暁の堕天使

聖杯戦争編

第十一話

presented by 紫雲様


2月11日未明、衛宮邸―
 「ルヴィア!宝石のストックは!?」
 「手持ちだけでも50はあります!ミス・トオサカ、貴女はガンドの方がよろしいのではなくて?」
 「そんな事は生き延びてから考えればいいのよ!」
 アサシン・ハサンとの遭遇戦。更にはセイバーの離脱。戦力が文字通り半減した凛達は、衛宮邸に帰るなり、ありったけの魔術的なアイテムを持ちだし、戦力を埋めようとしていた。
 「ルヴィア!貴女、結界の追加はできる?ここは警戒しか張ってないのよ!」
 「人払いと消音の結界はすでに張っておきました!それより戦術面を詰めましょう。あのアサシンは、間違いなく私達を逃したりはしない筈。ならば、例え無茶でも返り討ちにするしかありません!」
 「そうだな、アサシンの攻撃は奇襲がメインなんだ。それなら円陣組んで最初は互いの死角をフォロー、初撃を凌いだところで俺が接近戦しかけて、2人は後方支援というのが確実じゃないか?」
 「ミスター・エミヤ?貴方、サーヴァント相手に正面からぶつかるつもりですの?」
 呆れたようなルヴィアの言葉に、凛が肩を竦めて見せる。
 「士郎には何を言っても無駄よ。筋金入りの馬鹿だからね」
 「む・・・でも女の子を矢面に出す訳にはいかないだろ。それに白兵戦なら、俺は2人よりも強い自信はあるぞ」
 「だから余計に心配なのよ。少しは考えてよね」
 凛に詰め寄られ、反論もできない士郎。その光景に、ルヴィアがボソッと呟く。
 「ミスター・エミヤ?」
 「ああ、士郎でいいよ。堅苦しいのは苦手なんだ、俺」
 「ええ、では失礼して・・・シェロ?あら、おかしいですわね・・・シェロ?」
 上手く発音出来ないのか、シロウと発音するのに悪戦苦闘するルヴィア。その横では、イリヤがお手本を見せるかのように、シロウと発音して見せる。
 「ルヴィア、無理にお兄ちゃんをシロウと呼ばなくても、シェロで良いんじゃないの?」
 「そうですわね・・・それでも良いかしら、シェロ?」
 「まあ、別に良いけど。ニックネームだと思えば良いし」
 アッサリと受け入れる士郎。そんな士郎に、凛がムッとしたような視線を向ける。
 「それはそうと、シェロ。貴方、本当に大丈夫ですの?相手はサーヴァントなのですよ?」
 「ああ、それは問題ない。正面から向き合えば、アサシンは封じられるよ。正直、アーチャーより弱いからな、アイツは」
 「ルヴィア、1つだけお願いよ。ルヴィアゼリッタ=エーデルフェルトとしての誇りにかけて、これから貴方が見る光景は、生涯、他言無用にしてね。破ったら、私が貴女を殺しに行くわ」
 凛の言葉に、士郎が『おいおい』と仲裁に入るが、それを素直に聞くような凛ではない。それどころか、凛に同調する声が飛び出て来た。
 「私も凛と同じよ。余計な事を喋ったら、アインツベルンも敵に回すと思いなさい」
 「イリヤ!」
 「シロウ。何で私や凛がここまで言っていると思っているの?私達は貴方を失いたくないのよ。もしルヴィアが余分な事を言えば、貴方は姿を消さねばならなくなる。それを考えれば、最初に釘を刺しておかないといけない事なのよ」
 いつになく真剣なイリヤの表情に、士郎も黙るしかない。だがルヴィアはと言えば、雰囲気に呑まれるどころか、正面から立ち向かってきた。
 「私はシェロを困らせたい訳ではないから、他言無用と言われれば、約束は守れます。ですが理由ぐらいは教えて戴きたいですわね。秘密にしなければならない理由というのは、シェロがサーヴァントと戦える事に関係しているんですの?」
 「まあね。もしばれたら、士郎は確実に封印指定されるわ」
 「・・・シェロが?どう見ても見習い魔術師以下にしか見えませんが・・・」
 ガックリと肩を落とす士郎。特に毎日、魔術を研鑽してきたという自負を持つ彼にしてみれば、辛辣な評価と言うしかない。そんな彼の横にイリヤが近寄り『士郎は凄いんだから、元気出して』と励ましている。
 そこへ庭先から、青い影が飛び込んできた。
 慌てて警戒する一同。だが影の正体に、すぐに緊張を解く。
 「シンジ!ランサー!無事だったか!」
 「何とかね。至近距離でスタングレネード使ったら、さすがにアサシンも驚いたみたいだったよ」
 「マスター、驚いたのは俺もそうだったんだがな?」
 ランサーの言葉に、シンジが『ごめん』と頭を下げる。
 「シンジ、頼みたい事がある」
 「どうしたのさ、士郎」
 「イリヤを頼む。お前の力なら、イリヤを守れるだろ?」
 「ああ、それぐらいなら」
 大丈夫だよ、というシンジの言葉は、侵入者を報せる警戒音によってかき消された。
 「来やがったか!随分早かったな、アサシンの野郎」
 「・・・待って。ランサー、アサシンってそんな簡単に自分の存在をばらすような奴なの?」
 シンジの疑問に、全員がハッと顔を見合わせる。アサシンの気配遮断スキルを利用すれば、警報の結界ぐらいは簡単に潜りぬけられる。だがそれをしないと言う事は―
 「アサシンではない?」
 「まさかこの身をアサシンと間違われるとは思わなかったぞ、ランサー」
 庭に降り立つ人影に、ランサーが一歩前に出て、槍を構える。
 「てめえ、何者だ・・・」
 「何者?ランサーよ、貴方は自分が刃を交えた者の顔も覚えていないのか」
 雲の切れはしから月が顔を覗かせる。その月光に照らし出された顔に、彼らは驚きのあまり、全く言葉を発する事が出来なかった。
 「我はセイバー。真名をアルトリア=ペンドラゴン。後の世にアーサー王の名前で伝わる騎士王である。光の御子、クー・フーリンよ。アサシンが仕事を済ますまで、貴方には我の相手をしてもらおう」
 そこには漆黒の重甲冑に身を包んだ少女が立っていた。その青い瞳は、不気味な薄紫色に変化している。更にその手に握られた黄金の剣は、その輝きを完全に失い、漆黒の魔剣へと姿を変じていた。
 「そんな・・・なんでセイバーが・・・」
 「遠坂!令呪は、令呪はどうなってるんだ!」
 「駄目よ、令呪は消えたままなのよ!」
 最強の手札が失われただけなら、まだ諦めもついた。だがその手札が、今や自分達にとって最強の敵として立ちはだかっているのである。凛が悔しげに歯ぎしりするのも仕方ないことであった。
 「リン、それにシロウ。確かに我の中には、この10日間の記憶はある。だがせめてもの情けで忠告だけはしてやろう。我を貴方達が知るセイバーと同じだとは思うな。記憶はあっても別の人格。貴方達が知るセイバーは、あの『呪い』に触れて死んだのだ」
 「・・・『呪い』?それはどういう意味?公園で見た、あの影に関係しているの!?」
 「聖杯。それは、あらゆる願いを叶える願望器。その聖杯の中身こそが、貴方達も見た『呪い』そのもの」
 セイバーの発言に、ハッとしたシンジが声を張り上げた。
 「ランサー、時間稼ぎだ!アサシンが来る!」
 セイバーがわざわざ忠告した本当の理由に遅ればせながら気付いたランサーが、舌打ちしながらセイバーに襲いかかる。魔槍の一撃を魔剣で迎え撃ちながら、セイバーは潤沢な魔力を最大出力で解放し、身体能力を向上させていく。
 「まるでチャリオットだな、セイバー!」
 「良く言うな、ランサー。ここまでやっても、我は貴方の速度に追いつけぬ。貴方のポテンシャルこそ異常というしかない」
 「は!マスターの質が良いんでね!」
 両目・喉頭・左胸と4カ所へ連続で刺突を放つランサー。それら全てを、セイバーは魔剣で確実に弾き飛ばし、切り返しの一撃を放つチャンスを伺う。
 「速度に追いつけない?よくもまあ、そんな事が言えるな。それを補うだけの技量を持っているじゃねえか!」
 「それは貴方も同じ。力なら我が有利だが、その力を技で事前に封殺しているのは貴方の技量の高さ故。違うか?」
 ランサーの一瞬の隙をついて、切り上げるようにカウンターの一撃を放つ。同時に後ろへ飛び退こうと判断しかけたランサーだったが、脳裏に閃いた直感にしたがった。
 切り上がってくる魔剣の真横に、全力で左拳を叩きつけつつ、敢えて零距離戦へと持ち込む。
 その判断に、セイバーが明らかに顔色を変えた。
 セイバーは剣の英霊。それ故に、もっとも得意とする距離は剣の間合いであり、素手での殴り合いのような零距離戦は、実力を発揮しきれない。特に零距離戦ともなれば、両手で振り回すような武器よりも、小回りのきく武器の方が扱いやすい。
 「小細工を!」
 そこへ信じられないような刺突がセイバー目がけて襲いかかる。直感に従い、何とか紙一重で避けて見せたセイバーが、ランサーの手元に気付いた。
 「そういう手品か!」
 「ま、そういう事だ。槍ってのは、薙ぐ・突く・払うが基本だが、こういう応用もあるんだぜ?邪道ではあるけどな!」
 ランサーは槍の英霊。故に槍の間合いでなければ実力を発揮でない。零距離戦など、特に相性の悪い間合いである。だがランサーはその間合いの悪さを解消するために、ゲイボルグを短く持っていたのである。まるで柄が1m以上ある短剣のように、穂先のすぐ傍で握りしめていた。
 「面白い!ならば、我が破って見せる!」
 放たれる刺突を、セイバーが魔剣の柄尻を使って、正面から穂先にぶつけて迎撃していく。ランサーの攻撃は、一撃当れば、並みの人間なら1発でけし飛ぶほどの威力を秘めた刺突の嵐である。それを考えれば、セイバーの迎撃方法は神業を越えた領域の芸当であったが、セイバーはそこに勝機を見出していた。
 すぐに気がつくランサー。正面からのぶつかり合い。それは力の勝負になると言う事。そして力においては、ランサーはセイバーに一歩譲る。
 不利な勝負。だがランサーの顔には喜悦と呼ぶべき感情が浮かんできていた。

 庭先で繰り広げられる激戦をよそに、シンジ達もまたアサシンの襲来に対抗するべく警戒を続けていた。シンジとイリヤを中心に、士郎、凛、ルヴィアが円陣を組む。シンジはいつでもATフィールドを張れるように準備を済ませ、イリヤも何か異常があれば、すぐに警告出来るよう、五感を研ぎ澄ましていた。
 「・・・これは?」
 「イリヤ?」
 「・・・ううん、何でもない。気のせいだったみたい」
 時計の秒針の時を刻む音が、やけに大きく聞こえる。
 その時だった。
 シンジは視界に違和感を感じた瞬間、咄嗟にそちらへ向けてATフィールドを展開する。
同時に障壁によって、数本のダークが畳の上へ転がり落ちた。
 全員の視線がそちらへ向かう。
 「グハッ!」
 吐血しながら崩れ落ちるシンジ。その背中に突き刺さる、妙に細身の腕。突きぬけた手には、血管を引きちぎられた心臓が握られていた。
 「シンジ!」
 「言峰君!」 
「よくも!」
 凛とルヴィアが、アサシンの暗殺能力の高さに驚愕しつつも、宝石魔術で迎撃にでる。だがランサーのマスターである、シンジを暗殺してのけたアサシンは、それ以上、拘る事も無く即座に後ろへ飛び退き撤退する。
 だがアサシンは飛び退れなかった。
 いつの間にか背後に現れた真紅の障壁―ATフィールドによって、真後ろへ逃げる事は出来なかったのである。
 愕然とするアサシンを、凛とルヴィアの宝石魔術が襲う。過剰なまでの火力に見舞われたアサシンは、シンジを蹴り飛ばすようにして無理矢理脱出を図る。それでも宝石の火力から逃れる事は叶わず、半身を宝石魔術で食い荒らされる事になった。
 姿を現したアサシンに、士郎が飛びかかる。
 「投影開始トレース・オン!」
 瞬時に姿を現す干将・莫耶の刃が、アサシンを追撃する。正面戦闘は苦手なアサシンではあるが、仮にもサーヴァント。その身体能力は士郎のような魔術師を遥かに上回る。だからこそ、アサシンは応戦してしまった。
 飛びかかってきた士郎目がけてダークを放つアサシン。それを士郎は双剣の刀身で弾き飛ばしながら、一気に間合いを詰めてきた。
 体捌きで士郎の攻撃を凌ごうとするアサシン。ところが士郎の双剣は、アサシンの体捌きを上回る速さで戦場を踊る。
 瞬く間に血塗れとなっていくアサシン。アサシンにしてみれば誤算も良い所である。
 「・・・お前・・・何者だ・・・」
 「煩い!シンジの仇だ!」
 アサシンは知らなかった。士郎の戦闘技術は、アーチャーとの戦闘を通じて、互角の水準にまで引き上げられていた事を。その戦闘技術の巧みさが、アサシンを上回っているという事実を。
 士郎の予想外の強さに、アサシンは全力で飛び退った。目的は距離を取り、気配遮断によって士郎を暗殺する事である。
 当然、士郎達もその事にはすぐに気がついた。だが悲しい事に、士郎は剣の技術は追いついていても、その体の持つ敏捷性までは上がった訳ではない。
 凛とルヴィアが宝石魔術で牽制にはいるが、効果を表すまでに姿を消せる自信がアサシンにはあった。
 だから、全く気付かなかった。
 アサシンを真横から襲撃してきた、予想外の敵の存在に。

 セイバーと激戦を繰り広げていたランサーは、珍しく動揺を表に出していた。
 突如、シンジから繋がっているパスに、大きなノイズが混じってきたからである。
 「どけ!セイバー!」
 「そうはいかん。貴方のマスターに死んでもらうのが、こちらの狙い故」
 多少の傷は覚悟の上。強引極まりない怒涛の攻撃に転じるランサー。その捨て身の気迫に、さすがのセイバーも後ずさる。
 だが決してランサーを逃そうとはしない。隙あらば、致命の一撃を放つ準備だけは、完全に整えていた。
 だから2人にとっても、アサシンが吹き飛んでくる等と言う非現実的な光景は、全くの想定外であった。
 さらにアサシンを追うように、紫の影が追撃を仕掛ける。衛宮邸の庭に生えていた立ち木にぶつかったアサシン目がけて、その影が足を止めて膝蹴りをいれたおかげで、やっとセイバーとランサーの2人にも、影の正体が理解できた。
 「「ライダー!?」」
 「ランサー!セイバーを頼みます!」
 呻き声を上げながら立ち上がったアサシンに、ライダーは全く容赦しなかった。遠心力と怪力を最大限に発揮させた、その長い脚から繰り出された蹴りは、アサシンの片腕を文字通り粉砕してのける。
 「このままくたばりなさい!」
 まるで踊る様に、縦横無尽に蹴りを繰り出すライダー。宝石魔術で負傷していたところへ不意打ちを食らい、さらに片腕を潰されたアサシンに、もはや為す術はなかった。
 積み重なった負傷がついに限界を越えたのか、アサシンは苦悶の呻きを上げながら、その体の輪郭をぼやかし始めた。
 「・・・まあいい・・・マスターの命令は遂行した・・・」
 「ランサーのマスターが狙いだった、そういう訳ですね?」
 「そういう事だ。ライダー、お前の登場は遅かった・・・」
 「そう思いますか?ならば、あれを見るんですね」
 ライダーに言われた通り、アサシンが最後の力で居間に視線を向ける。そして驚愕でその身を強張らせた。
 そこにはシンジが立っていた。左胸には無残な風穴が開いたままである。心臓は失われている。だがシンジは立っていた。そしてその体のどこからも、死の気配は感じ取れなかった。
 「・・・馬鹿な・・・」
 アサシンの感想は、士郎達も同様だった。例え幻想種とは言え、心臓を失って生きているなど、あまりにも荒唐無稽だからである。
 「・・・僕の弱点は心臓じゃない・・・心臓は、僕が人間だった頃の名残でしかないんだよ・・・僕を殺すなら、心臓じゃなくてコアを潰すべきだったね」
 そしてアサシンの目の前で、シンジの左胸に開いた風穴は、瞬く間に再生していく。以前、ランサーが驚愕したほどの自己再生機能の発現であった。
 「それともう一つ教えておくよ。使徒はね、大怪我から回復すると、機能増幅という進化機能が働くんだ。おかげで、僕の自己再生機能はまた強くなったよ」
 ついに完全に傷穴を塞いでみせたシンジに、アサシンは言葉も無いまま消失した。
 残ったセイバーは、ランサーから一気に距離を取る。
 「奇襲は失敗。アサシンは消滅。こちらの考えうる、最悪のケースです。ここは引き揚げさせて頂きます」
 「逃がすと思うか?セイバー!」
 「逃がして頂けなければ、全てを巻き添えに真名解放するだけです」
 ランサーが思わず体を固まらせる。その間に、セイバーは衛宮邸から姿を消してしまった。

 ドサッという崩れ落ちる音に、全員の視線が集まる。そこには崩れ落ちたシンジの姿があった。
 「マスター!」
 駆け寄ってきたランサーに、シンジは苦笑いしながら応えた。
 「・・・ちょっとだけ、コアに傷が入ったみたいだ・・・でも、すぐに治るから心配しないで・・・」
 「馬鹿野郎!おい、坊主!すぐにマスターを休ませてくれ!」
 「待って!」
 凛の叫びに、士郎とランサーが固まる。
 「言峰君は士郎とイリヤに任せて、ランサーはここにいて。ここにはもう1人、サーヴァントがいるんだからね」
 ルヴィアが同感とばかりに頷く。2人の視線は、庭に佇むライダーへと向けられていた。
 「ライダー、単刀直入に訊くわ。貴女は敵なのかしら?」
 「いえ。私がマスターから受けた命令は、衛宮士郎の護衛。ただそれだけです。先程のアサシンは、衛宮士郎に害を為す確率が高かった。故に、排除しました」
 「それなら、貴女のマスターは誰?慎二ではないんでしょ?」
 しばらく黙った末に、ライダーはコクンと頷いた。
 「慎二は仮初のマスターです。私の本当のマスターは争い事を嫌う、優しい心の持ち主でした。ですが令呪が現れ、私を召喚した以上、戦わない訳にはいきません。そこで『偽臣の書』によって、私と慎二は仮初の主従関係を結んでいたのです」
 「全く、小細工も甚だしいわね。ライダー、裏にいたのは臓硯ね?」
 「ええ、隠す必要もありません。貴女の言う通りです」
 苦々しげに歯ぎしりする凛。ルヴィアも臓硯という名前に、あからさまな嫌悪感を浮かべている。
 「ライダー、貴女のマスターだけど・・・桜なの?」
 「・・・はい。マスターの、彼女の最後の我儘を叶えるため、私はここに来ました」
 「最後?桜に何があったの!答えなさい、ライダー!」
 「・・・サクラは、私のマスターは堕ちてしまいました。臓硯の思惑通りに」

