で交渉に臨むときの保護者役、誰に致します」
単独交渉でも問題ないだろうが、そこはそれである。
「そうですね・・・・・・・・・九郎兄さんに、アル姉さん、それに瑠璃さんでお願いできますか、保護者に保証人、名目もつきますし」
妥当ではある。
まぁ来るの、ミサトだし、瑠璃が居るだけでどうなることやら。
ミサトが切れても大丈夫だろう、九郎がいるし。
ついでにこちらは誰が来るか知らない、リツコが来るのは予想しているがそれだけだ。
その後、主に交渉後のネルフへの対応や対使徒戦について等、これは九郎もウエストも参加。
さて、また僕が語ろうかな、今回出番が少なくてちょっと淋しいな。
九郎君、抱いてくれなかったしさ、ずるいよアル・アジフ、お姫様、ああこの快楽を求めて蜜を垂れ流す僕の体が鎮めてくれないかな、九郎君。
どんなプレイだって思いのままだよ、九郎君。
何がいいんだい、看護婦、スチュワーデス、それとも首輪だけとかそれは刺激的だね、後は眼鏡だけというのもいいかもしれないね(マテ)。
ご無沙汰で寂しいんだよ、九郎君。
おおっと、話がそれたね。
シンジ君に愚者の楽園の使者が語る。
賢者は諦観をもって、偽善者は傲慢を持って語る。
賢者は理由を、偽善者は己の信じる傲慢たる正義を。
言葉を紡ぎ、麗しい声音で偽善者は歌う、自分が正しいと、従えと、自分の欲の為に、自分の望みの為に、復讐という名の美酒の為に。
囀る、求める、醜い姿で、豚の様な醜態をさらして、僕の笑いを誘ってくれる、僕の暇を、僕の退屈を紛らわしてくれるんだ。
愚かな、愚かな、囀りで、甘美なる音を奏で。
醜い、醜い、醜態で、艶やかなダンスを踊る。
主演女優。
貴女は優秀な踊り子だ、僕を楽しませるだけの。
この世で最も醜い踊り子だよ。
覇道邸。
黒い高級車数台を伴って車から降りてくるのはネルフ作戦部長葛城ミサト、技術部長赤木リツコ、それにやたらゾロゾロくっ付いて来ている、護衛という名目のネルフ諜報部の黒服達。
応対に出た使用人に先導で、数人の小銃を構えた警備員に連行されるように応接室に通され、黒服の存在がやたら暑苦しいが、待たされていた。
ミサトは落ち着かず辺りをきょろきょろ見回しリツコに聞いてきた。
「ねぇ、リツコなんでこんな大層な屋敷でシンジ君と交渉するのよ」
勿論交渉に当たって再度出されたシンジの資料など読んでいない、交渉する気が有るんだろうか。
リツコが何か諦めた様子で答える前に部屋の扉が開き入ってくる、シンジ、瑠璃、九郎、アル。
リツコとミサトにテーブルを挟んで位置しているソファに腰を下ろす。
ミサトは入ってきた瑠璃を忌々しそうに、それこそ親の仇のように睨み。
実際彼女の主観では復讐の相手の使徒を横から掻っ攫った相手ではあるだろうが。
「何で、あんたがここにいるのよ」
喧嘩売っているのかこの女は、いきなり人の家にきてその家人が顔を出しての暴言、追い出されても何もいえまい。
他のネルフ一同は冷や汗流しているし、ちょっと可哀想である、特にリツコ。
瑠璃はその無礼極まりない問答に対して表情を変えることなく、見下した目で語る。
既に瑠璃の中で葛城ミサトは同列視するに値しないと評価されていた。
「ここは私の家ですので、私がいるのは当たり前のことです、そんなこともお分かりにならないんですの、葛城一尉、いえ三尉でしたわね、確か」
しっかり降格されているミサト、どうせ近いうちにこの階級も変わるだろうが、低いほうに。
瑠璃の皮肉に怒りを感じたのか、さらに瑠璃を睨み付け。
「リツコ、聞いてないわよ、そんなこと」
隣のリツコに文句を言おうとするが睨まれ、流石に黙り込み。
ついでに渡された書類の中にはちゃんと明記されている。
ミサトを睨み付け、瑠璃のほうに向き直りリツコが頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
謝罪するしかあるまい。
「いえ、なかなかユニークな交渉の使者ですわね」
皮肉が利いている、ネルフ側としては文句もいえないだろうが。
ミサトはリツコに睨まれた後も瑠璃を睨み付けていたが、それを無視してリツコが交渉に入る。
リツコとしてはうまくいくとは思っていないので、どこか諦めムードだが、初っ端からミサトが相手に喧嘩を売ったせいでそれに拍車がかかっている。
それでも来た以上は形だけでもやらなければならない。
「シンジ君、彼方にネルフのパイロット、サードチルドレンになって貰えないかしら」
リツコが単刀直入に切り出す、シンジがサードチルドレンになるかどうかを。
「そう、これは人類を守る重要な仕事なの、あなたの協力が私たちには必要なの」
ここぞとばかりに参入するミサト。
シンジは朗らかな笑みを浮かべ簡潔に言い切った。
「お断りします」
キッパリと。
To be continued...
(あとがき)
長い〜、しかもなんか中途半端だし。
今回はアーカムでの生活を重点をおいて書いています、ついでに外伝として既にちょっとだけ書いてるのは「レイちゃんのアーカムでの一日」(仮)いつ投稿するかわかりませんが。
ナイアが語りだけじゃなく出てきました、微妙に瑠璃お嬢様はちゃけてます、アル暴れっぷりがちょっと弱いか、と色々有りますが、九郎のカップリングは内容どおりです。
残りはライカさん、一番はちゃけてます、ついでにご存知の方がいるかもしれませんが、このハーレム状態は作者の病気です、何故かハーレムをやたら書くんです。
追記、シンジ君は争奪戦形式が決定、参戦者の希望を募集、まことに申し訳ないですが再度教えてください。
(ながちゃん@管理人のコメント)
sara様から「無垢なる刃金を纏う者」の第三話を頂きました。これまた凄いテキスト量です。
しかし九郎、モテモテですな。・・・チョット羨ましいゾ。
ウエストも実に良い味出してます。エルザとのコンビで激しく笑わせてもらいました。
プリオン(笑)は相も変わらず百害あって一利なしですね。それはもう呆れるくらいに。
きっと今回の交渉でも、ネルフの評判を見事に落としてくれるんでしょうね(それに何か企んでいるようだし・・・)。
シンジはというと、やっぱりチルドレンとなることを、初号機への搭乗をキッパリと拒否しましたね。
でもそうなると鬚男のシナリオは初っ端から頓挫することになるから、きっと裏工作してくるんでしょうね。性懲りもなく。
尤も無駄な足掻きなんでしょうけど・・・。
結局のところ、初号機は、ユイはどうなるんでしょうね?覚醒しないまま、このまま蚊帳の外で終わるのかな?
しかし今回もメチャクチャ面白かったです。続きが非常に気になるところですね。
皆さん、作者様に応援・感想メールを送って、どしどし次作を催促しましょう〜♪
作者(sara様)へのご意見、ご感想は、または
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