新起動世紀ヱヴァンガル改

第七話 組織改革! アスカ初陣!

presented by とりもち様





 十五年ぶりに出現した使徒が倒されてから、ネルフの動きは慌しかった。

 続々と、各国にあった多くの支部が潰されていき・・・・・・

 新たな予算の確保が難しくなった為、潰される支部の物資や資金等を回収しつつ、 再編成が、大急ぎで行われたからである。

 因みに、今もエヴァンゲリオンの機体を開発している支部は、そのままエヴァを保有し存続が続くか、 エヴァの開発がすみ次第、存続が決まっている支部に機体を引渡し、 その後、直ぐに、マギ・コピー等を処理して、閉鎖される事になっている。

 本部では、アメリカ支部を始めとする世界中の支部から、エヴァの関係の装備や、 ネルフにとって必要な科学者、技術者を始めとする各支部の所員達が続々と送られてきている。

 その整備や整理、そして、更に、送られてくるエヴァ各機の受け入れ態勢を整え・・・

 元からいる本部所員と新しく来る各国の支部所員との間で、大きな問題を起こさないようにする為に、 親睦会などを予定したり、連携をとったり、時間調整をしたりと、色々とやる事が多く大変であった。

 特に調整をする(作戦部を除く)各部部長や副部長、それを統括する冬月など、目を回る忙しさである。

 因みに、作戦部の人員は減るだけで、新しい人材が増える事は無い。

 確かに、各支部には、作戦部にも、優秀な人材が居る事は居る。

 しかし、そんなのを本部に所属させたら、上司があの部長であれば・・・

 あの全ネルフの中で、その存在に最も矛盾を孕んだ部長が上司ならば・・・

 おそらく、ネルフの存在自体に疑問を持たれる事となり、 その某害悪部長、業務妨害推進部長を即クビにしないと、色々と不味い事になりかねないからである。

 そして、人数がそれなりに減ったが、そんなに仕事がないハズの作戦部の部員達も、 なぜか、忙しい状態になっている。
(部長がアレな為、本来やるべき仕事も、あまり回ってこないのに)

 その理由が、人数か減ったのに、某部長の所為で、洒落にならないくらい増えた某部長が、 直接しなければならない書類を、事務関係には有能だが、恋に恋して、 人を見る目を曇らせまくっている以前に、脳が膿んでいるんじゃないかと思われるくらい、 某部長にとって都合のよい解釈をしまくり、【一度、精神鑑定を受けた方がイイ】【一度、頭を開いて見た方が良いんじゃないか】と、陰で言われている副官が、 他の作戦部員にも、色々と仕事を回しているかららしい。

 そんなわけで、ネルフ本部は、病室から出てこないゲンドウと、 自分の立場を全く理解しようとしないミサトを除いて、 設立以来の大忙しな事態に突入しているであった。

 そして、そんな傍から見ても忙しいとわかる中でも、ミサトは相変わらず、上司として、 人として、反模範的行動をとりまくったり、他の部署の作業の邪魔をしたり、 折角の成果を水泡にしたりと、元気にやっていた。

 まぁ、周りからすれば、たまったものじゃないだろうが・・・

 当然、普通なら、ミサトを解雇するようにと言う運動が、 あちらこちらで、起こりかねないのだが・・・

 現状では、それ以上に、忙しすぎて、起こせないようである。
(余裕が出来たら、あるかもしれないが、司令や副司令が揉み消すだけである)

 だが、5日も過ぎると、ミサトが陣中見舞いと称して、 仕事の妨害にやってきても、自力で追い出す画期的な方法が編み出された。

 コレは整備部が始めた事であるが、そのやり方は・・・

 先ず、ミサトが仕事場に入ってこようとした途端、 多少離れた位置に居る新しく海外から入ってきた所員の中で、投擲が上手い者が、 手近なものをミサトの近くに投げる。
(投げる所員が近くに居ないのがミソ)

 投げる物は、当たったら、洒落ですまないものであり、 更に、当たったところも、尋常じゃないくらい、凹ませる。

 勿論、壁などに突き刺せたら、ベストである。
(最初は、見事、スパナとドライバーが壁に突き刺さっていたらしい)

 それから、目を血走らせて、日本語ではなく、ある時は英語、 またある時はドイツ語、更には、フランス語、イタリア語、ロシア語、北京語、 果てはアフリカの一地方に存在していたある部族でしか話されてなかったような言葉と、 とにかく、日本語を一切使わず、ミサトが理解できないような言語で、一気に怒鳴るのである。

