暁の堕天使

聖杯戦争前夜編

第五話

presented by 紫雲様


シンジが自分の罪を告白してから、半年の時間が経過していた。
 あの後、シンジは自分を追いかけてきた士郎と、表面上は元通りの関係へ修復を果たしていた。
 だが他のメンバーとは、はっきりと距離を取るようになっていた。
 放課後の誘いは全て断り、暗くなるまでは音楽室でチェロを弾き続ける。
 休日は全て教会の雑用を口実に、あらゆる誘いを断り続けた。
 唯一の例外が、士郎から誘われた時のみ。それも他のメンバーがいない時だけ。
 それは2年に進級した後の文化祭においても同じだった。
 前回と違い、教会の雑用を口実に文化祭その物を欠席したのである。
 一成や綾子、凛達もどうしていいか分からず、ついに関係修復を諦めた頃、その日が来た。

第3新東京市―
 静かに止まる新幹線。
 そこから降りてきたのは、修学旅行にやってきた穂群原学園2年生御一行様である。
 「よっしゃあ!やっと着いたぜ!ホント、長かったなあ!」
 「そうだな。あの窮屈な空間から解放されて、一息つく事が出来る」
 「うう・・・疲れたよ〜・・・」
 プラットホームで体を解している陸上部3人娘。そこへ凛と綾子が近寄っていく。
 「よ、お疲れさん」
 「それにしても長かったですね。こんなに辛いとは思いませんでした」
 和気あいあいとした女性陣。それを離れた所から、2対の視線が見ている。
 「なあ、衛宮。シンジは・・・」
 「第3には戻りたくない、そう言っていたよ」
 「そうか・・・」
 目を伏せる一成。元日の告白から半年。自分が取るべき態度を見出せず、彼は悶々とした物を心の内に抱え続けていた。
 「やっぱり気になるか?」
 「うむ。これほど自分を見失う事があるとは、ついぞ想像した事が無かった」
 「そっか。まあ仕方ないさ。でも、それなら都合がいいかもな」
 士郎の言葉に、一成が顔を上げる。
 「シンジから頼み事をされてるんだ。明日の自由時間に、それを済ませてくる。藤ねえにも許可は貰ってるから、問題は無いんだけどな」
 「何をするつもりだ?」
 「シンジのお母さんのお墓に、花を捧げて来てほしい。そう頼まれたんだ」
 その言葉に、一成は即座に同行を希望した。

翌日―
 「それじゃあ、時間までに帰ってくる事!良いわね!」
 大河の言葉を聞き終わるよりも早く、フライングし始める生徒達。
 その内の1人の襟を、大河が咄嗟に掴む。
 「藤村先生!何でアタシだけ捕まえるんだよ!」
 「近くにいたからよ!」
 肩に竹刀を担ぎながら宣言する大河に、楓がブーイングを浴びせる。
 そこへ近づいてきた人影に、楓は救援を求めた。
 「ちょうど良い!アタシを助けろ!衛宮!柳洞!」
 「何故、そんな事をせねばならぬ。我々は用事があるのだ」
 「アタシを見捨てる気かよ!」
 一成と楓の応酬に、凛と綾子まで近寄ってくる。
 「藤ねえ、それじゃあ、俺達行ってくるから」
 「駄目駄目。昨日、他の先生から釘を刺されちゃってね。私も同行する事になったの」
 「ふーん。まあ別に良いけどさ」
 「ん?どこか行くのか?」
 好奇心を擽られた鐘の質問に、士郎と一成が顔を強張らせる。2人はこの場にいる少女達が、シンジと距離を取っている事を知っているからだ。
 だがこの場には、そんな事実を知らない虎がいた。
 「言峰君のお母さんのお墓参りよ。第3に行くなら、花だけ供えてくるように、頼まれたのよ」
 その言葉に、顔を強張らせる少女達。だが凛は、それをすぐに解いた。
 「お母さんのお墓参りですか?」
 「そうよ。何でもお母さんのお墓が、この辺りにあるそうなのよ。士郎が代理でお願いされちゃったの」
 「え?でもお母さんって、言峰君は・・・あ、そういえば、養子でしたわね」
 凛に3人娘の視線が集まる。
 「遠坂嬢、今、言峰が養子だと聞こえたのだが、どういう事だ?」
 「私も詳しい事は知らないんです。言峰君の養父は、私の死んだ父と知り合いでして、その伝手で教えて貰っただけなんです。どうして養子に入ったのか、までは聞いていませんわ」
 改めて、誰もシンジの過去を知らない事に気付かされ、黙りこむ一同。そんな沈黙を切り裂くように、大河が叫ぶ。
 「さあ、行くわよ!士郎、道案内しなさい!」
 「ちょ、ちょっと待って下さい!私もついて行って良いですか?」
 「遠坂さん?別に良いけど、楽しいものじゃないわよ?それでもいいの?」
 コクンと頷く凛。そんな凛に、他の4人も同調する。
 「分かったわ。それじゃあ一緒に行きましょうか!」
 大河だけはまるでピクニック気分で、一行は駅へと向かった。

