第八話 誘拐+逆襲+蹂躙
presented by sara様
さて、前回恐らく完璧に完膚なきまでに結果が失敗に終わりそうな、それでいて相手の怒りを買いそうな愚かな計画を立てていた、他称髭の計画だが。
何と言うかは始める前から問題がありまくった。
何と言うか、簡単に言うと。
写真添付の報告書をみればわかるが、これシンジの周囲の人間(のものである。
重ねて言うがシンジの周囲の人間のものなのである。
しかも女性ばかり、これが何を意味するか。
報告書の写真には、シスター服の金髪の巨乳お姉さんやら、内気そうな少女やら、ゴスロリ服の美少女コンビやら、やたら肉感的なスーツを着た眼鏡の美女やら、“暴君”と呼ばれる年齢不詳の子持ちやらが写っている。
一応、男、といっても男の子なのだが、も数人写っているが。
何と言うか壮絶な顔ぶれというか、米軍特殊部隊に拳銃一丁で立ち向かうほうが何ぼかマシな面子である。
恐ろしいまでに最悪の人間ばかりをピックアップしたというか。
追記するとシンジの周りで一番人類に近いと断定できる女性は某○○○○宅の関西系眼鏡美人メイドであった。
これが何を意味するか。
先ずはっきり言って、ネルフ一週間後あるかなぁ。
作者の率直な感想であった。
もしかしたら失敗してネルフまで人質を護送出来ないほうが幸せかもしれない。
色々と。
恐らく成功させたときのほうが被害はでかいと考えられる。
どうも最近干されている感があるがナイアだよ、前回なんてここの出番も無しだ。
酷いと思わないかい、悲しいな、寂しいな。
嗚呼、陰鬱になるよ、嗚呼、惨めだよ。
そこに居る肉塊じゃあ憂さも晴らせやしない、幾万回蘇らしてひき肉に変えたかそれでも僕の不満は。
晴れやしない。
(作者が血塗れで痙攣しています)
ふぅ、それでも仕事はしないとね、また干すって言うんだよ作者。
勿論、思いつく限りの外道の知識で凄惨に残虐に冷酷に丁寧に仕事をすることを了承したよ。
では、語り部を務めよう。
愚鈍で、無知で、無謀で、無策で、無恥で、傲慢で、何より馬鹿な計画を。
何よりも、そう何よりも救いの無い物語を語ろうじゃないか。
何も実らない無駄な舞台を演出しようじゃないか。
嗚呼それでも、子宮の奥が震えている、笑いが臓腑よりこみ上げてくる。
溜まらない、我慢できないよ。
嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚。
ハハ、ハハハ、ハハハハ、ハハハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
愉快、愉快、愉快、愉快。
今回は最高に愉快だ、だってそうだろう崩れ去った愚かなシナリオではなく。
書き換えられたコメディでもない。
僕が筋書きの知らない、全くの即興劇、全くの未知、それが描く喜劇、それが描く結末、そして舞い散る血。
結末がどれだけ滑稽になるのかそれとも憤怒が満ちるのかも、絶望に彩られるのかも。
何もわからない即興劇、何が起こるかわからない即興劇。
その結末に、どんな凄惨で苛烈で嗜虐的な、それでいて滑稽な週末が来るのか、それを思い描いただけで心が沸く。
その即興劇にどれだけの血が流れ、どれだけの死を振りまくのか。
悲鳴が、懺悔が、慟哭が、響く、響くのか。
そして描かれたラストに、どれだけの歓喜が詰まっているのか。
驚いたよ、あまりの愚かさに、顔が緩む、あまりの可笑しさに。
愚者は本当に生かす価値があるみたいだ、あの愚かな醜い豚は僕の飢えを退屈を停滞を妨げる最高のエッセンス、最高の舞台役者。
可愛い、可愛い、快楽の贄さ。
そして。
最高の喜劇役者。
こういうハプニングは、本当に楽しいねぇ。
ねえ、メインキャスト諸君。
最高の快楽を、最高の愉悦を、最高の悦びを、僕の為に僕の為だけに演出してくれ。
君たちの悲鳴と、驚嘆と、絶望と、憤怒で彩って。
筋書きの定まらない物語で。
君たち自身の書いた即興詩で、策を巡らせ、愚を散らせ。
それが未だ眠れる女獅子の逆鱗に触れることとなる。
未だ目覚めてもいない天使王の。
冷徹で冷酷で冷静な、魔術という権力のみを保持したその権力を遺憾なく振るう“暴君”を。
黒いドレスの絶対者に。
怖い、怖い、彼女たちを怒らせるなんてねぇ。
君たちをあえてこう呼ぼう。
勇者と、その資格があるじゃないか。
それこそが相応しい、蛮勇か、無知か、それでも龍にナイフで挑むような事は。
ドレだけそれが愚者でも勇者と名乗れる愚か者だろうからね。
それに今回は僕もむかっ腹だ、僕の機嫌を損ねるなんて。
僕も舞台に降りようじゃないか。
本質より外れたイレギュラーの即興劇更なるイレギュラーも舞い降りさせてもらうよ,愚かな主演達。
宴会と言うかなんか狂った催しから数日後。
大十字九郎が人間不信になって、ちょっと危なげにひざを抱えて自室で、自分の人生についてや、存在価値を真剣に悩んだり、裏切った弟相手に呪いごとを口ずさんだり。
傍目からは完全に怖い人。
因みに女装するたびにこの症状が出るのでそれほど構ってもらえないのだが、今回はちょっと長めに精神的に患っている。
事情を知るものとしては微妙に哀れを誘うが鬱陶しいことには違いない。
時たま、本当に自分がマトモか本気で疑っている素振りがあるし、大声で騒ぎ出すから。
で、同居している同居人がいい加減に切れて鬱陶しいとばかりに九郎の頭を殴り飛ばし、半強制的に彼の精霊が街に連れ出した。
原因の一因にはコイツもいるんだが。
そんなことは宇宙の彼方に追いやって、彼女の恋人と言うかマスターを強制的に復活させ。
やたら張り切って、約束だとばかりに前回の約束を果たさせようと宝石店に突撃。
目を輝かせた俗に塗れた精霊がショーケースの中の指輪を眺め、何を考えているのかたまに身悶える姿が妙に可愛らしかったりするのだが。
恍惚とした顔で、なにやらぶつぶつ呟き、隣に立っている九郎の顔を見上げたりしては顔を赤くしたりしている。
加えてそれは見たことも無い甘えた様子で、2万ドルと書かれた値札を付ける指輪を強請り、何とか高すぎると抵抗するも。
「何でもいいと、言ったのにのう」と上目遣いに見られ、拗ねた様な悲しんだような表情をされあっけなく陥落、勿論意図的にその表情を出している。
しつこいようだが、九郎はアルにこの手の表情をされて断った例が無い。
アル・アジフはどうやら自分のマスターのコントロールが完璧であったようだ、というか九郎が結果的に言いなりになるのはいつものことだろうが。
気がついたときには最近やっと持てるようになったクレジットカードで支払いをしていたりする。
只、過去最高に幸せそうで、妄想全開な精霊を見て九郎も、まぁいいかと思ったのは余談であるが、基本的にはアルが満足そうなら多少は目を瞑るようだ。
この時点で九郎はもうアルから離れられないだろう。
その後、九郎は高級レストランでアルと向かい合ってやたら高そうな料理の前で茫然自失の席についていたりする。
何故か宝石店を出た後、そのままアーカムでも有数の、姫さん御用達のレストランまで行き(何故か予約されていた)。
勿論九郎の意思ではなく、いいように言われて、アルにつれられて来たのだが。
着くなり、アルが慣れた様子で注文を済ませ(アルの最近の趣味は美食です、よく姫さんと一緒に食べ歩きをしていたりする)、満面の笑みで食前酒を楽しんでいたりする。
時たま恥ずかしそうに指輪と九郎を交互に眺めている様子がいじらしい。
結果九郎は文句を言うことも出来ず、と言うか幸せそうな様子を台無しにすることは出来ず。
九郎とアルの目の前に目の飛び出るような金額の料理と、ロマネコンティなるなんでこんな高価な葡萄の発酵させた液体があるのか些か疑問だか、それを楽しんでいた。
少なくともアル・アジフは。
アルとしては婚約指輪を貰ったお祝いらしい、支払いは当然九郎だが。
この日の九郎の出費は限りなく3万に近い2万だったらしい、勿論ドルで。
で、今現在そのテーブルで女装の件とは別の意味で落ち込んでいる九郎、どうやら貧乏性としては一日で日本円で350万に近い金額を使い果たしたことに心が痛むらしい。
そこそこの給料を姫さんから貰っているとはいえ十分大金には違いないだろうから、確かに鬱にでもなるかもしれないが。
以前ならばこの男が4・5年は生息できた金額であろうから、情けないことに。
そんなこと気にせず前回に続き、前回と違うのは実際にその指輪がある、指輪を眺めては馬鹿高いワインを啜っている美少女、何故か着ている物もやたら金が掛かってそうだ、デザインはゴスロリだが。
この服は出かける前から来ていたのでレストランによるのはアルの中では規定事項だったのかもしれない。
装飾こそそれ程ではないが、生地、仕立て、デザイン、まるで誂えたようにアルに似合っており、容姿と相まってどこかの令嬢のような居住まいだ。
追記すると、婚約指輪と称して指輪を買う際店員に九郎が変な目で見られたのは当然の話である、それはもうロリコンというか性犯罪者を見る目で。
アルが身悶えしているときの女性店員が裏でコソコソはなしているときの目って言ったらもう、完全にペドフェリアを見る目だった。
既に九郎はその手の視線に慣れているようだが、慣れるのも問題あるが。
後日九郎は姫さん、シスター、エルザ、インデックス、ナイアに同様に指輪を強請られたそうな。
人これを自業自得という。
で、いい加減諦めて(出費を)、九郎もアルと談笑しつつ豪華な夕食を楽しんでいた、気にしてもしょうがないし。
それはもうご機嫌なアル、この世の幸せは妾のものにあるのじゃというような様子が、九郎の気を晴らしたというのもあるのだが。
基本的にこの男は目の前の精霊、第一主義なのだから(他の女性陣がどうでも言い訳ではなく、アルは特別扱いに近い)。
幸せそうな、アルの様子で痛い出費も、まぁいいか、と思えてしまったようだ。
やっぱり絶対確実に九郎はアルから離れられない。
ただ、心の中で今夜は復讐しちゃると頭の中でかなり問題のあることを考えていたとか。
体操服とかH下着とか奉仕プレイとか考えている辺りロリペドの称号は不動だろう。
「のう、九郎、こいつらは何じゃ」
「さぁ、どっかの馬鹿じゃねえか、あんな店から出てきたし、お前の服装も金もってそうだろ、物取りだろ」
いや、物取りには見えんだろ。
店を出て、近道しようと裏路地に入って暫くすると、どうもそっち系のやばそうな雰囲気の男性陣に取り囲まれ、しかも銃器や鈍器で武装しているし。
ここまで用意周到な物取りが居たら嫌だ,と言うか明らかに違う。
動きや仕草が素人離れしている、ここまで足音の一つも立てていない。
間違いなくその道のプロだろう。
なおこの時点でいい気分のアルの機嫌が危険レベルまで急降下、なんとなく恋人同士っぽい空気をぶち壊しにされて殺気すら放っている。
そろそろデートを終えて今夜は妾が頑張ろうと心に決めているぐらい雰囲気的には盛り上がっていたので邪魔者に対する感情も凄まじい。
そんなことは露知らず銃を突き付けながらアルを捕まえようと腕を伸ばした時点で。
アルが切れた。
「この、無礼者がぁッ!!!!」
加えて先日の心の傷が未だ残っている大十字九郎、しかもこいつもやっと回復した気分をぶち壊されて怒り心頭、なにやらよからぬことも考えていたようだし。
但しこの二人襲われているということに対する恐怖感はこれっぽっちも無いようだが。
今更人間相手を恐れるようなヤワな人生歩んでいないのだ。
手当たりしだいに呵責ない暴力を振るい、魔力をぶつける。
結果、有無を言わせず全治半年の入院コースを量産していた、勿論九郎たちは傷一つ負っていなかったが。
因みに、何か襲撃者達が攻撃を加える前に前口上のようなものを喋っていた気がするし。
途中で、助けてくれとか、何とか、恐怖に駆られたのか、大の男が、しかもソッチ系の方が半泣きで叫び声を挙げていたがその辺はどうでもいい。
どうせその手の叫びなど聞きとげられる可能性は無いんだから。
今現在、足や腕が妙な方向に曲がっていたり、妙に焦げているやつを踏みつけながら、談合している様子を見ればよくわかるだろう。
「こいつら何用じゃったのだろう」
どうやら不快だという理由で地獄まで後一歩まで送ったらしい。
「さぁ?」
その軽いノリは日常茶飯事化ですかあんたら。
いや、あまり違和感が無いが、正当防衛だから殺しても問題ないだろうし
「妾は襲われる覚えが無いぞ」
「俺も無いぞ、でも聞けばいいんじゃないか、こいつ等に」
ちらっと九郎が現在自分の靴の下で呻いている強面もオッサンを見る。
その言葉をニヤリ笑いで返して。
「同感じゃな、妾の気分を害した償いはしてもらわねばならんし」
と言っても、先程ボコられた恐怖なのか、初っ端から苛烈だったのか、妙な笑みを浮かべる美少女が怖かったのかあっさり口を割ったが。
なんとなく逆らうなと生物の本能としての感覚で分かったのかもしれない。
只、アル・アジフを誘拐しろという命令しかされていなかったようだし。
勿論アルが何であるかなどの情報は一切知らされていない、ただの下っ端として動いていただけのようだ。
まぁ、当然なのだが、直接の襲撃者が知らなければもし失敗しても依頼人に被害が及ばないのだから。
なお、ちゃっかり、襲撃者の財布の中身は九郎がパクって、その気分直しとばかりにアルお気に入りのデザートをたんまり買い、そのまま覇道邸へ踵を向けた。
アルを狙うような連中が居る時点で軽視するようなことではないと判断したらしい。
なんとなく期待と言うか、湧き上がりつつあった情欲を発散できなかった精霊は不満気であったりするが。
後日その路地で十数名の精神的負担を大量に背負ったマフィアっぽい人達がアーカム病院に担ぎ込まれたらしい。
肉体的損傷よりも心の傷が重く、幼児退行をしたものが半数。
回復をなしたのはその残り半数でそれでも、物騒な仕事につけるような状態ではなかったらしい。
何故か美少女恐怖症になるものが数名いたとかいなかったとか。
どうやらこの程度があっさり喋った拷問の結果らしい。
同時刻、同じく路地裏。
今日も今日とて職務放棄して、俗界で遊び狂う這い寄る混沌、既に邪神としてのプライドは無いかもしれない、いつもどおりの肉感的なスーツを纏った美女、ナイア。
本来食べる必要も無いくせに、ちゃっかり三食きちんと食べ、さらにデザートを食べ決まった時間に眠る邪神。
無貌の神、千の異形とか呼ばれるので姿は自由自在の癖に何故か健康優良な生活を送る、時たま九郎に夜這いを掛けたりするが。
どこかの精霊以上に俗世に染まりきっている。
ライカの教会で夕食をご相伴になり。
子供達と戯れてから、世界残虐事件の話をして戯れると言うのはどうかと思うが。
結果ライカにどつかれて。
一応自宅として経営している古本屋、客は滅多に来ないというかそこにある本が必要な客が殆ど居ないというべきか、最大の要因はその店主が殆ど店に居ないということだろう、いつも客の居ない店に帰宅していた。
もう既にこの邪神については何も言うまい。
刹那的快楽主義なのか、今の生活が気に入っているのか、そのうちヨグ・ソト−スを通り抜けて外なる神の誰かが突っ込みに来るかもしれない。
既にご近所で美人さんでとおっているぐらいなので既に自分の役職を完全に忘れ去っている可能性が高い。
というか邪神だという自覚があるのかどうかすらも。
大体態々歩いて帰る必要も無いくせに歩いて帰っている辺りがその辺を窺わせる。
最近、以前より人間臭いのだ。
で、今現在なんというか拉致られていた。
その気になればデモンベインとだってやりあえるであろう邪神があっさりと、九郎達を襲った連中とよく似た輩に取り囲まれて車に叩き込まれていたりする。
今は気絶して(気絶した振りで)どこかに運ばれていた。
勿論、何か考えがあってとかとかそんな高尚な理由があったのではなく、只単に面白そうということで拉致されたのだが。
皆殺しが面倒くさいというのもあり、殺人をすると九郎が怒るというのもあるのだが。
この好奇心と言うか何と言うか、一応後で役に立つのでよしとしよう。
拉致られたことについては、散々、エンネアとインデックス、アル・アジフに貶された、逆に九郎や姫さんライカには珍しく邪険にされずに褒められたようだが。
後日、役得とばかりに気を失っていると思われているナイアの豊満な乳を触った馬鹿が呪いを受けたらしいが、死んだほうがましというレベルで何とか生きているそうだ。
「僕の体を貪っていいのは九郎君だけなんだよ」
との本人コメント。
因みに拉致帰還後九郎に甘え倒し、久々に全身に寵愛を受けたナイアがいたりする。
どうやら役に立ったご褒美らしいのか、それはもうめ一杯に。
コスチュームはチャイナ服で女として肝心な場所を露出させ腰を痙攣させ,何やら白い液体を顔に掛けられて恍惚とした顔でその液体をを掬って舐めていたとかなんとか。
その後、水着、軍服、袴と色々なコスで九郎とナイアの睦み合いがあったとかなんとか。
後何故か目隠しとか手錠とかそんな類の小道具も。
この二人滅多にしないが、したらしたで両者とも底なしなので、かなりハードプレイになるのかかなり長時間ナイアの鳴き声が響き渡ったらしい。
最後のほうでは。
息も絶え絶えで意識すら朦朧としたナイアが犬のような姿勢で九郎に覆い被されて、女を貫かれている時には。
「九郎・・・・君、もう駄目だよ、赦して、赦して、これ以上は駄目、死ぬ、死ぬ、死んじゃう、もう中は駄目ぇっ」
ナイアの方から降参したようだが。
それでも不服な九郎はナイアに胸や口で色々してもらったようだ。
九郎の下半身を必死で愛撫するナイアがいたとか、それでも最後は女を貫かれ気絶するまで責められたようだ。
邪神にすらあっち方面で勝利する、大十字九郎、何者。
その後暫くナイアが九郎を恐れるような欲情するような目で、以前よりも頻繁に九郎との逢瀬を求めるようになったようだが。
どうやらその時は九郎、お礼の意味を込めて、かなり手加減なしだったようだ。
同時刻、九郎宅周辺。
その九郎宅の近くというか隣のウエスト邸に居住する女性、チアキ。
今は普段のメイド服ではなく通勤時に着るラフなもので、頭の中では。
“今日の夕食なんやろ”とか考えていた、因みにこの小説内では比較的マトモなキャラ、飽くまで比較的ではあるが。
ついでにウエスト邸の台所はエルザが仕切っている、何気に戦闘だけではなく掃除炊事等の家事をこなす汎用性の高い人造人間。
チアキが家事が出来ないわけではない、メイドさんなのでたいていのことは出来るはず?メカオタクだが。
追記すると現在レイは覇道邸でリツコのところに居るが、近々ウエスト邸に戻ってくるらしい、このおかげで報告書にレイのことが書かれなかったのは僥倖である。
もしレイの所在地を知っていればどんな手段を使っても髭はレイを手に入れようとするだろう。
未だにゲンドウはレイが自分を見限っていないと思い込んでいるが。
もしくはそう思い込んでいたいのかもしれない、計画の要たるレイに拒絶されたら全てが水泡に帰し、何より亡き妻の面影を持つレイの拒絶が、このある意味対人恐怖症の自業自得馬鹿が認められるわけがないのだから。
ついでにエルザに料理を仕込んだのは意外なことにウエスト、もとよりどんな理由で教え込んだのかは不明、女の子の嗜みとかいいそうだ、親馬鹿だし。
で、夕食のメニューを考えつつ、帰路についていた、彼女の義理の妹の食事はそれなりに美味なのだから。
で、もう説明するのも面倒くさいので、省略すると。
また同じような手法で、取り囲まれたところを。
少しも慌てることなく、ハンドバックに入れていた妖しげな道具を地面に叩きつけ、別の道具を相手に向けて発射し、残りを素手で叩きのめして、何故かサングラスをしていたが。
今現在最後まで意識を保っていた男の胸部を踏み砕いていた。
因みに使った道具はウエスト謹製痴漢撃退グッズ(覇道の傘下にて販売中、無駄に高性能なので警備員も使用しているらしい、商品名ボンバー君シリーズとエドゲイン君シリーズがある、医療は他の市販品とは比べ物にならない威力なのだが)、発光手榴弾(音の出ないスタングレネード)と電気銃。
人間強烈な光に網膜を焼かれると、確実に蹲り視力が回復するまでマトモな行動は取れなくなる。
勿論普通の女性と思っているのでそんなもの使われるとは露にも思っていないのでもろに喰らってしまったようだ。