 理解できない言葉で怒鳴られて、焦ったミサトが怯み、逃げていくのを狙った手と言うか、 始めはマジだったのだろう。

 最初は、一番初めに異動してきて、ミサトの被害をマトモに受け、2日、しかも、 完徹で行った作業を、無にかえされたアフリカ支部の人だったらしいから・・・
(因みに、そんなことをしても、ミサトは軽く日本語で謝って、さっさと逃げて行き、 二時間後には、ケロリと忘れて、戻ってきて、別の人の邪魔をするが・・・)

 それでも、ミサトが怯まず、文句を言おう入ってきた場合・・・
(大抵、文句を日本語で怒鳴ってくるらしい)

 投げた所員をつかむに暴力をふるう前に、 全員で一致団結し、エモノを持って、ミサトを危ない目で睨みつけ、 ブツブツと恨み言をそれぞれの自国の言葉で文句や嫌味を言い始めたり、 怒鳴り始めたりするのである。

 更に、ミサトが逃げないようなら、老若男女関係無く、その場に居る所員全員が、 手に持つエモノの素振りをしつつ、ミサトに向かって歩いて、 時には、投げつけながら、奇声をあげ、走ってくるのである。

 仲間、もしくは同志を護る為に・・・

 そう、傍から見れば、入稿の締め切りが、直前に迫っているのに、 まだ原稿が終わっていない連続徹夜記録を更新している同人作家達が、 集まっている仕事場修羅場に・・・

 自分は作った事も無いので、その苦労も知らないし、考えた事も無いから、 平気でいつも邪魔をする友人?が、神経を逆なでしながら、手ぶらで入って来た時・・・
(もしくは、自分の家でもないくせに、勝手にゲームを大音量で始め、 騒いだり、作業している机を揺らしたり・・・)

 その同人作家達が、出すような異常な雰囲気を作り出したり、行動をとったりするのである。
(自分達は自覚無かったけど、某逃げ帰った友人?は、その場に居たら、 狂人達による残虐な死への道しかないと感じたらしいです。
 まぁ、確かに、殺気はかなり出ていただろうけどね)

 流石のミサトも、そこまでやられたら、生命の危険を感じ、 銃を引き抜き、反撃しようとした。

 だが、銃を持った腕にめがけて、集中的に物をぶつけられてしまい、 撃つどころか、腕に怪我をし、銃を落とした。
(打撲では済まなかったはずなのに、なぜか、ミサトは次の日、ケロリとしていたが・・・)

 そして、全員が、暴走したような目で、叫びながら、 エモノを再び持ち、襲い掛かってくるので、ミサトは銃も拾わず、 慌てて、その場を逃げ出したのである。
(最初は、ミサトを追い出す策略とか、全く関係無しに、 キレただけの事であろうが・・・)

 当然、ただでさえ、仲の悪い保安部や諜報部がミサトを助ける訳が無いので、 ミサトは、その日、本部の外に出て、警察に駆け込んだらしいが・・・

 警察は日頃のことがあるので、ネルフ本部に連絡をとり、 形だけ対応し、管轄が違う事を理由に、嫌味を言うだけで、何もしなかったようだ。
(因みに、ミサトは次の日、忘れていたのか、 同じ事をして、再び追い出されたらしい)

 また、ミサトの落とした銃は、現在、見付かっていない。

 一応、日向に書類を提出させ、新しい銃を要求したのだが、 当然、新しい銃が支給はされるどころか、 【自分で探し出せ】と言う訓告と始末書用の紙の山脈がくるだけだった。
(当然、日向が進んでやったらしい)

 ココだけの話、実はミサトの銃は、誰かが回収し、とあるところに、 厳重にしまわれている。

 その為、銃の携帯を許可はされているミサトと日向は、 現在、銃を紛失して、携帯できなくなっている。
(両方とも、ミサトが、奪われている)

 それ以来、ケージ等、整備部が居る所に近付くだけで、 同じような事が繰り返され、追い出される事が増え、更に、 他の部署保安部や諜報部、総務部等でも、 同じ様な手が使われ始めたのである。