墓地―
 「何よ、ここ・・・」
 凛が絶句している。他のメンバーも似たり寄ったりである。
 彼女達の眼前に広がっていたのは、一面、見渡す限りの墓標であった。
 「ここのお墓の大半は、2000年に起きたセカンド・インパクトの被害者達が眠る墓地のようね」
 近くにあった案内板を見ながら、大河が納得したように頷いている。
 「場所は教えて貰ってるから、迷う事は無いと思う。T区画の21−35番か、こっちだ、行こう」
 花束を手にした士郎に先導され、一行は墓地の奥へと進んだ。

 目的地が見えてきた頃、一行は向かい側から歩いてくる人影に気がついた。
 先頭を歩くのは、この辺りの学校指定の制服らしい衣服に身を包んだ、紅茶色の髪の少女。その後ろに、黒服に身を包んだ2人の男性が無言のまま続いている。
 士郎が『どうぞ』と道を譲る。他のメンバーも同じように道を譲り、そして少女の正体に気がついた。
 「・・・ひょっとして・・・」
 その声が耳に届いたのか、少女―アスカは咄嗟に走り出した。2人の黒服も、慌てて後を追いかけていく。
 その姿は、近くに停まっていた黒塗りの車の中へと消えた。
 やがて走り出した車を目で追いかけながら、凛が呟く。
 「今の方は惣流=アスカ=ラングレーですね」
 「ええ!しまったなあ、サイン貰っとけば良かったよ・・・」
 ガックリと肩を落とす大河。そんな大河に士郎が声をかける。
 「どうみても墓参りに来てたんだ。そんなとこでサインを求めたら、非常識に思われるぞ?」
 「うう、士郎の意地悪・・・」
 姉弟喧嘩の後ろでは、他のメンバー達が思い思いの感想を口にしていた。
 「確かに美人だが、この穂群の黒豹には劣るかな」
 「蒔の字、表現は正確にな」
 「その通りだ。どう見ても、あちらが上だ」
 「柳洞、はっきり言うんだな」
 「はあ・・・私もあれぐらい綺麗になりたいよ・・・」
 騒ぎ出す楓を尻目に、再び歩き出す一同。やがて先頭を歩いていた士郎の足が、ピタッと止まった。
 「ここだな・・・Yui Ikari。間違いないな、ここだ」
 「イカリ、というのが言峰君の旧姓だったんですね・・・あら?」
 凛の目に留まったのは、まだ火が点いたばかりの、数本の線香であった。その傍には、花束が置かれている。
 「ひょっとして、誰か先客でも来てたのかしら?」
 「確かに、線香を見る限り、来てすぐと言った所だな」
 線香を見慣れている一成の判断に、凛が『あ!』と声を上げる。
 「どうした、遠坂?」
 「さきほどの惣流=アスカ。ひょっとして、ここへ来ていたんじゃないかしら?」
 周囲を見回すが、一行以外の人影はどこにもない。アスカ以外にすれ違った者もいない以上、凛の言葉は正しく思えた。
 「けど、遠坂。だとすると、言峰と惣流=アスカは知り合いという事か?もしかして、例の・・・」
 「単純に考えるとそうなりますけど・・・」
 過去にシンジが傷つけた少女。その存在は、大河以外の全ての者が知っている。
 「いや、違うな。そもそも言峰が口にしていた条件と矛盾する。彼女は終始トップの座をキープし続けた天才だ。それに、もし蒔の字の答えが正解だとすると、言峰はエヴァンゲリオンに乗っていた事になる。だが、あれのパイロットはどちらも少女だ」
 「そう言われてみればそうだよな・・・単なる偶然か・・・」
 墓標に供えられた花束が、寂しげに風に揺られていた。

翌日―
 穂群原学園一行は、本命の見学先であるNERV本部へと来ていた。
 使徒戦役を終え、SEELEを打倒したNERVは、もう使徒迎撃の任務には就いていない。今の主要な役割は、エヴァ建造に使われた、超技術のフィードバックを目的とした、先端技術の管理である。
 特に生物工学発達における功績は著しく、医療技術も格段の進歩を遂げていた。
 そんなNERVにも、かつては守秘義務の塊だった時期がある。その頃の事を知る一部の権力者達からの批判もあり、今のNERVは施設の一部を開放するようになっていた。
 地下に半球体上に広がった空間―ジオフロントへの立ち入りと、本部1階に作られた見学希望者の為のコーナーである。
 ジオフロントへの直通電車。その窓から見える光景に、彼らは息を呑んだ。ピラミッド状のNERV本部と、巨大な地底湖。そして周辺に残る巨大なクレーターが、かつての激戦を彼らに物語っていた。
 「すごいな・・・」
 初めて見るジオフロントの威容に、感嘆する士郎。その隣にいた一成も、無言で頷いていた。
 「あのクレーターを見たか?」
 「ああ、とんでもない大きさだったな」
 「うむ。人類の生存をかけた使徒戦役。どれだけ困難な戦いだったか、その一端を目の当たりにできたな」
 電車はNERV本部の中へ吸い込まれるようにはいり、やがて静かに止まる。
 電車から出たそこは、すでに彼らにとって未知の空間であった。
 かつて使徒と呼ばれる、謎の巨大生命体との激戦が繰り広げられた、人類最後の砦。
 そして今では、更なる最先端技術を研究し続ける、世界最高峰の研究機関である。
 「はーい、こちらに注目〜」
 その声に、振り向く生徒達。そこに立っていたのは、赤いジャケットを着た女性であった。
 「私は葛城ミサト。ここの作戦部部長よ。いつもの案内役が風邪で倒れちゃったので、私が代役を務めます、よろしくねん♪」
 使徒相手に奇策をもって戦い抜いた『名将』の登場に、生徒たちから歓声が沸き起こった。

 「ここは私達が倒して来た使徒のコーナーよ」
 最初にミサトが案内したのは、使徒の外見や特徴についてのブースであった。そこには南極でセカンド・インパクトを起こした第1使徒アダム、本部地下に封じられていた第2使徒リリスから始まり、量産型エヴァンゲリオンまでが情報公開されていた。
 熱心にブースを見て回る一同。特に魔術師である凛は、使徒と言う存在に並々ならぬ興味を抱き、食い入るように見つめていた。
 ちなみに凛は知らなかったが、時計塔や彷徨海、アトラス院等からも使徒という存在に興味を抱いた魔術師や錬金術師達が、頻繁に来ていたりする。
 「えっと、葛城さん。質問があるんですが」
 「何?」
 「使徒は16番目のアルミサエルが最後だったんですか?」
 「そうよ。この後に来たのはSEELEが送ってきた量産型エヴァンゲリオン8体だったの。だから使徒はアルミサエルで打ち止めって訳」
 ミサトの言葉に、素直に頷く士郎。
 勿論、真実は違う。
 タブリスこと渚カヲルの襲撃はあった。だがその事実だけは、故意に隠ぺいされたのである。
 『使徒が人間に擬態できるという情報が流れてみろ。世界中で魔女狩りが起きかねん。タブリスについては、全ての情報を抹消。MAGIからも記録を消し、痕跡を一切残すな。口外も禁止する』
 それがゲンドウの判断であった。
 「さあ、次へ行くわよ。次に見せるのはエヴァンゲリオン弐号機よ」
 「「「「「「おー!」」」」」」
 「とはいってもレプリカだけどね。本物は最後の戦いで破壊されちゃったから」
 ミサトの言葉に、落胆の声があちこちから漏れる。だがそれも、レプリカを見るまでだった。
 見学者の為に制作されたレプリカは、本物と同じ大きさで再現された張りぼてである。だがその大きさは、見る者を圧倒させた。
 「こんなのを操縦していたというのか・・・」
 「そうよ。でも誰でも操縦できる訳じゃない。操縦するには、適性が必要なの。それに必要なのはそれだけじゃない。操縦者には覚悟を求められるの」
 「覚悟、ですか?」
 「そうよ。エヴァは傷つくと、それを搭乗者に痛みとしてフィードバックするの。だから、どれだけ素質があっても、覚悟がない人間では乗りこなせないのよ」
 先程のブースの写真を思い出して、生徒達が顔を青ざめさせる。特にラミエル戦後の無残な姿を晒している零号機の光景は、彼らに大きな圧迫感をもたらした。
 あの零号機に乗っていた少女が味わった苦痛がどれだけ大きな物だったか、それを想像できる者などこの場にいなかった。
 「さあ、次よ。今度はチルドレンのブースだからね」
 ミサトの案内に従い、次のブースへと移動する。
 「さあ、ここよ。メインはアスカとレイね、ゆっくり見ていってちょうだい」
 そこには当時14歳のレイとアスカの写真、そして零号機と弐号機の写真が飾られていた。
 「考えてみれば、あの2人ってこの子達と同い年なのよね。なんか複雑だわ」
 「へえ、そうなんですか」
 どうやらミサトと話が合うらしい大河を置き去りにしつつ、ブースを見て回る一同。
 「こっちは・・・4th?」
 「ふむ、さしずめ予備のパイロットという所か。搭乗予定の参号機が第13使徒バルディエルに寄生されていた為、参号機は抹消処分。それに伴い、参号機を失った4thチルドレンは予備役に編入、か」
 「ねえ、鐘ちゃん。おかしくない?3番目がいないよ?」
 由紀香の質問に、周囲を見回す一同。だがそれらしい物はどこにもなかった。
 「葛城さん、少し宜しいでしょうか?」
 「何かしら?」
 「チルドレンですが、何故3番目はいないのですか?」
 「ああ、それね。実は3番目は欠番なのよ」
 ミサトの言葉に、首を傾げる一同。
 「本当はね、3番目の子供は存在していたの。でもその子が4歳の時に、交通事故で他界。3番目はそのまま欠番となったわ」
 「そうだったのですか。でもその子が良く適性があると分かりましたね。生まれ持った素質なんですか?」
 「近いと言えば近いかな。遺伝子が関係してるから」
 嘘ではないが、事実でもないミサトの返答を、生徒達が鵜呑みにする。
 「その子供はここの総司令である碇ゲンドウと、エヴァンゲリオンの設計・開発責任者である碇ユイ博士との間に生まれた子供だったのよ」
 「へえ、ある意味、運命的な子供だったんですね」
 「そうね。でもユイ博士はエヴァの起動試験中に他界し、子供は交通事故で亡くなってしまった。これが運命だとしたら、皮肉極まりないわね」
 生徒達の先頭に立ち、別のブースへと移動するミサト。だがいつまでも、その場に立ち尽くしていた人影があった。
 「衛宮、どういう事だ?」
 「いや、俺にも分からないよ」
 立ち尽くす2人。それに気付いた少女達が近寄ってくる。
 「どうした、寺の子」
 「・・・覚えているか?昨日、お参りした墓碑の名前を」
 「すまない、忘れてしまったようだ。良かったら教えてくれないか?」
 「Yui Ikari。そう刻まれていた」
 唖然とする鐘。他も似たり寄ったりである。
 「ちょ、ちょっと待てよ!柳洞、どういう事だよ!」
 「分からん。もう俺には何が何だか、さっぱり分からんのだ。シンジがエヴァンゲリオン操縦者でないのは間違いない。それはここのブースを見れば断言できる。だがシンジの母親の墓碑にエヴァンゲリオンの開発者と同じ名前が刻みこまれ、更に惣流=アスカが墓参りに来ていた。そして、碇ユイ博士の子供は本来3番目のチルドレンとなるはずだったが、4歳の時に交通事故で死んでいる」
 「言峰は生きてるよな?別に幽霊でも何でもないしよ・・・」
 困惑する一同は気付かなかった。物陰から注がれる視線があった事に。
 
食堂―
 昼食の時間を迎えた一行は、他の生徒達と同じように、昼食を摂りに食堂へと移動していた。
 この食堂も、本来は職員専用として作られた施設であったが、本部の公開に伴って、見学者が食べられる場所へと切り替わっていた。
 バイキング形式の為、全員が好きな物をとっていく。
 士郎達も他の生徒達同様に、席に座って昼食を摂ろうとしていた。
 「・・・慎二の奴、何かあったのか?」
 食堂の奥の方で、慎二が孤立していた。付き合いの長い士郎には、彼が不機嫌な為に、周囲に人を寄せ付けようとしていない事がすぐに分る。
 「やれやれ、また何かやらかしたかな?」
 自分のトレイを取り上げると、慎二の向かい側へと移動していく。
 「よ、何かあったのか?」
 「何だ、衛宮か。別に大したことじゃないさ」
 そういう慎二の左頬には、大きな紅葉が張り付いている。
 「へえ、珍しいな。お前が女の子を怒らせるなんて」
 「知るか!僕は声をかけただけだぞ!なのに、振り向くなりいきなりだ!」
 「・・・たまたま、女の子の方の機嫌が悪かったんじゃないか?」
 ある意味、もっともらしい士郎の発言に、渋々ではあるが納得する慎二。そこへ士郎の後を追いかけて、一成も移動してきた。
 「ふむ。さすがに間桐も衛宮にかかってはかたなしか。それで本当のところは何をした?またナンパでもしたのだろう」
 「女の子に声をかけるのは、僕の義務だ!クソ、お高く止まりやがって腹が立つ!」
 「で、誰に声をかけた?俺達と同じように見学していた他校の生徒か?それとも、ここの職員か?」
 「このアタシに声をかけたのよ」
 慌てて振り向く士郎と一成。そこにいたのは学校の制服を着たアスカであった。
 「「な!」」
 突然の出現に、驚きで声も出せない士郎と一成。そんな2人の反対側で固まっていた慎二にズカズカと近寄ると、今度は反対側の頬に、もう一つ紅葉を作る。
 「な、何をするんだ!」
 「お高く止まって悪かったわね。でもアタシは売られたケンカは10倍にして返すのがモットーなの。さあ、覚悟は良いわね」
 両手の指をバキバキ鳴らしながら戦闘態勢にはいるアスカ。そんなアスカの前に、スッと人影が入る。
 「えっと、惣流さんだったね。俺の友達が迷惑かけてすまなかった。こいつも本当は悪い奴じゃないんだよ。実を言うと、俺達、修学旅行中でね。ここへ来られて舞い上がってたんだ。今回だけで良いから、見逃してあげて欲しい」
 「・・・フン、好きにすれば・・・」
 踵を返すと、そのまま足音も荒くアスカが立ち去る。そんな彼女の迫力に、生徒達は誰も声をかけられなかった。
 「はあ、気をつけろよ。向うの警備員に目をつけられたら、冬木に帰れなくなるかもしれないぞ?」
 「だ、誰が助けてくれと言ったよ!」
 「ああ、俺が勝手に助けに入っただけだよ」
 相変わらずニコニコと笑う士郎。そんな士郎を直視できずに、慎二が視線を逸らす。
 「でもまあ、感謝はしてやるよ」
 「ああ、それでいいさ。それより、早く飯を食べよう」
 
 午後は自由行動の時間だった。
 士郎達もジオフロントの中を好きなように散策していた。
 「さて、それじゃあ適当にぶらつくか」
 士郎は久しぶりに単独行動を取っていた。士郎は本人が思っている以上に人望がある為、彼が望むと望まないに関わらず、多人数の中心に位置してしまう事が非常に多い。
 そのせいか、こうして単独行動を取れる時間というのは、彼にとっては貴重な時間なのである。
 多くの生徒達から離れ、彼は1人、人気のない方へと移動していた。
 「・・・ん?」
 やがて小高い丘の上に出た。とても見晴らしがよく、地底湖の湖岸で遊ぶ友人達を遠目に見る事が出来た。
 「ああ、眺めの良い場所だなあ・・・これが外だったら、風が吹いてて気持ちがいいんだろうな・・・弁当作って、遊びに来たいなあ・・・」
 「へえ、アンタ、お弁当作るんだ?」
 真後ろからの声に振り向くシンジ。そこにいたのはアスカである。
 「何よ、そんな鳩が鉛玉食らったような眼をして」
 「鉛玉食らったら死んじゃってるよ・・・」
 「そんな事はどうでも良いのよ。アンタ名前は?アンタはアタシの事を知っている。なのにアタシはアンタを知らない。それは不公平じゃない?」
 「ああ、衛宮士郎。高校2年生だよ」
 アスカがフーンと言いながら、士郎の隣に座る。
 「ここって眺めが良い場所なのよ。アタシのお気に入りだったんだけど、まさか先客がいるとは思わなかったわ」
 「そうだったのか。じゃあ、邪魔するのも悪いな。俺は失礼させて貰うよ」
 立ち去ろうとする士郎。その裾を、アスカがハシッと掴む。
 「別に移動しなくて良いわよ。アンタ悪い人間じゃなさそうだからね」
 「それは誉められてるのかな?」
 「そうよ。アタシが褒める事なんて滅多にないんだから、感謝しなさい」
 「そっか、ありがとな」
 腰を下ろす士郎。
 「そういえば、アンタ、お弁当作れるみたいね?自炊とかしてる訳?」
 「ああ、自炊は毎日してる。俺と、虎の魂を持った姉の分」
 「ふーん、偶然ってあるのね。うちにも虎がいるわ。確か日本では大虎と表現するみたいだけど」
 アスカの言葉に、士郎が笑う。
 「なるほど、そちらは酒好きなのか。こっちはタダ飯食らいの虎なんだよ」
 「最悪ね。その虎は、学生なのかしら?」
 「いや。れっきとした高校教師。しかも俺の担任だ」
 「世も末ね。まともな大人はいないのかしら?」
 アスカの呟きに、一も二もなく士郎が頷く。
 (・・・そういえば、この人、NERVの人なんだよな・・・)
 士郎の中に沸き起こった、ふとした閃きが、彼を行動させた。
 「そういえば、さっきブースで見たんだけどさ」
 「アタシの事、知りたい訳?」
 「ああ、ゴメン。実は違うんだ」
 謝る士郎。そんな士郎に、アスカがため息をつく。
 「別に謝る必要はないわよ。それで何を聞きたい訳?」
 「ああ、3番目のチルドレンの事だよ」
 途端にアスカの気配が切り替わる。まるで射殺すような殺意を込めた視線が、士郎に何の前触れもなく襲い掛かった。 
 「何を聞きたい訳?ふざけた事だったら、殺すわよ」
 「いや、大したことじゃないんだ。4歳で交通事故死した、子供の名前を知りたいだけだよ。あそこには書いてなかったからさ」
 「それを聞いてどうする訳?」
 詰め寄るアスカ。掛け値無く命の危機を感じ取り、士郎が後ずさる。
 「いや、単なる好奇心だよ。小さい頃、死んじゃったんだろ?ちょっと他人ごとには思えなくてね」
 「どういう意味?」
 「俺さ、本当は孤児なんだ。10年前、住んでた街で大火災が起きてね。俺は家族も家も全て失ったんだ。偶然、焼け跡の中で生き延びていた俺を、切継が発見してくれなければ、多分、俺も死んでいた」
 士郎の言い分に納得したのか、アスカが視線を外した。そのまま彼女はスッと立ち上がった。
 「教えてあげるわ。サードチルドレンの名前は碇シンジ。生きていれば私やアンタと同い年よ」
 「碇・・・シンジ!?」
 「何、何か知ってる訳?」
 士郎の脳裏に閃いたのは、自分の発言を何とか誤魔化さなければならないという、直感であった。
 そして即座に閃く。
 「いや、偶然だなと思ってさ。シンジって名前、俺の友達にいるんだよ。君も知っているんだ」
 「嘘ね」
 「本当だって!さっき、食堂で俺が庇った男がいただろ。アイツの名前も『シンジ』って読むんだよ」
 ガックリと肩を落とすアスカ。そのまま地面に座り込む。
 「全く・・・シンジって名前の奴には、ろくな奴がいないわね・・・」
 「おや、アスカ。デートとは珍しいな」
 場違いな声に、振り向くアスカ。士郎もまた視線をそちらに向け、呆気にとられた。
 「君は確か、衛宮士郎君と言ったな。俺の事、覚えているかい?」
 「ええ、覚えていますよ、加持さん。あの時はジュースを奢ってくれてありがとうございました」
 「何、大したことじゃない。それじゃあ改めて名乗ろう。俺はNERV本部特殊監査部部長、加持リョウジ一佐だ」
 シンジの兄代わりの素性に、士郎は驚きで目を見開いた。
 「あなたがNERVの幹部?」
 「そうだ。それはともかく、衛宮君。申し訳ないが、少しだけ静かにしていて貰えるかな?」
 言うなり、振り向く加持。
 「アスカ、そろそろ本部へ戻るんだ。リッちゃんに呼ばれているんだろう?」
 「それはそうだけど・・・」
 「アスカは頑張りすぎだ。だから今日だって、臨時で健康診断が組み込まれたんだ。早く済ませてこい」
 まだ何か言いたそうなアスカだったが、踵を返すと本部の方へと走り去った。
 その背中が消えたのを確認すると、加持は士郎へ顔を向けた。
 「まさかこんな所で君と会えるとは思わなかったよ」
 「ええ、同感です」
 「だが久しぶりに、アスカの年相応の顔を見られたよ。ありがとう」
 頭を下げる加持。だが真剣な表情で、すぐに顔を上げた。
 「今晩9時、君達の宿泊先へ向かう。ロビーで待っていて貰えるかな?」
 「・・・それは、俺の友人に関係する事ですか?」
 「そうだ。頼んだよ」
 
ホテルロビー
 「すいません、アイスコーヒー3人分とアイスティー1人分お願いします」
 約束の時間。ロビーの喫茶コーナーに集まったのは、士郎、一成、凛、綾子、そして
 「士郎!私の分も!」
 「少しは静かにしてくれ!えっとコーヒー追加で!」 
 笑いながら離れるウェイトレス。
 「それで、どうして藤村先生がいるんですか?」
 「そりゃあ、私、先生だもん」
 竹刀を手に、えっへんと胸を張る大河。
 「こんばんは、待たせてしまってすまないね」
 遅れて加持が合流する。
 「おや、これはこれは。先生ですか?」
 「ええ。穂群原学園2年C組担当、藤村大河と申します」
 「これはご丁寧に。私、NERV本部特殊監査部部長、加持リョウジ一佐と申します」
 士郎はともかく、他のメンバーは初めて耳にした加持の肩書きに、互いに目を合わせ始める。
 「しかし、衛宮君達はラッキーな事だ。こんなにチャーミングな方が先生とは、実にうらやましい」
 「あら、ありがとうございます・・・えへへ・・・」
 照れる大河という、珍しい光景に士郎が固まる。付き合いは長い彼にしても、大河が照れるという光景は、初めて目にした物であった。
 「士郎、この方、何となく切継さんを思い出すわね」
 「切継?どこかで聞いた名前だな・・・」
 「えっと衛宮切継というんですが」
 その瞬間、加持が驚きで目を見開いた。
 「衛宮切継氏の御知り合いでしたか!」
 「はい。士郎の養父であり、私にとっては、理想の男性でした」
 「なるほど。あなたのような方に思われれば、衛宮氏も満更ではなかったでしょうな」
 ある意味、褒め殺しに近い加持の言葉に、ますます照れていく虎。
 「と、ところで!切継さんとは、どのような御関係だったのでしょうか!」
 「ええ、ビジネスライクな関係です。数年前に、風の噂で亡くなったとは聞いていましたが、実に惜しい方を亡くしました。こちらで縁者の方にお会いできたのも何かの縁でしょう。いずれ改めて、墓前に伺わせていただきます」
 「あ、ありがとうございます。切継さんも、きっと喜んでくれます」
 大人の社交辞令を垣間見る4人の脳裏に浮かんだのは、共通の見解であった。
 『この人、猛獣使いだ』
 確かに冬木の虎を褒め殺して照れさせるなど、普通の人間にできる事ではない。
 その一方で、教え子達が自分を猛獣扱いしているとも知らず、機嫌の良い大河である。
 「しかし、今日は先生にお会いできてよかった。私の弟―シンジが、あなたに世話になっているものですから」
 「言峰君のお兄さん?」
 「はい。血の繋がりこそありませんが、私が兄代わりだったんですよ。あの子は不器用な性格ですので、これからも見守ってあげてください。決して悪い人間ではありませんから」
 頭を下げる加持。そんな加持を見て、大河がクルッと振り向く。
 「士郎!この人、とても良い人よ!迷惑かけちゃ駄目だからね!」
 「あ、ああ。分かってるよ」
 「絶対だからね!それじゃあ、あまり夜更かししちゃだめよ!」
 竹刀を振り回しつつ、その場から離れる大河。その姿がエレベーターに消えた所で、加持はやれやれとソファーに腰を下ろした。
 「これで話せるな。最初、先生がいた時はどうしようかと思ったよ」
 「・・・なるほど。その為の褒め殺しでしたか。頭が切れますね」
 「全くだ。あの藤ねえをチャーミングなんて言うから、俺は驚いたよ」
 「ん?何を言っているんだ。あれはお世辞じゃない、本当の事だ」
 加持の言葉に、4人が顔を見合わせる。穂群原学園の名物教師であり、冬木の虎の異名を持つ大河を、チャーミングと言ってのけた人物は、彼らの記憶に1人も存在しない。
 「もっと経験を積まないといけないな。彼女はとても魅力的だ。俺が保証しよう」
 「・・・そんなにプラス評価してくれる人、初めて出会ったよ。それなら、是非、あの虎を貰って下さい!」
 「残念ながら婚約者を裏切る訳にはいかんのでね。うちの若手を紹介するぐらいならできるんだが・・・日向君は確かフリーだったな・・・」
 「こらこら、いつから藤村先生の結婚相談所になったんだ、ここは」
 冷静な綾子の突っ込みに、頷く凛と一成。
 「さて、本題に入ろうか。シンジ君だが、やはりここには来なかったか」
 「ええ。第3には戻りたくないと。それで俺達も聞きたい事があります。シンジはNERVと何か関係があるんですか?俺達、シンジに頼まれて、アイツの母親の墓に花を供えてきました。あれはどういう事なんですか?エヴァンゲリオン開発者と同じ名前の母親。それだけじゃない、ジオフロントで惣流=アスカから聞きました。サードチルドレン碇シンジの名前を」
 碇シンジという名前に、他の3人が凍りつく。
 「どういうことだ、衛宮!」
 「・・・シンジの旧性は碇。つまり碇シンジがあいつの本名なんだ。その名前は、4歳の時に交通事故で亡くなっている、サードチルドレンと同じ名前なんだよ。それだけじゃない、もし碇シンジが死なずに生きていれば、俺達と同い年なんだ」
 「それは本当なのか!」
 詰め寄る一成。凛と綾子も、互いの顔を見合せながら、呆然とするしかない。
 「碇シンジは4歳で死んでいる。それが事実だ」
 「でも!」
 「本当の事さ。当時の新聞を見ればはっきりする。もし疑うなら自分で調べてみるといい。NERVは嘘を吐いていないのだから」
 加持は嘘こそ吐いていないが、事実を全て口にしているわけでもない。
 当時の新聞があるのは事実である。だがその新聞はシンジが作り上げた物である。シンジが世界を再構成した際に、実際に起きた事件として世界に記録されているのだから。
 もう一つ。確かにNERVは嘘を吐いていない。嘘を吐いているのは加持である。NERVという組織は、碇シンジは4歳で死んだものだと認識しているのだから。
 「まあ、君達が混乱するのも仕方がない。あまりにも偶然が重なり過ぎているからな」
 どこか納得がいかない雰囲気の4人に、加持は苦笑するしかなかった。
 「でもシンジ君がNERVと関係があったのは事実だ」
 「やっぱり!」
 「そう慌てるもんじゃないよ。彼の第3での保護者は、NERVの職員だ。そして俺もまたNERVの職員だ。そういう意味では、別におかしくないだろう?」
 表面上はにこやかな加持だが、内心では言峰シンジ=サードチルドレン説の根拠を、打ち消すのに必死である。
 「そういえばシンジ君だが、相変わらずか?少しは明るくなったのか?」
 「いえ、実は逆なんですよ」
 士郎の口から語られる、元日の出来事を聞かされた加持が、手にしていた煙草の箱を落とした。
 「全く・・・らしいと言えばらしいが・・・」
 「やはり事実なんですか?シンジが好きだった子を、その・・・」
 「まず最初に断っておくが、俺はその事を初めて聞いた。シンジ君から彼女を傷つけてしまったという事は聞いていたが、そこまでだったとは知らなかった」
 煙草に火を点ける加持。その顔を見る限り、あまり旨そうには見えなかった。
 「色々迷惑をかけてしまったみたいで、済まなかった。それとシンジ君の事を気にかけてくれてありがとう」
 席を立つ加持。その前に、影が立ちふさがる。
 「そこの4人。そろそろ部屋に戻るんだ」
 「す、すいません、すぐ戻ります!」
 「それと、あなたは誰かな?穂群原学園の関係者ではないようだが」
 立ち去ろうとしていた4人の足が止まる。
 「初めまして。私は加持リョウジと言います。穂群原の2年C組、言峰シンジの関係者です」
 「なるほど、彼の縁者でしたか。私は葛木宗一郎。倫理を教えているものです」
 「そうでしたか、シンジの事を宜しくお願いします。何分、距離があって、困っていてもすぐに助けられないものですから」
 しばらく他愛もないやり取りを繰り返した後、加持はホテルの外へと足を向けた。
 咥えていた煙草を靴の裏で消しながら、ボソッと呟く。
 「・・・魔術師殺し衛宮切継の息子・・・それに、さっきの葛木という男・・・あれも怪しいな、恐らくは同業か・・・」
 加持の背中は、まるで夜の闇に溶け込むかのように、静かに消えた。

Interlude―
イギリス、時計塔―
 その日、時計塔の名物講師ロード・エルメロイU世は、2人の客を執務室に招いていた。
 「良く来てくれた。執行者バゼット=フラガ=マクレミッツ。宝石学科所属、ルヴィアゼリッタ=エーデルフェルト」
 「同感だ。こう見えても忙しい身、言いたい事があるなら単刀直入にお願いしたい」
「一体、何の要件でしょうか?」
 バゼットは魔術協会きっての武闘派魔術師。その実力は埋葬機関の代行者と互角である。加えて『伝承保菌者ゴッズホルダー』の一族として、人の身でありながら、神にしか使えぬ宝具を使いこなす協会の切り札と言って良い存在であった。
 ルヴィアはフィンランド出身の魔術師。まだ17歳という若さであるが、すでにエーデルフェルト一族を代表する当主であり、宝石学科随一の逸材として名高い魔術師である。
 「君達は日本の冬木市で行われている聖杯戦争を知っているな?エーデルフェルト君には、あえて確認する事でもないが」
 「それは遠回しの嫌味ですか?確かに、我が一族は第3次聖杯戦争において敗北しておりますが」
 「嫌味ではない。第一、かくいう私も10年前の第4次聖杯戦争に参加し、敗北した身だ。偉そうに言える資格など持ち合わせてはおらんよ」
 聖杯戦争を生き延びた彼が、人間として、魔術師として大きく成長したのは、時計塔において有名な逸話である。
 「話を戻そう。時計塔執行部は、聖杯戦争へ君達2人の参加を決めた。と言うのも、未来予知を扱う魔術師が、その光景を幻視したというのが理由だ」
 「なるほど。それなら拒否する必要もないですね」
 「聖杯戦争ですか・・・名誉挽回できるなら、喜んで参加させて頂きますわ」
 やる気満々な2人に、機嫌を良くするロード。
 「ついては、サーヴァント召喚の為のアイテムを入手しなければならない。無くても召喚は可能だが、その場合、召喚者と似た価値観や精神構造を持ったサーヴァントが召喚される。つまり、どんなサーヴァントが呼び出されるかは、全くの未知数なのだ。故に、勝つ為には強力な英霊に纏わるアイテムが必須となる」
 「時計塔にある物を貸して貰えるんですか?」
 「別にそれでも良いが、執行部としては自力での探索も認める方針だ。本番までおよそ半年。2人には十分な準備をしてもらいたい。無論、探索に出かけるのであれば、その間の講義や任務は免除になる。話は以上だ。特に質問が無ければ、退室して構わない」
 
 執務室から出た2人は、真剣な顔をしながら廊下を歩いていた。
 「ミス・マクレミッツ。あなたは召喚の為のアイテムを捜しに行かれるのですか?」
 「ええ、そのつもりよ。召喚したい英霊がいるんだけど、ここに関係する品物はなさそうだから。それよりあなたはどうするの?」
 「私はアイテムに頼るつもりなどありませんわ」
 思わず足を止めるバゼット。ルヴィアも足を止め、朗々と宣言した。
 「所詮、最後に信じられるのは自分自身。ならば、私はこの半年を、己を磨きあげる事に費やすつもりです」
 「なるほど、確かにそういう考え方もありますね」
 「ええ。私が自らを磨きあげれば、自然とそれに相応しい英霊が力を貸してくれます。だから私は探索には出向きません」
 自らを少しでも磨きあげようと努力する、誇り高い少女の姿を、バゼットは眩しそうに見つめていた。

そして半年の時間が流れた

ルヴィアゼリッタ=エーデルフェルト・ステータス(本編開始時、高2の冬時点での能力)
性格:中庸・善
身長・体重:不明
特技:レスリング
好きな物:紅茶・格闘技
苦手な物:日本文化・遠坂家
天敵:不明
筋力:E 魔力:B 耐久力:D 幸運:D 敏捷:E 宝具:―

保有スキル
宝石魔術:A 宝石に魔力を込め、いざという時に解放する魔術。
ガンド:B 相手を指差す事で人を呪う北欧の魔術。このレベルになると物理的破壊力も持ち合わせている。
魔術刻印:B+ 基礎的な魔術全てをB+ランクとして使用可能。また魔力を1ランク上昇させる。遠坂家より歴史が古い為、スキルレベルが若干高い。
レスリング:C レスリングを習得。レスリングを使える状況であれば、筋力や敏捷の代りに使用可能。
黄金律:C 事業を起こせば、まず成功する。生涯、お金に困る事は無い。



To be continued...
(2011.01.29 初版)


(あとがき)

 紫雲です。今回もお読み下さり、ありがとうございます。
 まず最初に謝罪を。基本設定の一部が間違っておりました。タブリスはゲンドウの政治的判断により、存在その物を抹消されています。なので作中通り、アルミサエルが最後の使徒となっています。失礼しました。
 それと今回ですが、主人公であるシンジは名前しか出てきませんw代わりに、アスカが登場しておりますが、とことんニアミスwもし士郎がボロッと喋っていたらどうなるんだろうかと、書いてて思いました。
 話は変わって次回ですが、ついに聖杯戦争本編に入ります。
 14日間に渡る戦争の記録に、是非、お付き合いください。
 それでは、また次回も宜しくお願い致します。



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