無垢なる刃金を纏う者

第四話 暴走+懺悔+来襲

presented by sara様


覇道邸の応接室の床に沈む俗称プリオン、通称牛、正式名称ネルフ作戦部長葛城ミサト三尉。

追加すると役立たず、役立たずに悪いといえるほどの有害存在。

現在は無様にふかふかの絨毯の上で這い蹲っていた。

未だ意識はあるのだろうが、リツコ謹製の麻酔弾を受けて意識を保つとはこいつ人間か?
と人類としての真偽を疑いたいところだが。

まぁ多分人間だろう、かなりお粗末な部類だろうが、知能とか理性とか、もしかしたら牛なみかもしれない。

牛に対して失礼かもしれないが、少なくとも牛は無駄に暴れないし、人間にとっては牛乳や牛肉という日々の糧になってくれる分敬うべき存在だ。

そんなミサトに対して周囲の黒服は冷や汗を流し、リツコは冷たい目でミサトを見下ろしている、いまだ麻酔銃を突きつけて。

瑠璃とアルは侮蔑の目で、九郎とシンジは呆れ果てていた、ここまで無様だとおかしいと言うより呆れるだろう。

そんな視線を一身に集めながら、フカフカの絨毯にて何とか立ち上がろうとしている牛。

やっぱり人間規格外の毒物に対する耐性があるようだ、訓練は主に自分の料理だろうか、それとも大量のアルコール。

まぁ、こののたうっている牛、何をやらかしたかと言うと。

シンジが断りの言葉を告げた瞬間、一変してとんでもないことを口走り始め高圧的な態度で傲慢、不遜、傍若無人、唯我独尊なことをのたまい出して、言い合いとなって(といっても一方的に牛が喚いているだけだったが)、ミサトが懐から銃を抜き出しかけ、シンジたちに突きつけようとしたのだ。

最終的に黙らせるために、リツコの制裁を受け今地べたに這い蹲ることになっていたりするんだが。

それはもう豚の様に、無様に。

それでも体の自由が利かない今でもその醜い表情で顔を覆い、自分の言うことを聞かない、自分の欲望どおりに動かないシンジ達を憎悪に染まった瞳で睨み付けていたが。

その執念じみた意思にだけは感服する、只意思だけじゃ何も出来ないが、憎悪の目で見ても更なる強い意思の前には通用しないのだから。





で、この歩く騒音公害、何をやらかしたかというと。

シンジが断りの言葉を告げると、リツコは既にその回答を予想していた(いきなり断られるとは思っていなかったが)のだが一応建前で其処で諦めるわけにもいかないと続けようとしていた。

リツコとしてはシンジがさっさと断ってくれたほうが結果が見えている分面倒が無くて良いなと内心思っていたりする、どうせどんなに紆余曲折を経て自分が努力しようと隣にいる馬鹿のせいで上手くいかないことはわかりきっているんだから。

確かに断られたら隣の馬鹿は騒ぎ出すだろうが、いつ断っても同じことだろうし。

出来れば無駄なカロリーは使いたくないだろう、苦痛を先延ばししても結局来るわけだし。

で、予想通り周りが見えない馬鹿一匹。

リツコのストレスの原因、特定生物病原菌、アルコール処分場、一応はネルフの幹部の一人国際公務員、別名腐敗官僚の理想像。

断られたことに対する彼女の思考による正当な怒りをシンジにぶつけて来たのだ、罵詈雑言と本人曰く凛々しい正しいことをする表情と共に。

正確には自分の駒にならない、我が侭なクソ餓鬼に対して、醜い表情で誹謗中傷をぶつけているのだが。

本人は人類の危機に対して駄々を捏ねる子供に立派な大人である自分がしかりつけて入るつもりらしい。

勿論断られる理由なんて少しもわかっていないというか考えていない。

正義の味方と自身を称する彼女の言葉はすべからず返答はイエスと決まっているからだ。

正義の味方という彼女が自分に掲げる免罪符を、全てが許される犯罪許可証の名を、この女ほどこの言葉を悪用するのもいないだろう。

しかも自分を正義と思い込んでいる、ゲンドウ辺りは自分が外道であることを自覚しているからその点はマシかもしれない。

そして他人から見たら理不尽、本人にしてみれば道理となっている主張をする。

女の理不尽な怒号が応接室に響き渡る。

「断るってどういうことよ、あんたは人類の為の戦いをなんだと思ってんのよ!!
あんたの我が侭なんて通らないのよ!!!!」


やっぱり、断られるということを頭に入れていなかったような口振りである、まぁ聞かされても、自分の都合のいいように脳内翻訳しているんだろうが、発している言葉も罵声と大差ない。

この理不尽で不愉快な女に怒りを覚えないものがいるだろうか、しかもここはミサトにとって敵地といえるような場所でもあるはずなのだが。

ここは彼女の我が侭を叶える愚者の楽園ネルフではないし、それを叶えてやる理由も無い。

今までのようにミサトの言葉に耳を傾け我が侭をかなえてくれる有能な駒はいないのだから。

そして自分の言葉が他人を不愉快にさせるなど考えてもいないだろう。

正しいことを言っている筈だから、それに逆らうものがいないとでも考えているのかもしれない。

彼女にとっての正義とは絶対の権力を指し示しているのだから。

だから自分に向けられる敵意に気付かない、自分の発した理不尽が他人にどんな不愉快を与えるかなど微塵も考えない。

その周囲の怒りに気付かず続けるミサト、微妙に恍惚とした表情になっていたりするが、どうやら自分の言葉によっているらしい。

ついでに、黒服達は居心地が思い切り悪そうだった、リツコは何かを諦めた目でミサトを眺めていた、それはもう友人を見るというよりは蔑んでいる目だったが。

「シンジ君!! 自分が何言っているのかわかっているの、人類の危機だって言うのに逃げるなんて許されないのよ!!!!
人類の為にその身を投げ出してこその男の子でしょうが!!
逃げちゃ駄目よ、戦うことから、逃げてもいいことなんてないのよ!!」


さらに続く理不尽、我欲に塗れ正義というオブラートに包まれた雑言。

自分こそ何を言っているか自覚はあるのだろうか。

シンジ達は独自に使徒を倒す手段を有し、現に使徒を倒している、つまり既に彼女曰くの人類の危機に立ち向かっているのだ。

大体、中学生の少年にそんなことを願望するほうが間違っている。

本来シンジが戦いに出るほうがおかしい、軍隊という組織の存在意義を否定するのだ、シンジなどの少年に頼るなどというのは。

国民が税金を払うのは何も義務だからではない、そして国が軍隊という暴力の具現に巨額の税金をつぎ込むのも伊達や酔狂ではない。

大前提は子供を守る為だ、国を、土地を、生活を色々なものを守るためにあるが、第一は子供を守る。

国民は戦争が始まると兵士として戦地に赴くかもしれない、兵士は国のために死ににいくんじゃない、我が子を、家族を、愛する人を、自分の知りうる大切な人を守る為だ。

その守るべき子供を戦地に立たせるのは恥以外の何者でもない。

ネルフが各国の軍部の良識派に嫌われるのはその点もある、守るべき対象を敵に差し出す恥知らず、軍隊の面汚し、しかもその兵器を誇りにしている厚顔無恥。

これを言われると覇道にいるシンジも言われそうだが、覇道はそのための対処に余念が無かった為それほど非難されていない。





それを忘れているのか、シンジという手駒を作り出す為にシンジが悪いことをしているとでも思い込ますためにいっているのか。

どっちにしろやることが厭らしい。

この女の思惑がどこにあるかはさて置き、どうせその考えが成就することはあるまい。

いい加減シンジ側の人間の怒りが頂点に達しようとしていたし。

心境としては、こんな○チガイ女の声をこれ以上聞きたくないといったところか。

最初に堪忍袋の緒がきれたのは銀髪のお姫様アル、可愛がっている弟分の侮辱を許せるほどの寛容さや我慢強さを彼女は持ち合わせていない。

持ち合わせる必要も無い、と言うかやってしまえアル。

「戯けた事をほざくでないわ、キ○ガイ女が!!!
黙って聞いておれば言いたいことを言いおって。
妾の弟を侮辱するは許さんぞ!!」


アルの怒号が響く、正当な怒りを抱いて、彼女にとってもエルザやレイ同様、家族は特別の意味を持つ、それへの侮辱は彼女の理性の琴線を荒々しく刺激する行為に等しい。

アルにとって、大十字九郎の次に大切なのは紛れも無く彼女の家族たるシンジだったから。

普段よく説教を喰らうが、嫌ったことなど一度としてない。

だから目の前の女の吼え声は看過できるものではない、許すなど自分への冒涜に等しい。

特定の単語に反応したアル曰くキチ○イ女がアルに標的を変え吼える。

「誰がキチガ○女ですって、大体なんでガキがいんのよ!!!! 大事な話してんだから出て行きなさいよ!!!」

どうやら人を貶めることは嬉々として出来ても、貶められるのは嫌らしい、我が侭な女である。

大体、この場にいて、アルの怒号を聞けば関係ぐらいわかるだろうに、それともシンジがゲンドウの息子ではなくなっていることさえ忘れているのだろうか、このアルコール依存症患者。