のしたのは、ウィンさん直伝、○○○○お仕置き用ボクシング。
無駄に頑丈な○○○○のせいで、そこそこの腕前になってしまったらしい。
それで急所という急所を滅多打ちにしたのだ。
(経験者談、格闘技の経験者の打撃は例えどれほど体重が違っていても、急所に決まればあっさり無力化できます。
相手が経験者といえど、特に顎や鳩尾、肝臓、肺の臓器系、特に呼吸器系などや喉ならば女性でも一撃のノックアウトが可能です、素手ならば硬い頭部よりも喉や脇腹がお勧め、手を痛めますから。
非力な人は背後からの攻撃は不意打ち以外はあまり効果はありません、背中のほうが防御力が高いので)
「何や、一体、物騒やなぁ」
それで済ませてしまう貴方が物騒です、と思わないでもないが。
一応職業的にこういう犯罪をやらかす種類の人間相手に。
「エルザ、腕上げたなぁ」
「ありがとうロボ、こっちのパンはどうロボ」
そのまま立ち去り、数十分後にはエルザ特製のハンバーグシチューに舌鼓を打っていた。
どうやらパンも自家製らしい。
エルザ、もしかしたらライカさんに次いで家事能力が高い、性格からライカさんよりマシだろうから女性陣上位に入れる、良妻賢母の素質あり。
何気にお嫁さんの資質は高いかもしれない。
因みに放置された襲撃者は。
一応チアキが覇道邸に連絡し、今頃襲撃者は連行されているだろうが。
このお陰で、襲撃者の元が覇道にバレたりする。
なおチアキは恐らくこのSSのなかの女性キャラでは下から見たほうが早い部類の対人戦闘能力しかもっていない。
これで最弱に近いってどうよ、と思わないでもないが、プロの襲撃者を退けておいて。
因みに襲撃者と調査をした組織は別で、依頼主つまり外道は覇道関係者だということを襲撃者には伏せていた。
ゲンドウは情報が不十分の資料を渡し、多額な金を払って詮索を封じたらしい、自腹で。
もし覇道関係者だとわかったら誰も依頼を受けないからではあるが。
この実行犯の組織は覇道が相手とわかった瞬間依頼人のことをペラペラ話したそうなこの手の仕事、早々依頼人のことをばらしたりはしないものだが。
信用とかプライドとかより命を優先した結果だった。
アメリカで覇道に逆らった時点で、どうせ仕事もなくなるんだし、潰されるのは目に見えている、抵抗が少ないほうが姫さんの機嫌を損ねんで済む。
肝心の情報をよこさなかった髭に対する組織の嫌がらせでもあるが。
最後にライカの教会。
基本的に普段は真面目で人格者なライカさん、ここでの生活はかなり規則正しい。
躾に厳しいわけではないが、それを薦めているし、違反すると悲しそうな顔で、なにやら不穏なことを呟くので基本的には子供たちは逆らわない、と言うか逆らえない。
10時過ぎには就寝が子供たちには言い渡され、年齢的には子供ではないエセル、エンネア、ルルイエも(只こいつらも基本的にはお子様時間で生活しているわけで、あまり問題ない)。
インデックス(マスターテリオン女性版の名前、根拠は某小説よりだがあまり関連が無い、只単に教会に住んでいて、知識量が凄そうだから、意味としては禁書目録)はというと、彼女は夜は居たり居なかったり、どうもフラフラ出歩く癖がある、数日帰ってこないのもざらなので誰も気にしていないが。
今夜は居ないほうだ。
たまにライカ相手に晩酌をしていることもあるが、話題は自分の母君の暴れっぷりに付いて。
いうなれば愚痴だが。
因みに今夜はエセルは教会に居る、大体エセルが居ないときはインデックスもいないのだが。
目的地が違うことは誰も知らなかったりする、ばれると少女たちが大暴れするはずだし。
そんなこんなで、今までと同様に襲撃されるのだが。
どうもここが一番狙いを付けられたらしい大人二名しかも女性で後は子供のみ、一番手薄で楽にことが運べそうだ。
見た目だけなら。
よって、最大の人員をもって襲われた。
只、ここが一番最悪のような気がするのは作者だけだろうか。
ここの実情、知っていたらなんとなく覇道に喧嘩売ったほうがましのような気がする、いやマジで。
最大の人員といっても、渡された資料から(表面上の外見的情報のみです、実情は一切調べられていない、因みにこの教会はアーカムのマフィアから危険対象扱いされていたりする、色々な事情で)かなり舐めまくった状態で、こいつらはアーカムを根城にしている組織ではない。
ま、子供と女だけだから楽勝とでも踏んでいたんだろうが。
地獄を見ることも知らずに可愛い連中である。
はっきり言っておくが、ここで死ねたら幸せである、死ねない場合は自分から死を望むような状態に送り込まれる可能性がかなり高い、九郎君が姫さんにおもちゃにされる確率ぐらいに。
五体無事で逃げおおせる確率は逆に天文学的に低い、ライカさんがマトモになる位に。
奇妙な例えであるが的を得ているような感があるのは作者だけだろうか、確実にいえるのはここに侵入しようとしている人間の人生は既に終わっていると言うことだけだ。
と言うか終わったほうが幸福。
ここで死ねるほうが幸福だということは確実なのだ。
唯一、襲撃者側がとった手段で有効な手段は人海戦術。
それこそ30に近い人間を使って襲撃した点。
そして出来るだけ多くの人間を拉致しようと少数に分けそれぞれの人間を狙い、残りの人間は教会の周辺に待機、速やかな逃亡の準備を整えていたと言うところだろう、この準備のお陰少なくとも延命出来た者が何人か居るようになったのだから。
そして準備が整ったところで一応はそれなりのプロが事前調査を行い教会の住人が自室に引き上げてから、音も無く窓に忍び寄り、それぞれの窓から侵入を試みた。
先ず結果を言おう、女性を襲った襲撃者、死んではいなかった、生きているとも言いづらい、と言うかこれがホントに生ける死者じゃあないのかと疑いたいぐらい。
と言うか誰か”妖蛆の秘密”でも持っているんじゃないかってくらいボロボロ、呼吸はしているが、逆を言うと呼吸しかしていないとも言える。
マトモに人間としての人生は歩めないと言う意味ではゾンビ決定だろう。
いやだって、呼吸しているだけだし。
本気で。
一生ベッドの上か、良くて半身不随、手足の切断ぐらいだろうか。
早く言うとライカさんを襲った襲撃者、なんか変な風になっているし。
部屋中のものが投げつけられたのか襲撃者の周辺凄まじいことになっていた、箪笥や本棚(中身有り)、果てはベッドまでが投げつけられたのか、部屋の状態が惨状といっても言いぐらいになっている。
そこまでならまだいいのだが、普通かぐなど投げられないとか言う突っ込みはおいといて、その投げつけられた家具が一つ残らず木っ端微塵、ぶち当たったであろう壁がクレーターのように押し込まれている。
どんな速度で投げつけたんだ家具を、と突っ込みたいほどに、砕け散っている。
それを受けた襲撃者が生きていたのを非常に不思議に感じる。
跳ね返った破片ですらショットガンの直撃並みの威力でぶち当たった筈なのだが、よほど打ち所が良かったのであろう。
全員、全身血塗れで、ありえない方向に手足が曲がり、大量の血が頭部から流れていたり、腹に破片が刺さっていたりするが、一応生きている。
多分。
恐らく。
後数分は。
即死できないだけ、逆に不幸かもしれない、無駄に苦しむ時間が長くなっているだけなのだから。
因みにライカさん、目が覚めたときいた複数の男が痴漢かレイパーだと思って投げつけたらしいのだが。
今は怖い目つきで机を持ち上げていた、肩で息をついて。
何故にメタトロンにならんとですか。
単純に動転していたらしい、あとライカさんは殲滅戦や奇襲、つまり白兵戦には長けているが襲撃者などを感知する能力はそれほど高くない、最近平和でもあるし、完全に平和ボケしていたともいえる。
武道家としてのスキルの高いサンダルフォンならば察知できたかもしれないが。
一応プロの襲撃者の気配を掴むことが出来なかったようだ。
まぁ、直ぐに何事かと部屋を飛び出して子供たちの部屋に戦士の表情で向かうライカがいたが。
真面目になれば格好いいお姉さんなんですこの人。
エセルの部屋。
やたらに機能的優先の部屋、どうも可愛げがない、只良く調べるとシンジグッズが発見できるそうだが。
この部屋が一番スプラッタであろう、そこらに転がっている人間らしきものが散乱しており、本当に生きているのかと疑いたいレベルだった。
一応現時点では全員生命活動を行っていると言うレベルにまでは損壊していたが。
因みにそこまでされたのはエセルの逆鱗に触れたからである。
本日、一度もシンジと会話をしていなかったエセル、手持ちの携帯電話で寝る前の会話を楽しんでいるところに無粋な侵入者である。
入ってくるまで会話に夢中で気がつかないエセルもエセルだと言う突っ込みがあるが。
まぁ、話が佳境と言うか愛の言葉でもささやこうかと言う気分のところに入ってきて、いきなり携帯電話を打ち払い、銃を突きつけている無礼者。
エセルたん完全に切れた、それはもう完璧に。
何よりも優先させる会話を台無しにした侵入者に対して。
この時点ではまだ理性のようなものは残っていたが、魔力で吹き飛ばし。
このとき何事かと手近に居る一人の脳を強制スキャン、廃人一歩手前に陥る手段だが無礼者に掛ける温情など無いとばかりに。
ただこのときスキャンされた人間,このとき廃人になっていれば多分幸せだった。
で、結果、この教会の人間を攫えという指示を知り。
エセルは容赦と言う言葉を捨て置いた、アル同様ルルイエ同様孤独と言うことを嫌悪するようになったエセルにライカの教会の人間は紛れも無くファミリー(シンジ関連では容赦無いが)、自分の孤独を癒すかけがえの無い存在だ。
それを傷つける人間を赦すほど、エセルは白状ではなくそして優しくない。
そしてエセルはアルと同様外道の集大成、そしてエセルは正義や悪などではない、自分に牙を剥く愚か者にその知識を振るわないような禁忌など持ち合わせていない。
故に、いまだ衝撃で呻く襲撃者に対し。
使い魔たる魔犬を放ち喰わせた、生きたまま、死なぬように細心の注意を加えて。
愚かなことを考えたことをじっくりと後悔する時間を与えるために。
それが例え何も知らない下っ端だったとしても。
「ぐぎゃああぁぁぁっ、はぁっ、助けてくれ、がぁつ!!!
来るな、来るな、来るなぁ、ひっ、ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
こだまする断末魔の咆哮。
細心の注意で捕食される人間。
結果、死ねない死体の完成。
細心の注意で牙を立てられ、腕を食いちぎられ、頬肉を貪られ、指を咀嚼される。
それを冷徹な目でエセルは眺めいまだ食事の続く部屋を後にし。
その扉を閉めた。
中から血を啜る音が響く部屋の扉を。
エセルは他の子供たちの部屋(非戦闘能力者限定)に向かった、守る為に。
背後で声にならない悲鳴を受けて。
氷のような冷徹な表情で歩む姿は悪魔のように。
その麗しき肢体は漆黒の天使のように。
エセルは優しく、そして優しくない。
エンネアの部屋。
妙に少女趣味と娘に突っ込まれたときはその娘は自身の力をすべて振り絞って逃げそれから一ヶ月帰ってこなかったと言う逸話がある部屋。
確かに少女趣味だが。
で、この部屋の襲撃者。
窓に張り付いて一秒で速攻にエンネア気づかれていた,長い人生のうちで身につけた技能なのかもしれない。
部屋の窓が普通ではない音を発した瞬間目を覚ましていた、普段なかなか起きないくせに、こういうときは一瞬で覚醒できるらしい。
で、室内に入ってきたところで問答無用で魔力を叩きつけ、乙女の部屋に無断で入る時点で万死に値するらしい。
エセル同様、有無を言わせ頭脳の強制スキャン、やっぱり廃人一歩手前の状態に追い込まれている。
容赦の無さならエセル以上かもしれないエンネア、只彼女はエセル以上に苛烈で、そして今ある家族を大事にしていた、インデックスもアリスンもライカもジョージもコリンもエセルもルルイエも。
自分を取り巻く人間をとても大切にしていた。
願っても望んでもかつて得られなかったかけがえの無いもの、唯一にして無二なるものとして。
娘も友も家族もそれを取り巻くもの全て。
だからエンネアはエセル以上に優しくない。
だからエンネアはえセル以上に残酷だ。
殺すことなど一切考えず,そのままスキャンを続行脳神経の一部を意図的に焼き切り。
それを全員に施す。
結果として永遠に続くであろう割れんばかりの偏頭痛を起こさせ,一日も続けば発狂するレベルの痛みを際限なく流す、治療は不可能、死のみが救済となる苦痛を与える。
だが神経を焼切られて手足も動かない。
自殺と言う逃避も赦さない。
数分後に死ねるエセルのやり口よりよっぽど残酷なやり方だ。
愚者に死という温情さえ与えない。
既に生きた人形となったスクラップには目もくれず。
そのままエンネアは隣の部屋に突撃。
そこでは襲撃者に恐怖し震えていたアリスンとマスターを守ろうと魔力障壁を張って防御しているルルイエ。
どうもこの二人は戦闘向きの性格ではない、アリスンも魔術師としてはフォワードではなくディフェンスタイプ。
何より気性が戦いに向いていない。
ルルイエも殆どマスターが居なかったせいか経験値が圧倒的に足りない。
まぁ魔力だけならエンネアと対して変わらないアリスンなのでそこから供給を受けるルルイエの防御陣は対戦車砲ですら楽に防ぎきるだろうが。
最悪無理矢理でもルルイエはマギウスになってアリスンを守ろうとするだろうし。
室内に飛び込んで。
エンネアは問答無用で吹き飛ばし、先程と同じ処置を施す、見た目出血もないのでアリスンを怯えさせることも無いのでなかなかに有効のようだ。
神経が焼き切られているので頭部以外の手足が動かない、あまりの痛みに悲鳴すら上がらないからだ。
襲撃者は痛みで自我すら歪む無限地獄に叩き込まれて、永遠に感じる数日後には発狂死するであろう地獄を体験しているようだが、今は苦悶の表情でのたうっているだけだ。
そのまま襲撃者には一瞥も向けずエンネアはルルイエに「よくやった」とばかりに優しげに微笑みかけ、頭を撫でてやる。
ルルイエもほっとしたように障壁を消す。
そのままエンネアはアリスンを抱きしめてから抱えあげ,ルルイエと共に部屋を飛び出した,恐らく,ライカとエセルが向かったであろう部屋に。
エセルがジョージとコリンの部屋の前に立ったときには既にライカ、エンネア、アリスン、ルルイエの4人が集まっており。
既にジョージとコリンの姿は無く、争った後が見て取れ無いことから見て寝たまま連れ去られたのだろうが。
実際のところ襲撃を受け気付きもしなかった男の子二人はあっさり捕まり、薬物でさらに深い眠りへと誘われ、そのまま連れ去られたのだ。
唯の男の子なのだから抵抗せずに捕まるほうが下手に抵抗するよりはよっぽどマシだろうが、相手もプロなのだったら、誘拐対象に無用な苦痛を与えずスマートにことを運ぼうとするだろうし。
態々騒がれるリスクを負う必要などないのだから。
実際襲撃者のほうも自分に割り当てられた仕事が済むと即座に教会を脱出し既に待機している仲間と合流。
連絡の取れない他の仲間は見捨て既に逃亡していた。
元々事前に取り決められた時間を越えた場合は見捨てると取り決めだったのだが。
所詮金で集められた人間であるので、事前の取り決めどおりに動けない人間などあっさり切り捨てられる。
一応通信機に連絡は入れ返事が無かったので、その時点で最低限の成果を獲得できた襲撃者側はあっさり引き上げたのだ。
誘拐を実行している組織としてみれば、これはマフィア間の抗争などではなく、純粋に利益を得るためのビジネスに過ぎないのだから、無駄に危ない橋を渡る必要などない。
その冷徹な判断が功を奏したのか。
それとも襲撃者の人間が仕事の後どこに向かうのかを教えていなかったのが良かったのか。
すぐにライカとエンネアが跡を追ったが、夜の街の中に紛れた車は追跡が不可能だった。
彼女達は戦闘はエキスパートかもしれないが追跡やその他の技能のエキスパートではない。
まぁ、腐ってもプロと言うわけで逃げる準備だけは入念に行っていたらしいし、その手のエキスパートもいたようだ。
その後、未だ息をしていた襲撃者に対してエンネアとエセルが再度スキャン、取れるだけの情報を持って覇道邸へと赴いた。
暫く後の覇道邸。
瑠璃、九郎、アル、ライカ、リツコ、シンジ、ウエストが集っての談合。
正確には状況が判明したので対策会議だった。
因みにこの時までナイアが拉致されたことは把握されていない、何をしても殺せそうに無い相手の心配などしないし、ナイアは基本的には瑠璃達にて護摩としては考えられていない。
放っといても最近実害が無いので放置されているのが現状のナイアの立場なのだ。
ナイアは今回結構役に立つのだが。
瑠璃がチアキより得た襲撃者とエセルたちの持ち込んだ情報、それで組織そのものを割り出し、その組織につながりのあるマフィアに連絡をつけ聞き出すのはアメリカの表社会、裏社会を牛耳る覇道にとっては造作も無いことだった。
ゲンドウはいまいち覇道の力を過小評価している傾向があるが、アメリカでは覇道が白といえば白であり逆らう対象ではありえない。
アメリカ政府でさえ強く出れない絶対者なのだから。
ゼーレはその辺を理解して表立って覇道と争う姿勢を明確化しない、自分たちに匹敵しうる存在の怒りを買って増幅するような行為は慎むのだ。
傲慢だが彼らは愚鈍では無い。
曲がりなりにもヨーロッパをアフリカ中東を支配しているのはゼーレ、傲慢な思想こそ持つがその知恵は侮ることが出来ない。
南北のアメリカ、オセアニアを支配する覇道と正面から戦争する気など無いのだ。
彼らはリスクとリターンを計算する経済人なのだから、所詮虎の威をかる狐でしかない髭とは違う。
自身が被っている虎が何よりも傲慢は姿勢を赦し続けた結果、この愚者は全てを見下げる悪癖がついていた。
そして他者に怯える男は一度身についた傲慢さを持ち続けた、自分が絶対者であり続けるために、他人の視線に怯える必要が無いように。
故に覇道を過小評価した。
それが大いなるミス。
まぁ、当の馬鹿はそのミスに気付くことも無いだろうが。
その世界規模で力を振るえるマフィアでさえ、傘下の組織を締め上げ依頼人を聞きだし、その組織も覇道の名を聞いて素直に答えた。
そして先程、マフィアの幹部クラスからの情報提供である。
髭は自分の身分素性を明らかにはしなかったが、組織も愚かではない、それなりの調査で髭の情報は握っていたのだ。
それを包み隠さず提供してくる。
覇道は絶対者ではあるが暴君ではない、それを知っているマフィアは素直に従うことが得策と判断し、裏のプライドを捨てて情報提供してきたのだ。
それに瑠璃が礼を述べ、新規事業の参入を約束させ通信を終えたのが先程のことであった。
因みに覇道もマフィアとは繋がりがある、瑠璃とて外道な行為は嫌うがマフィアとうまく付き合うことは必要な行為だ、マフィア全てが外道ではないし、表向きは大企業の幹部がマフィアの幹部だったり、組織そのものを大企業の看板を指しているものもある、今のはそういう表の付き合いの謝礼である。
無理を通したのだからギブ&テイク、それなりにうまくやるコツだろう。
裏のビジネスをやるマフィアも基本的には利益さえ上がればいい、アメリカでは覇道に屈するのは恥ではなくそれが原理なのだから。
そんなこんなで得た情報、はっきりとゲンドウを指していた。
既に子供達とナイア(このとき初めて瑠璃達はナイアまで拉致されたのを知ったが)がネルフの諜報部に引き渡され日本に向かったことまでが判明。
今、人質は機上だろう。
ナイアが拉致された理由はかなりの精度で言い当てられていたが、どうも性格を完全に周囲に掴まれているようだ。
まぁ現在のナイアを知っている一同はこれで人質の心配を薄れさせたのだが。
今のナイアは自分の生活が気に入っているようだから、それを壊そうとするようなことは歓迎しないだろうと、第一今のナイアは九郎に嫌われるようなことはまずしない。
つまりはジョージやコリンの命の保障はついたというわけだ。
ナイアの心配はこれっぽっちもしていないが。
あの女を殺し尽くすにはデモンベインでは足りないかもしれないのだから、そんな存在は心配のしようが無い。
その気になれば数分でネルフを崩壊させかねないと言う不安はあるが。
これでライカ達の不安は多少解けた。
それで以後、その後の対応の相談に移ったのだが、これの詳細はまた後で。
只この部屋のメンバーの全てがそれなりに残酷で武力行使も辞さない種類の人間だと言うことは確実で。
この自分達に宣戦布告をしてきた愚者を赦す温情など欠片も持ち合わせていないと言うことだが。
で、翌日。
日本、ジオフロント、ネルフ日本本部、あいも変わらず鬱陶しい陰鬱な部屋の司令執務室。
薄暗い部屋に座している一人の男と、その傍らに立つ老人。
その二人の前にあるモニターに写る一人の見目麗しい女性。
ネルフ総司令六文儀ゲンドウと副司令冬月コウゾウ。
国連軍特務部隊“ブラック・ロッジ”司令、国連軍元帥覇道瑠璃。
男と老人は無表情で。
美女は冷たい微笑を持って機械越しで対峙する。
愚鈍な策略をもって。
冷静な叡智をもって。
「如何しました、六文儀ゲンドウ、早朝よりいきなりの通信、礼儀がなっていないようですね、穴倉のボス猿は」
口火を切ったのは瑠璃からだった。
因みに、日本では昼間と言うか夜に近い時間だがアメリカでは明け方。
常識的な人間ならば連絡を避ける時間だ。
緊急の場合は除くが。
瑠璃曰くのボス猿がそんなことを気にする人間ではなく、手札を手に入れたことで、それを元に交渉と言うか脅迫しようと連絡を入れた開口一番の瑠璃の台詞が。
この痛烈な皮肉だった。
「覇道元帥、いきなりそれは・・・・」
冬月があまりの言い様に怒気を露に文句をつけようとするが。
「身分を弁えなさい冬月特務准将、私は元帥、私はこの場での貴方の発言を赦していません、それに相応の態度で応じなさい。
組織の上部が基本的な軍隊の序列も知らぬわけではないでしょう、それとも学者上がりの素人には規律が理解できないのですか。
あのような女を作戦部長にしているぐらいですから上もたかが知れたものでしょうが、貴方も部を弁えなさい。
それに階級に閣下をつけなさい、新兵でも知っている常識でしょう」
冬月の反論にも痛烈な皮肉を侮蔑を混ぜて返す瑠璃。
確かに階級的には三階級も違うのだ、礼節を尽くすのは当たり前なのだが、今までネルフの権威で頭を下げられても、下げたことの無い経験ゆえか。
傲慢に接することが赦され続け日常ゆえか。
階級的には上の人間でさえ公然と見下してきた弊害、敬意と言うものを忘れた行動。
その結果が。
自身の半分も生きていない小娘に無知を謗られ、礼節を正される屈辱を今味わっている。
子供のように見える小娘から、見下される視線で嘲るような口調で、侮蔑の言葉を浴びせられる。
尊大な椅子に踏ん反り返った人間が我慢しえるか。
否。
所詮電柱も髭と同じ人種、その傲慢に気付くことなく、瑠璃に心の中で怒気をぶつけている。
その怒りがどれだけ理不尽で、ドレだけ同じ怒りを振りまいてきたかそんなことには考えが及ばない。
只、瑠璃としてもこの侮蔑調の口調、ワザとやっているのだが、自分に宣戦布告するような人間におべんちゃらを述べるような可愛い正確を瑠璃はしていないのだから。
喧嘩を売った以上は高く買ってやるつもりだ、それはもう高く。
相手が拒否するぐらいに。
「貴方達の無礼を謗っても実りが有りませんので、本題に移りましょうか、何用です」
飽くまで挑発的に、侮蔑的に、目の前にいる男達を見下げる態度で。
嘲笑を滲ませて瑠璃が口を開く。
「ファーストチルドレンとサードチルドレンのネルフへの移管を要求する、そちらにいる赤木博士も返してもらおうか」
何の前振りも無く言いやがったよ、この髭。
そのある意味分かり辛い要求を瑠璃は簡潔に。
「ファーストチルドレン綾波レイを貴方達ネルフに移管することは出来ません、彼女の肉体に残された虐待の痕跡、そして彼女の証言より、ネルフの組織だった虐待は明白です、後日あなた方に査問委員会が開かれるでしょうね、ネルフ総司令。
サードチルドレンとは誰のことでしょうか、ネルフにそのような人間はいないはずですし、私どもも知りえません。
赤木博士は確かにこちらにいますが、預かりは米国政府の客賓です、そちらに交渉を。
何より先程も申しましたが、貴方は礼儀と言うものを学ばれたほうがよろしいかと六文儀准将。
あ、申し訳ありませんわね、貴方はまだ少将でしたね、そうまだ礼儀を弁えない原始人にはそれでも過ぎたる身分でしょうが」
なんか一言を数倍にして返している。
なお後日査問委員会でゲンドウは晴れて准将、冬月は一佐に降格されいる、はてさて何処まで階級が下がるのか。
ギリッ。
小娘にいいように言われているゲンドウが歯を強く噛み締める音が響く、悪鬼のような表情で。
今の言葉の中に受け入れ難い内容がありすぎたのもあるのだが。
レイが虐待を証言、それはゲンドウのことが心から離れたことを意味し、と言っても事故の真相を知った時点つまり日本を離れる時点でレイはゲンドウを見捨てているのだが。
既に最後の取替えの利かないレイ、拒絶されれば未だ成せると思い込んでいるシナリオが瓦解する、それよりも妻の似姿を持つレイの拒絶など。
そして赤木リツコの米国政府の客賓扱い。
これは幾ら覇道を脅してもリツコがネルフに戻ってくることは無い、ゼ−レの支配下でもないアメリカ、しかも国連内での発言力の強い米国に今のネルフの制限された特務権限ではどうしようもない。
造反を行った奴隷がのうのうと生きていることが我慢できなかった。
勿論原始人扱いにむかついたと言うのもあるのだが。
「それに何より、何故私達があなた方に協力をしなければならないのです、獣と付き合う趣味は御座いません、礼を尽くせぬ輩と会話するほど暇ではないのですよ」
既に怒りを煽ることが目的じゃないかと言うぐらい痛烈である。
いや目的なんだけど。
「先程からそちらが無礼なのではないか」
いい加減怒りが募った冬月が反論する、それほど侮辱に耐えられなかったようだ、ゲンドウですら耐えているのに、辛抱強さが無い。
「そちらが非を正そうとしないので、これでも人語の通用しない畜生相手には礼を尽くしているつもりですが、それとも自分たちが畜生ではないとでも」
老人と愚者の怒気が高まる。
既に皮肉ではなく正面からの悪口雑言、公然たる侮辱。
男は威圧感で相手を恐怖させ、隠したと思うものに侮辱されたことは無く。
老人は、その好々爺とした外面と影で振るう権力で自分への侮辱を赦さなかった。
男たちの主観では、この場の主役は自分たちなのだ、目の前にいる女は自分たちの手札に対し自分達の慈悲を願う存在のはずなのだ。
この女が、個人的に、拉致を命じた教会に寄付金(その名目の給与)を払っているのは調べがついていた。
彼らの関係者であるのは間違いないはずなのだ。
それならばこのような高圧的な態度ではなく、負け犬の目をしているはずなのに、そういう思い込みで持ち込んだ会談のはずが。
それなのに、跪くどころか先程の侮蔑。
この傲慢な男達には既に我慢など出来様はずも無い。
特に常に上位に立っていなければ気のすまない男は、完全に頭に血が上っていた。
自分が寄り上位に位置するための手札をもっているのにそれに従おうとしない女狐に理不尽な怒りを憎悪といってもいい感情を持って睨みつけていた。
既にお姫様の手のひらの上で踊っているとも知らず。
自分の指し手の全てが読まれ手いるとも知らず。
最悪のがん細胞を内部に招き入れているとは知らず。
ちょうどその頃、司令執務室の近くの人の寄り付かない部屋、部屋の前に数人の黒服が見張りのように立っている。
その部屋の中で。
男の子二人と、美女一人、先程のがん細胞トリオが。
結構楽しそうに遊んでいた。
少年二人が目を覚ましたときには目の前に知り合いのお姉さん、かなり奇妙な性格を保有しているのも子供たちも知りえているが。
因みに正体は説明したが、どうも理解しているかはすこぶる妖しい。
それでも普段食卓を共にするナイアがいるので、それほど怯えず、ナイアはナイアで能天気にしているので、現状を知った子供たちも震えることは無かった。
元々部屋の内部にも見張りはいたのだが、何故か全員出て行ってしまったのは余談だが。
ナイアが鬱陶しいとばかりに少しばかり身に潜む狂気を向けただけなのだが、それで顔を青くして出て行った。
根性の無いことである。
瑠璃の部下なら慣れてしまって笑って済ませるレベルなのに。
瑠璃の部下が押しなべて世間の常識を超越していると言う意見もあるが、それはどうでもいい。
子供たちはナイアを相手に遊んだ後。
今はナイアが世界残虐話や、世界恐怖体験などの別の意味で子供たちを怯えさせている最中。
ナイアとしては、それはそれで結構楽しいのだが。
退屈だった。
せっかく来たのに、うろつき回る事もできやしないと。
目の前の子供たちを放っといて外に遊びに行くこともできないと、幾分マトモなことを考えながら。
このいい加減子供たちを震わせて遊びのにも飽きたナイアがろくでもないことに考えを巡らしていた、本当にろくでもないことを。
その結果。
目を輝かして何かを思いついた表情は妙に生き生きとしていたそうな。
「畜生だと」
コールタールのような怨念じみた怒気を纏い、普段より30パーセント増量のガンつけで瑠璃を睨みつける髭魔人。
完全に頭に血が上っている、いつものポーズで組まれている両の手は硬く握り締められ。
その体は怒りに震えている。
だが、続く瑠璃の声、目の前の瑠璃の目を正面から見ようともしない臆病者の視線などで瑠璃は揺るがない。
氷のように冷たく響き渡る声が、さらに言葉を紡ぐ。
「違いますか、私の関係者の子供を攫い、女性を攫った、これが公人としての立場の高い人間のすることでしょうか、そんな輩をなんと呼ぶか知っていますか畜生と呼ぶのですよ、人道から転げ落ちた最低の人間のクズを、この下郎が」
冷たい恫喝、完全な侮蔑。
蛆虫を見下げる人間の視点で瑠璃が糾弾する。
何もかも見透かしていると言う目で、虫けらを見る目で瑠璃が告げる。
だが畜生どもが驚いたのは。
自分達の手札のはずの台詞を先に言われたこと。
確かに相手にその手札の存在は知りえているか、感ずいているものとみなしていて。
だがこのように相手の手札となっているものとは。
完全にこの男のシナリオとやらからは外れた状況。
この男たちはまだ理解していなかった。
そのような手札が既に何の意味も持たないことを、そんな手札が既に価値を失っていること。
自分たちがどれだけ愚かなことをしていることを。
だが、表情を変えずに髭が続ける、このポーカーフェイスは流石と褒めてもいいだろう。
内心では暴風のように動揺が駆け巡っているはずなのにそれをおくびにも出さないのだから。
「何のことだ、知らんな、不要な疑いは止めてもらおうか」
と、嘯く。
だがそんな臆病者の仮面など踏みつけるよりたやすく瑠璃が剥ぎ取る。
「では、この貴方の依頼した組織の人間が送りつけてくれた資料はどういうことでしょうか。
身分を偽って依頼したようですが、その組織はしっかり貴方の裏を取っていたようですよ」
再び、ゲンドウが歯を食いしばる。
詮索させないように金を上乗せで払ったのに、裏切られ、依頼人のことまで暴露する組織に怒りを募らせていた。
(なお後日、報復しようとしたがその組織は既に無かった)
これでは完全に道化だ、瑠璃に踊らされる。
臍を噛み、沈黙を貫くゲンドウ。
「沈黙は肯定でしょうか、知らないと主張するのもよろしいでしょうが。
今一度確認します、誘拐はしていないと」
そのゲンドウの態度に構わず、どちらかと言うと冬月に向けて最後通牒を出す。
冬月は見透かされているのに冷や汗を流しながら。
ゲンドウの方を見るが、ゲンドウは何も反応しない。
つまりは、しらばったくれろと言うことだ。
「さぁ、何のことやら、知りませんな、そうだな六文儀」
微妙に表情がこわばっているがこちらも嘯く、何気にゲンドウに振っているが。
「そうだ知らん、だが、その人質も今頃はさぞかし綺麗な花が贈られているだろう、そう赤い花がな」
脅しを交えて、ゲンドウが返す。
暗に、これ以上自分たちを刺激すると人質を殺すと揶揄を交え、ニヤリと口元で笑って。
だが、瑠璃は。
「そうですか、では貴方方は、誘拐をしていない、人質も取っていないと言うことですね」
そう返す。
「そうだ」
それをゲンドウが返答する。
そして、瑠璃の唇が僅かに本当に僅かに笑みを形作り。
「では、調べさせて貰いましょう」
そう宣言した。
そのときネルフ本部の数箇所から爆発音が響いた。
侵入者。
数人の侵入者が、隠れることなく正面からネルフを襲撃した。
純白の装甲に包まれた天使の似姿の女性、メタトロン。
漆黒の装甲に包まれた天使の似姿の男性、サンダルフォン。
拘束具で全身を包み、口にギャグを嵌めた少女、暴君。
銀色の髪、漆黒のボディスーツ、オッドアイを持つ偉丈夫、肩に可愛らしい美少女のマスコットがいるが、マスター・オブ・ネクロノミコン。
漆黒のドレス、青い瞳、漆黒の髪、魔性の少女、ナコト写本。
漆黒の魔術師のローブに身を包み、顔を隠した少年、もう一人のマスター・オブ・ネクロノミコン。
そして緑色の髪を持ち魔術的な衣装を身に着けなにやらゴテゴテと装備(○○○○謹製)をつけた少女、人造人間。
米軍一個師団でも落とせそうな面子による強襲、勿論鬼械神無しで。
デモンベインとアイオーン、リベル・レギス(エセルの機体)とネームレス・ワン(エンネアの機体、所持する魔道書は無銘祭祀書)、ドレが最強だかわからんが、4機が挑めば本気で米国と正面戦争出来る。
で、何故これだけ大所帯なのか、ここまで必要ないだろというかはっきり言うと必要ない。
武力的に制圧するのも、皆殺しにすることもだ。
皆殺しは流石に拙いが。
で、現在それをやってしまいそうな面子がいるのだ。
メタトロンことライカ、完全に切れて目が据わっている。
時たま「ジョージ、コリン」と呟いているのでやっぱり心配なんだろうが。
これの押さえ役が最近やっと太平洋横断の疲れから復帰したリューガことサンダルフォン。
ヤヴァイ目をしている姉を見た瞬間に逃げようとしたが、事情が事情で泣く泣く参戦。
今の姉に逆らうのが怖いと言うのもあるが。
最悪この暴走しかけている姉を体を張って止めなければならないのは彼なので、漂う悲壮感は尋常ではない。
そして暴君の姿となると容赦と言う言葉を無くすエンネア(どうもエンネアと囚人は同一ではないようだがこのSSでは同一ということで)、しかも現在ライカと同じ状態。
彼女のストッパーは大十字九郎とアル・アジフ、能力的に彼しか不可能というのが一番の理由。
最強最悪の魔術師“暴君”を止められる術者はインデックスがいない今彼しかいない。
本来突っ走るのが九郎で、それを周囲が諌めるのだが、今回は立場が逆だ。
そして無表情で冷徹な輝きを目に浮かべる精霊の押さえ役が、シンジ、エルザコンビ。
最悪リベル・レギスを召喚した際アイオーンで止めるのが主任務、どうもエセルはマスター無しでも魔力を振るえるので厄介極まりない。
早く言うと教会メンバー三人が暴走しかけており残りの4人が手綱をとれと言うことらしい。
因みに派遣した姫さんの勅命。
三方向からの襲撃、先ずは天使チーム。
一番単純な手を使っていた、壁と言う壁を切り裂いて吹き飛ばして突き進んでいる、一応生体反応は感知しているので人死には出ていないが。
このネルフ本部内で最も魔力の高い場所に突き進んでいた、つまりはナイア目掛けて。
目に留まる扉を吹き飛ばし、壁を爆破し、侵入を防ごうとするシャッターを切り裂く、迎撃システムをガトリングで打ち落とすまるで破壊神の行進のように。
破壊の傷痕が残る、サンダルフォンは時たま現れる保安部などを手を抜いて相手をして、メタトロンにはやらせなかった、どう見ても力加減ができそうに無い。
地道に姉が大量虐殺者にならない努力をするリューガ君でした。
彼にやられた人間は、数箇所の骨折か、内臓破裂程度で済んでいるのだから。
チーム魔術師。
一向はゆっくりと歩いているんだが、壮絶だった。
九郎は恐る恐るとついていくだけ、今目の前の少女に余計なことを言えば殺されるとわかっているようだ。
「なぁ、アル、なんか壮観だよな」
「ああ、九郎、そのなんだ、シュールと言うか、この前見たホラー映画に似ている気がする」
目の前に次々と現れる保安部、現れるたびに、凄まじい物理的力を持たない瘴気を暴君が叩きつける。
“暴君”の身に潜む瘴気に比べれば微風のようなものだろうが
圧倒的力を撒き散らし行進する。
魔術と言う圧倒的権力を保有しそれ以外を完全に捨て去った“暴君”。
故に魔術と言う権力を思いのままに行使する王。
まさしく王の行進、“暴君”の名に相応しい覇者の行進。
“暴君”の進む道に転がる人間の道飾り。
“暴君”が振りまく権力に魔術を解さない、精神の弱いものはそれに中てられるだけで、蹲り、頭を抱え断末魔の声をあげ救いを、慈悲を求め苦悶の声を上げる。
地べたに這い蹲り、“暴君”に許しを請う、発狂しそうな狂気を振り撒く王に。
それが“暴君”の歩く道。
まさしく地獄の亡者の中を闊歩する魔性の絶対者。
“暴君”の名に相応しい地獄の風景。
発狂しそうな狂気の中、死を与えないで行進する。
一応、死なない程度に力を絞った結果だった。
後日暴君に対峙した人間の、五割が発狂し、残りの五割も精神に問題を生じ、職を辞することになるのだが。
精神的にはスクラップにしていた、只殺さないだけだ。
そう“暴君”は怒っていた。
その怒りの余波を浴びて、余波だけで地獄を作り上げる。
九郎達はその姿を冷や汗交じりにながめ追随していたりする。
子供たちは心配だが、どうも目の前の被害者に同情する九郎。
上の暴走で、精神的に廃人にされているのがあわれでならないらしい。
止める気はこれっぽっちもないので同情もあまり意味が無いが。
子供たちのほうはナイアがいる時点でそれほど心配はしていない。
行動原理はわかるが、いまいち考えていることは判らない最近自覚すら失っている邪神だが、なんとなく守ってくれるだろうと予感ぐらいはしている九郎だった。
アルは既に目の前の夜叉との関わりを諦めマスコットサイズで、首から鎖をつけて提げている婚約指輪を眺めていたりする。
やることが無いので暇つぶしのようだ。
時たま、降りたシャッターを暴君が吹き飛ばす音をBGMにして。
何故かクトゥグアとイタクァ(九郎が持たなければこの名前は正しくないが)を暴君が下げていたりする。
時たま降りてくる隔壁などを吹き飛ばすのに使っていた。
魔術師、精霊、人造人間、つまりは混成チーム。
外見年齢の平均は一番低そうなのだが。
修羅が居た。
悪魔でもいいが。
“暴君”が王の行進ならば、こちらは鬼の行進、目に入るもの全てを蹂躙する鬼の行進。
しかも二匹。
早く言うと“暴君”と“天使王”を掛け合わせたといってもいい。
黒の少女は、視界内に入った瞬間に魔力を迸らせ、迎撃に当たる人間に抵抗を赦さない、グレネードランチャークラスの反撃では爆風さえ微風に感じる程度にしか効果を及ぼさない防御結界。
ありとあらゆる監視装置もともに破壊している。
やっていることは暴君と大差ない、その手段が物理的か心理的かの差があるだけだ。
物理的に人間を自身の前に屈服させている。
もう一人の鬼は厄介だった、と言うか本来の役割を忘れているというか、製作者同様目的と手段を取り違える素質でもあるのか。
どうにも黒い少女に感化された節がある。
判りやすく言うと、この侵入を果たして暫くは手加減していたようだが。
今現在。
「特攻ロボ、進撃ロボ、神風ロボ、見敵必殺ロボ、神様にお祈りは済んだかロボ。
ロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボ」
人造人間、術式魔砲「我、埋葬にあたわず」を連射していやがった、なんかエセルの気迫に追随したように。
今現在屍山血河を築いて、道を開いているが、何故か一人も死んでいないのは神に奇跡だろう。
将来的に人間としてのスクラップは大量輩出されそうだが、今現在は生命活動を行っているので暫く死にそうではない。
シンジはと言うと、ちょくちょく口を出して、自制心を取り戻させる役に徹していた。
さて、その頃ネルフの裏の代表、恥の代名詞、影の部署の部長(因みに作戦坊外部)、葛城作戦妨害部長はと言うと。
虎の子の陸戦隊を無理矢理率いて(特務曹長の癖に)、侵入者の迎撃に当たっていた。
モニターで見た姿に見知った人影が映っていたから、彼女曰くの義憤を漏らして、やたら重装備で突撃していた、勿論義憤と言うのは彼女の主観であるが。
一応突っ込むが火炎放射器や分隊支援火器、榴弾などは室内戦で使うものではない。
因みに、一目でまともじゃないと判り、保安部の人間が紙の兵隊のようにのされているのに、何の考えも無く真正面から。
そしてその姿を、侵入者の前に晒した瞬間、引き連れた兵員の3割が吹き飛んだ。
「あんた等、大人しく・・・・・・・・・・・・・・ふぎゃぁぁっ」
何やら、囀っていたようだが。
第二撃で更に二割、続いて二割。
「ぎゃぁぁぁ・・・・・・・・ぐあっ・・・・・・」
残ったのは最初の3割、開始10秒以内の惨劇だった。
因みに三発喰らっても意識を保っていたのはシンジ達の目の前で豚のように蹲って、今まさに這い起きているゾンビもどき。
作戦妨害部長、改め葛城腐乱死体モドキアル中特務曹長、突撃戦仕様モデル(理由、ゾンビみたく突撃しか作戦立てれないし、行動できないし、ゾンビ以上に対毒性、と頑丈さを保有している為)。
段々に名前が長くなるな。
もしかしたら“妖蛆の秘密”もっても大丈夫かもしれん。
おお、回復したようだ、床に転がっているほかの陸戦隊は骨折やら脳震盪などで転がっているのに。
やっぱりゾンビ。
「この、侵入者ども、いきなり吹き飛ばすなんてよくもやってくれたわね!!!!!
私が死ねば人類が滅びんのよ、いうなれば私に攻撃すんのは世界に対する大罪なの!!
それにそこの緑色の変な髪の小娘、あんた覇道のクソ娘の側近じゃないの。
はっはぁ〜ん、反逆、私らに喧嘩売って只で済むと思ってんの」
やっぱり馬鹿。
いきなり吹き飛ばすって、馬鹿みたいに正面に出てきたのは目の前にいる戯言を吼えている人間だったと思うのですが。
ついでにあんたの変わりは新兵でも務まる。
最後にあんたに喧嘩を売ったわけじゃない。
追記、エルザのこみかめが微妙に引き攣っていた、変な髪といわれたのがいたく気分を害したらしい。
結果。
「五月蝿いロボ、その牛のようなみっともない乳と頭悪そうな顔を隠してから言うロボ、正直うざいロボ。
「「Dig Me No Grave」」」
遠慮会釈も無い砲撃、威力は低めなので、理性は残っていると見ていいが。
断じて言うが人間相手の武装ではない、向けているのが人間かどうかは微妙に疑わしいのだが、と言うか人間だっけとたまに疑いたくなる。
やっぱり、と思いつつ起き上がるのは何故だろう、直撃は避けたのだろうか。
「何すんのよ、分かってんの私が死ねば人類の損失なのよ、攻撃すんなんて何考えてんのよ。
あんたら私が死んで世界が滅びたら責任とれんの。
それにあんたら、さっさとあの侵入者どもを蜂の巣にしなさいよ、この役立たず」
よくもまぁこれだけ雑言が飛び出てくるものだなと感心するところだ、しかも砲撃直後に大音声で。
どうもこの様子からピンピンしているようだ、巻き添えを食らった兵士を蹴りつけながら、未だ残っていた兵士に銃撃を命じる。
どうでもいいが、自分に攻撃してはいけない原理彼女の中ではどのように明文化されているのか。
恐らくは、使徒を撃退する、人類の旗印たる自分には何人たりとも傷つけてはいけないと思い込んでいるのだろう。
大体そんな物騒な火器携えて、反撃されたらそれですか。
戦い舐めてません、といいたい言い草である。
今まで、元同僚に散々麻酔銃で銃撃を喰らっているくせに。
因みに、同僚が足蹴にされた陸戦隊、本来ネルフの犬ではないのだ。
しかも自分より階級の低い牛の命令を聞く道理は本来無い、一応作戦部長の権限を使って引っ張ってきたらしいが、司令の命令とか言って。
実際にはこの女は出動要請は出来ても、現場での命令権など有名無実化している。
それを熟知している隊長は。
無能女の雑音などを無視して行動に移す。
戦力の八割を失った現在、至極まっとうな判断を下した。
因みに隊長の階級は2尉、キチガ○作戦妨害部長の雲の上といってもいい階級差がある。
まっとうな判断とは、早く言うと尻尾巻いて逃げることであるが。
「総員退却、負傷者を見捨てるな」
全員突貫で自滅するなど馬鹿のすることだ、いったん引いて体制を立て直すにしろ、そのまま逃げに去るにしても、今現在逃げること以外することなどない。
部隊の八割が損耗して戦いを続行するような愚か者ではなかった。
命令に従い自力で走れるものはそのまま走り、負傷者は無傷のものが抱えて歩く。
基本的に黒い悪魔のお嬢さんも逃げるものを追うほど暇でもなければ兵士にうらみも無い、彼女の怒りの矛先はこの組織の上層部だ。
その号令を聞いた某牛さん自分の命令を聞かず、攻めるどころか逃げようとする、彼女の観点からの部下。
因みに陸戦隊の隊員は技能レベルが高いので、殆どが曹長、准尉でミサトよりも上か同列、間違っても部下ではない。
それに怒りの声を上げる。
「何処行こうってのーよ、敵前逃亡する気、上官は私なのよ、あんた、勝手に何命令してんのよ。
止まれ、止まれつってんでしょうーが」
と喚くが止まるわけが無い、大体あんた上官じゃないし、もしあんたに命令権あっても直接の命令権持っているのこの場では隊長で、出向と言う形を取っている陸戦隊の戦隊長が上の命令権、牛さんが命令しようと思えば、そちらに通してと言う面倒くさい手順が必要なんだが。
勿論戦隊長はそんな許可を出していない。
軍隊といってもお役人なのだから、その手の指揮系統はかなり硬いのだ。
ここまで率いてこれたのは、陸戦隊にも迎撃義務があったからだ。
だが我が意に従わない裏切り者、牛さん基準に対する謀反に怒りを燃やし、とんでもない行動に移る。
「ちぃっ、この裏切り者がっ!!!
これでも喰らいなさ・・・」
従わない部下、彼女主観、に対する懲罰として、そこらに転がっていた小銃を取り逃げようとする兵士に対して引き金を引こうとする。
しんがりを勤めていた無事な兵士は驚愕に、ある程度この無能牛のことを知ってはいたがあまりのことに反撃できない。
幾らなんでも背後から味方に撃たれるとは思っていなかったようだ。
銃口から鉛弾が飛び出す前に突如飛んできた刃に銃口ごと切断される。
シンジの投擲したバルザイの偃月刀が切り裂いたのだ。
牛さんの右手の指数本ごと。
その時の狙いを付けられていた兵士のシンジを見る表情は敵を見るのではなく感謝が溢れていたと言う。
で、指を断たれた牛さん。
最初、憎憎しげに邪魔したシンジとバルザイの偃月刀を睨みつけ、床に刺さったバルザイの偃月刀を掴もうとして、掴めなかった。
指が無いのだから当たり前だが。
どうやらあまりの勢いで通過した鋭すぎる刃は切られたことを認知させなかったようだ。
「ひっ、あれ、指、指、指、私のゆびぃぃぃぃっ、ゆびぃぃぃぃぃぃぃ。
ひぎゃああああぁぁぁぁぁぁ、痛い、痛い、痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」
遅れてやってきた痛みと出血で錯乱する。
既に無い指を押さえ、転がりまわる、苦痛に歪むその表情は醜い。
その行動が、悲鳴がエセルの怒りを買う。
「シンジ様、この五月蝿い俗物を黙らせます、よろしいですね」
エセルが不快気に表情をゆがめ、シンジに許可を願う。
それは吹き飛ばすだけではなく、破壊する許可を。
「いいよ。やってくれ」
シンジも、自分の味方に銃口を向ける女の生死に興味も無いのか、お座成りに指示を出す。
そして迸る魔力の嵐、まるで蹴鞠のように跳ね跳ぶ牛の体、それが数回続く。
容赦ない暴虐の嵐、圧倒的な力の蹂躙。
最後に床に叩きつけられたときには、荒く呼吸するだけ。
生きているのが不思議だが、しつこく生きていやがる。
止めとばかりにエルザが一発打ち込んでいたがやっぱり生きていた、本当に人間だろうか。
ひそかにエルザが博士に渡せば面白いかもしれないロボ、と考えていたのは余談である。
その頃のナイア。
監禁されていた部屋をあっさり出て、呼び出した兵士を操って悠々自適に出たのだが。
今は子供たちを引き連れて、といっても危ないからと両腕に抱えている、細い美人のお姉さんがすると少し異様なのだが。
子供たちは結構喜んでいたが。
「ほーら、高い高い」
「ナイア姉ちゃん、俺らガキじゃねーぞ」
「でも久し振りだね、こんなの」
本当に和気藹々しているな、緊張感の欠片も無い、場所さえ違えば若いママさんとの仲の良い戯れに見えるかもしれない。
「で、ナイア姉ちゃん、何処向かってんだ」
「迎えが来たみたいだからね、招待してくれた馬鹿に挨拶しないとねぇ、失礼だろう」
どうやら遊ぶ対象が決まったので出てきたようだ。
「迎え、ライカ姉ちゃん」
「うん、そうみたいだね、来る前に挨拶を済ませないと」
子供たちも内心、凄い挨拶なんだろうなぁ、と思わないでもないが。
迎えが来たと言うことが嬉しいのか、ナイアに抱きついていた。
そのままゆっくり歩を進めるナイア一行。
向かうは司令執務室。
司令執務室。
瑠璃の台詞の直後から下から回される襲撃の通知、迎撃を命じたが。
返ってきた言葉は全てが失敗、とめることが出来ず本部施設が蹂躙されている。
瑠璃の映っていたモニターの右半分に表示される襲撃者の姿。
破壊を振り撒く“天使王”、それに付き従う“黒き天使”。
原理の分からない方法で保安部を無力化する“暴君”、伴うは“魔王”。
半死半生で転がる作戦部長を踏みつけて歩く、魔術師と少女たち。
髭と老人は余りの事に言葉を失っていた、何もかもが予定と違うと、シナリオと違うと。
意図していたものと違う、想定していたものと違う、何より違うのは目の前に映る女の表情。
冷たいながらも絶対者を感じさせる表情、その中に蔑みと嘲笑を含めた上位者の態度、それが腹立たしい。
自分の存在意義に近い力が蹂躙される、何の抵抗も赦さずに、徹底的に完全に完膚なきに破壊を振り撒かれる。
何故、このようになっているか分からない、何故自分の思うとおりにならないのかが分からない。
そんな様子を満足げに眺め。
「どうしました六文儀ゲンドウ、顔色が悪いですね、何かありましたか」
笑みを湛えた、冷たい笑みを湛えた女が声を発する、それはもう嬉しそうに。
「これはどういうことですかな、覇道元帥閣下」
冬月が返答する。
「何のことでしょうか、私はそちらに何が起こっているのかも聞いておりませんが」
知らないフリと言うよりは完全に知っていると言うことを分からせる口調。
その上でしらばったくれている、性格悪いね姫さん。
冬月は渋面を作り上げ、それでも口を開く。
「今本部に進撃している人間に貴女の部下と思われるものが居るのですが」
エルザのことを言う、確かに前回瑠璃の同伴としてきているのだ、どうやらシンジの存在には気がついていないようだが。
「それがどうしました、確証が無いのでしたら下賤な疑いはやめてもらいましょうか、先程そちらが申した事ではないですか」
つまりは推測にしか過ぎないのに、何故糾弾できるということだ、先程妖しい組織の証拠などあてにならんと突っぱねたばかりで。
冬月はこちらが先程言った言葉を逆手に取られ、声を詰まらせる。
だがそのようなことに構いわせず、事態は進行する。
その間にもモニター内での侵入者は進撃する。
破壊を振り撒き、前進する、徐々に、目的地はそれぞれ異なれ。
そしてその愚かな玉座に座る愚者が口を開く。
「ふん、それがどうしたので、このまま続くならばある人間を収容している区画ごと吹き飛ばせば言いだけだ、そちらも知らないのでしょうからな、問題ないだろう」
あからさまに脅迫している、これ以上続ければ人質を殺すぞと。
そんな足掻きなど通用しない、そんな脅しなど既に見抜いているとばかりに。
瑠璃の表情は変わらない、内心はどうあれ完全なポーカーフェイスを貫く。
僅かながら緊迫感が高まり。
そのとき司令執務室の扉が開く。
和気藹々とした声を伴って。
あくまでマイペースな女の声、それに続く子供たちの声、未だに抱き上げられていたけどそれが待たばの緊張感を殺ぐ。
「やあやあ、ネルフ司令殿、僕もそろそろお暇しようと思ってね、丁重に迎えてくれたんだ、僕のほうから出向かせてもらったよ、ご挨拶もあるしね、ほらご挨拶」
子供たちに挨拶を促す、まるで本当に客人がお暇するように。
「髭のヤクザ面、ばいばーい」
「卑怯者、姉ちゃんにやられちゃえ」
それはもう愛らしい挨拶を、言い換えると小憎たらしいというが。
そしてそれを満足そうに見て、ついでに戸惑っている髭魔人と電柱爺を眺めつつ。
「いい子だね。
では、総司令殿、副司令殿、非礼な歓待痛み入るよ、薄暗い部屋に押し込めるだなんて、ちっとも愉快じゃ無い、退屈じゃないか僕としてはもう少し趣向の凝らした歓待を期待していたんだけどねぇ、僕の肢体を貪ろうと襲う卑劣漢、それに助けに入る、九郎君ってシュチュを期待していたんだよ。
がっかりだよ、残念だよ、不満だよ」
言いたいことを言っている。
そしてモニターに顔を向け。
「で、お姫様、僕の九郎君とこの子のお姉さんはいつ来るんだい、九郎君と感動の再会、愛の抱擁をしたいところなんだけど」
おどけて語るナイアに瑠璃が苦笑しつつ返す。
「貴女もお変わりになりましたわね、後その子達のお姉さんはそろそろかと、大十字さんはそちらのモニターを眺められたら如何ですか、貴方の言う愛の抱擁とやらは出来なさそうですが」
まことに和やかな雰囲気で会話が進む。
未だ呆然としている二人の男を除いて。
そんな二人に瑠璃が皮肉げに声を掛ける、からかう様に、貶める様に。
「あら、そういえば、拉致は行っていないはずでしたのに、何故、そこに当の誘拐された人物が居るのでしょうか、筋の通った言い訳が聞きたいものですわね」
だが二人の男は口を噤むことしか出来ない、どう言い訳を述べろと言うのだ目の前に証拠を突きつけられて。
男たちは直属の部隊も呼ぶことが思いつかず瑠璃の言葉への反論が出来ずにいる。
自分の思惑通りに進まない事態、思惑通りに動かない人間、それが憎悪となり怨恨に醸成されるが今は時間が無い。
狂気を醸成させる時間が無い、そんな時間が赦されない。
扉を吹き飛ばし、戦車砲ですら防ぐはずの堅牢な扉を吹き飛ばし侵入してくる白と黒の影。
“天使王”と“黒の天使”の入場だ。
メタトロンが脇目も振らずにナイア、正確には子供たちに駆け寄りサンダルフォンが愚者二人の前に立つ。
「ほら、天使様、貴方の子供達だよ」
ナイアがそう言って、ジョージとコリンを渡す、それを受け取り抱きしめるメタトロン。
「良かった、無事、ジョージ、コリン」
「大丈夫だぜ、ライカ姉ちゃん、なんかナイア姉ちゃんが妖しげなことしてたから」(しました、この部屋は入るのも待機している警備兵洗脳して開けさせました)。
「そうそう」
と、結構和やかな感じで進んでおります。
隣の暗い中年コンビとは天と地の差で、サンダルフォンは真面目なのか油断がないのかろくでもない中年コンビを監視していたが。
因みにいつの間にか混成チームも入っていたりするんだが、エセルが子供達のところに飛んでいって微笑んでいました。
で、残りの魔術師チームが何をしているかと言うと。
モニターにしっかり写っていたんだが、どうも愚者たちは気付いていない。
“暴君”は最初から子供達のところに向かっていなかった、メタトロンやエセルに任せたといってもいい。
“暴君”が行うのは報復、行為の代償を求めること、自分たちに手を出した愚か者にどれだけの存在に手を出したかを分からせてやること。
そう、愚か者に身の程を分からせてやる必要がある。
我等が本気だと言うことを骨の髄までわからせてやる必要が。
故に“暴君”は今居る場所、それこそが報復を行う場所、男が何より大事にしているもの。
それに警告を刻み付ける、圧倒的破壊の警告を。
ここはエヴァケージ、赤木リツコより得た情報、あの男がもっとも大事にするエヴァ。
壊しはしない、壊しはしない、だが破壊する、男の目の前で、それを傷つける、蹂躙する、嬲る、踏みつける、壊しつくす、壊れない程度に。
既に“暴君”の掲げる手に握られた自動拳銃と回転式拳銃、“暴君”の魔力を詰め込んだ特殊弾は装填済み。
“魔王”ことマスター・オブ・ネクロノミコンは余波や破片を避けるための防御結界を展開済み、人の身で出しうるには高位の攻撃に巻き込まれぬように“暴君”ともども覆うように展開する。
そして“暴君”が銃口を向ける。
響く銃声、またたくマズルフラッシュ、響く着弾音、一発がエヴァの装甲をえぐる。
自動拳銃の弾は一撃で粉砕しエヴァの肉片を周囲に散らす、回転式拳銃は何度も弾かれても中空で軌道を変え幾度も襲い来る。
弾を撃ち尽くせば、すぐさま交換、再び破壊を加える、それを繰り返す。
先ず手を、顔を、首を、脛を、太ももを、腹を、肩を、胸を、徹底的に破壊の嵐に晒す、飛び散る肉片、はじける装甲、次第に質量を失い、元の姿を現すのが困難になる。
撃ちつくしたときには。
天使の模造品は四肢を失い、頭部を失い、胴体も満身創痍、唯一コアのみが無傷。
引き剥がされた装甲、紫色の装甲がLCLのそこに堆積する、今や拘束具により中吊りになっているエヴァ初号機。
原形をとどめないお人形。
破壊の蹂躙が終わったときには、“暴君”の開くことの出来ない口から漏れる哄笑。
「クフ、クハ、キャハ、キャハハハハハハハハハ、キャハハハハハハハハハ」
響くは無邪気な童女の笑い声、それだけに恐怖を煽る、それだけに異端、両腕に拳銃を下げた拘束着の少女。
そして哄笑を収めた“暴君”は興味をなくしたとばかりに踵を返す。
その“暴君”を写している監視カメラにむけて、ニヤリと笑って。
愚者たちがその暴虐に、“暴君”のその破壊に気付いたのは、第一の砲撃の後。
地を裂かんとする轟音がモニターより響き。
モニターには拳銃ではありえない運動エネルギーをもった魔術の力を上乗せした弾丸を喰らい初号機の装甲が肉が傷つけられる様だった。
轟音に気付き愚者が顔を上げたときには、この男の大事な大事な初号機が蹂躙される姿。
エヴァ初号機に取り込まれた、亡き妻、碇ユイが座す初号機が嬲られる姿だった。
未だ起動せず、埃を被っていた、木偶人形。
愚者の計画のもっとも大事な要となる存在。
それが全くの無抵抗に破壊の雨に晒される。
その様を見せ付けられ。
「やめろ、やめろ、やめろおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!」
響く愚者の叫び、傍らの老人は呆然と虚ろな眼でその蹂躙を眺めるのみ。
だがそんな叫びは届かない、そんな身勝手な願いは届かない。
この男に教育する。
殴りかかるならば殴り返される覚悟を、常に一方的に嬲れるのではないと、世界の原理を教えてやる。
弱者が強者に踏みつけられるのを良しとするならばそれ以上の上位者には強者も踏みつけられる覚悟を持てと。
その己が掲げる真理を教育する。
未だ破壊が続く中。
男がモニターの左側、瑠璃の写る側を狂気に目線で睨みつけ、叫び声を上げる。
「やめさせろ!!!!!!
貴様の部下だろうが、何をしている、早くやめさせんか、さもなけばそこの餓鬼どもを」
いつの間にか握っていた拳銃をコリンたちに向けるが。
瑠璃は一切の動揺を見せず。
「さて、何のことでしょうか、こちらではモニターしていませんので、何が起こっているかわからないんですが。
もしそれが誰かを指していて、それが赤い拘束着の少女であるならば、彼女は怒っているのですよ、自分の庭先で兄弟を攫われた彼女が、怒っているんです。
今その怒りを発散させていることでしょう、誰かさんが成したろくでもないことのせいで」
つまりは知っているが止める気はない。
瑠璃はそう言っている、所詮は自業自得だと。
だがそれがこの男にトリガーを引かせるには十分だった。
血走った目で子供たちに向けて弾丸を射出する、が届かない、サンダルフォンが間に入り痛痒も感じないとばかりに身を盾にする。
このときこの男は自分がどれだけ恐ろしいことをしたか自覚はない。
この人間の前で、絶対的強者の前で何をしたか。
それが何を自分に起こすか。
そんなこと知らないのだ。
銃声とほぼ同時に凄まじい勢いで迫るメタトロン、両腕が一瞬煌き。
十字が交差する、メタトロンのビームサーベルの“十字断罪”。
愚者の右腕を十字に断つ。
全くの無感動に、全くの無慈悲に。
そして迫るもう一つの影、黒い悪魔、漆黒のドレスの少女、放たれる衝撃波。
老人と愚者をともども吹き飛ばす。
老人はそれで完全に抵抗の意思を失い、愚者は、激痛を発するであろう腕を押さえそれでも瑠璃を睨みつけ、そして蹂躙される初号機を見る。
その狂気は大したものだが、狂気だけで何も出来はしない、苦痛に怯え既にこの男に抵抗の意思などありはしない。
正面から楯突く人間を屈服させる技量などありはしない。
怨念を纏わせた視線を瑠璃にむけるだけだ。
苦痛と憎悪を込めた叫びを上げる以外には。
そして“暴君”の哄笑が響く。
「クフ、クハ、キャハ、キャハハハハハハハハハ、キャハハハハハハハハハ」
その笑い声が終わったあと、瑠璃は口を開く。
「それでは、お暇させていただきましょうか、六文儀ゲンドウ、冬月コウゾウ」
その言葉で、一瞥もくれず皆が踵を返す。
メタトロンとナイアが子供を一人ずつ抱きかかえ、サンダルフォンが最後尾を。
シンジはその実の父を汚物を見る目で一瞥し、やはり言葉なく去った。
因みに、コリンとジョージは残虐シーンに入る前に眠らしていた、見せるのはあまりに教育上よろしくない。
そして皆が出て行った後、呆然と破壊された初号機を眺める愚者と。
「こんなことをして赦されると」
と何とか囀る冬月がいたが。
「私たちが何をしたと言うのです、私たちは何もしていない、本部に侵略していなければ、破壊もしていない、この部屋にも誰も来ていないし、その男の腕は自己で切断、初号機は事故で破損でではないのですか。
何故ならば、誘拐はなかった、誰も拉致されず、銃でも脅されていない、故に誰もそちらには出向かず何も起こってはいない、起こったのは不幸な事故だけ。
違いますか冬月副司令」
そう瑠璃は言っている、もし私たちを問いただすならば自分の首を用意しろと。
今のネルフ首脳部が主導で小児誘拐など働いたと知れれば、確実にこの二人の首は飛ぶ。
ゼーレでは止められない、ゼーレはどれほどの損失も被ろうと、この二人を切ることを選ぶだろう。
このことが露見すればネルフの存亡のレベルになる。
責任者二人を死刑台に立たせれば済むぐらいには力を振るうかもしれないが、守ってくれるかは妖しい。
と言うか失態続きなのだ。
故に自分の首を考え、今の立場から冬月に反論はなかった。
忌々しげに自分をこんなことに巻き込んだ諸悪の根源、今は呆けている愚者に怒りの視線を投げかけてはいたが。
だが瑠璃は、そんな態度は赦さない。
「どうなのです、あったのですか、なかったのですか」
飽くまで返答を望む。
絶対零度の瞳で睨みつけられ、年端も行かない小娘の視線に怯え上がり、かすれるような声で答える。
「何もなく、事故だけ起こりました覇道元帥閣下」
あまりの屈辱に、あまりの敗北感に拳が震えるもそれだけを搾り出し。
そんな様子を瑠璃は一顧だにせず通信を途絶した。
To be continued...
(あとがき)
ギャグでいくといった割にはシリアスですかね今回長さが前回に続き過去最長記録更新です。
因みに少し書くのに詰まりました間3日くらいは別の小説書いてましたね(現在連載4本の大馬鹿者です)。
ゲンドウ完全に反撃されています、少し苛めすぎかともおもったのですが。
後は書いてて思ったんですけど“暴君”作者好きです、書くまで気付きませんでしたけど、ライカを目立たさせるつもりがこっちが目立ってますよ。
ここで皆さんにお聞きしたいのですが、碇ユイどうしましょう、この方を出すかどうかを読者の皆様にお聞きしたいのです、後他の魔道書、ご面倒かと思いますがご意見ありましたらお願いします。
なお作中の能力などは作者が勝手に付け加えた部分が御座いますのでご了承を。
(ながちゃん@管理人のコメント)
sara様から「無垢なる刃金を纏う者」の第八話を頂きました。相変わらず凄まじい分量です(汗)。
しかも四本の連載を抱えていらっしゃるとは・・・その才能、管理人にも分けて下さい!(笑)
いや〜、今話はスッキリ爽快ですな〜。髭も牛もいい気味です。
今回は具体的に体の一部位の欠損ですからねぇ〜。最高ですな〜♪
誘拐・脅迫(交渉)そして逆襲シーンは流石ですね。ネルフ(鬚&電柱)の道化ぶりを見事に引き出しています。
しかし段々と面白くなりますねぇ、このお話♪
ホント、続きが楽しみですよ。
最後に、ユイの処遇ですが、鬚を効果的に甚振れるのであれば、管理人的にはどちらでも構いません。
ただ、すでにキャラ的に飽和状態だと思うので、いっそのこと、ゲンドウの目の前でコアを握り潰しちゃうってのも美味しいかも♪(笑)
皆さん、作者様に応援・感想メールを送って、どしどし次作を催促しましょう〜♪
作者(sara様)へのご意見、ご感想は、または
まで