 「・・・そういう事があったのね・・・桜・・・」
 ライダーの口から告げられた真実。それは桜が臓硯の作った聖杯という事実であった。
サーヴァントは敗れると、その魂はサーヴァントの本体―『座』へ還ろうとする。だがそ
の還ろうとする魂を一時的に止めておくシステムが『聖杯』であり貯め込んだ魂を一斉に
還す衝撃で根源に通じる穴を開け、そこで根源に干渉するというのが基本的な構想である。
 問題なのは聖杯となる桜の存在である。桜は臓硯の作った聖杯なのだが、完成品ではなく、将来に繋げる為の一試作品でしかなかった。表現を変えれば、モルモットやデータ取りの為の存在でしかないのである。
 本来なら、臓硯は今回の聖杯戦争も見送るつもりだった。ところが戦況は臓硯に都合のよいように転がり出したのである。
 ライダーは桜の令呪の強制召喚により、他の参加者から完全に隠れることができた。マスターとしての桜の存在も、完全に他の参加者には気付かれていない。
 さらに他の参加者同士での潰しあい。間桐家は完全に聖杯戦争の舞台から脱落したと、誰もが思い込んだ。だから、臓硯は欲を刺激され、行動に出たのである。
 「マスターは先日、ギルガメッシュを取り込んだ影響で、記憶の一部に障害が出るほど、人としての機能を失いました。そして先程、セイバーすらも取り込んだ。もはや、マスターの自我は残っていないでしょう。でも私はマスターを助けたい」
 「・・・桜・・・」
 「・・・ライダー、貴女の仰りたい事は分かりました。ですが、貴女のマスターを助ける為の算段はあるのですか?」
 「正直、私にも分かりません。私に分かっているのは、サクラの意識は、聖杯の『呪い』に呑まれている事だけです」
 腕を組み、考え込むルヴィア。凛もまた同じように考え込むが、妙案は浮かばなかったのか、苛立たしげに壁へ拳を叩きつける。
 「それで、嬢ちゃん達はどうするつもりなんだ?」
 「ランサー?」
 「ライダーのマスターを助けるのかどうか訊いてるんだよ。できる、できないの問題じゃない。嬢ちゃん達が、ライダーのマスターを助けたいかどうか、俺はそれを訊きたいんだ」
 突然、口を挟んできたランサーだったが、そこにいつもの陽気な雰囲気は無かった。そこにあったのは冷徹な戦士としての表情。そこに秘められた厳しさは、2人が間違った答えを返せば、殺されるのではないかと不安になるほどである。
 「・・・ダメよ」
 「ミス・トオサカ?」
 「ダメなのよ!私は冬木の管理人、この地を守る義務がある!桜を・・・あの子を助ける為だけに、この地を滅ぼすような真似は許されないのよ!」
 それこそが冬木の管理者たる者に課せられた使命。桜が聖杯の『呪い』に呑まれてしまった以上、それを封殺するのが遠坂凛の義務なのだから。
 顔を俯けた凛。握りしめた掌に爪が食い込み、ポタポタと血が滴り落ちる。
 「・・・それが嬢ちゃんの結論なんだな?」
 「そうよ!私は冬木を守らなきゃいけないの!あの子だけを特別扱いする訳にはいかないのよ!」
 「ま、嬢ちゃんなら、そう言うだろうとは思ったけどよ。でもな、納得できない連中はいるみたいだぜ?」
 凛が顔を上げる。そこにいたのは、険しい顔をした士郎であった。
 その顔を直視できず、顔を逸らす凛。そんな凛に、士郎は足音も荒く近づいて行く。
 桜を見捨てる。そう決断を下した事に対して、士郎は怒りを感じたのだろう、そう凛は思った。
 すぐ目の前で足音が止まる。いたたまれない気持ちを抱えた凛だったが、それでもプライドを掻き集めて、精一杯、士郎を真正面から見据える。
 「私は間違ってない!」
 凛の心を荒れ狂う激情の嵐。両目から零れ落ちそうになる熱いものを必死で堪える。
 「桜を助ける為だけに、冬木全てを危険に巻き込む訳にはいかないのよ!」
 対して、無言を貫く士郎。その眦は、明らかに吊りあがっていた。
 「良いわよ、言いたい事があるなら言いなさいよ!士郎!」
 士郎の右手がゆっくり持ちあげられる。
 恐らく、自分は叩かれるのだろう、そう凛は考えていた。それだけではない。桜を見捨てると言う決断をした以上、衛宮士郎は決して遠坂凛を許さないだろうという事も、聡明な凛は気付いていた。
 もう二度と、士郎の傍にはいられない。桜を見捨てる遠坂凛と、桜を見捨てられない衛宮士郎とでは、歩む道のりが違う。だから、これでもう終わり。士郎が自分を叩いたら、自宅へ帰り、独りで戦おうと決意した。
 溢れそうになる感情。けれども情けない顔だけは見せたくなかった。だから、精一杯の意地を張る。
 (・・・アーチャー、ごめんなさい。約束は守れそうにないわ・・・)
 頬に走る熱さと痛み。
 もう全てが終わった。そう凛は思った。だから、最初は気付かなかった。
 自分が抱きしめられていた事に。
 「この馬鹿野郎!どうして俺達を頼らないんだ!」
 凛には分からなかった。何故、士郎を頼らねばならないか?
 「1人じゃ解決できないなら、俺達が協力する!だから諦めるな!お前は1人じゃないんだ、遠坂!」
 「・・・怒ってたんじゃなかったの?桜を見捨てようとした私に、愛想を尽かしたんじゃなかったの?」
 「俺が怒ってるのは、お前が自分独りで解決しようとするからだ!諦める前に、俺達を頼れよ!」
 呆然とする凛に、士郎が言葉を紡ぎ続ける。
 「俺はアーチャーと戦って分かった事がある。アーチャーは独りで正義の味方を目指していた。そして現実という壁にぶつかってしまった時、理想を諦めるしかなかった。それは、全て自分1人で問題を解決しようとしたからだ。だから自分の手が回らない所まで、助ける事が出来なかった!」
 怒りの形相の士郎。だがその怒りの矛先は、自分の予想と少しずれている事に、凛は気付き始めた。
 「俺は分かったんだ!俺1人では無理でも、みんながいれば解決できる!俺は周りのみんなに助けて貰いながら、正義の味方を目指す!」
 「・・・士郎・・・」
 「遠坂、桜を助けよう。その為なら、みんなが力を貸してくれる。だから諦めるなよ。全て自分1人で背負い込んで、必死に泣くのを堪えるなんて、遠坂らしくないぞ」
 凛の唇が、小刻みに震えだす。
 「・・・信じられない・・・」
 「遠坂?」
 「・・・男の子に・・・泣かされた・・・」
 眦から透明な滴が流れ落ちる。不安と喜びが入り混じった凛の泣き顔に、士郎は束の間だが見惚れていた。だがすぐに正気に戻る。
 「助けよう、桜を。みんなも力を貸してくれるだろ?」
 強く頷くライダー。ニヤッと笑うランサー。肩を竦めながら頷くルヴィア。
 「シロウ、私達を忘れているわよ?」
 廊下の奥から姿を見せたのはイリヤである。
 「シンジから伝言よ。サクラを見捨てたら、同盟は破棄するって言ってたわ。でもその心配はなさそうね?」
 「当たり前だろ。桜は俺の家族、妹みたいなもんだからな。それにイリヤも手伝ってくれるんだろ?」
 「そうね、シロウの頼みだもの、手伝ってあげるわよ」
 「ああ、決まりだ。みんなで桜を助けるぞ」
 
???―
 目の前で繰り広げられる光景に、壊れた筈の心が悲鳴をあげていた。
 目の前で孤軍奮闘する紅の少女。心を覗かれ、精神を切り刻まれていく彼女を助けたいと願ったが、許可が下りる事は無かった。
 だが、ふと思う。
 どうして命令を無視してでも助けに行かなかったのか?結局、自分は戦うのが怖くて、怖気づいていただけではないのか?
 全てが終わった後、少女に激しく拒絶された。そして少女を助ける為、行動出来なかった事に、激しい後悔を抱いた。

 最悪だった。
 自分を助ける為に、蒼の少女は愛機を自爆させ、そして死んだ。
 自分のせいで少女は死んだ。その事実に、激しく打ちのめされる。
 そんな少女が生きていたと知らされた時、本当に心の底から喜びを覚えた。
 だが気付いていなかった。自分が道化である事に。
 水槽の中に漂う、無数の少女の存在。そして少女の素姓と正体。
 少女には、全く非は無い。少女もまた被害者なのだから。
 なのに、少女を拒絶してしまった。その事に、深い自己嫌悪を覚えた。

 右手の中で笑いかけてくる親友。その親友を大義名分のもとに握り潰した時、全てがどうでもよくなってしまった。
 自分よりも、はるかに強く生きたいと望んでいた親友。
 そんな親友を手にかけた自分に、生きる価値などあるのだろうか?そう自問自答を繰り広げた。
 答えはNO。
 自分自身に愛想が尽きた。
なのに自殺する勇気もない。なぜなら死ぬのは怖いから。
 だから思った。
 もう、どうでもいいや、と。

 他人が怖い。だから独りを望んだ。
 独りは怖い。だから誰でもいいから傍にいてほしい。
 相反する、対極の願いが存在していた。
 まるでメトロノームの針のように、2つの願いを行ったり来たりする不安定な心。
 その不安定さが、精神を鑢にかける。
 気がついた時、紅の少女は自身によって汚されていた。
 だから思った。
 ・・・碇シンジは最低な人間だ、と・・・

 戦闘が終わった後、ランサーはマスターであるシンジの枕元に来ていた。
 「マスター、調子はどうだ?」
 それに応える声は無い。ただ静かに寝息だけが聞こえてきた。
 マスターとサーヴァントとの間で、まれに起こる記憶の共有。『夢』という形をとる為、本来なら見る側が眠っていなければ、起こる事のない現象である。
 だがランサーは、起きていたのに記憶を共有していた。
 それはシンジがコアに傷を受けた事に原因があった。一時的にATフィールドが弱まった結果、ランサーの中へシンジの記憶が流れ込んでいたのである。
 己のマスターが弱い人間であることを、ランサーは理解していた。その罪を償う為に、命を断とうとしている事も知っていた。
 けれども、それだけではない事も知っていた。
 少しずつ、考え方を改めつつあるシンジ。その答えがどのような答えになるのかは、まだ誰にも分からない。
 ただ1つだけ、ランサーに断言できる事があった。
 「・・・楽な死より、辛い生。だが、それを自ら選びとれるのは、本当に強い人間だけだ。マスター、俺が見届けてやる。だから、恐れず進め」
 枕元に腰を下ろしながら、ランサーは黙ってシンジの寝顔を眺めていた。

衛宮邸、居間―
 時刻はまもなく正午という時間帯。衛宮邸では、桜救出の為の計画が練られていた。
 その貴重な情報源となったのがイリヤである。
 本来、聖杯の器を用意するのがアインツベルン家に課せられた役目。その為、聖杯戦争の裏事情については、誰よりも深く、真相を知っていた。
 地上に現れる小聖杯と、地下に眠る聖杯戦争の基本システムともいえる大聖杯の存在。第3次聖杯戦争において、アインツベルン家が呼び出した、絶対悪を象徴する反英雄。それによって歪んでしまった聖杯戦争。第4次において勝ち残った切継が、真実を知って聖杯の破壊を目論んだ事。そして桜が歪んだ聖杯の器として、稼働し始めた事等々。
 実に多くの情報がイリヤから齎された。
 「それで、桜の救出についてなんだが」
 「・・・聖杯と桜との間の魔術的な繋がりを断ちきる。それが出来れば、望みはあるんだけれど」
 「魔術的な繋がりを断ちきる、ですか・・・そう言えば、貴女達はサーヴァントをキャスターに奪われていましたね?あれはどうしてですか?」
 「そういう宝具をキャスターが持っていたからよ」
 「・・・宝具ですか・・・」
 喧々諤々の論争を、ランサーは一歩退いた所から眺めていた。だから、気がつくのも早かった。
 「おい、ちょっときてくれ」
 槍を手にしたまま、庭へと出るランサー。その視線は、新都の方を睨んでいる。
 「ランサー?」
 「新都の方から、強い魔力の気配を感じる」
 その言葉に、全員が慌てて庭へ飛び出してくる。その気配の正体に気がついたのは、イリヤであった。
 「・・・間違いないわ、これは聖杯の『呪い』アンリマユよ!」
 「本当か?それじゃあ、桜が?」
 「ええ、恐らく桜よ。でもこの魔力、恐らくアンリマユに操られているわね。でも、何で急に昼間から活動を・・・」
 「とりあえず新都へ向かおうよ。直接対峙すれば、何か分かるかもしれないからね」
 その言葉に、一同は新都目指して駆け出した。

冬木市立総合病院―
 最近、市内で頻発していた事件。その中でも穂群原学園で起きた薬品中毒事件の被害者である学生達を、この病院はたくさん受け入れていた。
 入院した生徒達も、顔馴染みばかりが周りにいる事もあり、学校とたいして変わらない雰囲気の中にあった。
 だが、その病院は、いまや恐怖に支配されていた。
 病院を我が物顔に移動する、黒い影。その影に呑まれる犠牲者の姿に、病院はパニックへ陥っていた。
 そして問題なのは、大半の者達が犠牲となった事である。
 外へ逃げだそうとした者達は、病院の外に蠢く『蟲』の餌となったのである。そしてその惨劇は、病院の敷地全体に張られた、消音と人払いの結界によって、誰にも気づかれないままであった。
 そして僅かに生き残った者達は、息を顰めて、隠れていた。
 ナースルームの奥にある控室。そこに彼らは隠れていた。
 隠れていたのは5人。柳洞一成、美綴綾子、氷室鐘、蒔寺楓、三枝由紀香である。
 最前線に陣取るのは一成。手にはライターと、急造の火炎瓶を持っている。その後ろには、同じ物を手にした綾子が、恐怖で足を竦ませながら、それでも気丈に振舞っていた。
 「これだけの異常事態なんだ。きっと警察が来る、だから何とか持ちこたえるんだ」
 黙って頷く一成。だが悪夢のような現実の前に、無理矢理心を落ち着けようと般若心経を心の中で呟き続けていた。
 「何が・・・何が起こってるんだろう・・・」
 「分かんねーよ・・・なあ、氷室。なんか知らないのかよ?」
 「私の方が知りたいぐらいだ・・・一体、何があったというんだ・・・」
 3人は少しでも安全な所に、とテーブルを防壁代わりにして部屋の隅に固まっていた。その体は、未知の恐怖に苛まれ小刻みに震えている。
 「外・・・静かだよな・・・やっぱり・・・」
 楓が不安そうに、カーテンの隙間から外を覗く。
 「それ以上は言うなよ、蒔寺。今は生き延びる事だけを考えるんだ」
 一成の忠告に黙って頷く楓。だが5人とも程度の差はあっても、すでに狂乱寸前にまで追い詰められているのは火を見るよりも明らかであった。
 誰もが緊張感に耐えられない。だから恐怖を紛らわせようと、必死になって言葉を交わす。
 「生き延びたら、甘味処にでも行こう。好きな物を奢ってやる。美綴、お前は何が好きなんだ?」
 「私は白玉餡蜜がいいな。たっぷり蜜がかかった奴」
 「ふふ、寺の子の奢りか。ならば私は草餅を頼むかな」
 「私はタイ焼きの方がいいんだけどな」
 「え、えーと、弟達のお土産も有りかな?」
 由紀香の発言に、場の雰囲気が少しだけ和らぐ。
 「そうだ。生き延びたら、俺は言峰の所へ顔を出しに行くかな」
 「言峰の所へ?」
 「考えてみると、俺はあの一件以来、アイツと絶縁状態だった。ずっと和解すべきかどうか悩み続けてきたが、こんな事になるのであれば、和解しておけばよかったと後悔している」
 一成の言葉に、少女達は複雑そうな表情であった。その時、ドアの向こう側から、耳障りな鳴き声のような音が聞こえてきた。
 間近に迫ってきた死の恐怖。ライターに火をつける一成。その後ろで、綾子が頭を抱えながら、床に崩れ落ちた。
 「お、おい、美綴!」
 「・・・思い・・・だした・・・」
 綾子の口から、意味不明の言葉が漏れる。
 「私・・・襲われたんだ・・・貧血なんかじゃない・・・あの日・・・紫の髪の女性に・・・襲われたんだ・・・」
 呆然したまま呟く綾子。以前、綾子は慎二の命令を受けたライダーに襲われている。その時の記憶については、シンジから連絡を受けた綺礼の催眠暗示によって、記憶の奥底に封じられていた。その封じられていた記憶が、恐怖で解かれて、彼女の脳裏を蹂躙する。
 「襲われた?何を言ってる?」
 「そうだ、思い出した・・・私は襲われたんだ、首筋を噛まれて、気が遠くなった。もう何が何だか分からなくなったんだ・・・」
 綾子の視線が、虚空を見つめる。
 「でも助けてくれた人がいたんだ。私を助けて、病院まで運んでくれた2人組が」
 ついに破られるドア。破られたドアの裂け目から、黒い影が姿を覗かせる。
 覚悟を決めた一成が、火炎瓶にライターで火を灯す。
 「青い服に赤い槍の男の人。それから、赤い眼帯・・・」
 赤い眼帯。その言葉に、全員が同じ人物を連想する。
 「・・・そうだ、全部、思い出した・・・私を助けたのは言峰だった・・・」
 同時に弾け飛ぶ控え室のドア。同じタイミングで一成が火炎瓶を投げつける。だが火炎瓶は影に呑みこまれ、まったく効果を現さない。
 「逃げろ!一か八か、窓から飛び出るんだ!」
 せめて他の4人が逃げる時間を稼ごうと、悲壮な決意をする一成。
 その時だった。
 ガシャン!
 窓ガラスを割って、中へ飛び込んでくる2つの人影。その姿に、全員が呆気に取られていた。
 それは飛び込んできた方も同じだった。
 「・・・何でここにいるんだ、みんな」
 シンジが驚くのも無理は無かった。シンジはここに一成達が入院していたという事実を知らなかったからである。
 だが非常時には場慣れしている分、冷静さを取り戻すのも早かった。
 「ランサー!みんなを連れて撤退して!僕が時間を稼ぐ!」
 「マスター!」
 「いいから、早く逃げ」
 一瞬だけ視線を逸らしたシンジを、影は見逃さなかった。その触手を、一気にシンジ目がけて突きだしたのである。
 誰もがシンジの串刺し死体を幻視した。
 「ATフィールド展開!」
 僅かに早く展開した赤い障壁が、紙一重の差でシンジを救う。
 「ランサー、こいつは任せて!」
 「分かった、少しだけ待ってろよ!」
 無理矢理5人を抱えるランサー。そのまま窓からの脱出を図る。
 「言峰!」
 だがその呼びかけは、シンジの耳には届かなかった。

 4階の窓からのダイブに、複数の悲鳴が上がる。だが英霊であるランサーにしてみれば、たかが4階程度の高さなど、全く考慮にすら値しない。
 今のランサーにとって最優先事項は、マスターであるシンジの元へ戻ること。その為には腕の中にいる、お荷物を運び届けなければならなかった。
 音もなく地面に降り立つと、即座に移動を開始する。その人外の速度に、5人は呆気に取られていた。
 ランサーは病院の駐車場へ向かっていた。目的地は、凛達が『蟲』を滅ぼして作り上げた、結界の地点である。
 「ランサー!生存者・・・ええ!?」
 運ばれてきた5人に、悲鳴を上げる凛。イリヤとルヴィアは訝しげに、士郎は『良かった、無事だったんだな』と駆けよってきた。
 「遠坂?それに衛宮まで・・・」
 顔見知りの登場に、もはや言葉もない綾子。一成も呆然とするしかない。
 「じゃあ、嬢ちゃんに坊主。こっちは任せたぞ。マスターが1人で時間稼ぎしているんでな!」 
 「ランサー!気をつけなさい!あれはアンタらの天敵なんだからね!」
 凛の忠告は、ランサーも良く理解している。だが不利だからといって、戦場から逃げるような真似は、ランサーの誇りが許さない。何より、彼の認めた主が、今も戦場で孤軍奮闘しているとあれば、なおさらである。
 「あとは頼んだぜ!」
 愛槍を片手に、来た道を逆走するランサー。その速さは、最速の英霊の名に恥じない物である。
 「・・・なあ、衛宮」
 「一成、どうした?」
 「一体、何が起きているんだ?頼む、教えてくれ。俺達は、一体、何に巻き込まれているんだ?」
 イリヤとルヴィアが無言で一成に近寄ろうとする。その目的は記憶の消去である。2人は救助された生徒達を、片っぱしから記憶を消して回る担当だった。
 だがその行動を、士郎が止めた。
 「知りたいのか?一成。でも、一成達の記憶は消さなきゃいけないんだ。教えてあげても忘れてしまうのに、それでも知りたいのか?」
 「・・・ああ。目の前で何人も死んだんだ。俺は何もできなかった。せめて原因ぐらいは知りたい。頼む、教えてくれ。一体、何が起きているんだ!」
 一成の言葉に、綾子達も同じように頷いて見せた。
 「・・・この世界の裏側には、魔術という物が存在している。ただ魔術という存在は隠されなければならない。何故か、分るか?」
 「悪用されたら大変だからか?」
 「正解。広まったら、あまりにも危険だからな」
 そういって、士郎が指をさす。そこには炭となった蟲の死骸が転がっていた。
 「この事件は、自分の事しか考えていない、暴走した魔術師が起こした人災なんだ」
 「・・・そうだったのか・・・俺達は、俺達はそんな事の為に!」
 「すまなかった、一成。俺達がもっと早く気づいていれば、防げたかもしれなかったのに・・・」
 「いや、衛宮を責めている訳ではないんだ」
 自分達が巻き込まれた理由に、元々、血の気の多い楓と綾子が、怒りで頭に血を昇らせていく。
 「衛宮、そいつはどこにいるんだ!一発、ぶん殴ってやる!」
 「いや、黒幕はここにはいない。それに、お前達にそんな事はさせられないよ。仮にも相手は魔術師。そんな事をすれば、確実に返り討ちにあって殺される」
 士郎のセリフに、2人が振り上げた拳を振り下ろす先を見つけられずに、全身を怒りで震わせていた。
 「それより、この中から出ないでよ?」
 「・・・遠坂さん?」
 「この結界は蟲避けの効果があるの。この外に出てしまったら、生き残っている蟲の餌になるわ。自殺したいなら止めないけどね、記憶を消す手間も省けるし」
 普段のお嬢様然とした物言いとは違う、冷酷極まりな凛の口調に、由紀香がビクッと身を震わせる。
 「これは冗談で言ってるんじゃないの。死にたくなければ、ジッとしていなさい」
 「・・・ふむ、それが遠坂嬢の地か?」
 「そうよ。この地を管理する魔術師の当主としての警告よ」
 凛の発言に、くってかかったのは楓であった。
 「お前が管理?だったら、なんでこんな事を起こさせたんだよ!」
 「待て!遠坂は」
 「止めなさい、衛宮君。何を言っても言い訳にしかならないし、失われた命は戻ってこない。それに冬木の管理者として、それ相応の責任は取らなければいけないのよ、私は」
 「良い度胸だ!」
 喧嘩っ早い楓が、凛に殴りかかる。その行動を、凛は甘んじて受ける覚悟を決め、歯を食いしばった。
 ところがいつまで経っても、覚悟していた痛みがこない。
 不審に思った凛は目を開き、思わず声を張り上げた。
 「士郎!」
 楓の拳は、凛の前に割って入った士郎の頬を捉えていた。その結果に、殴りかかった楓が、呆気に取られている。
 「・・・気が済んだか?でもな、遠坂を殴っても解決なんてしないんだ。この事件の黒幕は、最初から遠坂の管理下に入っていなかった奴なんだから」
 「何でだ?遠坂は管理者なんだろ?」
 「何事にも例外はあるんだ。信じられないかもしれないけど、そいつは遠坂を敵視している。おまけに他人の存在を餌程度にしか見ていない。だから、遠坂に責任が及ぶのを承知の上で、こんな大事件を起こしやがったんだ」
 気まずそうな視線が凛に向く。だが当の凛はと言えば、顔を俯けていた。実力不足故に臓硯の暗躍と、悪意に呑まれた桜を止められなかったのは事実だからである。
 「衛宮。つまりこう言いたい訳だな?そこの女狐は、今回の件で責任を無理やり擦り付けられた被害者だ、と」
 「ああ、そうだ」
 「分かった。お前がそう言うなら、俺は信じよう。お前は嘘を吐くような人間ではないからな」
 「全くだ、でも衛宮が嘘を吐くところも見てみたい気がするけどな」
 一成の言葉に、綾子が同意する。
 「寺の子がそう言うのであれば、私も信じよう。遠坂嬢」
 「遠坂さんは悪い人じゃないもの。私も信じるよ」
 「しょうがないな、ここで私1人だけ意地を張っても意味ないじゃんかよ。良いよ、信じてやるよ」
 安心したのか、士郎がホッと一息つく。そんな士郎の顔を、凛は両側から挟みこむと、グイッと強引に自分へ向けた。
 「お、おい!何を」
 「動かないで・・・」
 楓の拳が入った頬を、凛が手のひらで包み込む。
 「・・・ありがとう・・・士郎・・・」
 「いや、俺は別に何も」
 「ううん、嬉しかった」
 どことなく良い雰囲気の2人に、周囲の視線が変化していく。
 「ミス・トオサカ、それにシェロ。ラブシーンは後にして頂けますか?」
 眦を釣り上げたルヴィアの言葉にイリヤがウンウンともっともらしく頷いている。当の士郎と凛はといえば、顔を赤く染めながら慌てて距離をあけていた。
 だがその雰囲気もすぐに消し飛んでしまった。
 なぜなら、一同の目の前で、6階建ての病院が崩れ出したからである。
 鼓膜を叩く轟音と、朦々とわき起こる土埃。その土埃の中から、ランサーとシンジ、単独行動をしていたライダーが飛び出してくる。
 ライダーの姿に硬直する綾子。だが凛に敵ではないと耳打ちされ、硬直からは解放されたものの、ライダーとできる限り距離を取ろうとした。
 「シンジ!大丈夫か!」
 「みんな、用心して!でかいのが来る!」
 その言葉に、戦闘態勢に入る一同。凛とルヴィアは宝石を右手に、ガンドを左手に準備する。士郎は投影魔術で干将・莫耶を創り上げる。ランサーとライダーは愛用の武器を構えて、最前線に立つ。
 埃の中から現れたのは、巨大な蟲だった。だが3階建てのマンションと、ほぼ同じ大きさのそれは、もはや蟲とは言えない。
 「行くぜ、ライダー!」
 「ええ」
 先陣を切ったのはランサーとライダーである。愛用の武器を構えた彼らは、全く同時に攻撃を仕掛けた。
 さらに凛とルヴィアが宝石魔術での後方射撃にはいる。瞬く間に傷だらけとなっていく蟲の姿に、歓声を上げる一成達。
 しかし、その歓声も、次の瞬間には凍りついた。
 蟲はその巨大な体を大地に打ち付けて、空高く跳んだのである。そのまま蟲は、己の体自体を質量兵器として使ってきた。
 この攻撃は予想外だったのか、ランサーもライダーも反応が遅れた。特にライダーは致命的な遅れである。これほどの巨体を一気に消し飛ばすには、騎英の手綱ベルレフォーンを使う以外に選択肢はない。ところがそれを使う為の時間を、ライダーは自らのミスで失ってしまっていた。
 甲高い悲鳴。だが間近に迫った死の光景は、たった一言の言葉によって覆される。
 「ATフィールド展開」
 蟲の全重量を、ATフィールドは全て受け止めていた。
 「士郎!」
 「任せろ!投影開始トレース・オン!」
 絶好の攻撃の機会に、士郎が干将・莫耶を解除し、新たな武器の投影に入る。全身を緑の蛇が這いつくように走り回る。
 27ある魔術回路。その全ての撃鉄が、火花を散らす。
 士郎が作り出すのは、この巨大な虫を滅殺可能な武器。
 「うおおおおおおお!」 
 徐々に士郎の右手に姿を現していく武器。それはバーサーカーの斧剣であった。
 自身の体躯より遥かに巨大な斧剣を、士郎は微動だにせずに右手一本で構える。
 「投影装填トリガー・オフ!」
 士郎の脳裏に、致命の斬撃が9本浮かぶ。
 「全工程投影完了セット是、射殺す百頭ナインライブズ・ブレイドワークス!」
 同時に消え去るATフィールド。落下を始める蟲の巨体。そこへ技の宝具が襲い掛かる。
 一瞬にして叩きこまれる9発の致命の斬撃。その攻撃に逃れられぬ死を感じたのか、蟲が断末魔の叫びをあげた。さらに叩きこまれるトドメの一撃。
 「騎英の手綱ベルレフォーン!」
 輪切りになった蟲は、ライダーの一撃によりこの世界から完全に消滅した、

夜、衛宮邸凛私室―
 「・・・あれだけの無茶をして異常がないなんて・・・シェロ、貴方、何者ですの?」
 「何者と言われてもなあ・・・」
 「おまけに将来は守護者?滅茶苦茶にもほどがあります!」
 凛とイリヤが秘密にしようとしていた士郎の能力―宝具の投影に関する説明は、ルヴィアを驚かせるに足りるものであった。その横では凛もまた、険しい顔つきで士郎を睨みつけている。
 「それで、シェロが何故、こんな特異能力を身につけているのか、その理由は分かっているのですか?ミス・トオサカ」
 「ええ、分かっているわ。士郎の投影も強化も、本来の魔術の副産物にすぎない。『固有結界リアリティ・マーブル』それが士郎の本当の魔術よ」
 脳裏に浮かぶのは、炎と剣に支配された世界。空に浮かぶは巨大な歯車。無限の剣を内包した、一つの世界。
 凛は思う。固有結界は術者の心を具現化する力。ならば、あの世界はアーチャーの心そのものであり、同時に衛宮士郎の心と言っても過言ではない。
 炎が象徴するのは、士郎が『創る者』である事の象徴。通常、炎は破壊を象徴する。だが剣を鍛える事において、炎は決して欠かす事の出来ない重要な要素である。
 剣が象徴するのは、士郎が『正義の味方』を目指す象徴。古来より、多くの武器が作られてきた。だが剣ほど数多の英雄達に愛用され、そして多くの敵を屠ってきた武器は存在しない。同時にセイバーという眩い憧れをも象徴している。
 歯車が象徴するのは、士郎が『人形』である事の象徴。衛宮切継の遺志を受け継ぎ、己の命より他者の命を重く見る彼の生き様は、切継の遺志に操られる人形と言っても良い。
 だが、士郎は変わりつつある。ゆっくりとではあるが、良い方向に自らの目指す道を変えつつある。それは真実。
 だから、凛は決断した。
 「士郎、貴方は無限の剣製アンリミテッド・ブレイド・ワークスを使いこなせるはずなの。けど残念な事に、魔力のキャパシティが足りない為に発動できない」
 「じゃあ、俺が魔力を増やす事が出来れば、使いこなせるという訳か?」
 「理論上はね。でも時間がないから、乱暴な方法をとるわ」
 凛はハッキリと告げた。
 「私と士郎の間にパスを繋げる。私が士郎の動力源となる事で、固有結界を発動させるのよ。覚悟はいいわね?」
 「ミス・トオサカ?貴女一人で賄えますの?」
 ムッとする凛。だが彼女が口を開くよりも早く、ルヴィアが告げた。
 「私も協力しますわ。2人がかりなら、余裕で賄えるでしょう」

同時刻、衛宮邸居間―
 「結局、こうなるとはね」
 ぼやくシンジの横で、イリヤがクスクスと笑っていた。
 遡る事2時間ほど前、病院で助けた旧知の5人をシンジ達は衛宮邸へ連れ帰っていた。あの場で記憶操作をしようにも、結界で誤魔化せないほどの大惨事となってしまい、ノンビリしている暇がなかったからである。
 だが5人は記憶操作を望まなかった。特に一成は記憶操作を頑として拒み続けた。
 『俺にだってできる事がある!第一、お前達だけに任せておけるか!』
 一成は冬木市の2大宗教拠点の一角、柳洞寺の次男。今はともかく、将来的にはそれなりに冬木市に影響を持ちうる人材である。そういう意味では、彼が魔術の存在を知る協力者となった場合、とても強い味方となりうる。
 鐘は冬木市長の娘。彼女もまた、一成同様に強い味方となりうる立場であった。
 だから2人の場合は、ルヴィアやイリヤも渋々認めたほどである。
 問題は他の3人である。
 綾子や楓は持ち前の正義感の強さもあり、拒むのは予想できた。予想外だったのは由紀香である。彼女は小さい弟妹達が事件に巻き込まれるかもしれないと言う理由で、弟妹を守る為に協力したいと言い出したのであった。
 こうなると収拾がつかない。結局、説得に疲れた凛がついにキレ、ギアスをかける事を条件に、見逃す事にしたのである。
 「・・・言峰、ちょっといいか?」
 声をかけたのは一成であった。彼の行動に興味があるのか、他の者達もそちらへ視線を向ける。
 「言峰、助けてくれてありがとう。あの時、お前とランサーさんが飛び込んで来なければ、俺達は死んでいただろう。その礼を、まだ言っていなかった」
 その言葉に、女性陣もまた口々に礼の言葉を口にする。それをシンジは、素直に受け止めた。
 「言峰、俺はお前を敬遠してた。だがそれは誤りだったと思う。お前さえ良ければ、もう一度、俺はやり直したい。お前の過去に何があったかは俺は知らん。だが俺はお前を信じたいんだ」
 一成の態度は真摯な物であった。だからこそ、傍にいたイリヤも、護衛をしていたランサーも、感心したように一成を見つめた。
 「ありがとう一成。その言葉は正直、僕も嬉しいよ。でも少し遅かった」
 「何故だ?」
 「この聖杯戦争が終わったら、僕は冬木市を去る。多分、もうここには戻ってこない」
 「言峰!何でだ!」
 一成の言葉は、他の4人も同感だった。もともとシンジ個人を嫌っていた訳ではない。ただシンジの犯したという過去の罪が、不信感となって彼女達を遠ざけていたにすぎないのである。
 「僕は第3へ帰るつもりだから」
 「第3新東京市へか?」
 「やり直してみようと思ったんだ。僕が犯してしまった罪、それを償う為に僕は第3新東京市を離れた。僕が自殺を願っていたのも、贖罪の一つにすぎなかった」
 シンジの目が、はるか第3新東京市の方角へと向けられる。
 「多分、謝った所で許しては貰えないと思う。僕はそれだけの事をしたからね。でも正面から自分の罪と向き合ってみようと思ったんだ。例え許して貰えなくても構わない。僕は自殺ではなく、生きて罪を償う方法を探したい。その為に帰るんだよ」
 「・・・言峰・・・」
 「士郎にはお礼を言わなきゃね。おかげで僕は、過ちを繰り返さずに済んだんだから」
 そう言ったシンジの顔には、いつも漂っていた陰りは見受けられなかった。
 「マスター、俺も連れて行けよ。最後まで見届けてやるからな」
 「そうだね、ランサーが望むなら一緒に来ればいいよ。食事ぐらいしか提供できないけどね」
 「何、十分だ」
 どことなく冗談めいたシンジの言葉に、一同の間に笑いが起こった。

サーヴァント・ステータス
クラス:セイバー
マスター:間桐桜
真名:アルトリア=ペンドラゴン
性格:秩序・悪
身長:152cm 体重42kg
特技:器械運動、賭けごと全般
好きな物:大雑把な食事、ぬいぐるみ
苦手な物:きめ細やかな食事、装飾過多
天敵:ギルガメッシュ、悪戯好きの老人
筋力:A  魔力:A++ 耐久力:A 幸運:C 敏捷:D 宝具:A++

クラススキル
対魔力:B 第三節以下の魔術無効化。黒化して闇属性に染まっている為、対魔力が1ランク低下中
騎乗:― 黒化の為か、騎乗スキルは喪失中

保有スキル
直感:A 戦闘時、未来予知に近い形で危険を察知する能力。黒化による凶暴化を抑える為に、ランク低下
魔力放出:A セイバーが意識せずとも、膨大な魔力がセイバーの周囲を漂っている。黒い鎧と魔力の余波により、防御力は格段に向上
カリスマ:E 戦闘における統率・士気を司る天性の能力。Eランクでは統率は上がるが、士気は格段に落ちる

宝具
約束された勝利の剣エクスカリバー:A ++ 対軍宝具



To be continued...
(2011.04.16 初版)


(あとがき)

 紫雲です。今回もお読み下さり、ありがとうございます。
 今回はアサシン・ハサンの脱落&黒セイバー登場です。ですが黒セイバーと書くと、どうしてもジャンクフードをこよなく愛する、ゴスロリセイバーしか思い出せないのは何故でしょうかw黒セイバーはもっと怖い存在の筈なのに・・・何でだ?
 そんな与太話はともかく、次回です。
 死都と化した冬木市。そんな冬木の街を暗躍する臓硯。そして臓硯の思惑により堕ちてしまった桜。彼女は衛宮邸に襲撃を仕掛けるが・・・そんな感じの話になります。それでは、また次回も宜しくお願い致します。



作者(紫雲様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで