正反対の兄弟

第六十七話

presented by 紫雲様


ネギside―
 墓守人の宮殿へ突撃したネギ一行は、救出組と脱出路確保組の2手に分かれると、即座に行動を起こそうとし―その足を止められた。
 パル様号とフライ・マンタ号の突撃で生まれた瓦礫の山。その山の頂上に、見覚えのある人影が立っていたからである。
 「貴女は・・・ザジさん!?」
 「呆けるな!あれはザジじゃない!世界間の行き来は不可能なんだぞ!」
 愛銃デザートイーグルを抜き打ちする真名。だが弾丸は、ザジそっくりの少女の眼前に張られた魔法障壁を突破出来ずに砕け散る。
 その間に、少女は悠然と1枚のカードを取り出した。
 「幻灯のサーカス」

 目の前でバタバタと倒れていく仲間達。それを前に、千雨が吠えた。
 「ザジ!てめえ、何しやがった!」
 「・・・これが幻灯のサーカスの能力。彼ら個人が望む幸せな世界へと誘う力。心の闇が深いものほど、抜け出すのは困難。その特性上、現実が充実した者には効きにくいポヨ」
 「ちょっと待て!それじゃあ、何で私に効かないんだ!私はネット世界の住人だぞ!いわば典型的な現実世界逃避型の人間であり、お前の言うリア充とは対極!それどころか、それを誇りにすら」
 「そう思ってたのは本人だけで、意外に充実していたんじゃないかポヨ?」
 がっくりと崩れ落ちる千雨。その口からは『私が佐々木と同レベル?』という呟き声が漏れ出る。
 「あ、あの、千雨ちゃん。それって私に失礼じゃない?」
 「気にする事は無いポヨ。無理やり、力づくで突き落とすという手もあるポヨ」
 ザジの指が伸び、剣のような鋭さを宿す。その危険性に、2人も慌ててアーティファクトを呼び出す。
 「ちっ!私じゃ戦力にならねえ!この役立たず!」
 「「「「「「「チウ様ごめんなさ~い」」」」」」」
 「私のリボンは便利なんだよ!?」
 「そーかい!そりゃあ良かったなあ」
 電子精霊七部衆とまき絵にツッコミを入れながら、千雨は考える。
 (あのガキがこの程度でくたばるかよ!その程度なら、私達はこんな所にまで来てねえってえの!)
 その瞬間、倒れていたネギが雷化しながら立ち上がる。目を丸くしたザジに指先の剣を突き付けられながらも、ネギはその一撃を掴み取りながら牽制の一撃を放っていた。
 「・・・どうして?」
 「初めまして。ザジさんのお姉さん」
 甲高い音とともに、一撃が交差しあう。直後、距離をとりあった2人は互いに顔を確認しあう。
 それに気づいたかのように、少女達も眠りから目覚めた。
 「そうか、我が妹の手引きポヨね?」
 「はい、そうです。でも、1つだけ教えて下さい。どうして貴女は、完全なる世界に与するのですか?」
 「昔馴染みに頼まれたからポヨ。ただ頼まれなくても、力は貸すつもりだったポヨ。なぜなら我々の組織の試算によれば、この魔法世界は最短で9年6ヶ月後には崩壊するという報告があったからポヨ」
 「9年6ヶ月だと!?」
 (無理だ!まだ数十年先だと思っていたのに、たったそれっぽちじゃあ)
 「良かった。まだそんなにあるんですね?・・・聞いているんだろう!フェイト・アーウェンルクス!全ての不幸の元凶は避ける事の出来ない魔法世界の崩壊!それを止めるプランが僕にはある!」
 その言葉に、千雨が『え?』と顔を上げる。
 「時間だけが問題だったんです。でもそれだけあるなら何とか出来ます!」
 「おいおい、マジかよ?」
 「マジです。予備検証も修行の合間に済ませてあります」
 「・・・信じられぬポヨ」
 叩きつけられた殺気に、振り向くネギ達。そこにいたのは、ザジとは似て非なる少女である。その背後には、女性の顔を中央にした正体不明の物体が浮かんでいる。
 「魔族」
 「その中でもラスボス程度には強いポヨ。ところで少年、君は本気ポヨか?」
 「はい」
 「いや、やはり10歳の子供の言う事を信じる訳にはいかないポヨ。それに私の予想が正しければ、君の選択は超鈴音の未来―破壊と血に満ちた未来へと通じているポヨ」
 少女達の視線が、一斉にネギへと集まる。
 「でしょうね、それぐらいは予想できました。でも問題はありません。だって、僕達は超さんの想いを知っています。だから、不幸を発生させない為に手を打つ事だって出来る筈です!」
 「ネ、ネギの言う通りよ!!未来は変えられる!だって、私達はそれを知ってるもの!」
 「2人の言う通りです。私達は変えられた未来を知っています。未来は確定されたものではありません」
 ネギに同調するように、アスナ=栞と刹那が口を挟む。更に畳みかけるかのように、夕映とハルナが声を張り上げた。
 「私達は歴史の分岐点を知っているです!その結果、自らの存在どころか世界の行く末すらも変化させた人を知っているです!未来は変えられるですよ!」
 「ゆえ吉の言う通りよ!あの人は、まだ戦ってる!私達を守る為に、あの人は今も生きているもの!あの人の未来が変わった事、それ自体が未来を変えられる証拠よ!」
 「なるほど、彼の事ポヨね。確かに報告は受けているポヨ。行方不明と聞いていたが、まだ活動していたポヨか・・・だが、やはり認める訳にはいかないポヨ」
 「みなさん、下がってください!ポヨさんは僕が!」
 ネギの言葉に、千雨が内心で『ポヨでいいのかよ、ポヨで』とツッコミをいれる。
 「待つんだ、ネギ先生。ここは私に任せて先へ行け。時間をかけてしまって、儀式を止められなくなる訳にはいかんだろう?」
 「龍宮隊長?」
 「だから隊長はやめてくれと・・・まあいい。ザジの姉がどれだけ強くても、使徒としての本性を露にしたシンジさんよりは弱いだろう。それなら何とか出来る」
 言い終えると同時に、ポヨの周囲に何かが跳ね上がる。反射的に迎撃するポヨ。その瞬間、ポヨの体に異様なまでの圧力がかかった。
 「超鈴音特製重力地雷。瞬間的に50倍の重力をかける地雷だ」
 ポヨの足もとに銃弾を叩きこみ、重力と合わせて足下を破壊する真名。落下するポヨ。その後を追いかけるように真名が続く。
 「さあ、行け!神楽坂とあの人が待っているぞ!」
 
完全なる世界コズモ・エンテレケイアside―
 墓守人の宮殿へと強攻突撃してきたネギ一行は、最下層部から中央部へと繋がる無限階段を駆け上がっていた。しかし、そこにはドゥナミスの操るクグツ兵が待ち構えている。その数、およそ2000。砦程度であれば、楽に占拠できるほどの戦力であった。
 ところがそれらを、ネギは雷化してはいるものの、単騎で殲滅していくのである。しかも足は決して止める事無く、ひたすらに上を目指して駆け上がる。その戦闘力の高さは、後ろに続く刹那や小太郎達が、逆に不安を覚えるほどであった。
 そんな光景を、アスナとアーニャは中央部に設置されたモニターから見つめていた。
 「・・・いつの間に、あんなに強くなっちゃったのよ、あいつ・・・」
 1つ年下の幼馴染の変貌した姿に、アーニャは口ごもると隣に立つアスナに目を向けた。そこには同じように呆気に取られるアスナがいる。
 「・・・ネギはアスナを助けたくて、ここに来ようとしているのよ」
 「私を?」
 アスナの脳裏を、思い出が駆け巡る。ネギが来てからまだ半年も経っていない。だがその思い出の大切さに、目頭に熱い物が込み上げてくる。
 「・・・馬鹿なんだから、アイツ・・・」
 「しかし、これほどの力を持つと分かっていれば、先に無力化しておくべきだったな」
 「!」
 背後から聞こえてきた、感情を抑えた声に2人は咄嗟に振り向いた。そこに立っていたのはデュナミスである。
 「お前達。敵混成艦隊の状況はどうなっている?」
 「それが、こちらの予想と違い戦線膠着状態です。こちらの戦力配置図をご覧ください」
 ピッという音とともに、ウィンドウが開く。そこにはメガロ・メセンブリア艦隊を前線に押し出した、混成艦隊の映像が映し出されていた。
 「敵の戦術は単純です。造物主の掟コード・オブ・ザ・ライフメイカーを持つ者の攻撃を人間を中心とするメガロ・メセンブリア艦隊が盾になりつつ、確実に撃破。その後方から魔法世界人勢力の艦隊による火力の集中による破壊力の相乗を引き起こす事によって、造物主の掟コード・オブ・ザ・ライフメイカーを持たない者達を纏めて撃破しています。それでも戦力差を考慮すれば、こちらが有利とは言えますが、敵の壊滅には予想よりも遥かに長い時間がかかるのは間違いありません」
 「まあいい。ところでテルティウム。私は直接、迎撃に出てくる。お前は儀式を進めておけ」
 「そうさせて貰うよ。お姫様、こちらへ来て貰おうか」
 歯噛みしながらも、アスナは素直にフェイトと調の後に続く。そんなアスナを守るように、アーニャも後に続いた。
 「さて、では・・・」
 「お待ち下さい、デュナミス様。奴らを倒す作戦があるんですよね?デュナミス様は大戦から唯一生き残っておられる、たった1人の最高幹部なんですから!」
 「そんな物、ある訳がなかろう」
 ピシッと固まる暦。焔や調も思わず、顔を強張らせる。
 「考えてもみろ。完全なる世界コズモ・エンテレケイア等と名前こそ勇ましいが、その実体はと言えばお前達のような小娘によって構成されているのだ。これでどんな作戦を立てろと言うのだ」
 「デュナミス様!?」
 「だが、誇るが良い。20年前、豊富な人材と経済力を手にした、全盛期の我々に出来なかった事を、お前達は成し遂げようとしている。それは事実なのだ」
 意外な褒め言葉に、少女達が目を丸くする。まさか誇り高いデュナミスが、自分達を認めていたとは露ほどにも想像していなかったのである。
 だから、その後の展開も予測出来なかった。
 「今度こそ、奴らに目に物見せてくれるわ!執拗に残党狩りをしてくれたタカミチやクルトに!人を無能呼ばわりしてくれたゲンドウに!」
 (((急に小っちゃくなった!)))
 「月詠、お前にも働いて貰うぞ!」
 「それはもう。お給料分ぐらいは働かせて貰いますえ♪」

隠密侵入組side―
 ズズン・・・ズズン・・・
 「ヒイッ!」
 目の前を歩く和美の首筋に、さよが恐怖のあまり涙を噴水の様に噴き出しながら抱きついた。その怖がりっぷりに、抱きつかれた和美は苦笑いするばかりである。
 だがさよが泣き出しのも無理は無い。
 なぜなら、彼女達の周辺には身長10m近い巨大かつ醜悪な魔族達が群れをなして行進の真っ最中だったからである。
 対する隠密侵入組はといえば、2人以外には小太郎・夏美・夕映・ベアトリクス・カモといったメンバーである。まともにぶつかれば、侵入組に勝ち目は無いと断言出来る程の戦力差でありながら、彼女達が行動できるのは偏に夏美の手に入れたアーティファクトである『孤独な黒子アディウトル・ソリタリウス』のおかげであった。
 使用者の存在を極限まで薄くできる認識阻害系のアーティファクト。これの恐るべき所は、体に触れていれば何人でも効果範囲の対象と出来る点である。その為に、夏美は隠密侵入組メンバーに抜擢されたのであった。
 「いやあー、マジで隠密活動には神の如きアイテムやで!」
 「そ、そう?」
 「このアイテムがあったら俺の仕事も楽になるやろなあ~。せや夏美姉ちゃん、俺の相棒にならへんか?」
 「え?」
 瞬く間に顔面沸騰する夏美。そこへ和美がコラコラと窘める。
 「一般人を裏稼業に巻き込まない」
 「夏美姉ちゃんもこっち来て随分と一般人離れしとるで?」
 「でも、どうして村上さんがこのアーティファクトなんでしょうねえ~」
 「そら、もともと影うすいからに気まっとるやんか。存在感の無い夏美姉ちゃんにはピッタリのアーティファクトやなあ」
 致命的な一言に、周囲の空気が凍りつく。夕映と和美は額に大粒の汗を作って、心配そうに夏美をみやる。ベアトリクスとカモは顔を手で覆っている。一方、さよだけは『私と同じなんですね~』と無邪気に喜んでいた。
 「バカーーーーー!」
 渾身の右ストレートが小太郎の顔面に炸裂する。吹き飛ぶ小太郎。一歩退く少女達。結果、全員の手が離れた。
 「「「「「「ぶも?」」」」」」
 「「「「「「あ」」」」」」
 ドドドドドと大音量とともに殺到する魔族達。慌てて逃げ出す侵入者組。
 「誰が影も胸も薄いのよおおおおおお!?」
 「誰もそんな事言ってへんわあああああああ!」
 「ちょっと村上!アーティファクト使ってよおおおおおおおお!」
 「きゃあきゃあきゃあきゃああああああああ!」
 「今頃、兄貴達がやべえ筈なんだがなあ・・・」
 「ラブコメやってる場合ではないです」
 「ユエさんの言う通りです」
 必死で逃げる一行。命のかかっている逃走劇である為、全員の速度は異常である。やがて魔族達の視界から外れた所でアーティファクトを使い直して再び隠密行動に戻る。
 「し、死ぬかと思ったです・・・」
 「勘弁してえな、夏美姉ちゃん」
 汗を拭いながら、先を急ぐ一行。しかし通路からは光源が少なくなり、ますます寂しげな雰囲気へと変化して行く。
 その変わり様に、先頭を行く夏美が呟いた。
 「本当にこっちで良いのかな?」
 「この先の部屋に捕らえられとる筈や。それより先を急ぐで。本当ならさよっち姉ちゃんに先を確認してきて欲しい所やけど、1人で行かせるんは危険すぎる。敵は最強レベルやしな」
 「お気遣いスミマセン~」
 敵地へ侵入している割には、緊張感があまり感じられない一行は足を止める事無く先へと進む。そんな時だった。
 「しっ!静かにです!何か来るです!」
 夕映の警告に、足を止める一同。やがて闇の向こうから、コツコツと言う足音が聞こえてくる。
 「ふぇーと!?」
 「アホ!叫ぶなあ!」
 「らめれすう~!」
 悲鳴を上げた夏美の口を、慌ててさよが塞ぐ。だがフェイトは悲鳴などまるで聞こえていないかのように、無表情のまま歩き続けていた。
 「・・・ひょっとして気付いていないの?」
 「そうらしいな・・・見事なアーティファクトやで、夏美姉ちゃん。それより、絶対に手え離すなや。離したら終わりや。俺も全員は守れん」
 すれ違うフェイト。少女達の緊張は最高潮に達していく。特に夏美は全身を恐怖と緊張で激しく強張らせた。
 そしてフェイトが小太郎の真横を通り過ぎようとすると同時に、小太郎の気が凝縮された左の手刀がゆっくりと持ちあがっていく。
 「何をするつもり!?」
 「殺れる!やるなら今や!この距離なら確実に!」
 「待てコタロ!俺達の役割はアスナ姐さん達の救出だ!それを間違えるな!」
 全員の制止の叫びが上がる。だが小太郎は手刀を振り下ろそうとし―凍りついた。
 そんな小太郎達に気付く事無く、フェイトはその場を立ち去る。
 一方の小太郎はと言えば、荒い息を激しく繰り返すばかりであった。
 「・・・アカン、手を出したらこっちがやられとった・・・完全有利な奇襲やのに手も出せへんとは・・・」
 「手を出さなかった、いや違うね?手を出せなかったんだね?」
 「ああ、悪いな無理やった。今の俺では相手にならん、悔しいがネギに任せるしかないわ」
 ギリッと歯軋りすると、小太郎は本来の目的達成の為にアスナ達が捕らえられている部屋を目指して歩き出した。

強行突撃組side―
 無限階段を登り終えたネギ一行。その奥に待ち構えていたデュナミス達を前に、さすがに足を止めざるを得なかった。
 「ようこそ、次代の子等よ」
 多少芝居がかったデュナミスと同様に、月詠も全身リラックス状態である。それとは対照的に暦・焔・環の3人は険しい表情であった。
 そしてデュナミスが言い終えた瞬間、雷化状態のネギが姿を消す。同時に電光の速度でデュナミスの前に現れたネギは、挨拶代りとばかりに強力な魔法障壁破壊の能力を持った一撃を叩き込んだ。
 一瞬にして砕かれる多重魔法障壁。その破壊力に危険を感じたドゥナミスが即座に反応し、造物主の掟コード・オブ・ザ・ライフメイカーを発動。無数の影の槍を放ってネギを迎撃する。
 正面からまともにカウンターを喰らったネギは、身体その物が雷化していた影響も有り、致命傷とはならずに済んだ。
 「なるほど、テルティウムが認めただけの事はあるようだな。しかし、世界の命運を賭けた戦いに傍観者を気取る者がいる事は面白くないな・・・造物主の掟コード・オブ・ザ・ライフメイカー
 直後、楓の『天狗之隠蓑』に電撃が走る。同時に中に隠れていた戦闘力を持たない少女達全員が、ドサドサドサッと音を立てて転がり落ちた。
 「アーティファクトへの強制干渉!?」
 「やべえぞ!無理矢理、外に押し出された!」
 「それってラスボス戦で育てていなかった遊び人と商人もバトルに強制参加って事!?そらマズイ!」
 更に月詠・焔・環が一瞬で間合いを詰めて少女達を捉える。
 「貴様等の様な役立たず、消し炭にしてくれる」
 「一緒に楽しみまひょ❤まずは」
 走る剣閃。煌めく眼光。
 死神に捕らえられた筈の少女達だったが、月詠の木乃香を狙った一撃は刹那に食い止められ、焔の発火能力はネギの一撃により狙いを大きく外す。
 「仲間はやらせません!」
 「お嬢さまには指一本、触れさせない!」
 たちまち始まる戦闘。刹那は月詠を相手に激しく斬り合い、ネギは焔を相手に殴りかかる。
 しかしネギの不意を打つかのように、巨大極まりない尻尾がネギを襲う。その一撃を食い止めたネギは、尻尾の持ち主―環の姿を捉えた。
 「竜族!・・・これは、身体が!マヒ?いや、違う!」
 鈍くなる身体。ネギの身体は明らかに動きが鈍っている。
 「任意の空間への時間干渉!時間遅延、時間停滞!」
 ネギの時間を止めたのは、暦のアーティファクト『時の回廊ホーラリア・ポルティクス』である。更にそこへ、全身を炎に包みこんだ焔が近づいていく。
 「フェイト様はやらせない!」
 ネギにトドメを刺そうとする焔。そこへのどかが飛び込み、焔を突き飛ばす。予想外の攻撃にカチンと来た焔は、先にのどかを始末しようと視線を向け―僅かに一瞬早く、裕奈のアーティファクト『七色の銃イリス・トルメントゥム』による精霊化解除弾により強制的に炎を吹き散らされてしまった。
 「焔!・・・へ?」
 自分のアーティファクトに、何かが絡みついた事に遅ればせながらに気付く暦。
 「自在なリボンリベルム・レムニスクス!」
 まき絵の手に落ちる『時の回廊ホーラリア・ポルティクス』。同時にネギが時の束縛から解放される。仕方なくアーティファクトを消して再度仕掛け直そうとする暦だったが、そこに『神珍鉄自在棍』による古の追撃を受けてしまう。更に竜化しかけていた環へは、楓が符をつけた鎖で包み込み、大爆発に飲み込ませていた。
 湧きあがる歓声。だがその歓声も、一瞬で静まり返った。月詠を押さえていた刹那が、派手に吹き飛んでいたからである。
 「力の為に魔に身を委ねるか!月詠!」
 「闇と魔で力を増幅しとるんはネギ君も同じですやろ・・・一瞬千撃・弐刀黒刀五月雨斬り!」
 漆黒の妖刀・ひなを手に襲い掛かる月詠。防戦一方に追い込まれる刹那。介入しようとするネギだったが、その眼前にデュナミスが舞い降りる。
 「余所見をしている暇があるのか、少年よ。フン!」
 デュナミスが気勢を上げる。それと同時に、デュナミスのローブが全て吹き飛び、筋肉質の体が露わになった。
 ((((((変態だ))))))
 この予想外の展開に、少女達は無言で顔を赤らめる。中学生の少女にとっては、色々と刺激的な物を目撃してしまったのだから、凍りつくのも無理は無い。
 「少年よ。君には父と違い、代案があるようだ。それは良い。だが我々の間に歩み寄りの余地は無い」
 「どうしてですか!」
 「私にも悪の秘密組織幹部としての矜持がある。語りたくば拳で語れ」
 デュナミスの全身に闇が纏われていく。その身体は、巨大な双腕を生やした漆黒の巨体へと変化した。
 そして剛腕から放たれた一撃がネギを捉え、一瞬で壁に叩きつける。更に追撃を仕掛けるデュナミスだったが、一瞬早く楓が割り込んで食い止めた。
 「楓さん!」
 「ここは拙者が!ネギ坊主は先に行くでござるよ!」
 「さて、そう簡単にいくかな?」
 余裕たっぷりのデュナミス。そんなデュナミスに同調するかのように、暦が獣化を、環が完全竜化を行い、焔は精霊化を解除されながらも戦闘意欲は失われてはおらず、再び戦線へと舞い戻った。
 「負ける訳にはいかない!」
 「ちっ!奴ら本気だぜ!」
 「心配いらないアルね!ここは私に任せるアルよ!」
 古が3人の中央に突撃して乱戦状態へと持ち込む。本来なら戦いになどなる訳が無いのだが、それでも戦いが成立しているのは古の実力の高さであった。
 元々中国武術の跡取り娘として自らを鍛え上げてきた古は、麻帆良に来てからも果たし合いという名の戦闘を嫌と言うほど経験してきている。それも1対1ではなく、1対多数という異常極まりない果たし合いである。その時点で真名をして『一般人最強の部類』とまで言わしめていたにも関わらず、更に気を習得した上に、魔法世界に来てからは用心棒として犯罪組織を壊滅させてきたのだから、古の実力は並外れた物であると言えた。
 それほどの実力者だからこそ、フェイト直属の少女達を相手に1対3という戦いが成立しているのである。しかし、無理があるのは否めない。
 徐々に追い込まれていく古。その苦戦する様子に、木乃香が心配そうに呟く。
 「アスナ、何かうちらにもでけへんの?」
 「せめて私が本物ならハマノツルギで炎娘の相手ぐらい出来たんだけど・・・」
 「出来る事あるでー!来れアデアット!」
 猫耳をつけた、基本はナースらしい姿に変じる亜子。その両手には、巨大な注射器が握られている。
 「うちの能力はサポート系!ここが使いどこや!」
 「なるほど、補助魔法か!それで、どうすんだ!?」
 「手順は簡単や。この濃縮還元ドーピング魔力スープをお尻にプスッと刺すだけや」
 シーンとなる少女達。ただ1人、裕奈が亜子に近づいて針の太さを目算で測る。
 「・・・こんな太いの刺すの?直径2cmぐらいあるよ?」
 「そうや!お尻にプスッと刺すだけや!」
 「いやああああああ!」
 脱兎の如く逃げだす裕奈とまき絵。その後を亜子が『怖くない!痛くない!』と叫びながら追いかける。
 「しまった!1人行ったアル!」
 そんな少女達に警告の叫びを送る古。だが少女達はそれどころでは無い。
 「あの太さヤバイでしょ!死んじゃうわよ!?」
 「我慢やアスナ!ネギ君の為や!アスナの為や!」
 背後から親友を羽交い絞めにする木乃香。いつになくアグレッシブである。
 「行くで!」
 「「「ぎゃん!」」」
 「何を遊んでいるかあああああ!」
 黒豹化した暦が、人間の目には反応しきれない速度で亜子へと襲い掛かる。立ち竦む亜子。だがそんな亜子を、真横から放たれた銃弾が暦に命中して弾き飛ばした。
 「何!?獣化した私の速度に!?」
 驚きで身体を硬直させる暦。そこへアスナ=栞が偽ハマノツルギで、まき絵が巨大な棍棒で全力の一撃を叩き込む。
 石造りの床を軽々と砕き割る程の一撃を、紙一重で避ける暦。だがそこへ裕奈の追撃が決まり、強制的に距離を取らされる。
 「バカな!魔力ドーピングだけで!?」
 「ネギ君!いけるよ!任せてちょうだい!」
 自分達でも何とかなる。希望を見出した少女達が気勢を上げる。
 「ネギ坊主!行くでござる!最後の鍵を奪取するでござるよ!」
 デュナミスを爆炎の中に叩き込みながら楓が叫ぶ。それに頷くと、ネギは杖にのどかと千雨、アスナ=栞を乗せて舞いあがった。
 「行きます!」
 高速度で飛び立つネギ。だがもう少しで戦場から抜け出られるという所で、進行方向に闇が生じ、ネギ目がけて何かが飛び出した。
 雷化で回避する事は可能。だがそれをやれば、後ろにいるのどか達が犠牲になる。
 ネギは即断した。雷化はせずに、自らの身体を盾とする事を。
 結果、闇はネギの腹部を貫通。そのまま石畳へと激しく叩きつけた。
 「ネギ先生!」
 慌てて駆け寄る少女達。ネギが致命傷を負ったと判断した木乃香が、躊躇いなくアーティファクトを呼び出して治療に取りかかろうとした時だった。
 瀕死のネギの身体から、膨大な魔力が放出され始める。同時にピキピキッという音とともに、身体その物が闇に包まれながら変異し始めた。
 両目は白一色に染まって瞳が消える。皮膚は漆黒に染まる。こめかみから長剣のような鋭い角が生え、肩からは硬質の翼の様な物体が生える。四肢の先端は巨大かつ鋭い鉤爪へと変じ、文字通り『魔人』と呼ぶに相応しい姿へと変じた。
 咆哮とともに逆襲に転じるネギ。その圧倒的な戦闘力に、防戦一方に回らざるを得ないデュナミス。
 だがデュナミスを驚かせたのは魔人化した事ではなかった。ネギの戦闘スタイルである『闇の魔法マギア・エレベア』に心当たりがあったからである。
 「この技、まさか我が主の技法に連なる?いや、馬鹿な!そんな筈がある訳が無い!」
 
シンジside―
 突如感じた禍々しい気配にシンジ達は足を止めてしまっていた。
 「この気配・・・まさかネギ君がここにいるのか!?けど、どうやって!」
 「ネギ坊主、しかも闇に呑まれているのカ?」
 「ちょっと、どうするのよ?これは計算外よ?」
 流石に考え込むシンジ。シンジにとってネギは弟同然である。だからすぐにでも助けに行きたいのは事実である。
 しかし、今から向かっても間に合わない事も事実であった。そもそも、こうなる前に全てを終わらせるつもりだったのだから。
 『我が主よ。許可さえ戴ければ、私だけでも彼の所に向かいますが?』
 「・・・いや、ここはネギ君の闇との相性の良さに賭けよう。ラカンさんが言っていた。ネギ君は闇と相性が良いって。それなら、ネギ君にもまだ望みはある。それにネギ君は1人じゃない」
 「そうね。あの子は1人じゃないものね」
 
ネギside―
 暴走するネギを前に、デュナミスは成す術が無かった。速さは元より、膂力も魔力もネギの方が圧倒的に上なのである。
 黒い雷を纏ったネギの猛攻に、デュナミスは下半身を千切られ、戦闘どころか生存すら危うい所にまで追い込まれていた。
 しかし、その顔は笑っていた。
 「さあ、私を殺すがいい。それで君は闇へと堕ちる」
 「デュナミス様!」
 わが身を盾に、割って入る焔。だがネギの鉤爪は躊躇う事無く振り下ろされる。
 死を覚悟し、目を閉じる焔。しかし痛みはやってこなかった。
 目を開いた焔は言葉を失った。何故なら、目の前に自分を庇った栞が崩れ落ちようとしていたからである。
 「栞!」
 「うあ?・・・あああああああ!」
 鮮血に彩られた漆黒の鉤爪。それを目の当たりにしたネギの口から、咆哮が上がる。
 「よくやった栞。これで彼は堕ちる」
 「そうはさせんでござるよ!」
 暴走を続けるネギを食い止めようと、楓が後ろから羽交い絞めにする。更にのどか・まき絵・古が次々に飛びついて、必死でネギを抑えようと呼びかける中、木乃香が栞に向かって走りだした。
 「ウチが栞さんを治す!ネギ君を闇なんかに堕とさせへん!」
 だがネギは止まらない。それどころか内から漏れ出る魔力は強まり続け、やがて少女達の口からも苦悶の声が漏れだした。
 「落ちつけ、馬鹿者」
 パアン!という音とともに、千雨の平手がネギの頬を叩く。反射的に角で反撃したネギだったが、その先端は千雨の右頬を切り裂いた。
 だが千雨は傷を押さえようともせずに、ズイッとネギに近付く。
 「良く見ろ、慌て者。あいつはまだ大丈夫だ」
 栞は生きていた。ネギの鉤爪は、栞の脇腹を掠めるだけで済んでいたのである。
 「かすり・・・傷です・・・ネギさんは直前で攻撃を逸らしてくれました・・・」
 「・・・あ」
 ネギに現れていた異形の姿が、徐々に消えて行く。やがてドサッという音とともにネギは地面へと倒れ込んだ。
 だがその体は、まるで石膏像の様に真っ白に変わり、手足にはひび割れが走っている。
 咄嗟に木乃香がアーティファクトで治そうとしたが、アーティファクトは全く反応を見せなかった。
 「アカン・・・体温もめっちゃ低うて、呼吸も鼓動も弱い・・・意識も戻らへんし、まるで仮死状態や・・・」
 「動かしてはいけませんわ。恐らく、闇に呑まれる寸前の所を、危うい均衡を保っているのだと思われます」
 「この前みたいに、私達が手を握ってあげたらどうかな?」
 「うむ。恐らくはそれが最善の選択肢でござろうな」
 ネギを助ける為に、知恵を絞る少女達。だがそこへ、焔が叫んだ。
 「栞!貴様、何故その少年を助けた!カグラザカアスナの替え玉役とスパイが、お前の役目だろう!私達を裏切る気か!」
 それには暦や環も理由を知りたいのか、亜人の姿へと戻ってウンウンと頷く。
 「今から説明しますわ。まず私達の目的は世界のリライト、でしたわよね?そしてフェイト様が計画を急がれていたのは、魔法世界崩壊の危機が近づいていたからです。でも、その崩壊を食い止める手立てがあるとすれば、どうですか?」
 「それはもう聞いた!だが子供の言う事等、誰が信じる!」
 「ですが、もし本当だったとしたらどうしますか?ネギさんはフェイト様もお認めになるほど稀有な人なのですよ?」
 むぐ、と口籠る焔達。
 「だが本当ならどうだと言うのだ!例え世界崩壊を免れたとしても、この世界の仕組み自体は何1つとして改善されないまま!私達の様な戦災孤児も減りはしない!」
 「まあ、それはその通りなのですが、何で1つ1つ問題を解決していくのではいけないのでしょうか?まずは世界の崩壊を食い止める。それが終わったら、私達の様な戦災孤児を減らす様な世界の仕組みを作り上げる。確かにフェイト様が進める計画であれば、一瞬で問題は解決します。ですが、その犠牲が大き過ぎるのも事実です」
 「栞!世界の仕組みを作り上げるなんて不可能に決まってる!第一、どうやって!」
 「それがその・・・もしかしたら可能かもしれないんですよね」
 シーンと静まり返る少女達。激昂していた焔も、思いがけない発言に目を丸くする。
 「実は、ここへ来る前にネギさんと話をさせて頂きました。その中で魔法世界救済の策がある事は聞かせて頂いたのですが、もう1つ、重要な事を教えて頂いたのです。ネギさんが兄と慕う方なら、それが可能になるかもしれないんです」
 「お兄ちゃんが!?」
 「ええ、そうです。貴女のお兄さんは、連合、帝国、アリアドネー、バウンティハンターギルドと、4つもの巨大な組織に強力なコネクションを持っています。それも彼の言う事を真剣に考えざるを得ないほど、強力なコネクションです。ネギさんは、貴女のお兄さんを通じて4つの組織に共同歩調を取らせる事を考えていたんですよ」
 ネギの考えは、4つの巨大な組織による紛争防止の為の合同組織を立ち上げるという物だった。
 「加えて、ネギさん自身の功績も加味すれば、各組織が拒絶する事は不可能に近いでしょう。私はかなり現実味のある計画だと判断しました」
 「・・・いや、やっぱり私は信じられない!貴様を裏切り者として」
 「待て焔。手を出す必要は無い。どちらにしろ、我々の勝ちに変わりは無いのだ」
 背後から聞こえたデュナミスの声に、焔が振り向いた。僅かに遅れて、全員の視線が上半身だけとなったデュナミスへと集まる。
 「彼を堕としきれなかったのは事実だが、どちらにしろ戦力にはなりえない。そして彼女達には、アーウェンルクス・シリーズに対抗するだけの切り札も無い。その上、黄昏の姫御子も最後の鍵グレート・グランド・マスターキーもテルティウムが守っている。私1人と引き換えの勝利なら安い物!今回ばかりは我々の勝ちだ!」
 高笑いするデュナミス。だが少女達の目に諦めの色は浮かんでは来ない。それに気付いたデュナミスが口を開きかけた時だった。
 「とりあえずデュナミス殿には最上級の魔物相当の封印を受けて頂くでござる」
 「・・・ふむ、だが封印は困るな。どうせなら君達の足掻く様を観劇させて貰いたい。不戦を強制契約しても良いが?」
 「それならば、魔法具はこちらの用意した物を使わせて頂くでござるよ。それからそちらの3人だが、大人しくしているのであればこれ以上は攻撃しないでござる」
 「良かろう。焔、暦、環、ここから先は決して手を出すな」
 デュナミスの不戦命令に、焔達が歯軋りしながら頷く。その間にデュナミスへの不戦の強制契約を結ばせると、楓達はすぐに事後策の相談に取りかかろうとした時だった。
 「おおーい、無事かー!」
 「見つけました~!」
 カモとさよが、渡鴉の人見オクルス・コルウィヌスに乗って姿を現す。だがネギの状況を見ると、カモは悔しげに地面を叩いた。
 「最悪の展開だ!アスナ姐さんはフェイトに攫われちまってたし、兄貴はリタイヤしちまうし!」
 「神楽坂が攫われた、だと?」
 「はい~。私達はアーニャちゃんを見つけたんです~。でもアーニャちゃんが言うには、アスナさんだけがフェイトに連れて行かれたそうです~」
 アスナ救出に失敗した事を知った千雨が、チッと舌打ちする。
 「・・・おい、デュナミスさん。アンタなら神楽坂が何処へ連れて行かれたのかぐらい知ってるんじゃねえのか?教えてくれなけりゃ、宮崎に心を読ませるぜ?」
 「まあ、それぐらいなら話してやろう。儀式の場である、墓所の上層外部にいる筈だ。20年前とは場所が違うが、お前達には関係の無い事だな」
 「随分と素直じゃねえか、おっさん」
 「今回ばかりは我々の勝ちだからな。諸君らがどう足掻くか興味があるだけさ」
 手に入れた情報を基に、喧々諤々の論争を始める少女達。アスナの異能無効化能力を前提とした、アスナ救出プランを練り上げていく。
 そんな中、通信を利用して夕映や茶々丸達も作戦に参加し、遂に最終作戦が完成した。
 「・・・1つ訊ねたい。その少年がリタイヤしたのは現実だ。なのに何故、希望を失わない?まさかテルティウムに勝てるつもりか?」
 「馬鹿言ってんじゃねえ、誰がガチであんな化け物に勝てるって言うんだよ。おっさん、アンタにゃ悪いが切り札ってのは1つとは限らないんだぜ?」
 「千雨殿の言う通りでござるよ。では、行動開始でござる」
 作戦に従い行動を開始する少女達。ネギの下には千雨、木乃香、アキラ、亜子、古が残る。
 「さてと、それで手で触れば良いんだな?」
 「そうや」
 「ったく、世話焼かせやがって。あの悪党といいコイツと言い、どうしてこうとんでもねえレベルで迷惑かけやがるんだ」
 それには否定の言葉が浮かばないのか、木乃香達が苦笑いする。そんな少女達にドゥナミスが視線を向ける。
 「ところで、そろそろ君達の切り札とやらについて教えて貰いたい物だが?」
 「せいぜい、楽しみに待ってな。アンタら描いた脚本。それをぶち壊してやるからよ。私達も驚いたんだ、お前達も驚けばいいさ」

シンジside―
 小さくクシャミしたシンジは、軽く首を傾げていた。
 「うーん、参ったなあ。これは僕の考えが甘かったみたいだ」
 「どうしたのよ?」
 「20年前と儀式の場所が変わっているみたいなんだ。ちょっと調べ直してみるよ」
 羅盤を取り出して、魔力の流れの調査を始めるシンジ。やがて、その顔が徐々に険しくなっていく。
 「マズイな、魔力の流れが20年前と全然違う。流れ込む先は、もっと上みたいだ。何でネギ君と言い儀式の場と言い、こうも裏目に出ちゃうのかなあ」
 「シンジ、急ぎましょう。愚痴を言っても始まらないわ」
 「そうだね、急ごうか」



To be continued...
(2013.01.05 初版)


(あとがき)

紫雲です。今回もお読み下さり、ありがとうございます。
 相変わらず擦れ違い一直線なシンジ一行とネギ一行。更には儀式の場所が20年前と違うという状況に、シンジの目論みは崩れ捲っていますwしかもシンジはやっとネギがいる事に気付く始末。もう踏んだり蹴ったりと言った感じです。
 まあシンジの考えが甘かった、と言った所でしょうか。栞に関しては、シンジは全く情報を持っていなかったのですから、仕方ないと言えば仕方ないんですけど。
 話は変わって次回です。
 戦力外となったネギを置いて、アスナ奪還作戦を展開する少女達。だがネギ不在の穴は大きすぎ、結果として作戦は失敗。個人戦闘力の差により、瞬く間に戦闘不能に追い込まれていく。
 そんな中、麻帆良においても異変が起き始める。ウェールズから帰還した少女達を待ち受けていたのは、現実世界に姿を見せ始めた魔族達の姿。
 そんな感じの話になります。
 最終話まで残り7話。エピローグで1話。合計8話で終わりとなる正反対の兄弟、最後までお付き合いお願い致します。
 それでは、また次回も宜しくお願い致します。



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