それともゲンドウの息子と思い込んでいたほうが楽だからか、肉親の関係を盾に説得するとかして。

だから故にアルの怒号は届かない。

普通目の前で家族が貶されれば不快に思い、反発するだろうに。

そんなこともわからないのだから。

やはり狂牛病か、それともアルコールに人の理性を売り渡したか。

もしくは周囲に対する認識能力が極端に低いのかもしれない、人の話し聞かないし、言うことは聞かないし、欲望のまま行動するし。

完全に獣以下の行動原理である。

獣だって、最低限の礼儀と言うか自然の掟のようなものには従うのだから。

大体、アルの怒号を外野の邪魔な声としか認識していないので、人間としては末期だろう、矯正するには洗脳でも必要かもしれない。

そんなミサトの怒号にアルがさらに怒号を発す。

「出て行け、誰がじゃ、妾の前にいる○チガイ女がか!!! 
戯けたことをぬかすでないわこの下郎が、妾はシンジの義姉(あね)じゃ、ここにいて何が悪いかっ!!」


だが、このときの両者の表情、ミサトは憤怒の表情で、アルは怒りの中にも嘲笑を浮かべている、精神年齢の差か(ドゲシッ、妾を年増とぬかすか、だって1300歳くらいじゃあ、黙らんか)。

どちらが精神的優位に経っているかなど一目瞭然である。

まぁ元々怒鳴るだけしか能が無い女だから、唯一のこの女の交渉手段が怒鳴ることで相手を威圧することなのかもしれないが、自分がどれだけ怒鳴っているとき醜い顔をしているかわかっているんだろうか。

判っていたら多少自粛してくれると世間様に迷惑はかからんだろうが。

ま、無駄な願望である。

自己批判など出来る脳を持っているとは到底思えない。

只、牛の理不尽な怒りに対して、正当な怒りを持つ者は何も銀髪のお姫様だけではない。

当のシンジもこの日本語が果たして通じているか怪しい女の言動には腹が立っていた。

無論、瑠璃も九郎も。

それに気付かず、さらに続く罵詈雑言。

醜悪な歌声が、他者の怒りと苛立ちを生むメロディが。

「うっさいわよ、私はシンジ君と話してんの。
家族なんてお呼びじゃないのよ!!
大体、これからの話はネルフの機密にかかわるのよ。 部外者は出て行きなさいよ」


いや、だから部外者違うし、アルと九郎は家族だし、家族は関係者だろう、瑠璃は上司だしこの交渉の監視者でもある。

やっぱり記憶障害が、もしくは聴覚障害?

それとも知恵が足りないのだろうか。

どちらにしろ迷惑極まりない。

こんなのの給料に税金払っている国民が哀れだ。

リツコは蔑みから哀れみに変わった目線でミサトを見ていたし、俗にイタイ人を見る目、どうやら親友からもキ○ガイと認定されたようだ。

ついでに親友は既に元親友になっている。

「何故、出て行かなければならないのでしょうか、葛城三尉。
私達はシンジさんの保護者としてこの席についているのです、私たちに聞かれて困ることをシンジさんにお話しするつもりですか、ネルフからみればシンジさんも未だ部外者であるはずですが」

それとも既に関係者のおつもりですか、と皮肉げに続ける瑠璃。

明らかな侮蔑を交えて。

今までの態度を見て普通の保護者が席を外すわけも無く、瑠璃としては当然の切り返しだろう。

大体機密を話してからネルフに所属する事を断られたら他の組織にシンジに話した機密が流れるだろうに、既にシンジは一度断っているのだし、少なくともミサトが最も警戒している瑠璃には漏れる。

たいしたことを喋らないつもりか、それとも邪魔な人間がおらずシンジ一人なら只のガキ怒鳴り付ければどうとでもなると思っているのか、それとも機密を知ったとして脅すつもりか。

何も考えずに叫んでいるというのが一番有力だろうが。

この傲慢な女が、欠片であれ情報を瑠璃に漏らすとは思えないし。

ドレにしても傍若無人の極みだろう。

そんな瑠璃の正論による切り替えしにも烈火の如き怒りをもって反論する。

まぁ、正論はいつも耳に痛いものだろうが、通じているとは思えないが。

「うっさいわね、私が出て行けって言ってんだから出て行きゃいいのよ、それとも逆らう気、こっちはネルフなのよ!!!!
私が関係ないつったら、はいって言って出て行きゃいいのよ、逆らうなんてあんたら何様のつもりよ」


どうやら、瑠璃の言葉でヒートアップし周りの人間の役職や地位、自分の立場なども忘れたらしい、只単に考え無しに口走ったことに的確に突っ込まれて反論できずに切れたとも言う、別名開き直り。

しかしとんでもないことを口走っている、自分の声は天上におわすお方の声と同義であると考えているんだろう。

もしそうなら檻のある病院かそれとも薬物中毒の検査でもうけてきてもらいたい。

しかも国際公務員なんて大層な職業の人間だと、公金を横領している悪徳公務員が優秀で善良に見えてくる。

この辺りでアルも瑠璃もまともに相手をする気が失せていた。

どうも会話になっていない、キチ○イには話が通じないのだからまともに会話しようと脳を働かすのは酸素とグルコース(ブドウ糖、脳のエネルギー源、砂糖の構成分子の一つ)の無駄遣いである。

シンジも呆れ顔で。

「赤木さん、これって僕をネルフに入るようする交渉だったんじゃないんですか」

既に我関せず、正確には現実逃避の一歩手前に来ていたリツコに苦情と言うか本音を述べていた。

リツコとしては言い訳も無いだろうが。

黒服達も表情が引き攣っている、しかも視線をさまよわせているので、こっちも現実逃避寸前のようだ。

つくづくこの場にいるのが哀れである、無能な同僚(牛)と上司(髭と電柱)を怨むが良いだろう。

どうしてこんな馬鹿を選んだんだと、少しはこの場にいる居辛さが緩まるかもしれない、

多少だろうけど。

「なんじゃ、あの女は何しに来おったのだ?」

「さぁ、交渉じゃないってことは確かだろ」

「嫌がらせじゃないんですか」

「其処まで暇ではないんではないじゃないですの」

という台詞が耳に届けば、気休めも吹き飛ぶだろうけど。

当の馬鹿女は未だ高揚したまま。

「たくっ!! 
面倒臭いわね!!! あんた達、シンジ君を連れて行きなさい、シンジ君は特務機関ネルフの特務権限で強制徴兵します、抗議は受け付けません!!!!」


自分の振りかざした権力に酔っているのか恍惚とした顔で黒服達にシンジを指差して命じる。

勿論、現在特務権限が制限されていることも、子供の強制徴兵が禁止されていることも、また出来たとしても事前に必要な手続きが行われていないということも全部ブッチしている、ある意味便利で都合のいい脳である。

普段から特務権限振りかざして、我が侭を叶えてきた女だ、自分の欲を満たす=権力の行使という図式が脳に焼き付いているのだろう。

人間一度美酒に酔うと、それが染み付くものだし。

だが、ある意味その暴走っぷりや傍若無人さに怒りを感じるより、シンジ達は呆れ果てていたし。

命じられた黒服はリツコの顔を窺って(一応こいつらはリツコに今ミサトがいったようなことは出来ないと言い聞かされている)いる、それにミサトの言動から動くのは躊躇われるらしい。