 因みに、酷い所になると、吹き矢や麻酔銃を持ち出し、集団で、 現場から、300m程、追いまわし、見えなくなるまで、それを撃ちまくるらしい。

 更に、ミサトは、何発当てても、何故か平気な為、段々と睡眠薬の濃度が濃くなっていき、 最近は、一発で、象でも即死するようなモノらしいのだが、数発喰らわせても、 ミサトは平気で逃げきっているらしい。
(無論、某事情により・・・)

 当然、後でミサトは愚痴を言い仕事の邪魔をしに、 リツコの居る技術部に行ったのだが・・・

 数回、その事を話した後、技術部でも同じ様な事をやられ、 リツコに接触できなくなってしまった。

 なぜなら、マヤが、その愚痴?を聞いていて、 他の部員達に教えたらしく、何時の間にか、リツコの席は、 技術部室の一番奥に変わり、ミサトがリツコの椅子の傍に行く前に、 入り口付近で、怪しげな色の注射器や怪しげな液体のついたメスなどが飛んでくるらしい。

 更に、リツコの執務室は、仕事が忙しくなったので、使わなくなり、 倉庫のようになったらしく、彼女のコーヒーメーカーやその保管庫、挙句の果てには、 彼女専用の端末まで、何時の間に技術部の奥に安置され・・・・・・

 更に、その周りは、リツコが、すごし易い様に、半日で改造されたらしい。

 勿論、これは、技術部の全員が考え出した作業効率UP大作戦である。

 多少、自分達の場所が狭くなっても、妨害者がリツコの傍に来なければ、 かなり作業効率が上がるハズだと計算して・・・

 当然、結果は、以前に比べても、かなり効率が上がり、 リツコのストレスもかなり軽減されたようである。

 もっとも、ミサトは、この自分を邪魔者扱いし、近付けば、攻撃をして、 追い立てる行為を、各部長に抗議をしたり、副司令に直談判をしに行ったりするものの・・・
(ゲンドウがまだ復帰してないので・・・)

 実は、業務妨害&破壊者葛城ミサトと言う、 ある意味、【共通の敵】が居るお陰で、 ネルフ本部、各部署の新旧所員達の心が、不思議なほど、急速にまとまり、 一致団結するという嬉しい効果が現れてき、 更に、言葉を超えた友情や、強固な仲間意識も出来た。

 その為、当初、危惧されていた国や言葉の違い等による所員間の軋みなどの問題が全く起こらず、 逆に共通の敵に向かって、協力し合ったり、助け合ったり、 作戦部を除く全ての部の協力し合い、連携まで、当たり前のように行うようになった。

 その為、冬月や各部長達の負担が減る事になったのだから、 冬月が各部の部長達が、その行動を止めるはずが無い。

 勿論、この効果があることが分かった為に、ミサトは独房に更迭されていないらしいが・・・

 寧ろ、逆に、毎度の如く、遅刻してきたり、仕事を部下に押し付けて、 業務時間中に、しかも、仕事場で酒を飲んだり、 勝手に居なくなっ早退したり、 自分が必ず確認しなければならない書類を溜めたり、 他部署の仕事の妨害をしたり、やり直しをさせたり、 携帯していた銃を紛失?してまだ見つけてなかったりする等と言ったミサトの行動に対して、 このままだと減棒や降格もありえると脅し、銃を探し出し、更に、 真面目に仕事をするようにと、訓告を与えたり、逆に抗議をされ返されたりする。
(と言うか、普通はクビか更迭であろう)

 流石に、階級等が上で、同じネルフの副司令や部長達に、平時において、 特務権限などが使えるはずが無い事は、かろうじて理解していたミサトは、 その場は、スゴスゴと引き下がるものの・・・
(つまり、外部には使いまくっていると・・・)

 今度は何を考えたか、直接司令トップに直談判と、 入院中のゲンドウに面会を強引に求めようとしたのである。

 だが、行動が不審すぎたのと、身分証に悪戯書きがしてあった為、 逆に、新しい保安部の隊員達に、司令の命を狙うテロリストと勘違いされ、 ガード達に追い立てられ、結局、無用の混乱を引き起こしたという事で、 減棒を喰らったと言う。
(ミサトの顔を知る者は別に教えもせず、止めもせず、逆に一緒になって追い立てたと言う)

 無論、ミサトは自分の間違いや、行いの欠点に全く気がついていないらしく、不満らしいが・・・

 ともかく、そのような事がありながらも、時が過ぎていった。



そして・・・



 使徒戦から、12日後・・・

 ついに、現ネルフ、その唯一の戦力ともいえる弐号機が、 ドイツ支部から、パイロットであるセカンド・チルドレン、 惣流アスカ=ラングレーと共に本部に着いた。

 だが、困った事に、アスカが来た事により、ミサトは、 作戦部長として、チルドレンの訓練等の場に居るという正当な理由が出来た。

 その結果、他部署(特に技術部)に来る事を許される事になり、 何とかアスカの傍に居れば、襲われず、無事に他の部署を歩き回れるようになった。

 殆どの所員は不服そうであったが、アスカといる時は、 流石に飲酒や直接的な邪魔はしないので、それなりに気にしないようにしたらしい。

 無論、なにかしようとしていたら、それに気付いたアスカが、 【何しているのか】とミサトに訊き、そこの所員達が大声で止める様に叫び、 アスカにまで、【専門家じゃないんだから、止した方が良い】と言われてブツブツ言いながら、 止める事を繰り返しているだけだが・・・
(本人は激励をしたり、手伝ったりしているつもりだったらしいが・・・
 やっている事は破壊工作と変わらないようだ)

 また、ミサトは、アスカの知り合いと言う事で、引き取るといって、 アスカにも、なんの断りもせず、勝手に手続きを取った。

 勿論、本能的に、彼女を引き取る事でつく手当てや、 彼女の給与が振り込まれる通帳を狙ったものであっただろうが・・・
(流石に、アスカは自分の通帳をミサトに預ける等と言う愚行はしないだろうが・・・)

 しかし、ミサトの部屋は、腐界以外の何物でもなかった為、 1日と経たずにアスカは二つ隣の部屋に引っ越した。
(殆どの荷物も、ミサトの部屋の中には、入れなかったらしい)

 アスカが1人暮らしになれば、手当てがなくなるし、 通帳を預かる理由も消えるので、ミサトはかなり建前的な文句を言ったものの・・・

 当然の如く、アスカや、周りの日向を除く所員達に、切り替えされて、 更に、痛い所をつかれ本音を見破られ?、 何も言えなくなった。
(日向は、ミサトの代わりにアスカを説得しようとして、 アスカからの信頼を失っていたりする)

 だが、いざ、アスカが引っ越すと、今度は、遊びに来ると言う名目で、 アスカの部屋に入り浸り始めた。

 なぜなら、引越しの後片付けが、まだ終わってないものの、アスカの部屋は新しく、 更に、当然の事ながら、腐界化しているミサトの部屋とは比べ物にならないくらい綺麗だからだ。
(間に一部屋あり、アスカが、防臭剤を確り準備していたので、臭いもあまり来ないらしい)

 だが、ミサトは、特に引越しの片付けを手伝うわけでもなく、 アスカの部屋を、まるで、自分の部屋の如く、闊歩する。

 更に、自分の蒲団を勝手に持ち運んで、泊まったり、勝手に風呂に入って、 自分の洗濯物を押し付けようとしたり、自分のえびちゅで、 アスカの部屋の冷蔵庫を占領したり、食事をたかったり、空き缶やコンビニ弁当の空、 お菓子の空袋等を床に散らかしておきながら、自分では一切片付けなかったりする等、 全ての部屋を汚染していったのである。

 結局、3日と経たずに、激怒したアスカによって、 即座に出入り禁止になったのは言うまでもない。

 最も、ミサトはそんなのを無視して、無理やり住みつこうとしたが・・・
(日向の余計なはからいで、ミサトのIDでも、アスカの部屋が開くようになっていたので)

 その為、アスカは、副司令や生活課の所員に抗議し、 別の、しかも、セキュリティの確りしたマンションへ引っ越してしまった。

 当然、ミサトは、そのマンションにも行こうとしたが、 マンションの門すら、開けて貰えなかったらしい。

 そのマンションはリツコも住んでいる為、日向では、ミサトのIDに、 そのマンションの鍵を付加する事は出来ず、逆に見付かり、 日向は減棒及び三日間の独房入りとなり、あらぬ?噂が立って、 女子所員達から軽蔑されたという。

 因みに、この時点で、ペンペンは、既に野生化しており、 ミサトがドアを開けっ放しでアスカの部屋に遊び?に行っている間に、 フロンティア自由な土地?を求めて、外に逃げ出していたが、 当然、ミサトが自分で気付く事は無かった。
(その為、ミサトの風呂の浴槽にも、正体不明の蟲が湧き出したとか・・・)




 そして、第三使徒が倒されて、3週間が過ぎた・・・





 発令所

「司令が入院している間に、第四の使徒襲来か・・・・・・」

 モニターに映るイカのような使徒を見ながら、ミサトはそう言った。

「前は15年のブランク、今回は3週間ですからね」

 恋に盲目でミサトに忠誠を誓うある意味、被害者の皮を被った最大の加害者、 日向マコト三尉が同調するように言う。
(ちなみに降格しました)

「こっちの都合はおかまいなしか、女に嫌われるタイプね」

 ミサトが、自分の事を棚にあげて、そんな皮肉を言う。

 しかし、実際、ココまで早く合間見える事が出来るとは考えていなかったので、 言っている言葉とは逆に、その表情は不謹慎にも、嬉しそうであるが・・・

 正面のメインモニターには、イカのような使徒と、その使徒に向かって、 大量のミサイルを撃ち込んでいる山岳部の迎撃システムが映っている。

 勿論、この迎撃システムはネルフのモノであり、その中には、 劣化ウラン弾よりも、威力がある物も含まれているらしい。

 何故か、第16独立連隊を始め、UNや戦自が迎撃をいっさい行っていない。

 実は、今度こそ、使徒をネルフに殲滅させる為に、 ゼーレの謀略で、ネルフの特務権限と使徒殲滅に関しては先任の組織である事を、 再び持ち上げ、ネルフが失敗するまで手出しをさせないようにしたからである。

 最も、その代わり、殲滅できなければ、 全ての被害はネルフの自腹と言うトンでもない条件をつけられたが・・・

「予算の無駄遣いだ、あまり撃たないでくれ・・・」

 弾薬も、ネルフの自腹である為、冬月はそう呟いた。

「委員会から、 『いい加減早くエヴァを出すように』との要請です!」

 オペレーターの青葉がそう言った。

「うっさいわね、言われなくても出すわよ」

 ミサトは不服そうにそう言うものの・・・

「葛城二尉、早くしないと、第16独立連隊に指揮権が移り、 今まで出た被害も含め、全てネルフが出さねばならない事を理解していっているのかね?
 更に、その委員会が後押しをしなければ、 早々に、指揮権は、第16独立連隊に移っている事を理解しているのかね?」

 額をピクピクさせながら、国連の監視官である男がそう言った。

 リツコも呆れてみているが、技術部である自分が、監視官がみている状態で、 作戦部のミサトに口を出すと、色々な意味で拙いので何も言えないでいた。

 実はネルフに使徒殲滅は無理と、この監視官が断定したら、 指揮権が自動的に移るのである。

 また、この監視官に暴力をふるったり、意識を飛ばしたりしても、 別のところで監視している者が、即、待機している第16独立連隊と国連軍上層部に連絡を入れ、 指揮権が移譲され、ふるった者は即座に独房行きと言う事になっていた。
(因みに監視官の階級は二佐であったりする)

 コレは、作戦部長である葛城ミサトを始め、ネルフの信用度が地に落ちて、潜っているからである。

 勿論、この監査官は、元々、中立であったものの、 実際にネルフの中をみて、ネルフを嫌うようになったらしい。

 その主な元凶は、ミサトであるが・・・

 因みに、保安部員に案内してもらいつつ、中を見て回っている時、 ミサトが何を勘違いしたのか、【発令所まで案内しなさい】と、 ネルフ作戦部長権限で、監視官に命令してきたからである。

 無論、近くに偶々いたリツコが即座に対応した為、その場では、何もなかったが・・・

「で、どうする?
 指揮権を国連軍に譲渡するかね?」

「弐号機、準備は!」

 白い目で見ながら言う監視官の言葉を無視して、ミサトはアスカにそう言った。

『機体の準備は出来ているって言ってるでしょ!
 それより、早く、作せ』


「弐号機発進!」

 アスカの言葉を最後まで聞かず、ミサトは弐号機を射出させた。

『ぴ!』

 その為、アスカは舌をかんでしまったようである。

 勿論、ミサトの後では、呆れた顔をしている監視官は、手帳になにやらメモっていたが・・・






 弐号機が打ち出されて直ぐに・・・

「エヴァンゲリオン弐号機、リフトオフ!」

 ミサトが、即座に指示を出す。

 弐号機は拘束を解かれ、倒れないものの、そのまま立っているだけである。

 何故か顔の下、口がある辺りを押さえているようだ。

 不審に思ったオペレーターの1人がパイロットの映っているモニターに目をやると・・・

 そのモニターに映るアスカは、口を押さえながら、俯いて、涙目になっていた。

 勿論、これは、喋っている途中で打ち出された為、舌を噛んでしまったからである。

「アスカ、ATフィールドを中和後、パレットガンを一斉掃射・・・
 って、聞いているの?!」

 だが、そんな事はお構い無しに、こうなった元凶であるミサトはそう怒鳴りつけた。

はほう!あほぉ!
 はんはのへひへ、ひははんはほほ!アンタの所為で、舌噛んだのよ


 額に青いバッテンを浮かべたアスカはそう怒鳴り返す。

 当然である。

 普通、打ち出す前に作戦や、使徒との位置配置等を話すべきであるのに、 それを聞いても、中々言わず、何度も聞いていたら、 返事の代わりに、いきなり打ち出されたのだから・・・

 しかも、喋っている最中に・・・

 因みに、打ち出す前に、作戦を詳しく説明する時間は充分にあったに、 ミサトがモニターに映る使徒を睨みつけたり、効かないことがわかっても、迎撃システムで、 しつこく無駄な攻撃させたり、なにやら、感慨ふけったようにポーズを決めたり、 日向とおしゃべりしたりをして、全て無駄に使っていたのである。

 勿論、作戦をロクに考えてなかったから、誤魔化していたのかもしれないが・・・

「そ、そんな事より、作戦はわかったでしょうね!」

 アスカに非難されたのを誤魔化す為か、そう怒鳴り返した。

「「「「「『・・・・・・』」」」」」

 アスカと監視官や真っ当な(日向をのぞく)オペレーター達が、ミサトを非難の目で見ていた。

【おいおい、それが作戦かよ。
 単なるその場の思い付き、単発的指示じゃねぇ〜のか?】


 という目で・・・

「な、何よ!
 今は使徒殲滅のみに集中しなさい!」


 ミサトはそう怒鳴った。

『はひはひ、ATヒィールド中和後に一斉掃射ね。
 しょにょ後は?』

 ある程度、回復したのか、アスカがそう言い返した。

「は?」

 目が点になるミサト・・・

 やはり、この女、全く考えていないらしい。

『だきゃら、ピャレットギャンの一斉掃射で倒せなきゃった時にょ行動 ひゃ?!』

 業を煮やして、アスカがそう言った。
(舌は、まだ完全に回復してないらしい)

 当然の質問であるが、何も考えていないミサトが答えられるハズもない。

「た、倒せないとか考えてるんじゃないわよ!
 集中しなさい!」


 故に、ミサトは誤魔化す為に、そう怒鳴り散らした。

『そう言うにょと違うでひょ!
 そんにゃにょ作戦じゃにゃいでしょうぎゃ!』


「何ですって!!」

 この場合、アスカが正しいが、そんな事をミサトが認めるはずが無い。

 後の監視官も、更にメモを取っている。

 そして、言い争いが本格的に始まる前に、救い?の神?が・・・

「使徒、予定ポイントまで、後、10秒!」

 日向がそう叫んだ。

「アスカ!
 今は使徒撃退が最優先事項なのよ!」


 ミサトが怒鳴る。

『わきゃったわひょ!』

 アスカはそう言って、ミサトの指示通りに動き始める。

 使徒が圏内に入った途端、弐号機はATフィールドを完全に中和し、 使徒に向かって、一斉掃射する。

 因みに、パレットガンの弾は、劣化ウランである。

 重くて威力ある弾であり、比較的、安価に手に入るのであるのだが・・・

 欠点として、自身より硬い物質に当たると、砕け散り、 粉塵になって視界を塞ぐという欠点があるし、 放射能関係の問題が出てくるのである。

 実際、湾岸戦争では、劣化ウランに含まれる放射能が、 放射線被爆を引き起こしたらしい。

 そして、第四使徒は、第三使徒よりも外皮が硬く、 先ほどのミサイルの雨をものともせず、ATフィールドも、 防御には使わずに、悠々と飛んできたのである。

 つまり、当然、劣化ウラン弾よりも、使徒の外皮は硬いわけで・・・

 つまり、結果は・・・

「馬鹿、煙で見えない!」

 ミサトが叫んだ。

 しかも、このセリフは、確り装備の性質を頭に叩き込んでいるハズの指揮官からは、 絶対に出ないハズのモノである。

『何言ってんのよ!
 アンタの指示の所為でしょう!』


 当然、アスカが、至極真っ当な事を言い返す。
(舌は回復したらしい)

 確かに、撃つ命令を出したのはミサトで、撃ち出してから、弾が無くなるまで新たな命令を出してないのだか ら、アスカに非はない。

 何せ、命令通りに動いたダケなのだから、責任は命令を出したミサトにあるハズである。

 常識的に考えれば・・・

「あんですって!
 私が悪いって言うの!」


 だが、ミサトには常識が通じないらしく、そう怒鳴り返した。

 監視官はかなり白い目でミサトを見ている。

 なにせ、自分の判断ミス等をパイロットの所為にしているからだ。

『それよりも、次の指示をだしなさいよ!』

 その事に関しては、特に言い返しもせず、アスカはそう怒鳴った。

 ミサトとは違い、アスカは屈折してても、それなりの訓練をうけている為、 自分の命が直接関わっているのが肌で感じる戦闘中に、無駄な事はしないのである。
(と言うか、流石に出来ないだろう・・・)

 しかし、ミサトからの返事が返ってこない。

『ミサト、勝手に行動していいのね?!』

 アスカは呆れたように、そう叫びながら、 肩のウェポンラックにあるプログナイフを取り出そうとするが・・・

「・・・・・・そのまま撃ち続けて!」

 いきなりミサトがそう叫んだ。

『はぁ?』

 一瞬、硬直するアスカ。

「そのまま撃ち続けろって言っているのよ!」

 ミサトはそう怒鳴りつける。

『アンタ、バカァ!!
 弾は、最初のアンタの指示による一斉掃射で、既に、なくなっているでしょが!』


 確かに、一斉掃射というのは、弾奏に入っている全ての弾を撃ち込む事である。

 アスカは忠実にそれに従い、すべての弾を使徒に撃ち込んだのである。

 その為、既に弾は一発も残ってなかった。

『それに、コレは使徒には効いてなかったで、 きゃぁ!』

 煙の中から、光の鞭が現れ、アスカは慌てて避けるものの、 弾薬が空になったパレットガンが破壊される。

 いや、アスカが咄嗟に使徒に投げつけ、その反動で避けたのであろう。

『く、ミサト、パレットガンがないから・・・』

 接近戦に移る許可を取ろうとアスカはするが・・・

「予備を出したわ、受け取って!」

 ミサトはそう叫んだ。

『へ?・・・、
 ど、どこによ!』

 アスカは装甲ビルや武装ビルを盾にしつつ、必死に鞭を避けながら、そう言った。

 何せ、自分の近くの武装ビルはどれも動いてなかったからだ。

「Bの24の武装ビルよ!」

 ミサトがそう言ったが・・・

『Bのって、あほぉ!
 使徒を挟んで対角線上じゃない!』


 そう、出したのは、使徒を挟んで、弐号機とは逆側、しかも、かなり遠い。

 ケーブルを途中で付け替える必要も出てくる。
(因みに、アスカの後には、Rの27とSの31がある)

 コレはミサトが武装ビルの配置等をロクに覚えていなかったので、 日向に間違った場所の指示を出してしまったのである。
(他の部署から、敵扱いされ、追い出されたストレスなどで、 地図など覚えるどころか、覚えていたのも、忘れているらしい)

 勿論、指示を出された時に、日向が言えばよかったのであろうが、この恋に盲目な下僕男。

 【きっと深い考えがあって】とラリったような判断で、 言われたとおりの場所に打ち出したのである。

 全く、無自覚で最大の加害者だ。

「な、何とかしてとりなさい!」

 監視官に見られている為、ミサトは、自分のミスを表に出したり、 認めたりしたくないので、そう怒鳴った。

『この状況で出来るか!
 それよりも、一旦戻して、私の後方にあるRの』

 チャンと位置を覚えているアスカが、出す位置を指定しようとするが・・・

「アスカ、命令よ!」

 ココでアスカの(真っ当な)意見を聞けば、 今後、自分の命令をアスカが聞かなくなるとでも思ったのか、ミサトは、そう怒鳴った。

『アンタこそ、何馬鹿なこと言っているの!
 それにアレはさっきと同じパレットガンじゃない!
 一斉射でも、全く効いてなかったでしょうが!
 また相手の姿を見えなくして、不利になれって言うの!』


 使徒の攻撃を避けながらも、出ている武器を確認したアスカが、驚いて、そう怒鳴る。

 おそらく、別の武器だとばかり思っていたのだろう。

「うるさい!
 私の指示に従いなさい!」


 既に、意地になっているミサトはそう怒鳴った。

 監査官の目がかなり鋭くなっていく。

 当然である。

 最初はデータ採りのためと思ったが、相手を攻撃する事に集中し、 効果のない攻撃を繰り返す。

 ミーティングをするどころか、戦いに出すパイロットに、 作戦を教えず、それどころか、注意され、自分の立場が悪くなりそうだと、 安全確認もせずに、いきなり、打ち出させる。

 そして、明らかに間違った指示を、指摘されたのに、自分の地位を笠に、ごり押しする。
(当然、最初に撃っていて、効果のなかった迎撃システムのミサイルや弾の中には、 パレットガンよりも威力の物があった事を、監視官はしっかり知っていたりする)

 更に、その責任を、自分の指示に従わせた相手、 しかも、子供に押し付けようと、行動する。

 対処が判らないのに、現場の判断を認めない。

 無駄に同じ事を、無駄に繰り返させようとする。

 真っ当な意見を言われれば、自分は安全なところに居るのに、 屁理屈にもならない事や、罵声を飛ばし、 直接戦っている兵士の集中力や注意力を乱そうとする。

 そのリスクも考えずに・・・

 よく見れば、監視官の額には怒りの象徴である青い十字の印が、強く浮かんでいた。

 そして・・・

『私を殺すきゃぁ!!』

 抗議をしようとしていたアスカの姿がいきなりぶれ、更に悲鳴をあげる。

 何時の間にか、弐号機の足に鞭を絡ませた使徒が、弐号機を持ち上げ、投げ飛ばしたのである。

「アンビリカル・ケーブル、断線!」

「エヴァ、内蔵電源に切り替わりました!」

「活動限界まであと4分47秒!」

 悲鳴を上げるように、オペレーター達がそう報告を始める。

「アスカぁ!!」

 ミサトはやっと事態を理解したのか、そう叫んだ。










To be continued...


(あとがき⇒悪あがき?)

 因みに、アスカがミサトの居たマンションから引っ越して、 落ち着いたら、直ぐに使徒が来た状態です。
 ゆえに、まだ中学に入っていません。
 う〜にゅ・・・しかし、アスカどうなるかなぁ〜
 今のところ、どっちにも行きそうだね・・・
 ミサトを嫌うだろうし・・・
 まぁ、なるようになると・・・



(ながちゃん@管理人のコメント)

とりもち様より、「新起動世紀ヱヴァンガル改」の第七話を頂きました。
今回、シン君たちの出番はありませんでしたが、ついにアスカ嬢&弐号機が登場しました。
でもきっと、公私を問わずにミサトに振り回されるんでしょうねぇ〜。レイやシンジ君の分まで(笑)。
ミサトの日常生活は相変わらずですな。
そういえば、管理人が学生の時分にもいましたよ。ミサトみたいな友人が(笑)。
人の部屋をまるで我がもの顔で闊歩するわ、留守中なのにドアノブを壊して侵入してテレビゲームで遊んでいるわ、人の蒲団を勝手に占領して泊まっていくわ、勝手に風呂に入るわ、朝昼晩の三食を当たり前のようにたかるわ(無論、食費は入れない)、勝手にビデオ予約を入れているわ、洗濯物を押し付けるわ(持ってくんな!)、ゴミを床に散らかしておきながら、自分では一切片付けなかったツワモノがっ!(汗)
はぁはぁ・・・そんな彼も、今や押しも押されもせぬ○庁のお役人様・・・世の不条理さを切に感じましたよ(笑)。
さて、ミサトの戦闘指揮ですが、相変わらずですね。無能の極致です。というか邪魔。いないほうがマシですな。
第16独立連隊に指揮権が移るのは、時間の問題と言えるでしょう。
アスカ嬢も、一度身の振り方を真剣に考えたほうが良いかも知れませんね?(笑)
国連の監視官が今回のミサトの無能ぶりをどう報告するのかも(その結果も)、興味深いところですな。
続きが待ち遠しいです。
とりもち様、次の電波(第八話)も待ってますよぉー。
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