第七十三話
presented by 紫雲様
目の前で繰り広げられる激戦。当初は人数差で、ネギとシンジは負けるに違いない。何だかんだ言って優しい2人だから、手加減するだろう。そう少女達は思っていた。
ところが蓋を開けてみればそれは全くの誤りだった。
まき絵、裕奈、高音、小太郎、茶々丸、ハルナ、古の7人が退場。未だ立っているのは刹那、木乃香、夕映、のどか、楓の5人だけ。しかも内2人は、直接戦闘能力は0と言ってもおかしくない。
最早、戦局は少女達に不利である。楓は雷化ネギと1対1の戦いを強制されており、自分の身を守るだけで精一杯という状況。刹那達はシンジの手の内を次々に暴いた代わりに、戦力を激減されて一進一退という状況である。
「うっひゃあ、まさかこんな状況になるなんて、想像出来なかったッス」
「まあ刹那や楓達が、ネギ先生達を甘く見たのが原因だ。自業自得だよ」
「クールだねえ。龍宮さん」
美空と真名のやり取りに、口を挟む和美。カメラを手にパシャパシャと撮っているのは、記者魂なのかそれとも小遣い稼ぎ目的なのかは、今の所不明である。
「それにしても、ネギ先生強いわねえ」
「そうだよねえ。まさかウルティマホラチャンピオンの古菲と、筋肉質のにーちゃんを呼び出す早乙女と、長瀬さんが相手になってないんだもんねえ」
「うう、どっちを応援すれば良いのよ~」
チア部3人娘がぼやく中、その隣では茶々丸の応急修理が行われている。
「すみません、ハカセ」
「茶々丸が謝る必要はないのよ。寧ろ、謝るのは私なんだから。シンジさんのトラップについて、私は知っていたんだし。でも教える事は出来なかったの。ごめんね」
「今回は仕方無いネ・・・済まないが、そこのマイナスドライバーを貸して欲しいネ」
「こちらで良いですか?どうぞ」
古以外の超包子メンバーによる応急修理は順調に進んでおり、茶々丸に後遺症が残る事もない。結果、超達の表情は明るい物がある。
「「ネギ先生も楓ねえも、頑張れ~!」」
「・・・ネギ先生に頑張ってほしいけど、そうすると長瀬さんが・・・」
「・・・怪我だけはしないで・・・」
無邪気な双子姉妹の隣で、苦渋の表情を浮かべるアキラと亜子。その肩をポンと後ろから、千鶴が叩く。
「これはテストなんだから、そこは割り切るしか無いわよ。心配なのは当然だけどね。そうでしょ?夏美ちゃん」
「うええええっ!?何で私!?」
「・・・堂々と膝枕で手当てしている状態で、何か言う権利があると思っているんですか?村上さん」
あやかのツッコミに、小太郎を膝枕した状態でワタワタと慌てだす夏美。その後ろでは千鶴がクスクスと笑っている。
「近衛さんの方はどうなるんでしょうか?綾瀬さんの竜巻に閉じ込められちゃいましたけど」
「・・・あの不気味寮監だからなあ。竜巻に閉じ込められた事をこれ幸いと、何か企んでてもおかしくはねえな」
「否定出来ませんわね」
愛衣と千雨のやりとりに、同意せざるを得なかったのは気絶から目を覚ましていた高音である。
麻帆良武道大会での雪辱戦を期していた高音は、今度こそシンジを倒そうと強い決意を秘めて参加していた。その決意が届く事無く敗北を喫したのは、彼女にしてみれば悔しい事この上ないのは事実である。だがその表情には暗い感情は無く、いつかリベンジを果たしてやるとばかりに、瞳には強い意志が宿っていた。
そんな彼女達の前で、遂に戦局が大きく動き出した。
内側から破られる竜巻の牢獄。
それが消えた瞬間、1人の少女が動いた。
轟轟と音を立てる竜巻を前に、夕映は策を用意すると、その時を待っていた。
(・・・準備は万端・・・あとはタイミングだけです!)
やがて、内側からかき消される竜巻の牢獄。シンジが破術を用いたのは、誰の目にも明らかだった。
「風花武装解除 !」
夕映の叫びとともに、あらゆる武装を解除する魔法の風が襲い掛かる。
(そう、この時が最大のチャンスです!シンジさんの左腕の糸は、竜巻に巻き上げられて使用不可能。右手の破術は使ったばかりで、連続使用は出来ない。だから、この瞬間だけは、シンジさんは私の魔法を無効化出来ないです!)
少女に浮かぶ、勝利の笑み。そして絶対的なチャンスを悟った刹那が、夕凪を手に最大速度で間合いを詰める。
夕映の武装解除魔法を無効化出来ず、まともに正面から魔法を受けるシンジ。狩衣は元より、懐に隠していた符や人形使いの為の糸、そして様々な事態を想定して用意していたトラップ用のアイテムが吹き飛んでいく。
褌1枚となったシンジの姿に、顔を赤らめる少女達。だが戦士として多くの実戦経験を積んでいた刹那は、攻撃の手を緩める事無く振り被った。
「こちらの勝ちです!」
勝利を確信する夕映。誰もがシンジの敗北を確信した。
その時だった。
「・・・え?」
小さいが、思わず呟いたのはのどかだった。彼女の視線が捉えたのは、自身のアーティファクトに書き出された一文。
『切り札は最後まで見せない事』
この文章が何を意味するか、理解出来ないのどかではない。咄嗟に警告しようと顔を上げた時には、既に勝負は着いていた。
鈍い音とともに吹き飛ぶ有翼の少女。勢いを殺す事も出来ないまま、刹那は数メートル吹き飛ばされると、呻き声を上げながら床へと崩れ落ちた。
それを為したシンジは、刹那へ決めた崩拳の構えを静かに解く。
「せっちゃん!」
慌てて駆け寄ろうとする木乃香。だが彼女が駆け寄るよりも早く、木乃香の喉元にシンジの手刀が突きつけられる。
「これで2人撃破。異論はある?」
「いや、無いな。近衛木乃香、刹那に治癒魔法をかけたら2人揃って退場だ。いいな」
エヴァンジェリンの判定に愕然とする少女達。まさかの事態に、少女達の頭脳が着いていけない。
間近で起こった予想外の事態。必勝を確信した作戦が完璧に崩された状況に、夕映が絞り出すような声を出した。
「どうして・・・完全に不意を突いた筈だったです・・・あの状況から、人形使いを封じられた貴方に・・・打てる手は無い筈です・・・」
「おでこちゃん。確かに僕の弱点は幾つかある。中でも武装解除は特に致命的な攻撃だ。それは麻帆良祭の一件で、僕自身が認めている。でもね、君達にとっては数ヶ月前でも、僕にとっては3年も前の事だ。当然、弱点を潰す方法ぐらいは用意しているよ」
「!」
今更ながらに誤算に気づく夕映。
時間の隔たり。それを計算に入れていなかったのが、彼女のミスだった。
「で、ですが、どうやって!格闘技術を習っていたとでも言うですか!」
「いや。人形使いの技術の応用だよ。竜巻へ閉じ込められるまでの僕が使っていたのは自分自身を操る人形使い。あれはデメリットの無い技。本当の切り札を伏せておく為の目くらましにすぎない」
足元に落ちていた狩衣を着るシンジ。そのタイミングで治癒の術での応急手当が終わった刹那が、悔しげに顔を上げる。
「人形使いは糸使いだ。そして糸の材質は、人形使いには関係ない。それなら、体の中にある神経という名前の糸を使えないか?そこから思いついた技だよ」
「神経!?」
「本来なら、脳からシナプスが走り、神経を通して指先に指示を送り、指から気を込めた糸を操作するという工程が必要になる。でも神経を糸に見立ててシナプスではなく気を送れば、2つの工程が省かれる。これだけでは体を操るだけだ。でも僕には完全記憶がある」
シンジには格闘の才能が無い。それが事実だったからこそ、詠春は神鳴流をシンジに伝授する事を諦めた過去がある。
だがシンジはそれを覆す方法を編み出していた。それが神経を糸に見立て、完全記憶と組み合わせた切り札だった。
「効果は見ての通り。弱点は神経に負担がかかりすぎて多用出来ない事。今の僕でも5秒保てば良い方だからね。それ以上使えば、多分、僕でも廃人になっちゃうだろうから」
両刃の剣とも言える切り札。そのデメリットの大きさに、夕映は言葉もない。
「さて、おでこちゃん。降伏勧告だ。素直に降参してくれないか?例え人形使いを使えなくても、今の君には僕に勝つ術がない」
悔しげに歯噛みする夕映。シンジの言葉は事実だったからこそ、何も反論は出来なかった。
同時に、背後から聞こえてくる呻き声。
振り向いた夕映とのどかが目にしたのは、ネギの猛攻を捌ききれず、雷華崩拳の一撃によって崩れ落ちた楓の姿だった。
「・・・降参・・・するです・・・」
カランと音を立てて床に落ちる魔法の杖。のどかも敗北を認めて、素直にアーティファクトをカードへ戻す。
「・・・ではこの勝負、ぼーやとシンジの勝利とする。全員、異存はないな?」
ふわあ、と欠伸をしながら吹き飛ばされた糸や符を拾い集めるシンジを眺めながら、少女達は歯噛みしながらも敗北を認めるしかなかった。
戦闘終了後―
敗北を喫した少女達が意気消沈して体を休めている中、ネギとシンジは、アスナとアスカ、更にはフェイトを伴ってエヴァンジェリンと打ち合わせを行っていた。
内容は造物主 戦での基本作戦の構築である。それが一通り終わった所で、エヴァンジェリンが皮肉気に口を開いた。
「それにしても、まさかあそこまでやるとは思わなかったぞ?何だかんだ言って貴様達は甘いからな。何人かは連れて行くと思っていたんだがな」
「・・・まあ最初はそう考えていましたけどね。もし事前準備をしっかり整えていれば、時間切れを装って負けるつもりでしたから。ただ、事前準備を怠っていたら、手加減抜きで戦う事にしていたんですよ」
「ふうん?ぼーやも賛成か?」
「はい。相手の実力を見極めて準備をしておく。とても大事な事だから、それをしないのはマズイ事だと思いました。だから僕も賛同しました」
目の前に用意されていた紅茶の香りを楽しみながら、エヴァンジェリンはティーカップへ口をつける。そして満足そうに頷くと、静かにカップを置いた。
「まあ戦うのはお前達だからな。お前達の判断で決めれば良いだろう。そもそも私自身は奴との戦いに介入するつもりはないからな」
「意外ですね。もし介入されるつもりだったら、こちらから止めようと思っていたんですが」
「・・・既に1度は挑み、敗れた身だ」
先日の一件で、近右衛門達とともに造物主 の反撃に遭い、無力化された事を思い出すエヴァンジェリンである。
確かにエヴァンジェリンにとって、造物主 は彼女自身を吸血鬼へと変じさせた憎むべき相手である。だが吸血鬼へ変じた直後に、当時の造物主 を直接殺めて復讐を果たしている事。そして造物主 に対する憎悪の感情も、600年という時間の間に冷め切ってしまっていた為に、感情面での折り合いは完全につけられていた。
だからこそリターンマッチというべき戦いに、積極的に挑もうという気になれなかったのである。
「まあ600年前に、奴はこの手で直接殺めてもいる。そういう意味では、既に復讐は成し遂げているとも言えるしな。だから今回はお前達に譲ってやろう」
「・・・ちょっと待って下さい。600年前に直接殺めた。今、そう言いましたか?」
「ん?何かおかしな事を言ったか?嘘は言わん。確かに私は、吸血鬼となった直後に奴を殺めている」
エヴァンジェリンの発言に、思考を巡らしだすシンジ。
「シンジさん?何かおかしな事があったの?」
「・・・アスカ、すぐにアルビレオさんの所へ向かうよ!」
「シンジ!?一体、どうしたって言うのよ!」
いきなり席を立ったシンジに、周囲は目を丸くするばかりである。そこへ、対造物主 選抜テストを見物しに来ていたアルビレオが、音も無く姿を見せた。
「私に何か訊きたい事があるようですね?」
「はい。正直に答えて頂きたいんです。大戦末期、造物主 はナギの師であるゼクトの体を奪い、その体を支配して逃走した。だが造物主 が生きているのでは、戦いは続き、いつまでも平和は訪れない。だからこそ、ナギはラカンさんや詠春さんに対しても『師匠は戦死した』と嘘を吐いた。そして、その事実は僕やアスカにさえも伏せられていた。僕やアスカは、最後の決戦の場には立ち会っていませんでしたからね。事実を伏せるだけで騙す事は可能でした。結果、ゼクトが支配されているという事実はナギとアルビレオさんだけが共有する秘密となった。違いますか?」
目を丸くするアスカ。それは脇で話を聞いていたネギやエヴァンジェリンでさえも、耳を傾けざるを得ない内容であった。
「・・・沈黙は肯定として判断します。そしてナギは師匠であるゼクトを救う為、密かに貴方と行動を開始した。ですが、貴方も困り果てたでしょうね。多分、貴方達は造物主 を殺す訳にはいかなかったからです。何故なら、それこそが造物主 の能力。自らを殺した者の肉体を支配する事による、疑似的な不死―いわゆる不滅。だからこそ、ナギは自分自身ごと造物主 を封印し、貴方は封印の監視者として図書館島の司書となった」
「おい、古本!まさか、シンジの言う通りなのか!」
アルビレオの胸元を掴み、ガクガクと揺さぶるエヴァンジェリン。その両目には、紛れもない怒りの色が浮かんでいる。
そんなエヴァンジェリンを制したのは、沈黙を保つアルビレオではなかった。
「落ち着いて下さい。今はナギを助けるのが、最優先なんですから」
「うるさいぞ!この古本は15年も私を・・・何だと?今、何といった?」
「だから、ナギを助けると言ったんです。少なくとも、その手がかりには気づきました。だからこそ、アルビレオさんの持つ情報が必要なんです」
言葉も無いアルビレオ。エヴァンジェリンもまた、目を丸くするばかりである。
「アルビレオさん。ここから先は沈黙ではなく、ハッキリした返答をお願いします。それ次第で、ナギの救出の成功確率が変わります。正確に言えば、ナギを助けるも殺すも、貴方の言葉次第なんです」
「・・・やれやれ、随分とまあ重い言葉です・・・わかりました。ナギを助ける可能性が残っていると言うのであれば、私も協力します。だから苦しいので、手を離して下さい。キティ」
「ええ、僕からもお願いします。キティも手を離して下さい」
「誰がキティだ!」
ウガーッと激怒するエヴァンジェリン。重い沈黙が一気に吹き飛び、若干だが空気が軽くなる。
「まず造物主 の疑似的な不死について。これは僕が言った通りの内容で正解ですか?」
「はい。まず間違いないでしょう。だからこそ、ナギの体は奴の支配下にあり、ナギは自分ごと封印しているのです」
「結構です。つまり造物主 は精神生命体―魂や意思と言うべき存在を、他人の体に乗り移らせる能力がある、と」
落ち着きを取り戻したエヴァンジェリンが、素直に席に座る。そして話の展開に好奇心を擽られた少女達もまた、耳をそばだてた。
「・・・アルビレオさん。ナギと貴方は、大きな間違いをしています。奴の能力―不滅は自らの死に瀕した際、他人の体を支配するという能力ではありません」
「な、何故ですか?確かにゼクトやナギは体を支配されています」
「結論から言います。奴の能力は、他人の体に乗り移るだけです。自分が死に瀕した際に発動する、等と言う限定条件は課せられていなかったんですよ」
ガシャンと音を立てて、テーブルに叩き付けられるアルビレオの手。その両手は、細かく震えている。
「理由は1つ。大戦直後にゼクトが支配された、という点です。ゼクトは沈着冷静な男でした。一方、ナギは正反対の直情径行タイプです。この2人がコンビを組んで戦えば、自然とゼクトが隙を作って、ナギがトドメ役となります。これはナギの攻撃力の高さから考えても、納得出来るでしょう。そうなれば、造物主 にトドメを刺したのはゼクトではなく、ナギでなくてはなりません。ですが、実際にはゼクトが支配されています」
「・・・確かに・・・確かにそうだ・・・」
「限定条件等ない、他人の体へ乗り移る能力。恐らくは自らの意思で発動可能な、非常に強力な力。それこそが奴の能力です。そうでなければ、宿主である肉体が事故や寿命、病気等で死んだ際、周囲に誰もいなかったら造物主 も死んでしまいます」
歯噛みするアルビレオ。自らの失策に気づいた今の彼は、後悔と怒りに顔を歪めていた。
「そうか!エヴァちゃんが600年前に倒したって、さっき言ってたわよね?それももしかしたら!」
「そういえば・・・」
「いえ。それは矛盾にはなりえないんです。何故なら、エヴァンジェリンさんは造物主 を殺していないからです」
シンジの推測に、エヴァンジェリンが思わずティーカップを落とす。
「少し脱線しますが説明します。エヴァンジェリンさんは確かに真祖です。質問ですが、600年前に吸血鬼へ生まれ変わった際、その直後から今ほどではないにしろ、最強無敵の悪の魔法使いに相応しい能力を持っていましたか?」
「・・・いや、そんな事は無い。当時の私は最弱と言っても良かった。何度も殺されたよ。今、こうして生きているのは吸血鬼としての不死性の恩恵に他ならない」
「でしょうね。魔力だけは桁違いにあったでしょうが、それを操り、解放する技術は無かった。露骨に言えば、魔法の射手すらも使えなかった筈です。もし使えていれば、貴女は何度も殺されるような目には遭っていない筈」
うむ、と頷くエヴァンジェリン。さすがにここまで言われれば、頭の回転の早いエヴァンジェリンには、シンジの言いたい事は察する事が出来た。
「つまり、私は騙されたのだな?復讐にかられた私の前に現れた奴は、恐らくは人形だったのだろう。そうでなければ、戦闘のイロハも知らない当時の私に、奴を殺せる訳がない。もしかしたら、吸血鬼の不死性の実験も兼ねていたのかもしれんな・・・」
「多分。人形で不死を再現できれば・・・そう考えていたのかもしれません。だから素直に殺されたのだと思います」
「・・・とことん、人を馬鹿にしてくれたな・・・」
みるみる機嫌が悪くなるエヴァンジェリン。600年間も騙されていたのだから、造物主 は言うまでもなく、自分自身に怒りを抱く。
そんなエヴァンジェリンの姿に、シンジは肩を竦めながら口を開いた。
「もし600年前、奴が本当に殺されていれば、キティが支配されていたでしょう。ですがキティはこうして、自らの意識を保っています。これはキティの殺した造物主 が、本物ではなかった証拠と言えるでしょう」
「ああ、確かに私は私だ。今すぐお前をぶち殺してやりたいと思う程に、私は私だぞ?」
「ああ、マスター。そんな楽しそうに」
「黙れ、この腐れロボ!超の奴にメンテナンスを受けてこい!」
給仕役を務める茶々丸に対して、激怒するエヴァンジェリン。そんな主従コンビに、周囲から生温かい視線が注がれる。
「話が脱線しましたが、まず奴の能力については納得して貰えたと思います。次に、肝心のナギの救出方法ですが、これについても目途は立ちました。確かに奴の能力は極めて強力です。特に自分の意思で力を発動出来るとなれば猶更ね。でも、だからこそナギを助ける目が出てきた」
「ど、どうして?」
「だって、奴をその気にさせれば、力を意図的に使わせる事が可能だと推測出来たからね。何より、奴をその気にさせるには僕かネギ君が最適です。大丈夫、流れはこちらにあります」
ガタッと音を立てて席を立つシンジ。
「良いですか?作戦は・・・です」
周囲から一斉に上がる『悪党』という呆れた様な声。大人達は苦笑しながら、作戦を認めた。
シンジの立てた作戦は、非常に単純な物であった。危険性は0とは言えないが、造物主 の能力を考慮すれば、十分に実現可能だったのである。
「アルビレオさん。外の時間で明後日に勝負しますので、封印解除の準備をお願いします。ネギ君・神楽坂さん・アスカ・フェイト、それに僕はここを利用して最後の修業を行いレベルアップを図ります。他の人達は交代で、僕達の修業相手を務めて下さい。結果がどう転んだとしても、造物主 は二度と僕達の前に敵として現れる事は無い。ですが、どうせならハッピーエンドを迎えましょう!」
シンジの檄に、全員の声が1つになった。
決戦前夜―
時間の流れの違うEVANGELINE’S RESORT。シンジ達は決戦時間ギリギリまで、この中で最後の修業を行っていた。
別荘の中で経過した時間は、およそ40日。最後の追い込みとしては、破格の時間的な余裕だった。
更にエヴァンジェリンから提供された魔力の籠った装備品、超と聡美の手による茶々丸セイバー改の更なる改良や新たな義手、そして成長過渡期にある4人―フェイトだけは成長が固定されている為―のレベルアップは、実に目覚ましいと言えた。
そして全てを成し遂げ、最後の夜をシンジは迎えていた。
誰もが疲れ切って、静かに眠る夜。しかし、シンジは大きな欠伸を何度も繰り返しながら、眠るのを遅らせてこの場にいた。
「・・・待ったかしら?」
「いや、そんな事は無いよ」
背後から聞こえてきたアスカの声に、目を擦りながら振り向くシンジ。アスカは『隣座るわよ』とだけ言うと、返事を待たずに腰を下ろした。
目の前で寄せては返す波の音。その音に、赤い世界の記憶が蘇る。
「・・・5年・・・言葉にすると短いけど、長かったわよね」
「そうだね。アスカと出会ってから、もう5年も経つんだよね・・・あの頃は、まさか魔法使いになるなんて欠片ほどにも思わなかったなあ・・・」
「それはアタシも同じ。弱気で自虐的だったアンタと、アタシの憧れだった加持さんは似ても似つかない。なのに、まさかここまで一緒に行動するなんて、不思議よねえ」
白い砂を手に取り、指の間からサラサラと零すアスカ。
「・・・ねえ、シンジ。1つだけ答えて。この3年間、どうしてアタシに手を出さなかったの?」
「・・・僕は自分が誰を好きなのか。その事をハッキリさせていなかったから。だから相手が誰であっても、手を出してはいけないと思った」
「そう。じゃあ、その相手はハッキリした訳?」
思わず隣を見るシンジ。そこには、至近距離まで顔を近づけたアスカがいた。
「・・・答えて・・・アタシはシンジが好き・・・シンジと一生を共にしたいの・・・シンジの答えを教えて」
静かに目を閉じるアスカ。その唇が僅かに突き出ている。
さすがに、それが何を意味するのか。昔はともかく、今のシンジにはその意味が理解出来る。
「・・・僕は・・・」
「「「「「「抜け駆け禁止!」」」」」」
突然の叫びに、シンジとアスカが慌てて、互いの額を打ち付ける。視界に火花が走り、痛みで蹲る2人。
「何で邪魔すんのよ!」
「それはこっちのセリフよ!私だってシンジさんが好きなんだから!絶対に諦めないんだから!」
仁王立ちするのは、すでに告白済のハルナである。その背後には、少し頬を赤らめている少女が4人いた。
「・・・ねえ、まさか後ろの4人は・・・」
「うむ。アスカさんの想像通りネ。私達もシンジさんのパートナーとなりたくて、告白に来たヨ。もとも私も、すでに告白済だけどネ。でもちょうど良い機会だから、もう1度告白するヨ。私もシンジさんが好きネ」
ニッコリ笑って爆弾を落としたのは、現在21歳の超鈴音である。確かに麻帆良祭の準備の時、ハルナに張り合う様な形で彼女は告白していた。
「・・・そ、その。私も責任を取って頂きたく・・・いえ、責任がどうこうという訳ではなく!・・・その・・・最初の相手はシンジさんでしたし・・・今にしてみれば嬉しいですし・・・」
いつになく小さな声だったのは、夕凪を抱えた刹那であった。彼女の場合、仮契約相手こそネギだが、ファーストキスはシンジの初陣の際に、血の契約を発動させる為にシンジに奪われている。
「ウチもお兄ちゃんが好きや!」
妙に元気なのは木乃香である。彼女の場合、修学旅行が発端だった。近右衛門が彼女をシンジの嫁にしたがっていたという話を聞いて以来、少しずつ心境に変化があったのである。そして遂に、行動を起こすに至っていた。
「拙者も、その気があるでござるよ?父上も、シンジ殿が相手であれば、自分に許可など取らずとも良いとお墨付きを頂いたでござる」
相変わらず糸目のまま、いつものニコニコとした表情を維持する楓。だがよく見れば、微かに頬が赤らんでいた。
「・・・考えに考えたです・・・私・・・シンジさんが・・・好き・・・です」
顔を俯けているのは夕映である。こちらも修学旅行が発端だが、彼女の場合はシンジとのスキンシップの多さにあった。結果、彼女はネギとシンジの間で揺れながらも、シンジを選んだのである。
7人の少女による同時告白という現実に、シンジが目を白黒させる。ハッキリ言えば、完全に思考回路が現実に追いついていなかった。
「でもまあ、今のアンタに答えろなんて、流石に無理でしょうね・・・ねえ、みんな。この馬鹿に時間をあげて。こいつなりに、真剣に考えるつもりはあるみたいだから」
「うむ。それぐらいは構わないヨ。ただ、このまま帰るというのも芸がないネ」
ニヤリと笑う超。魔法使いとしての主の寒気がする笑顔に、シンジが後ずさる。
「フッフッフ。てりゃ!」
シンジに飛びつく超。まるでフライングボディアタックの様にシンジに飛び掛かった超は、勢いそのままにシンジの唇を奪っていく。
「「「「「「あー!」」」」」」
「アンタ何してんのよ!この馬鹿はアタシのだ!」
シンジを無理矢理引き起こすと、力任せにアスカが唇を押し付ける。だがそれはディープな方であった。
目を白黒させるシンジ。やがてプハーッと息をしながら離れるアスカ。月明かりに煌めく、2人を繋ぐ糸が淫靡な雰囲気を感じさせる。
「次は私!」
アスカを押しのけつつ、今度はハルナが唇を奪う。こちらは少し余裕があったのか、息を上手に確保しつつ、アスカ同様にディープな物を堪能していた。
「次はウチな。お兄ちゃん♪」
ちょこちょこと近寄ってきたのは木乃香である。彼女はニッコリ笑うと、啄むような可愛いキスをする。この辺り、木乃香の性格が良く出ている。
「次はせっちゃんやで?」
「そ、その・・・不束者ですが・・・宜しくお願い致します」
『それは嫁入りのセリフ!』というツッコミをされながらも、刹那もキスをする。元来古風な考え方の少女らしく、唇を押し付けたは良いが、その先をどうしたら良いか分からず困り果てているのが刹那らしいと言えた。
「では拙者も」
刹那が離れた瞬間、不意を打って唇を奪う楓。一瞬の早業に、シンジは奪われるばかりである。
「そ、その・・・私が最後です」
シンジの傍に歩み寄る夕映。その背中に手を回し、シンジを上目つかいに見上げる。
「あの・・・シンジさんからお願いしても宜しいでしょうか・・・私、キスの経験もろくになくて・・・仮契約の時も力任せにハルナに押し付けられただけですし・・・どうしたら良いか、よく分からないです・・・」
『しまった!その手があったか!』と叫ぶハルナ。確かに夕映は出遅れたが、同じキスであっても自分からしたのと、相手からされたのでは、その価値は大きく違う。
だが、今更邪魔は出来ない。
困惑し、周囲を見回すシンジ。だが手助けなどある訳がない。
「・・・さっさとしちゃいなさいよ」
滅茶苦茶不機嫌な声色のアスカ。表情こそ笑顔だが、明らかに引きつっている。
「・・・目を・・・閉じて・・・」
「・・・はいです・・・」
直後、夕映は顔を茹蛸の様に真っ赤にさせる。やがて影が1つになった時、夕映の頭に小さな痛みが走った。同時に怒涛の勢いで溢れてくる過去の『記憶』。
「ど、どうしたの?おでこちゃん」
「記憶が・・・今まで思い出せなかった記憶が・・・」
魔法世界で思い出せなくなった、麻帆良学園都市での記憶。それがシンジへの告白とキスと言う緊張感により元へ戻った瞬間であった。
「もう・・・もう忘れたくないです」
そう言いながらシンジにしがみついた少女は、幸せそうに微笑んでいた。その眦に光る物を浮かべながら。
図書館島最下層―
アルビレオが監視する封印の場。そこにシンジ達5人はいた。
目の前には、まるでガラスの中へ閉じ込められた人影―ナギの姿がある。それだけではない。まるでナギを抱き締めるかのように、金髪の女性の姿があった。
「・・・クウネルさん?あの女性は・・・」
「ネギ君。君の考えている通りです。アリカ王女―すなわち君のお母さんです。アリカ王女は造物主 に乗っ取られたナギを封じる際、自らを犠牲にナギの動きを止めようとしたのです。自分もまた、ナギとともに封印される覚悟をして」
初めて直接見た母親の姿に、ネギは言葉も無くただジッと見つめるばかりであった。そんな弟分の頭に、軽く掌が乗せられる。
「ネギ君。お父さんとお母さんを助けるよ?準備は良いかい?」
「はい!」
「封印解除の準備は整っています。そちらの準備は宜しいですか?」
「勿論!いつでも良いわよ!」
アスナの元気に溢れた返答に苦笑しながら、呪文を唱えるアルビレオ。やがてパリンという甲高い音とともに、造物主 とアリカは封印から解放された。
造物主 は意識があったせいか、封印が解けると同時に動き出す。だがアリカは気を失っているのか、造物主 の腕の中でピクリとも動かない。
「おはよう、造物主 殿。ナギとアリカは無事かい?」
「2人とも眠っている。それにしても、まさかこうしてまた、直接会話を交わす事が出来るとは思わなかったよ、ゲンドウ」
「今はシンジという本名を使っているから、これからはシンジと呼んでほしい」
「なるほど、了解した。ところで本題に入りたい。何故、封印を解除したのだ?封印ごと私を消滅させるべきではなかったのかね?」
造物主 にしてみれば、当然の疑問である。それに対して、シンジは笑いながら答えを返した。
「理由は2つ。まず1つ目はナギを助ける為。貴方をナギの肉体ごと消滅させたら、ナギが死んでしまう。だからだよ」
「確かに筋は通る。で、もう1つは?」
「2つ目の理由はヘッドハンティングだよ。造物主 殿、魔法世界救済の為、僕達に力を貸して欲しい」
この答えは予想外だったのか、さすがの造物主 も目を白黒させる。
「本気か?本気で言っているのか?」
「本気だよ。とは言え、この案を出したらみんな驚いていたけどね。貴方は僕達にしてみればラスボスの様な存在だからね。だからラスボスを味方に引き込むなんて、誰も予想していなかったんだよ」
『そりゃそうよ』と小さく呟いたのはアスナである。
「だが、無理な事ではない。貴方にとって『完全なる世界 』は、魔法世界救済の為の道具の1つだった筈。貴方にとっては『魔法世界救済』こそが、決して譲る事の出来ない目的だ。その目的を達成出来るのであれば、貴方が僕達に味方するのは、ごくごく自然な流れとも言える。違うかな?」
「それは、例のS2機関を活用した、魔法世界へのエネルギー供給計画の事だと考えて良いのかな?」
「いえ、他の方法です。S2機関ですが、計画に欠点がありましてね。よくよく考えてみたら、S2機関を武力制圧されたり、故障が起きたらアウトです。だから他の方法へ切り替えたんです。この子―ネギ君の発案にね」
ポンポンとネギの頭を叩くシンジ。造物主 を見つめるネギの表情は、緊張と不安で塗り固められていた。
「ナギ・スプリングフィールドの息子か」
「・・・はい、ネギ・スプリングフィールドです。魔法世界救済の為、僕が発案したのはテラ・フォーミングプロジェクトです。すでに計画段階にあり、現在は準備段階にあります」
「なるほど、そういう事か。火星を緑地化する事による、自然の生命エネルギー―即ち魔力を供給する」
納得した様に頷く造物主 。だが、シンジはニヤリと笑う。
「造物主 殿。残念ながら、それでは及第点にも及ばない。精々、30点という所だ。何故なら、そのままでは致命的な欠点を補う事も出来ず、地球と火星の戦争という未来が待ち受けるだけだから」
「・・・そうか!古来より魔法世界―すなわち隠れ里は人間の社会から離れた場所に造られてきた。それは人里離れた山奥であったり、時には海の底であったりした。その理由は魔力を安定して供給させる為。人の住む街中では、魔力を生み出す自然が破壊され、肝心の魔力供給量は減少し続けるしかない」
「正解です。ただ火星を緑地化しても、人類が火星に進出してしまう。そうなれば魔法世界が崩壊するのは避けられません」
シンジが言う通り、ただテラ・フォーミングを行うだけでは、問題を解決する事は出来ない。ただ問題を先送りするだけである。
「だから、ここでもう一つ策を使います。テラ・フォーミングを行うには、莫大な予算がかかる。ですが魔法世界維持の為だけに、緑地化するだけして放置していては、必ず問題が起こります。例えば『火星と言う新たな土地で利益を得ようとする者達』が『自分達の権利を奪うな!』とね」
「うむ。確かにその通りだな」
「そこで、僕が打つ策は『全てを白日の下に晒す』という物です。つまり、魔法を暴露します」
この場にいるのはシンジ達以外では、造物主 とアルビレオだけ。
全員がシンジの言葉を把握し、一瞬、沈黙する。
そして次の瞬間
「「「「「「えー!?」」」」」」
全員、驚愕で体を強張らせた。
「シンジさん、そんな事聞いてないですよ!?」
「そりゃそうだよ。折角だから驚かそうと思って、内緒にしてたんだ。だから別荘で説明した時には、そこまで話さず、造物主 殿を引き込む方法として『テラ・フォーミングを利用すれば仲間に引き込める』と言ったんだよ。嘘は吐いていないよ?事実全てを言っていなかっただけだからね」
唖然とするネギと造物主 。アルビレオとフェイトは苦笑し、アスカとアスナは『この悪党が』と睨む。
「そもそも無理に隠そうとするから、問題が大きくなって手がつけられないんです。だったら、思い切って表に出しちゃえば良いんですよ」
「・・・でもさ、それって滅茶苦茶、大事になるんじゃない?」
「なるだろうね。間違いなく世界の歴史が大転換を迎えるよ。冗談抜きで、世界的革命と言えるだろうね」
『うわあ』と呟きながら額を押えるアスナ。
「でも、これなら問題は解決できる。火星を緑地化し、そこへ魔法世界の住人を移民として定住させるんだ。これにより魔力の供給が無くても、彼らは安心して生活出来る。幻想世界の住人については、既に行われている移民プロジェクトの実験データを活用する事により、新たな肉体を得る事で移民は可能だという事も実証されているんだ」
「・・・そんな実験、いつの間にやっていたんですか!?」
「マイクロフト陛下が、万が一を考えて計画を推し進めていたんだよ、極秘プロジェクトとしてね。最新の帝国移民計画実験体18号ココネ・ファティマ・ロザ。彼女から得られたデータによって、計画はほぼ完成したと言って良いそうだよ」
「ココネ・ファティマ・ロザ?どこかで聞いた覚えが・・・」
「春日さんの仮契約相手の小学生だよ」
脳裏に浮かぶのは、無口な小学生の少女。シスター服を身に纏い、美空とともに学園中を走り回る姿を、ネギは何度か目撃している。
「神楽坂さんも彼女の事は覚えているよね?麻帆良祭で高畑先生を救出に向かった際に、春日さんと一緒に行動していた女の子の事は」
「・・・あー!思い出した!あの子か!」
ポンと手を打つアスナ。
「大筋はこんな所です。また魔法を暴露する事により、テラ・フォーミング自体の計画進行速度も大きく前倒しが可能になりました。本来ならば宇宙ステーションを作って、そこを足掛かりに火星へ進出。更に橋頭堡を築いて・・・と段階を踏まないといけない。でも魔法を隠す必要が無ければ、魔法世界経由でいきなり表の火星に橋頭堡を築く事が出来る。物資も人材も、魔法世界経由で運べば大幅な時間短縮が可能です。概算で、約15年は前倒し可能です」
「・・・その計画進行速度の短縮は、確かに考える価値があるな」
「更に言うなら、魔法の存在を表に出す事により、物資運搬ルートの1つとしてゲートも活用可能になります。魔法世界経由だけでなく、地球に設置したゲートからも火星の橋頭堡に直通可能なゲート。これにより人材移動・物資流通面は更にスムーズに進む」
真剣に考え込む造物主 。概略に過ぎない説明ではあったが、それでも十分に実現可能な計画だと考えるだけの真実味が感じられた。
「今の僕はヘラス帝国の宰相だけではない。メガロ・メセンブリアやアリアドネーの要職に知己もいる上に、新しい英雄であるネギ君がいる。旧世界に目を向けてみても同じです。国際的に大きな発言権を持ち、新技術の開発に携わるNERVは既に協力態勢にあり、根回しと実験に奔走しています。関東魔法協会はお爺ちゃん経由で何とでもなる。関西呪術協会は詠春さんと師匠経由で協力を取り付けるのは十分に可能です。更に魔界の支配者であるポヨ・レイニーデイさんも既に協力を取り付けています」
「なるほど。確かに話を聞く限り、非常に実現の可能性は高そうだ。私が協力する価値は十分にある。だが、質問がある。私自身をどうするつもりなのかな?ナギを救うのも、君達の目的の1つだろう?」
「それについては問題ありません。移民プロジェクト用の体を1体提供します。そちらに乗り移っていただければ、ナギは解放される」
納得したとばかりに頷く造物主 。
「当面はテラ・フォーミングプロジェクトの主要幹部の1人として、貴方には動いて頂きたい。同僚となるのはポヨさんや墓所の主殿、それから旧世界の科学者である赤木博士になります。ネギ君は魔法世界に対する広告塔的な立場になる為、あまり一緒に活動する事は出来ないでしょうが」
「いや。問題は無い。ただ1つだけ頼みがある」
「頼み、ですか?」
ああ、と応える造物主 。
「私にも悪の魔法使いとしての矜持がある。だからこそ、君達と勝負をしたい。無論、勝敗には拘らん。殺害するつもりもない。ただ私を信じてついてきてくれた完全なる世界 の同志に対するケジメをつけたいのだ」
その言葉を予測していたシンジは、黙って頷いた。同時に少女達は武器を呼び出し、ネギは雷化し、フェイトは身体強化を施し、シンジは茶々丸セイバー改を支配下において戦闘態勢に入る。
造物主 もまた、アリカをクウネルへ預けると闇の魔法 を発動。本家本元と言わんばかりに、闇属性の最強魔法と炎属性の最強魔法、2つを同時に装填してみせる。
そして次の瞬間、6つの人影は正面から激突した。
To be continued...
(2013.02.16 初版)
(あとがき)
紫雲です。今回もお読み下さり、ありがとうございます。
今回のテーマは色々あります。選抜テスト全滅だったりとか、蹂躙される(笑)シンジ君だったりとか、挙句の果てにラスボス引き抜きです(笑)。この結末を予想できていたら正直凄いと思います。
またアリカに関してはナギとともに封じられていた事にしました。この流れが一番順当じゃないかなあ、と。アリカだけ死んでました、とか救いよう無いですし。何よりクウネルがそれを許すとも思えないですしね。
ヒロイン組に関しては、夕映が一番美味しいポジションでしたw出遅れた事を逆手にとって、と言う感じです。さすが3-Aの誇る魔性の女ですw
話は変わって次回です。
ついに本編最終話となります。
魔法を暴露する。この世界的革命を行う為、シンジは自分もまた国際政治の舞台へ出る事を決める。
世界中に報道される真実。それは使徒戦役であり、魔法と言う存在であり、新たなる隣人となる魔法使いや魔族と呼ばれる者達であった。
そんな感じの話になります。
エピローグ前の最終話74話も宜しくお願い致します。
作者(紫雲様)へのご意見、ご感想は、または
まで