ついでに米国政府に手続きをしないと、大問題になる。

米国の国連脱退もしくは予算差し止めなどの制裁を行われたらネルフは存続すら出来なくなるのだから、この世界では国連予算の4割を米国が賄っているので。

と言うかこの命令従う人間はまずいるまい、周囲に覇道の私兵が渦巻いているのはこの部屋に来るまでいやというほど見ている、子供一人生きて連れ出すのは不可能だ。

もし奇跡的に脱出しても、ここはアメリカ、覇道のお膝元、日本に帰り着くことは不可能、誰だって命は惜しいのだ。

しかも命令と言うか虚言で。

そんな下僕の動きの悪さに怒りをさらに増したのか。

「何やってんの、さっさと連れてきなさいよ。
抵抗するようなら、痛めつけても構わないわよ!!
ほらやりなさい」


ミサトが黒服に向けて囀る、高圧的な物言い、黒服は不快げに表情を歪め、それでもリツコに伺いを立てる、どうやらミサトに命令権はないようだ。

瑠璃達も、アルが立ち上がりウィンフィールドがその立ち位置を変える。

リツコはそれには答えず懐に手を入れ、何故か洗練された動作で手に銃を持ちミサトを躊躇わず撃った、勿論麻酔銃であるが。

並の人間なら致死量にいたる量の麻酔を打ち込んでいる、しかも数発、鬱憤晴らしだろうか。

ついでにこのときミサトの懐に突っ込んでいた手には拳銃が握られていた。

どうやら動かない黒服を銃で動かそうとしたらしい。

で、冒頭に戻る。





呆れと侮蔑と嘲笑を一身に浴びて這い蹲っている、ミサトを尻目に、恐らく睨んでいるがいつまで意識を保てるか時間の問題だろう、それともこれ以上効かないか。

まぁ、鬱陶しいのかリツコが黒服に命じて、つまみ出していたが。

その時さらに数発、やっぱり鬱憤晴らしのようだ、今度こそ意識を失ったようだが、ついでに注入された麻酔薬の総量、並の人間50人分の致死量であったことを追記する。

誰も止めなかったと言うか黒服はどこか喜んでいた、手間がかからなくていいなという具合に。

数時間後には復活し、黒服達により手錠を複数つけられ、日本にかえるまで荷物として移送されたようだが、目覚める度に眠らして。

ついでに黒服に何故か足を持たれて引きずられて応接室を退室していった、強制的に。

そこらに頭を散々ぶつけて。

どうやら黒服にもミサトは嫌われているらしい。

無茶苦茶な命令の腹いせかもしれないが。

まぁ、普段から傲慢に所属が違うし階級が低い癖に命令するし、責任は押し付けるし、彼女に懐くのは某眼鏡オペレーターぐらいだろう。

彼は彼でどういう女性の好みをしているか、精神鑑定をしてみたいと如実に思うのだが。

そのまま退場とあいなったのだ。





主演女優は醜態をさらし喜劇を演じしばしの眠りについたようだ、先ほどまでその豚のような演技で僕を楽しませてくれた、次も期待しているよ。

嗚呼、欲に渇いた体が潤ったよ、その鳴き声、その醜態僕を潤す蜜に代わる、僕の疼きを慰める手淫に代わるよ。

寂しい限りだよ君が眠りについてしまうと、僕の退屈を、疼きを誰が止めてくれるんだい。

まだまだ足りないんだ、もっと僕を感じさせてくれ。

はぁ、これは今度九郎君に鎮めて貰わないとね、アル・アジフ、君を鳴かせるのも楽しいしね。

そうだねぇ、確か前に和服で迫ったときは九郎君から襲ってくれたね、喪服なんてどうだろうか?

九郎君、今から君のところに行くよ。

僕と快楽を共にしようじゃないか。

さてと、それじゃ衣装はこれでいいか。

おっと。

確か、何か企んでいたようだけど、少し気になるね。

検閲、検閲っと(くだらないところで力を使う、這い寄る混沌)。

何だ、こんなことか、下らないね。

もう少し捻りが無いと。

嗚呼、でも舞台の上でなら良い声で鳴く曲かもしれないね。

君の描く楽譜は(ついでに計画していたのは強引にデモンベイン接収、もしくは破壊工作らしいが無理だろ接収しても機体だけじゃ動かないし)。

はぁ、でも少々ありきたりだね、やっぱり君は即興曲(思い付き)が一番愉快な音を奏でているよ。

計画なんて似合わないんだからさ。

愚かな、愚かな踊り子、君は地にのたうつダンスが相応しい。

でも今回さらに出番が少ない気がするよ、苛めなのかい。






リツコが自発的にミサトを下がらせた後黒服達を退出させる、これからは技術的な会談だし、相手の態度から危害を受けることは無いと判断した為だった。

リツコとしても、ゴツイ男に囲まれて話すよりはさっぱりして気分的に良い、誰でもそうだろうが。





「赤木リツコ博士、少々こちらの技術者とお話になる前にいいでしょうか」

瑠璃が唐突に口を開く、その表情はミサトに向けていた侮蔑ではなく真摯な表情、覇道の王としての威厳をたたえた女帝の姿。

「大十字さん、シンジさん、アル、少し空けてくださいませんか」

シンジ達は何も言うことなく出て行き、この応接室に残るのは、瑠璃、ウィンフィールド、リツコの三名。

「それで、お話とは」

リツコが少々訝しげに瑠璃に問う。

確かに奇妙だろう、直接的な関わりが無く、特にこれといって用件が浮かばない、態々人払いまでして。

何の話か疑問に思うのも当然だろう。

疑念を持つリツコに瑠璃が口を開く。

「綾波レイのことです」

瞬間、リツコの顔が強張り、ある種の感情が走った、恐怖と慙愧、心を苛む少女の名で、その表情を歪ませる。

リツコは傍目には判るぐらいその表情を歪ませ、返答を返す。

「・・・・・・レイについてですか?」

問われたくなかったのだろう、自分の罪を突きつけられることなど。

綾波レイこそがリツコの罪の象徴だから。

それでも聞き返したのは、レイに対しての何の感情だろう、悔恨、謝罪、恐怖・・・・。

声が震えている、何とか止めようとしているようだが指先も震えているのではそれも叶うまい。

「ええ、ファーストチルドレン、綾波レイ、彼女についてです」

瑠璃は続ける。

真剣な声音で。

「彼女に投薬されていた薬、あれは免疫機能を抑制するものですね」

さらに震えるリツコ、それでも瑠璃の顔を見続けている、その冷徹な科学者を演じる普段の表情とは見る影も無かった。

それこそリツコには瑠璃の言葉が死刑執行の判決を読み上げる裁判官の声に聞こえているのかもしれない。

自分の罪を断じる者として。

紛れも無くその投薬を行ったのは自分だから、逆らうことが出来なかったとはいえ。

それは言い訳にはならないだろう。

「また、精神誘導が掛けられていました、今では改善しているようですが」

さらに激しく震える、ついに瑠璃から目をそらし、自分の体を抱くように腕で自分を抱きしめる、自らの罪を抱き留めるように。

既に、瑠璃の目が、存在がリツコに地獄の閻魔に見えることだろう、その視線に恐怖を感じていることだろう。

そしてそれが自分の行いがそれを相応しいと感じている、巡るのは罪悪感。

視線が自分を暴いていく恐怖。

その様子を見て、リツコは顔を伏せているので見えないのだが、瑠璃は少し息を吐き、目元を緩ました。

何かに満足したように。

それでも続ける。

罪を読み上げることを。

断罪を。

瑠璃の真意は何処にあるか、瑠璃が何を求めているか、それはリツコには判らない。

何のための断罪か。

リツコは断罪されているのかも分からないかもしれない。

だが、瑠璃は見続ける、目の前で震える女を自分の言葉に怯える女を、そしてさらに苦しめる。

何かの為に。

「日常生活に対する知識の欠如も著しいようです、どのような生活を送っていたのか、道具だったのですか、彼女は」

既にリツコは恐慌をきたす一歩手前という様子だった、自分の罪を突きつけられて、目をそらすことも許されない現状から逃避するために。

その様子がさらに瑠璃を満足させる。

それでも足りないとばかりに、続く、責め苦の言葉。

心をえぐるような言葉を。

痛めつけるためだけに。

傷つけるためだけに。

罪を自覚させるために、誤魔化しなど赦さぬ為に。

さらに傷つけよう。

更なる苦しみを与えるために。

更なる罪を自覚させるために。

訴追の言葉を。

打ちつけよう。

「最後です、綾波レイ、彼女は人間ではない、貴女はそれを知っていますね」

最後の楔を打ち砕こう、彼女の心を誤魔化す偽りを、言葉の刃で、ズタズタに。

彼女の心ごと。

ボロボロに。

打ち砕こう、切り刻もう。

二度とは元に戻らぬよう。





既にリツコは茫然自失の体だった、続けられた断罪の調べが、それを糾弾されて耐えられるほど強くなかった。

そしてその糾弾を無視できるほど非情でもなかった。

故に、その壊れかけたリツコが瑠璃にはとても満足だった。

とてもとても、瑠璃は自分の言葉で壊れていくリツコが満足だった。

痛ましいはずのその姿が美しくさえ見えていた。

これで次の言葉を告げられる、聴く資格がある。

聞くだけの罪業を背負っているのだから、少なくとも罪業に目をそらしてはいなかったから、そう思えるから。

この責め苦はその確認作業。

人の心を試す外道の手法、それでも試さねばなるまい。

「本当に最後です。
綾波レイは貴女のことをこう言っていました「リツコお姉さん」と、そして貴女に会いたいと」

この言葉を聴くためには。

必要な不可欠な行為だ、それが瑠璃の人を試す行為をするという傲慢で、そして優しさだった。

罪を罪とも思えぬなら、彼女はリツコとレイを合わせるつもりなどなかった。

彼女に、レイに罪を感じないのなら聞く資格は無く、その罪に苛まれるなら聞く資格があり、解放される権利もある。

故に試した。

悪趣味ではあるが。

必要だった。





あの子が私を「姉」と言った、何も出来なかった、守ることも、慰めることも出来なかった私に。

何かをするどころか、冷たい仕打ちを課した私に。

全てを知って何もせずに無表情で眺めていた私に。

従うしか脳の無かった私に。

こんなくだらない私に。

あの子は怨んでいないの?

