『私を殺すきゃぁ!!』

 抗議をしようとしていたアスカの姿がいきなりぶれ、更に悲鳴をあげる。

 何時の間にか、弐号機の足に鞭を絡ませた使徒が、弐号機を持ち上げ、投げ飛ばしたのである。

「アンビリカル・ケーブル、断線!」

「エヴァ、内蔵電源に切り替わりました!」

「活動限界まであと4分47秒!」

 悲鳴を上げるように、オペレーター達がそう報告を始める。

「アスカぁ!!」

 ミサトはやっと事態を理解したのか、そう叫んだ。










新起動世紀ヱヴァンガル改

第八話 使徒殲滅

presented by とりもち様











「くぅ」

 アスカは、空中で体勢を整えながら、必死に受身の態勢を取る。

 ズドォ〜〜ン!!

 そして、神社のある丘に弐号機は落ちた。

 しかし、空中で、咄嗟に受身の態勢をとれたお陰で、さほどダメージは無かった。

「くっ・・・なんとか・・・」

 ビィービィー!!

 アスカは、体勢を整えようと、弐号機を動かそうとするが、いきなりアラームが鳴る。

「な、なに?」

 アスカが、その原因を調べようと、警報が点いているモニターに目を向けると・・・

 そこには事態にビビって、腰がひけ、逃げ出そうとしているメガネとかけた少年と、 下半身を血に染めつつ、眼鏡の少年に何かを言っているが、 半分意識を失いかけているっぽいジャージ姿の少年がいた。

 よく見れば、ジャージの少年の左足が無く、そこから血が吹出しているようにも見える。

 因みに、この時点でアスカはまだ、中学校には入っていない。

 色々忙しかったし、ミサトも、サボって、そう言う書類には、一切、触れてもいなかったからだ。

 故に、顔見知りでもなんでもなかったので・・・

「な、何でこんな所に民間人が居るのよ!!」

 アスカはモニターに向かって、そう怒鳴った。






『な、何でこんな所に民間人が居るのよ!!』

「何ですってぇ!」

 アスカの驚きの怒声に対して、ミサトが、即座に怒鳴り返した。

 勿論、コレは、戦場に避難させたハズの民間人が居た事して、驚いたからではなく、 アスカに怒鳴られたと思って、条件反射のように怒鳴り返しただけである。

 まぁ、文字だけだと、判断はつきにくいのかもしれないが・・・

『どうすんのよ!』

 だが、アスカが怒鳴るように訊いて来る。

 自分の命も、他人の命も、目に見えて直接かかっている事が分かるので、 些細な事は無視しているのであろう。

「避難していたのに、何故、あそこに居る?
 いや、それどころか、何故、誰にも気付かれずに、外に出て来れたんだ?」

 監視官が呟くようにそう言った。

 鈴原トウジ
  本籍:大○府○市南○田298-2
  生年月日:2001年12月26日
  性別:男
  血液型:B++

  相田ケンスケ
  本籍:神○川県横浜市○北区新○田町2-1398-2
  生年月日:2001年9月12日
  性別:男
  血液型:A++



 監視官が見ているモニターには、2人のデータが出ており、更にその下には確り・・・

 特別事態警報発令後、クラスメイトと共に避難。
 閉鎖後の第334号シェルター内にて避難確認済み・・・
 ・・・再検索しますか?・・・Y/N


 と言う文字も現れていた。

「まさか、民間人、しかも、中学生が?・・・  でも、何故、警報が・・・」

 リツコが驚いてそう呟いた。

 この表示が示しているのは、この2人は、一旦、避難したものの・・・

 シェルターの扉が完全に閉められ、その存在が中で確認された後で、 誰にも気付かれずに、強引に、そのシェルターの扉を開けて、抜け出してきたという事である。

 シェルターの扉は、一旦閉められると、特別非常警戒宣言が解かれない限り、 特別なパスコードを打ち込まない限り、開く事は出来ない。

 また、特別非常警戒宣言が解かれない限り、シェルターの扉が開くと、 色んな意味で、別回線により、必ず警報が鳴るハズである。
(安全性やスパイ警報など)

 警報が鳴らなかったのに、シェルターから抜け出した者が居るという事実があると・・・

 アレだけの予算を奪っておきながら、どんなお粗末な装置か、保守点検はしていないのか、 中学生に開けられるとはどんなセキュリティなのか等と、国連上層部に責められる事になる。

 しかしながら、実は、コレは技術部の責任ではない。

 無論、要請があれば、手伝う事があっても、本来、 この様なシェルターの保守点検等の戦場を整えておく関係の仕事は、 平時における作戦部の仕事の一つである。

 つまり、ミサトの仕事である。

 ぶっちゃけた話、一切、何もやっていないともいえる。

 本当なら、ミサトが他の部署へ、 陣中見舞い業務妨害に行って、 追い出されたり、追い回されたり、それに関して、愚痴を言ったりしている間に、 やっておけば良いのに・・・・・・

 活字を見る事を面倒臭がって、点検をしたり、させたりする為の書類にサインする事すらサボって、 自棄とばかりに、執務室で、えびちゅを飲みまくっていたのだ。

 また、アスカが着いてからは、アスカを案内するとか言っては、 あちらこちらに連れて行って、道に迷ったり・・・

 アスカの引越しを手伝うとか言っては、職務をサボって、アスカの部屋を汚染したりして、 出入り禁止になったり・・・

 最終的には、鬼のように書類の山脈が築かれても、目を逸らし、 “やることが無い”とか言ったりして、積極的にサボって、 他の部署の邪魔をしに行っていた。
 つまり、作戦部の部員達は、ミサトが必要最低限の書類すら、 終わらせていないし、戦術・戦略作戦研究など、 本来、ミサトが中心になって、積極的にやらなければならないものも、 面倒臭がって、やろうとしないので、何も行う事が出来ず、 作戦部は、本当に仕事をしない給料泥棒の状態であった。

 しかし、ミサトに、おべっかを使うと、 2人っきりになりたかった?日向の策略で、 仕事が来ないのを理由に、日向以外の部員達は、ミサトの尻拭いの為に、 他の部署で強制的に働かせようとした。

 もっとも、かなり肩身が狭かったので、作戦部の部員達は、 積極的に、他の部署の仕事を手伝う事になった。
(人事部に、配置転換願いの届を出した者もいる)

 だが、彼らの部長であるミサトのやっている事がやっている事なので、 彼らは、かなり、仕事を押し付けられたらしい。
(勿論、ミサトを追い回すのにも、参加したが・・・)

 その為、一般の作戦部員達も、ただでさえ、他部署の仕事の手伝いで忙しいのに、 ミサトの下についていて、ヨシとし、何も考えない日向以外の連中が、 要請のない仕事まで、態々、自分達で気付いてやってやるハズがない。

 その結果、シェルターの管理システムの保守点検が不十分で、ドアを開けられても、 警報がならなかった可能性が出てくるのである。

 尤も、コレが本当の原因ではない。
(一部はそうだが・・・)

 一番の原因は、某事情により、息子に甘くなった某諜報部の某係長が、 自分のパスやIDをコピーされても、そのまま、ほったらかしていた。
(気付かなかった訳ではないらしい)

 その為、その息子がシェルターの構造図や、パスコードを手に入れて、 色々、やってはいけない工作を色々とやって、無理やり出てきたからである。

 それはともかく、こういう事態になった場合、 軍人なら、咄嗟に無視する事を考える。

 更に、そこに居るのは、パイロットとは同年代の子供とは言え、 まだ何も関わりが無い赤の他人だ。
(知り合っても居ないし・・・)

 しかも、自分から戦場に出てきた自業自得なガキである。

 利敵行為も甚だしい。

 それに、パイロットは、子供とは言え、それなりの訓練を受けてきているし、 覚悟もそれなりにあるだろうし、平和ボケな日本人ではない。

 ある程度、割り切ることも、出来るだろうし、ショックも少ないだろう。

 更に、この戦いは、人類の命運をかけているものである。

 助けるにしても、あの状態では、助けに行ったほうも、 命の危険がかなりある。

 エヴァに保護させると言っても、動かせるエヴァは1体しかないのでそれは不可。

 大体、エントリープラグに入れ、保護すると言うのは、 エヴァと言う兵器の資料を読んだ事のある人間なら、絶対に選べない選択である。

 シンクロ率が低下し、動きが鈍る程度の話ではない。

 何せ、全く消毒もしていない人間を、プラグ内に入れるということは、 滅菌状態に保っているプラグ内を汚染させ、パイロットを感染させると言う事である。

 確かに、LCLや中にある装置に、殺菌などの能力があるが、限界がある。

 中に入れるのが、泥まみれな場合、確実に、LCLから肺に様々な雑菌が入り込み、 様々な感染症にかかると言う事である。

 つまり、それは、パイロットごと、全員を殺すと言う意味以外、無いのである。

 結局、ココでは見捨てる以外、勝つ為の方法、人類が生き残る手段はあまりない。

 それに、自業自得で、全くな赤の他人、1人の命と、全人類の存続を天秤にかけるなら、 どっちを取るが決まっているが・・・
(因みに、メガネの方は、既に、ジャージを見捨てて逃げている)

 勿論、今の内だったら、使徒の背後にある武装から、 ミサイルを中ててやれば、時間が稼げる可能性もあるハズである。

 そうすれば、被害を出さずに、エヴァの場所を移動させ、 アンビリカル・ケーブルを再接続がする事が出来るかもしれない。

 もし、それすらせず、あのガキを、エヴァで助けるとか、言い出しでもしたら・・・

 あの噂が真実味を帯びてくると言う事である。

【ネルフの作戦部長は、人類を滅ぼす為、 使徒を倒す力が備わっているらしいチルドレン達を、 抹殺しようとしている】

 と言う笑い話にもならない噂が・・・

 それゆえ、彼は、ミサトを見張る。

 因みに、服に隠して着けている超小型スパイカメラで映しつつ・・・

 ミサトの判断次第では、それを証拠とし、国連事務総長の命令により、 【使徒にジオフロントに潜入されるというギリギリの状態まで待て】と言う無謀な命令を無視し、 即座にスイッチを押して、指揮権を先程、近くに待機しているのを確認した第16独立連隊に移譲し、 返す刀で、ミサトを拘束する為に・・・

 勿論、【そう言うハッキリとした証拠を得れば良い】と言う国連軍総司令の命令もある。

 そんな折り、リツコが混乱しているミサトに近付いていき、耳打ちする。

「彼を見捨てるしかないわよ。
 そうしないと、拙いわよ(貴女が・・・)」

 と・・・

 それを言われて、ハッとしたミサトは、何故かリツコをキッと睨む。

 リツコは“仕方ないのよ”と言う顔で、頷いた後、ミサトを見つめる。

 ミサトは、リツコの顔から視線をはずして、モニターの方を見る。

 時間はない。

 そして、ミサトのとった判断は・・・

「アスカ!
 彼をエントリープラグに入れなさい!!」


 なんと、失敗続きで、意地になって、他人の意見を全く聞かないと言う態度に出たのか・・・

 それとも、ここでリツコの意見に従ったら、今後色々と口を出されるとおもったのか・・・

 はたまた、お得意の偽善的な態度に出たのか・・・

 兎も角、この女、絶対にしてはならない最低最悪の命令を出したのである。

 もっとも、この偽善女こと、おそらく、その表向き の心では、最後のやつであろう。

 まぁ、本音や本能レベルでは、前者の2つだろうが・・・

 つまり、本能では、自分の意地だが、自分の偽善的な心によって、 目の前で死にそうになっている存在が居り、助ける?手段を思いついたので、 それがハイリスク、ノーリターンであろうとも、他の命がかかっている事であろうと、 自分個人に、即座に直接かかってくる事が、目に見えているような負担でなければ、 平気で行うのである。

 当然、この女、作戦部長と言うエヴァを運用するのに関して、 最重要職に就いているくせに、最低限の書類もマトモに読んでいない。

 その為、ココで働くものなら、誰でも知っている・・・

 いや、先日、初めてココに着た監査官でさえも、知っているエヴァの最低限のタブーなど、 全く知らないので、その場の思い付きで叫んでいるのだ。

 それにより、こう言う事で、少しでも良い人に見られたいと言う本能で・・・

 だが、それがある意味、自分の首を締める事に、 いや、死刑執行の書類に自ら判を捺す事になるとは、 ミジンコの繊毛の先ほども想像もしていない。

 本当に目先の先程度しか、見えない女である。

「「「「「『なぁ?!』」」」」」」×たくさん

 当然、リツコは盛大にコケ、日向を除く、発令所の全員が驚き、 ミサトの方を見てそう言った。

 監視官は即座に、スイッチを入れた。

 同時に、部下達が、いつでも突入できるようにと、発令所の中に入ってくる。

 勿論、ミサトを逃がさない為に、下の全ての階にも・・・

 因みに日向は・・・

「こんな時でも、子供の命を救うべく・・・
 葛城さんは僕の思ったとおりの女性ですね。
 素敵だ・・・」

 そう呟きながら、1人、惚けていた。

 この恋に盲目男、少なくとも、確り、 エヴァの仕様書等を確り読んでいたくせに、すっかり忘れている。

 しかも、少し考えれば、下手をしなくとも、その同じ子供であるパイロットの命も失い、 人類が終わってしまう可能性が極めて高い事が分かりそうなのに・・・

 流石、被害者の皮を被った自覚無き最凶最悪最低の加害者である。

『あ、アンタ、バカァ!
 そんな事出来るハズが無いでしょうが!』


 アスカは怒鳴る。

 当然である。

 何せ、滅菌状態にしておかねばならないエントリープラグ内に、 泥だらけ、雑菌だらけの人間と一緒に入れと言っているのだ。

 勿論、それだけでなく、あの少年は、片足を失い、更には意識も無くなっていそうな為、 1人で登って来る事すら、不可能であろう。

 そうなれば、使徒が迫ってくる状態で、パイロットである自分が、ワザワザ、エヴァから降り、 抱きかかえ、エントリープラグ内に入れなければならないし、位置的にも、不可能に近いからだ。

「コレは命令です!
 従いなさい!」


 そうハッキリ言うミサト、当然、都合の良い結果しか考えていない。

「越権行為以前に、無謀な行為よ!
 わかっているの葛城二尉!!」


 命令と言うミサトに、リツコがそう怒鳴った。

 当然である。

 その命令は【その場で自殺して、世界を終わらせろ】 と言っているに等しいのだから・・・

「今の責任者は私です!」

 ミサトはそうハッキリ言った・・・が、それは違う。

 ミサトは作戦指揮官あるが、今の責任者は冬月である。

 だが、その冬月は、何かの瓶を持って、泡を吹いて倒れている。

 どうやら、ミサトのあまりにも素晴らし過ぎる指揮ぶりに感動?して、 倒れたらしい。

 口から泡を吹き、白目をむいて、心臓辺りの服を掴んでいるのが、 その証拠・・・かもしれない。
(それって拙くない?)

 勿論、この場で、責任者とか言っていても、ミサトは責任を取るつもりは全くない。

 自分の意見をゴリ押しする為の方便なだけだからだ。

 しかも、自分に酔っているっぽいし・・・

「日向君、即座にプラグ強制半射出!」

 周りを無視して、ミサトはそう命令を出す。

「チョッと、ミサト!」

『チョッと、やめ』

 リツコとアスカが驚いたように叫ぶが・・・

「はい!」

 ミサトに忠実な男、日向は、何も考えず、嬉々として、 条件反射的に打ち出した。

『ぎゃぁ!』

 その瞬間、アスカが叫び、気絶した。

 完全に白目をむいて、意識を失っている。

「「え?」」

 ミサトと日向が呆気にとられる。

「・・・ミサト、また書類を読んでないわね・・・
 あの状態で、シンクロをカットせずに、いきなりプラグを出したら・・・
 シンクロ中のパイロットがどうなるか、わかりきっているでしょうが・・・」

 リツコがそう言った。

 その関係の書類は、何度も見るように言い、その度にコピーを渡していたりする。

 当然、ミサトは読むふりだけで、一度も読んだ事はないが・・・

「え? え? え?」

 ミサトは理解できず、混乱している。

「あ・・・」

 日向は、今頃、思い出して、顔を青くする。

「貴官等の無能力さ加減は良く分かった」

 部下達が配置についたのを確認し、監視官が溜息を吐きつつ、そう言った。

「ど、どう言う意味よ!」

 自覚のないミサトは、そう怒鳴り返した。

「指揮権は、既に第16独立連隊に移した

 アッサリ宣告する監視官。

「なんですってぇ!!」

 自業自得のクセに、瞬間湯沸しのように激怒し、 一瞬、自分の懐に手を入れるも、直ぐにそのまま拳を上げて、 三階級も上の上官に向かって殴りかかっていく。

 因みに、ミサトはアレ以来、銃を持っていないので、 肉体の暴力に訴えようとしたのである。
(持っていたら、確実に、査察官を撃っていたな)

「当然だ。
 貴官、いや、貴様がチルドレンを殺す為に、行動している事は、 十二分にわかったからな!

「ぶべ!」

 だが、アッサリと、殴りかかってくるミサトの腕を捌き、 そのまま後に投げ飛ばし、壁にぶつけながら、監視官は、そう言った。

 彼は、お手盛りなミサトと違い、本物の戦場を渡り歩いた軍人だったので、 実践的な格闘技にかなり精通していたようである。
(ミサトもある程度出来るが、それ以上である)

 しかも、ミサトの行動に、かなり頭にているのである。

 手加減がない。

 だが、思いっきり壁に叩きつけられても、直ぐ復活したミサトは、 鼻血を流しながら、再び拳を振り上げ、襲い掛かっていく。

「ど、 どう言う意味よ!」

 そう叫びながら、拳を監察官の顔に向かって振るうが・・・

「は、ふん!」

 ぽきゃ・・・

「ぎゃぁ〜〜〜!」

 監査官は、ミサトの腕を掴むと、その肘関節を有りえない方向に曲げ、 イイ音を鳴らしながら、ミサトの突進力を利用して、そのまま投げ飛ばした。

 壁の逆、下の階が見える方へ・・・

 ガン!  バキ!  ドガ!

 当然、何も壁になるようなモノがない為、ミサトは、あちらこちらをぶつけながら、 一番下の階まで、落下していった。

「ふん、生きてはいるようだな」

 一番下の階で、部下達に囲まれ、辛うじて痙攣しているのを、 確認された様子を見て、監査官はそう呟いた。

「な、なんて事をするんですか!」

 日向が監査官に文句を言った。

「何の事かな?」

 冷たい目で、日向を見ながら、監査官はそう言った。

「か、葛城さんに」

「私は己の身を護っただけだ。
 奴は、上官に対して、不当な暴力をふるってきたのだぞ」

 監査官の目によって、段々、弱腰になっていく、 日向に、監査官はそう言い放つ。

「し、しかし、女性にあれは、やりすぎ・・・」

 だが、日向は必死に抗議しようとしていた。

「女であろうと、世界を滅ぼす事しか考えていないテロリストに、 手加減はいらん」

「な、なにを」

 まだ反論しようとする日向・・・

「ふん、最初から、訳のわからん事を言い、無駄な攻撃をさせ、馬鹿な事を言い、 集中力を乱させ、更には、援護もせずに、命に関わる事を平気でやれと、 その兵器のタブーを連発し、最後は、強引に意識を奪い、使徒の餌食にしようとする。
 これらをどう見れば、そうではないと言えるのかな?」

 冷たく、監査官はそう言った。

 因みに、ミサトは、気を失い、あちらこちら骨折しているものの、 一番下の階の床で、確り生きている。

 某事情があるからとはいえ、中々、凄まじい生命力だ。

 勿論、下の階のオペレーター達は、誰一人、ミサトを助けようともせず、無視していた。

「そ、それは・・・」

「む・・・そう言えば、貴官は、あの女に忠実に従っていたな・・・
 それに、調査結果によると、本来、あの女が自分で片付けなければならない書類を、 貴官自ら、進んでやっていたんだったな。
 まるで、奴に重要書類を見せないように・・・・・・
 そうか、だから、少し考えれば、貴様のような位置に居れば、 先程のようなチルドレンをあからさまに殺そうとするような指示が出たら、 止めるハズなのに、全く止めずに、それを即座に、率先して、行っていたと・・・」

「な、何を・・・」

 監査官の言葉を聞いて、顔を蒼くし始めるマコト・・・

 パチン・・・

 監査官が、指を鳴らすと、屈強の兵士達が後ろに並ぶ。

 さらに、監視官が日向を指差すと、兵士達が、日向を囲む。

「え?」

 日向は事態が飲み込めず、キョロキョロする。

「拘束しろ、あの女の協力者だ。
 もしかしたら、誘導していた真の黒幕かもしれん」

 まぁ、日向の行動を見ていたらそう思うかもしれない。

「「「「「「「「「「は!!」」」」」」」」」」

「な、ぎゃ!」

 監査官の命令に反応して、兵士達は、日向を殴り、 押さえつけ、拘束し、担いで運んでいった。

 下の階でも、ミサトが、重武装をした兵士達に、瀕死の重体など関係ないように、 手錠、足枷を何重にもつけられ、更に、縛られ、荷物のように、引き摺られていっている。

 床には、血の道が出来ているが・・・

 容赦が無い・・・

「では、後は弐号機とそのパイロット及び、あの怪我人を救助くらい、自分達でしてくれ」

 監査官がそう言って、出て行った。

 画面を見れば、新型っぽい赤いモビルフォースが、 鉤爪で第四使徒のコアを抉っており、決着がついていた。








 少し時間を遡って、ミサトと日向が、トンでもない事をやった頃・・・

 戦場では・・・

 ドドドドドドドドドォルゥゥゥゥゥ!!!

 使徒が、倒れて、動かなくなった弐号機の方に移動していると、 いきなり、横から大きな何かの塊を大量にぶつけられ、弾き飛ばされた。

 使徒は起き上がり、そちらの方に、コアが見えている方を向ける。
(どうやら、そちらが前面らしい)

 そこには、某マシンガンのような銃を構えた赤い機体がいた。

 それは、赤いモビルフォース、ツァア専用モビルフォース強化型ズクである。

 ちなみに、乗っているのはカヲルである。

 勿論、パイロットスーツではなく、 赤い軍服(しかも海兵セーラー服 バージョン)を着て、 どこかで見たような、だが微妙に違う仮面をつけているが・・・
(作者注:ツアァは赤い水兵なのさ)

 因みに、撃ったのはネルフのとは、全く違う超合金製の弾である。

 コレは自分より硬いものに当たっても、砕けず、表面でつぶれて、 そのまま運動エネルギーを伝える為、強烈なストッピングパワーを発揮するのであるが、 どうやら、使徒の外皮より固かったのか、回転が加わり、それを超えた為か、 思いっきりめり込んでいった跡が見える。
(タングステンよりも硬いらしい)

 無論、修復中だが・・・

「ふう、やはりジドムと違い、こっちの方が、移動は早いね」

 因みに、素早いアッカムの方も特殊任務がある為、来ないらしい。
(パイロットがね・・・)

「さぁ、シャムシエル、今、開放してあげるよ」

 カヲルはそう言って、マシンガンを赤いズクの背中につけ、シャムシエルに向かわせる。
(マシンガンを使わない理由は、後で予想がつくでしょう)

 当然シャムシエルは、反撃をするべく、鞭を振るが、赤いズクはいとも簡単によけていく。

「フフフ、機体の性能が戦力の決定打ではなくとも、大きな要因である事を知るがいい」

 なんか、少々、違う事を言いながら、シャムシエルの音速鞭攻撃を避けつつ、攻撃をする。

 その辺の武装ビルは使徒の鞭で次々倒壊していく。

「ふ、あまり、時間をかけると、色々言われるかもしれなかったね。
 仕方ない、決めるよ!」

 カヲルはそう言いつつ、鉤爪で、コアを引っ掻く。

 因みに、浮力と移動力と鞭にATフィールドを割いている為、あまり強力なのは張れないし、 全てを維持し続ける事も出来ないので、フィールドの消えた、一瞬隙、 もしくは、とるに足らないほど微弱になったときに、 攻撃をしているので、コアに当たっているようである。

 とは言うものの、よく見れば、その鉤爪は微弱な紅い膜に覆われているようだが・・・

 だが、決定打にはなっていないようだ。

「あらら、フッ、 一撃でダメなら!」

 そう言って、カヲルは使徒の鞭を避けつつ、コアを引っ掻いていく。

 当然、コアを削られれば、その力も弱まる為、ドンドン有利になっていく。

 そして・・・

「見えた・・・止めだよ!」

 完全に鉤爪が、完全にシャムシエルのコアを抉り、シャムシエルの反応が消える。

「ふぅ・・・回収終了・・・
 確かに、外付けマシンガンは使えないとはいえ、レイ君の言うとおり、 鉤爪じゃなく、あの量産タイプのドリルの方が良かったよ。
 その方が絶対楽だった・・・まぁ、ドリルが紅く輝くから、不審に思われるかもしれないけど・・・
 そうか、摩擦熱でって、誤魔化せば・・・」

 コックピットで、カヲルがそう呟く。

「そういえば、弐号機の方はどうかな・・・
 一応、被害はないはずだけど・・・
 ふむ、動いてないけど、プラグを半射出しているね。
 かといって、セカンドは出ていないようだし・・・
 どうしてだろう?」

 カヲルはそう言いつつ、弐号機に近付いていく。

「あの少年、左足がないね。
 弐号機の潰れたのかな?
 こっちで助けないとダメかな?
 あのままじゃ、出血多量で・・・
 お、ネルフの救助班が来たか。
 なら大丈夫だね。
 ん?」

 カヲルはモニターの端に警戒チェックが点いたので、そこをズームアップさせる。

「ふ〜ん、友人を見捨てて、自分1人で逃げ出し、しかも、遠くでビデオを回すか・・・
 話に聞いていた通り、欲望に忠実なんだろうけど・・・
 気に入らないね」

 そう言って、カヲルはとある林の影に機体を向かわせる。






  ズシ〜ン・・・ズシ〜ン

「ん?・・・なんだ?・・・
 後できた方が、こっちに来る?」

 眼鏡をかけた少年、相田ケンスケは近付いてくる赤いズクに驚きつつも、カメラを回している。

「え?・・・」

 ゴゴゴゴゴ・・・

 バキバキバキ・・・

 赤いズクは、腕で邪魔な木を押し倒していく。

 ギュィィィィィィイン!

「わ、わぁ〜〜〜!!」

 ケンスケはカメラに目をつけたまま驚きの声をあげる。

 だが、それでもカメラを放さず、映し続けるのは、凄いのか間抜けなのか・・・

 ガシ

 ともかく、そのまま鉤爪に捕まってしまった。

「わわわ、は、離せよ!
 危ないじゃないか!
 ぼ、僕にこんな事をして良いと思っているのか!
 ぼ、僕を誰だと思っているんだ!
 ぱ、パパに言いつけて、クビにさせるぞ!」


 訳の分からない事をのたまっている。

 すると、鉤爪の間から、 小さい作業用の手マニュピレーターが出てきて、 ケンスケが持っていたカメラを強引に奪った。

「あぁ〜何をする!
 それは僕のだぞ!」


 思いっきり、ケンスケは抗議を始めたが、赤いズクはそんな事は無視した。

 当然、中のカヲルは五月蝿いと思っているのだろう。

 ブンブンブンブンブン

「ぎゃぁ〜〜〜
 だじげでぇ〜〜〜!!!」


 そして、もう一方の手を下にやり、更に、ケンスケを逆さにしたり、シェイクしたりして、 ケンスケのポケットから落ちてくるMOディスク等を全て回収する。

 因みに、シェイクされている間に、ケンスケは目を回し、グッタリしていた。

 更に、口から泡を吹き、ズボンの股間は、確り、濡れている。

 そして、赤いズクは、そのまま、服が千切れない範囲で、 ケンスケを軽く振り回しながら、アスカを救助している作業班の所に近付いていった。
(片足を失っているトウジの方がマジでヤバイので、応急手当をされつつ、先に運ばれたらしい)

 勿論、ネルフの機密の塊であるエヴァがあるので、 レスキュー隊や整備部だけでなく、諜報部や保安部もかなりの人数が来ていた。

 カヲルは、赤いズクを、黒服達がある程度、かたまって居る所に近付いていった。






 ズシ〜ン・・・ズシ〜ン

「なななな・・・」

 近付いてくる赤いズクに、その場に責任者であるらしい保安部の課長が驚く。

「か、課長、第16独立連隊から通信が・・・」

「な、なに?」

 部下から通信機を渡され、課長は慌ててそれを受け取る。

『あぁ〜そちらはネルフの関係者かい?』

 中性的な綺麗な声が流れた。

「あ、あぁ、一応、そうだが・・・」

『こちらは、国連第16軍、特別全域・特殊特務独立連隊、 参謀長・カヲル=L=ナギサ大佐だが』

「な!
 こ、こちらはネルフ保安部第二課課長、 穂坂タカノリ一尉であります!」

 相手が上の階級で、更に、あの第16独立連隊のお偉いさんと知り、 緊張しつつ、敬礼までする課長。

 因みに、ネルフ側は、コレが赤いズクからの直接通信とは思ってもいないので、 他のお偉いさん達も聞いていると思っているので、緊張しまくりである。

『戦闘や、君達の様子を、 ビデオカメラに取っていた不埒な輩を捕まえたんだけど、要るかい?
 要らなければ、置き場が無いから、 このまま、叩き落として、潰せてもらうけど』

 カヲルは何気にトンでもない事を言いながら、気絶しているケンスケを持ち上げて見せる。

 因みに、地上から、15m以上、上にあるが・・・

「い、いえ、 受け取らせて頂きますであります!」

 穂坂課長は、赤いズクに向かって敬礼をしながら、そう叫ぶ。

『その代わり、コレが持っていたカメラやディスクは、一旦預からせてもらうよ。
 こっちが発見し、捕まえたんだからね』

 カヲルは、穂坂課長にとっては、無常な事を言った。

「え、そ、その・・・」

 穂坂課長は、流石に、それを持っていかれたら、 下手をすれば、色々と拙いかもと思い、難しい顔をする。

『あぁ、勿論、後で、国連軍上層部に送るより先に、 同じコピーを送ってあげるし、極力、君達、 現場にも、問題ないようにしておくよ。
 それにまだ持っているかもしれないからね』

「わ、分かりました!」

 向こうにそう言われ為、穂坂課長はそう言った。

 すると、赤いズクが、しゃがみ、 既に気絶しているケンスケを、ネルフの保安部に渡した。

 そして、保安部が、完全に気絶しているケンスケを、 確り拘束するのを確認して、安全位置まで、赤いズクを下げ、 マシンガンを腕に装備しなおすと、やってきた方に向かって、 背中のバーニアを吹かして、跳んでいった。
(ジャンプでだから、飛ぶではなく、跳ぶ)

 勿論、その後、連行されていく途中で、気が付いたケンスケが、 拘束されて動けない事や、MDを没収された事に気付き、 騒いだものの、そのまま、独房に放り込まれた。
(盗撮した破廉恥映像が入ったMDしか、残ってなかったらしい)

 彼は、自分の父親が、ネルフでも、かなりの上位者のよう言い、 開放するように叫んでいたが、誰だ尋ねると、流石に拙いと思ったのか、 名前は言わず、口籠るので、その結果、ネルフの子弟とは思われなかった。
(スパイと思われた)

 しかし、3日もすると、ケンスケが、 諜報部第三課に所属する相田二尉の息子と言う事が判明した。

 その為、ケンスケの父親は、その所為で、二階級降格し、係長からヒラに格下げされ、 更に減棒されることになる。

 そして、更に後日、第16独立部隊から送られたテープにより、 ケンスケが、様々な犯罪行為をやりまくり、シェルターの入り口のロックを、 無理やり外した事が判明する。

 また、マギで調べると、彼の父親のIDとパスワードで、 様々な(一応、係長のパスなのでレベルは低いが)機密が引き出され、 ケンスケのHPで、一般に公開されたいたことが判明した。

 更に、このHPが活動を始めた辺りから、 戦自や他組織のスパイが、少なくなっていた事も判明。

 つまり、他組織のスパイが減ったのは、諜報部や保安部の努力の結果ではなく、 このHPから、データを引き出していた為である事が判明した。

 また、このHPには、第一中の女子の写真が載せてあり、 綾波レイのは顔写真だけだったが、載せてあった事が判明・・・

 その所為で、綾波レイを他組織がマークしていて、接触していた可能性が高まった。

 つまり、レイの生存説が浮上する事となる。

 その為、ケンスケの父親は責任を取らされ、直ぐに戦犯として、 ネルフ内で、結果の決まった裁判を受ける事になる。

 因みに、かなり迅速であった為、ケンスケは自分の親が、 (自分の所為で)捕まった事すら気付かず、 そのまま呑気にネルフの社宅に住み着いていた。

 だが、数週間後、家賃滞納で大家に追い出され、 彼はサバイバル生活をすることになり、父親の残した貯金と、 盗撮写真の販売で、暫くの間、生計を立てて暮らす事になるが・・・

 それはもう少し後の話である。










To be continued...


(あとがき⇒悪あがき?)

 ケンスケ、不幸確実・・・
 アスカ、大丈夫かな?
 ゼーレ、ミサトをネルフに残せるのか?
 ゲンドウの復活は可能なのか?
 トウジ&冬月の容態は?
 色々な疑問を作者にも残しつつ・・・マタネ〜(^O^)/〜〜
 P.S  ケンスケとトウジがどういう事情で出てきたかは次回のお楽しみ♪
 P.S2 アスカの助命嘆願メールが着始めました。
      やはり、ネルフから解放したほうが良いかな?
      (まだそんなに染まっていないようだし)



(ながちゃん@管理人のコメント)

とりもち様より、「新起動世紀ヱヴァンガル改」の第八話を頂きました。
いやー、今回もすんごく強烈でした〜♪相変わらず、上手いですなぁ〜♪
ミサトのあの人畜有害ぶり、・・・もう最低(最高?)ですねぇ〜(振り回されたアスカが憐れでした)。
でも、最後はいい気味でしたよ♪
しかしあれだけの目に遭っても死なないとは・・・やはりアレ、ですかね?(ニヤリ)
あと、マコトにもかなり腹が立ちました(ある意味ではミサト以上にです)。
もしゼーレがミサトを救おうとするのなら、代わりにコイツをブチ殺して下さい!(おい)
こんなクズ男、自分のやったことを後悔しながら死んでいくべきです!(おい)
冬月も倒れて、この先ネルフはどうなるんでしょうかね〜?
まさかコレ幸いに、ミサトの専横が酷くなったりして・・・(笑)。
あと、ケンスケ、・・・本当の本当に、最低の最低でしたね。
きっと、トウジは恨むでしょうねぇ〜。是非、この二人の再会シーンを見てみたいものですね。
ケンスケが彼にどんな言い訳をするのか?・・・そもそも罪悪感を持っているのか?すごく興味はありますよね。
まあ、ケンスケはバッドエンド確定でしょうが。
とりもち様に限って、この程度の仕打ちで終わりとは到底思えませんし、ねぇ・・・(笑)。
いやー、マジで続きが待ち遠しいッス。
とりもち様、次の電波(第九話)も待ってますよぉー。


P.S.(以下、作者様への個人的な業務連絡です)

平素よりお世話になっております。
さて、毎回、メール分割にてSSを送付して頂いておりますが、───もし、とりもち様のお手を煩わせているのであれば、次回より一括で送って貰っても構いませんよ?
うちの投稿作家様の中には、とりもち様の20倍のサイズ(タグいっぱい)のSSを一括で送ってくる方もおられますので(汗)・・・気を遣われることはないです。実際、大丈夫ですから。
まあ、最終判断はお任せします。やり易いほうでなさって下さい。
ではでは。
作者(とりもち様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで