無垢なる刃金を纏う者

第十話 痴話喧嘩+ほのぼの+JA+似たもの夫婦

presented by sara様


現在深夜、大十字邸。

最近は定職を得て金持っている筈なのに貧乏性故に金が使えないのか未だに引っ越さない部屋で享楽に耽ってらっしゃる方がいた、その数三名、加えて特殊な状況下の人間、否精霊一名。

金銭面での苦労は解消し、そのお陰で購入した大きなベッドの上で大十字九郎、インデックス、ナイアルラトホテップの三名が18歳未満禁止の行為を楽しんでいる、楽しんでいるのは女性だけかもしれないが。

快楽に喘ぐ女の声と水音、ベッドが軋む音に、肉と肉が打ち付けあう音と、何故か唸り声。

男一人に女二人と些か数が不自然だがそれも今更で、この大十字九郎という男からしてみれば当たり前すぎる状態だろう、本日は些か不自然、唸り声あたりが特に。

まぁ、多対一も何時もの事と言われればそれまでだが、今回若干ばかり内容というか微妙なところが問題というか、細かい点で何時もと違う、唸り声とか。

あまり細かくも無いような気も多分にするが、その辺は、特に唸り声とかは気にせず参りましょう、どうせ後でわかります。

どうせ一人が邪悪に染まりかけている程度、敵対対象&原因二名もしくは三名。

で、男女の営みの現場。

インデックスは全裸で九郎の腰の上に乗り掛かり、恍惚とした顔で何やら運動している、因みに胸はこれっぽっちもない、肉体年齢二十代半ばの筈なのに少年のような乳しかない、一応乳と認識できるものが存在はするが、九郎の上で結構激しい運動をしているというのにちっとも揺れていない、乳が、揺れるのは髪だけである。

表現するならばツルペタ、ペッタン精霊トリオを彷彿させる乳の慎ましさ。

だがしかし、アル・アジフなら(エセル・ルルイエも同様)無いほうがいい(断言)といえるが金髪美女で全く無いと言うのは如何なものだろう、好みの分かれるところなのだろうか。

傍目に哀れを誘うくらい無いと言うことは保証する(因みにその件を本人に確認したりからかったりすると、本気の魔術が飛んでくるので注意が必要)、作者はナイ乳でもそれはそれで悪くないと思うほうだが、美人だし。

乳を抜かせばそれは見事な肢体と理知的な美貌でかなりの美女なのであるが、性格もそれなりに良いし(マスターテリオンに比べてだが)。

でもう一人の美女、インデックスとは対極というか乳のデカサならばライカとタメを張るのではという巨乳黒髪美女、一応女神?(邪神だけど、それ以前にナイアに性別は無いと思うが現在の姿から女神と言うことで)のナイア。

何故かメイド服(覇道邸チアキタイプ)で首輪を着用して九郎と接吻という名のディープキスをしている。

それはもう熱烈に舌を絡み合わせて濃厚なのを、九郎の腰の上にはインデックスがいるのだが曰く3P、因みに九郎の右手はナイアの微妙なところを刺激するような位置にあったりする、時折ナイアの顔が快楽に歪むのが、淫靡でよろしい。

なお、最近首輪をつけるのがナイアのマイブームらしい、以前のご褒美以来九郎を求める回数も増えているので、邪神、完全に仕事を忘れて九郎に入れあげているのかもしれない。

というか完全に仕事は忘れている、最近の彼女の行動は食べる寝る遊ぶで占められている道楽貴族のような生活をしている(基本的に瑠璃もナイアにまで仕事を頼もうとはしない、ライカ辺りはお使いを頼んだり、子供の世話を頼んだりと結構こき使われているのだが、自分の古本屋の営業は忘れ去っているようだ占い師のほうは如何しているのだろうか?)。

付け加えると夜這いの回数が増えたと言うこととその手口が段々と巧妙になっていくといった所とどうやら九郎に対して情事の内容が女王様というよりは雌犬のような扱いが好みになりつつあるといったところか。

で、手口が巧妙になった結果、今回インデックスとタッグを組んで九郎に襲い掛かった二人であった、ナイアはご褒美以来味を占めて、インデックスは第五使徒殲滅のご褒美としての名目はあるが、名目があるといって夜這いしていいと言う理由にはならんが。

「九郎君、九郎君。愛しいよ狂おしいよ切ないよ、もっと僕の舌を蹂躙しておくれ、もっと僕を悦びの高みに連れて行っておくれ。その為なら僕は九郎君に何でもしてあげるんだ」

唇を離したナイアが九郎の耳元で囁く言葉、でも女王様で無いのに襲い掛かる邪神、行動に微妙に矛盾が、何襲い掛からないと九郎は中々自分に手を出してくれない。

インデックスは行為に夢中になって言葉が無く本能に直結した声を漏らすのみ。

結果、二人共存分に九郎で楽しんでいるようだ女の悦びを色々と、それはもう欲望の限り、溢れ出さんばかりに、嬉々として。

九郎君も好き物なので楽しんでいるのかと思えば、それなりに心痛そうな表情と言うか、何かに脅えたような表情で、それでも快楽に耽っていた、どうやら男として目の前の快楽と御馳走、そして実際の刺激には目が行ってしまうらしい、悲しい男の性である。

後で地獄が待っていると言うことを自覚していても。

地獄が目の前で灼熱の怒りを動力に更に怒りを募らせていることを自覚していても。

目の前に超極上の美女が自分から食べてくれと言っているのに食指を伸ばすのは罪ではないだろう、方や豊満な眼鏡美人+メイド服+首輪、方やスレンダーな金髪知的美女、誰もが羨むご馳走だろう。

食指を伸ばさないほうが罪である、絶対に、断固として、後で地獄や災害級の怒りを浴びる可能性が絶対であろうとも、食指を伸ばさないのは罪であると断言しよう、というか手を出してくれなくてもどうせ二人掛りなら抵抗も無意味なんだがね、この二人相手だと。

結果として食べられるのは確定事項なんだから。

で、その地獄の化身、煉獄という言葉が意志もって具現した姿。

魔道書、キダフ・アル・アジフ(魔物の咆哮)、またの名をネクロノミコン(死霊秘法書)、つまりはアルたん、大十字九郎の花嫁候補ナンバーワン(本人の中では既に花嫁)の人外美少女、意外に甘え上手の外見からは見て判らない姉さん女房(年齢1000歳超えているし)。

現在、ナイア+インデックス共同で設置された魔術拘束術式を掛けられ部屋の隅で身動きの取れない状態で転がされていたりする、彼女でも解呪が困難を極めるほどの複雑で強力な術式の魔術拘束で。

で、手も足も出ないアルたんに唯一出来ること、悪鬼のような表情で三人の情事を睨みつけることだった、主に自分の主を、それはもう浮気者には死をと射殺さんばかりに。

その身から鬼気、瘴気、魔気など様々などす黒いものを発散させた嫉妬の念を迸らせて、それを情事の最中の三人、主に自分の旦那(彼女内認識)に叩きつけている、それしか出来ないのだが。

因みに九郎もアル不参加で目の前の今のような状態になると、彼の認識でも本妻が怒りを募らせるのが判っていたので解呪しようとした(九郎でも解呪は困難だろうが)のだが、九郎は九郎で簡易の術式で拘束され、情事の快楽で集中できない精神状態では快楽に身を任せるしかなかった。

そんな事情はアルも判ってはいるが時折襲い掛かられている九郎と目が合うと、それだけで死んでしまえそうな眼光で「後で判っておろうな」と言う意味の視線を投げかけている、世界最強魔道書、外道の集大成、現在は嫉妬に染まった理不尽。

乙女にとって目の前の旦那の浮気行為は万死に値する、ある程度無理矢理であっても怒りが湧かないほど温厚な少女ではなかった。

多少の浮気を実質認めているとはいえ、それはそれ、これはこれである。

外道の知識の集大成だけに怒りによって何をされるかとっても怖い。

九郎としては夜這いを敢行して、アルを拘束して自分に襲い掛かっている二人の美女にその恨みが行って欲しいところだが世の中、中々に理不尽なようだ、理不尽以前に楽しんでいる時点で九郎も同罪なのだ。

そしていつの世も往々にして幸福な男にはそれなりの懲罰というか天意というかなんかその様なものがある、アルが開放された後の厳罰対象は襲われた大十字九郎にメインに降りかかるのは間違いないだろう。

勿論、二人の美女にも自分を拘束させ見せ付けた報復はするだろうが、容赦も遠慮も加減も躊躇も無く徹底的に。

因みに二人の美女のアルの拘束理由としては夜這いを敢行してもアルが邪魔をするので仕方なく拘束していると言うことらしい、この仕方なくという言葉は何故かそのまま受け入れがたいのだが。

仕方なくではなく絶対に自分達の欲望に忠実にアルを拘束しているっぽいから、それはもう確実に、それにナイアには私怨もあるし。

確かに彼女達の主張通り絶対に確実に断固として夜の就寝の間はアルが九郎を譲ることが滅多に無い、つまりは大十字九郎に関して夜這いは禁止事項なのである。

つまり厳密な意味での一対一の九郎との夜の営みというのは禁止されているのだ。

大十字九郎とアル・アジフの睡眠を邪魔するものは万死に値する、アル・アジフ談。

だが、夜這い、つまり九郎との睡眠妨害以外はそれほど禁止していない、夜にアルを交えた複数プレイは何度もやっていることだし。

少なくともアル抜きに九郎が夜のお楽しみを体験した回数は数えるほどである、昼間ならアル抜きでもかなりの回数九郎は自分に好意を持つ美女とその手の行為に勤しんでいたが。

アル曰く夜の九郎は妾の物らしい、九郎の腕枕なしでは就寝できないほど九郎依存体質が出来上がっている為、九郎の夜の無断外出は故に厳禁であったりする。

よって最近、ダンセイニはベッドとして利用されていない、主な仕事を奪われたダンセイニは家の掃除に精を出しているらしいが、中々に働き者である。

勿論その至福の睡眠時間を邪魔する夜這いを敢行する者も許しはしないのだが、今回完全にナイアの良い様に拘束され、自分が参加できない九郎の肉欲の宴が目の前で開催されているのだから、その怒りは如何程のものだろうか。

「ムグゥ。ンアィヤァ、ボボエェテェ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(注、何らかの呪文ではありません、只の唸り声です)。

何やら呻いているアルたん、ナイアに五月蠅いと付けられた猿轡でマトモに言葉になっていないが、言葉に込められている怒気は相当なもので感情と呻き声だけで十分に伝わってくる、それはもう形を持った怨恨の如し。

だが、どれだけ感情を篭めて喚こうと、睨もうと、心の中で呪おうと、ナイアとインデックスが掛けた拘束術式が弱まるわけではなく、どれだけ火事場の馬鹿力を出そうと怒りを燃料に力を篭めても拘束術式はビクともしない。

伊達に邪神と人類最高の魔術師はやっていない二人だ、精霊一人では太刀打ちできない様だ、目の前で旦那と浮気相手の痴態を見せつけられるアルたん、何気に今回悲惨。

ナイアとしては以前出番を奪われてクトゥグアにレアに焦がされた復讐でもあるらしいが、何気にナイアも復讐心はあるらしい、貴重な出番を奪われた恨みは大きいか(でも多分デモンベインの面子では出番の量トップ3には入っているのはナイアだろうが)。

で、更にアルたんの目の前で今はインデックスが既に果て、代わりにナイアが九郎の腰の上に跨り、先ほどより恍惚とした顔で髪を振り乱し嬌声を上げて、更にアルたんにとって忌々しいぐらい豊満な乳を揺らして悶えていた。

なおインデックスはまだまだ物足りなそうに九郎の体に舌を這わしていたが、インデックスも微妙にナイアの乳の揺れを忌々しそうに睨んでいた。

基本的にアルとインデックスはある特定部位が寂しい為、同盟関係に近い結束を持つ、無いもの同士の連帯感だろうか、今はその連帯感も関係ない、というか真っ向から裏切っているが。

二人が満足するまで九郎は襲われ、終わるまで情事を悪鬼の瞳、否修羅の形相で睨みつけるアルたんがいたそうな、凄絶なアルたんの顔はそれはそれで華美ではあったが。





で、アルたんの拘束術式が解かれたのはナイア、インデックスが大十字邸から彼女達が逃げ去った後、文字通りその後のアルたんの烈火の怒りを恐れての逃亡の後であったりする。

ナイアは以前の復讐は遂げられたというべきであるが、後が怖そうだ、その辺彼女達は考えているんだろうか、事後対策とか、案外今現在の快楽しか考えてないような気がする。

と言うか、絶対に考えていなさそう。

それぞれの寝床に帰る彼女達、背後からは少女の怒声と青年の謝罪の声+銃声が響き渡るのを背中で聞きつつ。

ねぇ、あんた等、本当に九郎君のこと愛している?

「好きな子ほど意地悪したいもんじゃないか」「私にはご褒美、請求するまでくれなかったのでお仕置きをかねて」

さいですか、この悪女コンビ。





で、大十字邸、現在地獄に最も近い場所。

時間はアルが拘束を解かれた時からなので、少し遡った時間軸といった所。

封印を解かれた魔獣、飢えた狼、手傷を負った虎、逆鱗に触れられた竜、どれを形容しても当て嵌まり、どれを形容しても当て嵌まらない、九郎の前に佇む存在は形容された全て以上の存在、封印を解かれた外道の精霊、嫉妬に狂った少女、良い様にしてやられた口惜しさを噛み締める女、目の前にいる浮気者に怒りを募らせる妻。

どれもが最高に怖い、恐ろしい、魔性を湛えている、煉獄を纏わせている、凶暴性を潜ませている、獣よりも魔獣よりも、そして彼女の存在が歪むほどの何か真っ黒い物を背中から漂わしている、立ち昇る煙のようなどす黒い何かが。

負の感情により生み出された小宇宙だろうか。

因みに現在九郎の視点ではアルの背中しか見えていない、なにやらゴソゴソと着替えをしているようだ、時折何やら物騒な召喚呪文っぽいものを唱えていたりするが。

解呪された瞬間に今にも殺さん目で九郎を睨んだ後、その作業に勤しみ始めたのである、何をされるか何をしているか怖いことこの上ない。

「あの、アルさん、一体何をしておいいででしょう」

小姓のように低姿勢で聞くマスター、主人の威厳も減ったくれもないがそんなもの最初から無いのでどうでもいい、襲われた姿を何とか取り繕ったような姿で九郎がアルに尋ねる。

返事はないが、背中のどす黒いものが一瞬膨らんだような気がする、錯覚だといいのだが。

暫くして服をいきなり脱ぎ出すアル、だがその手の色っぽさは欠片もない、よりどす黒いものが彼女を覆いつくしているように見える、幻視だといいのになぁ、あのどす黒いの。

下着姿(結構大人っぽい)になり白い着物の単を纏うアル、さらに白い襷、白い鉢巻も順に身に付けていく、そしてなにやら化粧品を取り出してメイク、因みに足袋に草鞋も履いている(アメリカでどうやって手に入れた?着付け出来たのかアルと色々疑問はあるが)。

