正反対の兄弟

第二十五話

presented by 紫雲様


麻帆良学園女子寮―
 「いた!いたた・・・」
 「ホラホラ、動いたらあかんえ~」
 茶々丸相手にボロボロになったネギは、至るところに怪我を負っていた。その治療の為に、木乃香に消毒薬を塗られていたのである。
 「でもさあ、木乃香。修学旅行の時みたいに、パーッとできないの?」
 「あの時は、エヴァちゃんに言われた通りにやっただけやったからなあ」
 お菓子を齧りながら刹那の相手をするアスナに、木乃香が困ったように返す。
 「それにウチ、まほーってどう使ってえーか、わからん」
 「僕も回復系はちょっと・・・」
 「今度、エヴァンジェリンさんに教わりに行くのも良いかもしれませんね」
 折角エヴァンジェリンに弟子入りしたのだから、と頷く一同である。そこへ流しを借りていたシンジが、ドンブリを手にして戻ってきた。
 「手当が終わったら休憩しよう。プリン作ったからね」
 「分かったえ」
 「ちょっと、シンジさん?ひょっとして、それ・・・」
 ゴトンという音とともに、プリンの入ったドンブリがテーブルに置かれた。そのインパクトに、アスナも刹那も言葉が無い。
 「この前、コンビニで巨大プリンっていうのを見つけてね。400gで巨大と言ってたから、対抗して1kgほど作ってみました。欲しい分だけ取り分けて食べてね」
 レンゲを1つと、人数分のお皿とスプーンを用意するシンジ。手当を終えて、ロフトから下りてきたネギは絶句し、木乃香は『お兄ちゃん、何を作ってんのや~』と笑う。
 「この人数なら、数分で無くなりそうだけどね」
 「言われてみれば、それほど分量的に多すぎる訳でもないですね」
 カモも含めて6等分すれば、1人170g弱である。刹那の計算に、アスナも『そうね』と頷き返した。
 小鉢によそって貰ったプリンを口に運びながら、ネギが嬉しそうに呟く。
 「でもこれでエヴァンジェリンさんに色々と教えて貰えるよ。くーふぇさんも修業は続けてくれると言ってくれたしね。あとは頑張るだけだよ」
 「やる気あるなあ、兄貴」
 「格闘技術は頭で理解するだけでなく、長い時間をかけて体に覚え込ませる必要が有ります。そこまで到達できなければ、昨日の茶々丸さんみたいな人には勝てません。頑張って下さいね、先生」
 刹那の激励に、コクコクと頷くネギ。プリンの甘さに夢中らしく、年相応の笑みを浮かべるネギに、刹那やアスナが苦笑する。
 そこへピンポーンというインターホンが鳴った。
 「はーい・・・うん、ネギ君ならおるえ」
 「あ、僕ですか?今行きますね」
 ネギが出向くと、そこには紙袋を携えた茶々丸が立っていた。昨日の気配など微塵も感じさせないどころか、逆に気まずそうな雰囲気すら漂わせている。
 「ネ、ネギ先生。お傷のほうは大丈夫ですか?」
 「ハイ。見た目より全然大したことなかったです。茶々丸さんが、ちゃんと力を加減してくれたからだと思います」
 「そうですか、こちらはマスターからの差し入れです。良く効く傷薬だそうです」
 15cmほどの高さの瓶に、目一杯入った傷薬を手渡す茶々丸である。そこへ玄関先の様子を窺いに、アスナまでもが出てきた。
 「それからこちらは私から。美味しいお茶です」
 「あ、ありがとうございます」
 「今回は、幾ら試合とはいえ、ネギ先生に・・・で、ではこれで失礼します」
 顔を俯けてモジモジしていた茶々丸が、慌てたように踵を返して立ち去っていく。そんな茶々丸をアスナが『待って待って』と呼びとめる。
 「どうせなら、ちょっとくらいゆっくりしていきなよ」
 「そうですか?ではお茶をお淹れ致します」
 そこへ『ドドドドド』と足音も高らかに、まき絵と亜子が突撃してきた。
 「おーい、ネギ君!って茶々丸さん!?」
 ビクウッと身を竦める2人。だがアスナの執り成しもあり、シンジの作ったドンブリプリンを肴に、雑談を開始する。
 そんな時、ネギの携帯電話に着信が入った。

図書館島、談話室―
 ネギとシンジ、アスナは、夕映・ハルナ・のどかの3人に呼び出されていた。
 「手掛かりが見つかったんですか!?」
 「はい。ネギ先生は、以前の学年末テストの時に、馬鹿レンジャー5人と一緒に勉強した幻の地底図書室を覚えているですか?」
 素直に頷くネギ。場合によってはネギの強制送還もありえた一件だけに、ネギはハッキリと記憶していた。
 「その地底図書室なのですが、どうも抜け道があるらしいのです。これを見て下さい」
 夕映が地図を開く。地底図書室から伸びている通路を指でスーッと移動させていく。そこに書かれていた文字に、ネギは硬直した。
 Vサインをしているデフォルメされた顔と『オレノテガカリ』と言う文字。
 「えええええええ!?何で!?日本語だから見逃しちゃった!?」
 「ネギ。アンタ時々、スゴイ馬鹿でしょ」
 慌てるネギを、アスナは冷たくツッコミ、のどかは笑顔で見守る。ただ笑っていられないのはシンジだった。シンジは、通路の先にいる門番の存在を知っているのだから。
 どうやって止めようかと悩むシンジだったが、そんな彼の思惑など知らぬまま、好奇心に駆られた夕映は突っ走る。
 「ネギ先生。先生やシンジさんが魔法使いだと言う事は、修学旅行の一件で理解したです。何故、魔法と言う存在を秘密にしなければならないのか?それも気になりますが、今はもっと気になる事があるですよ」
 一息吐くと、夕映は自論を口にした。
 「これまでの話から、全世界規模で見てもかなりの数の魔法使いが存在し、相応の社会コミュニティを築き上げている事が想像できます。そしてこの麻帆良学園も、その1つなのではないかと考えました。そう考えると、学園の不思議、地底図書室の存在、動く石像、巨大な世界樹。それら全てに辻褄が通るのです」
 「そ、そうなの?ネギ」
 「あうう、多分、そうです」
 夕映の自論に、カモが『鋭いな、この女』と感心したように夕映を見直す。一方のネギはと言えば、慌てるばかりである。
 「そこで本題です。ネギ先生。その手掛かりを調べに行くのであれば、私達も同行させて欲しいのです」
 「何を訳の分からない事を言ってるんだ?綾瀬夕映」
 ゾクッと背筋に寒気を感じた3人組が、慌ててシンジへ振り向いた。修学旅行のキス騒動の時に感じたのと、同種の恐怖が彼女達を襲ったのである。
 「はっきり言っておくよ。君達は足手まといなんだ」
 「な、何を言うですか!私がいなければ、この手がかかりは見つけられなかったんですよ!」
 「いや、僕はそこに誰がいるのかを知っているんだよ。地底図書室の主は、僕の取引相手の1人だからね」
 唖然となる夕映。それに構わず、シンジは続ける。
 「断言しておく。今のネギ君の実力では、そこへ行っただけで犬死確定だ。そこにいる門番を凌ぐ事も出来ずに、死亡確定だよ。なぜなら、今のネギ君は弱いから」
 「だ、だったらシンジさんが力を貸せば!」
 「お断りだよ。そんなズルをすれば、いずれネギ君は死ぬからね」
 そう返すと、シンジは踵を返した。

 談話室から立ち去るシンジ。その後を、この一件の間、ずっと沈黙を保っていたハルナが追いかけようと、部屋から出て行った。
 その背中をアスナは見つめていたが、視線を外すと夕映を正面から見据える。
 「綾瀬。アンタ、何をそんなに浮かれてる訳?」
 「だって、魔法ですよ!?これが何を意味しているのかが、貴女には分からないんですか!?」
 「私に分かるのはね、綾瀬。アンタがシンジさんの逆鱗に触れたという事実よ」
 アスナの言葉に、興奮している夕映は意味を理解できないでいた。
 「綾瀬。アンタは修学旅行で何を見たか忘れたの?アンタの目の前で、エヴァちゃんを庇ったシンジさんが命を落としかけたのを忘れたの?パルが穴だらけになったシンジさんの体を抱きしめて、号泣していたのを都合よく忘れちゃったの!?」
 「そ、それは忘れた事などないです!でも、それとこれとは話が違うですよ!」
 「同じよ。仮にネギを唆して、アンタと本屋ちゃんがそこへ行ったとする。そしてシンジさんが言う通り、ネギがそこで命を落とせば、当然の結果としてアンタ達2人も死ぬ。そうしたら、みんなが泣くと言う事が理解できない訳?」
 グッと押し黙る夕映。のどかは夕映とアスナ、どちらに味方をすべきか判断できずにオロオロとするばかりである。
 「今回に限っては、私はシンジさんに味方するわ。どう考えてもシンジさんが正しいからね。ネギ、アンタも暴走すんじゃないわよ!」
 そういうと、アスナはネギを引っ張るかのように談話室を後にした。

 「シンジさん!」
 「早乙女さんか、どうしたの?」
 「あの、ごめんなさい。ゆえ吉も、興奮しちゃってるだけなんです。だから!」
 ガコンという音に、顔をあげるハルナ。目の前には、シンジが自販機で買ったばかりのジュースを突きだしていた。
 「少し、話をしようか。時間はある?」
 「ハイ!」
 図書館の脇にあるベンチに腰を下ろし、プルタブを開ける。一気に半分ほど飲み干してから、シンジは口を開いた。
 「そんなに、魔法が羨ましいのかな?」
 「・・・自分が持ってない物は、やっぱり羨ましく見えるんだと思う」
 「そう言われると納得できるかな」
 青い空を見上げながら、シンジがポツリと呟いた。
 「僕は当たり前の生活が欲しかった。普通の子供が手に入れる事の出来る、平穏な生活と暖かい家族が欲しかった。なのにあの子達は、非日常に憧れるんだね・・・」
 「シンジさん・・・」
 「僕はここでの生活を気にいっている。だけどあの子達には、退屈でしかないのかな」
 どこか辛そうなシンジの言葉に、ハルナはシンジを慰める事も出来ずに、こちらもまた辛そうに顔を歪めていた。
 「シンジさん。私、シンジさんに伝えたい事があるんです。怒らせてしまうかもしれないけど、聞いて貰えませんか?」
 「・・・いいよ、話してみて」
 「京都でエヴァちゃんに言われたんです。シンジさんが抱える心の闇に、今の弱い私では耐えられない。シンジさんを支える事も出来ない、泣く事しか出来ない私ではって。でも私はシンジさんと一緒にいたいんです。だから自分なりに考えました」
 ハルナがシンジの前に立つ。その手に握られていた物に、シンジは言葉を無くした。
 「・・・『来れアデアット』・・・」
 ハルナのアーティファクト落書帝国インペリウム・グラフィケースが姿を現す。
 「シンジさん。私は許して貰おうとは思いません。私は私の想いを貫く為に、この力を使います。もう泣くのは嫌だから。失ってしまうのは嫌だから」
 「早乙女さん。僕は君だけじゃなく、みんなに魔法には関わって欲しくないんだ。それでも、理解してはもらえないの?」
 「はい。私はシンジさんの傍にいたいという我儘の為に、力を使います。シンジさんを失いたくない、守りたい、力になりたいという我儘の為に、力を使います」
 ハルナの強い決意に、シンジは遂に折れた。
 「そこまで覚悟があるのなら、僕には何も言えないよ」
 「・・・はい!」
 嬉しそうにほほ笑むハルナ。そんなハルナに、シンジはある事を頼むと、彼女とともに図書館島を後にした。

翌日、早朝―
 シンジは枕元に置かれていた携帯電話からの連絡に、目を覚ました。ディスプレイにはハルナの名前が表示されている。
 時刻は朝の4時30分。まだまだ外は薄暗い。
 「おはよう。早乙女さん」
 『おはようございます。昨日の件ですが』
 「やっぱりか。済まないけど、連れ戻しに行くよ。門番の件は、紛れもない事実だからね。餌になる前に止めないと」
 『分かりました。では2分後に玄関で』
 プツッと切れる携帯電話。予めパジャマではなく、私服で寝ていたシンジは、枕元の短刀と符、アルビレオの所への通行証を掴むと、溜息とともに寮監室を後にした。

翌朝―
 父の手がかかりに対する『門番』『犬死』という警告。それを無視してしまうほどに、ネギの父親への想いは強かった。考えてみれば、教職に就いているとはいえ、未だに10歳。感情のままに突っ走るのが当たり前の子供である。
 アスナは新聞配達のアルバイトで不在であり、何より今回の探索には反対を表明しているので、協力は得られない。そう判断したネギは、単独で向かおうと考えた。
 だが、ネギは知らなかった。同室の木乃香が、夕映の頼みを引き受けて、ネギを監視していた事に。
 コッソリと寮を出たネギだったが、木乃香の連絡を受けた夕映とのどかに捕まり、同行を余儀なくされたのである。そして今、ネギ達は以前のテストで脱出に使った時のルートで、地底図書室を目指していた。
 螺旋階段の中央部を、杖の前後に夕映とのどかを乗せ、3人乗りで滑降していく。吹き上げてくる強風に煽られ、甲高い悲鳴を上げながら。

シンジside―
 「しまったな、この事を予想しておくべきだったか」
 螺旋階段への直通エレベーターは1つしかない。つまりネギ達が利用している間は、シンジ達はエレベーターが使えないのである。
 「でもシンジさん。あの螺旋階段で追いつく事は出来ると思うよ。私のアーティファクトなら、飛行物体も作れるし」
 「・・・それしかないか・・・」
 やがてチーンと音が鳴り、上昇してきたエレベーターが開く。そこへシンジとハルナが乗り込んだ時、更に追加で乗り込んでくる人影が有った。
 「茶々丸さん?」
 「おはようございます。近衛さん、早乙女さん」
 「どうしてここに茶々丸さんが?」
 問われた茶々丸だが、彼女自身にも答えは分からないらしく、首を傾げている。
 「ネギ先生を見かけたのですが、何となく後をつけたような良い気がしまして・・・このような事を言うと変でしょうか?」
 「いや、そんな事は無いよ。茶々丸さん、ネギ君達を救助するのを手伝って欲しいんだけど、良いかな?」
 「ええ、承りました」
 エレベーターの中を沈黙が支配する。そんな中、ハルナが思い出したようにシンジに質問を飛ばした。
 「そういえば、門番ってそんなに危険なんですか?」
 「そうだね、説明しておくよ。あそこの司書が飼っている門番は、翼を広げると20mを超える巨大なワイバーン―竜種の亜種だよ」
 「「ワイバーン?」」
 ハルナと茶々丸が、一斉に声を上げた。ハルナは趣味で読んでいる小説で、茶々丸は主が暇潰しに遊んでいるテレビゲームで、ワイバーンの名前ぐらいは知っていた。
 「飼い主に聞いた事が有るんだ。尻尾やかぎ爪といった肉体的な破壊力なら、肉食の巨大な恐竜と互角。飛行速度は魔法使いの飛行術には劣るけど、かなり早い。スタミナは豊富だし、何よりファイアブレスが最悪だ。射程30mなんて、どうやって対抗しろと言うんだか・・・」
 凍りつくハルナと茶々丸。お互いに顔を見合せながら『さて、どうしましょうか?』とアイコンタクトを交わす。
 「基本は逃げだよ。戦おうなんて考えちゃだめだ。とにかく3人を回収して逃げる事を優先に。できれば地上まで、最悪でも地底図書室までは逃げ切る事を考えて欲しいんだ。良いね?」
 「は、はい・・・」
 「グダグダいうようだったら、力づくで。時間が勝負だからね」
 チーンと音が鳴り、エレベーターが開く。
 ハルナはアーティファクトを発動させ、予め描いておいたページを開く。
 「落書帝国インペリウム・グラフィケース!」
 姿を現したのは、シンジの『空翔ける者ケルプ』に似たデザインの物体である。
 「2人とも、乗って!」
 その言葉に2人が即座に飛び乗ると、ハルナは先行した友人達を求めて最大速度で飛び出した。

ネギside―
 地底図書室にかけられていた人払いの結界を越えたネギ達3人は、ついにアルビレオの居場所に続く石の扉の前にまで到達していた。
 扉の周辺には、複雑精緻な彫刻が施され、地底でありながらも明るい光と清浄な水を糧として、巨大な木々が根を張っていた。その光景は、神聖さすら感じさせるほどである。
 「ここが・・・」
 「こんな奥に、こんなに綺麗な場所があったなんて・・・」
 「はい。人払いの結界もありましたし、普通の人には辿り着けないでしょうね」
 トコトコと扉に近寄る3人。その扉を念入りに調べ出すネギである。
 「しかし、シンジさんは門番がいると言っていたですが、どこにもいないではないですか」
 「ねえ、ゆえゆえ。私、ずっと思ってたんだけど、これ何だろうね?」
 のどかの言葉に、夕映が地図を覗きこむ。そこには何かの生き物らしい顔と『DANGER』という言葉が綴られていた。
 「これは・・・犬?いや猫でしょうか・・・」
 そこへビシャッと言う音が響いた。夕映とのどかは頭にかかった液体に『何これ?』と手を伸ばす。同時にネギが振り返り、硬直した。
 そこにはシンジが『門番』と評した巨大なワイバーンが、涎を垂れ流しながら3人の前に姿を見せていたからである。
 「「は?」」
 「ド、ドラゴン!?」
 夕映とのどかは、あまりのインパクトに頭が白紙状態。ネギは竜種に対する知識を持っている事もあり、即座に勝てる訳がないと判断する。
 ゴアアアアアアアアアアアッと咆哮するワイバーンを前に、ネギが『逃げて!』と叫ぶ。
 だが―
 「絵本には、こーゆー出来事はあんまり・・・」
 「いえいえ、さすがにこれは無いでしょう。普通に通っている学校の地下に、こんなファンタジーが存在するなんて。そもそもあれだけの巨体を維持するには、膨大な食料が必要となります。いえ、涎を垂らしていると言う事は、私達みたいな小さい物も食べたくなるほど、飢えていると言う事なのでしょうか?ですが腕が無い事から察するに、これはワイバーンだと思われます。そうなるとあまり強くないと思われますが。いやいや、強い弱いという問題は無いでしょう。そもそもワイバーンが弱いといっても、あくまでの他のドラゴンと比較した際の話であり、私の様な普通の人間の手に負える様な存在では・・・」
 「いいから逃げて下さい!」
 とは言え、ドラゴン―正確にはワイバーンだが―と遭遇した一般人に、何とかしろと言うのも酷である。そもそも逃げだす事すら難しいのだから。
 ワイバーンは巨体をフワッと浮かせると、全体重を後脚に込めて押し潰そうとしてきた。
 慌ててネギが飛び出そうとするが、どう考えても間に合わない。しかし夕映達が踏み潰されるよりも早く、飛び込んできた影が有った。
 「茶々丸さん!」
 影の正体は、両脇に2人を抱えた茶々丸である。
 「脱出します!」
 「は、はい!」
 ネギがのどかを受け取り、全速力で戦場から離脱。茶々丸も夕映を抱き抱えて同じように撤退を始める。
 だがワイバーンに見逃す義理は無い。その口からチロチロと赤く燃え盛る炎の欠片を洩らしながら、一行を追いかける。
 「まさか!ファイアブレス!?」
 ネギの背筋に走る寒気。ゴバアッと広がる灼熱の渦。思わず目を瞑ったネギの耳に、静かな声が飛び込んできた。
 「急々如律令」
 1枚の符が、ワイバーンのファイアブレスに呑みこまれ、内側から雲散霧消させる。
 「シンジさん!」
 「早く逃げろ!殺されるぞ!」
 シンジは時間稼ぎの為に、その場に踏み止まっていた。それに気付いたネギだったが、それよりも早く茶々丸が制止する。
 「近衛さんはネギ先生達の為に、時間稼ぎをしているんです。それを無駄にしないで下さい」
 「で、でも!」
 「ネギ先生。貴方は足手まといです」
 グッと押し黙るネギ。済まなそうに顔を俯けるのどかと夕映。
 「行きます。地底図書室で待機中の早乙女さんと合流して、一気に脱出します」
 瞬く間に小さくなっていくシンジの姿に、3人は自分の軽率さを身に染みて理解する事になった。

 地底図書室で待っていたハルナと合流したネギ達は、即座にハルナの落書帝国インペリウム・グラフィケースで撤退。最短ルートで地上へと帰還していた。
 「た、助かったです」
 パンッ!という音が3回響いた。頬に走る痛みに、ネギ・夕映・のどかは顔をあげ、言葉を失っていた。
 そこには涙を浮かべたハルナがいたからである。
 「何で、何でこんな馬鹿な事したのよ!シンジさんは本気で心配したから叱ったのに、何でそれが分からないのよ!」
 「それは・・・」
 「シンジさんは3人を助ける為に、あの化け物相手に時間稼ぎをしてるのよ!幾らシンジさんが体の傷を治せても、食べられちゃったらどうしようもないのよ!」
 『シンジさんを返してよ!』と泣き崩れるハルナ。茶々丸が慰めの言葉をかけるが、ハルナの苦しみを和らげる事は出来ない。ネギ達も自分の軽率さが招いてしまった事態に、顔を青褪めさせた。特にのどかに至っては、小さくしゃくり上げていた。
 何かを覚悟したような表情で、ネギが図書館島へ戻ろうとする。だがその肩を、茶々丸が咄嗟に掴み、強烈な足払いでネギをすっ転ばした。
 「ネギ先生。私1人に勝てないようで、あのワイバーンを何とかできると思っているのですか?間違いなく、犬死です」
 「で、でも!助けに行かなきゃシンジさんが!」
 「そうさせたのは誰ですか?少なくともネギ先生には、それを口にする資格は無いと思います」
 断罪の言葉に、ネギもまた膝を着いて『ごめんなさい』と泣き崩れた。夕映も自分の好奇心が発端だった事もあり、何も言う事も出来ず、自分を責める事しかできなかった。
 「みなさんを寮までお送りします。その後、どうするかはご自分でお考え下さい」

麻帆良学園中等部女子寮―
 「ただいまー・・・ん?何、何かあったの?」
 新聞配達から帰って来たアスナは、食堂の前を通りかかった時、慌ただしい雰囲気に気がついた。厨房が忙しいのは当然なのだが、その慌てようが尋常ではないのである。
 「おはよーございます!おばちゃん、何かあったの?」
 「近衛さんが来てないんだよ!いつも夜のうちに仕込みだけはしといてくれてるから、何とか切り盛りできてるんだけどね!」
 「シンジさんが?」
 首を傾げるアスナ。そこへ厨房に応援戦力が姿を現した。
 「お手伝いします。近衛さんから頼まれておりますから」
 「そうかい?助かるよ!」
 「茶々丸さん!?」
 何でここに茶々丸さんが?と頭にクエスチョンマークを浮かべるアスナ。そんなアスナに、茶々丸はお味噌汁の味付けをしながら返した。
 「詳しい事はネギ先生にお訊き下さい。綾瀬さんや宮崎さん、早乙女さんもおりますから」
 「・・・まさか!あの馬鹿!」
 アスナは咄嗟に、自分の部屋へと走り出した。

 「ネギ!アンタあれほど言ったでしょうが!」
 ドアを開けるなり、アスナは怒りの形相で詰め寄り―怒りの矛先を失っていた。というのも、ネギの前に立った木乃香が、涙を我慢しながらフルフルと首を左右に振っていたからである。
 部屋の片隅には、俯いてすすり泣くネギ・夕映・のどかと、泣き疲れたハルナが木乃香のベッドに突っ伏していた。
 「・・・木乃香。学園長に連絡は?」
 「もうしたえ。お爺ちゃんが、直接向かうって言うとった」
 「そう。じゃあ連絡待ちな訳ね」
 コクンと頷く木乃香。そのままアスナの胸に顔を埋めると、小さく嗚咽を漏らし始める。
 「ネギ。せめて事情ぐらい説明しなさい」
 アスナが怒りを押し殺してネギに告げると、ネギは何一つ隠す事無く、素直に全てを話した。その感情的な行動に、アスカの顔が怒りで赤く染まっていく。
 「この馬鹿!アンタ、どれだけシンジさんに迷惑かければ気が済むのよ!命の大切さも、魔法の恐ろしさも、何にも理解してないじゃない!」
 「ご・・・ごめんなさい・・・」
 俯いたまま顔を上げようとしないネギ。夕映も『私が悪かったんです』と泣き謝り、のどかは『魔法に浮かれたから・・・』としゃくり上げていた。
 「・・・パルは?」
 「お兄ちゃんが戻ってこない事で、ショックを受けてるんよ。最初は一緒に足止めしようとしたそうなんやけど、茶々丸さんとお兄ちゃんに『地底図書室で待機して逃げ足を確保しておいて欲しい』って頼まれたんやて・・・」

同時刻、アルビレオ・イマの居住区域―
 「アルビレオ君!」
 「思ったより遅かったですね。最初に言っておきますが、彼なら生きていますよ」
 荒い息で駆けつけた近右衛門に、アルは近右衛門が最も望む答えを最初に与えた。
 「最初に言っておくべきでした。あの通行証が役立つのは、戦闘開始前までです。一度始まってしまえば、通行証は役に立たないと言う事を」
 「それは仕方あるまい。あの通行証を手にしながら、ワイバーンと戦おう等と考える奴はおらんのが当然じゃよ」
 「そう言っていただけると助かります。それより彼ですが、現在は治療中です。お会いになられますか?」
 「うむ、頼むわい」
 アルビレオに案内され、奥の間へと通される近右衛門。そこにはシンジが静かな寝息を立てていた。
 「しかし、彼には驚かされました。私が助けに入った時、左腕はワイバーンに噛み千切られ、胴体には鉤爪の切り傷、全身無数の打撲痕でしたからね。彼に自己治癒能力が無かったら、今頃はあの世行きでしたよ」
 「・・・そうか。じゃが無事なら、それで良いんじゃ・・・」
 近右衛門の脳裏をよぎるのは、かつてエヴァンジェリンと交わした会話。『人間を辞めさせられた』という言葉が、近右衛門に複雑な感情を齎した。
 「今は疲労と緊張が原因で眠っているだけです。彼は若いですから、昼頃には自分の足で立って帰る事ができるでしょう。ところで、ナギの息子の事ですが」
 「うむ。すっかり意気消沈しておるようじゃ。自分が好奇心に負け、シンジの忠告を無視した事が原因だと反省しておるよ。二度と、このような事はせんじゃろう」
 「そう願います。私もあまり、外へは出たくないですからね」
 アルがスッと手をあげると、どこからともなく紅茶を取り出す。それを注ぎながら、アルは近右衛門に問いかけた。
 「私も貴方に訊ねたい事が有ります、近衛近右衛門。彼に何が有ったのですか?あの自己治癒能力は、我が旧き友エヴァンジェリンに匹敵します。何より、彼の顔だ。失礼だとは思いましたが、前髪を捲らせて戴きました。彼の顔は、碇ユイ博士にそっくりです。もしや、この子は・・・」
 「・・・そうじゃよ。シンジはユイ君の子じゃよ。15年ほど前、ユイ君はエヴァと話しがしたいと儂に頼みこんできた。その時、お主とも話しをしたんじゃったな。お主が大人しくさせたワイバーンに驚いて、ペタペタ触っておったのう」
 「ええ、良く覚えていますとも。真剣な顔でワイバーンの細胞片を欲しいと言われた時には、頭を抱えた物ですがね。まあ、今となっては楽しい思い出です。しかし、あの時の彼女が抱いていた赤子が、この子だったんですね」
 懐かしそうに、シンジに目を向けるアル。その瞳には、紛れもない慈愛の感情が込められていた。
 「アルビレオ君。正直に言うとな、儂はシンジに何が有ったのか聞いてはおらんのじゃよ。エヴァもそうじゃ。シンジの過去に何が有ったのか、それを知る者は麻帆良にはおらんのじゃよ。唯一の例外が有るとすれば、それはネギ君のクラスの生徒じゃろうな。若干ではあるが、昔の話をシンジがした事があるそうじゃ」
 「・・・私のアーティファクト『イノチノシヘン』を使えば、その辺りの調査は可能です。どうされますか?」
 「・・・頼む。儂としても、この子を救ってあげたいからのう・・・」
 その言葉に、アルが行動を起こす。『イノチノシヘン』を呼び出し、シンジの記憶を読み取ろうとし―
 次の瞬間、シンジの記録を宿した書物は、音も無く内側から弾けるように吹き飛んだ。
 「これは・・・アルビレオ君、どういう事じゃ?」
 「・・・推論です。証拠はありませんが、それでもよろしいですか?」
 『うむ』と頷く近右衛門に、アルは『あくまでも仮定ですが』と前置きして続けた。
 「これは一種の容量オーバーではないかと思います。アーティファクトは万能ではありません。どこかに限界があるものです」
 「うむ、それはそうじゃな」
 「私の場合、1冊の本に収められるのは、人間1人分の記録と上限が決まっています。もし彼の記憶が、1人分では収められないほどの物だと仮定すれば・・・」

麻帆良学園女子寮中等部―
 図書館探検部4人とアスナ、更にはネギとシンジに加えて茶々丸までもが欠席という状況に、3-Aでは様々な声が飛び交っていた。何より今朝食堂で朝食を摂ったメンバーは、シンジではなく茶々丸が厨房にいたのを目撃したのだから、尚更、首を傾げていた。
 「ふむ、確かに気になるでござるな」
 休み時間に刹那や真名と連絡を取り合った楓は、3人で昼休みに一度寮へ帰って様子を見に行こといこうと行動に移した。
 ところが寮へ戻ってみれば、アスナの部屋は通夜同然の重苦しい雰囲気である。ハルナと木乃香は泣き疲れて眠っており、茶々丸は無言のまま直立不動、そしてネギ達は俯いたままであった。
 「アスナ殿。何があったでござるか?」
 「・・・みんな、来たんだ・・・他の人には聞かれたくないから、ドア、閉めてくれる?」
 うむ、と頷くと鍵を掛けて中へ入る3人。やがてアスナの口から知らされた、早朝の出来事に、3人は言葉を失った。
 「・・・そういう訳だから、今は学園長の連絡待ちなの。木乃香達を置いて行く訳にもいかないから、今日は欠席したのよ」
 「何たる不覚か!これでは護衛の意味がないではござらぬか!」
 「楓。今の言葉はどういう意味だ?」
 「シンジ殿には内密に頼むでござる。実は、修学旅行の際に父上から任務を受けたでござるよ。内容はシンジ殿には気づかれぬように、シンジ殿を守れ、という物でござった。シンジ殿の実家である碇家は、400年に渡って甲賀一族の雇い主だったでござるよ」
 「・・・それのどこが内密にしなければならないのですか?問題なさそうに思えるのですが」
 刹那の言葉に、真名がもっともだ、とばかりに頷く。そんな2人に、楓は京都での一幕を思い出しながら答えた。
 「シンジ殿は、拙者が護衛する事を拒否したのでござる。詳しい事は教えて貰えなかったが、第3新東京市時代に何かあったのでござろうな。そうでなければ、大きな義務を課された子供の末路という物を身をもって理解している等とは言わぬ筈でござる」
 真名が『そうだったか』と呟く。そのまま視線をネギ達に向ければ、既に死んでいるのではないかと思うほどに、顔を青褪めさせていた。
 そこへインターホンが鳴った。アスナが表に出ると、そこには見慣れた老人が顎鬚を撫でながら立っていた。
 「遅れてすまんのう。上がっても良いかの?」
 「は、はい!」
 「ふぉっふぉっふぉ、失礼するぞい」
 学園長の姿に、一同の注目が集まる。
 「シンジじゃが、生存を確認した。現在は地底図書室の主の所で治療中じゃ」
 その言葉に、ネギ達ゆっくりと顔を上げる。
 「学園長!それは事実なのですね!?」
 「うむ。傷は深かったそうじゃがな。何せワイバーンに左腕を食い千切られた上に、袈裟がけに鉤爪の一撃、更には全身に無数の打撲痕じゃからの。彼がワイバーンを止めに入らんかったらと思うと、ゾッとするわい」
 ネギ達が、泣き笑いの顔を作る。子供達が反省し、苦しんだのは理解していた近右衛門
だったが、それでも言わねばならない事が有った。
 「ネギ君。今回の件は、君の身勝手な判断が原因であることは理解しておるな?それだけではない、綾瀬君や宮崎君まで巻き込んだのも、決して許される事ではない」
 「・・・はい」
 「ま、待って下さい!」
 のどかの叫びに、近右衛門が驚いたように顔を上げた。
 「ネギ先生は悪くありません!取引を名目に、ネギ先生に同行を強制した私達だって悪いんです!お願いです、責めるなら私達を責めて下さい!」
 「のどかの言う通りです!私達は、シンジさんの忠告を本気にしていませんでした。自分勝手な判断でウソだと決めつけて、行動に移してしまったんです!」
 「・・・例えそうだとしても、処罰せぬ訳にはいかんのじゃよ。ネギ君はの、今回で4度目の失敗じゃ。アスナ君への魔法の漏えい、シンジの殺害未遂、朝倉君への魔法の漏えい。それら全てを、シンジが内密に収めてきたんじゃ。アスナ君については、彼女の協力を取り付けてくれた。シンジの事件については、エヴァをも巻き込んで自分が悪戯者という汚名を着てまで事故を無かった事にしてくれた。朝倉君の件については、対処案まで示して確実な対応をしてくれた。儂自身、どこかネギ君が子供である事を免罪符のように感じておったのは事実じゃよ。じゃが、さすがに今回はそうもいかぬ」
 周囲に緊張が走る中、近右衛門は処分内容を口にしようとして、体が動かない事に気付いた。
 「ん、何じゃ?体が・・・」
 「お爺ちゃん」
 聞き覚えのある声に、一斉に視線が集まる。そこには息を切らしているシンジが立っていた。だが戦闘の後を示すかのように、上着はズタボロで左肩から先だけが無い。ジーパンも至る所がボロボロになっている。
 「シンジ!」
 「お爺ちゃん。確かに今回はネギ君が100%悪いよ。それは僕も認める。けどね、今の時点で処分を下している余裕はないだろう?何より、ネギ君は早急に力を着ける必要がある筈だ。違う?」
 「・・・では、シンジよ。お主はどうしろと言うんじゃ?」
 「ネギ君の杖を没収すれば良い」
 その一言に、ネギが凍りついた。
 「ネギ君が、あの地底図書室の主に認められるまで、その杖を預かるんだよ。ネギ君の致命的な欠点は、すぐ魔法に頼る悪癖だ。なら魔法の象徴である杖を預かり、しばらくは初心者用の杖を使わせれば良いよ。もう一度、魔法使いとしての基本的な姿勢を学び直す為にね」
 シンジの言葉に、近右衛門が考え始める。確かにシンジの言う事には、一理あった。仮に処罰を与えても、ネギがそこから何を学びとるかで、処罰の意味は大きく変わってくるからである。
 今回の件で、さすがにネギの暴走は収まるだろうが、それだけで終わっては意味が無い。そこより先へ進まなければならないのだから。
 「僕の提案は3つ。ネギ君だけの罰は杖の没収。3人への罰として、2つ目にお爺ちゃんによる、魔法の隠匿と残虐性についての講義。3つ目に向こう1ケ月の間、女子寮の清掃を手伝う事だよ」
 「魔法の残虐性、じゃと?」
 「そうだよ。魔法を『刺激的な対象』として見た事が、今回の事件の発端だ。なら、そうではない事を教えるべきだよ。魔法によるテロ、魔法による事件、魔法による事故。第2次大戦後に、広島や長崎を事例に核廃絶が叫ばれたように、悲惨な具体例を理解して貰う事で、魔法に対する憧れを無くし、悪用可能な技術である事を理解してもらう必要が有るんだよ」
 むむ、と呻く近右衛門。シンジの言い分には、悲惨な世界という現実を知る真名や楓も納得したように頷いた。
 「・・・よかろう。シンジ、お主の提案を受け入れよう」
 「分かって貰えて嬉しいよ、お爺ちゃん」
 その瞬間、近右衛門の体に自由が戻る。
 その感覚に、近右衛門は『今のはまさか?』と呟こうとしたが、それよりも早くシンジが動いてしまった為に、言葉を飲み込んでしまった。
 「3人とも聞いてたね?」
 「はい。シンジさん、すいませんでした。それから、学園長。お願いします」
 ネギが背中に背負っていた杖を、躊躇いがちに近右衛門へ差し出す。実父ナギの形見である以上、手放したくない思いがネギには有る。それを察したからこそ、近右衛門は『大切に預かるからの』とわざわざ声に出した。
 「私達が悪かったです。すいません」
 「すいませんでした」
 「反省してくれたなら良いよ。今回のミスを取り返す様に、頑張ってくれればね」
 夕映・のどか・ネギの頭をポンポンと叩くと、シンジは疲れたように、その場へ座り込んだ。
 「早乙女さんと木乃香が起きるまで、ここにいる事にするよ。神楽坂さん、悪いけど許可を貰えるかな?」
 「そうしてあげてよ。2人とも、見ていられないぐらい泣いてたんだから」
 「そうさせて貰うよ。それと心配させてゴメンね」



To be continued...
(2012.03.11 初版)


(あとがき)

 紫雲です。今回もお読み下さり、ありがとうございます。
 今回は久しぶりのネギの暴走を主軸に、シンジの秘密に周囲が触れる、と言った感じで書き上げました。近右衛門やアルビレオは、シンジが人間では無い事を理解する。少女達はシンジが自分達には教えたくない過去を抱えて生きている事を再認識する、と言った感じです。
 話は変わって次回です。
 エヴァンジェリンに正式な弟子として認められたネギは、弟子として修業を開始する。そんな中でアスナとの間に生じた亀裂は、冷戦と呼ぶべき物へと悪化する。
 そんな弟妹達の間を取り持とうとするシンジだが、夕映達の魔法使いになりたいという思いは消える事はなく、ますます頭を抱える事に。
 そんな感じの話になります。
 それでは、また次回も宜しくお願い致します。



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