遠野物語

本編

第十七章

presented by 紫雲様


NERV本部発令所―
 「初号機の状況は!」
 「赤木博士の見立てによれば、初号機はヘイフリックの限界を超えた損傷を受けているとのことです。コアも粉砕されており、修復は不可能の可能性が高い、と・・・」
 未だにケージで初号機の検査と応急処置を行っているリツコからの伝言に、日向は顔を顰めていた。
 「人的被害は?」
 「犯人に殴り倒された整備員が数名。技術部職員には被害はありませんでした」
 「そうか、けが人が少なかったのだけは不幸中の幸いだったな」
 正面モニターに映る、忙しく動くリツコ。ケージの片隅には、破壊された初号機を呆然と見上げるシンジが映っていた。その両隣に立つアスカとレイが、懸命にシンジを励ましている。
 「弐号機と零号機には、犯人は手を出していないので、被害はありません」
 「・・・つまり、犯人は初号機だけを破壊するつもりだった、という訳か」
 「そうなりますね」
 チルドレン救助のため、保安部と監査部は出払っていた。残っていたのは技術部と整備部、総務部職員だけである。戦闘力など望むべくもない。
 「そういえば、冬月副司令には連絡を取ったのか?」
 「いえ、副司令と連絡が取れないのです。自宅にも職員を向かわせましたが、留守である事が分かっています」
 「・・・この緊急時に一体、どこへ行ってしまったんだ・・・」
 頭を抱える日向であった。

NERV本部ケージ―
 「どうして・・・」
 ケージの片隅に置かれたパイプ椅子に腰を下ろし、離れた場所から初号機を見つめていた。そしてシンジの魔眼をもってすれば、初号機の中にユイがいるかいないかは、一目で判別できる。
 シンジにしてみれば、初号機は使徒迎撃の兵器などではない。実の母親そのものなのである。それも今なお生きているのであり、何よりゼルエル戦で死んだ自分にもう一度命を与えてくれた唯一無二の存在であった。
 その母親が、初号機の中から消え去っていたのである。
 それが意味する物を、シンジは誰よりも正確に理解していた。
 「遠野君・・・その・・・」
 「シンジ・・・」
 「・・・大丈夫だから・・・心配させてごめんね」
 シンジの事を心配するあまり、少女達は気付かなかった。
 その掌に握られたコアの欠片が、血が滴り落ちるほどに握りしめられていた事に。

翌日、NERV本部作戦部ブリーフィングルーム―
 初号機破壊という事態に、NERVの上層部メンバーが集まっていた。初号機の破壊により、対使徒戦において、急遽、戦術プランを見直さなければならなくなったからである。
 本来なら副司令である冬月も出席しなければならないのだが、今に至るまで、冬月からは何の連絡も無く、足取りも不明のままであった。
 「それで、委員会は何と言っていた?」
 「いえ、しばらくはサードの登場する機体は無い。2機体制で迎撃しろ、と」
 加持の問いかけに、日向が頭を抱えてぼやくように答える。初号機破壊という事態をうけて、日向はすぐに初号機に代わる機体の配備要請を申請したのである。
 だが結果は配備不可能という返答。実質的な却下であった。
 「例の傭兵は、何と?」
 「サードチルドレン暗殺依頼を受けたこと、ファースト・セカンド両チルドレンについては、決して手を出すな、と言われていたこと。それぐらいだな。依頼主は不明。仲介者を通じての依頼だからだろうな。多分、嘘は吐いていない」
 「私も加持一尉の意見に賛成です。今回、双頭の蛇は恐らく使い捨て。本命は初号機の破壊にあったのだと思います。それならば、双頭の蛇の言い分にも納得できます」
 加持とリツコが、互いの顔を見ながら頷き合う。
 「それで黒幕についてですが」
 「ああ、手がかりは手に入れたよ。双頭の蛇はMAGIの監視の目を欺いて、第3新東京市へ来ていたこと。これは黒幕がMAGIの存在を知っている事を意味している。加えてチルドレンの存在を知っていたことだ。特にファースト・セカンド両チルドレンに危害を加えるな、と厳命していた点。これが何を意味するのか、わかるな?」
 「・・・ええ。信じたくはありませんが・・・恐らく、黒幕はエヴァの存在と、エヴァの存在意義について正確に理解しているのでしょうね。だからこそ、無差別テロによってチルドレンが全滅し、エヴァの操縦者がいなくなる事態を恐れた」
 「つまり、黒幕は使徒の存在も知っているということね」
 リツコの確認の言葉に、日向と加持が頷く。
 「更に付け加えるなら、エヴァのケージ場所を知っていた点だ。これがMAGIをハッキングする等して手に入れたのなら話は別だった。だが連中は無駄な時間を使うことなく、もっとも効率的な侵入経路を利用している。つまり、黒幕はMAGIの情報を自由に閲覧できる立場にあると推測される」
 「そんな事が出来る者といえば、認証ランクSランク以上の権限者だけよ!日向君や加持君ですらランクA。ランクS以上と言えば、私以外には副司令と司令だけよ!」
 「・・・まさか、冬月副司令が犯人だというんですか?確かに、怪しくは思えますが」
 日向の言葉に、リツコが苦々しげな表情を浮かべる。その顔を見れば、彼女が冬月に疑いを向けているのは間違いなかった。
 そこへ加持が口を開いた。
 「いや、副司令は疑わしく思えるが、恐らく犯人ではない。犯人は、他にいる」
 加持に集まる視線。
 「今回の黒幕、恐らくは委員会―SEELEだろうな」
 NERVの存在意義をよく知る、上部組織の裏切り行為の発覚に、彼らは怒りで顔を歪めた。
 
初号機破壊から一週間後、遠野邸―
 初号機の破壊以来、自室に閉じこもり、一人考え込むことが多くなったシンジ。アスカもレイも琥珀も、そんな彼にかけるべき言葉を持ちえず、ただ痛ましそうにシンジの部屋のドアを見つめていた。そんな3人を、現状をしっかり理解できない、幼いレオが不思議そうに見上げていた。
 「・・・シンジ君、立ち直ってくれればいいんだけど・・・」
 紅茶を注いでいる琥珀の言葉に、少女達が黙って頷く。レイにとってもユイは母親にあたるのだが、幸か不幸か、レイはユイに対してそれほど強い思い入れを持っていなかったのでショックも少なかった。
 レイが辛いと感じているのは、ユイを失った事ではなく、シンジが苦しんでいるからである。
 「お母さん・・・分からないの、お母さんを失う事は、辛いことなの?」
 「・・・そうね。母親と言うのは、子供にとって、もっとも身近な他人なの。一番最初に心を許すことができる、もっとも身近な他人なの」
 「そう・・・私には・・・分からない・・・」
 俯くレイを、アスカが『アンタは何も悪くない』と慰める。
 『ありがとう』と返すレイ。その光景に、琥珀が笑みを浮かべる。
 その時だった。
 2人の携帯電話に、NERVからの緊急連絡が入った。
 「使徒が現れた!すぐに本部へ来てくれ!」
 『了解』と告げる2人の少女。
 「シンジ君は私が見ておきます。2人はすぐに本部へ」
 「「お願いします!」」
 咄嗟に部屋から飛び出る2人。エレベーター前にいる黒服の運転する車に乗り、すぐに本部へと向かう。
 走り去っていく車を見送った後、琥珀はレオとともにシンジを避難させようと、シンジの部屋を開こうとして気づいた。
 (そういえば、さっき電話の呼び出し音はアスカちゃんとレイちゃんのしか聞こえなかった・・・まさか!)
 慌ててドアを開く琥珀。
 そこには風に揺られるカーテンと、全開になった窓ガラスだけがあった。

NERV本部発令所―
 発令所に飛び込むなり、日向は叫んだ。
 「状況は!」
 「大涌谷上空に、正体不明の飛行物体を確認!MAGIは判断を保留!飛行物体は、およそ30分後に第3新東京市へ到着すると思われます」
 青葉の報告通り、正面モニターにはクルクルと回転を続ける、正体不明のリング状の物体が浮かんでいた。
 現在、指揮を執るのは日向ただ1人。補佐役であるシエルは、日向からSEELEを調べるように依頼を受けて、数日前からヴァチカンへと戻っていた。シエル自身もヴァチカンに用事があったのか『良いですよ』と2つ返事で受けている。ちなみに同行者は加持とミサトである。
 「エヴァの発信状況は?」
 「零号機と弐号機、あと10分で発進できます!」
 「市民の避難状況は?」
 「完全に完了するまで、あと2時間はかかります!」
 避難完了前に、確実に戦闘が開始する状況に、日向が決断を下す。
 「子供達が到着次第、市外で戦闘を開始する!」
 
第3新東京市郊外― 
 人目のない山の中に、シンジはいた。初号機を、母親を失った彼は、ある事を考えて山の中へ来ていたのである。
 先日の第1中学校占拠事件。その最中に、彼が無我夢中で起こしたある事を、もう一度再現するべく足を伸ばしていた。
 何度も試行錯誤を繰り返してコツを掴んだシンジは、やっと納得できたのか、その場に腰をおろす。
 「・・・まだ・・・まだ戦えるんだ・・・」
 確かに初号機の損失は、シンジにとって大きなショックであった。自身にとって最強の矛であり盾であり、何より自分を守ってくれる母ユイの存在は、彼にしてみれば、無条件に心を許せる存在であった。
 それが失われたと知った時、シンジの心に絶望が広がったのは事実である。
 だが、シンジはそこで立ち止まらなかった。
 初号機を失ったからと言って、2人の少女だけに全てを任せてしまってもいいのだろうか?自分がこの世から消えた時、全てを失う覚悟をしてまで、救いに来てくれた少女達に何かできる事はないのか?
 その答えを手に入れたシンジは、満足そうに空を見上げた。
 そんなシンジの耳に、聞きなれた避難警報が届いた。
 「まさか!使徒か!」
 人目がない事を幸いとばかりに、鍛えこまれた体術を用いて、木の上へと飛び上がる。そのまま一番上まで辿り着くと、シンジははるか遠くに浮かぶ、正体不明の物体を見つけた。
 「あれか・・・」
 遥か遠くだが、魔眼を使って会話をするのに問題はない。
 「・・・聞こえるかい?『子宮』を司る天使、アルミサエル・・・そう、ここだよ。エヴァに乗っていないから、見つけるのは難しい?・・・うん、確かにそうかもね・・・エヴァが無ければ、僕達は小さな命だからね・・・でも、君は僕を見つけてくれたじゃないか・・・」
 ゆっくりと回転を続けるアルミサエル。
 「うん、僕はエヴァを失ってしまったんだよ・・・サキエル、シャムシエル、ラミエル、レリエル、ゼルエルの力を手に入れた、最強のエヴァンゲリオンを・・・でも、僕は諦めない・・・例えエヴァが無くても、僕は君達と戦う・・・」
 激しくなり続ける避難警報を聞きながら、シンジは話を続けていた。
 「アルミサエル、僕は一人じゃないんだ・・・僕には頼りになる仲間がいてくれる・・・そして僕自身も君達に対抗するための力を身に付けたよ・・・約束する。僕は2人の仲間と一緒に、最後まで戦い続ける・・・」
 背後に大きな気配を感じ、シンジが振り向く。そこにいたのはエヴァンゲリオン零号機と弐号機。何よりも頼りになる、青と赤の巨人。
 「さあ、始めよう。僕達の戦いを」

NERV本部発令所―
 「まだ市民の避難が終わっていない。悪いが、今回は市外での迎撃となる。兵装ビルからの支援は難しいと思ってくれ!」
 『了解』
 『ええ、分かったわ』
 「零号機用にポジトロンスナイパーライフル、弐号機用にマステマを出す。まずは零号機で射撃して様子見。弐号機は零号機の護衛、もし向うが近付いてきたら接近戦を仕掛けるんだ」
 日向の指示に従い、武器を手にする巨人。
 『そういえば、シンジから連絡はないの?』
 「ああ、連絡はない。もし来たら教えるよ」
 『頼んだからね!弐号機、いきます!』
 『零号機、いきます』
 
第3新東京市市外―
 アルミサエルを直接視認できるほどの距離にまで、2体のエヴァは接近していた。
 「レイ、いつでもいいわよ」 
 「アスカ、ガードはお願い」
 ポジトロンスナイパーライフルの照準を合わせるレイ。次の瞬間、陽電子の槍がアルミサエルに突き刺さった。
 同時に、スピーカー越しに警報音が響く。
 『パターンブルー確認!使徒です!』
 マヤの叫びが響く。
 「レイ!」
 「分かってる、アスカ。こちらの攻撃は、あまり効果がなさそうだから、支援に回る。前衛をお願い」
 「任せなさい!」
 ともにF型装備を稼働させる2体の巨人。零号機は空中から射角を保持しながら射撃を続け、弐号機は空中からマステマのガトリングを乱射しながら、超振動ブレードの間合にまで飛び込もうとする。
 陽電子とガトリングによる爆煙の隙をつこうとするアスカ。そのすぐ脇を、何かが駆け抜けた。
 咄嗟に振り向く弐号機。
 「何!?レイ!」
 『逃げて!』と叫ぶより早く、アスカは超振動ブレードをアルミサエル目がけて振り下ろす。だが科学の刃は、アルミサエルの体を切断するどころか、掠り傷一つつける事はできなかった。
 「こいつ、硬い!」
 反射的にアルミサエルを捕まえようと、弐号機が手を伸ばす。だが弐号機には目もくれずに、アルミサエルは零号機の懐へと飛び込んだ。
 陽電子による攻撃を弾きながら接近してくるアルミサエルを避けるようと、零号機が身をよじる。だが零号機は攻撃を避けることもできなかった。
 アルミサエルの侵食が始まった。

 「う・・・あ・・・あああ・・・」
 零号機へのアルミサエルの浸食は、レイにもフィードバックを及ぼしていた。レイは知らなかったが、今のレイを襲っているのは『快楽』と呼ぶべき感覚である。その証拠に、レイの顔はうっすらと赤みがかっていた。
 「レイを放せ!」
 駆け寄った弐号機が、マステマの銃口を突き付けて、零距離からのガトリングを放つ。
 ATフィールドを中和されたアルミサエルにめり込む無数の弾丸。
 「きゃあああああ!」
 「レイ!?どうしたのよ!?」
 『まさか、零号機と、いやレイちゃんと感覚を共有しているというのか!』
 発令所から聞こえてきた日向の叫びに、アスカが顔色を変える。
 『おそらく、いえ間違いなく日向君の言う通りよ。多分、今回の使徒の能力は、他者を取り込む事、つまり融合だと思うわ』
 『・・・MAGIの計算終了、98.3%の確率で、その意見を支持しています!』
 『零号機、生体部品の5%を侵食されました!』
 『零号機シンクロ率、43.1%まで低下!』 
 『アスカ、弐号機を下がらせなさい!弐号機まで融合されては、完全にアウトよ!』
 リツコの警告に、さすがのアスカも弐号機を下げざるを得ない
 やがてF型装備を維持し続けるのも難しくなったのか、零号機が地上へと降りてくる。
 「何か、何か方法はないの!」
 『戦闘区域内に近づいてくる人影があります!』
 マヤの叫びに、動揺が走る発令所。青葉に至っては『何を考えているんだ!』と怒りのあまり叫んでいた。
 『モニターに映します・・・・シンジ君!?』
 零号機に走り寄る人影は、行方をロストしていたサードチルドレン遠野シンジであった。

 「・・・アルミサエル、今、君が一つになろうとしている零号機は、君達が求めてきたアダムではないんだ。なのに、何故・・・興味?好奇心?・・・そうか、君達は人の心が気になっているのか」
 魔眼でアルミサエルと会話をするシンジ。
 「でも、君には悪いけど、僕達も敗れる訳にはいかないんだ・・・レイ!侵食が進んでもいいから、僕をエントリープラグへ入れてくれ!」
 『遠野君!?』
 「僕を信じて!それからアスカ!街へ被害が出ないように、ATフィールドで盾になってくれ!」
 『・・・いいわ、アンタを信じてあげる!発令所!作戦がないのなら、シンジの考えに乗るわよ!』
 弐号機が零号機と第3新東京市との間に入る。同時にレイがエントリープラグを排出し、シンジを入れる。再び、手動で再エントリーした時には、侵食は一気に進んでいた。
 『零号機、生体部品の67%まで侵食されました!』
 『シンジ君、こうなってしまっては君を信じるしかない。だが一つだけ約束してくれ。何があっても、必ずレイちゃんと一緒に帰ってくるんだ!』
 「大丈夫です。レイ、零号機のS2機関を最大稼働!ATフィールドも最大出力にして!アルミサエルが逃げられないようにするんだ!」
 シンジの言葉に、レイがコクンと頷く。同時に上昇を始めるレイのシンクロ率。
 「先に謝っておくよ、ごめんね、零号機。アルミサエルを倒すために、君の命が必要なんだ・・・一つに戻るだけ?そうか、君の正体は・・・いいよ、戻っておいで。君は1人じゃないんだから」
 「遠野君?」
 「いや、何でもないよ・・・レイ、零号機を自爆させるんだ」
 シンジの思惑に、零号機のプラグ内部に怒号が響く。
 『自爆だと!何を考えているんだ、無事に帰って来いと言ったはずだ!』
 『馬鹿シンジ!』
 「大丈夫、僕を信じて。僕もレイも、必ず生き残る事ができる。絶対にね」
 レイはしばらくの間、ジッとシンジを見ていた。
 「アスカ、遠野君を信じましょう」
 『レイ?』
 「遠野君だって、アスカにだけは自分の事を信じてもらいたい筈。遠野君が何を考えているのかは私にも分らない。でも遠野君は信じる事が出来る。だって、私とアスカにとっては大切な絆だから」
 『・・・いいわ、信じてあげる。馬鹿シンジ!絶対に帰ってきなさいよ!』
 どこか拗ねた感じで、アスカが通信を切る。
 『仕方ない。どちらにしろ、他に方法はないんだからな。シンジ君、任せるよ』
 発令所との通信も切れる。
 「遠野君」
 「レイ、怖かったら目を瞑っていていいからね。レイ、自爆を」
 「うん」
 レイがエントリーシートの裏に手を伸ばす。同時に甲高い音が響きだす。
 シンジはレイを後ろから抱き締めると。全身に緑の雷光を纏わせた。
 「・・・投影・・・開始!」
 2人の姿が光に包まれる。直後に大爆発が起こった。

NERV本部発令所―
 正面モニターを光と煙が埋め尽くしていた。
 やがてゆっくりと収まり始める。そこに残されていたのは、巨大なクレーター。弐号機がATフィールドを張っていなければ、間違いなく第3新東京市にも被害は出ていたはずである。
 『シンジは!?シンジとレイの反応は!?』
 弐号機からの呼びかけに、呆然としていたマヤが慌てて検索を開始する。
 「・・・反応、ありません」
 『嘘よ!アイツが・・・アイツが死ぬわけない!マヤ、もう一度調べ直しなさいよ!』
 「・・・アスカ・・・」
 沈黙が下りる発令所。だが―
 「これは・・・爆心地にATフィールド反応を確認!いや、まさか・・・そんな馬鹿な!マヤちゃん、確認を頼む!」
 「青葉君!?・・・ウソ・・・どうして!?先輩!」
 「マヤ、例え信じられなくても、事実として存在する以上は認めなさい」
 『ちょっと、一体、何があったのよ!』
 1人、蚊帳の外に置かれたように感じたのか、アスカが怒声をあげる。
 「今のATフィールド反応・・・MAGIは初号機の波長を確認していたんだ」
 『初号機!?何で!初号機は壊されたんでしょうが!』
 「分らん、だが弐号機で確認してみてくれ!」
 一体、何が起こったのか?
 疑問を抱えながら、弐号機を歩み寄らせる。
 そして、爆心地に見覚えのある人影を見つけた時、アスカは弐号機を駆けよらせた。
 『シンジ!レイ!』
 弐号機を通して送られてきた、2人の子供の無事。それを確認した瞬間、発令所は歓喜に包まれていた。



To be continued...
(2010.10.23 初版)


(あとがき)

 紫雲です。今回もお読みくださり、ありがとうございます。
 今回は零号機が消えました。S2機関搭載型零号機の自爆、一体、どれだけの被害がでたんだろうかと、我ながら気になりますw
 今回から、徐々に舞台裏で進行が始まりました。SEELE調査の為にヴァチカンへ飛んだシエルと、それに同行する加持とミサト。新たな力に目覚めるシンジ。姿を消した冬月。それぞれの行動がどんな結果を導くのか、もう少しだけお待ちください。
 次回ですが、前半はオリジナル、後半はタブリス戦という形で考えています。前半の主役ですが、思い切って冬月にしました・・・個人的には冬月、好きなキャラなんですよね。爺キャラは割と好きなんですw
 後半はタブリス戦。SEELEの謀略に従い、本部へ急襲を仕掛けたタブリスこと渚カヲルの登場になります。
 それでは、また次回も宜しくお願い致します。



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