「アル様、あの、先程の事は、不幸な事故をといいますか・・・・・・・・・・・」

九郎、隷属でもする気か、その低姿勢かなり情けないぞ、しかもアルには無視され続けているし、因みに不幸な事故ではなく完全に人災だろう、あれは。

だが、その無視も終わる、地獄の開幕、阿鼻叫喚の歌を奏でる楽器になるであろう九郎の身に降りかかる天罰、人間楽器を奏でる奏者、嫉妬の化身、ネクロノミコン。

そっと、音も無く立ち上がるアル、床に置いてあった物を一つは腰の帯の間に挟み両手にそれぞれと持って、振り向く。

九郎は戦慄し、ついでにちょっぴり呆れた、恐怖と呆れの比率は99:1といったところか。

現在のアルの姿を説明しよう。

上述したような白い和装、顔は夜叉のようなメイク、右手にイタクァ、左手にバルザイの偃月刀、腰にクトゥグア、そして全身から出る邪神のような気配、否外道そのものの気配、嘗てのマスターテリオン並みの邪悪の気配、魔性の臭い。

子供なら姿見ただけで泣いて逃げ、夜道ならば大人の男でも脱兎の如く逃げるかもしれない姿と気配だが、九郎が僅かに呆れる理由、何か、コスプレっぽいから。

名探偵金田一の八つ墓村のコスプレっぽい、蝋燭に鉢巻が挟まっていたら完璧だ、性別は逆だが。

だけれど童女である分更に怖い、理解を超えたものの方が人間は怖い、怪異と渡り合った大十字九郎でさえ目の前の少女が怖い、でも呆れた(因みに作者はこれとよく似たネタを以前やりました、判った人は突っ込まないでください)。

「汝、覚悟は良いか」

声量は呟くようなのに部屋中に響き、脳髄を揺するような声、思わず背筋が震えるような種類の声、命の危険を他者に感じさせる声。

言葉と共にバルザイの偃月刀を肩に担ぎ、何時でも振り下ろせるように構えるアル。

そんなアルの姿に僅かに震えた口調で言葉を紡ぐ九郎。

「なぁ、アル。その姿はなんだ」

突っ込まなければならない事だろう、これは、物語の進行上。

「ん、涅槃に旅立つ前の台詞がそれでいいのか、九郎、妾の愛しい人、婚約者。答えてやらんでもないが、大した事は無い、九郎の祖国の虐殺者の姿なのだろう、これは」

と、白い単の袖を掴んで見せるアル、何か勘違いしている、確かに虐殺に近いことはやってのけたが、それ小説だし。

で、自分の祖国の認識がかなり誤解されていることに対して九郎が何とか反論する、突っ込み入れるが、目の前の少女の気迫は恐ろしいを超越しているのだから、何気に婚約者の部分で見せた婚約指輪とかが、色々と。

「だから何でお前はそう変な知識が偏っているんだ」

確かに、だが大十字九郎いい加減余命は短いぞ、伸ばす為には言葉を送ろう、頑張れと。

そんな言葉何の役にも立たないだろうが、頑張れとだけ言っておく。

生き残る為に、多分、アルも半殺し程度で赦してくれると思うから、多分、多分ね。

一撃で人間を両断する刃物や、大口径の拳銃を装備していても、多分、生命は保持してくれるものだと、思う、思いたい、そうだといいなぁくらいの程度では。

というか保障する、君が死んだら以後話が進め辛いし、ただ死なないって所までしか保障できないけどね。

そして悪魔の表情で精霊が告げる、断罪の祝詞を。

「妾の容赦もいい加減底が付いたようでな、浮気者の婚約者にキツイ灸を据えてやる必要があると、先ほど気付いた。九郎、妾は汝を愛しておる、愛しているぞ、だから罰は必要だと妾は痛感した」

何か死刑判決を述べる裁判官のような冷淡な無機質な無感情な声、それが九郎の恐怖を必要以上に上げる、というかこの恐怖に際限などあるのだろうか、嫉妬に狂った恋人の怒り以上の恐怖が、大十字九郎にとって。

因みに過去の喧嘩で、姫さんのところに逃げ込んでも、今度は姫さんが九郎をそのまま離すまいと行動して、アルと正面衝突するし、似非聖職者のところは逃げ込んでも無駄だし(教会が破壊されまいと突き出される)、シンジもこうなったアルを見た瞬間逃げ出すし、最悪ナイアのところに逃げ込んでも、今回は彼女が主犯なので怒りが増大するだろう。

逃げる先など、最近不幸と苦労の代名詞と化したサンダルフォンことリューガの家くらいなものだが、彼を巻き込むのは些か彼が不幸に過ぎる、ただでさえ良い事無しで苦労続きなのに。

後は遠方に逃げるくらいだが、基本的に魔術的に繋がっている二人なので以前苦労が逃げ回ったときはアメリカ全土をフィールドにした壮大な鬼ごっこに発展した。

しかも各州で被害を出しまくってくれたし、結局捕まり逃げた分更にアル・アジフの怒りを増幅したに過ぎなかったので却下、因みにその被害を補償して回った姫さんからもアーカムの外での夫婦喧嘩は禁止させられている、かなりキレた口調で。

と言うことで九郎に残された選択肢は怒りと嫉妬に狂った恋人を宥め、その懲罰を甘んじて受けるぐらいにしか残されていなかったりする、つまり九郎は死なないように耐えろと。

「アル、な、落ち着け、落ち着いて話し合おう、俺もお前を愛している。嘘じゃない、だから落ち着け、イタクァと偃月刀を床に置け、流石に死ぬ」

宥めようと努力を試みる九郎君、でも今のアルにその言葉が届くのか?

届く訳ないだろう、負の感情に染まった外道のヤキモチ焼きの精霊相手に。

「落ち着け。妾は十分に落ち着いておる、これ以上ないほどに冷静だ。ほれ、この通り剣筋にも乱れがない。九郎も妾を愛しているか、妾も愛しているぞ。だが、夫婦の中でも諍いは付き物だ、そして妾の怒りを受け止めるのも夫の勤めであろう。それに愛があるのなら耐えて見せてみろ、九郎」

偃月刀を振り下ろし、アルの近くにあったテーブルを真っ二つにする、因みに台詞は相変わらず冷淡無機質無感情、装束と相まって怖すぎる、言っている事は理不尽の塊だったが。

「アル・・・・」

九郎の言葉は黙殺され、宣告されるアルの判決。

「黙れ、妾が汝に言うことは一つだけだ。死ねダーイ

そして全米でも類を見ない夫婦喧嘩が勃発した、なお、最初の騒音、破壊音で、隣家の大十字シンジと、相変わらずシンジにべったりのエセルは何が起こったかを悟り脱出。

続いてドクターウエストとチアキ、エルザ、ウエスト宅に戻っていたレイが、レイはエルザが抱えて逃亡、この二件の住人は慣れたものなのか最初の破壊音がした瞬間に目覚め。

一分後には外に出るために着替えを済ませて階段に殺到していたと言うぐらい速かった。

各々ちゃっかり財布や通帳、大事なものを握り締めている辺り実生活がどれだけ波乱に満ちて、鍛えられているということが判りそうだ。

なおエルザはそんなかったるいことせずに小脇にレイを抱えてさっさと窓から飛び降りた、やっぱり便利魔道ロボ。

なおその日六名は覇道邸に宿を求めたそうな、チアキの職場だがそれはこの際どうでもいい。

瑠璃は「久し振りですね、あの二人の本格的な喧嘩は」と笑って招いてくれた。

どちらも慣れ切っているようだ。





なお、この喧嘩数時間に及び、数時間後精も根も尽き果てた九郎アルを後ろから抱きしめて膝の上に乗せていた。

太陽は既に昇っていたとかいないとか。

喧嘩の経緯は死ぬ気でアルから偃月刀と拳銃二挺を取り上げ(取り上げないとマジに死ねるから)、それでも魔術を連発してくるアルに防戦一方で耐え切り(反撃したくても出来ない、悪いのは自分だし、基本的に九郎はアルに手を出せない)、後ろから羽交い絞めにして(それでも腕に散々噛み付かれ引っ掻かれて両腕ボロボロ)、宥めすかして(無茶苦茶な勢いで九郎の不実不誠実さを罵るのを謝り倒して)現在に至る。

現在は九郎の膝の上でクドクドと説教を垂れていた、しかもかなり個人的で恨みがましく、執拗で、九郎の反論できないことを狙い定めて、ピンポイント攻撃をする。

それでいて膝の上からは絶対に離れようとしない、恐らく所有権の主張だろう。

まぁ説教の内容はおいといて、書き出すとかなり長いから。





追記、翌日の夜、大十字九郎が眠りに付いた後、昨日と同じ装束と装備を纏った外道の精霊がアーカムの町で虐殺者の化身となり一人怨敵求めて彷徨ったとか彷徨わなかったとか。

目的地は外道の神が経営する古本屋、次にライカ孤児院の一室。

少なくともその夜ライカ達一行は覇道邸の世話になったという。

そして深夜のアーカムに鳴り響く戦闘音と外道の精霊の怒鳴り声は一種都市伝説になりそうなものだっととか、アーカムの人間は結構逞しいから都市伝説は都市伝説でも笑い話に変えてくれるかもしれないが、傍目には真実笑い話なわけだし。

事実としてはその後暫くナイアとインデックスが外に出歩くことは無かった、出来なかったと正確に言うべきか余りの大ダメージに自室のベッドの上で傷だらけで臥せっていた。

それにしてもどれだけ殺ったアル・アジフ、ナイアはデモンベインでも引っ張り出さないと死なないから大丈夫としても、インデックスは一応死ねるぞ。

勿論、手酷くやられたのは這い寄る混沌のほうだったが彼女が精霊に復讐を企むことは多分無いだろう、結構心の傷レベルで苛められたから。





追記その2、この日から暫くアルは九郎に対して甘え、すぐに拗ね、怒り、嫉妬し、珍しく自分から九郎を求め、九郎を独占し切ったらしい、特にベッタリと甘えるのは、自分でやった癖に見舞いと称してナイアとインデックスの元に訪れるときであったりする。

特にナイアの時は念入りに目の前で唇まで合わして、片手でクトゥグアを突き付けて。

というかナイアが文句を言おうとしたらマジにぶっ放した、当てはしなかったが、恐ろしく醒めた声で「何か、文句があるのか邪神」。

沈黙しかなかった、ナイアである。





で、痴話喧嘩はここまでしといてと。

ネルフ本部。

第五使徒戦に於いて、過去前例のないほどの無様を晒したネルフ、前回はまだ戦闘と言えるものをやってみせたが今回は決戦兵器で文字通り最終兵器、切り札であるエヴァンゲリオンを磔の刑に処しただけという結果、世界中に晒してしまった。

以前からも髭と有害作戦部長が無様を晒しまくっていたが、これは致命的である、ネルフの戦闘能力、いや戦力の運用能力がかなり致命的に疑問視されても仕方がない。

実際はかなり以前から某作戦部長が就任した時点で戦力の運用など問題の塊ではあったのだがその問題の漏洩は内部に留まり。

内部監視によって送られる状況も国連内部で留まり各国には詳細には伝えられなかった、何とか老人会が頑張った成果だったのだが、それも徒労に終わった形だろう。

自ら世界に無能を晒したネルフ、いい加減ヤバイ状況に追い詰められていた。

ネルフ不要論が国連議会内で真剣に討論されるのは時間の問題だろう、今までは老人会が常任理事国4カ国を抑えていたからそれ程でもなかったが、米国が敵に回るのは確実だろう、少なくとも現在ネルフアメリカ支部の対面上の立場は凄いことになっているらしいのだから。

少なくとも近い内にアメリカ支部の二つの支部は閉鎖されるのは確実かもしれない。





更に加えて別の意味でもヤバイ現状になっているのである。

これは対外的な問題ではなくネルフ内部の問題で、これはこれで大問題。

特に仕事量とか、現状に不満を持ちまくる有害作戦部長殿の精神構造とか、国連及び各国に対する面子とか諸々が。

まず仕事量これが最大問題だろう、スクラップのエヴァンゲリオン三機を抱えて連日徹夜での技術部、整備部の仕事、そしてそれに掛かる事務的な仕事、しかもそれを今まで統括していた赤木リツコ技術部部長がいないお陰で効率が30パーセント前後ダウンしている。

加えて近日中に未完成のエヴァンゲリオン三号機の配備、ネルフ内では更に四号機まで配備されるのではと、噂されている(勿論これはアメリカ支部の閉鎖の噂と共にやって来ている)、つまりは近日中に更に仕事量が増える事が確実視されている。

しかも最近はそれに加えての人手不足(退職者や怪我人)、過労で倒れるものが出だしたら更に深刻な問題になるだろう、人手が更に減るのと職場環境の不満を訴えるものが出だすのは確実だろうから、現状ではまだ過労者は出ていないが時間の問題だろう。

公務員であるから労働組合とかが無いのがネルフの救いだろうか、ストライキをされる心配は無いのだから。

職員の不満問題など未だに入院している髭にしてみればどうでもいいような問題ではあるが作業効率などを考えてもやはり不満が少ない職場のほうが人間働くものである、この手の問題は電柱が考えるしかないだろう。

で、現実問題としてエヴァンゲリオンの中で補修が現在行われているのは主に零号機、パイロットのいない二号機と初号機の補修は、初号機は殆ど一からの作り直しとなるのだしそんな作業を行う余裕は無い、二号機は他にチルドレンが見つかった時の為とスクラップになった時期が一番早かったので補修を受けている、直りが早いのは二号機のほうだろう。

といっても現状の運用できるパイロットは零号機専属パイロット、相田ケンスケのみ。

先日、やっと集中治療室から出されそれでも面会謝絶の状態で病室に放り込まれている、なお肉体的な完治は3週間ほどだが、精神的には使い物になるのはかなり時間が掛かるかもしれない。

半洗脳状態も本人の根性無しの本質には負け、死の危険を味わった第五使徒戦の磔の刑で妄想だけの戦争英雄気取りの馬鹿少年は現在戦争恐怖症一歩手前の状態で震え上がっているから。

この馬鹿をネルフが再調整(今度は完全洗脳)するのには手間が掛かりそうだ、時間も。

そしてどれだけ調整しようと本人の実力が上がるわけじゃなく、使い物になるかどうかは判らないということ、シンクロ率は低い、体力も低い、能力も低い、と三拍子揃っているのだから、使えない男、相田ケンスケ特務伍長。

なおフィフスチルドレン、鈴原トウジのほうは訓練や想定される仮想戦闘訓練でかなりの成績を残しているようだ、本来の気質や性格にもよるだろうがある程度まともな人間だからだろう、体調問題もあるのだろうが、変態のように過労寸前では幾ら訓練をつんでも成果を挙げられるわけが無い、虐待じみた訓練等身体の出来上がっていない子供に課しても無駄に終わることなど目に見えているのだから。

つまりは変態の無能振りは訓練メニューを決めた作戦妨害部長にも責任があるのである。

これが一番要因としては多いのだろうが自分に反発する姿勢を示すトウジの態度が気に食わない有害作戦部長は当面使える機体が零号機のみで自分を心酔する駒だけが実際に使えるパイロットであったので、そちらを集中的に鍛え、トウジの訓練は他人に丸投げしていた、その教官が常識人でマトモな効率的な訓練を課した成果だろう。

因みにその担当訓練教官は有害作戦部長を嫌悪しているので、自分の訓練生が優秀であることが誇らしいようだ、トウジの場合はネルフ内での扱いは有害作戦部長を除いてそれほど悪くないのかもしれない。

少なくとも健全な訓練、学校への通学、自宅への帰宅、正規の報酬、勤務条件、そして何よりた人関係に於いて。

因みに近くシックススチルドレン、セブンスチルドレンの選出がなされるという予定がネルフ内にはあるようだが。

現有戦力では不安がかなり有る為、先ず後どれぐらいネルフが存在できるかと言う問題もあったりするが、それはいっても詮無きことだろう。

予定候補者の名前を山岸マユミ、霧島マナという(なお作者はゲーム版のエヴァンゲリオンをプレイしたことが無いのでこの二人は殆どオリキャラに近くなります)。

彼女達が選抜されて実際にネルフに来るのは近いうちのことだろう。

なお、霧島マナがエヴァンゲリオン二号機専属パイロット予定。

山岸マユミがエヴァンゲリオン四号機専属パイロット予定である因みにプラグスーツの色は紺色を予定、彼女達の乗機の選択は只の感なので。

彼女たちが有能作戦妨害部長の魔の手に掛からないことを切に願う(決めるのは作者だが)。




第二の大問題、この女の存在そのものといっても過言ではない。

ネルフの恥、否人類の恥、存在そのものが恥、生物種の恥部、国連組織ネルフが世界に誇る恥の象徴葛城作戦妨害部長の現在の精神構造問題である、こっちのほうがある意味深刻な大問題だったりするが。

前回、第五使徒戦中、国連軍部隊、独立愚連隊“ブラック・ロッジ”に向けて攻撃命令を出そうとしたところをネルフの精鋭、ネルフでその任務を拝命して以後英雄扱いされる部隊、対作戦妨害部長捕獲班による組織の維持の為という正当な理由による苛烈な攻撃を受けた作戦部長、勿論、言うまでも無く、完全無欠に怒り狂っていた、自分の指揮を、彼女主観で邪魔者を除去する正しき行為を妨害し、世界で一人しかいない使徒に対抗しうる組織の作戦部長である自分に暴虐を与えた行為に対して。

最近彼女が時間の殆どを過ごしている独房の中でだが、幾ら怒り狂っても独房の中か魔術も使わずに自分に危害を加えた人間を攻撃するスキルを彼女は有していないのでどうでもいいが、感情だけなら届かなければ何も怖くない。

現在は、身に潜む怒りに耐えながら、耐えるしかないから。独房の中で自分が独房に放り込まれているのを不条理に感じていた、今更だとも思うが。

どっちにしろ彼女には自宅と言うものが既に無いわけであるし、財産といえるものも欠片も無い、給料だって自活できるほど支給されるのは数十年先のことだろうからここに定住したほうが彼女にとってはいいのかもしれないが、一応食事は出るしトイレも布団もあるのだから、行動の自由は無いが、それを抜かせばここを放り出されるよりも多分生活レベルは高いだろう、外にいる人間にも迷惑かけずに済むし。

それが組織の日本の世界の人類の生物の万物の為だろう、独房から一歩も出ないというのが、もしかした本人の為であるかもしれない。

追記すると対作戦妨害部長捕獲班による攻撃の損傷は既に回復している、本当に人間なのだろうか、どれか一つでも普通の人間なら死ねるかどうかぐらいの威力は持っていた攻撃をこれでもかと喰らった筈なのだが(因みに各種武器の設計、赤木リツコ、製作者伊吹マヤ。リツコがマヤに残した情報の一つである対葛城ミサト対策武器シリーズである、この武器の使用は作戦妨害部長の独房内での沈静化用の懲罰器具としても使われているようだ、因みに評判はいい、伊吹マヤこの功績で昇進できるかもしれない、一階級くらい)。

で、話を戻そう、その作戦妨害部長殿だが独房内で右手の指が相変わらず無い状態で、時折喚いたり、暴れたり、監視員(全員女性)に誹謗中傷を言い罵ったりしている、因みに書類などの独房内で出来る仕事は運び込まれているのだが手をつける様子は無い。

因みに書類の類は運ばれてきてはいるが嫌がらせに近く、日向以外の作戦部員は自分達の職分を理解し、あの部長が部長なのでやる気とか士気はかなり低いのだが必要な処理、書類の作成などは自発的に行っているようである、監視も居る事が働いている理由の一つだが、いい加減あの役立たずの作戦部長が解任されて、自分が作戦部長に就任しようと考えている人達が仕事に励んでいるようだった。

もしかしたらマジに代理作戦部長とかいう役職が出来るかもしれないし。

この辺の向上心はあの無駄飯食いが唯一、自分の部下に対し利点となった所かもしれない。

後、暴言の類を例に出してみると。

「ちょっと、そこの。ビール持ってきなさいよ、ビール、えびちゅよえびちゅ、つまみも持ってきなさいよ!!!」

現状を弁えず、そのような世迷い事を吐いたり、というか牛何度目だ、独房に叩き込まれるの、いい加減に学習したらどうだ、独房ではアルコール厳禁という事を。

ついでに看守は使用人でも何でも無いと言うことも学習したほうがいいだろう。

「そこの腐れビッチ、私を出しなさいよ、私を誰だと思ってんの、ネルフの作戦部長よ人類の希望よ。それがこの扱い、あんたら何考えてんの、あんた等も前のテロリストの手先。私の精神状態が人類の未来を左右するのよ、とっとと出して傅きなさいよ」

お前は何処の王侯貴族だ、確かに精神状態が人類の未来を左右しているような気がするのは確かだが、その外罰主義や独善主義、自己中心主義、怠惰主義、刹那的快楽主義、偽善、利己主義、妄想癖の精神構造は軍隊の指揮官、しかも人類の命運を掛けた戦いと称している指揮官の精神状態としては問題あるだろう。

因みにこれらの暴言は可愛い部類で、酷いのになると放送禁止用語から差別語、スラングを交えて人間を貶めるような発言を平気で行うのである、本当に良識のある国際公務員か、有害作戦部長。

因みに、暴言の対処法は単純明快、武力鎮圧である、対葛城ミサト鎮圧武器シリーズを担当してる監視員の好みで選択肢、監視員のムカつき具合で裁量して、黙るまで懲罰を加えるのである、判りやすく言うと、気を失うまで、人気の鎮圧武器はゴム銃であるらしい、剛速球でのた打ち回る馬鹿女が愉快らしい。

牛が、自分が大人しくしていれば何もされず、静かに独房生活を遅れると気付くのは何時の日のことだろうか、多分気付かないとは思うけど、牛だから。

気付いたら、少なくともそれなりに優雅な独房ライフが遅れると思うぞ、多分。





追記、ネルフの対外的な面子は電柱が頑張っているがトップが髭なので余り成果を挙げていないようである、と言うか悪いことばかり露見していっているので既に回復の余地が無い、せめて戦いに勝っていればいいが、三戦中に二敗、しかも一つは出撃すらしていないという体たらくではいかんともし難い、面子など当の昔に消え去ったといっても過言ではないのだから。

なお、ネルフの対外的な面子の保持(保持するだけの面子が残っているのかは疑問だが)、及び対外工作の日本重化学共同体に対する事はリツコがいないので暴走プログラムが組めず、しかも派遣させる幹部職員が超過勤務状態なので、派遣される幹部は電柱、冬月副司令とあいなっていた。

工作もなしにこの老人がどうやってあの場で茶番を演じるのか愉快で楽しみだ、実に。





アーカム、覇道邸。

先日、大十字九郎+大十字(殆ど確定の予定)アルの夫婦喧嘩勃発からアルの被害から避難した住人ウエスト達とライカ達、居心地がいいという理由で未だに滞在していたりする。

居心地は良いだろう、世界有数の大富豪の屋敷なのだから、でも料理はエルザとライカが何故か作っていた、家人の食事を担うという主婦じみたプライドでもあるのだろうか。

それでも調理する素材は段違いなのでかなり豪華な食事となるのは確かだろうが。

それはさておき。

今回の喧嘩第二幕(前半の夫婦喧嘩は第一幕)。

今日は九郎の嫌な帝王学や経営、経済、戦略、指揮の授業日でもあるので九郎は覇道邸に来ている、因みに九郎は勉強が出来ないわけではない、少なくともミスカトニック大学時代は隠秘学の学科の中で優秀な成績を残している、少なくとも学問内容は特殊だったが非凡な才能は持ちえていると言うことである、現在勉強を嫌がるのは探偵時代に染み付いた怠惰な性格が起因しているだけ、それでも授業に出るのはサボると姫さんがそれはもう怒るからである。

いつもの痴話喧嘩ではなく完全に九郎を対象に怒り出す、しかも怒り方も様々で。

サボり損ねて不真面目に授業を受けた時。

「瑠璃は弄ばれた女だったのですね、大十字さんは私を弄んだのですね。目的は私の財産と体だけ。毟り取るだけ毟り取って私の体を貪るだけ貪ったらあのちんくしゃ精霊と一緒に消えてしまうのですね。だって大十字さん、私と添い遂げる気など無いのでしょう、そんな態度が見受けられませんもの。殿方だと言うのに私だけを働かせて学ぼうともしないという態度、その証左ではないですか。確かに私は愛人でも構いませんと言った記憶がございますが。何も大十字さんを無条件で養うなどと、私も女ですから殿方にですね、何と言いますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・判りましたか、大十字さん。ですから確り学んで覇道を大十字さんも担って頂きたいのです、私も大十字さんを支える所存でおりますので。いえ、私が覇道を担い大十字さんが私を支えてくださっても構いまえんが」

最初は目に涙を溜めて棄てられた女風に嘆かれ、説教に繋がり、最後には覇道財閥を継ぐことが前提で延々と言われてからは九郎もサボらず、熱心に授業を受けている。

最初の棄てられた女風の嘆きは九郎にとっては中々痛かったらしい。

結果としては、それなりに熱心に勉強したという成果として優秀というのが姫さんの九郎への評価となっている、やはり九郎はそれなりに優秀なのだろう。

まぁ、それでも現状のままの成長では、瑠璃が総裁、九郎が副総裁といった形で覇道財閥を運営することになるのが妥当かもしれないといったところか。

後、付け加えるとこの授業時間は九郎と姫さんが二人っきりになれる数少ない時間でもある、肉体関係抜きで。

普段仕事で忙しい姫さんにとってはそれなりに貴重な時間であるのだ。

勉強時間といえど最近は真剣に授業に取り組む九郎の姿を見るのは姫さんの密やかな楽しみでもある。

で、その時間中に喧嘩以来九郎にべったりな状態のアルは姫さんの授業時間の間も九郎の膝の上という徹底振りで九郎に甘えた倒し姫さんに喧嘩を売っていたりしていた。

普段はその手の授業の時は逃げ出すような勢いで九郎の元を離れようとするくせに。

本の化身の癖に経営や経済学などの実用的な学問からは逃げようとする精霊のようだ、漫画や推理小説などの娯楽系の本は大好きなくせに、やはり俗っぽい精霊である。

それでも今日は九郎の膝の上をどこうとしないもしかしたら独占欲+幼児退行を起こしているのかもしれない、彼女に幼児期というものは無かったと思うが。

因みに授業開始の真っ先の姫さんの台詞は「大十字さん、膝の上のそれは何ですか」と怖い笑顔でアルを睨みながら言ってくれたものである。

せめて机を並べる程度ならばここまで怒らなかったかもしれないが。

アルは「それとは何じゃ、それとは」と反論して、ギューと九郎の胸にしがみ付く始末、姫さんに喧嘩を売っているつもりは在るのか無いのか知らんが、姫さんは喧嘩を売られたと感じてもそれは致し方ないだろう。

実情はアルに姫さんに喧嘩を売る意志はほんの僅かしかない、が逆に言うと喧嘩を売る意志があるという事だ、喧嘩の余波で強くなった独占欲が原因で九郎の愛人(アル主観)に対する反応が無意識的か意識的か挑発的になっている、早く言えば自分が大十字九郎の本妻であるという対外主張がしたいのだろう。

喧嘩の当事者以外は溜まったものではないだろうが、ライカに姫さんにエルザは。

特にエルザはまだ九郎といちゃいちゃしているシーンすら無いのに(いつか書きます)。

授業開始当初は姫さんも我慢していたようだ、我慢していたんだと思う、多分、何か怖い笑顔で始終普段よりかなり九郎も理解出来ない難解な語句を連発して授業していたとしても。

だが、目の前でいちゃつかれる状態の授業時間、自分と九郎の二人の時間を侵され、それに怒りを感じている、そんな精神状態で姫さんが耐えられるか、否。

耐えられたら、奇跡だ、ナイアが真人間になるくらいには。

授業の三分の一も行かないうちに姫さんが切れて喧嘩になったのは言うまでも無い。

結果としては本日の授業時間はアル対瑠璃の妻(予定)対愛人対決で終結し、以後続行されている九郎の精神的疲労がヤバイ事になっていそうだ。

喧嘩が連戦で自分の周囲で起こっているから、しかも今回は中々に苛烈なものの後に来ているので連発が来るのは精神的にかなりの負担を強いているだろう。

どうでもいい追記、アルは戸籍が無いので名義的に正妻になるのは多分姫さんで決着が付くのではないだろうか、九郎の恋人陣で確りと戸籍を持っているのは大十字九郎本人と姫さんだけなのだから。

ライカは戸籍をちゃんと持っているか曖昧だし、エルザは人間っぽくなってはいるが人造人間、インデックスは戸籍なし、ナイアにそんな規定の社会概念は当て嵌まらない。

覇道の力を持ってすれば戸籍の一つ二つどうとでもなりそうなものだが、それはそれとして、因みに気付いているのはウィンさんだけです、今は黙っているようですが。

何で黙っているか「決着をつけると面白くないですから」との事。

あんた忠義心は何処に行ったんですか、ウィンさん。

「面白ければよろしいではないですか。それに実害もございませんし」

そうですか。

将来的には大十字九郎は覇道家を継ぎ覇道九郎、覇道瑠璃夫妻になり、妾としてアル、ライカ、ナイア、インデックス、エルザとなるのが目に見えている。

正規の結婚という社会に植えついた慣習を規定出来る両人はこの二人しかいないのだから。

それに気付いたときのアル・アジフの反応が面白そうだ、現在は気付いていないから。





で、授業終了後、何故かライカ達も溜まっている喫茶室。

喧嘩腰のアルと姫さんが九郎の腕にそれぞれ抱き付いて入室、九郎の表情は疲労を訴えていたが幸せ者の報いだ、我慢して嵐が過ぎるのを耐え切ってもらおう。

判りやすく言うとアルの独占欲が強まっている時期が過ぎ去るまで。

喫茶室なので金持ちらしく優雅にお茶会というのが決まり事であるのだが、この雰囲気ではお茶会も優雅にとはいくまい、少なくとも当事者達は。

当然の如くアルは九郎の膝の上に座り、瑠璃はそんな様子のアルを睨みつけ九郎の隣に座った、幾らなんでも九郎の膝に彼女が座ろうとはすまい、素面の時は。

この一角だけは和やかと呼ばれる雰囲気は訪れることは無さそうだ。

他の席についている面子は何時もの事と割り切って気にもしていないが、若干席は離れている、巻き添えは嫌なのだろう、それを除けば皆それなりに茶会を楽しめる状態であるとは言える。

追記、この場にいる九郎の愛人達の台詞はそれぞれ。

「あらあら、アルちゃん、瑠璃さん、また喧嘩ですか、争いごとはいけませんよ」

言う事だけはマトモな似非聖職者、本当に言う事だけはマトモ。

「ダーリン、大変ロボね。いい加減生涯の伴侶をエルザに決めれば、楽させてあげるロボ」

多分一番の九郎の愛人達の中で良妻賢母の素質があるのはエルザだろう、家事、戦闘、料理なんでもござれの万能ロボ、何気にドクターウエストの製品、かなり高品質、高技術である、何よりお値打ちである。





まぁ、お茶会なのだからお茶にお菓子は特にお菓子はメインになるのは当たり前。

それなりに腕の立つパティシエは覇道でも常駐で勤務しているが、今回の茶会の菓子類の製作者は九郎の身内が作製したもの、それなりに料理やお菓子を作れる女性が揃っているので腕を振るったのだろう。

テーブルの上に載っているお菓子は、エルザ、チアキ、ライカ、リツコがそれぞれ作り上げた物が盛大に並べられている。

エルザはアップルパイに桃のタルト、チアキは苺大福、ライカはシュークリーム各種、リツコはスコーンにクッキーを各自自慢の腕を振るって調理している、誰のお菓子も遜色なくそれなりに仕上がっている。

お茶のほうは日本茶、コーヒー、紅茶、ハーブティーを各種揃え淹れるのは執事であるウィンさんである、勿論銘柄は食器共々最高級品であるが、慣れないリツコはそれらの食器の扱いに躊躇したそうである、一枚数万から数十万円という代物、何せ世界有数の大富豪覇道の屋敷、食器一枚に於いても生活においては一般人であったリツコの常識を遥かに超越していた、調度一つをとっても王侯貴族クラスの生活レベルなのであるから。

九郎達はいい加減その辺の金銭感覚が麻痺してきているが、割っても姫さん怒らないし。

姫さん自身金銭感覚は生まれた時からの生活で狂っていたが、自分の部下の大馬鹿達(あえて名指しはしませんが)が街で喧嘩したり、建物を破壊した修繕費の立替費など単位をドルにしても億の桁を突破している。

今更、姫さんも皿の一枚二枚で怒るほど度量は狭くない、多分。

暫くは美味なる菓子を突付いて談笑を各自の談笑相手と始めるといった具合。

「ぬぅ、これは中々であるな、我輩始めて食べるであるが、美味である」

手に苺大福を持って褒めるウエスト、嬉しそうにチアキが聞いていた、何気に普通のカップルかもしれない二人、将来的なウエスト夫妻(因みにウエストはちゃんと戸籍は持っております)、しかも意識的には二人の間には既に娘二人いるので現在的にウエストファミリー。

ここはそれなりに和やかな雰囲気が漂っているようだ。

その様子を眺めて、今は給仕にではなく食べるほうに回っているメイド三人はというと。

「チアキさん、裏切ってますよね、ですよね。あ、これ美味しいですよ」

両手に苺大福を持って微妙に拗ねた様に呟くロリメイド。

「一人だけ幸せそう、でも男はいや、ちっちゃい子がいい、でも裏切り」

カリカリとスコーンを齧る妖艶なメイド、でも変態。

「あの、お二人とも、素直に祝福を、チアキさんの趣味(機械関係)に合う方は中々いらっしゃらないんですし」

上品にタルトを食べながら宥めている普通のメイドさん、でも言葉に微妙に毒がある。

何気にチアキの幸せを僻んでいるのかもしれない、ソーニャ、マコト、稲田のメイド三人衆、独身女(文字通り)の連帯感だろうか、だがソーニャ、お前はまだ若いだろうが。

後、稲田さん、何気に貴女が一番キツイ事言っていません、チアキもマッドだと、確かにチアキは一歩手前なところは無きにしも非ずだが。

後、マコトさん貴女は美少年でもいいのでしょうか、それならばジョージ&コリンという生贄が(ニヤリ)いますよ、ライカ教会に。

活きはよさそうですし。





「ほら、レイ、もっとゆっくり食べなさい」

「そうだロボよ。もっと落ち着いて食べるほうがお行儀良くて可愛いロボよ」

菓子の製作者二人に世話を焼かれて菓子を食べているレイとアスカ、主に世話を焼かれているのはレイだが。

未だ第四使徒戦の後遺症の残るアスカに世話は必要だし、レイはやはり少し常識はずれな所が抜け切らない、基本的な常識はウエストの所でも教えられてはいたが下品と言うほどではないが食べる速度がかなり速い。

口元についているクリームも可愛いアクセントにしかならないだろう。

最近のレイは食いしん坊の素質があるようだし。

レイの取り皿には全種類のお菓子が載っていることだし、かなり食欲旺盛になったものだ。

最近は肉付きもかなり良くなってきて年相応の体型になりつつある、少なくとも以前の不健康そうな細さは無く健康的な肢体へと変わりつつある。

お菓子好きが行き過ぎて太らないかが心配なところだが、その辺らエルザの料理とリツコの健康管理で調節することだろう、この二人かなり絶大なシスコンに現在段階で陥ってしまっているっぽいから。

因みに先ほどの注意をしつつ皿に菓子を盛ったのはシスコン二人である、二人ともかなりの世話焼きだ、菓子の指定をしたのはレイなのでレイが食いしん坊だという事は否定のしようも無いが、以前のレイを知るリツコにしてみればレイの健啖振りも嬉しい限りだろう。

盛って貰った時のレイの台詞は「ありがとう」、レイも何気なくお礼が言えるのは立派になったものだが、それにしても世話の焼き過ぎではないだろうか。

口元に付いたクリームもリツコやエルザが付く度にナプキンで拭ってやっていたりするくらいだから、レイの年齢を考えればやり過ぎの域だろう。

少なくとも隣にいたアスカはその様子に少し呆れていた、呆れていてもリツコの幸せそうな横顔はアスカにとっても心和み温かみが生じるものであったろうが。

それでも自分があれほど世話を焼かれたら恥ずかしくて溜まらないだろうし、それにアスカはアスカで旺盛な食欲で現在はシュークリームの各種制覇を実行中である、少女なのだから甘い者が大好きなのは変わらない(因みに作者は二十歳超えていますが甘いものが大好きです、甘党なんで)。

なお彼女たちが楽しんでいたのはリツコの趣味に合わせたコーヒーである。

ここの雰囲気は和気藹々だろうか。





次はこの日この場所のもう一つ居心地の悪い場、修羅の巣窟、執念の温床、嫉妬の魔界。

大十字シンジを囲う美少女達の愛情の巣窟であった、何故かライカもこちらに居たりする、多分観覧して楽しむつもりだろう、似非聖職者め。

まぁ、この女狐のことは放って置いておこう、観覧するだけなら害は無い、本当に観覧するだけだろうから、言い換えるとシンジを助けるような行為もしない。

で、修羅達の合戦場。

シンジの両脇の席にエセルとエンネア、この二人が席を確保したのは単純に二人の運動性能が他の二名に比べて超越しているからであって、それ以上でも、以下でもない。

対面座席にアリスン、ルルイエのマスター&精霊コンビが嫉妬の眼差しでシンジの両脇に座す女郎に嫉妬の視線を投げかけている、アリスンはそれほど運動神経が悪いわけではないがルルイエは運動神経が死んでいる、まぁ、常人並みに優れていようとこのコンビが運動性能で勝つことは難しいだろう。

普段無表情な分ルルイエのこういった視線は結構怖かったりするのだが、それを臆する少女達でもない、臆しているのは慕情を向けられているシンジ君ただ一人のみだ

一時的とはいえ九郎以上の想念の渦巻く空間に身を落としているシンジ君、まぁ彼にも同情は値しない、幸せすぎる男にはそれなりに義務と苦労と苦悩が待ち受けているのが当然といったものであろう、それが世の公平、真理、当然の現象、神(作者)の意志なのだから。

なお、ここでも言及するがこの面子で確り戸籍というものを保持しているのはアリスンだけである、将来的にこの面子だけで争い大十字九郎と同じ状態に落ち着いた場合、社会的な条件により正式に夫婦となるのは大十字シンジ、大十字アリスン夫妻と言うことになるだろう、この連中もそんなことは気付いてはいないが。

因みにエセルはアルのように旦那の浮気を公認する寛容さは持ち合わせていない、こと独占欲という観点から見ればエセルはアルと比べ物にならないくらい強いのだから、もしシンジが他の少女と寝たとなったら、どうなることやら。

今のところシンジ、エセル間で大規模な喧嘩は起こってはいないものの、起こった時は怖そうだ、とにかくエセルがシンジを寝取られるということで注意しなければならない存在はエンネアだけだろうが、他の二人はその手の知識、技能に関して幼すぎる、いいとこ接吻止まりだろう。

で、シンジ君の現状、何話か前の食べさせ合いのいがみ合いとは別として、今度はいがみ合い無くそれぞれが食べさせようと順々にシンジに菓子類を突き付けていた。

争っても仕方が無いと学習したのか、只単に今日はそういう展開になったのか、いがみ合いが無いとは言えその少女たちはシンジに向ける表情は蕩ける様な微笑、他の少女に向けるのは敵意の眼差しとかなりの温度差があった。

その温度差南国の太陽と極寒の流氷漂う海の如くの温度差である、男が絡むと普段それなりに仲のいい少女たちも完全な宿敵同士となる縮図であろう。

で、茶会が始まってからシンジが差し出された菓子を少女の手から直接食べ、その少女は至福の表情をする、そして次に移る、それが繰り返されている、延々と。

エセルがエルザの菓子を、エンネアがチアキの菓子を、アリスンがライカの菓子を、ルルイエをリツコの菓子を延々と、茶会が始まってからずっと。

そう、茶会が始まってからずっとだ。

「美味しいですか、シンジ様」

艶美と呼べる女の表情で手でパイを摘みシンジに食べさせるエセル。

現在一番大十字シンジに近しい存在だろうが、それで油断している節は無さそうだ、やはりしたたかさと淫靡さ双方併せ持ってシンジを陥落したのだろう。

「シンジも日本人だから和菓子が好きだよね、エンネアも大好きなんだよ」

苺大福を一口サイズに手で千切りやはり直接手から食べさせるエンネア、小さな心配りまで出来ている、変なところは良く気付くいい娘ではあるのだが、因みにシンジ側の良妻賢母素質かなり高い少女(?)である、少なくとも料理洗濯掃除は完璧の筈だ、育児はかなりの疑問を残すが。

育児(?)の結果は現在、外道の精霊の懲罰を喰らいたった一人で教会の留守番である、なお負傷でベッドの上に居るのが殆どだが。

また夫婦喧嘩になって一番怖いのも彼女である、彼女は“暴君”でもあるのだから。

「シンジお兄ちゃん、ライカお姉ちゃん特製のシュークリームだよ」

天使の微笑みと言うのだろうか、無邪気無垢それらの言葉を総動員した表情でシンジに小振りなシュークリームを差し出してくる。

因みにアリスンはシンジが一口食べたシュークリームを恥ずかしそうに「間接キス」と呟いて齧っていたりする、いじらしいというか可愛らしいというか。

なお、アリスンは良妻賢母の資質は未知数、これからの努力に期待といったところか。

ライカのようになったら、家事技能はともかくある点では終わっているので、ライカを忠実な手本にはしないようにね、アリスンちゃん。

・・・・・・・・食べて

呟くような小さな声だが、少し頬を赤らめてクッキーを出すルルイエ、微細な表情変化だがそれでも彼女が嬉しさを感じているのは良く伝わってくる。

その指先にシンジの唇が触れただけで更に頬が赤くなるので可愛いものだ。

で、シンジ君、この天国のような状況の何処が地獄かと言うと、少なくとも普段の攻撃が飛び交う修羅場よりはマシじゃないかと思うだろう。

実際はそれ以上に地獄である、少なくとも肉体的に掛けては同程度の負荷が掛かってるだろうし、精神的にはいつも以上であることは確実だ。

想像してみようエンドレスで甘味を食べさせられるという事を、終わる事無く食べ続けると言う事を。

甘党の人ならばそれなりに平気であろう、というか多分平気だ(少なくとも作者は平気)、だが普通の人が大量に甘味を食べ続けることが出来るだろうか。

だが、作者の客観的な常識に照らし合わせると、常人はこのテーブルに並ぶ菓子をそれぞれ一つずつ食べれば十分だろう、それ以上は胃が受けつけないのではないだろうか。

舌が甘さに麻痺してくれればまだ幸せだろうが、辛さと違い甘さはそう簡単には舌を麻痺させてくれないと思う。

後、単純に胃袋の限界問題もある、どう頑張ったところで成長期とはいえシンジが食せる最大量など高が知れている、食べさえている少女たちは自らの至福と他への牽制で気付いていないがシンジの胃袋限界が近い状態になっていたりするのである。

それでもシンジは目の前の少女たちの笑顔があるので食べ続けていたのである、頑張るシンジ君である、後で胸焼けは必至だろう(最近体調崩した原因が胃だったからその苦しみはよく分かる)。

それを微笑んで観覧するライカさん、助けてやれよ、多分あんた、シンジの状態判ってるんだろうからさ、その笑みは判っている笑みなんでしょうライカさん。

まぁ、何処まで頑張れるか見物ではあるが

ここの雰囲気は四面楚歌って感じだろうかね、どんな感じだろ?





で、最後、姫さん&精霊。

妙にギスギスして、甘ったるかった、因みにこの方向に視線を向けようとする者はこの喫茶室の中には誰一人居なかったという事を事前に明記する。

険悪な雰囲気を味わうのが嫌なのか、見たくも無い甘ったるい光景を見せ付けられるのか判断に苦しむところだが、多分両方だ、両方見たくないと言う答えが一番正鵠を射ている。

で、実情。

大十字九郎の膝の上に向かい合う形でアルが座り、隣に覇道瑠璃、姫さんが座している。

アルは九郎の方に視線を向け、姫さんはアルに鬼の笑顔を向け(どんな笑顔だ?)、九郎はアルと姫さんの顔を見て冷や汗を流していた、流して解決するものでもないだろうが。

お茶する段階になると、アルが最初にしたことは何も言わず、九郎に向けて可愛らしい口を軽く開けること、つまりは九郎に食べさせろと行動と目で訴えていた。

九郎もアルの仕草を見て、最近偶にやらされていたから慣れたもの、好みも知っているのでクッキー、チョコチップクッキーを取りアルの口に放り込んでやる。

そして満足そうに顔を綻ばせて咀嚼する、精霊。

喧嘩中の険しい表情も和らいで実に幸せそうだが、それで収まらないのが姫さん、人の授業時間を台無しにされ目の前で幸せそうな喧嘩相手の表情を見せつけられて更に怒りが募る。

と言うか、単純にムカつく、対抗心が沸いてくる、本来気が短いし、今は完全に欲求不満と怒りでヒートアップしている状態だ。

で、姫さんが取った行動は苺大福を手に取り、九郎の前に突き付ける、鬼の笑顔と悪魔の視線と共に、勿論その行動の目的は言うまでも無い、やっていることはシンジのところと現在のところは大差無い。

現在のところは、そう現在のところは。

九郎もそんな目で見られて拒否の選択を取れるほど勇者では無い、殆ど本能の段階で口を開けて姫さんの手ずから、苺大福を食べることになる、因みにこの菓子類の中では九郎の好みであったりする、九郎は幼い頃は完全に日本で生活していたから味覚が和食好みではあったから。

姫さんも九郎が自分の手から食べてくれれば少しはご機嫌になり顔が綻んでいる。

で、それで不機嫌になるのがアルたん、独占欲加速中で喧嘩状態にて理不尽モードに入っているのだ、自分の行動を鑑みるなんて能力は欠片も無い。

幸せそうな表情を一瞬で険しくさせて、姫さんと九郎を睨んでから、険のある目で九郎を睨み、また口を開けて次を促す。

九郎は精神的に更にきつい状態に追い込まれつつも今度はプチシューをアルの口に咥えさせるが、アル、九郎の首に腕を回して強引に九郎と口付けし、そのまま咥えていたプチシューを九郎の口内に舌で押し込む。

つまりは口移し、不敵な笑顔を浮かべて九郎から離れた、口を離すとき舌で自分の下唇を舐める仕草は外見年齢とミスマッチして艶美さを醸し出している、男を知る蟲惑的な女のように、勿論目線は姫さんのほうに向けて、挑発的に。

完全に臨戦状態に入っている。

で、売られた喧嘩は買うとばかりの発火性の良さで姫さんも何かが切れた、今日一日で溜まりに溜まったストレスか、それとも普段からの仕事のストレスも加味されているのか、少なくとも今のアルの行動が発火剤になったことは間違いない。

アルの口移しがあまりに突然だったので呆然としていた九郎の口内のプチシュー、未だ形を保って存在していた、それを姫さんも九郎の口に唇を合わせて舌で九郎の口内を蹂躙し舌でプチシューを絡め取り自分の口内に入れ、咀嚼し飲み下す。

それで飽き足らず連続攻勢。

今度は手に持っていた苺大福の苺を取り舌で潰し、九郎の口に流し込み舌で喉の奥まで押し込み、九郎に反射的に嚥下させる、それもアルが腕を回している九郎の首に姫さんも腕を回して、嚥下させた後も濃厚なキスを続けていく。

姫さんも切れてとんでもなく大胆なことをしている。

口の中のものを奪い取って、次に自分が咀嚼したものを流し込むとは。

なお以後、この殺伐とした雰囲気の中口移しでの食べさせ合い合戦はかなりの長時間続いたとのことである、この後は同じことの繰り返しなので割愛する。

只、こんな雰囲気を感じたりもしたくなければ、食べさせ合う光景を進んで見たいとは誰も思うまい、目の毒である。





で、喧嘩の当人、特に大十字九郎と付近にいた者達にとって精神衛生上よろしくない雰囲気と行為が鎮まって暫くした頃、一時的に鎮まっただけで治まったわけではないのだが。

姫さん(喧嘩は続行中だが食べさせ合いは終わった)立ち上がって口上を述べる。

「では、皆さん。お話を致します傾注を、ほらそこシンジさん達聞きなさい。先ず我が覇道に正確には“ブラック・ロッジ”のほうにですが打診があったのです。相手は日本重化学共同体、日本の企業をメインに軍事産業が連合を組んでいる経済団体、技術団体からです」

先ほどの感情を迸らした顔ではなく、冷静な普段の顔に戻って言葉を語る。

公と私を完全に切り分けて感情を使うところは流石といったところか、プライベートの怒りを持ち込まない、只、話し始める前に九郎に「後で寝室に来てくださいね」と、言っていたのが怖く、九郎にストレスを与えていたりする。

寝室で行うことが気になるが、多分姫さんの怒りをぶつけられることになりそうだ。

「用件はJAなる巨大ロボットの披露パーティです、対使徒戦用に開発された機体と言う謳い文句ですが。それのお披露目に、私達も招待されています、私は仕事の為行けませんが。既にドクターウエストとチアキには行ってもらうことが決まっているのですが。護衛としてどなたか同伴していただけないでしょうか」

因みに希望を聞いているが立候補者がいない場合は命令するのであるが。

なお、姫さんは現段階でJAについての予備知識はそれ程無い、正しくは眼中に入れていなかったのだが、招待されているし、それなりの経済団体を相手に無碍に断るのもどうかと思ってウエストの派遣は決めたが(ウエストを派遣するだけでは問題があると思ってチアキもつけたらしいが)、ウエスト本人の戦闘能力は高くない、場所は今の覇道には敵地といってもいいアーカムだし。

ネルフからも出席があると言うので用心して護衛をつけようとしているだけである。

なお日本重化学共同体の存在は姫さん完全に本気に完膚なきまでに眼中になかったりする。

日本は覇道の勢力圏外であるしそれほど脅威のある団体ではなかったから注意する必要がなかったと言うのが本音だろうか、国内や自分の勢力圏内で目を光らせなければならないところもあるし、ゼーレの老人会にも目を光らせなければならなかったのだから。

なお、このウエストの派遣以後日本重化学共同体はウエストの報告で笑いを買う以外に関心を得ることは無かった、なお何故姫さんが笑ったのかは後述する。

だが哀れなのは未来にも過去にも姫さんの笑いを買うことしか出来なかった日本重化学共同体。

彼等が対抗して作ろうとしたのは当初エヴァだが、現在ではデモンベイン等なのだから。

連戦連敗のネルフよりも覇道側に注意が行くのは当然のことだろうが、対抗意識を持っていた相手に塵屑同然に見られていては哀れに過ぎるだろう。

因みにデモンベイン等のデータは完全に解析不能となっていたりする。





で、ウエストの護衛に名乗りを上げたのが大十字九郎(最近影の薄いこのSSのメインキャラ)、目的は勿論現状からの逃避、精神的損傷からの回復。

因みに立候補の方法は軽い挙手の後「俺が行く」の一言のみ、加えると妙に意気込みを感じる声だった。

姫さんは、少し考えてから「大十字さんですか、まぁ、いいでしょう、他にもいませんか」

なお九郎君ウエストの心配をしているとか、日本に郷愁の念がわいたとかいう理由は一つもこれっぽっちも欠片も持ち合わせていない。

合法的にアーカムから暫く離れたい、この精神的地獄から逃げたいと言う本能的行動である、いい加減九郎の精神状態ヤバイ状態になりつつあったから防衛機制が働いたか。

護衛としての能力も条件が付くが問答無用で高いし、まぁ、適材といえば適材なのだが、理由が不純だ。

それに、コイツは本心ではウエストに護衛がいるんだろうか殆ど不死身だろう、アイツは、とか九郎は内心考えていたりもする。

で、未だ微妙に嬉しそうな九郎の膝の上にいるアルが九郎を睨みあげて言葉を吐く、こっちは挙手では無かったが。

声には妙に抑揚が無く、無機質。

「妾も行くぞ。良いな、九郎」

九郎、ちょっぴり汗を掻いている、どうやらアルも置いていく気だったのか、でも九郎、アルがいないと君の戦闘能力かなり下がるんですけど、そんな九郎君に価値があると?

と、九郎が見たら泣きそうな事実は置いておいてと。

アルたん、九郎を睨みつけて九郎にだけ聞こえるような声量で呟く。

「まさか、汝、自分一人で行こうと思うておらんかったろうな、妾を置いて。妻である妾を置いて日本で羽根を伸ばそうと考えておらんかったろうな」

声は小さいのに、その声に篭る何かはとっても怖い雰囲気を湛えているアルたん。

更に汗を掻きつつやはり小声で反論する九郎、自己保身の為に、もしくは生存本能に突き動かされて、少なくとも第三次の喧嘩勃発は九郎の生命活動上絶対阻止の必要がある。

いい加減に九郎も死ねるだろうから。

「そ、そんなわけが無いだろ、アル。一緒に行こう、俺がお前から離れるわけが無いだろ。
そうだ、ついでに日本を観光していくか、婚前旅行みたいでいいだろ」

必死の言い訳というかなんかそんなものである、九郎もアルを言い包めるのはいい加減上手だろうし、嫌でも上手にならざるを得なかったのかもしれないが。

まぁ、九郎の言い訳それなりに有効だったようだ、アルたん根は単純だから。

「ふん、まぁいい。・・・・・・・・・・・・婚前旅行か

プイと九郎の顔から顔を背けるが最後の呟きはしっかり九郎に聞かれているし、その声の調子は微妙な恥ずかしさや嬉しさが零れだしていた、やっぱり単純である。

婚前旅行と言う言葉の響きがが良かったのかもしれない、何気にアル純情だし。

薄っすらと頬を染めている姿が可愛らしい。

その様子で九郎は胸を撫で下ろし軽く息を吐く、ご機嫌が取れたことに一先ず安心。

九郎としては一人が最良だが(息抜きとして)、アルが付いてこようと一向に構わない、基本的にアルと九郎は一心同体というか二人で一人という感じのコンビだ、居なかったら居なかったで、九郎もアルが気になって日本で落ち着くことは無いだろう。

アルと九郎は二人で居ることが最も自然なのだから、そういう意味ではこの二人は既に夫婦以上の連帯感を持って生きているのだろう、社会的な事実は兎も角として。

九郎としてはこれ以上喧嘩が起きない環境に行ければいいのだ、アル一人ならばそれほど喧嘩することもあるまい、置いていったほうが今度は帰る時が怖くて仕方が無いだろうし。

もし置いていったら修羅が待つアーカムに九郎を連れ帰る苦労をするのはウエストだろうが。

この後九郎とアルを一緒に行かせるのは姫さんの中では決定事項(アル無しでは九郎の戦闘能力激減するし)だったので恙無く話は進み、後彼ら以外のウエストの護衛としてシンジとエンネアが同伴することになった。

なおエンネアが同伴することについて、美少女四人の間で熾烈な戦いがあったことは言うまでも無いが今回はエンネアの勝利に終わった、エセルは最後まで粘ったものだが負けた。

単純な戦闘スペックだけなら“暴君”であるエンネアに勝てるほどエセルは強くない。

インデックスから無理矢理魔力供給を受けるという裏技を使えばさほど差は無いのだが、現在負傷でベッドの中であるので供給は無理、ライカ教会に帰ってエセルがインデックスに八つ当たりしたのは仕方が無いことといえよう、精霊にネチネチ嫌味を言われるマスターのインデックスの負傷が自業自得といえど少し哀れかもしれない。

因みにシンジを同伴させる姫さんの思惑はネルフに対する嫌がらせである。

向こうが喉から手が出るほど欲しているサードチルドレンを目の前に出し、それでも手が出せない苦汁を味合わせようという魂胆、少し性格の悪いやり方だが反応が楽しみである。

シンジを同伴させるメンバーから考えて拉致されるとは考えられないし。





で、出発前夜、因みに交通手段は普通に飛行機使用、有事でもないのに空間転移を使わなくてもいいだろうとの事。

アルとしては旅行っぽくてそちらのほうが嬉しそうだったりする、確かに空間転移では味気ない。

大十字九郎とアル、自宅で旅支度の真っ最中、それなりにアルの独占欲加速状態は治まりつつあるのか、単純に旅行が楽しみでご機嫌なのか和気藹々としている。

中々ご機嫌ムードなアルに九郎の精神的疲労も癒されているだろう。

因みにシンジもこの部屋で準備中なのだが、微妙に心の中で自分は新婚旅行の同伴者なんだろうかという感じの厭世観を持って少し欝になっていた。

今日までエセルに散々恨み言を言われ、浮気しないように小言を繰り返して言われた精神的疲労もあるのだろう、多分帰って来たらエセルが独占欲加速状態になりそうだ。

ドクターウエストとチアキ、こちらも旅支度だがウエストは事前に覇道の研究所でなにやら準備していたようだがその辺は割愛、後のお楽しみ。

妙にチアキが嬉しそうに荷造りしていたという事だけは明記しておく、主張とはいえ旅は嬉しいのかご機嫌モード。

こっちも新婚旅行モードなのかもしれない、因みにエルザとレイは普段通り夕食を作って(最近はレイも手伝う)家事に勤しんでいた。

どうでもいいがエルザ完全に万能ロボットと化している(ドラえ○んとどっちが役に立つだろう)。

エンネア、こちらは更にご機嫌に荷造り中、シンジとの二人っきりの婚前旅行と言う妄想が脳内を支配しているのかもしれないと考えられるご機嫌振りである、因みにこの護衛が決まってから三人の美少女がエンネアを亡き者にしようと、少なくとも同行できないように色々画策したようだがその辺は年の功、突破して沈黙させて逆襲して現在に至る。

因みにインデックスは今日に至るまで自分の精霊にネチネチと暇さえあれば嫌味を言われていた、でもインデックスも体調が悪いのにエセルがエンネアと正面衝突した時に魔力を奪われているので回復が遅くなっているので十分罰は受けていると思う。

だが、本当に何処まで二人にお仕置きした、あの二人が回復に数日以上掛かるダメージってどれ程のものだろう、怒りの程は解るがもしかしたら本気で殺す気だったのかいアル

と、まぁ恙無くとは言えないまでも旅路の準備は整っていっているようだ。





で、第二新東京市日本重化学共同体実験場隣接披露会場。

ネルフ、覇道、戦略自衛隊、国連軍、スポンサー企業、購入を考えている組織等が集まっている、勿論披露パーティであるので皆正装。

各招待者にテーブルが分けられているが一目で注目を集めていると判るテーブルが二つ。

一つはネルフの招待席、でかいテーブルにポツンとビール瓶が数本置かれているだけで何も無い、他のテーブルにはそれなりの料理が並んでいるというのにである。

で、其処に座っているのは電柱こと冬月副司令,派遣する人員が人手不足でいないことからしょうがなく出てきた勤労老人、それなりに地位は高いのだが今は只の見世物と化している、見世物でなければ晒し者か、どちらにせよマトモな待遇ではない。

このように晒し者になるのもこの老人が髭の計画なんぞに賛同して手伝うから招いたことなので自業自得なので同情には値しないが。

そもそも晒し者にされているのだって自分が勤めている組織が他の組織に嫌われまくっており、組織のトップの癖にその嫌われまくっている状況を放置したことが原因で嫌がらせを受けているわけだから正しく自業自得である。

今現在は渋面を作ってその見世物の席に座っている、座っているしかやることが無いのだが、因みに黒服が護衛として数人冬月に付いていた、加えると渋面の原因は他にもあるのだが。

もう一つ注目されているテーブルはテーブルに何も載っていないとかいう嫌がらせが原因ではない、ちゃんと他のテーブル同様に料理が並んでいるし、他と扱いに差は無い。

目立っているのは座っている人間達である、若干人間でないのが混じっていたり、人間(?)という区分が曖昧な範疇の連中ばかりの覇道で招待されている連中だ、お子様が三人もテーブルに付いているのも目立つところだが、白衣を着て緑色の髪をしている変態もどきのキチガ○が最も注目を集めているのは当然のこと。

