第334地下シェルター内・・・

 そこに、問題の2人、相田ケンスケと、鈴原トウジがいた。

「ちっ、まただ・・・」

 皆で避難したシェルターの中で、TV機能付きのビデオカメラのモニターを覗き込みながら、 ケンスケが忌々しそうにそう言った。

「また、文字だけなんか?」

 トウジがそう声を掛けると、ケンスケは、ふて腐れながら、トウジの目の前に カメラを差し出した。

 そのモニターには、南アルプス山脈らしい風景をバックに・・・


本日正午、東海地方を中心とした関東・中部地方の全域に、 特別非常事態宣言が発令されました。  詳しい情報は入り次第、お伝えします。  暫くお待ちください。

                                           本日正午、東海地方を中心とした関東・中部地方の全域に、 特別非常事態宣言が発令されました。  詳しい情報は入り次第、お伝えします。  暫くお待ちください。


 と言うテロップが流れていた。

「報道管制ってやつだよ。
 僕ら民間人には、見せてくれないんだ。
 こんなビックイベントだって言うのに・・・」

 ケンスケは、思いっきり不服そうにそう言った。

 自身の安全を他人任せにしていて、それが当然と勘違いし、 他人の迷惑など全く考えず、 その結果、どんなことが起きても、一般人(更に、未成年)と言う事で、 護ってもらえると勘違いし、戦場と言う危険地帯への憧れのみで、 行きたがっている典型的な例であろう。

「ほぉ〜」

 だが、あまり戦場と言うところに興味のないトウジは、簡単にそう答え、 後は興味を失ったように、ぼ〜っとしはじめた。

 そして、暫く不貞腐れていたケンスケだ、何かを思いついたらしく、 周りを気にしながら、トウジの傍に、にじり寄ると・・・

「ねぇ、ちょっと2人で話があるんだけど・・・」

 トウジにそう耳打ちした。

「なんや?」

 ボーっとしていたトウジはそう答えた。

「ちょっと・・・な」

 片手で、軽く頼み込むようにして、ケンスケがウインクをしながら、そう言った。

「しゃあないな・・・
 イインチョ」

 トウジはそう言って、立ち上がり、近くに居た雀斑のある少女、洞木ヒカリに声を掛けた。

「何?」

 友人と話していたヒカリがトウジの方に振り向く。

「ワシら2人便所や」

 トウジがそう言い、ケンスケはトウジの後ろで、ニヤケながら、頭を軽くかいていた。

「もう、チャンと済ませておきなさいよ!」

 ヒカリは顔を紅くしながら、そう言って、友人の方に顔を逸らした。





 男子トイレ

 ケンスケとトウジは、連れションをしていた。

 他には誰も居なかった。

「・・・で、なんや?」

 トウジが話を切り出した。

「死ぬまでに、一度だけでも見たいんだよ」

 ケンスケはそうこたえた。

「上のドンパチか?」

 トウジは呆れたようにそう言った。

「このチャンスを逃しては・・・
 今度、いつ、また敵が来てくれるかどうか、判らないし・・・
 な、頼むよ。
 そこの通風孔に上ったり、扉のロックとかを外すの、手伝ってくれ」

「外に出たら、死んでまうで・・・」

 トンでもない事を言い出すケンスケに、トウジは、呆れたようにそう言った。

「ここに居たって、判らないよ。
 どうせ死ぬなら、見てからが良い!」

 自分が死ぬ事など、全く、これっぽっちも、考えていないくせに、 ケンスケは、目を輝かせながら、そう言った。

「アホ、何のためにネルフが居るんじゃ」

 トウジは疲れたようにそう言った。

 確かに、ネルフは非公開だが、この第三新東京市に住むものにとっては、 公然の秘密であり・・・

 また、化け物から、この街を、世界を護る?事が、ネルフの仕事であると、 ネルフに勤めている親から、聞かされていたからである。

 それに、トウジは、そんな危険があると分かっている所に、 態々、出て行くほど、能天気ではない。

 それに、自分に何かあったら、妹が・・・と言う考えもある。

「だからさ・・・
 そのネルフに、本当に俺達を守る気があるのかどうか、分からないだろう」

「はぁ?・・・どう言う事や?」

 ケンスケの言葉を聞いて、トウジが不機嫌そうにそう言った。

 それはそうだろう。

 自分の父や祖父の勤め先の悪口を言われたようなものだからだ。

 だが、ココで怒鳴ったり、手を出したりせず、聞いているのは、 ケンスケが、曲がり間違っても、自分の友人であると言う事だけではなく・・・

 ケンスケ自身の親も、部署は違えど、同じネルフに勤めているからである。

 まぁ、友人でなかったら、思いっきり殴られていただろうが・・・

「ネット仲間の話だと、ここ以外の地域のニュースでは、 あの事件は、原因不明の爆発だって事になっていて、 被害にあった厚木や入間なんかの戦自の関係者は、その2次爆発とか、 テロみたいなものに巻き込まれた事になっているんだよ。
 怪物の事なんか、全く知らないようだったぜ」

 使徒の事は、まだ一般人には極秘である為、そんな風に発表されていた。

「なんやて!?」

 トウジは驚いたようにそう言った。

 それ、もそうだろう。

 第三使徒戦後、予想もつかなかった事ばかりだったし、上層部が色んな意味で、 機能しなかったので、使徒や初号機の処理が間に合わず、 避難所から出てきた第三新東京市民の殆どがそれを見ていた。

 トウジも、それを見ており、あのような大層な物を、 態々、隠したとは思ってもいなかったし、 その理由もよく分からないからだ。

「多分、無理やり、情報封鎖とかしているだろうけど・・・
 TV局や新聞社を始めとする民間の広報でさえ、 そう言う事にしているって、おかしいと思わないか?
 ある意味、特ダネ、かなりの飯の種じゃないか。
 それに、アレだけ巨大な存在、ココに来るまでに、 そう言う種類の人に見られてないハズが無いじゃないか」

 確かに、あれだけ巨大なモノならば、ココに来る前にも、 かなりの人の目に触れていたハズであるし、 今後、似たようなものが来るのであれば、滅茶苦茶目立つ・・・

「むぅ〜〜〜〜〜」

 混乱を避けると言っても、むしろ、あんな物を無理やり隠そうとする方が、 後々、かなりの混乱を呼び寄せる事となるだろう。

「大体、ネルフはさ。
 何でも、隠して、自分たちの内だけで、強引に事を進めようとしているんだぜ。
 あれだけの事をさ。
 他に協力を求めず、民間人にも、何が起こり、何故、危険で、 避難するかを教えずにだぞ。
 それじゃぁ、今後、どうなるか、分からないじゃないか」

 ケンスケはもっともらしい事を並べ立てる。

「しかしやなぁ〜危ないやないか・・・」

 眉を顰めながら、考え込むトウジ・・・

 その様子は、ケンスケを手伝うどころか、 その考えにも、賛成しそうにもなかった。

 トウジはケンスケほど、楽天家ではないし、そんなところに出て、 態々怖い目に遭うのは嫌だからだ。

 故に、どうやって、ケンスケを思い止まらせるかを考えていた。

「(拙いな・・・下手をすれば、チクられるかも・・・)」

 ケンスケはトウジを巻き込む為に、その頭をフル回転させた。

「そうだ。
 ネルフがどうやって、あんな物を撃退しているか、分かったもんじゃないじゃないか。
 もしかしたら、生贄みたいなものを使っているのかもしれないぜ。
 それに、お前の妹さんだって、この間、訳のわからない黒服達に攫われかけたんだろう。
 それって、ネルフに出入りしている怪しげな一団に、特徴が似ているんじゃないか?
 そんな風に、無視決め込んでいて、もし、妹さんが、同じような目にあったらどうするんだよ。
 もしかしたら、二度と会えないような事になるかもしれないんだぞ」

 ケンスケはそう言った。

 とは言うものの、ケンスケは本気でそうだとは思っていない。

 ケンスケの父親だって、時々、仕事で、そういう格好をするのだ。

 それなのに、なぜ、ココまで言うかと言うと・・・

 先ず第一に、外に出る為に、どうしても、他人の協力が必要だからだ。

 それに、トウジには、外に出て行こうと考えている事を話した。

 下手をすれば、トウジは自分を止める為に、大人達に密告し、 邪魔するかもしれないと言う考えがあったからだ。

 故に、ケンスケは、トウジを巻き込む為に、そう言っているだけである。

 とは言うものの、そんな危険な所に行く為に、シスコンとも噂されるトウジに、 妹の事を使ってまで、巻き込むとは卑怯・卑劣・外道である。

「・・・!!

 妹の事は、トウジとって、効果は抜群であり、 その顔は驚愕の表情となっていた。

「一般広報とかの情報が宛てにならない以上、ネルフがどんな事をしているのか、 トウジは見ておいた方が良いんじゃないのか?
 それが妹を護る兄としても、漢としても、確認する責任がある行動じゃないのか?」

 ケンスケにそう言われ、顔を蒼くしながらも、真剣に考え込むトウジ・・・

 更に、ケンスケは、叩き込むようにその場の自分にとっては、 都合の良い論拠を出し始めた。

 トウジは、ある意味、単純で、まっすぐな性格な為・・・

 ある意味、狡賢いケンスケの論拠を打ち壊す事が出来ず・・・

「クッ・・・しゃあないな・・・」

 その結果、ケンスケの言う事にも一理あると思わされたトウジは、 一緒に表へ出る事に同意してしまった。

 そして、あの事故?が起こった・・・










新起動世紀ヱヴァンガル改

第九話 戦後処理

presented by とりもち様











 前回の使徒戦後・・・

 トウジとミサトがネルフ病院で緊急手術を受けて、 冬月とアスカは意識不明で入院した。

 その中で、3日と言う異常ともいえる驚異的なスピードで退院したのは、 何故か、肉体的に一番重症だったハズのミサトであった。

 勿論、えびちゅが飲めないからという理由が主であるが、何故か、 日常生活をするのには支障がない程度に超回復していたという。
(大怪我をした為、某影響が強まったのかもしれない)

 だが、あちらこちらに、骨を固定する金属が入っているので、 一般の航空会社の飛行機などで旅行する時は、 金属探知機に引っかかりまくりだろう。
(と言うか、そんな状態で、3日で退院するとは化物だ)

 一応、ミサトが、ネルフのお偉いさんな為、 その病院の医師達は、ミサトを病院に拘束は出来なかったが・・・

 ミサトから、コッソリ採取した細胞を、裏で極秘裏に、 嬉々として研究しているらしい。
(流石、ネルフ付属の特別病院である)

 一方、冬月は歳の為か、アスカは予想もしていなかったダメージが強かった為、 まだハッキリと意識が戻らず・・・

 (五体満足な)ゲンドウは(精神的な理由で)、 ベッドから起きようとしていない。

 そして、使徒戦後、恒例?であるゼーレの嫌味大会は・・・

 今回の被害が、作戦部長であるミサトと、 その副官である日向の2名だけの所為である事が、 国連上層部にも、確り報告されており・・・

 更に、委員会は全責任を、ミサトの副官であった日向に、 押し付けるを、スケープゴートにする のに忙しい為、先延ばしされたのである。

 5日目、ミサトは、アスカが一応、起きた事を知り、 命令違反の事で責めようと、意気揚々と病院に行こうとしたが・・・
(実は、この時、強制シンクロ切断の影響で、アスカの意識は、 ハッキリしているわけではなかった)

 長年の付き合いで、パターンがわかっていたらしいリツコが、 予め行っていた策により、ミサトは、病院に入るどころか、 入り口で保安部の屈強な男達に捕まり、 作戦部長執務室前に連れて行かれ、放り込まれ、書類の(一部である)山脈と面会することになった。

 気が付いたとは言え、アスカは、強制シンクロ切断の影響で、記憶の混乱や、 身体と精神のリンクに若干のズレがあるらしく、 その治療の為、暫く入院する事となった。

 尤も、その時点で、苛立っていたミサトとあわせれば、 ドイツで仕込まれた教育など吹き飛び、 アスカは、確実にネルフ自体に、強烈な拒否感を得たであろう。

 リツコの見立てでは、あと1週間ほどで、退院できるらしいが・・・

 また、強制シンクロ切断の影響で、記憶の混乱のおかげで、 今回の使徒戦の時の事を、 あまり覚えていないというネルフにとっては嬉しい症状がでていた。
(無論、ハッキリ意識がしてない内に、暗示らしきものをかけたらしい)

 リツコはミサトに色々話した。

 第四使徒戦に関して、これ以上、アスカを責めようとすると、 ミサト自身も色々と突付かれる事となり・・・

 その結果、日向に全責任を負わせきれなくなり・・・

 ミサト自身にも、不信任案が発行され、ネルフをクビになり・・・

 更迭されると、散々脅しをかけて・・・

 その結果、ミサトのアスカを責め様とする行動を、 一時断念させる事に成功した。

 更に、リツコは、アスカが退院した後も、 ほとぼりミサトが、 完全に冷める忘れるまで、 極力、ミサトとアスカを接触させないように、リハビリも兼ねてと言う理由をつけ、 第一中学校への転入届などを、マヤに手配させる事になる。

 そして、リツコは、ゼーレからの直々の要求命令により、一刻も早く、 ゲンドウを復帰させる為、零号機のコアを初号機のコアに偽装するのに取り掛かり、 残りの仕事を、マヤを始めとする部下達に、暫く丸投げした。
(無論、ゲンドウが不貞寝である事は極秘にしているが・・・)

 だが、本来の仕事を全て部下に丸投げをしていても、 ネルフで一番忙しく働くリツコに対して、文句を言うような輩は、 ミサト以外居ないので、技術部は忙しいながらも、 平和であった。







 時間を戻して、第四使徒戦後、3日目辺り・・・

 第16独立連隊の某基地

 司令部・執務室

 そこには、司令であるシンジ、副司令であるレイ、戦闘指揮官であるマナ、 参謀であるカヲル、それに、髪が長く、眼鏡をかけた、 口元に黒子のある他の3人に勝るとも劣らない美女がいた。

 そう、1部の人達が待っていた山岸マユミ嬢である。

 勿論、彼女も、シンジと一緒に逆行して来た者の1人である。

 主に後方支援などをしているので、前回は、一緒にいなかったのである。

 役職は諜報長官である。

 因みに、正式な役職で言えば、シンジ=総司令官、 レイ=総司令補佐官副司令官、 マナ=軍務長官、カヲル=参謀総長となる。

 マナの場合は、戦闘時、戦闘指揮官をよく兼任する為、 戦闘指揮官の方で、名が通っているのだ。
(無論ミサトと違い、至極まともな指揮であり、しかも、常勝である)

 因みに、役職など関係なく、全員どれでも出来るくらいの能力は持っているが、 その性格や得意分野で役職を決めたのであろう。
(シンジは、皆の中心となり、交渉や策謀、または決定、 レイは、冷静な立場に立ち、シンジの判断等の補佐、 マユミは資料分析や後方支援、マナは戦闘、戦術関係、 カヲルは助言や大きな戦略・・・)

 そして、その5人は、ある映像を見ていた。

「・・・で、コレが、ケンスケが撮っていた奴?」

 シンジが画面を見ながら、呆れてそう言った。

「そうだよ。
 判り易いように、マユミ君と重要部分だけを編集したけど 映像とか、音声とか、全く弄っていないよ。
 まぁ、次に編集していない奴も流れるけど、恐ろしく退屈に値するよ、長いって事さ」

 どことなく、呆れたように、持ってきたカヲルがそう言った。

「決定的瞬間?」

「と言うか、自分の犯罪記録じゃない?」

 レイとマナも呆れてそう言った。

「今回の事故の原因で、特に重要と思われる部分を、 前後を挟んでダイジェストのように、理解し易く編集したら、そうなったのさ。
(尤も、残りも、女子更衣室とか、女子トイレとかの盗撮記録だったけどね)」

 カヲルがそう説明する。

「この人は、自分を助けてくれた人を見捨てて逃げていっただけでなく、 安全圏内まできたら、何を思いついたのか、今度は、 嬉々としながら撮っていましたし・・・
 良心よりも、欲望が強すぎるんでしょうね」

 マユミも呆れながらそう言った。

 マユミは、分析をする為、編集前のモノをカヲルと一緒に見ていたので、 ケンスケにかなり嫌悪感を持っていたりする。

 前史で、自分も被害に遭ったのではないかと感じて・・・

 また、映像には、吹っ飛んでくる弐号機の背中を映している途中で、 トウジが必死の形相で突き飛ばしたのもあった。
(映しているケンスケは、叫ぶものの自分からは動かない)

 そして、画面が乱れ、次に映った時は、 トウジがなくなった左足の付け根の部分を押さえながら、 必死にケンスケに助けを求めているのに・・・

 そのまま、画面がトウジから、ドンドン逃げるように遠ざかっていく。

 トウジが顔を蒼くしながら、ケンスケの名を呼び、助けを求めるが、 ケンスケは答えず、完全に離れて行く。

 そして、ある程度は離れると、今度は何を考えてのか、トウジや弐号機、 使徒、ツァア専用ズクまで撮っていた。
(『スクープだぁ!』とか叫びながら・・・)

 そんなシーンも、確り、この編集の中にもあった。

 どう考えても、助けてもらったのに、 自分は相手を見捨てて逃げたとしか思えないシーンが・・・

 しかも、途中から、助けられるのに、その決定的な場面を撮りたいがゆえに、 見捨てて、離れたところから、撮っていたと言ってもいい映像だ。

「トウジは、慌てて下敷きになりそうなケンスケを突き飛ばして、 ケンスケの命の代わりに、弐号機の下敷きになって、左足を失ったようだね。
 おそらく、友情もだろうけど・・・」

 シンジがそう言った。

 他にも、色々問題になるシーンが映っていたし、音声を聞いたら、 かなり拙い事を、嬉しそうに喋っている。

「先程、シェルターの監視カメラの記録をハッキングさせていただきましたが・・・
 彼はトンでもない事を色々やっている証拠が確り残していましたね」

 マユミが疲れたようにそう言った。

「やっぱりそうなのね」

 レイも呆れたようにそう言った。

「どんな事をやっていたの?」

 マナがそう尋ねた。

「先ず、主犯である相田ケンスケは、共犯である鈴原トウジの協力で、 トイレの上にある通風孔を破りました。

 しかし、鈴原トウジが上ってくるのには、ロクに手伝わず、 1人でさっさと先に進みました。

 おそらく、自分のやる事を止められる事が本能で分かっていた為の行動であろうと、 推測されます。

 そして、広い場所に出ると、最短ルートの途中にあり、 邪魔になるファンを止める為、その付近にあった中央制御盤を弄りました

 電源は、簡単に切る事は出来ました。

 しかし、当然、ファンは電源が止まっても、空気の流れ関係上、 その回転は、直ぐには止まりません。

 ファンが直ぐに止まらない為、相田ケンスケは、電源が切れてないと勘違いし、 短気を起こし、次々にスイッチを切っていき、更には、そこにあったコードを、 考えなしに、次々に切っていきました。

【知るための権利を行使する為の当然の行為だ】とか言いながら・・・

 その為、照明以外、 エアコン等の生命維持に重要な装置が止まったり、 調子がおかしくなりました。

 また、シェルター内や、ネルフ本部に、 特別非常事態宣言が解除されていない状態で、 シェルターの扉が開くという異常事態が発生しているのに、 それ知らせる警報が鳴らなかったのは、この為です。

 そして、ある程度、コードを切った所で、鈴原トウジが、文句を言いながら、 追いついてきました。

 そんな彼を宥めつつ、結局、別ルートを使うことにして、 第334シェルターの出入り口の所に向かいました。

 そして、【大丈夫】と言いつつ、ロックを解除する為、扉の開閉装置に、 自作らしきパソコンを無理やりつなぎました。

 扉を開く為のパスコードを入れる時、おそらく、遊びか何かで作ったか、 何かの為に保存していたらしいコンピューターウィルスを、 シェルターの管理システムに、誤ってか、または誤魔化す為にわざとか、 直接入れ、別の不都合を引き起こしています。

 また、このウィルスの所為で、マギの防衛機能が働き、 自動的に、その部分を隔離した為、 開放されていないシェルターの発見に、 更なる時間がかかる事となりました。

 無論、この所為で、この第334シェルターだけでなく、 付近にあった同系列のシェルターにも、ウィルスが感染し、 マギから隔離され、様々な不都合がでました。

 主に空調エアコン等の生命維持関係の装置です。

 更に扉のロックを外した為、もしもの時の為のシャッターのロックも外れ、 手動で開けれる様になり、簡単に破れる状態になりました。

 最後に、【後で、バレ無い様に戻ってくる為】と、鈴原トウジに言って、 シェルターの扉を開けっ放しのまま、 放置して行きました。

 この為、扉から通路に爆風や土砂が通路に入り込み、安全装置も働かずシャッターも簡単に破れた為、 シェルターの中で、暴風が吹き荒れる事となりました。

 最初の通風孔を破ったのと、最後の開けっ放し以外は、 全て、この主犯である相田ケンスケ、1人で行ったと言っても良いでしょう」

 マユミが心底呆れたように、自分が分析した事というか、事実を言った。

 因みに、通風孔内での行い以外は、ネルフの記録にも確り残っていたりする。

 通風口は、碇家の特殊部隊が、コッソリ、仕込んでいた隠しカメラに映っていたし、 本人も嬉々としながら、制御盤を弄ったり、コードを切るシーンをコメントつきで、 自分のカメラに撮っていたのである。

 中途半端過ぎる知識をひけらかし、自分勝手な主張をしながら・・・

「中の被害は?」

 シンジがコメカミを押さえながらそう訊いた。

「扉をそのままにして行った所為で、弐号機が付近で叩きつけられた影響を受け、 シェルター内に暴風が吹き、避難していた全員が何かしらの怪我を追いました。

 また、通路に土砂が入りこみ、中から出られなくなりました。

 不幸中の幸いだったのは、当初、危惧されていたようなネルフ側が、意地になって、 UNやウチの救助隊を拒否するような事がなかったお陰で、発見後、色々と手間取らず、 ウチの初期型作業用モビルフォースを持っていった救助隊で、速やかに助ける事ができました」

 ちなみに、ネルフがこの介入を拒否しなかったのは、ゲンドウ、冬月、 ミサトを始めとする他組織の介入に関して、警戒しすぎたり、意地になりすぎて、 それによる被害や、現状を把握しなかったりする無駄な上層部の意見が介入せず、 トップが合理的なリツコだけだったからである。

「その結果、使徒戦後から、シェルター内の民間人を救出するまでに、 3時間強で終えました。
 ただ、逃げ場のないシェルター内で、暴風が吹き荒れた為、無傷の者は居らず、 軽傷ですんだのは、わずかに 23名程しか居ませんでした
(全治一ヶ月未満以下で軽傷と言う基準)

 マユミはそう言って、手元の資料を見て確認する。

 呆れるほどの被害者の多さに、少しやるせない気になったようだ。

「また、色々な装置が止まっていた為、この第334シェルターだけでですが・・・
 空調が止まった影響で、酸欠で倒れたらしい者が179名。
 シェルター内に熱が篭った影響で、熱中症にかかった者が245名。
 つまり、殆ど熱中症にかかり、脱水症状も起こしていました。
 外と繋がった時に、辛うじて、意識があったものは、2名のみです。
 無論、付近のシェルターの被害をあわせれば、 酸欠と熱中症の被害者の数は、簡単に桁が上がりますが・・・」

 マユミが、第334シェルターの被害者の数だけ、明確にして、そう言った。

 おそらく、全被害者の数を言うのは憚れたのであろう。

 因みに、第334シェルターの収容人数は250名・・・
(参考資料:放送版エヴァンゲリオン第三話)

 つまり、第334シェルターでは、殆どの者が大怪我を負い、 酸欠になり、熱中症になったのである。

 唯一、動けた者も、助けを呼ぶ為に、出口につながる通路の土砂を、 必死に掻き出そうとしていたらしい。

 因みに、ケンスケがコードを切らなければ、扉を開けっ放しにしていなければ、 本来なかった被害である。

 他のシェルターでは、怪我人は少ないものの、酸欠や熱中症で倒れた人がかなり出ていた。

 無論、この所為で、特別非常事態宣言解除後、あちらこちらシェルターから、 病院に救急車やタクシー、または、協力的な一般人の車が、 何十回も往復すると言う大変な事が起こったらしい。
(トウジやアスカ、それに弐号機、第四使徒の死体が回収された後だった為、 被害が増えていた)

 後日、この所為で、ずさんな安全管理と言う事で叩かれ、ネルフは責任を取らされ、 第三新東京市における発言権まで、低下する事になる。

 尤も、ココまで悪くなったのは、使徒戦後、 この事態を知った市議会とネルフとの会合の時・・・・・・

 この事で責められた時に、管理責任者である癖にサボりまくっていたミサトが、 何も考えずに、簡単にキれて・・・

【人類の存続の為にがんばってやっているんだから、 その程度の事で目くじら立てるんじゃないわよ!】

 と市議会の議員達や、証人として来ていた警察関係者に、 いきなり怒鳴った事が大きいだろう。
(この時、冬月は復活していなかったし、ゲンドウは不貞寝していたし、 リツコは忙しかった・・・)

 行き成りだった為、一緒に参加していた保安部や諜報部の各部長及び課長達が、 止める暇もなかったらしい。

 本来、ミサトを出席させたくはなかったのであろうが・・・

 ミサトが責任者であるし、本人も書類整理をサボるオフィシャルな口実が出来たと、 嬉々として出席したらしい。
(堂々と遅刻して・・・)

「前史よりも、悪くなっているね・・・」

 シンジがそう言った。

 コレだけの影響が出たのは、あの時のシンジと違い、 長年訓練を受けていたアスカが、ある意味、優秀過ぎた為・・・

 弐号機が落ちる時体勢を整える事が出来、受身を強く取ったのと、 弐号機が落ちた位置関係によるものも、一要因だが・・・

 トウジ達が、実際に戦っていたシンジと接触してなかった為、 抑えの要因が少なかったケンスケが、工作をやり過ぎた事が大きいだろう。
(つまり、コードを切りすぎた)

「死者は?」

 マナがそう訊いた。

「ネルフが拒否等の邪魔をせず、作業が迅速だった事と、 ネルフ直営以外の病院には、碇財団及び、アンカード財団の医療器具が、 予め配備されていた為、幸いな事に、まだ出ていませんが・・・
 酸欠と熱中症の影響で、まだ意識不明の者が・・・ 殆どが、まだ幼い子供達ですが・・・ 百数十名ほどいますので、ハッキリとは言えません」

 マユミが言いづらそうにそう言った。

 因みに、ネルフの医療器具はゼーレとネルフの関連企業のモノで、 実は外見だけで、中身は時代遅れであり、財団連盟製の最先端のモノは、 ゼーレの思惑というか、利権の為に、自分達で入れてなかった。

 その為、後日、ネルフ関係の病院では、上手く治療が出来ず、 収容された数人の子供達が死亡することになる。

 しかも、回復が芳しくないので、病院を移す事を親が決めたその日の内に・・・
(つまり、医者のメンツと、意地の為に・・・)

「ですが、コード707の生徒は、居た位置が良かったのか、比較的、軽傷で済み、 軽い者で3日、重い者でも2ヶ月程度の入院ですみます。
 また、あのシェルターに避難した者の中で、 無傷だったのは相田ケンスケのみです」

 マユミが最後は忌々しそうにそう言った。
(因みに、何故か、コード707の生徒達は、殆どネルフ関係以外の病院だったと言う)

 つまり、第334シェルターに避難した者は、主犯であるケンスケ以外、 何かしらの怪我を負ったということである。
(トウジは左足を失ったし)

「イインチョさんは?」

 レイがそう言った。

 ヒカリの事が、特に心配らしい。

 今回、学校に通っている時も世話になったのだから、そうであろう。

 むしろ、レイはある程度受け答えが出来ていたので、 前回よりも、関係は良好だったとも言える。

 勿論、その事情がわかるシンジとマナも心配そうに見ている。

「熱中症の影響も比較的軽く、入院は一週間で大丈夫ですが、 左腕を骨折しています」

 当然、マユミも、心配そうにそう言った。

 1人、ヒカリの事を直接知らないカヲルは、仲間はずれのような気がして、 複雑な顔をしている。

「でも、命に別状はないんだね?」

 シンジがそう訊いた。

「はい、それは無いようです」

「そうか・・・」

「良かったね」

「えぇ」

 シンジとマナ、レイが、安心したようにそう言った。

「はい、それと、鈴原トウジが、既に、フォースとして登録されています」

「彼の妹さんは、無事のはずだけど?」

 不思議そうにカヲルが訊く。

 実は、ゲンドウの鬼畜な部下の魔の手から、彼女を救ったのは、 カヲルであるからだ。

 勿論、その鬼畜な部下達は、彼女に危害を加える事無く、 第三使徒が作った瓦礫の下敷きになった。

 その時、どの程度の怪我をしていたかは不明だが・・・意識はあったらしい。

 その後、彼女には、影でガードもつけているので、 何かあったら、直ぐ連絡がある事になっているからだ。
(因みに、十数回、極秘裏に防いでいる)

「えぇ、ですが、彼は、ネルフにより、多額の借金を背負わされ、また、 今回の事故の原因を発表しない代わりに、乗せられる事になるようです。  マギにあった状況証拠と、 こちらのS.Cスーパー・コンピュータ ユグドラシルJrでの予測ですが・・・
 既に、鈴原トウジの身柄は、ネルフに確保されている為、 それを覆す事は、かなり無理をしなければ、いけません」



 ここで、少し事情を説明する。

 後日、リツコと強引についてきたミサトが、交渉に行き、 トウジに、ミサトの失態の分まで被せて、強引に脅してチルドレンにする事になる。

 もっとも、ミサトが、自分がサボっていた事は、遥か彼方の棚に置き忘れ、 トウジ達がやらかした事をかなり大袈裟に言い、 トウジだけの責任であるかの様に脅した為、 チルドレンになる事の了承を得たものの・・・

 一応、今後の事を考えて、信頼を得るべく、リツコが、 それなりの条件を整える事になるが・・・

 その時、ミサトが色々余計な事を、散々口走った為、トウジはミサトに対しては、 不信感しか持たなかったと言う。
(条件をリツコが話している時、“贅沢”とか色々言って、 茶々を入れて邪魔をするので、最終的には追い出されたらしい・・・)

 因みに、その時までには、ミサトの罪は、先の初号機爆破及び、 碇家の御曹司殺害だけでなく、なぜか、ミサトの借金の踏み倒しや、 交通法規違反のもみ消しや、保険金詐欺?にいたるまで、日向が殆どかぶっており、 この男が、全て誘導したり、勝手にやったりした事になっていた。

 無論、殆どが日向自身も初めて聞くようなモノだったらしい。

 散々、利用されるだけ、利用され、最後は押し付けられるものは、 全て押し付けられ、捨てられた日向マコト・・・

 それでも彼は、裁判が起こるまで、ミサトやネルフを恨まず、 コレは国連から着た査察官の陰謀と決め付け、そちらの方を恨んでいたが・・・

 だが、数日後、軍事裁判の時、何故か、元気なミサト自身の証言によって、 余計な罪まで押し付けられ、減刑どころか、死人に口無しというか、 証拠隠滅とばかりに、極刑するように勧めていた事を知ることになった。
(因みに、この裁判は、ゼーレの思惑通り、出来たらしい)

 そう、マコトの見ている前で、ミサトは自分の罪を全て日向がやった、 もしくはやらせたように、確り証言したのだ。
(と言うか、ミサトの中では、完全にそうなっているのであろう)

 無論、それは、遠隔地ネルフ本部 からのライブ映像による証言だったが・・・

 ミサトは確り受け答えするし、何故か汚いものでも見るような眼で日向を見ていたらしい。
(完全に、ミサトの中での記憶が改ざんされているのだろう)

 そのとき、日向は足元から、何かが崩れる感覚に襲われ、 目から鱗が落ちるものの、すでに遅く。

 日向が呆然としている内に裁判が終わり、タバシリ逝きが決定していた。
(ゼーレの意向がストレートに反映された為、スピード即決だった)

 タバシリの、しかも、最中央部逝き・・・

 はっきり言って、死刑よりも辛い状態に置かれたのは言うまでもない。

 気が付いた彼は、運ばれている最中ずっと、 自分が庇っていたミサトの不真面目な勤務態度や、 不正等の事を叫び続けていたと言う。
(無論、後でその事を調べられ、ネルフ及びゼーレは色々と拙い事になっていく)

 日向マコト、ミサトの外見に騙され、 恋に恋して、現実を見る目を盲目にした故意の奴隷男、 被害者の皮を被った最凶の加害者の1人は、 これ以上ない災害の種を残す為に、ネルフから、退場したのである。
(故意は誤字にあらず)

 話を戻そう・・・



「しかし、酷いな・・・
 殆どの原因というか、元凶は、この相田と言う奴なのに・・・」

 カヲルが顔をしかめながら、そう言った。

「おそらく、このテープをネルフ側に渡しても、 彼の待遇は変わらないと思います」

「公になっても?」

 マユミの言葉に、マナがそう訊いた。

「寧ろ、止めなかった事を理由に、続けさせられるでしょう。
 元々、共犯ですし・・・」

「ふ〜ん・・・
 まぁ、ある意味、自業自得だし、リスクが大きすぎるからね。
 今は手を出さないでおこう。
 それで、機体の方はどうなりそう?」

 シンジがそう尋ねた。

「おそらく、鈴原トウジは参号機ですね」

「そう言えば、肆号機も、一緒に送るんだよね?」

 カヲルがそう訊いて来た。

 実は、アメリカにある系列会社のヤマギシ運送とナギサ警備保障に、 元ネルフアメリカ支部実はゼーレの老人会から、 そう言う依頼が来たのである。

 勿論、最初は国連軍の第七連隊である太平洋艦隊に頼もうとしたらしいが、 (書類整理をサボる為に)交渉の場にシャシャリ出て来た某作戦部長の所為で、 思いっきり、決裂したらしい。
(使えなくなったハズの特務権限を持ち出し、 強引に運ばせようとしたらしい・・・中将相手に命令口調で)

 因みに、ゼーレも運輸会社や警備保障を持っていて、料金も格安らしいのだが、 届くのも遅く、高確率で武装海賊に襲われ、積荷を全て奪われる為、信用がなく、 殆ど仕事もない為、今は、殆ど潰れているに等しい。
(ゼーレの運送会社に頼んだら、保険も利かなくなるらしい)

「えぇ、そうですね。」

 マユミがそう答えた。

「パイロット、チルドレンは?」

「コード707から、新たに選抜されるでしょうが・・・
 下手をすれば、ヒカリさんが選ばれる可能性が高いです」

 シンジの問いに、マユミはそう答えた。

「それは、どうして?」

 レイが顔をしかめながらそう訊いた。

「一番の理由は、鈴原君に、恋心を持っている事。
 そして、シンクロの適正が高い為です」

「ヒカリさんは、母性が強い反面、表には出していなかったけど・・・
 ある意味、母親を求める心が、最も強そうだったからね・・・」

 マナが、思い出したかのように、そう言った。

「ケンスケの方は?」

 シンジが訊いた。

「現時点では、候補にすら入っていません」

「本当かい?
 因はこっちの男なのに・・・」

 マユミの答えに、カヲルが、不服そうに、もう一度言った。

「アレは求める心は強いのですが・・・
 自分勝手に育ってきた分、自我が強過ぎて、更に身勝手な分、 シンクロの変動が強いと考えられます。
 また、実際の戦いと、空想の戦いをごっちゃにしていますので、 戦力的にも不安がありすぎます。
 特に、操縦者自身にも痛みの伴うエヴァでは、 他の足を引っ張る可能性が強すぎです」

「つまり、役立たずって、訳だね」

「えぇ、ゼーレの求める依り代には、成り易いんですけど・・・
 簡単に自我を肥大化させて、簡単に、崩壊させる事が出来ますから・・・」

 カヲルの言葉に、マユミはそう言った。

「ふむ・・・
 で、機体の方はやはり、肆号機?」

「はい、ヒカリさんはこのままですと、肆号機になるでしょう。
 そうなるとコアを乗せ替えなければならない事態になります。
 ですが、現在、ネルフには、余計な出費はありますが、予算がない為・・・」

「最初から乗せてあるコアに溶け込ませた方が早いから、 家族の誰かが、肆号機のコアに溶かさせると・・・」

 シンジがそう訊いた。

「はい、参号機の場合、元々、鈴原トウジを乗せる事が決まっていましたから、 コアは予めアメリカ支部に送っていた為、準備が完了しています。
 ですが、肆号機の場合、元々、使い潰すための予定でしたから、 コアを取り替えなければなりません。
 ですが、おそらく、手っ取り早くしようと、新しいコアの精製を考えるでしょう。
 おそらく、彼女の姉の洞木コダマさんが、その第一のターゲットでしょうね。
 その次は、妹さんのノゾミちゃんです」

 言い辛そうにマユミがそう言った。

「イインチョさんのお父さんは確か、鈴原君のお父さんと違って、 ネルフとは直接関わっていない外注業者関係にできたでしょ?・・・
 裏では、会社上層部役員が、電柱と繋がっているけど」
(直接なネルフ関係者にはならないように手引きしていたらしい・・・)

「えぇ、確かそうだったわ」

 マナがレイにそう訊き、レイが頷く。

 2人で仕掛けていた工作であろう。

「だったらさ・・・」

「はい、そこで、現在、極秘裏に、こちらの関連企業から、 ヘッドハンティング的なものをかけ、ネルフには知られないうちに、 家族ごと、第三新東京市から、引っ越させる計画を立てています。
 既に、第一中にはレイさんが居ませんからね。
 勿論、鈴原さんの妹さんと同様にガードをつけています。
 それと、ネルフ特殊諜報部、つまり、髭外道の子飼いの兵が、 まだ執拗に狙っているようですので、鈴原さんの妹さんも、安全の為、 洞木さんご一家と一緒に疎開させ、こちらの庇護下におきます。
 残りの鈴原さんのご家族は、既に全員がネルフの所員である為、難しいですが、 彼女だけなら、洞木さんのお父上にご協力いただければ、大丈夫です。
 最後に、時間稼ぎの為、肆号機の運搬も遅らせようとも、考えています」

 マナがアイデアを言う前に、マユミがそう言った。

「あう〜〜マナちんの仕事〜やろうと思ってたのにぃ〜」

「あの、マナ君、そう言うのは、参謀である僕の仕事だと思うけど?(汗)」

 マナが愚痴り、それにカヲルが突っ込む。

「うぅ〜だってぇ〜戦い易いように戦場を整えるのはぁ〜」

 流石に、ミサトとは違い、指揮官、 作戦に携わる者としての自覚があるのであろう。

「まぁまぁ、コレは、ある意味、後方支援ですし、 諜報関係の色も強いですから・・・(汗)
 それに、一応、選抜は、マナさんの部下から行いましたし・・・(汗)」

 マユミはそう言って、いじけるマナを慰める。

「では、決定だね」

 シンジがそう言ったところで、レイは、どこかに電話をかけ始めた。







 更に、十数日後、ネルフ本部・第一技術部部室・一番奥の部長スペース

「・・・零号機のコアを初号機のコアと偽るのはこれで大丈夫ね。
 そうなると、フィフス候補のあの娘 洞木さんは肆号機ね。
 すると、現状から考えるに、やっぱり、 フォース鈴原君と違い、 新しいコアが必要と・・・」

 そこで、リツコはそう言いながら、何かを計算していた。

「でも、そうなると、コアの換装を・・・
 いえ、でも、それをするだけの余裕は・・・
 そうなれば・・・ぶつぶつ・・・司令に相談を・・・ブツブツ・・・」

 1人でブツブツ言っていると、そこにマヤがやってきた。

 因みに、技術部の奥にあって、壁と扉がついている為、部屋と同じである。
(外国のドラマなどに出てくる警察署の部長の机が、 ある所のような部屋と思ってください)

「先輩、よろしいですか?」

 一応、ノックしてから、声をかけるマヤ・・・

「いいわよ、何かしら?」

 許可が出たので、マヤは入ってくる。

 どこぞの女にその爪の垢を飲ませてやりたいくらい、礼儀正しい。

「報告です。
 擬似プラグでの検査ですが、 鈴原君は、参号機との相性が1番高く、起動レベルに達しました。
 そのシンクロ率は、現時点で、23.21%です」

 マヤは、資料を見ながらそう言った。

「鈴原君の他の機体との相性は?」

「はい、汎用機で互換性のあるある弐号機が6.98%、 試作機で互換性のない零号機には1.61%でした」

「では、鈴原君は、参号機に決定ね」

「それと、肆号機の搬入は遅れるそうです」

「え?」

「理由は、何か問題があったらしく、肆号機は予定より、 1ヵ月ほど、遅れそうだと・・・」

「そうなの・・・」

 肆号機の搬入が遅れると聞き、リツコはどこと無く、難しそうな顔をする。

 今直ぐに、ヒカリをチルドレンにするなら、零号機のパイロットと言う事になる。

 だが、零号機は改修し、そのコアを初号機のモノと偽装している最中なので、 諸所の都合により、それは出来ない事だ。

 故にリツコは、今、直ぐにヒカリをフィフスにするのは、あきらめる事にした。

 元々、色々と仕事も多いのだ。

 それに、問題を先送りに出来、ある意味、コアの生成をやらずに済んで、 ほっとしたような気がしていた。

「それと、明後日行う予定だった鈴原君の手術に関してなのですが・・・」

「何かしら?」

 言い辛そうにしているマヤに、リツコがそう訊いた。

「手術の為、リハビリの為にも、今後、数ヶ月間は、 アスカさんと同じように、極力、葛城さんと接触させない方が良いと思います」

「なぜかしら?」

 目をぱちくりしながら、リツコが更に問う。

「あの、まだ、本当に、動かない義足を着けただけで、 そのリハビリもしていなのに、シンクロテスト後、 待ち構えていたらしい葛城さんが、格闘訓練とか言って、 無理やり、鈴原君を連れ出して、大怪我を・・・」

「え?」

 マヤの報告を聞いて、リツコは目を点にする。

「保安部が慌てて行った時は、虐めというか、虐待しか思えないくらい、 痛めつけていて・・・
 ですから、明後日の手術の日程も、ズラさないと・・・」

 因みに手術とは、、クローン足が出来上がるまで、 日常生活を行う為にも着けておく、 赤木印のシンクロシステムを応用した機械製の義足を取り付ける手術である。

「あのバカ!!」

 リツコはそう怒鳴って、席を立った。

 なぜなら、ミサトには、しばらく、フォースである鈴原トウジには、 手術などの関係上、肉体を使った訓練等は暫く出来ないと、 口頭でも、はっきり、言っていたハズだからだ。

 無論、ミサトは中途半端にしか聞いていなかったので、 忘れていた可能性もある。

 現在、ミサトの状況は、回りから白い目で見られ続け、 部下達は、代わりに書類をやってくれるような便利な奴は、何故かいない。
(マコトは自分でタバシリ送りにした事を忘れていたりする)

 代わりにするように、他の部下に命令しても、拒否しする。

 また、怒鳴ろうものなら、自分達の方が階級の高い事を理由に、 拒否するか、辞表を突き付けてくる。
(現在、作戦部員の大人の中で、一番階級が低いのは部長のミサトである)

 因みに、最初、売り言葉に買い言葉状態で、その辞表を、 ミサトの持つ作戦部長権限で認めてしまった為、 作戦部は乗り遅れた者が2人ほど残っただけで、とんでもない状況に陥っているらしい。
(現在、仕事を放り出して、必死に退職か、配置転換を認めてもらおうと、 人事部長に掛け合っているらしい)

 無論、人事に関して、ミサトの裁量権が抹消されたのは言うまでもない。

 そんな事態になった為、益々、個人あたりの仕事量が増えるのに、 更に、代わりにやってくれる奇特な部下が存在するどころか、 逆に、ミサトに押し付けて放り出す状態だ。

 その為、ストレスがたまり、その鬱憤晴らしだったのであろう。

 トウジにとっては、いい迷惑である。

 この怪我の所為で、トウジの手術は二週間遅れ、 色々なスケジュールも遅れて行ったという。

 因みに、ミサトは、この後、司令代理兼技術部長権限により、 20日間の独房行きが決定した。

 もちろん、仕事である書類整理は、その中でやる事となり、 リツコのアイデアで、ある程度、終わらせないと、食事も取れないことになった。

 無論、ミサトは騒ぐものの、一定時間内に、決められた倍の量を終わらせれば、 えびちゅが食事につく事を説明され、逆に燃えたものの・・・

 結局、彼女が独房内でえびちゅを飲む事はなかったという。

 結局、独房内で、切れて、暴れたり、服を脱ぎだして、 看視に、しかも、相手がであろうとも、 色仕掛けをかけようとしたりしたらしい・・・










To be continued...


(あとがき⇒悪あがき?)

 ミサト首にならず・・・
 (誘惑シーンは先に使っている人が居るので割愛♪
 因みに・・・
 『えびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅ・・・
 かわいいミサトはえびちゅが無いと死んじゃうのぉ〜だから何でもするから・・・
 えびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅえびちゅ・・・』
 とかのたまいましたが・・・)
 お蔭でドツボにはまるネルフ&ゼーレ・・・ゼーレは未だ気づいていませんが・・・
 次あたりにゲンドウが復活するかな?
 その後、第五か・・・
 まぁ、ゼーレが日程をズラしているから大丈夫だろうけど・・・ (サラリと重要な事を)
 どうなるかな・・・(無責任)
 因みにトウジとヒカリの対応の違いですが・・・
 まぁ、はっきり言えば、トウジの場合、ケンスケに乗せられたとは言え、 自業自得ですし・・・
 ヒカリと違って、レイを苦手と言う事で避けてましたし・・・
 小遣い稼ぎに、ケンスケの盗撮販売に手を貸していた事が大きいでしょうね。
 故に無視です。
 (その代わり、罪の無い妹さんは助けました)
 因みに、シェルター事件の真相は、一般公開すると、 ネルフの立場がかなり悪くなるので、情報封鎖。
 勿論、この事を利用すれば、トウジは助かるんでしょうけどね。
 (冷たい目で見られるでしょうが・・・)
 情報封鎖されているなら、ケンスケは普通に学校に行けるんじゃないかって?
 勿論、行けますが、暫くしたら野宿開始ですし、生活に苦しんだ後・・・
 どうなるかは、お楽しみに♪
 |電柱|ー ̄) 隠れニヤリ
 そういえば、ガンガルの同人ゲームが出ているとか・・・
 でも、話によると、一部機体の形が違うとか言う話だけど・・・
 どうなんだろう?
 誰か教えて・・・
 (因みに“ガンガルSEED DEATH”は教えてもらいました)
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