黒と紫で配色されたメカゴジラのようなメカ、ジドムが、使徒の張った赤い壁、ATフィールドを、 口から吐き続ける訳が分からない光線で破り、そのまま使徒の顔に光線をぶつけ続ける。
青い犬型のメカ、アッカムミサイルを放ちながら、別方向から近付き、ジドムが光線を吐くのを止めた途端、 怯んでいた使徒の右腕に噛み付き、引きちぎりつつ、使徒をジドムの方になげる。
ジドムは、顔を前に突き出し、大きな口を突き出しつつ、使徒のコアに噛み付く。
その瞬間、使徒は痙攣し、アッカムが左腕にも食いつき、その腕ももぎ取った。
ジドムは、そのまま、使徒の身体を上に投げ飛ばす。
既に、使徒のコアは無数の罅が入りまくっていて、色もくすんでいる。
ジドムは飛び上がり、そのまま、 なぜか回転している角がある頭で、 頭突きをかまし、貫通させた。
そして地面に降り立つと、屈み、アッカムに首に引っかかっている使徒の死骸を外してもらい、 使徒の両腕を咥えたアッカムと一緒に、第三新東京市を離れていった。
そこで、画面が消えた。
第五話 ゼーレ・・・失策の嵐!
presented by とりもち様
どこか、暗い部屋
『・・・・・・・・・・・・どう言う事だ?』
画面を消してから、暫くして、バイザーをかけた老人、キールがそう言った。
どうやら、先日の使徒戦を見ていたらしい。
「・・・(汗)」
だが、責められている者は汗を流すだけで、何も応えない。
『アレだけ、自信満々に使徒を倒せると言った結果がコレかね?」
キールとは別の委員がそう言った。
「・・・・・・(汗)」
因みに、その場で責められているのは、 “問題ありません”と前回の会合で言い切ったゲンドウではなく、 何故か、瀧の様に汗を流す冬月だった。
因みにゲンドウは重体で入院中らしい。
『アレが第16の秘密兵器か・・・』
『まさか、本当に使徒を倒せるとは・・・』
『訳の分からないメカで、使徒のATフィールドを破るとはな・・・』
『一定以上の負荷を、ATフィールドにかけ続けた事により、破ったと言うが・・・』
『あの光線はそれだけでは説明がつきませんな』
『しかし、原理がわからんとは言え、ネルフのエヴァ以外で、使徒が倒せたと言う事実は問題だぞ』
『あぁ、この事実だけでも、向こうの権限は、更に、強化される事になるだろう』
キール以外の委員達が話し合いをする様に言った。
『それに比べ、此方は戦果をあげるどころか・・・』
『アレだけの資金を、搾り取っておきながら、使徒は倒せず』
『エヴァ初号機は大破、サード・チルドレンは戦死』
『いや、あれはワザとやったと言っても、差し支えあるまい』
初号機のプラグは、武装ビルに突っ込んで木っ端微塵で爆散。
更に、武装ビルの中にあったミサイル等が遊爆し、その爆発の影響で、周りのビルが倒壊し、 付近一帯ボロボロで、エヴァの残骸が何とか見付かっただけで、パイロットは死体すら見付からない。
いや、あの状態では、見付かる方が不思議であろう。
何せ、あの頑丈なプラグですら、欠片程度しか見付からないのだから・・・
また、初号機のコアらしき、欠片も全てかき集めたものの、全体の2/3程度しか存在せず、 残りは消滅していた。
“何とか復元をします”と、リツコは言ったが、その顔を見る限り、単なる気休めだろう。
出来ても、粗悪なコピーか、零号機をそのように偽装するだけと言う事は、 冬月にはわかっていた。
『更には、ファースト・チルドレンは遺書のようなモノを残し、行方不明・・・』
ファースト・チルドレンも芦名湖付近の崖にて、彼女のプラグスーツが、 丁寧にたたんで置いてあるのが見付かり、現在、付近を捜索中である。
因みに、その近くには重たい物を引きずった後もあった。
何かを抱えて、裸で飛び込んだと考えられている。
冬月は、死んだのなら、次のに移行したかもと考え、ターミナルドグマに降り、 素体のある某ダミープラントに行ったのだが、素体は1体残らず消滅していたのである。
調べると、素体を維持する為のLCL循環パイプのコックが弄ってあり、 更に、そこからレイの指紋が検出された。
その事実により、おそらく、ゲンドウが植え付けていた“無に還りたがる衝動”が効きすぎた為、 二度と復活しないようにと、自殺しようとしていたレイ自ら、 無に還るのに邪魔となる転生先の素体を全て破壊したのであろうと、冬月は考えていた。
冬月は呆然とするも、何とか湖に沈んでるであろう死体の一部だけでも見つけ、 新たなる素体を作ろうと考え、捜索させているらしいが、無駄であろう。
なぜなら、処々の都合で、彼等の死体等見付かるはずは無いからだ。
(下手をすれば、レイの肉体はLCLになっている可能性がある事を知らないのだろうか?
いや、一縷望みをかけているのかもしれない)
『コレでは、ネルフの権限を強化するどころか、下手すれば剥奪されるやも知れん』
『貴様らは、今まで、ネルフが、我々ゼーレに与えてきた損害、 どの位になって居るか・・・分かっているのか?』
最も、ゼーレの一番の損害は、ゼーレの長老会が、裏・死海文書に頼りきり、それどころか、 解釈の一部を間違えて、セカンド・インパクト後の行動に失敗し、経済力をはじめ、 様々な力を失った事であろうが・・・
「で、ですが、アレは全て碇と葛城作戦部長、いえ、主に葛城作戦部長の暴走の所為で・・・」
冬月は、責任回避の為か、半ば事実である事を言った。
だが、ミサトの洗脳教育を行ったのはゼーレである為、それは、言外に、 ゼーレの責任であると言っているに等しいのだが・・・
『待ちたまえ、アレを“碇”の名で呼称する事は、今後、一切禁じる』
だが、そんな事よりも、キールは、ゲンドウの姓の事について、口を挟んだ。
「ど、どう言う事でしょうか?」
いきなり、キールからそう言われ、驚く冬月。
『サード・チルドレンを死亡させた時点で、奴と碇家とのつながりは、全て、完全に消えた』
『つまり、どうやっても、奴を使って、碇財団を何とかする事は、完璧に不可能になった』
他の委員が補足するようにそう言った。
一応、先日まで、ゲンドウは、直系であり、当主候補でもあったシンジの父親と言う事で、 碇財団関係の事に口を出す事や、敷居をまたぐ事も、一切、許されていなかったが、 ゲンドウが碇の姓を名乗る事だけは許されていた。
当初、シンジの親権は、問題ないと言って、何も考えていなかったゲンドウを怒鳴りつけつつ、 代わりに、ゼーレが必死に死守していたらしい。
(無論、シンジの親権がなければ、碇の姓を名乗る事が出来なくなるとは考えてもいなかったらしい)
ユイを初号機の生贄にした後、碇財団には、当主になれる家系の存在が、隠居とあわせて、 3人しか残って居なかったかららしいが・・・
(一応、シンはユイとは年の離れた従弟で、小さい頃から、海外で暮らしていたと言う事になっており、 セカンド・インパクトの混迷期の時に両親を失い、ユイがゲンドウと駆け落ちして勘当された後、 碇老に引き取られ、養子になった事になっている)
先日、碇シンが当主に正式に決まったものの、彼には、未婚らしく、子供が居ない。
(この辺の情報は全く無いため・・・)
それに、シンジが、本来、預けるところに着く前に、横から掻っ攫い、自分の下に連れて行き、 弟のようにかわいがっていたという情報もある。
(シンジが流した情報だが・・・)
それゆえ、シンジが成人すれば、直系である彼に代を譲り、隠居する可能性もあったのであった。
(サード・インパクトには間に合わないが・・・)
また、彼が何かの事情で、死んでしまえば、 自動的にシンジに当主の座が移る事になる。
(こっちの方を、虎視眈々と狙っていた)
そうなれば、シンジの親権を持つゲンドウを使って、その財等を奪うか、 もしくは、財団を都合の良い様に操ろうと言うゼーレの考えがあったからだが・・・
(この為に使った額も、見返りをかなり見込んでいた為、半端ではなかった・・・無駄になったが)
だが、ゲンドウが司令をするネルフが、無謀、無策と言うよりも、最初から、 殺す気だったとしか言えない様な行動で、 その重要な駒であったシンジを、 戦死させたというか、殺してしまった。
(最もそれをしたのは、ゼーレが決めたお飾りの作戦部長と、それに心酔する恋の奴隷男だが・・・)
その結果、碇総本家だけでなく、分家や使用人も含む一族全体も激怒し、 現在、色々と訴えられた為、ゲンドウは完全に碇の名を名乗るどころか、 完全に碇家との繋がりを断絶され、更には、ネルフ自体、敵視されているのである。
今は、特務機関ネルフの司令と言う事で、冬月が権限などをフルに使って、 何とか先延ばしが出来ているが・・・
その代わり、もし、ゲンドウが司令を辞めたり、クビになったり、ネルフの権威が度無くなったりしたら、 即、裁判無しの実刑判決を喰らう事になるだろう。
因みに、シンジを殺した直接の原因であるミサトも、ゼーレの庇護が消えたら、同じである。
『これ以上、奴が碇の名を詐称するなら・・・
碇財団だけでなく、残りのアンカード財団、皇神財団、キリシマ財団、ナギサ財団、ヤマギシ財団、 更には、その六大財団を中心する世界財団連盟が、ネルフの権限を全て剥奪させ、潰す為に、 使徒殲滅を、全面的に、あの第16独立連隊に任せるように、国連へ、精力的に働きかけるそうだ』
元々は、この世界財団連盟の中心となっている六大財団は、碇財団と皇神財団だけが大きく、 残りは、財団ともいえないくらい小さく、単なる1つの中小企業だった。
だが、セカンド・インパクト直後から、それらの財団は、いきなり、ゼーレの先手を取りまくり、 その勢力を奪うように、次々とゼーレ関連の企業を乗っ取ったり、その市場を奪ったりして、 急成長してきたのである。
(乗っ取られたのは、シンジの策略による影響である)
無論、ゼーレ関係の役員及び社員は乗っ取られた時点で、クビ、もしくはある会社に纏められ、 いわば、窓際左遷になってしまっていた。
(纏めて置かれ、常に監視され、飼い殺しの状態になっていたが、ゼーレが某国の政府を暴走させた時に、 その殆どの命を奪うと言う自滅的行動をとってしまったらしい)
その為、かつては、セブンシスターズとまで呼ばれ、世界をまたにかけていたゼーレ七つの財団は、 今では、規模的にも、数十分の一以下まで、その力を落としていた。
だいたい、災害に遭い、悲惨な目にあった時に、かなり尽力し、自分達を助けてくれた企業と、 全く助けてくれず、足元を見て、暴利をむさぼっていた企業・・・
復興がある程度進み、余裕が出来始めた時、頼りにし、また、取引等を多くするのは、 どちらかと言えば、やはり、助けてくれた企業であるのは当然である。
その為、各国の復興が進んでいくと、ゼーレ関連の企業の取引が極端に少なくなり、急速に力を失い、 殆どの企業が潰れる寸前まで行き、負債塗れで、会社を身売りするしかない状態になるのは、 当たり前の事だろう。
何故、そう言う基本的な誤りをゼーレがしたかと言うと、 裏・死海文書の中に、セカンド・インパクト前後に関して、 “力を蓄える時”と言う字があったからしい。
その意味を考えていると、碇財団や、某事情により、ゼーレから離反した皇神財団が、 私財をなげうって、被害にあった国を援助し始めた。
ゼーレは、この2つの財団やそれについていく企業の事が、裏・死海文書のネルフ等に関わる所や、 使徒戦辺りの記述には、特に書いてなかった事から、そのうち潰れるのだろうと解釈し、 自分達は逆に、私腹を肥やし、力を蓄えようと考えたのである。
そして、2つの財団が弱った時に無理やり吸収し、その功績を奪えば良いと考えて・・・
だが、勿論、後で、“解釈が違っていた”とか、 “これは、資金と言う名の力を蓄えると言うのではなかった”とか、 “損をしても、後の力を得る布石を蓄える事だったのだ”などと叫び、 後悔する事になったらしい。
(実は、このゼーレが間違った解釈を起こした記述にも、裏でシンジ達が関わっているらしい・・・)
そして、セカンド・インパクトから世界がある程度立ち直り始めた頃には、 ゼーレと入れ替わるように巨大に成長していっているこの六大財団は、 “世界の復興を、更に促進させる”事を理由に、連盟を組んだのである。
事実上、既に、世界の経済の7割以上を支配していると言われていたその六家の財団が、 表立って巨大な連盟を組む事になった為に発生する利権と、各国消費者から、 その六大財団のもたれているイメージなどが重なり、 他のゼーレとは関わりをあまり持たない殆どの財団や企業が、 その連盟へ、我先にと、自から参加していったのである。。
その結果、この財団連盟は、頭に世界と言う称号を得、 全世界の経済界を支配しているもう1つの国連と言っても、 過言ではない状態にまで、成長したのである。
無論、ゼーレ関連の財団も、利権に食い込む為、参加しようとしたが、セカンド・インパクト後、 碇財団と皇神財団の当主を暗殺しようとした陰謀が、世界財団連盟内で暴露されており、 かなり問題視されていたのに、ゲンドウの謀略が失敗して、さらにバレた為、 世界財団連盟総帥会議の結果、全会一致で、拒否された。
最も、連盟の中心とも、カリスマとも言える碇財団を始めとする六大財団の当主達を、 いきなり暗殺し、乗っ取ろうとしたていたり、 セカンド・インパクト以降の困っている人の足元を見るような経営手法から、 殆どの国の消費者達に嫌われ、敵視されているような所を、ワザワザ入れようとは、考えないだろう。
(メリットが無いどころか、デメリットが大き過ぎるし・・・)
結局、ゼーレは、先行投資をケチって、多くの取引先を失ったり、 度重なるシンジの謀略カウンターになどによる影響で、(益の無い)出費が鬼の様にでたり、 主力企業を乗っ取られたり、他の財団に嫌われ、 (食料品や罪人の引き取り以外の)殆ど他との取引が無くなり、ある意味、 村八分に近い状態になった所為で、現在、かなり、力が減少しているのである。
(つまり、古い家柄だけにしがみついている存在とも言える)
現在、影響力がかなり残っている政界も、殆どは資金つながりではなく、かなりの弱味を握っていたり、 元々、ゼーレの草だった者達を表舞台に出したりして、かろうじて繋ぎ止めているのである。
『そうなれば、わかっているだろうね?』
言うまでも無く、ネルフは潰され、ゼーレの人類補完計画も頓挫する。
(もう一度行えるような資金も政治力も無いし)
『現状のままでは、 我らの代でゼーレが廃れてしまう!』
『セカンド・インパクト直後まで、 世界の殆どを裏から支配してきた我等が、だ!』
口惜しそうに、委員が怒鳴った。
おそらく、全員の心情を代弁しているのだろう。
『我らゼーレが、再びその力を取り戻し、更なる力を得る為には、 サード・インパクト、人類補完計画以外に道は無い』
『それなのに、今、補完計画は頓挫してしまうことになれは・・・』
『今の我らの状態では、二度と補完計画を行う事は出来ない』
『補完計画の頓挫』
『それは、我らの代で、ゼーレが朽ちると言う事に等しい』
『『『それは許されない事だ!』』』
全員が冬月を睨む。
『もし、そうなれば、ネルフは、今まで行ってきた事を全て、表沙汰になり、 上層部にその全ての罪をあがなってもらう事になっている』
つまり、ネルフの罪だけでなく、ゼーレが行った事も、全て押し付けると言う事であろう。
『無論、タバシリの席は、何時でも空いている』
「そ、そんな・・・」
タバシリ行きと言う言葉に、冬月は顔を青くする。
他人は、かなり送り込んだとは言え、流石に、自分では行きたくは無いだろう。
なにせ、そこから、生きて出る事の出来た人間は看守以外、まだ、1人しか居ないのだから・・・
因みに、タバシリは、今のゼーレにとって、貴重な財源でもある。
なぜなら、唯一、他よりも格安で販売できる商品だからである。
(人件費、ほぼ無い食料プラントだし、セカンド・インパクト後、急増した重犯罪人を引き取ることで、 その国から、罪人の管理?料もとっているし・・・)
『冬月君、我々、ゼーレも、ネルフも、既に、後戻りは出来ない状況にあるのだ』
『左様、今までの度重なる失態の所為で、色々とね』
『何とか、抑えられてはいるものの、これ以上の失態は、ネルフ不要論に直結しかねない』
とは言うが、既にネルフ不要論はあちらこちらで出ている。
『使徒を倒すと言う名目で、各国から予算を搾り取ってきたが・・・』
『今後、かなり難しくなる』
むしろ、返還を求める所が多いだろう。
『最低でも、次の議会で、権限が大幅に縮小される事は、覚悟しておきたまえ』
「・・・・・・・・・」
呆然とする冬月。
既に、ゼーレもネルフも、 後戻りが、絶対に出来ない状況にある事を理解していた。
戻ろうとしても、破滅しかない事も・・・
「(六文儀など見捨てて、逃げて、隠れようかなぁ〜)」
冬月は、真剣に考え始めた。
今なら、ゲンドウに全て押し付けて、逃げることが出来るのではないかと・・・
『そうそう、君も、今更、抜けようとは考えないことだ』
だが、冬月の考えている事を読んだのか、補完委員の1人が、先手を取ったように言った。
『そんな事をすれば、我々、ゼーレだけでなく、世界中の組織が君の命を狙う事になるだろう』
今まで、ネルフ(主にゲンドウやミサト)が、好き勝手やってきた事に対するつけである。
それに、外部に味方を作らず、その秘匿性などから、敵ばかり作ってきたのだから・・・
(特にゲンドウやミサトがワザワザ無用の敵を作り、急増させた)
『再び言うようだが、もし、逃げたり、ネルフが機能しないようになれば・・・』
『セカンド・インパクト以降、ゲヒルン時代から、ネルフが行ってきた罪』
『君達が立案し、勝手に行い、失敗した謀略の数々・・・』
『即座に、その全てが表に出る事になる』
このまま一緒に進むか、それとも、全ての罪を押し付けられるかと言う事である。
『では、次の使徒までに、ドイツの弐号機と、アメリカの参号機、肆号機を送らせる』
『新たなチルドレンの選抜を急げ』
『予算については、一考もしないし、こちらには、その余裕も無い』
『自分たちで集めるのだな』
『では、後はネルフの仕事だ』
そう言って、委員達は消えていく。
『冬月先生・・・六文儀に、裏切るな、逃げるなと言っておいてくれ・・・
因みに連帯責任だ』
再び、念を押すようにキールがそういった。
「ぎ、議ち」
冬月の答えも聞かず、キールの映像も一方的に消えていった。
「・・・ど、どうしろと言うのだ?」
冬月の虚しい呟きが響き渡った。
その頃・・・
国連総本部・議会場
「ど、どう言う事ですか!」
国連事務総長が驚いたように、いや、むしろ、焦ったようにそう言った。
「ネルフが、あれだけの予算を各国から毟り取り、特務権限を使って、 その用途すら不鮮明にしていたくせに、 いざ、使徒が襲来したら、使徒は倒せず、それどころか・・・」
壇上にあがっている大使が、そう周りの大使達を見渡す。
そして、全員が黙って、注目しているのを確認して、大きく口を開き・・・
「ギリギリになってから、 訓練もしていない一般人であった子供を、何も言わず、 何も説明もせずに、騙すように呼び出し、徴兵する!
更に、直前になっても、何も説明もせず、その子供をエヴァに無理やり押し込む!
そのまま、何の覚悟もさせず、確認もせず、使徒の目の前に打ち出す!
巨額の予算を投入させたエヴァをワザワザ破壊させる!
最後には、止めとばかりに、自らの手でコックピットを破壊し、 子供を殺したからだ!」
事務総長を始め、ゼーレ、ネルフ派の大使に向かって、怒鳴りつけるようにそう叫んだ。
ファースト・チルドレンの事故から、サード・チルドレンを呼び出すまで、 実は、三ヶ月ほど期間があいていた。
更には、サード・チルドレンは、10年近くも別居していたとは言え、 一応、司令の子供だったと言う。
あのゲンドウが、適正があるとは知らなかったと言っても、あのゲンドウなら、 自分の息子を、最初に適性を調べるはずだし・・・
あのゲンドウが、【息子を巻き込みたくなかった】と言う様な 暴言を吐いても、 いつもの行動から、逆に 【嘘吐け!!】 と、 満場一致で怒鳴られるだけだ。
まぁ、それが真実にしろ、そうでないにしろ、致命的な不手際には変わりないのである。
それに、全人類の命運がかかっているのであれば、自分の手元から放さず、 幼い子供であっても、しっかり、説明し、いや、しないにしても、 とにかく、エヴァを操るチルドレンとして、訓練し、鍛えてやった方が良いハズだ。
なぜなら、その時点では、世界で唯一に近い、チルドレン候補だったのだから・・・
(ゲンドウが、シンジを手放した時点では、まだレイやアスカはチルドレンでは無かった為・・・)
また、ネルフへの止めとばかりに、先の使徒戦で、 ネルフが、シンジにとったその非人道的とも言える行動の一連の記録が、 第16独立連隊から、碇財団を始めとする六大財団と国連軍上層部へ、 六大財団から、世界財団連盟へ行き、そして、国連軍上層部と世界財団連盟から、各国に流れていた。
世界財団連盟のとある決定のメッセージ付きで・・・
因みに、ゼーレの力がまだ色濃く残る国連事務総長と、 (裏金に釣られたらしい)日本政府(の議員達)が承認したネルフの特務権限により、 第16独立連隊は、ギリギリまで口出しが出来なかったと言う事になっている為、 非はない事になっている。
「しかも、その子供は、 あの碇財団ゆかりの子供だったと聞く!」
別の大使が立ち上がり、付け加えるようにそう叫んだ。
ココが更に重要だと言わんばかりに・・・
「その結果、碇財団を始め、 アンカード、霧島、渚、山岸、皇神の六大財団は、 今後、ネルフ関係には、一切、出資しないし、使わせないと言ってきたのだ!」
「世界財団連盟全体も、それを指示すると言う!」
「つまり、コレは、ネルフに金を出す国に対して、財界は、 “今後、一切の援助を行わない”と言われたに等しい!」
「下手をすれば、 その国から出て行く企業も出るやもしれん!」
コレはセカンド・インパクトの痛手から、まだ完全に回復していない国にとっては死活問題である。
それに、世界財団連盟は、あちらこちらに、財団所有の人工島を作って、 本社をそこに移しており、その気になれば、その国を切ることも可能であるらしい。
(人工島は移動する事も出来るらしい)
しかし、それ以上に・・・
「それに、あのような事を平気でするような組織、 いや、無能者を通り越した利敵行為をしまくる外道に、 使徒との戦いに密接に関わってくる重要な役職を与えているような組織に、 無駄金を出すほど、我々は愚かではない!」
そう、あんな非人道的で、醜悪で無能な組織と言うか、作戦部長の実態を見て、 世界の命運を賭けようと思う国はまず無いだろう。
世界財団連盟の決定は言わば、その考えを後押ししたと言うだけである。
「故に、我が国は、 今後ネルフには一切、予算を出さない!」
「我が国もだ!」
「我が国も!」
「私の国もだ!」
次々に、ネルフへの出資を拒否する国が、名乗りをあげていく。
更には、支部を持つ国は、その閉鎖まで叫んでいる。
言わないのは、極少数のゼーレの支配が強い国で、今まで、ネルフに流れた裏金も使って、 自国の復興を進めていた国だけである。
もっとも、それでも、表立って、資金援助をするわけには行かなくなった事に変わりないが・・・
「ですが、使徒はどうするのです?!」
叫ぶように、事務総長がそう言った。
「それこそ、国連軍、第16番目の連隊、あの独立した特殊な連隊、 あの英雄の率いる通称、第16独立連隊に任せればいいではないか!」
「そうだ!
あの特殊特務連隊ならば、信頼に値する!」
出資を拒否する大使達が叫ぶようにそう言った。
「で、ですが、ネルフはゲヒルンという名前の一研究機関の時から、使徒を研究し続け・・・」
「だが、勝てなかった!」
ある大使が、事務総長の言葉を遮るようにそう言った。
「いや、寧ろ、勝とうとさえ、 しなかったように見える」
「し、しかし、彼女は、父親を使徒に殺されており、その為に、血の滲む努力で」
事務総長は、何とかネルフ、ミサトを庇おうとするものの・・・
「だが、あの行動をみればねぇ〜」
別の大使が呆れたように言いながら、周りに同意を求めるように目を向ける。
回りも頷く。
「ど、どう言う意味ですか?!」
ゼーレ派というより、その構成員としか思えない事務総長が慌てて叫ぶ。
「では、遠慮なく。
【本当に、彼女は、 使徒を倒す気があるのですかな?!】
そう我々は訊いているのですよ」
別の大使が、事務総長(あまりにもネルフに偏っている為、近々不信任案で交代させられる可能性大)に、 そう言った。
今回の一連の行動で、大使達は、ミサトのパンダの名目である、使徒に対する復讐心を、 完全に疑っているのである。
第一、いくらミサトが事の起こった中心で生き残り、 セカンド・インパクトを起こした存在に復讐心を燃しているとは言っても、 彼女よりもはるかに優秀で、更に、その看板に相応しい軍人は、 掃いて捨てるほど居るハズであるからだ。
「あ、あれは、初めての使徒戦で・・・」
言い訳をしようとする事務総長に・・・
「何も説明せずに、不意打ち、いや、最初っから、騙す様に子供を呼び出していましたな」
「手紙にも、ただ“来い”とワープロで打ってあるだけで、 何で来なければならないかの説明すら無かったようですな」
実は、ゲンドウの送った手紙のコピーが、会場内に回っていた。
コレは、碇家から、資料として、コピーでない、 ゲンドウの指紋が確り着いていたオリジナルを提出されたのである。
最もコレで来る方も来る方と思うが、だが、十年近くもあっていなかった父親と会うという事で、 子供ながらに、行ったのであろうという事で納得していたらしい。
因みに、あのミサトの写真は、処々の都合で、まだ回されて無いらしいが・・・
(ネルフの某部署で、コピーが大量に出回っている最中である)
「戦いに赴かせるのに、説明をしないどころか、理由すら、一切、何も話さない」
「何も知らない子供を強引に載せ、いや、コックピットに放り込んだまま・・・」
ミサトと黒服達がシンジを捕まえ、嫌がるシンジをプラグに放り込む映像も全員が見ていた。
「更に、口喧嘩をして、ワザと注意力をそぎ、突然、通信を切って、完全確認もせず、 いきなり使徒の、しかも、真ん前に打ち出して、そのまま、餌食にする・・・」
口喧嘩の映像も、確り見たらしい。
「寧ろ、あの女は、チルドレンと言う、特殊な才能、使徒を倒せる可能性をもった子供達を、 抹殺する為にいるのではないかね?」
「利敵行為と言うより、世界を破滅に導こうとしていると言われた方が、すんなり、納得が出来ますな」
確かに、あれでは、そう思われても、仕方ないだろう。
「実際に、あの子供に止めをさしたのは、 あの作戦部長の命令でしたな」
確かに、プラグを射出させたのはミサトの命令である。
「死体すら残らなかったそうだ・・・」
現地の国連軍の調査団が、跡地に行ったらしいが、あの状態で、死体の欠片が見付かるのは、 奇跡に近いという報告がきている。
しかも、見付かっても、既に灰、しかも、他と区別する事が出来ないとの事である。
「それに、父親の仇と言っていますが、実際の所はどうなのか・・・」
「最近、セカンド・インパクトが本当に使徒の所為で起きたのかさえ、疑問ですな」
「そう言えば、現場の唯一の生き残りでしたっけ?」
「アレだけの災害の中心に居たハズなのに・・・」
「しかも、南極はあの状態ですからな・・・」
「かなり怪しいですよ・・・」
多くの大使が納得をしたように、頷き、口々に同意していく。
このまま続けば・・・
【セカンド・インパクトは使徒が起こしたのではなく、葛城調査隊、いや、 学会に認められなかった葛城教授が、その復讐の為、人類を滅亡させるべく、 故意に起こしたものであり、葛城ミサトは、その父の意思を継いで、 人類を破滅に導こうとしているのでは?】
と言う、ミサトが聞いたら、激怒し、只でさえない理性が吹き飛びそうな話も出てきそうである。
「ともかく、ごく潰しで、大金食い虫の犯罪者集団、ネルフなどは早々に解散させ、 完全に第16独立連隊だけに任せればいいでしょう」
「うむ、経済観点から見ても、賛同する」
「ですな、あそこは余計で、使用目的等も不透明な追加予算を求めませんし・・・」
「装備の費用は、作戦で使った弾薬以外、世界財団連盟がもってくれていますし・・・」
「あの装備も、ある程度は機密になっているとは言え、 チャンと、予算運用の記録まで、事細かく正確に出しましたからな」
「その弾薬も、ある意味、格安ですし・・・」
「年間にかかる費用や予算も、ネルフの何十分、いえ、何百分の一ですかな?」
「いくら、相手は販売元だから、差額が出るとは言っても、その差がねぇ〜」
「それに、エヴァ1機分で、 あのモビルフォース1分隊の何分隊、 いや、何十分隊作れるか・・・」
エヴァンゲリオンを1機作るのに、最低でも10兆はかかる。
更に、開発時に失敗したトンでもない数を考えると、開発費用がどれだけかかった事がわかる。
何せ、ゼーレの屋台骨であった財団連が落ちぶれた原因の1つでもあるのだから・・・
(乗っ取られたのも、資金不足の為、売らねばならなかったという話もある)
現在、零、初、弐、参、肆、伍、陸、漆、捌の9機が確認されている。
完成しているのは、参号機までで、残りは製作途中であるらしいが・・・
(肆号機は、後はコアの精製と、装甲等の組み立てとか・・・)
この事が知られているのは、力を失ったゼーレが、自分達の負担を減らす為に、 伍号機以降も、国連を通して作らせているからである。
しかも、建造費にも、使途不明金が追加されており、ゼーレや、ゼーレ派の議員、 ゼーレ派の国の懐を潤すのだから、余計にかかっている。
勿論、その開発に関わっている企業は、ゼーレ関係の会社のみであり、更に、間に数社のゲンドウか、 冬月、それにゼーレ関係のダミー会社が、 間にあるように書類を作成し、余計に手数料を取っている。
当然、殆どが内々でやる為、調べる事が難しい。
(もしもの時は、特務権限を持ち出し、調べさせない)
その影響で、エヴァを作る金額は釣りあがり、量産期であるにもかかわらず、その額は一機辺り、 最低でも20兆を平気で超えている額とか・・・
その所為で、国連の備蓄等をかなり減らす事となり、各国に追加予算を迫る事となっている。
そんな事が起こっているのに、ネルフは、更なる追加予算を請求したり、特務権限を振りかざして、 好き勝手に横暴な事をやっているのだから、嫌われて当然である。
特に本部(の司令と作戦部長)が・・・
「維持費なども考えれば、凄まじい差ですよ」
また、生体部品が殆どを占めるエヴァは、それを維持する為に、かなりのコストがかかるし、 動かすにも、かなりの電力が必要である。
更に、特務権限を笠に、正式な監査も入れさせないので、維持費とかも、全て割増請求である。
(特殊監査部はネルフ、もしくはゼーレの子飼いであるから、仕方がない)
モビルフォースの場合、特殊な発電機を内蔵してあるらしいので、 エヴァを動かすより、安上がりであるらしい。
「第一、モビルフォースは、特別な訓練が必要とは言え、ネルフの秘密兵器のように、 子供で無いと動かす事が出来ないようなものでもないし・・・」
因みに、先の使徒戦で乗っていたムサシとケイタは、実年齢的には、子供だが、 テスト機パイロットであり、更には志願兵でもある。
この2人は、逆行者ではなく、戦自が独自に行っていたトライデントと言う兵器のテストパイロットだった。
だが、ある大規模な事故の為、秘密兵器トライデントと無許可の少年少女兵の情報が漏れ、 シンジの指揮のもと、秘密基地が制圧され、他の孤児達と共に、助け出され、 関係者は全員牢獄行き(一部を除き、タバシリ行き)になったのである。
そして、この2人は、特に強く、恩義を感じたらしく、役に立ちたいと、志願してきたのである。
勿論、シンジは、年が若い事と、身体に異常がある事を理由に許さなかったのだが・・・
(我々は、ネルフや戦自のような事はしないと言って・・・)
しかし、治療の過程で、何故か、2人の肉体が年をとり、 20代と言ってもおかしくない状態になったのである。
更に、何故か、彼等には新しい戸籍があり、その年齢は、確り、成人を超えており、 厳しい試験を突破し、新兵として、恩義を強く考えている所、 つまり、第16独立連隊に、正式に入隊してきたのである。
この時、シンジはマナを呆れたように見ると、マナとなぜか、カヲルと、某黒い長髪で、 口元に黒子のある少女が、目をそらしたが、関係ない・・・と思う。
因みに、彼等の同僚であった霧島マナと言う少女は、第16独立連隊が、 制圧するきっかけとなった数ヶ月前、 プロトタイプ・トライデント初起動実験による大事故の大爆発で、亡くなっている。
(コレを使って、戦自の自分を消して、逃げたのである)
また、何故か、この2人は事故の直前、彼女から渡されたらしいお守りの人形を、形見として、 大事にしているらしい事も付け加えておく。
(因みに、2人はマナの事をマナに似ている年上のお姉さんとしか思っていない。
まぁ、髪型も変えているし、前々から、第16独立連隊の存在を知ってたし・・・)
「維持費にしろ、この資料の倍かかったとしても、エヴァ一機分で、十何分隊分、維持出来るか・・・」
「全く、そのとおりですな・・・」
「特許とかは、財団連盟が持っていますが・・・」
「機体が試験段階のという事で、まだ、一般には配備されないとは言え・・・」
「確りと、現状報告があがってきますしな」
「こちらが機密と納得出来る理由のあるモノ以外の情報は、確り公開していますし・・・」
「えぇ、そう言えば、モビルフォースの完全な実用化は数年後ですか?」
「いえ、最初の奴は、もう少し早まりそうらしいですよ」
「その前に、初期用の訓練用のシミュレーションマシーンが発売されるとか」
「それを買った所へ、優先的に販売されるらしいですな」
「あぁ言う兵器は、確り、訓練が出来てないと動かせませんからな」
「実は我が国は、既に購入予定で、予約を入れています」
「おぉ、それは我が国でも予約をせねば・・・」
「しかも、モビルフォースは、軍事だけでなく、 災害救助、復旧、土木工事等と、用途が多いですからな」
「元々のコンセプトは災害救助や復旧などですからね」
「寧ろ、最初のはそれに特化した奴ですよ」
「しかし、復興だけでなく、今後の奴の訓練にも十二分に使えますからな」
「まったく、機密をたてに、何もしない、どこぞの組織とは違って活躍も凄いですな」
「いやはや、確かに、多額の予算を奪って行くクセに、 その実、犯罪行動だけしか、やっていない組織とは違いますよなぁ〜」
すでに、2つの組織を比べ、ネルフに対する嫌味大会になりかけている。
因みに、犯罪行為と言うのは、ミサトが特務権限で、道路交通法違反しまくったのを、 揉み消している事等が、先日の調査で明らかになったからである。
最も、事故を起こして、黙らせたりしているくせに、確り、保険金で完全に修理、 更には改造もさせたりするという保険金詐欺まがいの事をしている事は、まだバレてない様だが・・・
(バレたらかなりの事になるだろう)
第16独立連隊も特務権限を持っているものの、基本的に争いの調停や、災害救助など、 世界平和などに貢献し、更に、余程の事が無い限り、特務権限などを持ち出さないし、 国連からの予算も殆ど出さなくて良い。
(基本的に、テスト機と言う事なので、世界財団連盟が維持費などを出す為、殆どかからない)
対して、同じ特務権限を持っているネルフは、ゲンドウとミサトが、積極的に外部に、 特務権限を使いまくり、外部を助けるどころか、逆にこき使って、予算を奪ったり、 敵を作りまくっているので、どちらが優勢か、どちらに信頼を置くか言うまでも無い。
「で、ですが・・・」
事務総長は何とか、ネルフを庇おうとするものの・・・
「実際に、第16独立連隊は、あの使徒を倒しています!」
その事務総長の言葉を遮るように、大使の1人がそう言った。
「あぁ、使徒殲滅にも実績がありますな、ネルフとは違い」
「ネルフは、あれだけの大敗を、自らの手で、引き起こしましたからな・・・
あれだけ、大言を吐いて、洒落ですまないほどの金額を毟り取り、好き勝手やっていたくせに」
周りの大使達も、口々に納得の言葉を吐いていく。
実績を出している真っ当で、英雄と言われる人間が司令をする組織と、実績を出すどころか、 司令を始め、上層部に全く信用の無いくせに、日頃から特務権限を使いまくって、犯罪を揉み消したり、 強引な事をやりまくり、予算を殆ど奪っていったくせに、肝心なところで、せせら笑うように、 今まで搾り取ってきた金を肥溜めに捨てるようなトンでもない事をやり、自爆するような組織・・・
どちらを是とし、どちらを切り捨てるか、言うまでも無いだろう。
「アンダーソン閣下、国連軍として、どうですかな?」
この会議の中、ずっと黙っている国連軍の総司令であるジョシュア=アンダーソン元帥に、 ある大使が問い掛けた。
すると、アンダーソンはゆっくりと立ち上がり、議会に居る全員が注目する。
「彼等は、国連軍の中にあっても、ある意味、特殊な、完全な独立部隊であり、 その指揮は全て、連隊のトップたる碇シン司令のみが執る事になっているので、 私の決定だけでは、すべてを決めることは出来ない」
静かに、アンダーソンはそう言った。
「・・・どう言う事ですかな?」
意味がわからず、大使の1人がそう尋ねた。
確かに、極秘裏に行った契約により、指揮系統は分離されているものの、国連軍総司令は、 あの連隊司令の直接の上司と言うことになっていおり、詳しい契約を知らない者は、 総司令なら簡単に命令が出来ると思っていたからだ。
「私でさえ、その行動にある程度の指示を要請する事は出来ても、その軍の特異性から、 強制的な命令を出すことは出来ない事は、契約にもある通りだ」
周りから、どこと無く、絶望したような溜息が漏れる。
かつて、無理やり自分の指揮下に置き、その権勢を強めようとした某国の政府や軍が、 一ヶ月程度で、事実上、崩壊し、数ヶ月と経たずに、全く違う政府に生まれ変わり、 新しく、全て編成される事になったからである。
更に、策謀していた議員達は、二度と政界に復帰できないどころか、今は戦犯として、一生牢獄の中、 実際に行動を起こした軍上層部は全員、戦死もしくは、議員達と同じく、タバシリの牢獄逝きになっている。
そんな事があった為、その国は常任理事国から、外されている。
(生まれ変わっている為、その内、復帰するらしいが・・・)
そして、アンダーソンの言葉を聞いた事務総長の目がキラリと光る。
上手くやって、ネルフの立場をと考えているのであろうが・・・
「だが、私は、先日、その碇シン上級大将から、1つのメッセージを預かっている」
そう言って、事務総長が口を挟む前に、アンダーソンは、事務総長を睨みつつ、 懐から、一通の封筒を取り出して、中身をだす。
周りがヒソヒソと騒ぎ出す。
先日まで、碇シンは単なる大将であったからだ。
(つまり、先の使徒戦の功績により、出世したらしい)
因みに、上級大将とは、大将の上の、ある意味、名誉階級であり、その力は元帥に次ぐ。
いわば、次期国連軍総司令(大元帥)候補、少なくとも、次期国連軍総参謀本部長、 もしくは、各方面の統括司令候補に承認されたと言っても良いだろう。
いや、既にシンは特別全域方面軍司令と言う事なので、この場合、次期国連軍総司令候補であろう。
更に、実現すれば、おそらく、アンダーソン大元帥の年齢から考えても、 史上最年少で、国連軍のトップである。
しかし、殆どの者が、異議を唱えない。
唱えるのは、ゼーレの人間くらいで、ごく少数のみ・・・
だが、当然、今唱えれば、その議員と国は他国から睨まれる事になるので、 心の中だけで唱える事しか出来ない。
彼は、セカンド・インパクト以降の行動や功績により、殆どの国で、英雄視されているからだ。
殆どの場合、英雄とは、死んだ後、 為政者に利用されるだけだが・・・
もし、その英雄にその実力があり、 確りとした部下達がつき従っており、更に、その時の実力者達、その殆どが認めている場合、 トップに君臨する事が出来るのである。
いや、ある意味、英雄は、それか、お飾りの御輿となるしか、生き延びる道は無いと言っても良いだろう。
(御輿の場合、何時の間にか消えるか、謀殺されるだけだが・・・)
話し声が消えるまで、アンダーソンは黙っている。
事務総長は口を出すなとばかりに睨んでいるので、事務総長は顔を蒼くして、何も言えなくなっている。
「「「「「・・・・・・・」」」」」
そして、そこにいた全員が、黙り、アンダーソンに注目する。
アンダーソンの口が開く。
「世界を破滅から護る事こそ、我等が組織され、巨大な権限を与えられ た最大の理由である。
許可さえいただければ、使徒の殲滅の任、我ら連隊全員、ありがたく拝命する。
国連軍第16連隊、司令・碇シン上級大将。
以上だ!」
会場が歓声で沸いた。
事務総長は睨まれ続けた緊張感から開放され、崩れるように、倒れたが、誰も気にしなかった。
To be continued...
(あとがき⇒悪あがき?)
う〜ん、コレは最後の量産型ウナゲリオンが出てくる前に決着がつくかなぁ〜
ゼーレとネルフ、既に存在できる事事態が疑問な状態だね。
トウジ? ケンスケ?・・・出てくるかなぁ〜
まぁ、出てくるでしょうね。
でも、幸せにはならないと思う。
特にケンスケは・・・
(死刑ネタは使われているので・・・)
ムサシとケイタは、本当に逆行していないです。
この世界では、マナは、トライデントの起動させる実験の時、 爆散して死亡した事になっている為、親戚かそれに近い姉ちゃんとしか思っていません。
(マナの死?の状況を聞き、激怒して、科学者を殴り倒した所を見たため・・・)
実際、彼等の目の前で、マナの乗っていたハズの機体が、爆散しましたし、 そのコックピットも、なぜか、故障していたらしく、射出できずに、途中で引っかかって、 ボロボロになっていた状態になっていましたから・・・
(中身は真っ黒な炭だけ・・・)
勿論、その爆発は、ある意味、マナ自身が仕組んだものだし、マナはそのまま逃げ出しています。
更に、この事故を理由に、国連軍総司令達に即座に許可を取り、シンジが部隊を引き連れて、 戦自の秘密基地に踏み込み、壊滅させています。
監禁され、モルモット扱いされている子供達を早急に助け出す為と言って・・・
勿論、その作戦でも、出世していますが・・・
で、他の子供達ですが、治療を受け、確り、世界財団連盟が経営する孤児院で、幸せに暮らしています。
将来は財団、ひいては、自分達を救ってくれたシンジ達(大人バージョン)に恩返しする積りで、 確り勉強をしています。
次回は、ネルフに戻りますので、アンチ・ミサトファンの方、暫しのお待ちを・・・
P.S
前々回、リツコの金髪黒眉についての記述がありますが、 アレはそういう組み合わせがおかしいと言うわけではありません。
ただ、髪の毛だけ染めているので、純粋に、リツコを揺さぶるためだけに、そう言っただけです。
実際に、生まれつき、そう言う組み合わせや、髪と眉の色の違う人は、結構居ます。
むしろ、そういう人が多いのかもしれません。
(実際にとりもちもアメリカでそういう人に出会っています)
一部の人に勘違いさせた事を深くお詫び申し上げます。
(ながちゃん@管理人のコメント)
イカレ、もとい、イカしたナイスガイ、とりもち様より、「新起動世紀ヱヴァンガル改」の第五話を頂きました(汗)。
なんかもうネルフって、虫の息じゃないですか♪(笑)
ウナゲリオンまで・・・というより、アスカ来日まで持つのか、この組織は?
一発目でコレでしょ?・・・使徒襲来があと一、二回で、ご臨終を迎えちゃうのではないでしょうか?
何より、作戦妨害部長がまだ健在ですし、弱り目の所に、オウンゴールを決めてくれそうな予感がします♪
ま、そこが楽しみなんですけどねぇ〜、一ファンとしては♪
第16連隊が動き出しました。アダルティなシンジ君(シン)とその愉快な仲間たちが、これからの使徒(ネルフ?)を殲滅(おちょくり?)してくれることでしょう。
・・・でも、もうシンジ君(少年バージョンの)は、出番がないんですよねぇ?
彼の冴え渡るまでの毒舌がもう見られないのは、すごく残念です。一番のお気に入りだったのにぃ〜。
またミサトを馬鹿にして欲しかったです。あの低レベルな論戦・・・実に惜しいです。カンバ〜〜ックな気分です。
・・・代わりに、誰か出しませんか?(ニヤリ)
彼の毒舌を受け継ぐどこかの子供(さすがに大人じゃ興醒め)に、スポークスマン役をやらせるとか?(笑)
当然、ネルフとの窓口も、その子供・・・う〜ん、身震いしますねぇ。どうでしょう?ねっ?ねっ?(うるうる)
今回は大変読み応えがありました。とても面白かったです。
続きが待ち遠しいですね。
とりもち様、次の電波(第六話)も待ってますよぉー。・・・って、同時投稿だっけ(汗)。
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