外見的にマトモでこの場に相応しい様相を保持しているのは九郎、チアキの二人だけ。

因みに服装は、チアキはちゃんとしたキャリアっぽいスーツで九郎とシンジは軍人の略式制服、一応九郎とシンジは国連軍仕官の地位があるから。

只、シンジは年齢が年齢であるのでこの場で浮いているのは致し方ないが。

アルは白いドレスだが何時ものゴスロリのものではなくエンネアと色違いの同じデザインのワンピースドレス、どこか大人びたデザインのそのドレスは中々二人に似合っている。

因みに今回は雰囲気を変えてアルが赤、エンネアが白のドレスを纏っている。

この二人の美少女も注目を集める要因にはなっているのが一番目立っていたのは、やっぱりキチガ○、独特のオーラでもあるのか未だ何も喋っていないはずのウエストが一番目立っている、確かにコイツは外見的にも目立つがやはり何かのオーラを出しているのか。





そんな中で少し時間を遡ってちょっと前にあった事を見てみよう。

日本重化学共同体の発表開始前に会場入室の際、電柱、覇道の参加者の中にシンジが居るのを見掛け、本人曰く好々爺とした様子で話し掛けたのだ。

客観的にはどの面下げてシンジに話し掛けたのか理解に苦しむが、シンジが覇道に所属しているからお前達の所業は殆ど知っていると見ていいのに。

因みに八話で侵入者があった時は、シンジは顔を隠していたし、アイオーンに乗っているときも祝詞の声は響いたがその姿は捉えられていないので、冬月にしてみれば第二話以来のシンジとの直接遭遇になる。

この電柱老人も髭サングラスに感化されて都合のいいことを考える習性が付いているのだろうか、そうなると人生色々と終わっているような気がする、本当に色々な意味で。

外道具合とか鬼畜レベルとか人間の道徳をどれだけ捨て去ったとか生物のヒエラルキーの最下層からどれだけ上のほうに居るのか、因みに一番下は髭と有害作戦部長。

まぁ、この老人に関しては髭に関わった時点で既に終わっているのでどうでもいいことだ。

既に人間としての尊厳は捨て去ってプライドだけの生き物だろうから。

「シンジ君じゃないかね、久し振りだね」

先ずは社交辞令か挨拶の言葉を掛けてくる電柱、因みに覇道一行声を掛けてくるまでに冬月の存在は気付いてはいたがどうでもいいとばかりに無視していた、今回の対象はネルフでは無いのだし、それ程意識をまわしていなかった。

実際は意識をまわす価値も無い、いや意識を回したくないが正確だろうか。

護衛として来ている以上ネルフの連中が何かしらしかけてこないか警戒はしていたが、勿論電柱のあたりにも。

声に反応してシンジがそちらに顔を向けた先に居るのは似非紳士の笑顔を称えた狒々爺、冬月、正直シンジは髭外道共々会話したくない人間の上位に位置する人間だろう。

だから気付いていても無視していたんだし。

因みに会話したくない人間一位は有害作戦部長で二位は人類の屑、髭である。

「ええ、久方振りです。冬月一佐になられたそうで」

准将から階級が落ちた事を皮肉るシンジ、あえて無視していたのに関わってきたので不機嫌度倍増の返答となっている。

最近影が薄くて忘れられがちかもしれないが、シンジ君一話ではかなり毒舌を吐いていた、嫌いな相手に対する性格の悪さは中々のものなのである、九郎を兄と持ちアルを姉と持ちウエストを先生と持つのだから当然といえば当然の性格と毒舌。

で、シンジから予想外の切り返しを受けた電柱爺。

普段人から表立って何も言われないからか、それとも自分の孫のような年の餓鬼に皮肉られたことに怒りを感じているのか、微妙に笑顔が引き攣った表情で返答する。

これぐらいの皮肉を軽く流せないようだとシンジとの会話はキツイものがあるだろうが。

大体、シンジを普通の子供という枠組みで見て自分を上位者と位置づけて話しかける老人に、子供から殆ど侮辱まがいの言葉を慇懃無礼に繰り返されて耐えられるわけが無いのだから。

シンジに激烈に嫌われていることぐらい予想できそうなことなのに。

「げ、元気そうで何よりだよ。それにしてもシンジ君、何故ここに。子供が来る所ではないよ、ここは」

確かに当たり障りの無い発言なのだが、この爺、ボケたのだろうか?

「仕事です。お年ですのでお忘れですか、僕は国連軍仕官ですので仕事をするのは当たり前です。以前僕の階級を述べたと思うのですが、それに年齢は関係ないでしょうご老体。貴方方も子供をパイロットとして使っているじゃないですか」

因みにシンジの国連軍内での階級は特務少佐、佐官階級を与えられている、九郎は中佐で、ウエストは技術大佐、以外にウエストは階級が高かったりする。

事情としてはウエスト、覇道の技術部部長兵器武器関連総括責任者であるからそれに相応しい階級を据えただけ、但し技術部の実権を握っているのは技術部主任兼技術部部長夫人(?)のチアキである、ウエストに予算とか任すととんでもないことになりそうだから。

公私に渡り尻に敷かれているウエスト、でも彼がこのSS男性陣で一番幸福なのかもしれない、少なくとも人並みの幸せという観点から見たならば。

なお、人事を割り振ったのは姫さん、人間の手綱を取るのが上手い。

で、耄碌老人,記憶能力がいかれたかと乱暴に解釈すれば出来るシンジの発言に、更に笑顔が引き攣らせる。子供と見下す割には言う事に一々過敏な爺である、子供と思っているなら流せばいいものを、プライドだけは無駄に高い、大体プライドを持てるほど貴様の人間、否生物としての尊厳は高くない。

まぁ、世の中往々にして不相応なプライドを持つ輩が多いのだが。

後、電柱の笑顔も所詮上辺だけで浮かべている笑顔だから化けの皮がはがれるのは案外速そうだ、というか剥がれるのは時間の問題だと思う、多分。

「そう、そうだったね。しかし、奇遇だ、こんな所で出会うなんて。そう言えば、今日本にいるならば調度いい。君のお父さんが今怪我で入院しているのだよ、見舞に行ってやってはくれんかね、それなりに重傷でね、仮には親子だろうアイツも元気が出るかもしれん」

心にも無いことを言う爺である、この電柱だって髭の心配などしているまいに。

重ねて問うがこの老人、本気でシンジが何も知らないとでも思っているのだろうか、それとも60前後の年齢で本気で痴呆症か。

痴呆症かの有無は置いておいて、この老人。

ついでに痴呆症以外に考えられるのはネルフのトップは全員狂牛病に感染して脳がいかれているかだ、牛とか髭とか反省としないし、過去の教訓を思いっきり無駄にするから。

シンジの立場が自分達の徴兵を拒否する為だけの仮初の階級だとでも思っているのだろうか、確かに彼等はシンジが実際に働いているところを目撃するのは初めてだが。

前回の襲撃では顔を隠していたし、アイオーン搭乗時では顔は判るまい。

それにもし見舞いにくればその時に何かしようと考えている可能性は高そうだ。

多分言ってみるだけならば問題ない、来てくれれば儲けものとでも考えたのだろう。

電柱の申し出、髭外道の見舞いだが、電柱も本気でシンジが来ると思っていたかどうかは知らないが、シンジの怒りは買った、髭外道との親子扱いはシンジにとっては嫌過ぎることなのだから。

「それはお断りしますよ、冬月一佐。僕とあの男に親子関係なんて無いんですから。見舞いに行く義理なんて欠片も在りません、僕はあの男の顔を一瞬だって見たくないんですから」

かなり辛辣だ、でも確かにシンジと髭の間に血縁以外の関係は既に絶無なのである、見舞いに行く義理も義務も無い、あるのは嫌悪の対象。

口調で徹頭徹尾髭に対しての拒絶を表しているのが判る。

「そ、そうかね、だが仮にも親子だろう、一目ぐらいは」

しつこい、やはり何か企んでいるのだろうか。

多分企んでいるのだろう、だが初号機がスクラップでシンジを拉致ってもしょうがないと思うが、人質などのやり方は逆効果だと前に散々学習しているはずだし。

ああ、学習出来ないのか、脳がいかれているから。

だが言葉を吐く度に自分の孫のような年の子供に手玉に取られるように反論されている、情けない事この上ない、これでは舐められているのは電柱自身だろう。

と、そこでシンジが再度口を開けようとしているときに。

「ねぇ、シンジ。こんな爺相手にするくらいならエンネアをエスコートするにゃ。今日のシンジの相手はエンネアだよ」

シンジの腕に抱きついてくる赤い髪に白いワンピースドレスで着飾ったエンネア。

「ほらほら、其処の間抜けそうな爺の相手するぐらいならエンネアとお話でもして暇を潰すのが時間の有効利用だよ、こっち行こ」

腕に抱きついたままシンジを引っ張り、ついでに冬月に対して毒を吐く。

だがこの程度の毒で済んでいるのは奇跡といってもいい。

エンネア、“暴君”としてはこの狒々爺は今この瞬間にも殺したい相手だろう、公衆の面前で手を出さないだけの理性はあるものの、紛れも無く電柱は自分の大切な弟、家族に手を出した馬鹿の一味、シンジに向ける笑顔の下には絶対零度の怒りを湛えて必死にその怒りを鎮めている事だろう。

会話に割って入ったのはこの狒々爺と愛しのシンジが会話するのがムカつくから、口を利くだけでシンジが穢れるとでも感じたのか、大体目は笑っているが口元は全く笑っていない。

で、間抜けそうな爺と小娘に直接的に侮蔑された電柱。

シンジだけではなく小娘にまで公然としかも直接的に言われたのだが、まだ耐えていた、
少し目付きが不機嫌そうになって、上辺だけの笑いも引っ込みつつあるが。

「その可愛らしいお嬢さんは誰かね、シンジ君。恋人かね」

一応世辞を使うだけの余裕はまだあるようだ。

「ん、爺さんに言われることじゃないにゃ。私たちと関係ないんだし、それに勝手に話しかけてくるんじゃない。エンネアは爺さんのこと大嫌いだから」

ズバズバ言いたい事をいう、確かに殺したいぐらい大嫌いだろうが、手を出すのは耐えているとしても和やかに会話するのは我慢なら無いか。

だがいい加減に冬月副司令,電柱の上辺だけの似非好々爺とした姿も限界に近くなっていたのか先程までの笑顔に僅かの怒りを滲ませ。

僅かばかり厳しい口調に変わる。

「君達、さっきから少しばかり口が過ぎるんじゃないのかね。仮にも年長者に対して」

だが、その諌める様な口上は途中でさえぎられる。

「貴方に説教されたくありませんね。大体何で話しかけてくるんですか鬱陶しい。ネルフの悪巧みを僕達が知らないとでも、先程から口が過ぎると言いますがね、こちらとしてはワザと言っているんですよ。貴方との会話は不快ですので、貴方も見かけ通りのお年で年長者を自称するならそれを察して消えてくれませんか、目障りですから」

シンジの口から放たれる直接的な直球の毒、冬月との会話は不愉快を通り越しているのかもしれない。

だが、子供と見下す相手から不愉快だから消えろと言われて大人しく引き下がるほど冬月は人間が出来ていなかった、自分達がどれほど後ろ暗いことをしてきたのか顧みずに。

まぁ、顧みる能力があればこの爺も髭と同じ段階まで堕ちることはなかっただろうが。

で、今は単純に子供に言われたことに腹を立てる爺、自分達が人間いや生物最低限の尊厳も放棄した畜生であるという自覚は無いのだろう、そうであれば自分達のしたことを仄めかされて怒りを感じる前に引き下がるだろう。

電柱の場合なまじ自分が外道だと自覚している髭より性質の悪い、髭はある程度自覚しているようだから自分が外道であることを。

そして、怒りのまま反論しようとする電柱だが、今度はエンネアが聞こえるかどうかのような声音で言葉を綴る。

「五月蝿いよ、爺さん。アンタの所の司令のように腕を切り飛ばされたくなけりゃ、黙ってなさい。この場では命はとろうとは思わない」

その口調“暴君”モード、凄絶といえるほどの迫力に満ちた笑みを浮かべ語るその姿は正しく破壊の女神、魔術の王の姿を顕現している。

地球上の単体生物最強クラスの少女の眼力と言霊、電柱程度の小物が相対出来る存在の次元を遥かに超越している、声だけで言葉を発しようとした電柱を完全に制圧する。

声だけで怒りの感情を凍結させ、目の前にいる少女に完全屈服させられる形となる、逆らうなど愚かに過ぎる、否逆らうなどという選択が出来るものか。

“前回”の襲撃の時“暴君”は自身が発する魔力だけでネルフの迎撃部隊を沈黙させたのだ、発狂するほどの狂気を含んだ魔力を放出する事によって。

今はその時より幾分弱い力しか発しなかったが、髭の仮初の凄みなど、豆粒以下に感じるほどの威圧感、王者の風格、矮小たる小者には言葉を失い、従うことを選択するしかない。

「う、くぅ、はぁっ」

金縛りにあったように体が固まったのか電柱から漏れ出す苦しげな呻き声、呼吸活動さえ一時的に停止させられたのか、だが少年少女は電柱の苦悶になどは耳を貸さず。

固まり苦しむ冬月の耳元で呟き通り過ぎた。

「では、冬月一佐、もうお目に掛からない事を願いますよ、お互いの為にね」

シンジは朗らかに笑い電柱に言葉を掛け立ち去った、エンネアもいつの間にか電柱限定で晒していた魔力を引っ込めシンジの腕に恋人同士のように腕を組んで立ち去る。

何時も通りの無邪気な笑顔を浮かべて、年相応の少女の顔をして少年と談笑し笑っていた。

其処に魔の王たる片鱗は見当たらず無垢なる少女の姿にしか見えない、“暴君”たる威厳は無く、それ故に恐ろしい、一瞬でこの少女は魔王と成り果てるのだから。

無垢と修羅、母性と残虐性を内包した少女“暴君”エンネア。

後に残ったのは子供に威圧され侮蔑された矮小な老人一人。





これが披露パーティ開催前の一幕。

小物と王の僅かな小競り合い、競り合いにもならない蹂躙と言うべきか。

渋面を作って晒し者の席に座る老人の苦り切った顔は、髭と同様、少女に脅えた内心を偽る仮面にしか過ぎなかったのだから、周りからは電柱自身の扱いに不満を覚えての渋面だと失笑を買いながら理解されているのは電柱自身にとっては幸いだったが。

小物の老人が周囲にどう見られようと知ったことではない、現在は進行形で日本重化学共同体のJA、正式名ジェット・アローン(別名農協)の説明、プレゼンテーションが行われている。

説明といっても事前に配布されたパンフレットの内容を朗読するような内容なので退屈極まりなく、面白味など欠片も無いのだが。

ここでも爺に踊ってもらおう、精々今日の役回り喜劇役者を演じ切って貰う。

因みに説明をしているのは白衣を着た中年男性で名前は時田、なんとなくパッとしない、ぶっちゃけ何処にでも居る科学オタクっぽい。

「以上で説明を終わりますが、ご質問のある方は御座いませんでしょうか」

ここでちょっと、九郎達、覇道が招待されているほうの席を見ると、九郎、アル、ウエスト、エンネアの四人、器用に座ったまま腕を組んだ姿勢で惰眠をむさぼっていた。

傍目には目を瞑って座っている様にしか見えない、でも四人もやると眠っているのはバレバレなのだが、あまりに説明が退屈だったから睡魔に負けたのだろう、最初から聞く気があったのか非常に怪しいが。

今現在は質問タイムになったのでチアキがウエストを起こしていたるが起床にはもう暫く時間が掛かるだろう、因みにシンジは他の三人を起こそうという気は無いらしい。

幸いかどうかはしらないが説明を行っていた時田はそれなりに時間を稼いでくれるようだし。

「ご質問が出ないので、こちらから窺うことに致しましょう。JAは現在人類が脅威に晒されている未知の生態、使徒を対象として建造されております。方々で名の高い対使徒殲滅機関のネルフの方に御意見を賜りたいのですが。説明をお聞きになって如何だったでしょうか。ネルフ副司令、冬月一佐」

これも嫌がらせの一環だろうか、どうにも時田の棘がある口調を電柱に向ける。

只でさえ晒し者なのに名指しで指名されて会場中の注目が電柱に集まる、電柱の表情も先程の渋面が更に苦り切ったものに変わり、内心自分がこのような場所に来ることになったことを呪っているのかもしれない、特に髭とかを。

それでもここまで注目を集めると何らかのリアクションを執らねばならず、立ち上がり、会場スタッフが持ってきたマイクを受け取る。

「説明を聞く以上、私はこの機体が有用であるとは思えませんな、勿論実際の起動動作を見なければ如何とも言い難い事ですが」

この電柱の台詞に時田はまるで動じず。

「ほう、ではどのような点が問題なのでしょうか、問題点を指摘されると今後の改良点になりますので、率直に述べてもらいたいものです」

「では、其方の示された機体の制御ですが、遠隔操作では機体運用に問題がありますな。格闘戦では遠隔操作ではどの様にしても反応が遅れてしまうのでは」

確かに、零コンマ以下の判断力が問われる格闘戦が使徒戦の主軸だと考えられている、砲撃戦を主体として考える長距離戦ならば最初から人型兵器ではなく高威力長距離砲を作ればいいのだから。

「ですが、JAはある程度の自律的な判断を搭載しているAIで行うことが出来ます。細かい機動の命令は必要ありません。運用する人間の能力でどうとでもなることではないでしょうか。ああ、そちらは運用する能力があるものが居ないのでしたな。先の使徒戦ではご自慢のエヴァンゲリオンを磔にして砲火に晒したほどの失態を呈しましたから。あの機体の修理費は何処から出るのでしょうかね」

痛烈な皮肉、確かにエヴァを磔の刑に処したのはネルフだろう、しかもこれは周辺に居た組織の目に留まっている。

時田のこの言葉から周りから笑いが漏れ出す、普段尊大なネルフの無能を表立って謗られる様はこの披露会の出席者から見ても愉快痛快であろう。

最近は国連議会などで半公然と謗られてもいるが。

そして、冬月もその皮肉に切り返す術を持たない、完全なネルフの失態で言い訳を出しようが無いからだ、心の中では指揮を執っていた有害作戦部長を数百回は銃殺刑に処しているかもしれない、それでは飽き足らないだろうが。

因みに対作戦妨害部長捕獲班を創設したのは電柱だったりする、創設理由には多分に普段の憂さ晴らしがまじっていそうだ。

実際のところ有害作戦部長が指揮するエヴァならば別の指揮官のもとで反応の遅い遠隔操作をエヴァでやって戦ったほうが遥かに高い戦果が出るだろう。

あの場当たり、考えなし、行き当たりばったりの指揮に比べれば、反応が遅い程度どうという事はあるまい。

つまりは今の冬月の恥辱、殆どが、いや全てが有害作戦部長の功績といえる、正しく有害作戦部長としての。

有害作戦部長から受けた被害は仕事量、ストレス、恥など様々な要素で膨大で電柱の中では処刑したい相手ランキング一位に輝いているのだから。

それでも、処刑も左遷も懲戒解雇も出来ないのが現状なのだから、電柱も哀れ。

その結果の対作戦妨害部長捕獲班だが、創設理由はかなり自己的だが役に立っているからその辺は良しとしよう。

で、時田のネルフ苛めは続く。

多分、会議中に時田も電柱の心の中の処刑したいランキング上位に入れることだろう。

「他に問題点はありませんかな、高名な学者でもありました冬月副司令でありますならば他の問題点にも気付かれているでしょう」

やんわりと丁寧に嫌味を交えて質問を続けてくる、完全に冬月が晒し者になるように、今会場中のアンチネルフ系の組織は時田に心の中で喝采を送っていることだろう。

少なくとも今現在時田はこの会場のヒーローだった、今この時は。

因みに戦略自衛隊の皆々様様は完全なアンチネルフ系組織ではないが、ネルフからの扱いの悪さから心の中で最大級の大絶賛していた、本当に嫌われ者、国連非公開組織ネルフ。

で、電柱も心の中で恨み言を言いつつも言葉を吐く。

「内燃機関が内蔵となっているが、安全性の問題はどうなのかね。原子炉を搭載しているようだが、攻撃を受けて爆発では核爆弾と変わらんのではないかね。それならばN2兵器のほうが余程有用だと思うがね」

これは真っ当な指摘だろう、大体何処のキチガ○がこんな設計にしたんだか、原子炉搭載など狂気の沙汰としか思えない。

どれだけ安全性を確保したのかは知らないが、原子炉搭載の格闘戦を想定したロボット兵器、つまりはニトログリセリンをポケットに入れて喧嘩しろというのと変わらない、もし市街地で原子炉が暴走し爆発したら死者は考えたくない数に上るだろうし、爆発した大地は放射能塗れの死の大地になり被害は計り知れない。

どれだけ安全に自信があるのか知れないが世の中に絶対は無い、絶対はない以上このような危険な兵器は設計段階で棄却するべきなのだ。

JAは別名をつけるならば歩く核爆弾だろう。

因みにN2兵器は放射能の類は出ない現代最強の攻撃力を持つ爆弾となっている。

「それならばご心配なく、何層もの装甲版に覆われ、安全管理も考えうる限りを尽くしております万が一にも爆発はありません」

だからそのありえないというのは何が根拠だ、実際に攻撃を加えて試験をしたわけではあるまいに。

所詮机上の空論、空想の域を出ない計算結果でしかないのだろう。

実際に試して使えるか、暴走しないか、安全なのかの試験をしてから言って貰いたい台詞だ。

この発言のみならば客観的に見て電柱の意見のほうが正しい。

アニメを見る限りではそれ程動作実験を行っているようには思えないし。

だが、それを言われて更に周囲から失笑を買い反論することが出来ない電柱。

周囲が電柱を嘲笑の目で見ていなければ電柱の意見に追随してくれるものも居たはずなのだが、追随してくれる者は居ない、普段不要に嫌われているツケがきているのだろう。

これ以後も同様の質問が数回続けられたがどれもネルフを嘲笑うものだったとだけ記す。

まぁ、実際現在のネルフの状態は笑いの対象にしかならないのだろうが、それだけの実績と戦歴を見事なまでに披露してくれている。

大言を叩いていたわりには負け続き、世界のお荷物、無能機関の中傷を甘んじて受けざるを得ない立場なのだから、せめて実績を作らなければ反論もマトモに出来まい。

散々笑いものにされた電柱の顔は屈辱に染まりきり、憤怒を露にしていたが普段の似非紳士ぶりの成果かその怒りを周囲に撒き散らすことは無かった。

だが、その耐える姿を含めて見事にピエロである。





で、ネルフ苛めが大体終わりそうな頃合でとっくに目覚めていたウエストが挙手して立ち上がる、何故かとっても嬉しそうに、微妙に加虐的な笑いを浮かべつつ。

どうせ何か企んでいるのだろう。

因みに九郎達はまだ寝ている、多分そろそろ起きるだろう、ウエストの口上が始めれば。

「如何されましたかな。えーと、国連軍特務部隊“ブラック・ロッジ”の技術部部長、ドクターウエスト氏」

手元の資料を見てウエストの名前と所属を読み上げる時田、ウエストは学会等に所属しない無名だから知らないのだろうが。

基本的にマッドサイエンティストだし、アーカム限定ではやたらと知名度は高いのだが。

それでも会場中の注目を集めるには十分だった、その目立つ外見も含めて。

件の“ブラック・ロッジ”の技術部部長となればそう軽く扱える存在ではない、現在のところの実質的な使徒殲滅組織実績を持つのは国連軍であり。

国連軍の一部隊、独立愚連隊の色が強いものの国連軍特務部隊“ブラッグ・ロッジ”のみが使徒殲滅に成功している、そして殲滅に用いられている、“鬼械神”は一般的常識から考えれば人が作り出したものと考えられ、その点からウエストは無名ながらそれ程軽くは見られていなかった。

因みにウエストは“鬼械神”の整備、改良は行っているが零から作ったことは無いし、デモンベイン以外は人工で作られたかどうかも怪しい産物なのだが。

唯一アイオーンはウエストにいいように弄くられているのでウエストモデルといっても差し支えないかもしれないが(他の機体は弄くると怒られるらしい)。

アイオーンをエルザが搭乗出来るように調節したのもウエストだし。

「うむ、質問なのであるが。我輩の質問は簡単なのであるからして答えられると確信しているのである」

一呼吸ほど間を置いて。

「そのロボットで使徒を倒せると思っているのであるか?」

少し大きな声で疑問系の発音で根本的なことを聞いた。

根本的過ぎて基本的過ぎてあまりに質問の意味が直接的過ぎて呆気に取られるような質問。

この質問に時田は一瞬呆けて、加えて会場内も一瞬沈黙に包まれた。

チアキが妙に嬉しそうに手元の通信モバイルを操作していたりするがこれは後で説明。

何故か九郎たちはウエストの声が響いた瞬間に目を覚ましていた、何故かは知らないが、多分、何かやらかすんじゃないかという期待感と危機感が沸き起こり目が覚めたのだろう。

で、暫く呆けた時田の反応はと。

怒っていた、怒るだろうけど普通。

質問内容そのものが馬鹿にされているようなものなのだ、この披露会は使徒を倒す為のロボットの披露会なのだから、あまりに質問が根本的過ぎる。

で、怒りに声が出ないうちにウエストの追撃。

「何であるか、簡単な問題であるぞ。倒せるのであるか、倒せないのであるか、我輩は難しいことを聞いているつもりは無いのであるが、如何に?」

会場中が沈黙しているので声が良く響く、時田の顔が怒りに真っ赤になっていた。

「まーだ、答えられないであるか。我輩其処まで難しいことを聞いたのであろうか、トンと覚えが無いのであるが。シンジ、この問いは簡単明瞭であるな?」

傍らに座っているシンジにウエストが問いかけシンジが返答する。

「まぁ、簡単なんだと思いますが」

確かに簡単なんだろうが、簡単には違いないが、喧嘩売っているぞ。

因みにチアキは諌めない、多分相手が怒っているのは理解しているはずなのだが、ウエストの言動を止めようとはしない。

この夫婦なんとなくこの披露会で企んでいる節がある。

後、ウエストは自分の質問に答えられないのをマジに不思議に思っている、その辺の感覚は一般人とは一線を画している所だろうか。

その辺が判らないのは性質が悪いと言えよう、やられている相手にとって。

で、いい加減に馬鹿にされている(ウエストは馬鹿にしているつもりはちょっぴりしか無い)当人の時田が我慢の限界を超えて切れた。

「倒せると思っているに決まっているだろうがぁっ!!!」

吼えた、静寂を切り裂く怒声、怒りの篭った咆哮。

で、いきなり怒鳴り返されたウエスト、怒鳴られるとは思っていなかったのかちょっぴり吃驚、飽くまでちょっぴりだが。

怒鳴られた程度で気にするような細かい神経を盛っているわけじゃあるまいし。

で、全く懲りた様子が無く少しおちゃらけた口調(普段どおりの口調)で質問を続ける。

「なーにを怒っているであるか、我輩何か気に触ることを言ったであるか。それともカルシウム不足であるか、いかん、いかんであるぞ、日々の食事は好き嫌いせずなんでも食べるが健康の秘訣、良い子の為であるぞ。我輩の娘など最近やっと好き嫌いを克服してよい子になったのである(レイの肉嫌いのこと、但し、直したのはエルザの努力)。おっと、チアキなんであるか(袖を引かれた)、話が逸れているであるか。おおぅ、そうであったそうであった。では、勝てると思っているのであったならどうやって勝つのであるか、使徒に?」

長々と紆余曲折のある口上を述べていたが結論するとこうである。

つまりは、使徒に勝てると言うのならどうやって勝つのか?

勝てると思うではなく、具体的方策を聞いているのである、何分間稼動するとか、遠隔操作に問題があるとか、人的制御の問題点とか、人道的問題とか、そういう問題は重要ではあるがひとまず置いておいてどうやって勝つ。

確かに一番重要な問題だろう、こと戦いにおいては。

殆ど無敵の盾(デモンベイン達には通用していないが)のATフィールドを持ち非常識な能力を誇る使徒に勝つ為の方法論は?

どのように自分達の兵器を使って敵を倒すのか。

少なくとも時田達、日本重化学共同体の説明ではその点の説明はされていなかったのだ。

ウエストが質問したのは回りくどいがその点である、時田を怒らせたのはウエストの口調と性格のせいだろう、慣れないとウエストとの会話はストレスが溜まりそうだし。

どれだけ問題抱えていようと勝てれば良い訳で、どれだけ完璧なものを作っても負ければ問題外である、一応は人類の存亡を掛けた戦いの決戦兵器、負けたら価値が無い以前に全て終わりなのだから。

幾ら製作者とはいえ作って終わりではないだろう、作ったはいいが根本的に敵いませんでしたではお話にならない(これは使用した指揮官の能力を考慮に入れないで最悪を想定した計算上の結果で)。

で、この質問に対する答え。

時田は持っていなかった、正確に表すなら考えていなかった。

只作っただけ、使徒のATフィールドや音速を超えるような攻撃、特殊な防御方法を持たなければ一撃で吹き飛ばされてお陀仏な威力を誇る砲撃、またこれから考え得る使徒の非常識な能力に対する対策、それらを一切合財考慮に入れていなかったのだ。

無責任なことである。

考えていたのは格闘戦といったところぐらいだが、それが通用しない場合もあるだろう、その格闘戦自体もATフィールドの問題を解決しないといけないのだがそれを除いて考えても問題はある。

第五使徒はその典型例となる、第五使徒相手にはJAは役に立つ以前に巨大な自滅用の爆弾以外の使い道が無いだろう、少なくとも思いつかない。

JAに持たして戦略自衛隊の陽電子砲を使うなら普通に大地に固定して使えばいいのだし。

といっても、それをはいそうですかと認めるわけにもいかない、認めれば、役に立たない物を作ったと自ら認めるようなもの。

だが、自分たちは作るだけで後のことは知らんと開き直ることも出来よう筈がない。

まぁ、作った当人の考えではこれだけのものを作ったのだから勝てる筈だとか思い込んでいるのかもしれなかったが、それは只の馬鹿の思い込みだろう。

求められているのは使える道具であって使えるかどうか判らない道具など危険すぎるのだから、それが普通の道具ならそれ程問題ないのかもしれないが、信頼性が物を言う兵器では危険すぎる。

で、答えるべき答えを持ち合わせていない時田は黙り込むしかなかった、黙り込んだら黙り込んだで認めているようなものだが、実際に使えるかどうかは判らないと。

実際に冷静に観察すると見てくれだけの人形を作ったのと変わらないのだ。

そして沈黙は肯定を表す。

で、黙っていると黙らしてくれないのがいるのだ、黙っていても既にJAの商品価値あまり期待できないだろうが、タイミング的には止めを刺すような感じで。

微妙にウエストがサディスティックに歪んだ笑いを浮かべてウエストが質問を続ける。

因みにその時のウエストの笑いを九郎達はマッドの笑いとか言っていた。

「なんであるか、答えられないであるか、もしかして答えが無いとか言うのではないであろうな。使い方の判らないロボットなど、取説の無い機械と同じではないであるか。それは役立たず、無駄、粗大ゴミと変わらないであるぞ。おっと、失敬したである。これほどの大々的な披露会を開くほどである。そんな無駄遣いしないぐらいには利口であると考えるからして我輩の発言は間違いに違いないである。我輩、間違いは率直に認められる素直さは持ち合わせているので謝罪するである。ソーリーと。で、実際どう使って勝つのであるか?」

完全に馬鹿にしている、どうやらウエスト、相手がどう使うか考えていないことを見抜いて、その上でこの発言を言っているようだ、苛めっ子の気質全開である。

性格が悪いというか、いい性格しているというか、口喧嘩で敵には回したくない相手だ。

で、ここまで言われて何も言わないというわけにもいかない、会場中の注目が集まっているし、その辺を答えないとこの披露会完全に失敗に終わるだろう。

既に失敗しているのは目に見えているが。

だが、ここで反論すべき時田、現在些か冷静さを欠いていた、先のウエストの質問で切れて怒鳴り散らした所を、おふざけ口調での追撃、怒りのボルテージは上りっ放しの状態だ。

加えて自分では傑作と思っていた作品が役立たずだと謗られ貶されて。

だが、冷静に見えると確かに役立たずなのだからしょうがない、少なくともこの男は自分の作品の完成に目が行って、実用的なものを作ることを失念している、作るものは芸術作品ではなく兵器であり道具、道具として使えないものを作って役立たずと謗られるのは致し方ないだろう。

だがそれを理解する冷静さを今完全に時田は欠いていた。

で、興奮のまま時田が切れて叫んだことで紆余曲折を経て結果的に次のことが始まった。





ジェット・アローンVSウエスト謹製ロボット。(デモンベイン等ではありません、破壊ロボシリーズです)

因みにどちらかのロボットが壊れても責任はロボット所有者にあります。





この対決に至った経緯は単純で完全にブチ切れた時田が、開き直ったというか、何というか、つまりは逆切れして叫び声を上げ。

「これよりジェット・アローンの起動試験を始めます」

つまりは説明せずに逃げようとした。

そうは問屋が卸さないのがサディスティックな笑みを浮かべたドクターウエスト。

大体それでは会場中が納得しないだろう、それでは自分の作品が役立たずだと認めるようなものだ、冷静さを欠いた時田は強引に進めようとしたが、冷静さを欠いた人間を手玉に取るなどウエストにしてみれば簡単なこと。

ウエスト節連発で何故かいつの間にかドクターウエストの試作機との実戦形式の模擬戦をするように話が流れていって最終的に上記のようなロボットバトルに発展。





で、その当のロボットを用意しているのかといわれると、用意しているのである。

ウエストが出発前になにやら用意していたもので、チアキがウエストの口上中に弄くっていた端末で既に呼び寄せてあった、因みに細かいところは突っ込まないでプリーズ、ウエストなんですから(大体この言葉で赦されると思う気がする、大抵の常識外は)。

そのロボット、いきなり空から降ってきたのだ(空間転移ではなく)、本当に唐突にいきなり、因みに運んできたのはネルフのウイングキャリアーに似ていた航空輸送手段。

何処から飛んできたとか領空侵犯とか細かいところは無視しようキリがないから。

ウエストだからで説明は十分、多分。

世の中往々にして理不尽が赦されるものなんです、多分。

追記、態々ここまで用意しているのはウエスト始めからここで模擬戦をすつもりだったりする、参加者に配られた資料に目を通したとき「ロボットの美学が無いのである」とかのたまっていたし。





旧東京、日本重化学共同体実験場。

対峙する2体のロボット。

日本重化学共同体側。

頭部があるのか無いのかどうかわからない手足がやたらと長いオレンジ色のロボット、かなりデザイン担当者のセンスを疑いたくなるような不細工なロボットことジェット・アローン、JA、別名、農協、歩く核爆弾。

因みに携帯装備なし、内装武装なし、どうやら開発していなかったらしい、よって無手で対戦に挑むことになっている。

どうでもいいが、この時点でその程度しか開発されていなかったらあと一年もない使徒戦の期間中には絶対に実戦運用は間に合わなかったんじゃないだろうか。

確かに使徒の出現時期を知っているのは裏死海文書を持っていたゼーレとそれを知らされていたネルフ上層部だけなのだが、仕方が無いといえば仕方が無いのだが。

JA、使えたとしても無駄な努力に終わった典型かもしれない。

大型の人型ロボットなんて使徒のような反則級の化物が相手でもなければ使いようが無い、使徒戦が終わってから実戦使用が出来るようでは意味が無いだろうし。

あえて使うならば自走式核爆弾。

で、ブラック・ロッジ側。

外見的には無骨ながら洗練された人型機体、金属が放つ剛性が周囲を威圧している。

頭部からは特徴的な緑色の尻尾(尻尾でいいのだろうかコレ)が流れ落ち、外見的見栄えはJAに比べて天と地の差がある。

完全に見た目ならばこちらが正義の味方であちらが敵の機体だと断言できるくらいには見掛けの差はあるだろう。

因みに機体名、無敵ロボ28号VerU Typeγ「対大十字九郎、エルザを泣かした時用お仕置きロボ、父の怒り」(命名者ドクターウエスト)

ぶっちゃけ外見はデモンベインそっくり、外見的には色合いが妙に赤っぽいというぐらいの差しかない、性能差のほうはかなりあるが。

デモンベインならば魔道書が何であれ本来持っている機能レムリア・インパクトも使えない。

早く言うとデモンペイン三号機(二号機は三話でチラッと出てきました、一号機はゲーム版のデモンペインで黄褐色っぽい、ついでに二号機は覇道の地下基地にまだあるらしいがこっちは色が白っぽいらしい)、デモンベインのウエストがコピーしたパチモンである。

無論、その機体はネルフを初め各組織が姿程度は知っている機体にそっくり。

それだけで十分農協以上に注目を集めるところだが。

それを眺めている観衆の注目は完全にそちらに向いていなかった、機体のほうには目が行っているのだが微妙に視線がずれている。

若干右斜め上方に。

いや機体が驚かせることが出来なかったわけではなく、それ以上になんとなく興味を引かれるものがあったと言うべきか注目を集めるものがあると言うか。

まぁ、デモンペイン以上に注目を集めたのは機体が持っている武器。

何と言うか棒、日本とアメリカで共通して人気の高い球技スポーツで使われる棒、それを少し独特に改良したものを得物として両手に構えている。

武器としてはかなり痛そうな種類の得物。

判りやすく言うと釘バット、因みに金属製。

巨人サイズの釘バット、ご丁寧な事に金属製のバットに巨人サイズに合わされた釘をこれでもかと打ち込んでいる。

因みにウエストの付けた名前はデンジャラス君一号、「爽やかな血潮」。

因みに種も仕掛けも無い只の釘バットである。

なお、この釘バットの別名は“愚神礼賛”シームレスバイアス でも可。

構えは勿論、バッティングスタイル。

故に視線が機体本体の右斜め上方に集中することになっている。

加えて、この破壊ロボ、勿論人間搭乗型なので乗っているのは、ドクターウエストとチアキ、はっきり言ってエルザが乗らなければ普通の破壊ロボと能力的には大差無い。

エルザが乗れば彼女の処理能力で段違いの性能が出るのだが、人間が搭乗しては処理能力がおっつかない。

普通の破壊ロボとの大きな違いは両足にティマイオス、クリティアスを装備しているのでアトランティス・ストライクが出来るのと、段違いに早いということか、だがこの機能の制御もエルザが乗らないと少々キツイ。

まぁ、この農協相手に其処まではいらんだろうが。





で、戦闘開始、正確には模擬戦開始。

「ヘイヘイヘイヘイ!!!!カモ〜ンであるぞ。さぁさぁさぁさぁ。向かってくるがいい我輩の華麗なるフォームでスタンドに送ってやるのであーる。青空に走る白球は青春の証、今こそ我輩の青春カムバーック。目指すは甲子園である」

いきなりホームラン予告のポーズをとりながら、そのようなことをのたまっていた。

はっきり言って訳が判らんテンションだ。

久々というかマトモに搭乗するのは初めての自分の破壊ロボが出たことに激しくエキサイトしているようだ。

かなりテンションが高い。

因みに同乗しているチアキはというと。

「さぁ、やったるでぇ。その欠陥ロボはウチの美意識が赦さへん。なんとなく気に入らへんし、スクラップにしたる。それにさっさと終わらしてコレと日本観光といきたいんや。手を煩わせんとさっさとスクラップになったってやー」

中々に自己的な理由(しかも二つ、片方はウエストと変わらないし)でエキサイトしていた、巨大ロボットに乗って戦うというシュチュにも興奮しているのだろうが。

でも自分の旦那(?)をコレ呼ばわりは無いだろうに。

因みにこの音声は外部に聞こえていたりする、で、勿論更に興奮して操作しだす時田。

JAは一人で運転するのではなく複数のオペレーターを介しているようなので時田一人が操作しても余り上手くは動かないんだが、というか邪魔。





で、落ちが見えているのでここから少々簡潔に書くと。

時田が「舐めおって、そんな釘バットが通用するか!!」

と、叫んでJAを突進、それなりに速い速度で走ってデモンペインに迫るが。

完全に興奮して理性が飛んでいた、もしかしたらマトモな知能も。

どれだけ速く突っ込んだところでバットスイングより速く突っ込めるわけじゃないんだし、操っているスタッフも実際に動かすのはコレが初めてという体たらく、細かい動作など出来るはずも無い、只でさえ遠隔操作ということで反応が遅いのだし。

結果、見事なスイングフォームで振り切られた釘バット、JAの右腕をジャストミート。

どれだけの質量が釘バットにあるかは不明だが見事にJAの右腕は砕け散った、木っ端微塵に、微妙なパーツが釘バットの釘に刺さっていたりもするが、その辺がそこはかとなくシュール。

右腕が砕け散ったJAがその衝撃で吹き飛ぶような勢いで倒れ臥す、で、暫くたっても起き上がってこない、どうやら片腕を失って起き上がれないらしい。

追撃とばかりにデモンペインがバットを上段に振りかぶって、ゴルフスイングのクラブが上に上った状態で停止したようなポーズで。

「へ〜い、降参するであるか。降参して、負けましたと言うのであるなら。ここでやめてやってもいいであるぞ。何負けたことを恥じる必要ではないである、何もそのロボットの開発者が無能と言うわけではないのである。我輩が天才過ぎるのが。我輩こそが真の天才。ドクターウエスト!!凡人は天才に負けたことを恥じる必要はこれっぽっちもないのである。だって凡人だし」

一応降伏勧告なのだろう、内容は激しく馬鹿にされ喧嘩を売っているような内容だけど。

てか、降伏勧告じゃなくて完璧に喧嘩を売っている。

勿論、一瞬でJAが負けたことに呆然としていた時田だったが、騒音に近いウエストの降伏勧告(挑発)で我に返って叫ぶ。

自分で自分の作品に対する死刑判決を。

「この程度で私のJAが負けるわけが無い、立て、立たせろ、立って、あのガラクタを倒せ!!!」

半ば錯乱しているのかもしれない、部下に殆ど半狂乱になって命令を下していた。

怒りと他諸々の感情で理性を失ったのだろう、ウエスト相手にならもったほうかもしれないが、命令される部下も哀れ。

で、ガラクタと言われてちょっとご機嫌斜めになったウエスト、若干嬉しそうな声でのたまって躊躇い無く止めを刺した。

「ふっふぅ〜ん。降伏しないのであるな、では喰らうのである。デンジャラス君一号撲殺スイング」

ゴルフスイングそのままにJAの足を思いっきぶっ叩いた。

今度はJA面白いように横回転して吹き飛ぶ、左足を右腕と同じように吹き飛ばされ、右足を何とか繋がっている状態にされながら。

完全にスクラップ状態に追い込まれた。

左腕しか残っていないJAでは何も出来ないだろうからコレで完全決着である。





その後、時田が完全に壊れたことに気を失ったり、日本重化学共同体が出資者に迫られたり、その結果日本重化学共同体が解体したり、JAの建造が白紙になったりと色々な騒ぎになるのだがその辺は割愛する、きりが無いので。





翌日から暫く、覇道一行は日本各地を観光して回ったそうだ、終始ご機嫌な大十字夫妻とウエスト夫妻の婚前旅行コンビに挟まれ、体を迫ってくるエンネアを宥めるのに苦労するシンジ君がいましたとさ。

勿論、エンネアの求愛を逃れようとするのは一応のところのシンジの正式な恋人のエセルがどうなるかわからない恐怖感からである、肉体的関係になるのをエセルに凄い目で脅されてからシンジ君この出張に来ているのだから。

その時の目でシンジは本能的にエセルは九郎が初めて浮気した時のアルの激怒よりも凄まじいのではないかと予感していたりする。

シンジ君が女の子に囲まれて幸せかもしれないが浮気すると九郎より悲惨な目に合いそうという女難を抱えている幸せな不幸を抱えて生きる少年だった。

因みに最初の浮気相手は誰でしょうかねぇ、九郎は過去形で、シンジは未来形で。










To be continued...


(あとがき)

第十話農協編終了。

今回珍しく電柱に出番が、シンジと九郎にも(この二人の出番が少ないのは若干問題あるような気もするのですが)、後今回は喧嘩編とでも名付けられるでしょうか。
次回はオーバー・ザ・レインボーが本来の順序ですがアスカは既にネルフに来て去っちゃってますし、どうしましょうかね。
文中に書いていますがマナ、マユミは登場させるつもりですがゲーム版をやったことが無いのでかなりオリキャラ化するとおもいます、少なくともトライデントは出ません。
後、感想でとりもちさんから頂いたのですが瑠璃ってマギウスモードになれましたね、トンと忘れていましたが、その辺もどうにかしたいところです。
そろそろマヤに出番が回ってくるころでしょうかね。

追記、ロードビヤーキーの召喚祝詞、考えてくださる方いませんでしょうか。

今回は参考にさせていただくか、そのまま使用させてもらうか判りませんが考えていただけると大変楽になりますので、勝手ながらお願いいたします。


追記、次は殺人鬼と天才と魔術師との方になると思います。
こっちでは次の話辺りで伊吹マヤが出番あるかもしれません。
作者(sara様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで