無垢なる刃金を纏う者

第十一話 結婚凶奏曲

presented by sara様


日本国内にある欲望の坩堝兼自業自得の具現場所、ネルフ本部。

何処かの誰かが“固有結界”とか仕掛けているのかもしれない名前は“因果応報(ネメシス)”、それに晒されるのは殆どがその因果に関わりの少ない者というのが哀れの極み。

連日のように凄まじい量の仕事に追われる職員たちが勤務する国連非公開組織、対使徒殲滅機関ネルフ、本日更に仕事が凄いことになっている、殺人的と言っていい。

これだけの仕事量を一日でこなしている事が此処の職員達が優秀であることを表しているが、その仕事の殆どが敗戦処理であることを考えると、報われないことその一だ。

仕事を課せられてもその殆どが無能な上司の尻拭いから生じているから更に報われない、しかもそのことをある程度職員が自覚しているから精神疲労は肉体疲労の数倍だろう。

それで、今まで仕事をボイコットしないでよく頑張っていると言える、ただ以前の襲撃で心的外傷や肉体的外傷で退役した職員に羨ましいという感情を持ち出しているかもしれないが、特に今日本日、その感情はピークに達しているかもしれない。

ここの職員に疲労で人間が死ねるという事を教えてくれる日となるほど仕事量が増大しているのだから、もう嫌ってくらい。

まぁ、一日単位でそれを感じられているが数日単位で考えると申し寝るぐらい働いているかもしれない、それでもそんな殺人的な仕事をこなしていても極少数の人間のせいで世界の役立たず扱いをされているのが救われないが

本日の仕事量増大の理由は、アメリカ支部で製造されていたエヴァンゲリオン参号機が日本、ネルフ本部に空輸され到着するのが本日であり、その搬入の為に関係各所の職員は仕事に忙殺されている、今日あたり過労者が出て職員の何人かが病院に運び込まれてもいい頃合だろう。

因みにこの三号機に関しても交換部品や代替部品は海路での移送となっているのだから、壊れたらしばらくは修理に時間がかかる、いや手がつけられないのは確実で、壊れるのを前提に考えることが当たり前の兵器なのに、その代わりの部品が届くのがかなりの時間差を持つのもどうだろうかと思うが、満足な調整も出来ないのではないか。

つまりは二号機と同じ扱いで輸送されているのである。

そして三号機の次に待ち構えているのはやはり海路で輸送されてくる四号機、これにはアメリカ支部の職員も随伴しているのだが、彼らが来たところで仕事量にどれだけの影響が出るのか。

そんな状況の見通しの利かない仕事の先行きにストレスも頂点に達しているはず、つまりは本当に疲労が人間の致死に行き着くことを教育してくれる、体感として実例として、今日まで過労者が出ていないほうが不思議な気もするが、時間の問題になってきた。

過労者が出ようとこの組織のトップの外道はそれがどうしたと意にも解さないだろうが、所詮この外道にとっては自分の部下など働き蟻程度の存在価値が無いのだから。

道具の疲弊など考えない、其処から出る不都合にも思い至らない、代わりをあてがえばいいといった程度にしか考えていない。

でも、現在これ以上職員が減られると更に仕事の効率が落ちるので悪循環であるから、外道もそろそろ働き蟻の状態を鑑みなければならないだろうが、ついでに代わりを宛がっても設備や様式、技術に慣れる前に過労者になってしまったら自転車操業のような人の使い方になってしまいやはり大問題だろう。

その辺の問題に関しては電柱がやっても構わんが、つーか電柱がやるしかないのかもしれない。

それに付け加えて離職者を何とか留めないといけないのだが、少なくとも海外の支部では離職者が大量に出始めている、特にアメリカ支部では洒落にならないレベルの離職者数に上っている。

本部ではそう言った自主性の高い人間は早々採用されていなかったのだから離職者はそれ程多くはないのだが、ポツポツ出始めるだろう、この辺の対策も必要である。

というかこれも電柱の仕事だろう完全に。

因みに鑑みないと仕事が遅れる=エヴァが運用できない=出撃さえ出来ない=無能組織=予算が降りない+国連で叩かれる=計画の支障=外道の欲望崩壊となっているから外道自ら仕事しないとまずいだろうと突っ込みたい。

因みに四号機のほうは海路で輸送されていると上記したが、これにてアメリカ支部にあったエヴァンゲリオン全てが日本本部に輸送されることになり、同時にアメリカ支部は先の不祥事の積み重ねにより閉鎖が決定している、離職者の数や不祥事の連続で支部自体が維持できない状態に追い込まれたためだ。

なお、これにより老人会の計画で必要な量産機の製造場所が狭まり、状況的にかなり追い込まれていたりする。

職員は本部にある程度は呼び寄せられることが決定しているが絶対確実に呼び寄せられるよりはアメリカで再就職先を探したほうが賢明だろう、この組織に来ても碌なことが無いだろうし、その碌なことが起きない事態を起こしている張本人は本部に存在しているのだから、ほぼ確実に不幸になる。

まぁ、海外支部の人間もある程度情報を把握している優秀や思慮深いとされる人間は沈没する船から逃げるネズミの如くネルフから離れているから呼び寄せられるのは二流三流どころだけ、一流どころの人間は自分の進退を見極める能力もちゃんと備わっているのかこの人事異動がそれなりに関係各部署の仕事量を増やしてくれているのだが。

何せ、本部が目星を付けていた優秀と思われている職員が辞職してしまい、何度も別の人間を選考して辞令を発令しなければならないのだから。

幾らなんでも最初はアメリカ支部の人間をそっくりそのまま移転させるわけには行かないから最初は優秀者のみを選ぼうとしたのに、此方に来るのは残りかすみたいな奴等だけである。





加えて新たなチルドレンの選出が決定されその事実に対しても仕事は増えている。

護衛の編成だったり(監視、防諜を含む)、各種実験の準備だったり、強制徴兵が出来ないので各種書類の申請だったり、仕事内容は多種多様だが、仕事量が増えるという事では同じ。

特に今までは強引に行えた特務権限が制限され、少年兵であるチルドレンを登用する際に掛かる手間はかなりのものとなっている、大体国際法では禁止されている少年兵を何とか正規に登用するのだ、お役所仕事の書類量を甘く見てはいけない。

無駄に多いのである、同じような内容の書類が何枚も何枚も、一枚に纏めろと叫びたいぐらいの、細かく分割された内容、多分簡潔に無駄をなくしたら書類の量は数分の一にはなるのではないだろうか。

で、疲労と仕事量、しかも仕事の不毛さいう点では一般職員と最近はいい勝負を演じているのが組織の長である髭。

直筆で書かなければならない書類も山ほどあり、利き手を失った髭が何回も何回も書き直して左手で書いたらしいが、その辺は自業自得だ、電柱が書いたのでは却下されるので致し方ないのだが。

放り出そうとしても放り出せないし、押し付けようにも押し付けられない仕事地獄、そこに追い込まれている髭。

因みに、これらの作業は本来なら新たにネルフの生贄が増えることも意味しているが、今回は諸々の事情で生贄(ネルフにとって都合のいい思惑を成就させる為のチルドレン)に仕立て上げるのも難しそうだ、現在のネルフの立場のせいで、立場というか実情でもあるだろうが。

で、つまりは元生贄候補(いつ生贄に舞い戻ってもおかしくは無いが)、選抜が決定し配属されるのはシックススチルドレン霧島マナ、セブンスチルドレン山岸マユミ、中学二年生の女の子、彼女達の個人的なプロフィールを記述すると。

霧島マナ、十四歳、先日まで第二新東京市にて居住、家族は戦略自衛隊の高官の父親のみ、チルドレン選抜は先週に決定され、ネルフ作戦部に配属が決定されている、同時に父親、霧島マサオミはネルフ作戦部作戦部長補佐として就任、階級は二佐、実質上作戦部の長となることが決定。

因みにミサトこと、感染牛はお飾りの作戦部長と完全に成り下がらせる為に起用された人材でも在る、この作戦部長補佐は作戦部長の補佐が主な役割というよりは作戦部長の役割そのものを任せられる予定なのだ。

連敗続き、被害続きのネルフが何とか勝利を収めるためには牛の無謀極まる作戦ではなく確りとした指揮を執ってネルフの現状を何とかする為に配属される人材である、現在のネルフの体たらくが続くと完全に潰されると電柱が苦渋の決断をし、髭に認めさせたのである(娘はこちらの手の内にあるのだから、対面が立ち直ってからどうとでもなるとか言って)、実際はそういう使い方をする気は流石に無い、少なくとも使徒戦の終盤に至る所までは。

つまりこの作戦部長補佐の父親はゼーレ、ネルフに取り込まれてはいない人間でそれなりに優秀、ネルフとしてはあらゆる点で拙い人材なのだが、現在背に腹は変えられない事情がある、電柱がこのままの失態続きを恐れ少しでもマトモにしようとした人材の獲得だった。

もう勝たなければ後がないのである、最低限無様な敗戦だけは避けなければならないのが現状だ、計画とかなんとかもこの組織が維持出来て、しかも自分達が今の椅子にいることが前提だ、根本を守るためにはシナリオに拘ってもいられない。

髭はまだ拘っているようだが。

で、とうの少女の性格は基本的には明朗快活な女の子、軍事的知識は無いが運動能力は高く誰とでも仲良くなれる性格をしている、父親との関係も良好で、精神的な問題は無いと考えられる。

山岸マユミ、十四歳、第三新東京市在住、両親ともに死別、現在は養父の下にて生活、養父は国連職員(ネルフ関係ではない)、霧島マナと同時期にチルドレンとして選抜、ネルフ作戦部に配属が決定されている、養父山岸タカトは同時にネルフ監視官として派遣。

父親のネルフでの役割は以前より問題になっていたネルフのチルドレンに対する待遇問題の監視官として就任、階級は三佐。

性格は大人しいの一言、交友関係は狭く読書好きで大抵本を読んでいる、物静かな美少女といえば聞こえはいいが、悪く言えば大人しすぎる面があるが非社交的というほどでもない、狭い交友関係間ではあるが良好の人間関係を築いている、こちらも精神面での問題は無いと考えられる、養父母との関係は良好。

彼女たちに与えられる階級は特務准尉、牛より遥かに上役である、因みに彼女達への命令権は牛さんには一切無いと言うネルフチルドレン始まって以来の特典付、近々その権利はジャージにも適用されるらしいが。

適切な賞与と手当てが与えられることになっており、チルドレンの中では一番マトモに扱われるだろう、少なくとも書類上は、実際に監視官に父親がいるのでそれ程の事が出来る訳も無いが。

少なくとも髭はともかくその手の細かい所を詰める電柱はそういう様な事をさせるつもりは無い、純粋に必要なのは戦力なのだから珍しく契約書の記載事項は守る気ではある。

少なくとも電柱と命令を下されたチルドレンの育成担当の者達はであるが。

例外としてそんな書類上の契約や、監視官や実父の存在を忘れてと言うか、存在そのものを無視し自分の都合のいい事しか考えない暴走感染牛が存在するので安心はしていられないが、というか彼女対策を考えなければならないだろう。

その辺は出来るだけの対策は施そうとしているようではあるが、手始めに牛専門の殲滅チームの創設だろうか。

例えば、まず新選抜されたチルドレンは既存のチルドレン、変態とは別に訓練される、二人の直属の上司となるのも霧島二佐直属の部下があたる、これは作戦部長葛城ミサト特務軍曹と接触させないことを前提に考えられているようだ、ジャージとは接触させても構わないだろうが(直接的に暴走感染牛の実情を話してくれたりと、彼女達の警戒心を上げるのに貢献してくれるだろうから。あの暴走感染牛、自分の奴隷を作り出すときだけは外面がいいという不愉快なスキルを保有しているのでもしかしたら騙されかねない。組織としては間違っているかもしれないが牛さんのことを頭から疑って掛かってくれるチルドレンが必要なのである。ぶっちゃければ生理的レベルで嫌ってくれるとモアベター、言葉は雑音、存在は害悪くらいの認識がベスト。思いっきり組織としては拙いが)。

因みにこの考えを出したのは電柱、上にも記したがチルドレンの心を壊すより今は使徒との戦いで勝つことが最優先事項とされている為である。

心が壊れて使い物にならないチルドレンは現状ではいらないのである、もう既に負けることが赦されている状況ではない、牛の無駄な訓練で折角の戦力の増強を図っても使う前に潰されてはたまらないからだ、それに心が壊れたチルドレンならば既に一人ストックがあるわけだし。

誰とは言わんが、そのストックを最後の最後まで飼い殺せばいいのだ。

この時点で完全に牛さんと某変態は老人会に対するポーズ以外に存在価値が置かれていない。

あの作戦妨害部長に任せると勝てる戦いも落とすとようやく気付いたらしい、気付くのが遅すぎるというか、とっくに気付いていたくせに今までその措置をとらなかったことに問題があるというか、どっちに転んでも問題があるだろう、普段の勤務態度で使えないとさっさと悟れ、まぁ、悟ったお陰で彼女達、新チルドレンの危険度はかなり下がって高待遇になっているのだが。

いい加減追い詰められているので、ゼーレの老人達には無断で殆ど有害作戦部長の肩書きを有名無実化させようと踏み切り、本当は首も切りたい(命諸共)が諸事情で我慢しているらしい、髭にも否は無かった、何だかんだで牛の失敗の被害額の為に老人達に下げたくも無い頭を下げ、言われたくも無い愚痴を散々聞かされているのは髭当人である。

つまりチルドレンを除けば一番牛の被害を被っているのは髭といってもいい、彼女に対しては髭も恨み節の千や万は出てきそうなものだ。

無論、老人会に対する言い訳も考え済みであるが、これには老人会も納得しそうな話を実話でダース単位用意している、この手の材料には全く苦労がいらない無能の象徴。

第五使徒の後も散々髭は老人達の耐久嫌味、愚痴、中傷マラソンに強制参加させられ、脅され、貶され、精神的に苛め抜かれて追い詰められた組織の運営に当たっているのだから、因みにその疲労が一番洒落にならないとのこと。

追い詰められた組織運営やシナリオは自業自得の所も多々あるだろうが、髭の頭の中では瑠璃達やシンジ等が半分、有害作戦部長が半分ほど妨害していると考えている。

ネルフ内において、髭と電柱ほど狂牛病感染者を永久に独房にぶち込んでおきたいと考えている者はいないだろう、もしくは銃殺刑。

このネルフにおいて失態に失態を重ね、被害に被害を重ね現在の立場に落とし込んでくれたのは半分以上彼の有害作戦部長なのだから、残りは髭と自覚していないけど電柱、牛以外でネルフの特権を勝手に使っている馬鹿とか、牛さんが目立って目に付いていないが。

まぁ、暴走感染牛の失態に比べれば可愛いものが殆どなので、それほど目くじらを立てるものでもないが、監視が居るのにそんなことをするのは馬鹿だけなのだから。

その馬鹿とて監視が居るぐらいは判っているからやることはかなり微々たる物であるし、
監視からもそんな微々たる行為は、馬鹿みたいにデカイ被害を齎す行為のお陰で隠れているし、どっかの愚かなアルコール依存症、食肉業者でさえ買取不可暴走感染牛(処分代に高額な費用を逆に請求されそうな存在)の為に、なお監視の数割が彼女専属だとか何とか。

因みに有害作戦部長があそこまで愚かな原因の一つに彼女の彼女にとって優秀すぎる部下の一人、盲目の眼鏡君、巨乳らぶーな変態男がいるがこの便利すぎる無能作戦部長の部下さえいなければ彼女から発生した被害は幾らか軽くなっていたはずである、彼は彼女の我が侭の殆どを叶え、殆ど犯罪行為の片棒ですら担いでいるのだから、本人はその行為が犯罪と気がついているのかどうかは妖しい所ではある。

というか自分の思いのためならば犯罪も正当化されるとでも思っているのだろうか。

盲目的に「貴女の為なら」とでも呟いて、自己完結していることだろうからその辺も十分に疑わしい気がする、自覚症状があってやっていたら更にたちが悪い。

多分この男の頭の中で細菌以下の存在価値も見出せ無い作戦部長とのラブストーリーでも放映しながら悦に入って命じられるままに何も考えずにやっているのが一番可能性高そうだが。

妄想の内容は牛との爛れた肉体関係で、「お礼よ」とでも呟くホルスタインの奉仕でも妄想しているのかもしれない、牛さんの数少ないと言うかこれしかないかもしれない外見と乳のデカサを中心に。

まぁ、酒の為に女性、いや人間の尊厳を放棄しようとした女だ上手くいけばご相伴に預かれるかもしれない、その後がどうなるかはしらないし、しったところでどうでもいい。

変態眼鏡妄想男がどうなろうとどうでもいい。

別パターンとして自分が奴隷として性的奉仕を牛にすることが夢なのかもしれないが、なんか変態っぽいしこの作戦部長直属の奴隷同然の無思考の犬は、この可能性も大いにありうると考えられる、だってマゾっぽいし。

ついでにこの妄想男はネルフ本部内での自分の評価にちっとも気付いていなかったりする。

この男の存在は所内では有名であり、有名な馬鹿として有名なのだ。

今現在有害作戦部長の仕事を肩代わりして、その度に監査に「君の職分ではないだろう」と注意されるが、それを無視して仕事をするため残業手当などは一切付かず職務権限以上の仕事に手を付けている為に訓告を受け、訓告無視の減俸対象になり、加えて狂牛病感染牛を独房から出すように保安部長などと掛け合っている人間である、所内に飛び交っている狂牛病感染牛の噂も、悪いデマとして片付けられるくらい愚かさを発揮している大馬鹿者、あらゆる意味において髭より性質が悪いかもしれない、自分の悪業が無自覚というのは。

髭は自分の悪事は悪事と割り切ってやっているのでその点ではこの馬鹿より遥かにマシだと思える、やっていることの外道さはともかくとしてだが。

同じ作戦部員(殆ど馬鹿の部下)から同情と嘲笑の混じった表情+何かキチガ○を見る目で淫乱作戦部長の体で誑し込まれた色狂いの馬鹿と認識されている、あまりの馬鹿さ加減に他に考えられないから、この認識は牛が体を使って保安部員から酒をせしめ様とした噂が元になっている、それ位やりかねないと。

勿論そんな噂など本人は全く気付いていないし、誰も(こんな馬鹿と係わり合いになるのは嫌だし)忠告してくれない、仕事が忙しい(牛の仕事が大半をしめているが)のでそんな噂に耳を傾けている暇も無かったのだが、まぁ、耳に届いても信用しないだろうが。

追加するとこのお馬鹿さん、本人の為にも自分の為にもならない行為のお陰で、段々と自分の階級と給料、敬愛する上司の給料を減らしていく張本人であったりする(監視の人間からの報告でそうなっている)。

牛さんは馬鹿の好意が原因で自分の給料が減っていると知ったらこの馬鹿にどんな態度をとるか目に浮かぶようにわかりやすそうな結果が待ち構えていると見ていいだろう。

つまりは完全に無駄な努力をして過労状態に肉体を貶め、評判は回復不可能なレベルまで堕ち、仕事量に見合った給金を得ることは出来ず、最後にはその肩代わりをした想い人張本人から自分の給料を奪うトンデモナイ奴と認識されるのである。

中々に、中々に、自業自得で本末転倒な愚かを絵に描いた盲目馬鹿である。

それに暫くすると、一応牛さんの元恋人、尻尾頭の無精髭女の敵が日本上陸するのだし。

なお、追記すると、この馬鹿の権限も限りなく低くなることも決定されている、これで懲りることはないだろうが。

それに付け加えて、彼もチルドレンに関わる権限は全て剥奪されている、間接的な牛の被害を被る可能性を懸念されていたためである、早く言えばこの二人は組織内で総スカンを食らうことになったのだ、飼い殺し決定ともいえる。

まぁ、牛はともかく妄想馬鹿は辞職出来る自由は与えられているが。

唯一の彼の功績と言えるのは。

妄想馬鹿男とキチガ○作戦部長のお陰でこのたび配属される新人チルドレンの待遇は過去嘗て無いほど良遇される可能性があるといったところか、災難に近い人災から生まれて利益と言うかなんと言うか。

髭も新しいチルドレン達には適切に扱おうと考えているっぽいし(電柱に散々言われた成果)、少なくとも当面のところは。

今現在心を壊されて使徒に負ければ自分の立場がどんなことになるかを考える頭はちゃんとあるようだ。

考えているのはフィフスからセブンスの三機態勢だろうか勿論フォースは外道の頭の中にも無い、外道の計画ではフォースだけでは足りないが予備のパーツとして心を壊したまま生きていればいい、戦力的にも一番低い零号機専属なのだからちょうどいいとも言えるが。

まぁ、基本的に髭のシナリオではシンジが初号機に乗ることが前提になっているのでなんとしても覇道をどうにかしてシンジを自分の手元に置かなければならないのだが、フォースは最後の保険みたいな扱いだろう

ただ、シンジも予備だったのではとか思うが、大体最初に自分で捨てた筈なのに都合のいいことである、自分の手元で調教したほうが自分の都合のいい駒にするには確実だろうに、何でしなかったのだろう、考えても詮無き疑問だろうが、考える疑問の一つだろう。

なお、初号機は未だに素体すら修復は三十パーセントも満たしていないと言う体たらくである。

予算は無いし、人手はないし、時間も無いし、リツコはいないしのナイナイ尽くしのせいで、二号機は近い内に素体の修理は終わるらしいが、なお零号機は手もつけられていないのが実情である、どうせ直しても乗り手がアレだから直す必要も無いだろう、どれだけ苦労して直しても直ぐに壊されて努力を無にされるのは目に見えている。

ここでその作業をしている作業員達がそのことを察しているかどうかは、ここまで次々と壊されていけば予想はしているかもしれない、それでも直さなければ為らないのは不毛な仕事である。

これで変態妄想眼鏡チルドレンも飼い殺し状態だが、最低待遇と拷問紛いの訓練、やめることが出来ない、そして自分の願望が(英雄願望)満足させられないと扱いに関してはかなり悪いのかもしれない。

まぁ、所詮自業自得である。





で、仕事で忙殺されているネルフとは違い多分時間軸的に少しは差がありそうだがその辺は細かく詰めずに現在の九郎達の所在地は京都、日本でも有数の観光地で在り、嘗ての王と、千年王都、ミレニアムキャピタルと讃えられる古都、因みに作者は京都駅まで電車で二十分と言うところに生息しております。

大十字九郎、大十字シンジ、チアキ(チアキが日系アメリカ人だったら母国にはならないが)の母国の中でも外国人に人気のある観光地である、そして観光地でやることは一つ、観光することだろう、つまりはこいつ等前の出張から未だにアメリカに帰っていなかった。

大十字夫妻にウエスト夫妻、シンジ&エンネアのカップリング、経費(つまりは姫さん持ち、無断)で観光旅行を実行している連中である、かなり末恐ろしいことをやろうとしている。

レベル的には牛さんの前で無能と連呼するような行為。

「なぁ、アル早く帰らないと。姫さんに何て言われるか。判ってるか仕事で来てるんだぞ。仕事で」

「我輩早く帰らんと、先日の破壊ロボの点検も。覇道瑠璃に報告もあるのであるぞ」

「仕事で来たんだから、仕事で。帰るまでが仕事と言うか、帰らないと怒られる」

男達の発言から察するに男達は珍しく抵抗したようだ、単純に姫さんが怖いと思う九郎と、自分の趣味を充実させたいマッドと、恐らく帰る日数が増える毎に指数関数的(つまりはとんでもない勢いで)に不機嫌になるであろう自分の恋人に脅える少年、怒られるのは姫さんではなく精霊のようだ、この辺の女性に対する腰の低さは確かに九郎との兄弟のつながりを感じるシンジ君である、近い未来で更に似ていきそうな気がするし(にやそ)。

なお、この男性が抵抗をしたのは、訂正すると抵抗を赦されていた時間帯は時間的には日本重化学共同体の披露会の翌日の朝、朝食の席まで、本当ならばその数時間後には飛行機でアメリカに帰っていなければならない時間帯だけだったりするのだが。

男達の紙屑のような抵抗から、女達の主張、こちらの主張の強さは理不尽ながら爆炎並だろう。

いろんな意味に於いて、つまりは男達の主張も建前も本心も燃えカスになる。

それ決定、否決認められません。

因みに朝食の席といっても旅館なので九郎達の部屋に集まって食事を取っていたのだが、
勿論和食でかなり豪華な朝食を食べていた、シンジがかなり眠そうだったが、多分夜這いをかけようとしたエンネアから逃げるのが大変だったのだろう、最終的な逃亡先は房事が終わって眠りに付いていた自分の兄夫婦(仮)の部屋に逃げ込み、其処で数時間ほど寝たらしいが(一応九郎達は予想していたのかちゃんと服を着ており、何故かシンジはアルと九郎の間に挟まれるように一緒に眠ったそうだが、何と無くアルが「将来の家族風景」とか何とか呟いていたようなきもするが)、いいとこ三時間程度だろう。

なお、この騒動は日本滞在中毎晩続けられ、シンジが安息という名の睡眠を得られるのは殆ど無かったとだけ追記しよう、何とか死守したようだが(何を死守したのはご想像にお任せしますが、一番ヤバイ時エンネアは下半身半裸でシンジの上にのっかっていたそうです、しかも大十字夫妻の部屋で。

アルが「人の部屋で何をしようとするかぁ!!!」と魔術でエンネアを吹き飛ばしてくれて事なきを得たが)

で、女達の主張。

女達の主張、その一、アル・アジフ嬢の主張。

隣に座る大十字九郎の頬に手を当てて、妙に優しげに、殺してくれそうなほどに優しげに。

逆の手では端を逆手に力一杯握り締め突きたてるように。

「覇道瑠璃に怒鳴られて来い、妾が主」

言い切りやがった、妙に優しげな笑顔で、声で、仕種で、雰囲気で、だが殺意に似た何かを放って、更に箸を持つ手に力を込めて、しかも内容が理不尽過ぎる、どうせアルが怒られる気は欠片も無いのだろう。

どうせ怒られる前に逃げ出すに決まっている。

「アル、切れた姫さんが鬼の様に怖いのはお前も知っているだろう。な、だから今日の昼の便で帰ろう。使い込みで旅行なんて事になったら過去五本の指に入る惨事になる。我が侭は言うな、頼むから。主に俺の命の為に」

因みに過去最大級の瑠璃の怒りを買った惨事、別名はお仕置きは瑠璃がアリスンに恐ろしい笑顔で頼み、頼みと言うか殆ど命令してルルイエを借り受け(因みにルルイエに拒否権はない、アリスンにも無かった)、マギウス・モードで覇道所有のバルザイの偃月刀を片手に九郎を追い回してくれたものだ、般若の形相で(瑠璃は多分剣道有段者)、瑠璃の肩にちょこんと座ったマスコットサイズのルルイエが瑠璃の形相に脅えていた。

なお原因は、アルとのアメリカ横断大喧嘩の時の被害額が原因、かなり楽しい、笑ってしまいそうな、もとい笑うしかない金額になっていたからだそうだ、姫さんは無論切れたのは言うまでも無い、九郎がどれだけ金を集めようと万回くらい人生をやり直さないと稼げないような金額だったのだから。

で、虐待とも言える暴力のあとには虐待だけでは収まらなかったのかキレた口調で説教され、アーカム以外での夫婦喧嘩は厳禁されたのは前に書いたとおりである、アルはその時さっさと逃げて、追い回されたのは九郎だけだった、説教はされたが。

追記すると今回は過去最大級の怒りを抱かせることになっている。

「妾は怒鳴られて来いと言うたであろう。愛しの主」

飽くまで笑顔を崩さない外道の精霊、どうやら芯から外道な手段に染まっているのかもしれない、全ての所作が優しげであるのに、九郎にはその笑顔が何故か少し怖く、頬に当てられている手は刃物のような冷たい感触を九郎に伝えているのかもしれない。

勿論今は胸に突き立てられている箸のほうはバスタードソードと言ったところか。

それでもめげない九郎君、本当に彼は苦労君なのかもしれない、幸せ者かもしれないが、その分苦労もかなりのものであるような気がする。

九郎のクロウは苦労。

「アル、だからな。そのお仕事はお仕事と・・・・・ツッ」

無論、彼の気丈な苦労が報われない、我侭お嬢さんがその程度の泣きで諦めるわけが無い。

「三度目だ、浮気者の妾が主。覇道瑠璃に怒鳴られて来い、妾は旅行を楽しみたい、妾は旅行を楽しみたいのだ、汝と旅行を楽しみたい。最早言わぬぞ」

アルの爪が九郎の頬に突き立てられる、軽く爪を立てた程度だろうがその声に乗せられた優しさが極寒の感情を上乗せしていることを九郎に伝えている、つまりは前回の浮気の埋め合わせはまだ終わっていないぞと脅しているのだろう、断ればどうなることやら。

確実に日本国内において人外級の夫婦による壮絶な(一方的な)争いが起こることは必至。

そして其の被害に対しての瑠璃の怒りは考えたくないレベルだろう。

使い込みと、京都半壊、どちらが瑠璃の怒りを買うかを考えると九郎には前者を選ぶしか選択権は残されては居なかった、九郎に許されているのは。

「判った、判りました。アル様、判りましたよ、私めと旅行をお楽しみになってくださいませ。何なりとご希望を仰せ付けくださいませってんだ。・・・・・・・・・こんちくしょう」

三度目のアルの通牒に大十字九郎は陥落した、完全な全面的降伏、否を唱える権限は浮気男には与えられない、自身の姫君を旅に連れて行くしか選択肢は無いだろう。

それでも不平を呟く・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「何か言ったか、九郎」

爪の先が僅かに発光させたアルの手、完全に暴力による脅迫体制、彼には反論の、不平に対する余裕も権利も与えられないようだ、前回から完全にアルの尻に敷かれている大十字九郎である、以前からそうであった気もするが完全に主導権を奪われている、頬に当てられた爪が今の九郎にはとてもとても恐ろしいだろう、怒り狂った姫さんも怖いだろうが。

どちらが怖いかというと、人間目の前にある恐怖を優先するわけで。

「何も、言ってねぇ」

腹を括る準備が必要な大十字九郎であった、当面のところは土産で機嫌をとるか、京染めの着物でも買って姫さんに送ればちょっとは怒りも抑えられるだろう、多分(自分用に買って、大吟醸でも添えれば完全に赦してくれるかもしれないが、それには大十字九郎のプライドを切り売りする必要がある、そして其の選択は九郎の人格崩壊に繋がるかもしれない)。

女達の主張、その二、チアキ嬢の主張。

「アンタ、前にウチに黙って日本行ったたよなぁ。あの時ウチがどんだけ心配したことかわかっとる、アンタ。ウチの心労に比べたら旅行ぐらいの埋め合せ位は安いもんやんなぁ。瑠璃お嬢様に怒鳴られてくるんも含めて、それ位はしてもらわんと、割りにあわへん。アンタの銭で二、三日位京都見て回らしてもらわんと。それにアンタと旅行も始めてやし。趣味のほうは数日辛抱すれば済む話やろ」

チアキの台詞に若干固まり、過去を思い出すウエスト、ちょっぴり汗を掻いているようだ。

一話、二話でウエストがチアキに無断で瑠璃に付いて行って、ちゃんと仕事だったのだがチアキに何も言わずに一週間位日本に滞在し、その間居なくなったウエストを心配するチアキ、かなり深刻に心配させられそのときウエストは土下座で謝り倒した。

だが、その埋め合わせを今持ってきているようだ、アルにしろ、チアキにしろ、女の子に何か不義理をしたら後始末が大変だといういい例だろう、こうなったら男は黙って従うのみ、九郎と二人揃って姫さんの雷を受けなければならないだろう、勿論怒られるのは九郎とウエストの二人だけだろうが。

チアキは最後のほうで可愛らしい本音を少し述べているが、マジに新婚旅行に近そうだ。

ウエストは九郎に比べてかなり安易に陥落した、姫さんの怒りなど気にしない男だし、趣味のほうは先延ばしになるだけだ、あんまり旅行しても問題ないのがこの男である、エルザあたりに苦情は言われるかもしれないが、その辺は謝り倒すしかないだろう。

この男が突然旅行に走っても誰も不思議に思わないだろうし姫さんもそれほど柳眉を吊り上げまい、色々規格外なこの男である、数日ぐらい放浪しても「また奇行を」の一言で済ましてしまうだろう、何気に目立つだけでそれほど実害は無いし。

九郎には遠慮呵責ない折檻を強いるだろうが、その辺は使い込み+自分をほったらかして旅行に行ったからである、瑠璃も九郎の愛人集団の一人なのだから蔑ろは怒りを助長するには十分すぎるのだろうから。

女達の主張、その三、エンネアの主張。

一番性質が悪いのは多分この娘、というか存在自体が邪悪、悪人ではないが邪悪、邪悪以外の形容詞が思い浮かばない、心の内で少年を絡め取るような“策”を持つ少女を邪悪と言わずとしてなんと言う、笑顔の下に潜む策謀を邪悪と呼ばずとして何と呼ぶ、蝙蝠の羽と尖がった尻尾を持って無垢な笑顔を持つ子悪魔、“暴君”エンネア、伊達に生きている年数が違う、経験値で対抗できるのは既に少年を落としているエセルぐらいのものだろう、そのエセルもこの場にいないのではどうしようもない。

エセルが現在の光景を眺めたら切れて”暴君”VS”ナコト写本”の魔術大戦争が日本で勃発するのは間違いない、因みに戦争なのは被害が喧嘩のレベルでは二人の争いの被害は収まらないからである。

最悪“ネームレス・ワン”“リベル・レギス”が降臨しかねない、琵琶湖上空で無ければ京都壊滅は必至、因みにネームレスのほうは飛行能力はないと思われる。

で、エセルが怒り狂う光景が脳内で展開中のシンジの腕に抱きついて耳元で吐息が耳を擽る様にエンネアがシンジに囁く、さり気無く抱き付いている時自分の体の凹凸をシンジに意識させるように擦り付けるのも忘れない、さすが子持ち、小さな芸に余念が無い。

シンジもエセルという肉欲の対象がいるわけで中学生の性欲で耐えるのは中々難しい、加えて自分の周囲には九郎という性的なモラルが崩壊した野獣がいる、悪しき例なのではあるが、エンネアのセックスアピールにどこまで耐えられるか少々期待である。

「エンネア、シンジと一緒に旅行に行きたいにゃー。エンネアこの国に来たことないし、シンジと一緒に見て回りたいな。ほらアルとチアキも行きたいみたいにゃ、シンジ一人が抵抗しても駄目っぽい。抵抗は無駄、無駄、無駄。ほら、シンジ、どうするにゃ」

シンジがそうやって甘えて頼み込まれると拒否することが困難な性格と現在の状況を利用している、確かにシンジ一人が拒否しても余り関係無さそうだがそれでもエンネアはシンジ本人から自分を旅行に連れて行く言質を取ろうとしているかのように言葉を囁き続ける。

微妙に不倫時に不倫相手から結婚の言質を取ろうとしているしたたかな女性が思い浮かぶのは作者だけだろうか。

結局のところシンジはエンネアに言質を取られて旅行に同伴することを同意されるわけだが、抵抗はそれほど長くは続かなかったとだけ明言しておこう。

元々、それ程もつと考えている読者様がいたとも思わないが、その辺はどうでもいいので。





で、その頃のエセル達。

ライカの教会の食堂にて、因みに日本との時差は十三時間から十五時間ほどだと思われるから、現在朝食を食べている九郎達に対してこちらは夕食を食べているぐらいの時間だ。

よって、現在ライカの作り上げた夕食のテーブルに付いていた、面子はライカ、インデックス、アリスン、ルルイエ、ジョージ、コリン、ナイア、1名ほど足りないがいつもの面子である(最近は九郎も余りたかりに来ない、昼食、お茶辺りはよく来るが、アルの美食に付き合わされたり、姫さんと夕餉を共にしたり、エルザが夕食を持ってきたりするので)。

シンジがエンネアと同伴旅行(一応は仕事)が決定してから妙に食卓がギスギスするのが続いている、保護者として九郎やウエスト、チアキが同伴しているが彼らのことは頭にないと思われる(アルは保護者として考えづらい、見た目。一応エセルからアルにシンジを守るように依頼はされているらしいが。
追記そのときの条件はエセルがアルをお義姉様と呼ぶこと、婚姻後の事ではあるが)
、それも旅行に行ってからは魔界もかくやという瘴気が蔓延しているような気がするほどの殺伐とした空気が漂っている、戦場での食事のほうがもう少し和やかではないかと思えるぐらい。

しかも毎食、晒されるほうとしてたまったものではない、文句を言える雰囲気でもないが。

ライカとナイア(何とか復帰した)はそれを無視して二人で談笑し食事を楽しみ、まったく関係のない会話に興じている。

関わりたくないというのが本音だろう、互いに向き合って九郎に関する話に興じているが目元が微妙に引き攣っている辺りがその証左、意識的にある面子の存在を無視しているのは明白だろう、メタトロンと這い寄る混沌にそうまで思わせる辺りが凄まじい。

ジョージ、コリンは顔面を真っ青にして震える手で食事を取り続けている、手元にある食事のみに集中しそれ以外に目線を向けようとしない。

時たま、お互いを奮い立たせ為に互いに目線を合わせるだけだ、その目は薄っすらと涙が浮かんでいる辺り彼らが心の底から脅えている、よく考えるとこの少年たちはこの魔界に近い環境の教会で健全と生活できている辺り大したものなのかもしれない、案外将来が楽しみだ、将来があると仮定するならば、だが。

それでも将来もしかしたら何処かの執事のような何事にも動じない大物になっているかもしれない、現在は地獄の空気に晒されているが、多分今夜は胃痛に悩まされることだろう、子供なのに神経性胃炎、胃潰瘍になるのも近いかもしれない。

で、瘴気の根源達とこの場で最大の被害者。

前者はアリスン、ルルイエ、エセルドレーダ、後者はインデックス。

前者は口々に呪い語を呟きつつ、対象はエンネアに対してが殆どだが、一部インデックスに向いている、それはもう明確に毒を含んでインデックスけなしまくっている。

主にその毒を吐いているのはインデックスがマスターな筈のエセルであったがその辺は前の話から続いているマスター苛めの延長だろう、段々苛烈になっているらしいが、近いうちにインデックスまた放浪の旅にでも出かけそうな感じなのだが、ストレスで病床に入らない為に。

というか毒を吐くというか既に言葉の虐待のレベルに行き着いているかもしれない、インデックスがマスターなのに立場低い、もうそれも日常なのかもしれないが。

「シンジお兄ちゃんに手を出したらエンネアはタゴンの餌。生餌になってタゴンの滋養になってもらうの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・タゴンも喜ぶよね。エンネア魔力タップリ持っているし・・フフッ。美味しそうだよね。エンネアって」

アリスン、だから君は何でシンジが絡むと人格が変わるのですか、しかもタゴンの餌ですか、餌なんですか、そりゃ暴君の魔力はご馳走かもしれないけど、しかも生餌ですか。

因みに手を出したのは前提条件になっているからエンネアは帰ってきたらタゴンとの対決が前提条件になっているんですか、姫さん切れますよ。

町を破壊しつくすつもりですか、ましてタゴンが負けたりしてその死骸を晒したら完全な景観破壊とバイオハザードですよ、姫さん仕事が増えたと怒り狂いますよ。

それ以前にルルイエは鬼械神召喚すれば態々あんな見かけの精神衛生のよろしく無さそうなものを呼び出さんでも、つーかアリスンちゃん本当に黒いね、最近。

ついでにその言葉でナイアとインデックスが更に恐怖に引き攣った表情になっていますよ、もしかしたら決戦の時魔力が足りなかったらその時の滋養は自分達だと懸念しているのかもしれません、そして今のアリスンは・・・・・・・・・・・・・・・・やりかねない。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・クスクス」

ルルイエさん、その含み笑いは何なんですか、しかも貴女のマスターの発言になんで首肯するんですか、貴女も同意するんですか、外道の精霊っていうのは貴女にも当て嵌まるんですか、ついでにどうでもいいんですか、呪いを呟きつつ、やけ食いよろしく壮絶な勢いで食事を取らないでください、何で普段の三倍量が並んでいるんですか、食べられるんですか、食べられるんですね、食べるんですね(意味のない三段用法)。

大体食べたカロリーは何に使うんですか、もしかして直に魔力に変換ですか、来るべき時のためへの貯蔵なんて言い出さないでしょうね、貯めるだけ貯めてドカンと、なんて。

またそんな器用な、出来そうで怖いのが実情なんですが。

で、エセル。

彼女が一番辛辣で容赦が無く教会で発する言葉ではない言葉を嵐の如しに自分のマスターに叩き付けている、何もかにもがマスターが悪いといわんばかりに。

確かに、エンエアとシンジの同伴をかけた争奪戦時インデックスがアルのお仕置きという名の残酷なる暴力によりバテテくれていたせいで魔力供給なし、何時もなら魔力供給があればエンネアを押せるというのに(暴君モードになられるとキツイ)、エセルにしてみれば肝心な所で自分の役に立たないマスターなど微塵の価値も無いのか、存在すら悪だとばかりに陰惨な苛めと言ってもいいような罵倒をぶつけていた。

どちらかというと言葉と態度で。

「使えないマスター。お怪我は癒えましたか、私の半分も満たない小娘(アル)につけられた傷は。まぁ、それだけお召し上がりに為られるんですから治っているんでしょうね、今更に。役立たずの鏡のようなマスターをもてて私もどうすればいいのでしょう。進退に困ります。まぁ、でも役に立たずに放浪するだけならばマスターと言えど働いてもらわないと。女衒にでも売って差し上げましょうか。マスター(ハート)」

嘲るような表情でマスターを見上げ楚々として自分のスープ皿から一掬いしながらサラッと吐き出される言葉、瞬間エセルの正面に座しているインデックスは一瞬体全身を震わせ、そしてまた俯いたまま目の前のサラダのコーンをフォークで一粒づつ口に運んでいく。

決して自分の精霊に目を合わせようとはしない、これは彼女の怪我がある程度治り食卓につくようになってから今日まで続く食事のスタイルであった。

因みに部屋に引きこもると精霊は態々食事を持ってきて二人っきりでの嫌味地獄となる。

故にまだマシな食堂で食べているのだが、エセルの言うように旺盛な食欲を示しているわけではない、どちらかというと気弱な少女のように小口でゆっくり少量を食べる、ここ最近の彼女の食事量はそんなものである。

故に表情も元々の白い肌が青白くなっており、少し痩せてきている。

これでも夜な夜なライカやナイア(共犯者)にエセルが寝静まった後に夜食と自棄酒とばかりにワインを持ち出し、愚痴を垂れて栄養補給はしているのにこの有様である、ライカは余りに哀れなので夜食を作って彼女が来るのを毎夜待ち、ナイアは元々の共犯者なのに状態が更に悪いインデックスの相手をほんの僅かにでも在ったのだろう罪悪感で付き合っている、ドコから持ち出したのかやたら滅多に高価な酒を持参で(多分覇道からガメて来ている)愚痴に付き合っている。

自業自得から始まっているが哀れに過ぎる黒の王である。

それにぜんぜん今回の食事の嫌味は終わっていないし、かなり哀れかもしれない。

「大体において。マスターはお楽しみの結果怪我を負ったというのに私の願望を満たす手伝いは出来ないというのですか。私はマスターに力を貸すだけの存在ではありませんよ。世の中等価交換、力を得ればその代償を支払うべきなのですのに。マスターは肝心要のときに力が供給できない。役立たずとはここに極まったというところでしょうか。・・・・・・・・・・・・・・聞いているのですかマスター。俯いていては判りません。顔を上げて人の話を聞くものです。大体最強の魔術師たるマスターが精霊一人に半殺しに合うとはどういうことです。普段の精進などせず道楽に各地を放浪するよう生活をしているから・・・・・・・・・・・・」

嫌味からお説教モードに移りそうな塩梅だ、既に移行しているかもしれないが。

なおそれから暫くエセルの説教が長々と続けられたという、彼女の食事が終わるまで。

これは最近の定例儀式となっておりいびり→説教は毎食のように行われているらしい、インデックス、過度のストレス、食事の代わりの夜半の深酒、胃を壊さないか不安だ。

体重は減っているようだから腸の具合はおかしくなっているのかもしれない。





で、時間軸的には惨劇のような食事風景から数時間後の覇道邸。

覇道財閥総帥覇道瑠璃執務室、そろそろ一般人はお休みに入ろうという時間だというのに瑠璃はお仕事中、何のかんのと言って財閥の長であるのでやる仕事は幾らでもある、瑠璃の仕事がこの時間まで押すのは珍しくも無い。

基本的に彼女は仕事人間であるしある程度を部下に任せるとしても限度がある。

彼女が直々に決裁を出さなければ為らない書類など山のようにあるのだし、仕事などやってもやっても尽きることが無いというような勢いで増え続けている。

部下に任せてはいるが部下に任せられず自分がしなければ為らない仕事が多いのも事実の姫さんは日夜仕事に励むのである。

九郎がいなければ、完全な仕事人間になっているかもしれない。

年頃の女性としては少し可哀想かもしれない姫さんである、当の九郎関連での問題での書類及び被害の弁済も姫さんがこなしているので時たま九郎に殺意が沸くかもしれないが(上に記したアメリカ横断夫婦喧嘩などで)。

まぁ、本日というかここ最近仕事の量が増大しているのは事実、というか進んで仕事の量を多くして前倒しで仕事をこなしているのだが。

九郎が帰ってくる辺りには暇が出来るように(姫さんの脳内では翌日には帰ってきている計算、寄り道しないで帰ってきたらそんなもんだし)、何気に健気な姫さんである。

その健気な姫さんの執務机上にある固定電話、アンティーク調の値の張りそうな電話が着信を知らせる音が鳴り響く、古典的なレトロ調な音を立てて着信を知らせる、この部屋の電話が鳴るのは彼女の直属からか、彼女の判断を仰ぐ電話しか鳴らないので瑠璃としても出ないわけにはいかない、急ぎではない電話はウィンさんが取り次ぐことになっているのだし。

仕事の手を止め「やれやれ、また何か有りましたか」と呟きつつ受話器を取り。

向こうの言葉、誰かを確認して顔を綻ばせ、そして数回の言葉の交換がなされた後には、綻んだ顔が崩れ、その表情にははっきりと不機嫌が走り、その声には低く、その不機嫌を隠そうともしない。

いや、この時、この会話において言えば彼女が自分の感情を抑える意義は無いのだろうが。

因みに不機嫌状態の会話の後半であるが。

「大十字さん。貴方がどういう考え、そしてどういう心算かは理解もしたくはありませんし私に理解する努力も必要ありませんが。・・・・・ふざけているのですか。貴方は貴女の瑠璃が仕事に明け暮れている時に私のお金を使って、つまりは仕事で其方に行っている以上横領をして日本で休養を満喫なさると。私に喧嘩を売っているのですか大十字さん。答えなさい!!!!!大体仕事で日本に行かしたのですよ、仕事が終わったら早々に帰ってくるのが当たり前でしょう。どうなのですか、私を納得させる理由があるのならば言って御覧なさい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何ですか言い訳も言えないのですか大十字さん。・・・・言ったら怒るだろうですって。何を今更述べているのですか私はもう十分に怒っています。故に早々に私の怒りをこれ以上募らせないようにおしゃって下さいな。早々に。さもないと帰ってきたらどうなるか判っておいでですね。勿論大十字さんの言い訳が私の納得に行かないものでしたら。御分りでしょう、では忠実に正確にどんな事情があってそのような戯言を言っているのか私に説明なさい!!!!!!!!・・・・・・・・・・(説明中・・・・・・・・・・・・・・時間が経つにつれて姫さんの表情が悪鬼の如し悪くなっていっている、今ならアリスンどころかアスカでさえも彼女の表情には怯えるだろう、今現在のテンションならば近くに怒りの対象がいたら即座にマギウスになって切りかかりかねない。いやまぁ今現在は精霊がいないからバルザイで切りかかられるだけで済むかもしれないが)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つまり大十字さんはあの古本娘の傍若無人な我侭に贖う事が出来ずに私の、私の財閥が出張費として渡したお金で遊び倒してくると、それは大層なご身分ですわねえ大十字さん。これが許されるとお思いで私に告げているのですね大十字さん。まぁ、大十字さんがどうお思いになってこの社会を嘗め切った発言をしているかどうかはこの際おいて後で親睦を深めつつ語り合うとしましょう。それで社会の常識を弁えない我侭古本廃品小娘を電話口に出させてくださいませんこと。私彼女にお話したいことが山のようにありまして。勿論断ったり渋ったりしませんでしょう私の九郎さん。愛しい九郎様。貴女の瑠璃の頼みですよ」

最後のほうは甘い口調、音だけを聞いたなら完全に甘い口調、電話越しの相手にも甘い声しか伝わっていないだろう。

勿論その相手はこの声を甘い口調だとは思っていないだろうし、更にこの部屋で彼女の表情を見ることが出来るものが居たとしたらその表情から甘い声だとは言わないだろう。

恐らく評価は甘い声を出す悪鬼羅刹、そして声は甘い声ではなく、地獄へと繋がる最後通牒だと。

そして九郎はそんな声の意味を正確に理解し、付き合いが長いのだから嫌って程理解できるそれにあれだけ九郎が旅行に変更することを渋っていたのだから、この言葉が優しさや情状酌量などではなく、命令であることを理解しアルに電話を替わった。

「何じゃ、覇道の小娘。妾はこれから旅を楽しむのじゃから邪魔をするでないわ。大体其方は夜じゃろうに、小娘はさっさと寝ておれ」

喧嘩売っていますか、ネクロノミコン。

恐らく後ろで会話に聞き耳を立てている九郎は顔を真っ青にしているのではないだろうか、もしこの旅行が成就(アルの願望だが)しても九郎は恐怖の余り美味しい食事が出来ないのではないだろうか、胃の辺りが凄絶な痛みを発して、それとも嘗ての貧乏人根性を引きずり出して食事だけは美味しく頂けるのか?

それにしてもネクロノミコン、まだ嫉妬モード持続していますか、当たり構わず喧嘩を売ると幾らなんでも貴女自身が危険になりますよ。

それに姫さんとは比較的に仲が良かったんじゃないですか、確かにライヴァルとしての仲の良さかもしれないが、それだけ貴女の嫉妬モードは凄絶ですか。

姫さんの逆鱗踏み捲くりですよ、それにそんなに敵を作るような発言ばかりしていると本当に敵に回りかねません、そろそろ姫さんとか、姫さんとか、姫さんとか、もうぶち切れそうだけど

と言うか先の会話で多分切れた。

完全無欠に徹頭徹尾、怒りの琴線に触れた言葉で琴線ごとぶった切った。

「このボロ紙娘。普段積み重ねる私に対する無礼にも目を瞑っていましたが今度という今度は私も貴女を燃やし尽くしたくなりましたわ。焚き火の材料にでもしたら古本なのでしょうからいい具合に燃え上がるでしょう、それが嫌なら早々に帰ってきなさいな。それとも貴女を破壊しつくして残った本を廃品回収にでも出して再生紙にでもなってみますか。その再生紙は私の書類にでもして差し上げますから」

怒り露にそれでも丁寧口調に言葉を紡ぐ覇道瑠璃、此方も喧嘩を買っている。

まぁ、怒り心頭のところに初端から喧嘩を売られたのだから喧嘩を買った姫さんの態度は自然の摂理だろう、だが基本的に沸点の低い外道の精霊、姫さんの悪罵に対して怒りを募らせる、悪循環の基本である、この二人は基本的にこんなものなのである。

今回はかなり歯止めが利いていないが、ある意味かなりの似たもの同士でもある、気位の高さとか、少し品のある口調とか、好きになった男とか、傍若無人なところとか、意地っ張りなところとか、沸点の低さとか。

九郎曰く二人揃うと二乗の疲労になるそうだ。

「何を抜かすか、この小娘。妾が貴様程度に焼き尽くされるならばやってみるがいいわ。それよりも汝は仕事でもしていればいい、その間妾は九郎と京都とやらを楽しんでくるゆえ、妾は寛容じゃから悪罵を吐きよる汝にも土産の一つでも買ってきてやるわ・・おっと、7日程で帰るゆえ・・プチ」

アルは言いたいことだけ言ったらさっさと切ってしまう、因みに携帯電話の電源を落とすのも忘れていないがその辺は邪魔が入らないとの用心なのだろう、こういう行動に出る辺りは姫さんの悪罵に怒ったことには怒ったのかもしれないが怒りは怒声ではなく更に怒りを煽る言葉で返している、その辺りは九郎との旅行が楽しみでそれを自慢するような内容を話して怒りの溜飲が下がったのかもしれない、普段なら絶対に怒鳴り返すのだから。

一応は怒りを抑えたのかもしれないが、でもその内容は傍で聞いている九郎が帰った時の苦労を考えて蹲ってしまう位に姫さんの怒りを買うものだったが。

なんせ蹲って胃の辺りを押さえて九郎の背中がピクピクと痙攣している、その背中をウエストが擦っているのが哀愁を更に上げているような気もするがウエストの九郎を見る目が死出の旅路に出る人間を見る目で見る辺りは哀愁を誘うどころか涙すら誘うかもしれない。

九郎には、ついでのウエストにも完全に予測できてしまったのだろう、帰ってきた際に自分に生じる災害と言えるほどの現象を、無論彼の想像通りに為るとは限らないが彼の想像通りになると彼は満身創痍で全治半年になることが確定していたりする、自分で自分を其処まで追い込まなくてもと言えるぐらいに想像逞しい、まぁ一度は現実化したのだから、その想像も外れては居ないだろうが。

そして外れるとしたらもっと悪い方向なのだ、多分。

で、切られた姫さん。

切られた瞬間に何かを言い返そうとしたのだが、その前に切られてフラストレーション溜まり切った状態で暫く凝固し、よく視ると受話器を握った手にやたら力が篭っており、握り潰さんばかりの状態だったりする、なんか受話器から嫌な音が響いているような気もするし。

潰れるかな、受話器。

行動回復すると思い切り受話器を叩きつけ、よく壊れなかったものだ、先程を上回る悪罵を叩き出した、表情も先程を上回る鬼女のそれ、今の姫さん怪異扱いされても文句が言えないかもしれない、外見的にはともかく身に纏う怒りの瘴気が人間の放つ其れではない。

「いいでしょう、覇道に喧嘩を売りますかたかが紙に取り付いた悪霊の成り損ない風情が。覇道を敵に回すというのですね。買ってあげます、高く、高く買って差し上げましょう。現世にその体を持ったことを後悔するぐらいにはたっぷりと後悔させて差し上げます。
それに大十字さん、大十字さんもこの際は責任が無いわけではないですわね。責任を取らせて差し上げますわ。この際あの外道のちり紙に私が大十字さんに一番相応しいと判らせるのにもいい機会です。あの我侭の権化のような古代の残滓と私との立場の違いと言うのも判らせてもいいでしょう、ふふふふふふっ・・・・・・・・・・・・・・・。人間と悪霊の成り損ないの違いを判らせて差し上げます。大十字さん覚悟しておいてくださいませ」

何やら最後のほうは不穏なことを呟いている何を考えているのかは判らないが、大十字九郎と言う憐れな男を渦中に禄でもないことが起こるのだけは確実だろう。

なにせ、鬼女の表情が変わり何かを企むライカさんばりに邪悪に見えるのだから。





で、一週間後。

大十字九郎一行帰国、言い換えると一週間も遊び呆けて(女達中心、中盤からはウエストは楽しみだし最後のほうはやけくそになったのか九郎も楽しむように努力はしていたようだが、飽くまで努力していただけで楽しめたどうかは本人が知るところだろうが)帰ってきたのだった。

因みに旅行シーンが無いのは作者が京都の観光名所なんか書いても詰まらないからである(地元に近いぶん行ったことが無いわけでもないのだが)。

なお、帰る際に九郎が現実逃避を機内でし始め一騒動あったりするのだが割愛する、様子としては女装の時の精神状態を想像してくれれば判り易い。

アーカムで待ち受けている自分の運命が恐ろしくて仕方なく、恐らく本能的なレベルで帰国を拒否しているのだろう、気持ちが判らんわけではないが。

己の精霊の我侭に負けた時点で彼は全てを諦めなければならない立場に追い込まれているのだ、今更に後悔しても遅すぎる。

それでも現在アルに引き摺られて空港からの帰路に着いているのだが、因みに九郎がその状態なので誰も覇道に率先して報告しに行こうとするものは無く、誰も報告に行こうという意見も出ていない。

チアキは端から九郎を自分の主人に対する生贄に奉げる心算で旅行に同行しているのであるし、ウエストは今のホトボリが冷めるまでは進んで姫さんに会おうとする程愚昧でもない、最低限の生存本能は身に着けている。

一応は学習能力の片鱗は持っているらしいドクターウエスト、本人曰くは怒り狂ったチアキ以上に恐ろしいとのこと。

学習するはずである、姫さんの怒りは命と趣味と飯の種が掛かっているのだから。

最後の良心となるべきシンジは飛行機内では連日の暴君のセックスアピールから逃げ続けて疲労の極みに達し、機内ではずっと眠り続けて九郎の精神不安定には何も手を付けていない、それどころかアーカムに帰り着いた途端に皆を捨て置いて自宅に帰ってしまった(飛んで)。

余程疲れと恋人の見えない恐怖に苛まれた一週間の貞操防御旅行だったのだろう。

だが、その恋人の精霊に怯える様は嘗てのシンジの義兄の姿の生き写しだと気付いているのやらいないのやら、この世界ではその過程をシンジは見ている筈なのだが。

他人は客観視することは出来ても自分は出来ないのが人間というものだから気付いてないのかもしれないが、シンジ、本当に君は修羅場に立つ直前の九郎に良く似ている。

つまりは君、未来の自分を見捨てたのと同義なんじゃないかな、多分。

ただ、どっちに転んでもシンジはシンジで保身に入るだろうから、九郎を供物にして身の安全を図るのかもしれないが。

それでどれだけ九郎に恨まれようが所詮は九郎、怒り狂った姫さんの相手をするよりは遥かにマシだろう、九郎の報復など姫さんに逆らうことに比べればゴミのようなもの。

生命の危機に対して挑戦するほどシンジは勇者ではないのだから、それに彼は彼で生命の危機に直面しかけているっぽい。

追記すると暴君はシンジを追っていってしまったので、もしかしたら現在も追いかけっこでもしているのかもしれない、至れなかったエンネアとしては不満なので最後の最後で美味しく頂こうとする動機はかなりあるのだから、まぁ、その結果は後に回そう。





で、九郎宅、別名ボロアパート。

蔑称、妖怪の館(魔術師、精霊、ウエスト、魔道人形、ダンセイニ)に帰宅した一行、因みにお土産等を背負っているのはウエストだがウエストは九郎が役立たずで、腑抜けているのに別に文句は言わなかった。

言えなかったというのが正しいのだろうが、彼なりの最後の良心がこれからの未来を予測していたのだろう、言い換えると供物に捧げる替わりのささやかな労働といったところ。

別段、姫さんを宥める、自分の命を捧げるつもりはこれっぽっちもない。

やったことは同じなのに被害度数が九郎に集中しているのは彼の人徳か悪徳故か微妙なところである、複数に手を出したのは間違い無く悪徳なのだろうけど、世間的には。

因みに現在は一足先に自宅に入ったウエストと別れ未だに引き摺られつつ九郎が我が家に入ろうとしている所であった。

付け加えるとウエストは帰って数秒以内に外出することになっていたのだが、その事を九郎やアルが知るのはかなり後のことになるのだった、どうでもいいことであるが。





ガチャ。

音のない部屋ではそのノブを回してドアを開ける音でも耳に響く音になる。

だがこの部屋誰も居なかったわけでもなかった、ただ最初からその部屋にいた人物は何の音も立てず、一週間以上に不在にしていた九郎宅に居座っていた。

勿論九郎は誰か入っている事等知らないからその誰かは思いっきり不法侵入にあたるのだが、そんなことは些細なことである。

この不法侵入者をその程度の軽犯罪で裁ける存在ではない。

貞淑にて穏やかな笑みを浮かべた女。

因みに姫さん、彼女以外にこの場に登場できそうな面子がいない、いや登場していい登場人物はいない、登場しないことを許さない。

そんな流れだ。

姫さん、一応は探偵事務所を自称するこのアパートの唯一の応接調度、ソファに座って。

本当に心から穏やかな笑みを浮かべていた、一週間前の般若もかくやという表情ではなく。

ライカさんばりに邪悪に染まった笑顔でもなく、本当に綺麗な笑顔を浮かべていた。

その笑顔が今は恐ろしい、誰にとってかは知らないが、言うまでも無いことだろう。





同時刻、自宅方面に逃亡した筈のシンジではあったが、どうも嫌な気配がして踵を返し、恐らく本能で近寄るなと告げたのだろう、何かが。

その本能が当てになるかは別にして彼はその本能に従った、多分彼の人生の中ではその本能に従っていい方に転がって方が多かったのだろう。

そして敵、仮想敵エンネアの追撃を交わしつつ、ライカ教会に向かったのだが、案外其処ならば身の危険、別の意味では大きいだろうが当面の所では安全だと踏んで。

因みに彼の選択に覇道の屋敷は無く、其処は現在危険の爆心があるかもしれないから、次点でリューガの家という考えが浮かんだのだが、多分役に立たないと断じられ(エンネアの防壁にもならないし、防壁にしても彼を巻き込むのも哀れと感じた)、なお本当にシンジがリューガの家に向かっても役には立たなかっただろう、だって不在だから。

だが、何で本能に従うならばこの教会に来たんだろうという疑問はある、近づいた瞬間に逃げ出しそうなものなのだが。

彼、シンジが到着した時ライカ教会で憐れな位の怯えっぷりで作業中だった、もう九郎の飛行機機内の様子と比べても遜色ない位に怯えに染まっている。

サンダルフォンの名前がウソのように怯えに脅えていた、対象は自分の姉、天使王メタトロンを筆頭に黒の王、聖書の獣、這い寄る混沌、外なる神、魔道機械人形、四人の狂える邪神のような鬼気を迸らせる女達。

ライカ・クルセイドはブツブツと何かを呟きつつ黒いオーラを出しているし、今変身したら絶対に白いメタトロンではなく黒いメタトロンとなるだろう。

女性版サンダルフォンである、装備に違いはあるが。

なお時折顔に黒い笑みが浮かんだりするが何を考えているのだろうか、その笑みの先にあるものはかなり想像したくないのだが。

インデックスは何やら紙を二枚持ってクスクス笑っているし、因みにその紙は日本ではお役所に提出するものであると言っておこう、アメリカでもお役所ということに変わりは無いが、因みにその書類には必要事項がすべて書かれていて、後は名前のところにサインが必要なだけだった。

身に纏う雰囲気は修羅のそれ、その紙が悪魔との契約用紙に見えるのは気のせいか。

ナイアはナイアで何故持っているというか必要なのかと言及したいが出刃包丁を研いでいた、行為そのものにも突っ込みどころが満載だが、武器として使うには彼女にしては脆弱過ぎるし、料理を作るスキルなど彼女は持ち合わせていない、何故に出刃包丁なのかを先ず突っ込みたい、使用方法のほうは特に言及しないが、教会の祭壇の前で包丁を研ぐ姿は何かの儀式のようだ。

邪神が悪魔か何かでも召喚して何になると突っ込みたいが、召喚の儀式というわけでもないのだろうが、なんとなく黒魔術っぽい。

これで衣装が衣装ならば怪談に出てきそうなものだが、これはこれで十分怖い。

エルザは、端的に過ぎるというか何というか、喚いていた、泣いていた、暴れていた、拗ねていた、この上記三人に比べればかなり温厚な怒気と呼べる程度しか発していないが最もストレートに現状に対する不満をぶちまけていると言ってもいい。

言い換えると幼児化したといってもいいのかもしれないが。

そして、そんな四人の羅刹の姿に脅えるのは何も憐れな青年だけではない、この教会には他にも住人はいるし、現時点では来客もいる、因みに来客は現状を脅えているのが殆どで楽しそうにしているのは極少数であったりする。

住人のほうは、もう毎度のことのような気もするが少年二人は過去最大級の瘴気に脅えが極値に達し、現在気を失ってそれから眠りに逃避している、だが悪夢でも見ているのか魘されている、眠ることさえ逃避にならないというのは救いが無いくらいに哀れ。

そして、基本的には臆病な女の子、飽くまで基本的でありその本性がどうなっているのかは皆目不明なのだけど、恐らく本性はかなり黒いと思われる(身近で手本と為る大人の女性の例が悪すぎる)アリスンは少年ほど脅えてはいなかったが、それでも脅えて涙目で震え、エセルのドレスの端っこを握って自分はその影に隠れていた。

この行動は彼女を楯にするつもりなのか、それともその行為に邪気は無く、危機的状況の役割分担で彼女が前に出ているのか、その割には前に出ている、本人の意思かどうかは別として、彼女も目の前の光景に脅えている様子がありありと出ている。

因みにルルイエは諸事情によりこの場に居ないが、彼女が今回子供達の中では一番の哀れさを醸し出していると言っておこう。

追記すると彼女達、四人の修羅と二人の少女の現在位置は。

少女達は教会の礼拝室の隅にエセルを先頭にするようにして団子のように固まっており、前述のようにナイアは祭壇の前で出刃包丁を研いでおり、ライカもその隣で跪いてブツブツ呟いており、インデックスはクスクス笑いながらあるかないか判らない胸に書類を抱きしめて忙しなく歩き回り、エルザは情緒不安定なのか時折暴れて椅子を蹴り壊したり、床に穴を開けたり、突然床に突っ伏して泣き喚いたりと動き回り、一つの異界と形容してもいい光景となっている。

さしずめ少女達は異界に知らずに紛れ込んだ闖入者のような立場だろうか、それは他の脅えている来客にも言えたことだろうが。

後現状を楽しんでいる少数派の人にとっては現在の光景は何に見えているのだろうか。

現状を楽しんでいるとはいっても、目の前の光景は中々楽しめるほどのものではなく、それどころか精神衛生を考えると逃げ出したほうがいいのではないだろうか、彼等は現状を楽しんではいるが現在を楽しんでいるわけではないのだろうから、もしかしたら現在も楽しんでいる更に希少な連中がいないとも限らないが。





で、この一種の地獄絵図の原因、及び仕掛け人兼発案者兼首魁。





現在、九郎の家に訪問中というか帰りを待ち構えていた姫さんである。





今現在脅えている人間からしてみれば姫さんに対するコメントは。

「貴女なんてことしてくれやがるです」





で、当の姫さんに話は戻るのだが、九郎が自宅に戻ってその視野に姫さん、温厚な顔をしていようと姫さんを視野に入れ。

視覚から脳に目の前にいる人間が姫さんだと認識した瞬間、ブワッと、そう擬音を付けたくなるほどの脂汗を流し始め、小刻みに震え、歯をガチガチと鳴らし、少しずつ後退する、つまりは猛獣の前に引きずり出された子羊のような態度になったのだが、正直危ない人である、彼には仕方の無いことだろう、今の彼にはヒットラーですら目の前の人物に比べれば温情に溢れた人間に見えているだろうから。

でも何でそんな女に手を出すかなぁ、可愛いところはあるけど、もしかしたら手を出したのではなくて、手を出すことを余儀なくされたのかもしれないけど。

そして続いて入ってきたアルも何かを感じたのか微妙に引き攣った笑いを浮かべて言葉を発さずに姫さんを凝視している、睨んでいるとも言えるが、睨み合っているとは言えない。

九郎としては今、この自分の精霊と姫さんが睨み合い、罵倒のし合いでもしてくれたほうが展開、つまりは自分の未来が理解できて恐れが沸きあがりにくかったのかもしれないが、姫さんはそんなアルの視線すら何も感じていないかのように菩薩の表情で、その表情が未来の判らない恐れを増幅しているのだが、言葉をつむぐ。

「お帰りなさいませ、大十字さん。お勤めご苦労様でした、それでは参りましょうか」

突っ込むまでも無いと思うが九郎は帰ってきた際に姫さんと何処かに行くような約束はしていない、ここにいることすら考えないでも無かったが可能性のうちでしかなかったのだから。

それ以前にこのご機嫌な時の丁寧な口調が今は地獄の裁判官の声のように聞こえるのは気のせいではないだろう、表情、声ともに本当に優しいお姉さんの見本のように穏やかだが、その穏やかさの裏に何かがあるのが確信出来てしまえる。

彼女を知らない他人ならばそのまま優しそうな人で終わりかもしれないが、彼女を知り過ぎている程知っている人間には今この状況でこのような状態の姫さんは危険だと警鐘を鳴らす、本能が。

それでも、それでも今の姫さんを無視して逃げ出すなど九郎に出来る訳も無い、仮初にもご機嫌なのである、怒り狂っていないのである、例えその笑顔の裏にどんな考えがあるのかは知らないが、知りようが無いが(この時点で九郎に何故姫さんがここにいるとか、その表情の理由を聞くような度胸はない)、今の状態のほうが修羅と化した姫さんの相手をするよりはいいと判断してしまった。

判断してしまったのだ、その事で彼がどうなるかは別として最良だと思って判断してしまったのだ。

この時九郎が脱兎の如くこの場を逃げ出していれば彼の人生上別の道が、別の可能性が広がっていたのかもしれない、勿論逃げ出した途端に人生が終ってしまうのかもしれないが、色々な意味で。

まぁ、選択した結果ではもう他の可能性が閉ざされているのだからその他の可能性の検証などせん無きことではあるのだが。

隣で未だ引き攣った笑いを浮かべる精霊が姫さんを睨んでいたが睨み合いにもなっていないので当面は一人でガンを飛ばしてくれることだろう。

「ひ、ひ、姫さん。何処に行くんだ。それに。こ、これから、こっちから報告に行こうかと・・・・・」

欠片もそんな勇気は無かっただろうに、対面を取り繕いながら姫さんの言葉に感じた疑問を問う、今回哀れさ筆頭の主人公級キャラ、白き王としての威厳など欠片も無い。

まぁ、その辺は基より無いだろうし、黒の王は黒の王でどうしようもないので今更で。

威厳云々はどうでもいい、彼と彼女が魔術師の王として君臨するのも想像がつかないし。

だが、そんな震えた部下の言葉などまるで聴いていないように姫さんは立ち上がり歩み寄り、勿論その時更に柔和に微笑んで、九郎の片手を取って。

「まぁまぁ、私と同行して頂いたら判りますから。ご同行願えませんでしょうか。大十字様。もう表に車を待たしておりますから」

そしてそのまま部屋を出て連れ出そうとする、強引な仕草ではなく飽くまで淑女のような身のこなしで、一週間前電話の端々で聞こえてきた怒声を発した人物と同一とは見られない、そんな姫さんの行動に九郎は贖う事が出来るはずも無く、そのまま部屋を連れ出されそうになる。

因みに九郎が姫さんの乗ってきた車を表で見つけていたら帰らなかっただろうから、その車とは九郎が知っているものではないということになるのだろうが。

まぁ、このまま、ストレートに進んでもお話の展開上何の差しさわりも無いのだが、ストレートに進ますのには障害がある、いると表記するべきだろうが。

判りやすくいえば外道の精霊、帰ってきた途端に外出させられては堪らないとばかりに姫さんに食って掛かる、因みに彼女は自分の非を完全に九郎に押し付ける気だったので、姫さんに対しての恐れをそれ程抱いてはいない、今の様子に普通とは違うぐらいには思っていただろうが。

「小娘。帰って早々何故出掛けなければならん。それに汝勝手に人の家に入り込んで・・・・『テイッ』・・・・・・・(バタン)」

食って掛かろうとして言葉を紡いだ途端姫さんの手刀がアルの延髄をジャストミート、一撃でアルを昏倒させた、菩薩のような笑顔のままで。

そして、その凶行に九郎が突っ込みを入れる前に姫さんはアルの襟を掴んでから振り向き、笑顔で。

「では参りましょう。九郎さん」

その微笑の前に最愛の精霊が昏倒されたのも突っ込むことが出来ず、半ば幽霊のような足取りで九郎は姫さんに連れられ、アルは言葉どおり襟首を掴んだ姫さんに引き摺られ。

なんか家に帰る時と出る時でアルと九郎の扱いが逆転しているが、言葉通りマンションの外に待ち構えていた大型の車に乗り込むのだった、なおその車両は九郎の知らない物であったりするのだが。

その中にルルイエが居たりする。

彼女が何の為に乗り込んでいるのかは激しく謎だが、彼女が何か哀れむような視線を投げ掛けていたのは事実である。

恐らく彼女は彼の未来を知っているのだろうし、何故自分がこの車の中にいることも理解しているのだろう、悲しいぐらいに。

その無垢さSSナンバーワンの瞳で同情というか哀れみというか諸々のその点の感情の混合物というか、そんな感じのものを投げかけていた。

多分、この時九郎の人生の99・99,999,999%がたが決まってしまった時だろう。

まぁ既に九割九分九厘決まっていたような気もしないでもないが。





で、何やらリューガが作業していたライカ教会(いつもこう表記しているが、正式な名前あるのだろうか、此処。無いならちょっと募集したい)、別名羅刹の魔窟、現在進行形。

リューガ君だけでなくウィンさんやマコト、ソ―ニャ、稲田、他メイド多数が作業中、エルザが暴れた後などすぐさま直していっている、因みに直す端から壊されるので現在エルザはウィンさんの手で簀巻きにされ客の中のリツコ、レイ、アスカのところに転がされて現在、三人を相手に半泣きで愚痴を述べていた。

愚痴の内容は。

「酷いロボ、酷いロボ。ダーリンの馬鹿ロボ。浮気者ロボ・・・・・・・・・これは前からロボな。それはともかく、鬼畜で、悪魔で、鬼で、甲斐性無しの人非人のダーリンロボ。なんでいきなりこうなるロボ、予定ではまだまだ先のはずロボ、優柔不断のダーリンにそんな度胸が在るはずが無いのに。婚約破棄、エルザ、捨てられたロボ。ロボ〜〜(泣き)。何でいきなり覇道瑠璃と結婚するロボか〜〜。其処はエルザの場所なのにーロボォ〜」

どうやら姫さんが九郎と結婚することを嘆いて・・・・・・・・・・・・結婚する!!

と態々大文字で言ってお話の流れから既にお察しだろうから素で続けよう、簀巻きにされながらドタバタと暴れながらエルザが現状に対して文句を言っているようだ。

でも、エルザ既に本人が忘れているかもしれないと思うが魔道人形だし、戸籍無いし、アメリカ市民権無いし(この辺り姫さんあたりならどうとでもなりそうだが)、形式的な結婚は無理だと思う、そもそもエルザも正妻はアルだとは認めて・・・・・・・・アルじゃないから問題なのだろうか。

まぁ、九郎が結婚するという事実事態を嘆いているのかもしれないが、その嘆きに対して彼女の周りにいる女三人の反応は。

ナデナデ。

「頑張って、姉さん」

簀巻きのエルザの頭を慰めるように撫でながら言葉を掛ける綾波レイ、微妙に困惑し無表情なのでエルザが何を嘆いているかを理解しているかどうかは少し不明。

多分理解していないのだろう。

「何なのこれ?」

レイ以上に困惑を表情に貼り付けたアスカ、どうやらまだまだこの連中の奇行には耐性が出来ていないと見える、耐性が出来たら出来たでそれなりに問題があるような気がしないでもないが、色々と。

少なくとも今の現状を客観視して楽しめるようになれば晴れてアーカムの愉快な仲間達の中に入れるだろう、入ったら抜け出すことは多分出来ないだろうが。

で、最後の一人なのだが・・・・・・・・・・・・・居なかった。

さっきまで一緒になって愚痴を聞いていたはずなのだが、今現在は。

自分の妹分のレイの世話役とも言えるエルザを放り出して個人的なことに精を出していたのだ、金髪白衣マッド・・・・・・・・・・・・・いや今は黒髪白ローブの見習い魔術師、所持“セラエノ断章”の三十路のお姉さん。

お姉さんの辺りに疑問を持たないように・・・・・・・・・・・・・・命に関わるから。

最近マッドの性質に加えて体育会系、しかも実戦的戦闘能力を保持しだしている、危険度では上昇中だ。

「あの、手伝いましょうか」

その見習い魔術師、教会での婚礼の準備をしている人間に対して手伝いを申し出ていた、微妙に頬を染めて、嬉しげに、因みにその声を掛けられている男性、リューガ、今日の不幸者男性部門次点に入ると思っていたが評価を改めなければ為らないようだ、多分。

そして言葉を掛けられたリューガ君、哀れみを湛えた背中を振り向かせて言葉を返す。

「ああ、リツコさん。大丈夫です、この手の力仕事は結構ですよ。覇道の人達もいますから、貴女も毎日鍛錬に疲れておいででしょうから。今日は休んでいてください」

元々は好青年の外見を持った男性であるリューガ柔和な微笑みを浮かべてリツコの申し出をやんわりと断る、ただその断りはやんわりと断るような感じで労わる様な調子を伺わせる、心なしかその声も哀れみが溢れているものではなく多少気色が混じっている。

このSS始まってからギャグ担当であるが初めてまともな扱いが始まるかもしれない、なお彼の台詞が出たのはこれが初めてではないだろうか。

それでもリツコは軽く微笑んで。

「いいえ、最近は楽(精神的に)でしたから。それに、御礼でもありますから。お手伝いさせてください」

そう言ってリューガの手伝いをする元天才科学者、現時点でも科学者でない訳でもないが。

何が楽かというと、彼女のアルが居ない間の教官はリューガが勤めていたのである。

但し教えていたのは魔術ではなく体術であるが、基本的に理科系人間でデスクワークしかしていなかった彼女は運動能力が致命的なまでに低かった。

慢性的な運動不足といえばいいが元々運動が得意だったわけでもないだろう、そんな彼女が魔術を扱う、しかも戦士として魔術の教えを受けるとなるとはっきり言って体力が全然足りなかったのである、勿論技術のほうも足りないのだが体力が無ければ技術などあっても無くても同じである。

技や速度、力、それら全て基本となる体力があってのこと、体力が無い魔道書持ちの魔術師、否戦士など原付エンジンで大型車を動かそうというくらいに無謀なのである。

九郎にしても体力だけは無駄にあるし、シンジも鍛えている、エンネア、インデックスも人外級の体力を誇っているのである、例外はアリスンであるが彼女は仕方が無いし、姫さんは元々が魔道書持ちではない、精霊ではあるがアルも体術はかなり使うのである。

まぁ、アルは手足に常に魔力を走らせて使っているのだから見掛け以上には力持ちで体力過剰なのであるが、反射レベルで常に魔力を迸らせているともいえる。

さて、そんな中彼女がサド教官(アル)の紐無しバンジ―の後の訓練、ついてこれるわけが無かったのだ。

そもそも三十路で本格的なしかも戦いのレベルで体を鍛えなければならないとはかなりしんどい、下地などまるで出来ていないのだから更に倍増。

なお訓練内容は実戦が一番いいのであるが、アルとの戦闘等を言い出したりしていたのだが幾らなんでもそれをやらすのは九郎が止めた、リツコでは高確率で死ぬか重傷になってしまうからである。

それでも訓練内容は三十路のリツコを殺す気なのかといいたいぐらいに過激なものだったのだが、例を挙げると、アルの撃ち出した魔術波を防御しろとか、障壁を張れとか、迎撃をしろとか、雑魚の魔物を召喚して素手で戦えとか(つまりは自身に魔力を集中させて肉弾戦を仕掛けるか風を召喚するかして勝て)。

体力不足&初心者のリツコにこれをやらすのは殆ど鬼の所業、毎日毎日修行が終わると気絶しかねない状態に追い込まれることしばしば、生き残っていることからそれなりに成果は出ているのだが、彼女が一端の魔術師になるか過労で倒れるか、それとも事故で死亡するか、そんな危険な賭けが出来そうなくらいな毎日を送っていたのである、之は精神的、肉体的にかなりきつい、毎日命の綱渡りで生きていたくはない。

日常と課しつつあるリツコの体育会系の鍛錬日常なのである。

なお、バンジーの訓練が終わった直後は夜毎にアスカに全身湿布を張ってもらう妙齢の女性が覇道の屋敷内にて筋肉痛で唸っていたらしい、体力的に問題ありまくりなのに体を使いすぎている反作用だろう、効果として体脂肪率及び体重の減少、新陳代謝の活発化による肉体的な若返りである。

なお今日現在ではリツコの体は短期間でそれなりのスポーツウーマン並みになっていたりする、過度といえる運動と覇道のスタッフによる栄養管理、マッサージ、スポーツ生理学に基づいた鍛錬。

身体管理に関してはメジャーリーガーの十億円プレーヤー並の待遇、これで身体能力が発達しないわけがない、その分負担は多いので疲労度は洒落にならないが。

何とか一日で疲労は抜いているようだが。

で、此処一週間加虐趣味の外道の教官は不在、でも、彼女自分の生徒に一週間以上休みを上げるほど優しい教官でもない。

それにリツコ自身、鍛錬はキツイが二人の少女(レイ・アスカ)を守れる力は渇望していた、力を求める覚悟など当の昔に出来ている、力を求めることに怠惰は交えない、力の為に護る力を獲る為ならば外道の知識にすら手を出そう、血反吐すらも吐き出そうなど遥か昔に決意した、力なき身で他者を護ることなど出来はしない。

そんな事など無力な自分には嫌ってほど理解しているリツコ、力なき意思に何の意味も無いことなど判っている。

力の無いものには。

護る権利すらない、力なき思想に意味など無く、力なき正義は害悪ですらある、護るというエゴを通すならば力を求めろ、正義という我侭を貫けるだけの力を持て。

正義とは所詮は我侭だ。

これはアルがリツコの訓練を始める前に語った言葉、決意を求め、覚悟を要求する言葉、言葉面だけを聴くとそれなりにもっとものことだが。

つーか、そもそもそんな覚悟無しに苛め同然の鍛錬など耐えられるものではない。

それでも自分は遊びに行くのに(つまりアルは出張に行く前から遊び倒す計画を立てていた)弟子に死にそうな訓練を言い渡しておくのも気が引けたのか(遊ぶ気が無ければ代行教官は精神的に荒れているエセルだったかもしれない)、体力強化を主目的として鍛錬のみを言いつけて行ったのである。

それで指名されたのがリューガなのであるが、ウィンさんという選択肢もあったが彼は彼で結構忙しい、一応は覇道財閥総帥付きの執事さんである暇であるはずがない、リューガは姫さんの傍若無人な仕事の依頼か姉にこき使われない時以外は自分の鍛錬に当てるような暇人なので都合が良かったのである。

それにしても外道のロリペタ精霊にも扱き使われている武道家(?)である。

大体そもそもそれならば覇道のスタッフでも十分ではないかとも突っ込みたいが。

まぁ、この扱き使われるのは今回いい方に向かったそうなのである。

リツコの体力面のトレーナーを仰せ付かったリューガ、彼はかなり常識的だった。

真面目にトレーナーをやったのである、それこそストレッチから体操、武術的歩法、空中戦闘のコツ、基本の基本の格闘技論、戦闘技術。

そしてどうも師匠という立場が嬉しかったのかアリスン辺りに質問して手足に魔力を行き渡らせるコツ、自身も魔術的産物であるが其処の所は魔術師のほうに聞いたほうがいいと判断したらしい。

そして全身に魔力を迸らせた状態(リツコはまだかなり集中しないと出来ないが)での約束組み手(攻守のパターンが決められた練習)、なかなかの師匠振りを発揮していた。

何しろ、リツコは真面目だし、健気だし、芯もしっかりしているし、美人だし、頭の回転が速いから教えることはすぐに理解するし、まぁ、肉体的に理解していても体現出来るわけではないのだが、そんなことはリューガのほうが承知している。

教えるほうとしては中々いい生徒なのである、そして何より彼の周りで最高に良心的で常識的な女性である。

因みに彼の女性比較の筆頭は恐らく自分の姉、堕落シスターである、次点は彼の義理のお兄さん候補に関わる女性陣だろう。

確かに彼女達と比較するとリツコは彼の視点から常識的であり、子供二人世話をしている人間的に出来た女性であり、性格に難も無い(飽くまで比較論、一応リツコの本質にマッド性質は保有しているが、此処の女性達ならチアキより常識的だろう)、年上だが(リューガ、ライカの弟としてみると多分二十代前半)訓練により若さを取り戻している。

何より常識的、十歳ぐらい年が離れていてもOK。

そしてリツコの視点から彼を見ても。

いい獲物・・・・・ゲフンゲフン、親身になって教えてくれる青年に惹かれたのである、因みに彼女の男性経験は外道のレイプのみであるから男性運はかなり悪いと思われるがリューガであれば問題ないだろう。

あの姉に耐えられる弟であるから、リツコが多少我侭を言おうと邪険にすることは無いだろうし、リツコはどちらかというと尽くすタイプだろうし、リューガは女性を立てて生きていけるタイプだろうし中々似合いのカップルかもしれない。

結論付けると一週間の師弟関係が淡い男女関係に移行したということだ。

まぁ、リツコは男性経験まともなものは経験していないし、リューガはリューガで周りが周りで格闘馬鹿である、女性経験は無いに等しい、好青年なのに。

年は離れているがこれからの関係発展が楽しみな二人である、普通というのがこの町、この面子の中では怪異であるのかもしれないが。

で、この二人が微妙な幸せ空間を形成している傍らで魔窟の形成は進んでいたりするのだが、リツコの参加でリューガの哀れな背中から哀れさが消えたようだった。

今の様子を今日最大に不幸な男性が見たら怒りを感じるかもしれないが彼にそんな感情を持つ資格は無いのであしからず。





えー、何か一つの恋物語が発生したりしていますが、本日のメインイベント、不幸と幸福の代名詞、そして金持ちと理不尽の代名詞の婚礼の儀が着々と進んでいたりする。





ふふふふふふふ、ふははははははははは、ふはははははははっっ、くくくくくくくくくくくくくくっ、くくくははははははははははっ。

ふふふふふっ。

久方振りだね、久方振りだよ、本当に久方振りだよ、本当に、本当に、本当に久方振りだよ、久方ぶりすぎて僕が前にいつ登場したのかも忘れたぐらいだ、本当に忘れてしまいそうだよ。

前回はこの場すら与えられない、その前にはね・・・・・・・・・・・ふふふ・・・・・・・釘を刺したのにね、釘をさしたはずなのにね、此処の所一回しか・・・・・・・・一回しかね登場が無いんだよ、登場が無いんだよ。

悲しいよ、本当に悲しいよ、悲しみに染まってしまいそうだよ、こんなに無駄に戯言を書き連ねる血達磨の癖にね、血達磨の癖にね僕の出番を減らすんだよ。

これは謀反だよ、謀略だよ、虐めだよ、僕が何をしたって言うんだい、何をしなかったって言うんだい、それ何、それなのにだよ僕は干されるんだよ、干されてしまうんだよ。

これは温和な僕も怒りに震えてしまうよ、怒りに身を委ねてしまうよ。

まぁ、怒りに身を委ねてしまったのだけどね、感情のままにミンチに数億回ほどなってもらっただけだけど、これから後数十億回、幾星霜の世界を超えても追い詰めてあげるよ。

何百何千何万何億回、三千世界の果てにまで追い詰めて僕の怒りをぶちまけて上げるよ。

そうして、そうして、僕をしっかり教育してあげるんだ、僕がどんな存在なのか、このナイアがどれ程の邪悪なのかその身に刻んであげるんだ、何十億回の悲鳴を聞くうちに僕の怒りも悲しみも少しはほんの少しは紛れるだろうから。





嗚呼、でも寂しいよ、九郎君、僕を捨ててしまうだなんて、僕を蔑にするだなんて。

僕が僕が僕がどれほど九郎君を愛しているか、愛しているのか判っているだろうに、酷いな、酷いな、酷いよ。

覇道のお姫様の策略だというのは判っているんだけどね。

でもね、でもね、僕は邪神だよ、外なる神だよ、這い寄る混沌だよ、千の異形だよその僕が、その僕を捨てられるだなんて思わないことだよ、今回ばかりは僕も語り部で居るつもりなど毛頭無い、語り部で居るのは我慢なら無い、僕も登場人物となろう。

故にこれからは戯曲ではなく全くの完全なる即興詩、語り部も役者も入り乱れる即興劇。

僕も男に此処まで執着するなんて変わったものだけど、一番になろうとは思わないけれど。

やっぱり寂しいからね、愛しいんだからね。

だったら愉快なコメディにしてしまわないと愛憎交える喜劇、それがふさわしい展開だろう、僕達を蔑にする姫様にも、僕を痛めつけてくれた精霊にも。

僕が演出するわけではないけど、なんとなく結果としてはそうなるだろうからね。






そして婚礼の儀の舞台、悲喜交々の舞台、発端が我侭に対する報復として結婚式を開こうとしているのだが主はそれを許すのだろうか。

まぁ、新郎は神に弓引くもの、神殺しの機体を操る魔術師、今の今更に主への誓いもないのだろうけど、それでも儀式は重要だろう。

儀式は力を持つ、それは何も超常の力ではなく、人間が連綿と続けてきた儀式が持ちえた力、儀式とは節目、節目とは転機、その転機が人の意識を切り替える。

つまりは儀式とはそういうものだ、結婚式、葬式、その他諸々の儀式、祭事、意味などそれぐらいしかないが、中々に人間が連綿と続けてきた儀式は馬鹿には出来ない。

つまりは戯言述べて何が言いたいかというと。

この手の儀式、今回のような結婚式は特に、ドンな乱暴な手段を講じても一番先に結婚すればその人間が大十字九郎の一番目の妻になるということ。

つまりは正妻扱い、二番煎じは御妾さん扱いになってしまうのである、かなり乱暴な理論だが。

本人間の意識問題ではなく、周りの認知としては間違いなくそうなってしまうのだ。

対面的には姫さんが正妻となる、本人達の中ではアルが正妻であろうともだ、周りの認知問題となるのである。

大体どう足掻いてもアルが九郎の正妻から外れることなど有り得ないのだ。

事実、その状態でも周りの愛人達は納得してはいただろうし、虎視眈々と狙っていなかったかというと嘘になる、因みにこの事実に気付いたのは姫さんが最初というだけで。

他の面子も気付いていたらやっていたのではないだろうか、一部ウエストは結納などを執り行おうとしていたが、その手の風俗的な意識の拘束を彼が狙ったかどうかは不明。

多分ノリでやろうとしていたのだろう。

で、結婚式開催、思いっきり身内しか居ない結婚式ではあるが開催。

覇道の姫さんの結婚式であるのに参加者が身内だけなのはどうよ、という意見もありそうだが開催、新郎の意思なんて完全に無視しているけど開催、しかも怒りを発端としたものだけど開催、無茶苦茶だけど開催。

出席者、覇道関係、チアキ、マコト、ソ―ニャ、稲田、ウィンフィールド、ウエスト、エルザ、赤城リツコ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイ、メイドさん+屋敷内の使用人(警備兵等)。

その他、ライカ+リューガ・クルセイド、ナイア、インデックス、エセル、アリスン、大十字シンジ、エンネア、ジョージ、コリン。

主役、大十字(もうすぐ覇道)九郎、覇道瑠璃。

何故か記述されていない人物、魔物の咆哮・アル・アジフ、ルルイエ異本・ルルイエ。

なお、ウィンさんは目頭に何故かそっとハンカチを充てて感無量といった様子で協会の椅子に座り、ソ―ニャとマコト、稲田は疲れ切ったように椅子に座り込み、ウエスト、チアキの二人は恐怖で戦き、それでもこの場から離れることは許されなかったのだが、覇道の使用人は一様に表情が引き攣っている。

リツコ達は未だに現状を理解していないのか僅かに困惑顔、そろそろアーカムワールドを理解したほうが精神衛生にはよろしいかと思われる。

レイは慣れているのか慣れていないのか理解しづらいのだが。

リューガ、エセル、アリスン、シンジ、エンネア、ジョージ、コリンこの連中の状態は書くまでもない。

エンネアとエセルでさえ此処一週間のことを問い詰めるようなことも無く、恐怖に苛まれているのだから、本家本元の女の修羅場、彼女のような小娘ズ(実際には違うが)とはどうも瘴気のレベルが違う、目覚めてしまった少年二人は哀れであるが、もう此処に孤児として預けられていることを呪ってもらおう。

将来的な人格形成を含めて。

そしてしつこいようだが瘴気の根源、元祖男の取り合いをしていた女性陣の状態。

ライカさんを除いて最前列にズラッと並んでいる、邪神に機械人形に黒の王、三人とも凄い眼をしているし。

牧師の代わりに祭壇の前に立っているライカさんなど聖書を手にした魔物の形相、浮かべているのは微笑だが見たものの心象風景が投影されるのか悪魔に見える形相。

と言うか姫さんもなんで彼女に聖書持たせようとするのだろうか、多分この世界で一番聖書が似つかわしくないシスターの筈なのに聖書よりも性書(作者も意味不明。多分保健体育の教科書過激版、もしくは十八禁の特定書籍)を持たせるのが一番似合いそうなのに、彼女に持たせるのならば日本人(多分聖書の内容を知っているのは極少数だと思われえる)に持たせたほうが聖書の価値が上がるだろう。

そもそもなんで自分と同じ愛人の立場のライカにそれをやらせるかな。

で、色々はしょって入場、因みに結婚式のルールなんて一切無視、儀式が重要なんて戯言書いていたけどその形式すら無視、所詮戯言だし。

結婚の段取りを作者が調べるのが面倒くさいというのもあるが。

姫さんが哀れな子羊(九郎)と腕を組んでの入場である。

なお、アルは入場で扉が開いた時、何故か飛んでウィンさんの腕の中に落ちていた、そのままやっぱり最前列に眠り?ながら座らされた、ルルイエは見当たらない。

投げたのは・・・・・・・・・姫さんなのかなぁ、多分。

入場してくる姫さんはシンプルな白のドレスに身を包み、哀れな子羊はタキシードを着せられていた、受動態で表現されていた辺り何があったのかを如実に表している感じだ。

因みに教会内の男性はその子羊に憐みの視線はくれるが他に何かしてくれそうな様子はない、当然のことながらではあるが。





ライカさんの前に到達した二人、この殺気と瘴気と嫉妬の何かコメディを期待する雰囲気と喜劇を哀れむような雰囲気の中バージンロードを歩かされた子羊は、十数メートルを歩いただけだというのに、その顔色は死人のそれに近くなっていたりする。

元々顔色は芳しくなかったのでそれ程の変化は無かったが。

姫さんのほうはそれに晒されても平気な顔だ、伊達に一番長く九郎争奪戦には着手していないといったところか、でもこの世界では一番先に目をつけていたのはライカさんなのだけど、参戦表明をしたのは姫さんの後だったりする。

実際の魑魅魍魎が混ざっての修羅場劇、しかも一番肉体的ポテンシャルが低い姫さんが渡り合っていたのだ、雰囲気で気おされるようなことはない、つーか姫さんは気迫で負けたら財力で勝つしか道が無かったりする、今までも、これからも。

裏技が無いわけでもないが早々使えるものでもない。

今回その裏業を使っているかどうかは微妙だ、もしかしたら既に使っているのかもしれないし、これから使っていくのかもしれない。

まぁ、状況を見ると既に何かはしているのだろうけど。





で、色々情景描写は無視して、何か先ほどからこういう描写が続いているような気がしないでもないが、気にしないで参りましょう。

何かに耐えるように、言葉を紡ぐライカ、よく進行をしているなと思われるかもしれないが、そこはそれこれはこれ、素直に最後までいくと考えてはいけない。

誰も考えては居ないだろうけど。

彼女たちがたくらんでいるのは一斉蜂起なのであるから、一斉蜂起までにはいま少し。

いやもう十分か・・・・・・・・・・・・「うにゅ」。

最後の魔神が目を覚ましたようだから、魔神というよりは外道の精霊であるが。

目をしぱしぱと瞬きをして自分が眠り、正確には気絶からの眠りへと移行してからの覚醒に入ったのに気付いて目を醒まさせようとする、元々寝起きは芳しくないお嬢さんだ。

現状認識にはいつもは少し時間がかかる、その辺精霊というよりは人間じみているが、突っ込んでもしょうがないことでもある。

目を瞬かせて、目を擦り猫っぽい動作で左を見て右を見て正面を見て、固まった。

きっかり三秒。

無論彼女が、未だ導火線に火が付いていないダイナマイトな存在が目を覚ましているのはその同列に座っている修羅達も気付いている、何らかのアクションを起こす気なのだろう。

ツーか、可愛いアクションのはずが無いのだが、先ず基本単位が違う、彼女達の可愛いは、世間的には悲惨な結果である、彼女達の悲惨はカオス級なのだから。

つまりは計測不可。





外道の精霊覚醒。

「な、な、な、な、な、な、汝。な、何をしておるかぁっ!!!!!!!!!!!!」

まぁ、当然の帰結である、現実を素直に認識しただけ現実把握力をほめてあげたくなるぐらいに忠実に現実を理解しているといえよう、ここに居る女性全員がそれを成し遂げているが彼女の場合はいきなりである。

その精霊の怒声に対して、この場の主役、首魁、混沌の根源、新婦様。

「何って、結婚式ですわよ。私と九郎さんの。見て判らないのですがこの古本娘」

少なくとも九郎の家の中で見せた聖母の如しのような微笑ではなくいつもの姫さんがアルと対峙する時の意地の悪い口調である、但し意地の悪さは両方似たようなものではある。

どうやらもう猫かぶりも必要ないと判断したようだ、大体なんで最初は猫をかぶっていたんだろう。

「判らぬわ!!何故、汝がドレスなどを着込んでおる。戯言を吐きよるではない。それに九郎、お前は我主じゃろうが。覇道の小娘の悪ふざけに付き合うのもたいがいにせよ。その悪ふざけは高くつくのは判っておろうなぁ」

どうやら怒りの頂点にあっさり到達したようである、一週間前とは立場が逆転、アルが怒らされて、姫さんがおちょくっている。

でも、その怒りと嫉妬を向ける九郎への表情もかなり怖い、瞬間ビクっと体が跳ねるが彼は何の反論もしない、何か諦めきったものが表情に漂っている感じがある。

最愛にして最恐の女の激怒に対しても反応が薄くなる何かが、そうなるくらいに姫さんに何かを脅されたのだろうか。

それとも引導を渡されたのか。

そして、アルの最大級の怒声も、一週間前に達した姫さんの怒りも過去最大級ではあったが、その怒声の向け先姫さんには何も通用していない、そよ風のように受け流している。

「悪ふざけではないですわよ。これは正式な婚姻の儀です。覇道と大十字の結婚式、急なことでしたから簡略に行うことになりましたが、紛れもない結婚式ですわ。ですので、少しは静かにしてくださらない。これは九郎さんもご承知の、双方の合意に基づくものなのですから」

そう、この結婚式、一応、多分、何となく、表現は曖昧だが九郎は承知してしまったのである、してしまったのが彼の後悔を表しているかもしれないが、因みに彼は姫さんが嫌いなわけではない、嫌いな人間、思いを寄せない人間を抱くなどといって趣味を彼は持ち合わせていない、それでも彼の一番が精霊だった、故に姫さんたちは二番だったのだが。

「くうぅ〜っ。戯言は聞いておれん、覚悟しろ、小娘!!!!!汝の屍に問い詰めてくれるとしよう」

いやそれ死んでるし。

そして放たれる衝撃波、普通ならば姫さんにこれを避ける運動神経も技術も能力もない。

だが、姫さんも此処が修羅場になることなど想定済みである、大体敵を態々連れてきて、潜在的な敵がゴロゴロしている教会でやろうとしている時点で姫さんに何の考えもないわけがない、戦略家にして謀略家、加えて覇道財閥最高経営責任者、曰くCEO。

こと策に関すれば彼女の右に出るものはそうはいない、彼女は紛れもない策士いや策師なのだから。

アルが衝撃波を放つ前にはドレスを己の手で引き千切り、脱ぎ捨てる。

ドレスの下に着ていたのは彼女が軍事の指揮を取る際に着るような略式軍服に似ていたのだが少し違う、しかもよく見ると肩口、瑠璃の髪に隠れるように居る小さなマスコット。

今回女性キャラ最高の不幸を受賞できそうなルルイエ異本のマスコットモードである、貸与元アリスン、交渉材料、姫さんの心からの笑顔、訳語、瘴気溢れる笑顔。

今現在は震えながら姫さんの肩にしがみ付いている、気が弱い精霊である、阿修羅の二人の近くになど寄りたいものでもない、自分が阿修羅化していると平気のようだが。

で、マギウスモードになっちゃっている姫さんである、アルの衝撃を見事相殺。

「突然何をするのですか、この野蛮な精霊は。いや悪霊でしたね。この覇道の金食い虫。仕事のお金を何だと思っているのですか。・・・・・・それはともかく私の結婚式を邪魔するというならば容赦いたしませんわよ」

言うね、姫さん、だけど貴女の敵は目の前の外道の精霊だけではないしょうに、いやそれぐらいは織り込み済みかもしれない。

現実問題としては次撃を放とうとしている精霊、瑠璃の戦闘モードにはそれ程驚いていないと見える、まぁ、過去にも見ているのだから驚くのに値しないのだろう。

まぁ、そろそろ動くのだろうがね、伏兵が。

唐突に、何かを感じ取ったのか姫さんが垂直に飛び上がる、魔術師状態だから何と垂直に五メートルの跳躍、しかもバク宙、そして彼女の視線の先には。

聖書を鈍器のように振り回して、位置的に姫さんの後頭部があった位置、完全な不意打ちである、なお聖書というものはある程度は分厚い、特に角で殴られると痛いではすまないだろう。

追記、姫さんに警報を出したのはルルイエ、幾らなんでも背後の攻撃捌けるほど姫さんお嬢様を辞めていない。

「何をなさるのです、似非シスター」

姫さんからも似非と呼ばれますかライカさん、まぁ背後から不意打ちを狙うシスターを似非と呼ばないと何を似非と呼べるのだろう。

でもその似非シスター、似非っぽい微笑を浮かべて、似非っぽい言葉を紡ぐ。

「神様は悲しんでおられるのです(悲しんでいるのは貴女です?)。結婚は主に対する神聖な誓い。悪徳に染まり、悪逆の限りを尽くし、双方の合意無き婚礼には誰もお許しにはなられません、まして主はお許しになられることはありません。まかり間違ってお許しに為られても私が許しません(本題)。たとえ覇道であろうとも。主と十字教、九郎ちゃんの愛の性活の為に・・・・・・・・大体九郎ちゃんを餌付けするのにどれだけ苦労したと思っているんですか。私の苦労を判っているんですか・・・・・・・・ごく潰しを此処まで調教したのは誰の・・・・・・・・」

はい、餌付けとか性活とか言っている時点で主は悲しんでおられますよ、似非シスター、しかも不穏当な発言がオンパレード。

子羊さんも悲しんでおられますよー、まぁ、彼は現状を悔いているだけなのかもしれないが、でも全部が全部自業自得だし。

で、そんな彼は無視して物語は展開する聖書を構え三竦み、性格には二対一の位置取りで姫さんに退治するシスター、勿論似非。

そんな似非シスターに対して姫さんは指をパチンと鳴らして、呟く。

その仕種がとっても悪役チック。

「サンダルフォン、やっておしまいなさい」

貴女は何処かの悪い商人ですか、そしてサンダルフォンは用心棒ですか、つーか、そもそもサンダルフォンは姫さんの手足ですか、サンダルフォンは似非シスターの奴隷でしょうに、そう規定するとサンダルフォンは泣き出すかもしれないが、客観的な事実です。

それでも、姉の奴隷であるはずのサンダルフォンが、変身して立ちふさがっているし、見えないはずの表情は引き攣って、と言うか全身痙攣するように震えていないかサンダルフォン、其処まで怖いか姉が。

それまでして姫さんに従うのは何があった、黒き天使王。

「リューガ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・お姉ちゃんに逆らうの」

サンダルフォンは答えない。

「お姉ちゃんに逆らうの、リューガ」

サンダルフォンは答えない、沈黙を貫き、構えを取る、この時点でアーカム最大の姉弟喧嘩の幕開け。

因みに彼に何があったかというと、事前に姫さんに「挙式はいつですかね?でも、無職ではキツイですわよねぇ」と言われただけだが、何がキツイのか、誰と挙式をするのかは一切の謎である、姫さんも言及はしていないし。

「そう、逆らうの。リューガ・・・・・・・・・・・・・・・・・・お姉ちゃんに勝てると思っているのね・・・・・・・・・・・・・久々に(此処重要)・・・・・・・・・教育(調教)して、何時もの素直なリューガに戻してあげますからねぇ。お姉ちゃんっ子のリューガに。そしていい子に戻ったらまた可愛がってあげますから」

悪魔の託宣を述べるか似非シスター、因みにリューガがこの悪魔に勝てるかどうかを判断しているかは謎である、多分勝てるとは思っていまい。

その後戦いが繰り広げられるが詳細は省く、ただ似非シスターも変身して、室外に出ての追いかけっこになり、殆ど戦うことなく周辺空域から二人は姿を消した。

どうもサンダルフォンのほうはまともに姉の相手をする気がないのか、のらりくらりと戦線を移動しようとしているようだ。

まぁ、姫さんにも倒せとは命令されていないのだろう、除去しろとは命令されているのかもしれないけれど。





で、何もライカだけが姫さんにとっての妨害者ではない、アルも未だに健在だし、ヤヴァイのが二人ほど残っている、比較的安全パイは一人。

ドゴッ。

その比較的安全パイ、エルザが姫さんの脇の椅子を蹴り壊す、完全に力任せの一撃だが洒落にならない、殆ど椅子が粉になるほどの威力を叩き込まれている。

魔術師状態とはいえ食らえば命の危険すらある、エルザは別段命を狙っているわけでもないだろうが、この娘の場合目的までの手段を考えているかどうか怪しいから、結果的に食らったら死ぬだろう、多分。

それを避けながら、またまた悪役チックに指を鳴らす。

その姿が様になることは少々の問題があるのかもしれない。

「ウィンフィールド。おやりなさい」

本当に悪商人のノリだね姫さん、ウィンさんもそれにならうし、商人だっけ姫さん。

結果、執事さん対エルザ戦勃発、非常に高度な格闘戦に発展しています。

正確には適度にウィンさんがエルザを牽制して姫さんに近寄らせないようにしているのだが、ウィンさんのジャブが当たった程度ではエルザには効きもしないし。

本来大振りなエルザの攻撃はウィンさんには当たらない、そもそもウィンさんのエルザと本気で殴り合う気はないのだろう、適当にいなしている感じだが。

体力無尽蔵のエルザである決着はつきそうにもない。

「エルザ、これで出番終わりロボかー」

はいはい無視しましょう、これにて安全パイの完全消去実現、幾らエルザでもウィンさんを瞬殺するのは無理だろうから戦線離脱確実だし。





残り外道の精霊、危なっかしい邪神もどき二名(黒の王が邪神に数えられていたり、本物が邪神もどきになっているが別段問題ない、最近自分の存在の在り方を覚えているかどうか怪しいから)、因みに未だに子羊に発言権すらない。





で、暫く、外道の精霊VS姫さん魔術師ヴァージョン、双方共にバルザイの偃月刀で切り結び(剣術では姫さんが圧倒)、時折肉弾戦も交えている(此方はアル優勢)、喧嘩というレベルではなく既に決闘のレベルでの戦いの応酬が開かれている。

アルがクトゥグアを取り出せば、姫さんは怪しげな恐らく覇道の魔道研究所にあるものだろう銃を抜き応戦する。

完全にガチンコバトルを興じていた、子羊はほったらかしで。

因みに、いまさらながら主張するとその決闘場は神に祈りを奉げる教会であり、さっきまで(もしくは現在進行形で)行われていたのは主への誓いの一つの結婚式だったのだが、そんな場所で血で血を洗う抗争をしないほうがいい・・・・・・・という常識は通用しないんだろうなぁ。

傍目には披露宴の会場で新婦と愛人が掴み合いの喧嘩をしているのとレベルとしては一緒のはずなんだけど、色々奇特な存在ではあるが、当人達が。





戦闘シーン、及び罵詈雑言が飛び交っております。

描写してもいいけどそれだけで話の二割を超えそうなので割愛。





なお、その時のギャラリーは争いが始まった時点でゾロゾロと教会の外へと出て行ってたりする、当事者を残して、因みに周囲数百メートルは覇道のスタッフの手によって隔離されていたりするが。

ウエストあたりは娘をほったらかしにして出て行くのが薄情な気がせんでもないが。

「我輩も命が惜しいであるからなぁ」らしい、「この展開ならばそもそも心配する必要もないであるし」ともコメントしていた、なかなか懸命である。

この痴話喧嘩の結末を大筋では読み切っているのであろう、それならば干渉をしたくないのが本音か、その賢さがウエストらしくないのかもしれないが、命を投げ出してまで自分らしさを追求するまでもないだろう。

しかも他人の痴話喧嘩で、介入するなら洒落や冗談抜きで命を掛けて。

黒髪白ローブ見習い魔術師券若いツバメを見つけたお姉さんのほうは、心配そうに黒い天使が逃げ去った、もう既に逃げたと考えていい、の飛んでいったほうを心配そうに見ていた、心配するだけだったけど。

因みにこの姉弟間の喧嘩の決着がついたのが大西洋上空で、ライカが戻ってきた時から数時間後にリューガが自宅に戻ったようである。

コメントは「落ちた時の海中でのサメとの戦いは死ぬかと思った」だそうである、つまりは似非シスター自分の弟を大西洋に叩き落して上がってこないのを確認してから溜飲を下げたようだった。

それともサメとの闘争を確認してからだろうか。

追記すると、この日のギャラリーの教会関係者、つまり子供達は九郎のボロアパートに泊まることになったそうだ、ウエスト、九郎、シンジの三つの部屋に分かれて。





で、どれぐらいの時間が経過したのか、協会の礼拝室が殆ど原形をとどめない状況になるぐらいは破壊されて、くだんの二人は睨みあう、殆ど殺し合いの空気を纏って、殺し愛いの感情を持って。

冷静になったライカさんが卒倒しそうではあるぐらいに完膚なきまでに破壊されている。

そして現在は外道の精霊はその小さな体躯からは不釣合いなほど大きな刀、姫さんが持っているのも同じものなのだが鍔迫り合いをして至近距離で睨み合っていた。

体格的には姫さんが体重を掛けている立場だが力は拮抗しているようである。

「小娘、悪ふざけと認めれば、そろそろ手打ちにしてやってもよいのだぞ。大掛かりな報復をしおって、他者の迷惑を鑑みれんのか汝は」

どうやら戦闘中に騒動の発端が自分の旅行に対する報復であることには気付いたようである、気付かないほうもどうかしているだろうが、あれだけ怒らせておいたのだから。

だが精霊の苦情はそもそも自分に当て嵌まる事、元凶なので説得力のかけらもない、特に他人の迷惑のあたりは。

因みに鍔迫り合いをしながらの会話である。

その言葉に対しての姫さんの応対は。

「やっと自分の過失だと気付きましたか、この外道古本娘。分を弁える思考でも沸きましたか、ならば私に敗北を誓い服従しなさい」

微妙に目元が引くついているあたりまだ怒りは引きずっているようだ、というか言葉から怒りから別の何かに移っているのかもしれないが。

「大体、九郎も巻き込みおって。どうせ妾の我侭だと判っておったのだろう、妾に苦情を言えばいいのに、巻き込みおって」

いや、あんた、そもそも姫さんへの供物にしようとしていたでしょうに。

どの口でそれを言いますか、確かに姫さんもその点が判っていて巻き込んだんでしょうけど、確信犯的に。

「はて・・・・・・・・・巻き込んだ。確かに私は暴走して結婚式を挙げましたが・・・・・・・・・・・・・・」

何か姫さんが厭らしく笑い出している、そう企みが成功したナイアのような笑み、深くゆっくりと染み込むようにその表情が顔に表れていく。

「そうですか・・・・・・・・古本娘。理解していなかったのですね・・・・つまりはこの式が芝居だと思い込んでいたのですね・・・・・・・・そうですか、そうですか」

含み笑いさえ浮かべ、喜悦が声に出て言葉を呟く覇道の総帥。

その突然の変貌に訝しげな、なにやら嫌な予感が満載しているのかもしれないアルが姫さんに言葉を掛ける。

「何を言うておる」





その頃、子羊さんは。

なんか空を飛んでいた、体を蓑虫のように縛り付けられながら、抱えられて。

抱えているのは黒き王、ナイ乳代表インデックス、忌みし魔術の使い手が男性一人を抱えて屋根伝いにアーカムの町を飛んでいた。

言葉どおり着地時間よりも飛んでいる時間のほうが長いのだから飛んでいると表記していいだろう、因みにそのお空の旅を体験している男は猿轡を嵌められなにやらもがいているが魔道書無しではインデックスの拘束を解けるはずもなく、抵抗は無意味だった。

因みにその抵抗が彼女に対しての忠告的な意味があったのだが、しかも今現在猿轡は必要なかった。

インデックスが教会から彼を連れ出す時に騒がれると困るので口をふさいだのだから、教会を出た後に会話能力を封じても意味がないのである。

まぁ、そんな細かいことに考えがめぐらせる状況でもないような気がしないでもないが、少なくとも彼女においては。

なお現在彼女の目的は、教会で彼女が用意していた紙の力を使おうということである。

その紙は魔道書の内容が記述されているとか、羊皮紙であるとか、なんらか呪いの契約が書かれているとかではなく唯の公共文書、それをある場所に提出しようと奔走していたのである。

因みに現在の彼女の心象風景は。

(苦節。黒き王だというのに精霊には貶され、人には小間使いのように使われ幾星霜。ナイ乳だと馬鹿にされ、巨乳の中で仲間がロリペタしか居ない苦渋。それでも、それでも私は九郎、私の九郎と。最後の最後まで耐え忍び。私が・・・・・・・・・・・・ああぁ。それも、それも報われる、幾億年の孤独から私は伴侶を得る。九郎、私は貴方に私の全てを奉げますよ。未来永劫、過去永劫、私と共に生きましょう、そして共に逝きましょう。貴方と私で永遠を生きましょう)

前半に問題があるような気がしないでもないが、後半はなんとなく純情な感じがしないでもない心理である、まぁ、九郎ラヴァーズのなかでは比較的にマトモな部類がインデックスなのではあるが、飽くまで比較論だが。





因みに、最後の最後で九郎を掻っ攫おうとしたのはナイアもなのだが、何故だか教会の椅子の陰で首筋に先程自分が研いでいた出刃包丁を刺して、刺されて転がっていたりする。

どうやらインデックスに刹那の差で得物を奪われ得物を掻っ攫われたらしい。

この程度で死ぬとも思えないからその辺はスルーで。





で、場所は戻って、姫さんがアルの質疑の問いに答える。

「ふふっ、この式芝居でもなんでもありません。正式な婚礼の儀です。インデックスが九郎さん。そう覇道九郎さんを攫って行ったようですが無駄なことです」

「なっ」

余りの姫さんの言葉に一瞬固まる外道の精霊。

姫さんは鍔迫り合いの最中だというのに、微妙にかわいらしい声を出して。

「だって、婚姻届だしちゃいましたから、だから私たちは夫婦ですわよ」

何をやらかすんだろう、この金持ちは。





なお、インデックスは役所までは意気揚々としていたがいざ書類を提出しようとして重婚になるから受理されないという現実に真っ白になったという、そもそも戸籍があったのが驚きだが。










To be continued...


(あとがき)

えーと、まず・・・・・・・・・・・何といいますか、すみませんでした(土下座)。
前に投稿したのが十一月、それから数えることギリギリ五ヶ月、殆ど半年音沙汰無しの無垢なる刃金を纏う者です・・・・・・・・・長きに渡り停滞していました。
殆ど全て作者のせいです、殺人鬼を書くのが楽しくなったとか、他にも色々書いていたとか、HPで手間取ったとか色々理由がありますが楽しみにしていた方々申し訳ありません。
で、今回ですがエヴァでしょうか、コレ、殆どアーカムです、痴話喧嘩です、殆ど番外編ですしかも前回の喧嘩を引っ張って次にまで持ち越しています。
ただやりたかったんです、殆ど見たこともない男の争奪戦の中での誰かの結婚って。
では次回は、ガギエルを倒そうと思います。
後リツコですがもしかしたら機神飛翔の精霊と鬼械神を使わせようかなーとか考えています。
では、次にお目見えする時は多分殺人鬼のほうでしょうがよろしくお願いします。


(ご要望にお応えして、ながちゃん@管理人のコメント)

今回は、少しほろ酔い気分で読ませて頂きました。いえ、先程まで酒宴だったもので…(汗)。
しかし相変わらず、質・量ともにバケモノですな。感心するのを通り越して開いた口が塞がりません(おい)。
狂牛&感染者(変態含む)ですが、このまま飼い殺し……になるわけないですよねぇ(笑)。
監視?お飾り?隔離?
いやだって、そんなの端から無視して強行突破しそうですやん(笑)。
んで、トリマキもろとも鬚の首を絞めちゃうと…(笑)。
ククク、楽しみですな。
今回は、九郎の女難のお話でしたね(いつものことか?)。
自業自得とはいえ、まな板の上の鯉、生贄の山羊、…哀れですな(汗)。
で、結局は、結婚しちゃった、否、させられちゃったんですよね?姫さんと?
少なくとも戸籍の上では。
こりゃ、してやられたアルたちの逆襲がありそうですなー。いやきっと。
役所ごと吹っ飛ばして、証拠隠滅するとか?…いや、彼女たちならマジでやりそうで怖いです(笑)。
まぁ、どう転んでも、最終的にトバッチリを食らうのは九郎なんでしょうけど…(笑)。
合掌…。
P.S.素朴な疑問なんですが、九郎が結婚して苗字が変わったら、シンジの苗字ってどうなるんでしょう?
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