あの子は何で今でも私をそう呼んでくれるの?

何で、何で。

あの子の赦し。

それだけで。

いつの間にか泣いていた、涙が零れ落ちていた。

受け入れていいの。

私が赦されて。

大罪人たる私が。

故に咽び泣く、幼子のように。





考える必要の無い苦悩、答えの出ない苦悩、リツコがそれに捕らわれている。

瑠璃としてはそれを察しようが無いが、リツコが迷いそして自分の認識どおりの人間だったということだけはわかる。

それで十分だ。

「それで、赤木博士、どうするのですか」

だから、問う。

リツコは瑠璃に声に反応し、その泣き顔を上げ、瑠璃を見、そして聞き返す。

だが、言葉にならない。

そんなリツコを見て瑠璃は続ける。

「レイに会いますか」

とだけ告げた。





泣くだけ泣いて落ち着いたのだろう、リツコが顔を上げ、振り切った表情で瑠璃を見る。

瑠璃は先ほどの真剣な表情を消し去り微笑を返すだけで何も言わず、紅茶に手を伸ばしていた。

「何故このようなことを私に」

当然の疑問、瑠璃が何故リツコにこのようなことをいったのか。

「頼まれました」

誰にとは言わない、リツコのことを知っているのは一人しかいない。

リツコにとっては余りに判り易すぎて、余りに以外だった。

「そうですか」

それでも納得はいくだろう。

理由はわからずとも。

だから。

「会うわけにはいきません、けじめをつけるまでは」

「けじめですか?」

何かを決めた表情、先ほどの泣き顔には無い何かを決めた人間の顔、意志の力を持つ瞳。

反逆の瞳。

「ええ、けじめをつけたらレイに会いにまた来ます、それまで会うわけには行きません、待ってくれるように伝えてくれませんか」

瑠璃はリツコの言うけじめが何かは判らない、でも、一言だけ。

言わなければならない言葉。

「忠告します、死なないでください、レイが悲しみます、あなたが何を考えているかは知りません、ですが私は貴女がこれ以上レイを悲しませることをよしませんよ」

「私はあの子にはせめてもう一度会って謝りたい、それまでは死ぬわけにはいきませんので」

一拍置き。

「これは私の我が侭ですからね」

リツコは微笑んで、優しい微笑で瑠璃にそう言った。





場面は変わって、愚者の楽園ネルフ本部、司令執務室。

薄気味悪く、意味なく広い部屋で今回の交渉の報告が行われている。

と言っても交渉は失敗、目的であるサードチルドレン、大十字シンジを確保するには至っていない。

ということで現状のネルフの状態は到底楽観視できるものではない。

散々周囲に吹聴した虎の子のエヴァンゲリオンは未だ本部において起動実績すらなく、パイロットでさえいない。

重要であるはずのパイロットに対する杜撰な扱い、それによる不備から来る失態の露見。

表向きに与えられた役割でさえまともに機能しない有様で、まさしく税金泥棒。

しかも、明らかにされた組織の腐敗。

信用を失った現在において風当たりは強く、早急に実績を作り、世間に必要性を訴えなければならない状態に追い込まれている。

そのはずなのに、それでも愚者はそれを見ようとはせず、認めようとはせず、己の我が侭を貫こうとする、傲慢で不遜な欲望のために。

ついでに国連からの突き上げに対応している電柱は幾分疲れた顔をしている。

「六文儀、拙いぞ、このままでは」

「問題ない」

其処にいる通称、髭と電柱、そして報告をするリツコ。

何が問題ない、問題は山積みだろう、目を逸らしてどうにかなるとでも思っているのか。

それともまだ修正範囲内だと嘯いているのか。

瓦解したシナリオにすがる愚かな男達。

それを侮蔑の目で眺める女科学者。

ついでに牛は日本まで輸送され、交渉失敗の責任で独房行き、独房内で暴れている、主にアルコール分が欠乏したのが原因で。

一言だけ抜粋すると。

「えびちゅ、えびちゅを出せって言ってんでしょうが、こんなとこ押し込んどいて。 えびちゅぐらい出しなさいよ、私は偉いのよ、作戦部長なのよ、幹部なのよ、あんた等覚えときなさい。」

と看守を脅していた。

勿論無視していたが、どうもぶち込まれた理由は忘れているアルコール依存症の患者の監視員でもないのに看守もご苦労なことだ。

それはさておき。

問題が山積みの現状において。

「何が問題ないというのだ、未だ本部にパイロットはいないのだぞ、次の使徒で実績を残せなければ、さらに予算が削られるぞ」

冬月としては言わねばならないだろう、でもその程度で済むかな、予算削減程度で。

リツコとしてはどうでもいいが、けじめさえつけたらさっさとここを抜け出してアーカムに行く気満々なんだから。

怨み満載なネルフがどうなろうと知ったことではない。

客観的立場に立つと、見ていて面白いものがある、この愚者の饗宴は。

自分がここに混ざっていたのが馬鹿らしくなるのが欠点だが。

あまりに自分の願望に忠実な馬鹿げた組織だ。

愚かなる男の願望のシナリオを嘯くために作られた組織なのだから。

「セカンドチルドレンと二号機が3日後到着する」

「そうか、だが初号機とレイはどうするのだ」

これが最も切実な問題だろう、使い捨ての駒に過ぎないセカンドチルドレンよりも自分たちの計画の要たる初号機、そして綾波レイ。

初号機を動かす為のサードチルドレンはおらず、愚者の願いをかなえる女神は自分達の手には無い。

そして、自分達のシナリオを実行する為の賢者の心も離れた、まだそれを知りはしないが。

「・・・・・・・・・シンジは諜報部に連れて来させる、所詮子供、後ろ盾が居ようと連れて来ればどうとでもなる。 レイは三人目に変え、セントラルドグマで監禁しておけばいい、計画発動のときまで人目にさらさなければ問題ない」

ついでに、失敗の報告のところでレイとシンジの現状も既にリツコが報告している。

勿論嘘と真実を交えたでっち上げだが。

レイは覇道家に匿われている様で、それなりの自由は与えられているが常に誰かが監視についていると言うこと、レイが独力でネルフに帰還することは不可能、ましてレイを拉致するのは無理だと言うこと。

シンジは覇道家にはおらず、保護者である大十字九郎と同居しているという事。

だからこの男は、交渉と言うまどろっこしい手が失敗に終わった今、更なる交渉という選択肢を使わず、最も安易な手段をとろうとしている。

自分の欲を完遂させる為に。

自分に楯突く、思い通りの人形にならない息子を思いのままにする為に。

ついでにレイが出たとき、リツコがちょっと反応していたが、気付いてはいなかった。

「上手くいくのか?」

「既に手は打ってある、何も問題は無い」

この髭が手を打ったといっても、どうせ力押しなんだろうが、どうせそれ以外のやり方など知りもしないんだろうし。

数日後もたらされたのは、拉致及び暗殺失敗と、国連からの更なる嫌疑によるゲンドウ本人の降格処分、二将から三将へと落とされ、嫌疑の対象となった諜報部に設置された監視団から常時監視されるというおまけ付きで、諜報部の機能が使い辛くなったらしい。

ついでにシンジは、一応ネルフという身分を隠した諜報部員が、強引に拉致しようとしたが、魔導書の力で吹き飛ばし、全治半年の大怪我+アーカムの警察に引き渡され、誘拐罪、や武器不法所持(アメリカでも許可されていない銃器を携帯していた)で、刑務所送りになり、楽しくアメリカ最悪の刑務所に十数年間ぶち込まれたそうだ。

レイのほうは、事前にリツコからリークされ、エルザが常時張り付き、飛んでくるライフルの弾をトンファーで打ち落とすという人造人間ならではのことで狙撃を防ぎ、直接襲ってきた人間は完膚なきまで叩きのめした、なおシンジにやられた人間の数倍は手ひどく死んでいないことが奇跡という状態にされていた、なお一生ベッドから起き上がることは無かった。

これらはネルフが関わったという証拠は出なかったが、嫌疑を掛けられるだけで今のゲンドウを降格する理由としては十分のようだ。

まったく信用ないし、たたけば埃が山のように出る男だし。

つまりは無様な髭の無様な計画は己の首を絞めただけで、愚者の計画をさらにシナリオから逸脱させる結果となった。

ゼーレの老人達にはこっぴどく文句を言われたようだが。

これでさらに暴走するんだが、髭としてはなんとしても初号機が動き、レイの存在が必要なのだから。

諦めるという選択肢は無いだろう。

願望、醜い欲望を成就させるためには。





そして暫し経ち、本来リツコがアメリカに渡った理由、あちらのロボットについてのことに移る。

ここでもリツコは真偽を交えて、報告するのみ。

只、リツコ自身、精霊に語られた内容を未だ確かに理解しているわけではないが。





ここでは暫し妾が語ろう、リツコに伝えた知識、妾が語ったデモンベイン、鬼械神(デウス・マキナ)について。

妾はアル・アジフそう「魔物の咆哮(キダフ・アル・アジフ)」、狂えるアラブ人、狂える詩人アブドゥル・アルハザードに記された最強の魔導書(グリモワール)、力ある魔導書(グリモワール)の精霊たる我。


大十字九郎と永劫を歩む精霊たる我。

死霊秘法書(ネクロノミコン)の名を持つ我。


外道の知識の集大成、おぞましき魔性、それが我。

そして大十字九郎と共に魔を断つ剣を駆る我。

まぁ、最初は何を言っているのとか言っておったが、そんなもの妾の知ったことではないし。

だが、見ものであったぞ、目の前で書と化す我を見て、目を見開くリツコは、小娘が妾を始めてみたときよりも愉快だった。

なにやら叫んでおったしの。

どうも科学者という人種は妾を言葉では信じようとせん、矮小たる想像力しか持たぬ人間、しかもその筆頭では致し方ないことだが。

アル・アジフ其処は僕の語り場・・・・・・・(何故か蜘蛛の巣のような光に捕らわれている這いよる混沌、ついでに縛っているのはアトラック・ナチャ、しかも実体化した巨乳お姉さんバージョンまでいる)。

ぬぅ、五月蠅いぞナイア、何が、僕の出番だ、妾は汝より出番が少ないのじゃぞ、譲らんか。

ええい、うっとおしいわ、クトゥグア、追い払え(ついでにナイアの天敵はアルに記されている記述の一部、旧支配者であるクトゥグア、やっぱり実体化したクールビューティーがナイアに迫る)。

(プロミネンスのような炎で炙られる邪神、こんがりレアとなり逃げ惑っている)

ふん、すっきりしたわ。

おお、話の続きであったな。

つまり妾は魔導書(グリモワール)の精霊なのだ、高位の書はその魔力で現世に存在する肉の器を得ることが出来るのでな。


おお、魔導書(グリモワール)とは力ある書のことだ。


魔術師(マギウス)に力を与える、様々な呪法や異界の神々について記された書物だ、書自体が力を持ち意志を持つ。


そして力の強い書には妾のような精霊が宿る。

故に妾は偉大な魔導書(グリモワール)なのだぞ。


この説明をするまででもかなり聞かれたのじゃが、理解できたかは疑問だな。

まぁ、おいおい理解するであろう。

理解することが魔術への第一歩であるからして。

それはさておき本題はデモンベインであったな、そして鬼械神(デウス・マキナ)


それらは神を模したもの、人工の神。

鋼鉄を鎧い刃金を纏う神。

戦いの神の模造品。

そう、ネルフの天使を模した鬼、天使を狩る鬼エヴァンゲリオンと意味合いは似ているな。

鬼械神(デウス・マキナ)とは全くの別物ではあるが。


汝は魔術を信じるか、まぁ信じるしかあるまい、先ほどの妾を見、そしてデモンベインを見たのじゃからな。

既に、汝らに否定は出来ん、魔術の存在を知ってしまった。

汝等が見たものを否定出来ず、受け入れるしかないないではないか。

話を続けるぞ。

鬼械神(デウス・マキナ)はその魔術の集大成だ、外なる世界の知識、外道の知識の集大成。


破壊の神。

それが鬼械神(デウス・マキナ)


そしてはデモンベインは鬼械神(デウス・マキナ)の紛い物、鬼械神(デウス・マキナ)の模造品。


科学と魔術と錬金術の混合物、故に異質体。

まぁ、これは詮無きことではあるが、話の本筋には関わりが無い。

だが、鬼械神(デウス・マキナ)は魔術の産物、汝ら只の人間に模造は出来まい。

造るには魔術師(マギウス)が必要だ、動かすのにも、それに魔導書(グリモワール)も、妾の様な。


鬼械神(デウス・マキナ)魔術師(マギウス)魔導書(グリモワール)、三つが揃って真価を発揮するものだ。


魔術師(マギウス)か?

魔術師(マギウス)とは、魔術を行使するもの。

この世の法則を理解し、その一部を書き換えて奇跡を起こす者達。

この世の理に介入し、理不尽を行使する者達。

魔術か解し、それを執行するもの。

魔術に善も悪も無い、それは魔術師(マギウス)が決める事だ。


大抵の魔術師(マギウス)はその外道の知識に溺れる二流だがな。


一流の魔術師(マギウス)は純粋だ、悪であれ善であれな。


その中間であれ、純粋なのだ。

それは妾の伴侶、大十字九郎、それにシンジも当てはまる。

九郎もシンジも純粋だ、正義とはいえん。

悪とも言えん、されど純粋だ。

その純粋さが世界の法則を理解し、魔術という奇跡を解し、外道の誘惑に立ち向かう術だ。

まぁ、妾の主は最初は魔術に怯え逃げ出した根性無しではあるが。

それに引き換え、シンジはまだ優秀であったぞ。

妾のような精霊もおらんというに、魔術を解し。

外道に溺れず、この世の法則を理解する。

大体、九郎は・・・・・・・・・・・。

んにゅ、九郎が劣っているわけではないぞ、断じてない、妾の主は優秀だぞ。

けなしてなんぞおらん。

それは理解力が無く、猪突猛進で、行き当たりばったり、ロリコンでペドフェリア、甲斐性無しの浮気者の痴れ者、だが良い男なのだぞ。

そうだ、そうなのだ、九郎は妾が見た中では稀代の魔術師(マギウス)だぞ。


妾の記述を理解し、精霊たる妾を受け入れる度量のある良い男なのだぞ。

そう、妾の主であるがして、だからそんな目で見るな、ほらそこの作者。

何、惚気るな。

違う、惚気てなんぞおらん、事実を述べておるだけだ。

だから違うというに。

にゃに、また話が逸れたか。

つまりはデモンベインとは鬼械神(デウス・マキナ)であり。


鬼械神(デウス・マキナ)を動かすには魔術師(マギウス)魔導書(グリモワール)が必要だ。


人間では動かせん、こちら側に来魔導書(グリモワール)を手に取った魔術師(マギウス)のみが行使できる力だ。


真なる魔術師(マギウス)が真の魔導書(グリモワール)を得たときのみ行使できる力。

それが鬼械神(デウス・マキナ)





最後に妾はリツコにこう言った。

リツコ、汝からは魔性の臭いがする、外道に触れても意志を保てる強さも、推測ではあるが汝は既に外道にかかわっているのであろう、魔術ではなかろうと。

汝は外道に染まり、それでも外道には堕ちてはおらん。

もし、汝が魔術を解するならば。

この世の法則を解するならば。

汝の大事な娘を守る力、力ある書を扱えるかもしれん。

故に、これをくれてやる、魔導書(グリモワール)を。

汝が魅せられなければ、汝が堕ちなければ、これは汝の力となろう。

もし、汝が扱えれば汝は魔術師(マギウス)となる。


力が欲しいのであろう。

権力から、暴力から、理不尽から、あの娘を守るだけの力が欲しいのであろう。

だが、何もせずには守れない、汝の知識だけでは守れない。

理不尽に対するは理不尽で。

守りたいのならば震えるな、勇気という名の剣を執れ。

赤木リツコ。

妾のマスターのように。

もう一度あの娘に会うのであろう。

ならば剣を執れ。





という訳ではあるが、まぁリツコがアレを扱えるかどうかなど妾が知るところではないわ。

溺れず、堕ちず、生きてここで再び合えたら。

妾が手ずから鍛えてやろう(ニヤリ)。

なんじゃ、九郎、何をする気かだと。

何故そのようなことを聞くのじゃ。

何、顔が怪しい、何を企んでいるだと。

人聞きの悪いことを言いおって、何、ミスカトニックの時計台から汝のように突き落としてやろうかと。

生命の危機が魔術の実践に不可欠ゆえな。

何じゃ、何故九郎そんな笑みで妾を見る、何、今思い出したあのときの復讐。

マジ、怖かっただと、いいではないかそれで飛べるようになったであろう。

その手は何じゃ、何で妾の服に手を掛ける、やめんか!!

やめ、やめ、やめろ九郎、何だ抜かず10発というのは、幾ら妾でも壊れ・・・・。

胸をまさぐるな、ああっ、九・・・・・・・・・・・・・・・。






何故かアルの語りに介入する九郎、本筋には関係ない。

ラスト少し遊びました御免なさい(ペコリ sara)





で、再びネルフ本部。

リツコが一応でっち上げのデモンベインについての報告が終了して、このお話では幾分まともと言うか人格者なリツコだがそれでもマッドの館と呼ばれる技術部長執務室でお手製のコーヒーを楽しんでいた。

どうやらリツコ=マッドという図式が成立しているようだ(作者の中で)。

リツコはとても晴れやかな顔だった。

コーヒーを楽しむその表情も以前の影を宿したところが無い。

何かを吹っ切ると人間変わるものである。

特にあの髭という名の公害から脱出したんだから、心理的な負担がだいぶ軽くなったのだろう。

今までたまりに溜まった鬱屈したものをほうり捨てた結果だ。

しかも、彼女のストレス源の作戦部長はあと2日は独房入りだ、機嫌がいいのも頷ける。

ついでにリツコ、ある程度アーカムに帰る算段はついていたし、髭と電柱の行動パターンやスケジュールをある程度把握しているので、自分の目的を達成するのをそれほど難しいと考えていない。

命がけでけじめをつけたいと思うほど、命を粗末にはしていないのだ。

リツコの目下のところの最大の関心事は。

自分のけじめを付け、アーカムのレイに会うこと。

それと今目の前にある魔導書、アーカムでアル・アジフに渡された魔導書「セラエノ断章」についてだった。

実際リツコとしても未だ魔術の存在には懐疑的だ。

今まで自分が信じてきた科学では証明できず、根底を揺さぶるものをそれを易々と受け入れるほど人間は柔軟性に富んだ思考は出来まい、なまじ優秀な科学者であるリツコには。

だが、科学者として既に魔術を否定も出来ない。

見たものを、観測したものを、存在するという視点に立ち、その原理を解明するのが科学者のスタンスだ。

己が目で見たものを否定できない以上、受け入れるしかない。

故に、知的好奇心が湧き上がる、科学者の性としての、智への欲求。

知ることへの喜び。

何だかんだで、今のリツコは充実していた。

アーカムで鍛錬という名の紐無しバンジ―が待ち構えていたりするのは知らずに。





ついでに余談だがリツコ、既にネルフに未練が無い、全く無いわけではないが一応友達のミサトはどうも友達と言いたい様な人格ではなくなってきているし、気がかりなのは弟子のような伊吹マヤだが事情を説明するわけのもいかない。

唯一の未練はMAGIだが、致し方ない。

彼女の中では母親の遺作よりも綾波レイのほうが重要だった。

瑠璃にある程度情報を流しているのでスパイのような立場にもなりつつあるが、これは今までいいようにしてくれたゲンドウに対する意趣返しでもあるのだが。

瑠璃からは気を付けてだけで、これは完全にリツコの善意なのだが、少し趣味も入っている。

自分の駒と信じきっているゲンドウが裏切られていると知ったときを考えると愉快でたまらないらしい。

なかなかいい性格になっている赤木リツコだった。

今のところ自宅や、この部屋にある猫グッズをどうやって運ぼうかと頭を悩ましていたりする、何気に呑気である。

これが地なのかもしれないが。





アーカムシティ。

リツコが帰国して数日後。

九郎宅近所の教会兼孤児院に九郎たちがいたりする。

一応こいつら国連軍仕官であるはずだが、基本的に業務は事務的なものが瑠璃、ウィンフィールド、技術的なものがチアキ、ウエスト(案外真面目、但しチアキのお目付き有り)達や覇道家の使用人によって行われているので、シンジ達にあえてやることが無かったりする。

実際は九郎だけは度々、瑠璃やウィンフィールドに拉致られ半強制で帝王学やら経済学、経営学を叩き込まれていたりするが、次期覇道総帥として。

そのたびに脱走するのだが、脱走先はこの教会であることが多い。

只単に自宅か教会、覇道邸と九郎の知り合いが少ないのが主原因ではあるが。

ちなみに、今日は逃げてきたわけではない。

大体3日に一度は逃げ込むのだが、今日はその間の日だ。





「九郎ちゃん、何で収入得るようになったのに、毎日毎日毎日毎日、お昼は私の教会で摂るのかなー、九郎ちゃんのことは大好きだけど、こうも大勢で押しかけられるとお姉さんちょっとむかっ腹、食費払えこのただ飯野郎、今日もその体に染み付いた野獣のような食欲解放してお昼食べやがって、しかもおやつまで要求するなんて厚かましいなんて言わないから、お姉さん特性のケーキ食べていってね」

心をえぐるような辛辣な言葉でボロクソに言ってくれる、教会の主、シスターライカ、フルネームでライカ・クルセイド、ついでに食費以前に貴女も一応、殆ど私兵の国連軍仕官でしょーに。

金髪で眼鏡、長身、愛らしい慈母のような顔立ち、美人と誰もが断言する美貌。

そして何より巨乳、そう巨乳、どこぞのペッタン古本精霊曰く、人知を超えた何かが宿ったデカサ、怪異の一種、乳で九郎を誘惑する卑怯者(自分に無い為)、乳牛(これはライカが怒るので封印、アルが数日間ライカを見て逃げ出したほどの恐怖を味わったらしいので)。

ある意味、男の願望てんこ盛りの美人のお姉さんである。

口は悪いし、辛辣だし、最近九郎ちゃん苛めが趣味と公言する一応聖職者、自称九郎のお嫁さん大十字ライカと主張する妄想全開お姉さん。

既に九郎に弁解の余地は無いが。

別名、メタトロン、これについては詳細は後程。

ついでに弟が一人、教会には住んでいないが、ちょくちょく顔は出す。

弟さん、名前はリューガ・クルセイド、なかなか哀れな男である、九郎への呼び方は、義兄さんで強制されている、ライカの脅迫により。

別名、サンダルフォン、これも後ほど。





で、九郎、アル、レイ、エルザ、ライカで、テーブルについて、ライカ特性のミルフィーユを食べていた。

和気藹々と、ついでにライカの口撃は九郎ピンポイントなので、他の連中は気にしていない、レイは初めて食べるミルフィーユに夢中で終始無言だし恐らく聞いていない。

どうも最近、食に目覚めたのか、初めて食べるものに並々ならぬ熱意を持っている。

お気に入りは、ライカのお菓子、エルザのパスタ、チアキの玉子焼き、ウィンさんの紅茶シンジの和食らしいが。

お陰で、健康状態はかなり改善されていたりする。

後日リツコのコーヒーと焼き菓子もお気に入りに加わるようだ。

何気にレイ、みんなに可愛がられている、特に食事方面、美味しいものを食べたときの驚いたような微笑が人気の秘密、料理人としては素直に美味しいと表現してくれると嬉しいものだから。

料理好きの人間にとっては中々好かれやすいようだ。

ついでにエルザ、これで目覚めて本格的に料理修行中、いずれはアーカム一の料理人人造人間になれることだろう。

やはりウエスト謹製、どこまでも人間らしい人外である。





で、談笑している内容はというと。

「ふむ、やはりアレだな、シンジも九郎の義弟というわけで、汝のようなロクデナシの素養を受け継いでおるようだな(ギロリ)」

「あななぁ、アル、人を外道のように」

「違うの九郎ちゃん、お姉さんのタプンタプンだけじゃ満足せずに、こんな幼いアルちゃんに手を出した時点で、神は九郎ちゃんを性犯罪者に認定しましたよ」

「その通りだ、汝自覚は無かったのか」

九郎をからかうことに掛けては絶妙なコンビでもある、この二人。

「お前等・・・・・・・・・・・・・・」

「嗚呼、九郎ちゃんのせいで純粋な子供たちが邪に染まっていく、私の可愛い子供達が、そして将来九郎ちゃんのように女にだらしないロクデナシになるのね、可哀想に、今なら矯正間に合うかしら、神に仕える身として子供たちは私が守らなきゃ」

「ライカ、何すべて妾の主が悪いのじゃ、手伝うぞ」

泣き真似、と言うか本当に目元に涙をためる芸の細かさだ。

この二人九郎を苛めるのに手間を惜しまないのだ。

「・・・・・・・・・グスン」

世知辛い世間に九郎は半泣きでミルフィーユを食べていた、突っ込むのは諦めたようだ。





その後、ライカが泣いて許しを請うまでベッドで攻め抜いたそうだが、復讐だろうか。

なお、何故かライカは九郎とベッドを共にする度に今日は安全日だからと、避妊具を使いたがらない、何気に九郎に鎖を巻きつけようとする強かなライカだった。

ほんとにライカ聖職者?





で、自分の義姉にロクデナシ扱いされているシンジ、かなり愉快な状況に放り込まれていた。

ついでに部屋の隅でこちらを見て震えている子供二人、ジョージとコリンである、よほど怖いのか涙目だ。

シンジはというと両脇からとんでもない圧力で恐怖に引きつっていた、義兄同様女難の相を持っているようだ。

シンジの両脇。

右側、灰色の髪のショートヘアの美少女、恐らく10歳か11才位、普段は大人しい女の子だが、今はその普段の気の弱そうな雰囲気はどぶにでも捨てたようなアリスン。

才能だけなら、いまだ出てもいないがマスターテリオンにさえ匹敵する魔術師がシンジの先にいる少女を座った目で睨み付けていた、制御できない力がスパークを散らしていた。

で左側、癖のある赤い髪のショートヘア、こちらも美少女普段は明るく元気で今も笑顔だが目元は座っているエンネア。

現在世界最高の魔術師の一人、暴君の二つ名を持つネロ=エンネア。

ついでにエンネアもライカの教会の世話になっている。

ある意味、人間でありながら人間以上の存在である二人が、シンジを挟んで睨み合っていた、右手にフォーク左手にミルフィーユの皿を持って。

それが彼女達の剣のようだ。

「アリスン、エンネアがシンジに食べさして上げるから、アリスンは向こうで一人さびしくケーキを食べるにゃ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

エンネアの挑発にガン付けで返答するアリスン、恋心は人格を変えるらしい。

ついでにそのエンネア対アリスン、周囲にプレッシャーを撒き散らしまくっていた。

主に普段と違うアリスンに怯えているジョージとコリン、シンジは顔を蒼褪めさせて左右の二人に追い詰められていた。

ちなみにこの程度、九郎にとっては体験済みというか日常、それでも同情を禁じえない。

テーブルについているアルとライカにとってはいい見世物となっている。

シンジはまだこの状況に慣れていないが(九郎曰く、慣れるってことはさ、自分の体に鎖が巻き付いてることを自覚するときなのさ)。

現時点でのシンジに迫るフルメンバーが揃うよりも幾分マシである。

「ほら、シンジ、エンネアのケーキ、食べるよね、間接キスいってみよう、あっ、シンジとならキスも、あれも、OK三連呼にゃ、幼妻エンネアに任せれば快楽の底におくってあげるにゃ」

「・・・・・・・・・出産経験のある、年齢不詳の淫魔はシンジお兄ちゃんに近寄らないで」

アリスンが低い声で言うライカさんばりの毒舌、どうやら大人しいやら、気弱って所はドブではなく核廃棄物処理場に捨ててきたらしい。

ちなみにエンネア、年齢不詳、マスターテリオンの生みの親(?)というのは事実である。

外見はアリスンよりちょっと年上の感じのロリっ子なんだが。

嘘は言っていないアリスン。

但し、エンネアの笑みの奥で絶対に目の前のアリスンに怒りを感じているだろう、だって青筋たっているし、微妙に笑顔引き攣っているし。

「言うようになったんだね、そんな暴言吐くなんてお姉さん悲しいな、だからそんな不良娘はシンジには相応しくないし、どっか行ちゃえ?」

顔は笑顔だが、背中に炎を背負っている。

対するアリスンも背中に吹雪を背負い、凍れる眼差しで、睨み付けている。

シンジにはそれぞれ背後に実体化したクトゥグアとイタクァが見えたという。

あまりの殺意の応酬にシンジが現実逃避を決め、原作ではお決まりの“逃げちゃ駄目だ”を繰り返しそうになりそうなとき。

現実はこの幸せな不幸を体験している少年を自分の思考の中に落とすような甘いものではなかった。

まぁ、世間様ではお約束とも定番とも言う。

つまりは更なる不幸に堕ちていただこうかと。

暫く互いに皮肉の聞いた言い争い+視殺戦を繰り広げていた、ロリ美少女二名。

直接的な物理攻撃に移らないのは、そこまでするとライカのお仕置きがある為だが、その圧力だけで、並みの子供なら泣いて逃げ出しそうな、と言うかジョージとコリン既に気を失っていたりする。

突然、まるでタイミングを計ったように二人がシンジのほうを向いて、シンジにとってどうしろって言うのさ、とでも叫びだして逃げ出したいことを言ってきた。

「シンジ、この根暗っ子に言ってあげて、シンジの愛しているのはエンネアだけだって、早目に振ってあげるのも優しさなんだよ、ズルズルしたらこの勘違い女が可哀想」

あからさまに、挑発しシンジに抱きついている、あるかないかの乳も押し付けているので、シンジは真っ赤になっているが。

それを見てアリスンの目が怒気から完全に殺意一色に塗り変わり、暴走している魔力が一段と激しいスパークを引き起こす、ついでに本作では一番のナイ乳アリスン、将来性はあるだろうが現時点では少年のような胸である。

ついでにナイ乳三巨頭は、アリスン、アル、エセルドレーダ、エンネアはこの三人よりはある。

「黙ってて、このバツイチのオバサン、シンジお兄ちゃんはアリスンの
ほら、シンジおにいちゃん、あーん」

といって、再度毒を吐いてシンジにミルフィーユの刺さったフォークを出す、ついでにこのときは笑顔である、器用なことだ。

シンジの表情は引き攣っているというか既に微妙に痙攣を起こし始めているし。

ついでに言うが、エンネアは恐らく既婚ではない。

と言うかどういう原理でマスターテリオンが生まれたのか不思議だ、多分魔術絡み。

どうでもいいが。

エンネアはオバサンの一言で固まっているし、実際幾つなんだろう。

その間にアリスンはシンジに突き出したフォークでシンジに食べさしていた。

シンジとしては食べないと、断ると一瞬で普段の気弱な様子のアリスンを思い起こす涙をためた小動物の瞳で見られるため拒否できない(というか以前やられて、心が痛んだ)。

アリスンはその辺天然でやっているので計算してやっているより性質が悪いのだ、シンジとしては否応無く罪悪感が沸いてくるから。

なお食べ終わった後、現世に回帰して来たエンネアとアリスンの怪獣大決戦が勃発。

ある特定の単語に対する怒りと、抜け駆けした憎悪をアリスンにぶつけるエンネアが悪鬼のような奮迅で迫るが、アリスンが逃げまくり、ライカが止めに入るまでエンネアは一撃も入れることが出来なかった。

何気にアリスン運動神経はあるようだ。





で、再びネルフ本部。

二号機と二号機パイロット、惣流・アスカ・ラングレー到着の日である、ついでにミサトは未だ独房、何も作者が面倒だから出していないわけではない。

出るとちっとも話が進まないからである。

今回は時間がないのでウイングキャリアーでの移送で、海路ではない分ずいぶん早い、予備のパーツなどは後日海路での移送となっているのだが。

出迎えにでたのは、どうも技術部長なのか、雑用係なのか判明しない赤木リツコ、ミサトがいないし、アスカと既知なのが本部に彼女しかいなかったのが理由だが。

航空機から朱金の髪のお姫様が降りるところを眺めながらリツコは、ミサトがいない言い訳どうしようか、とどうでもいいことを考えていた。

本気でネルフに対してはやる気を失っているようだ。





で、ちょっと経ってアスカがリツコの前に立ち。

「ようこそ、アスカ、久し振りね」

「リツコ!? 久し振りね、でもミサトはどうしたの、作戦部長なんだからあたしの出迎えはミサトでしょ」

やっぱり来たか、という感じで内心リツコが予想通りと微妙に嬉しい+説明が面倒という微妙な感情で。

それでも多少投げやりなのだが。

と言うかアスカにミサトのいい加減さが伝わるとネルフとしては拙いが、アスカ自身のためを思うと正直に言ったほうがいい、リツコの元親友を信頼しても良い事などアリはしないだろうから。

身に染みて判っているリツコだった、知っていれば対応のしようもあるだろう。

つまり正直に現状を言うことにしたのだ。

今後アスカの為にも。

「ミサトなら独房で反省中よ」

簡潔である。

「へー、何やらかしたのミサト、遅刻の常習、ビール飲んで勤務しててついに懲罰、それとも飲酒運転がばれたの」

いきなり14の女の子にここまで言われるミサト、これも人徳だろうか。

正しい認識であるので否定できないのがなんとも立派である、駄目な方に。

「・・・・・・・・・任務失敗よ」

どうやらリツコの心配は杞憂だったようだ、だって全く信頼されていないし。

赤毛の少女を感心したようにまた、さらにミサトに呆れたように眺めていた。

「ふーん、何失敗したのミサト、それに他のチルドレンは居るんでしょここに、私の出迎えに来ないなんていい度胸しているじゃない」

ついでに現時点でチルドレンが本部にいないことを知っているのは覇道側を抜かせばゼーレと国連上層部(これはゼーレが外にもらさぬように圧力を掛けているが)、ネルフ支部にさえ伝わっていないアスカが知らないのも無理はない。

更に本部が横領容疑で監査されていることも末端のパイロットであるアスカは知らない、こちらは支部も監査対象になった為、各国間で有名な話になりネルフは国連議会に出るたびに出資国から針の筵のような嫌味や中傷を浴びているが。

結果、冬月の執務室には積み上げるほどの胃薬が新たに購入された、何気にストレスの多い人である。

というわけでリツコとしては普段なら返答に困る質問パート2。

といってもネルフの立場なんてやっぱどうでもいいから正直に吐くリツコ。

もしかしたら嘘をつかないでいい今の常態は、今のリツコの心理状態はかつてないほど安定に保たれているのかもしれない。

この正直さが後々アスカの助けになるんだが、芽生えた猜疑によって。

まぁ、そこまで深くは考えていないんだろうな、リツコは。

早く言えばちょっとした親切と悪戯心だろう、勿論アスカの今後も考えってはいたんだが、それほど影響するまいと以前の彼女を知るものとしては、本人としても後々自分のちょっとした行動の影響を驚いていたりする。

それでも信じやすいように細心の注意を払った言葉だったが。

「ファーストチルドレンとサードチルドレンなら本部にはいないわ、今は貴女が本部唯一のチルドレンね」

それを怪訝そうに返すアスカ、そりゃそうだろうが。

「何で、今どっか行ってんの」

普通そう考えるわな、本部にいない=本部でないどこかにいると。

ネルフ自体に在籍していないとは思うまい。

それにそれなら自分の到着に顔を出さないのも頷けるというものだ、いないものまで出て来いというつもりは幾らなんでもない。

で事情説明。

まぁ、誇張表現つけてペラペラと、普段押さえつけられたストレスか、それとも鬱憤晴らしか聞かれてもいないことまで喋っている。


曰く、本当にネルフにチルドレンがアスカしかいないこと。

曰く、ファーストチルドレンは司令部の失態で国連の監査が入ったとき問題視され現在は国連に保護されていること。

曰く、他にも国連保有の使徒殲滅機関が存在しネルフは絶対の存在でないこと。

曰く、サードチルドレンも司令部の失態で確保出来ていないこと。

他にも諸々と。

ちなみに、一々アスカが突っ込んではいたが面倒くさいので割愛する、大体はご想像通りであるだろうから。

つまりは驚いて、喚いて、ネルフの醜態を扱き下ろしたのだ。

当然であろうが。

この時点でネルフが立派な組織であるという彼女の中の大前提がちょっと崩れている。

幾らなんでも横領容疑に、虐待(これは確定)で国連に目を付けられた組織は同じく14の女の子としては自分を預ける気にはなりにくい。

それが彼女の全てがあるネルフであろうとだ。

一度芽生えた猜疑は彼女の盲信を解く鍵穴に成り得るには十分なものだった。

「アスカ、私が今言ったことはあまり公言しないようにね、事実ではあるけど、吹聴して回ってもいいことないわよ、一応貴女も知っていたほうがいいと思って話したけど、ミサト辺りが聞くと認めようとせずに激怒するわよ」

正しくその予想通りになるだろうなぁ。

アスカも今聞いたことがネルフとして愉快なことであるとは思わないのか。

神妙な声で。

「判ったわよ、でも本部ってどうなってんのよ、大体サードを訓練無しファーストが重体で、来るの判ってんならその前にあたしを呼べばいいのに、何考えてんのよ」

いやまさしくその通り、シンジをいきなり呼びつける前にアスカを呼び寄せておけば少なくとも指揮権をいきなり奪われることもなく、対外的評判を地の底まで落とし込むことも無かっただろう。

と言うか普通そうする。

只単に、髭の計画で初号機を使わなければ甚だ拙かっただけだ。

でももし暴走しなかったらどうするつもりだったんだろ、髭の執着の原点である初号機は永遠に失うことになるんだが、まぁ考えてはいないだろうが。

この男自分の計画はすべからず上手くいくと思い込んでいる節がある。

「そうね、何を考えているのかしらね」

知っている癖に。





ついでにアーカムでは瑠璃やウィンフィールド、覇道家の使用人は仕事をせっせとこなし。

チアキとウエストは仲良く怪しげな発明、一応鬼械神関連を悦に入りながら開発し。

九郎とアル、シンジにエルザ、アリスン、エンネアは魔術師としてのお勉強。

未だに発展途上らしい、どこまで行く化け物共。

ついでにレイはあちらこちらに顔を出して何故か可愛がられているらしい、最近自然に出てくる微笑が癒されるとか何とか。

主にライカさんの教会にいることが多いが。

九郎達の戦闘訓練のときはライカが出張るときもあるが、なお戦闘の時、どうもライカは性格が変わります。

やっぱり数日に一度は姫さんに九郎が拉致られ、最近さらに指揮官としての講習まで追加され帝王学を学ばされていた。

お帰りの時には瑠璃は何故か艶やかな雰囲気を纏い、九郎は少し疲れていたが。

瑠璃にとっては九郎との逢瀬が何よりのストレス発散らしい。

普段の激務で結構ストレスはあるのだ瑠璃は。

ちなみに帝王学の教官は瑠璃。





時間は経って、第三使徒戦から三週間、第四使徒来訪の日。





では戦いの幕を開けよう。

来訪するは神の御使い。

迎え撃つは天使を模った紅蓮の鬼、もしくは神の模造品。

少女が少年が、男が女が立ち向かう。

愚者と賢者、魔術師に知将。

外道の知識を持って、知の力をもって。

対するは四番目の御使い、昼を司る天使シャムシエル。





さて、最近どうも干されている気がしてきたんだけどねぇ。

第二幕が開幕だ、今回も僕が語り部だよ。

迫り来るは、空を這う異形、いやはや天使というよりは怪異、美学がないよ。

だが、君には感謝しているんだ。

僕の退屈を紛らわせる喜劇で悲劇の幕を上げてくれた、愚者は踊り、狂人は叫びだす最高の舞台の。

コメディアンたちは自分たちがコメディアンと知らず観客である僕を精一杯持て成すために醜態を演じる。

まさにここは楽園だ。

戦場という名の楽園、僕を楽しませるためだけの箱庭だ、僕の疼きを静める遊郭に等しい。

この愚者の楽園は。

嗚呼嗚呼、愉快だこれからのことを考えると愉快だ興奮が冷めやらぬ、思い起こすだけで性器が湿り、体が火照る、吐息が荒ぶるよ。

この狂える舞台に招待有難うだ、ネルフにゼーレの老人達、いつか心持のお礼をさせてもらうからね。

さらに君たちが愉快になれるように、さらにさらに僕を楽しませてくれるように。

さぁさぁ、でも今回からは美貌の少女、紅の髪の戦士が愚者の楽園で剣を執る。

さて彼女は僕を愉快にしてくれるピエロなのかそれとも愚者を糾弾するヴァルキリーなのか、まぁそれを決めるのは僕ではない彼女だ、更なる喜劇に加えるスパイスか、それとも悲劇を香らせるハーブか。

愚者の細か、己が胸に抱いた激情で駆る戦士か。

何に化けるのだろうね彼女は。

この救いのない残酷なショーで振り分けられる役割では。

何を演じるだろう。





嗚呼、幕が上がる。

主演女優が叫ぶ、この愚かな戦いをさらに愚かにする為に、さらに面白くするために。

狂態を狂態で演じ、醜悪を醜さで演じる、さらにおぞましくするために。

狂った狂ったロンドを。





戦場に降り立つ紅の戦鬼、狂人の命を受け愚かな指示通りに動くのさ。

指揮者は主演女優、穴倉から喚き散らし、己が願望を成就しようとする。

欺瞞に欺瞞を重ね、その滑りのいい口から溢れ出す、罵声、怒声、罵詈雑言。

その嬌声がさらに場を盛り上げる、戦場を死地へと塗り替える。

賢者の助言を無視し、狂人の囀りは死地を煉獄へとさらに様相を変える。

苦しみの野へとね。

ぼくは傍観者、観客に過ぎない。

では悲劇で喜劇の開幕だよ。

死の満ち溢れた、残酷な喜劇の。










To be continued...


(あとがき)

4話書きあがりました、また中途半端ですけどその辺はご容赦を、ちょっとお遊びも入っているし。
で今回アスカ登場、第四使徒の直前です、リツコが魔術師候補、アリスン魔術師です。
個人的には本文に書いたリツコの魔術師養成講座(教官アル)がかなり楽しそうになる予感です。
次回出撃するのはシンジ君。
マスターテリオンは男、女どっちで出すか考え中です。



(ながちゃん@管理人のコメント)

sara様から「無垢なる刃金を纏う者」の第四話を頂きました。相変わらず凄いテキスト量・・・恐れ入ります。
ミサトの基地外は狂ってますね。読んでいてイライラしました(笑)。
また降格でしょうかね?早々にリツコに見放されてしまっているし・・・。もはやネルフには味方がいないんじゃ・・・あ、まだメガネ君が残っている?
リツコがネルフを離脱(?)するとは、ちょっと意外でしたね。
レイのことで、今まで良心の呵責に苛まれていたんですねぇ・・・彼女。
リツコがこれからのネルフでどうケジメをつけるか、注目したいです。
あと、シンジ君って、モテモテなんですねぇ。やっぱりと言うか・・・。段々と九郎色に染まっていくのでしょうか?(笑)
今回、アスカが出てきましたが、どういう位置づけになるのか、(上げるにしろ落とすにしろ)これからが楽しみです。
(今話を見る限りでは、あまり酷い目には遭いそうにない雰囲気でしたが・・・どうなることでしょう?蚊帳の外?)
皆さん、作者様に応援・感想メールを送って、どしどし次作を催促しましょう〜♪

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