「どうしますか?」

 マヤが、訊いてくる。

「つなげ」

 ゲンドウがそう言ったので、メインモニターに相手を映した。

 そして、画面に映った存在を見て、発令所の全員(一名除く)が硬直する。

 全員(一名除く)が、目を点にして、その存在を見ている。

 暫く硬直が続いていると・・・

『くわぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!!』

 その存在は、固まっている発令所の面々に活を入れるように、そう叫んだ。










新起動世紀ヱヴァンガル改

第十三話 交渉?開始

presented by とりもち様











「伊吹二尉・・・
 何の冗談だ?」

 ゲンドウが、冷ややかに訊いた。

「はぁ!
 ち、違います、コレは本当に、正式な第十六からの正式な回線で・・・」

 慌てるマヤ・・・さもありなん・・・

 何せ、モニターに映っているのは・・・

 キリリとして、パッチリとした目・・・何故か眼鏡をかけている。

 きりりとした眉毛・・・というか、トサカ・・・

 シャープでニヒルな口と言うか、嘴・・・

 それは、白板の前に立つ、一匹の温泉ペンギンだった。

 その温泉ペンギンが、翼についている爪のようなもので、器用に水性ペンを使って、白板に何かを書き始める。

 何故か、発令所の下の方からは・・・

【かわいいぃ〜とか・・・

【かしこぉ〜い等と言う黄色い声が聞こえているが・・・

『くわぁ!』

 そして、その温泉ペンギンが振り向き、白板を、その鈎爪で指すと・・・

 お初にお目にかかる。
 私が国連軍・第16軍・特別全域方面軍・特殊特務独立連隊・特殊諜報部所属、
ペソペソ=ホットスプリング特務二佐である。
 この度は、貴組織、ネルフ司令の要請の元、
そちらの司令、直々の意思により、交渉役に選ばれた。
 以後、よろしく頼む。


 と、綺麗な日本語で書かれていた。

 その内容を読み、再び、殆どのネルフ所員達が固まった。

 ある者は司令所に顔を向け、引きつりながら・・・






「ど、どどど、 どう言う事だ!」

 二度目の硬直からも、一番に復活したゲンドウが怒鳴った。

 その額には青筋が立っている。

 ペソペソ=ホットスプリング特務二佐が、白板を消し、再び何かを書き始める。

『くわぁ!』

 何を言う?
 確りと、六文儀司令、貴殿が、自分自身で、国連軍上層部に、
書類を提出し、要請したではないか。
 国連軍から派遣された者ではなく、
第十六独立連隊のそれなりの地位のある存在を、
直接、交渉人を立てろと・・・


「・・・・・・なんだとぉ!」

 それを読んで、再び叫ぶゲンドウ。

 ゲンドウが選んだ人物?は、確かに、 ホットスプリング特務二佐となっていたが・・・

『くわぁ!』

 更に、六文儀司令自身で、交渉人の名前の一覧から、
直々に私を選んだではないか。
 この通り、確り、貴殿の著名入りだ。


 そう書いて、コピーであるが、確り、ゲンドウのサインがある書類を見せる。

 因みに、その書くすばやさに、発令所で、再び黄色い声と、何故か拍手がされているが・・・

 ゲンドウは気にしていない・・・と言うか、出来ない。

「・・・・・・本物の交渉や、いや、本来、交渉は、
こちらに来てやるのではないか!」


 自分の間がえていた事を叫ぶが・・・

『くわわぁ!』

 何を馬鹿な事を言っている?
 それでは、時間的にロスが多いだろう。
 だいたい、貴殿の組織が、
そこまで信用のある組織だと思っているのか?
 いや、それ以前に、通信で行うと言う条件に、
貴殿も著名と認印を捺しているではないか。
 ほれ、この通り・・・


 ペソペソ特務二佐が要請書と契約書のコピーをピラピラと見せる。

 因みに、ペソペソ特務二佐の書くスピードは早く、
少しタイムログがあるだけで、確り成立している。

「・・・・・・ぬぅわぁにぃ〜〜〜〜!!!」

 ゲンドウがそう叫んだ。

 因みに、発令所の一番上段にあるミサト達や、
メインオペレーター達が居るところは、呆然としているが、
下の段からは、拍手やほめ言葉などが、小さいながらも出ている。

 おそらく、とっくの昔に、現実逃避を始めていたのであろう。

 もしくは、あまりの事に、夢と思っているのかもしれないが・・・

「(ふざけているのか!
 どう言う事だ!
 畜生が交渉相手だと!
 誰だ、あんなのを選んだのは!

 ・・・・・・俺くわぁ!!
 いや、大体、あんなのをリストに入れる・・・)」

 ゲンドウが、百面相をしながら、怒りの思考を飛ばしていると・・・

「ぺ、ペンペン!!」

 簀巻きのミサトがそう叫んだ。

 全員が、叫んだミサトを注目する。

「「「「「(知り合い?(汗))」」」」」×たくさん

 だが、モニターのペソペソ特務二佐は、見向きもしない。

 いや、よく見ればわかったかもしれないが、少しだけ、ピクリと頬の部分が動いていた。

「ペンペンでしょ!
 アンタ、そんなところで、何やってんの?!」


 ミサトが更に叫ぶ。

 だが、ペソペソは、白板に・・・

 どうした?
 六文儀司令、早く答えよ。
 時間はないし、此方も遊びではないのだぞ。
 使徒迎撃権はこちらのモノと考えて良いのか?


 と書いて、ゲンドウに返答を求めている。

 だが、一部の者を除き、遊びにしか見えないのは、気のせいではないだろう。

「いい加減にしなさい、ペンペン!
 アンタ、いったい何をやっているの!
 こっちを向きなさいよ!」


 ミサトは半ばキレタように怒鳴った。

 すると、やっと?ミサトに気付いたのか、画面のペソペソがミサトの方を見た。

『クワ?』

 そう呟いて、ペソペソ特務二佐は、再び何かを書き始めた。

 その簀巻きにされているメスらしき物体は何を言っている?
 私の名はペソペソ=ホットスプリング。
 国連軍・第16軍・特別全域方面軍・
特殊特務独立連隊・特殊諜報部所属、
特務二佐である!


 ペソペソ特務二佐は、特務二佐というところだけ、色を変え、強調しつつ、そう書いた。

「だから、アンタ、ペンペンでしょうが!」

 あくまでもミサトは言い張る。

 もしかしたら、【ン】【ソ】を見間違えているのかもしれない。

 ミサトとペソペソ特務二佐が、言い合い?をしている間、ゲンドウはある思考をしていた。

「(あの畜生とあのカスは知り合いか?
 人・・・いや、ペンギン違いか・・・)」

 ミサトとペソペソ特務二佐のやり取りを見ながら、ゲンドウの思考が更に飛ぶ・・・

 そして、言い合い?をしているペソペソは、肩をすくめ、呆れたように、やれやれと言う風にすると・・・

 だから・・・
 どうやら、そこのメスは、字が読めないようだな・・・
 ペンペンではなく、ペソペソだ。
 ハネ、ハライの違いをよく見ろ。
 ローマ字で書けば、PENではなく、PESOだ!


 そこまで書いて見せた。

 勿論、芸が細かい為、下からは、ペソペソ特務二佐の仕草に、 小さいながらも、黄色い声が飛んでいる始末・・・現実逃避か?

 そして、ペソペソ特務二佐はと言うと、
自分で書いた文字をふと見て、すこし、首をかしげ・・・

 何かを思い出したかの様に、あわてて、書き加える。

『くわ?』

 ん、ペンペンとは・・・
 まさか、私の弟がそこに居るのか?


「・・・・・・おとうとぉ〜〜〜?!
 アンタね、温泉ペンギンは、自然界にはめったに居ないのよ!」

 文字を読んだミサトが眉を顰めてそう言った。

 しかし、滅多に居ないという事は、少なくても、他に固体が居る事と言う事に、気付いていないのだろうか?

 そして、ペソペソが、更に何かを書き始めていた。

『クワァ!』

 そうだ、我々、温泉ペンギン族は滅多に居ない種族だ。
 しかし、それでも、ある程度の個体数が居る。
 だが、人間以外の知性体と言う事で、
昔から多くの心無い人間の悪党共に狙われてきた。
 モルモットにする為にな・・・
 故に我々は真っ当な組織に自ら保護を求めたのだ。


 ざわめく発令所・・・

 そして、私の知っている限り、
ペンペンという名の温泉ペンギンで、我々と共に居ないのは・・・
 数年前、とある研究所へ、視察に行っていた時、
目を離した隙に、悪党に攫われた私の幼かった弟、
ペンペン=ホットスプリングしか居ない!
 まさか貴様らが攫っていたのか!


 バン!

 ペソペソ特務二佐は、そう書いて、白板を叩いた。

 因みに、よく視れば、ペソペソ特務二佐には、 ペンペンについていた胸のプレートはなく、 代わりに、階級章を模ったプレートがあった。

 しかも、確り、国連軍特務二佐の階級章である。

 おそらく、この為だけに、あつらえたのだろう。

「へ・・・ペンギン違い?」

 そこで、ようやく理解したのか、ミサトはそう言った。

「(む?・・・弟だと・・・)」

 ゲンドウのサングラスの端が少し光る。

「(そういえば、ミサトはあのペンギンを、 処分されそうになった所から、助けてきたとか言っていたわね)」

 リツコは、そんな事を思い出していた。

 因みに、実際、偶々、とある研究所を視察についていった時、 研究所に居たまだ小さかったペンペンを見て、色々と想像を膨らませたミサトが・・・

 持ち前の(似非)正義感を出し、 コッソリ無理矢理助け出して攫ってきたのだ。
(因みに、ペンペンは処分されるのではなく、 その研究所の所長の孫娘に引取られる予定だったらしい)

 リツコも、話を聞いただけで、詳しくは知らなかったらしい。

 まぁ、その話を聞いた前後辺りで、どこぞの研究施設から、国連経由で、 ネルフに苦情が来たらしいが・・・

 某支部宛だったし、自分が担当した訳ではなかったし、ネルフの権限で黙らせたらしいので、 気にしていなかったようだ。

 その辺の線で調べれば、若干の矛盾が出るかも知れないが・・・

 とは言うものの、リツコも、このあまりにも非常識な状況に、 まともに頭がついて行っていないが・・・

 尤も、既にその時の記録は、国連側の工作は終わっており、 ネルフの方は揉消せたと思って、記録を消しているので、当時の事を知っている人間を証人に連れてきても、 ネルフ御得意の揉消しとか、事実改竄等と言われるだけだろうが・・・

『くわぁ!』

 どうなんだ!
 答えろ!!


 バン! バン! バン! バン!

 ペソペソ特務二佐がそう大きく書き、何度も白板を叩いているが、誰も答えない。

 答えられるはずもないが・・・

 むしろ、ミサトの居るであろうメインオペレーターの段に向けて、疑惑の目を向けている所員が多い。

『作戦部長、アンタは、支部に居た間、一体何をしてたんだ!!』

 と言う目で・・・

 発令所では沈黙が続き、画面では、温泉ペンギンが騒いでいると言う、 ある意味、シュールな状態が続いていた。

「(畜生の癖に、肉親を思う気持ちがあるようだな。
 使えるかも知れんな・・・)」

 そんな中でゲンドウは冷静?に思考を飛ばしている。
(と言う事は、肉親を思う気持ちが無いゲンドウはそれ以下と言う事だね)



 今のゲンドウには、冬月と言うブレーンが居ない為、 ロクな事が出来ないと思われがちだが、 この男、姦計を謀る事に関しては、かなりのレベルのもの。

 確かに、最近は部下任せにしていた事が多かったので、最近は退化をし、 昔ほど、確りとしたものは作れないが・・・

 それでも、陰謀、姦計等を思いつく事に関しては、 いまだかなりのレベルである。
(つまり、最近は思いつくだけで、詰めが甘く、確りとした物は練れない・・・
 それを埋め、確りとしたモノに構築するのが冬月である)

 伊達に、この組織のトップになった訳ではないのだ。
(・・・今は、伊達かもしれないけど)

 尤も、ゼーレとしては、適度?に外部から嫌われ、 胡散臭く思われる組織の長として、丁度良いから、部下に任せッきりになって、 能力が落ちていても、そのままの地位においているのであるが・・・

 いつでも切れる様に・・・




 そして、暫くすると・・・

『くわ!』

 ペソペソ特務二佐と比べると、少し大きな温泉ペンギンが出てきて、何かを言った。

 よく見れば、鶏冠の大きさが小さく、色も違うような気がする。

 また、よく見れば、その温泉ペンギンのプレートは、特務二尉の階級章であった。

 ミサトよりも階級が高く、マヤ達と同じくらいの階級だ。

 しかも、何ゆえか眼鏡をかけ、若干、秘書らしき格好をしている。

「あ、本当に、別にもいた・・・」

 誰かがそう呟いた。

『くわぁ〜』

 ペソペソ特務二佐は、額を掻きながら、そのペンギンに謝るように、そう答える。
(以後、秘書ペンギンと書きます)

『クワワ?』

『くわ・・・』

 そして、自身を落ち着かせるように、深呼吸のようなモノをすると、再び、書き始めた。

『クワ!』

 個人的な事は、一旦置いておく。
 本題に戻るが、使徒殲滅権についてはどうする?
 こちらに移ったと見ていいのか?


 ざわついている発令所の所員達は、ゲンドウの方を見た。

「(しかし、あのカスの情報だ。
 一応、確かめないと危険だな)」

 そして、ゲンドウは、なにやら、外道な計画を思いついたらしい。

 しかも、今までの経験上か、慎重になったらしく、いつものゲンドウポーズをとり・・・

「いや、まだ譲渡はできん。
 まだ、これからだ」

 そう言いきった。


 だが、そちらのエヴァンゲリオンとか言う兵器は、大破したようだが?
 


 痛い所をつかれた。

 確かに、ミサトの所為で、弐号機が戦線離脱をしている。

 セカンドチルドレンの安否も正確には分からない。

 かなり遠くに射出できた為か、山を越えた所にある病院に担ぎ込まれたらしいが・・・
(ココで何か不自然な事に気付いた方、鋭いです)

「こちらには、まだ参号機がある。
 ゆえにまだ敗れたわけではない」

 ゲンドウは高圧的なプレッシャーをかけつつ、そう言い返す。

 とは言うものの、シンクロが上手く言っただけで、まだチャンと動くかどうか分からないし、 動くにしても、未調整である。

 いや、それ以前に、トウジは今日初めて実機に乗り始めたのだし、いの一番にやられたのが、 ネルフで最もエヴァの扱いに慣れたアスカの乗る弐号機な為、トウジだけに任せるのはかなり無謀である。

 だが、ゲンドウは、そんな事は考えず、マジ・モードで交渉をし始めた。
(と言うか、こういうポーズの交渉しか出来ないのかな?)

 だが、ペソペソ特務二佐は、ゲンドウの高圧的なプレッシャーを別段、 感じていないようである。

 そして、少しだけ考えると・・・

 そうか。
 少し待て・・・


 そう書いて・・・

『くわ!』

『くわぁ!』

 秘書ペンギンに、ペソペソ特務二佐何かを言うと、秘書ペンギンは返事をして、 モニターの外に出て行った。

 少しして、秘書ペンギンが戻ってきて、ペソペソ特務二佐に、何かを耳打ちする。

 そして、ペソペソ特務二佐は、何かを書き始めた。

 良かろう。
 三十分間だけ待つ


「・・・・・・いや、こちらも色々ある三時間はよこせ」

 ペソペソ特務二佐の条件に、ゲンドウが異議を唱える。

 自分の思いついた姦計をもうチョッと(自分で)練り、それを実行する為の時間を稼ぐ為だ。

 だが、その為にやっているのは、人外、温泉ペンギンとの真剣な駆け引きだ。

 何を言っている?
 そんな余裕があると思っているのか?


 呆れたように、ペソペソ特務二佐がそう書いた。

「・・・・・・だが、三時間の線は譲れん」

 いつものポーズでそう言いきるゲンドウ・・・

 流石に、下手に出ることは無いモノの、自分の欲望達成の為には、真剣である。

 その真剣な雰囲気は、発令所全体にも伝わっている。

 だが、その相手はペンギン・・・人外・・・公式には、人類初かも知れない。
(非公式には、シンジかな?)

 そのやり取りを見ている者達にとっては、非常に、滑稽である。

 何せ、自分達のトップが、ペンギンと、口頭と筆談で、真剣に駆け引きをしているのだから・・・

 良く理解できない者は、ペソペソ特務二佐の賢さに、自分の立場や事態を忘れて、何か、娯楽の劇のように、見守っているが・・・

 中には、前々から持っていたこの組織に所属する事に対しての疑問を決定的なモノとし、辞表を書きつつ、フロムワークを帰りに買う事やO人事に相談する事を、心に誓い始めている者が出始めて居る。

 地球上の全生命体に、
それだけの時間的余裕があると、
思っているのか?


「・・・・・・なんといわれようとも、三十分間では無理だ。
 それに、使徒の様子を見るに時間的余裕はありそうだ。
 むしろ、こんなことをやっている時間の方が無駄だ。
 三時間だ」

 暫く、ペンギンと人との真剣な交渉が続く。

 第三者的に見れば、中々シュールな状況であるが、ゲンドウはいたってマジである為、気付いていない。

 自分がどれだけ、自分自身の権威を傷付ける事になるのかを・・・
(まぁ、相手に関わらず、態度を変えない行動は、ある意味、褒められる態度かも知れないけど)





 三十分後・・・

 よかろう。
 ただし、今から、一時間三十分だけだ


「それで手を打とう」

 ゲンドウは、そう言った。

 両者とも、真剣な交渉で、かなりの汗をかいているようだ。

 筆談と口頭だったが、かなり白熱した交渉だったらしい。

 尤もゲンドウが我を通す為の理由や言い訳、屁理屈を次々考え出し、ペソペソ特務二佐が、 その揚げ足を取って行くというものがメインだったが・・・

 しかし、何故か、汗だくのゲンドウのその表情が、満足そうなのは、気のせいだろうか?

 まぁ、実質、2時間もぎ取ったと言う事であるが・・・
(ペンギン相手に)

 では、有効と考えられる作戦を用意しておくのだな。
 今から、きっちり、一時間三十分後、
納得できる作戦なら、こちらも、譲歩しよう。
 だが、納得できないものや、時間がかかり過ぎるもの、
不可能なものの場合、自動的にこちらに譲渡してもらう。
 無論、被害は、最初の契約通り、全てそちら持ちであるからな


 そう言って、ペソペソ特務二佐は何故か懐中時計を取り出し、時間を合わせた。

「良かろう」

 ゲンドウがそう答えると、通信が切れた。

「カ・・・葛城特務軍長!」

 一瞬、ゲンドウはカスと言いかけた。

「え、あ、は!
 な、何でありましょうか?!」

 簀巻きのまま、そう答えるミサト。

「貴様はペンギンを飼っているのか?」

「は、はい!」

「どこに居る?」

「自分のマンションの部屋、
大きい方の冷蔵庫に、住んでいるであります!」


 あくまで簀巻きのままでそう答えるミサト・・・

「貴様にチャンスをやる」

 ゲンドウがそう言ったとたん、発令所がざわついた。

「今から、三十分以内に、作戦を立てろ・・・
 先ほど向こうが提示した条件をクリアー出来る作戦を」

 ゲンドウはそう言い放った。

「は!
 って、アンタ達、早く解きなさいよ!」

 ミサトはゲンドウに返事をすると、直ぐに自分を縛り付けた保安部員達に解くように、怒鳴りつけた。

 そして、ゲンドウは、自分の子飼いである諜報特殊監査部に内線を入れた。

「俺だ」

『は!』

「葛城ミサトの家に住むペンギンを連れて来い」

『ぺ、ペンギンですか?』

 ゲンドウの命令に、内線の相手は驚き、訊き返した。

「そうだ、二度は言わん。
 十分以内に、執務室に連れて来い」

『わ、分かりました!』

 その返事を聞くと、ゲンドウはニヤリとしながら、内線を切って、立ち上がった。

「くくく、最後に笑うのは、この俺だ・・・」

 そして、執務室に戻っていった。

「・・・・・・私、何でここに所属しているのかしら?」

 リツコのその疑問に答える者は居なかった。










To be continued...


(あとがき⇒悪あがき?)

 さぁ、ながちゃんさんが、求めていた交渉とは、チョッと違いますが、楽しめたでしょうか?
 ネルフへ交渉役は、温泉ペンギン・・・つまり、人間ではなく、人外・・・
 しかも、途中から、ゲンドウが真剣に交渉しています。
 そして、相手がペンギンと言う事を忘れて、交渉が終わったら満足げ・・・
 (いや、単に計算通り乗せられただけだけど・・・ある意味、譲歩的依頼法で・・・)
 まぁ、切り替えの速さや、相手の姿形で交渉のやり方を変えないのは流石と思いますが・・・
 想像すると、笑えませんか?
 今までこんな交渉がエヴァSS史上、あったでしょうか?
 (鳥類VS人間・・・)
 因みに、ペソペソは今まで潜入捜査などをし、功績を立てている事になっています。
 軍犬ならぬ、軍ペンギンとして・・・
 まぁ、簡単に言えば、シンジ達がたてた功績の中で、評価してないと言うか、隠していたモノの一部を貰った状態ですね。
 (最初は、シンジ達だけでやっていたから・・・)
 勿論、某所にお忍びでやって来て、資料を受け取り、本鳥(本人)に直接あった某国連軍総司令官は目を点にしました。
 (その様子を、飲み友達である某碇老達は面白がったようですが・・・)
 ですが、下手な人間よりも頭がよく、日英独語を確り理解するので、認めらました。
 ココに初めて、国連軍に人間ではない、温泉ペンギンの佐官が誕生したのです。
 (無論、尉官や軍曹なども誕生していたりします)
 全てはネルフ、ゲンドウをおちょくる為に・・・
 その為だけに、国連軍総司令や参謀総長に各巨大財団の代表が協力しました。
 でも、想像すると、『何を考えているんだ』と言われそうなシチュエーションですね。
 まぁ、シンジのシンパと言うか、同志になって、 アンチ・ネルフ&ゼーレになっている方が多いですから・・・
 無論、温泉ペンギンの部隊は、この第十六独立連隊にしか、所属していませんが・・・
 因みに、中には、下手な軍人より、戦闘能力のあるペンギンが居るとか居ないとか・・・
 しかし、交渉役が、某下僕眼鏡と思った方が結構居ましたね。
 でも、それでは普通で面白くないでしょ?
 (因みに、BOY-999さんが掲示板に書かれたモノを見た時、心底あせりましたが・・・
 ヤベ、バレテル・・・と思って・・・)
 では、また!



(ご要望に応えて、ながちゃん@管理人のコメント)

先日机と椅子を処分したんで、冷たいフローリングに寝そべりながらパソコン(デスクトップ)に向かい合っております。
でもちょっと無理がありますね、この体勢──寒さ以前に腰と首が異様に痛いです(泣)。
さて、感想ですが…交渉役、やはりというかペンペン、いえペソペソだったんですね♪
同時通訳も必要なかったみたいですね。すごく賢そうです。なんとお仲間もいるし(笑)。
しかし鬚はまた良からぬことを企んでいますねぇ〜。
ミサトの家にいるハズのペンペンを押さえて、脅迫材料にでもするつもりなのでしょうが、ペンペン=ペソペソですし、いるわけがないじゃん!…とは思いつつも、とりもち様のことだから、また置手紙(暴露話)でも残して失踪…ゲフンゲフン、いえお気になさらずに(汗)。
(最近、とりもち様とのチャネリングが開きっぱなしなもので…毒電波が流れてくるんですよねぇ〜。まさか双方向回線?)
でもペソペソ、思ったより真面目な性格(=それだけ有能ということでしょうが)みたいですね。
実を言うと管理人は、IQ低めの毒舌合戦を期待していました(故に交渉役には「子供」を要望していました)。
言わば、本作冒頭のシンジ君のような、です(笑)。いやーあれはクリティカル・ヒットでしたねぇ〜♪
でも今回、交渉役がペンペン、いえペソペソに決まった以上、彼(♂ですよね?)に期待したいです。
まあ、今回は顔見せということで、次からは本格的なおちょくりが始まるんですよね?
是非とも、牛&鬚を徹底的に馬鹿にして下さい。
あ、理詰め交渉=ペソペソ、毒舌担当=ペンペンっていう一羽二役という形も良いかも〜(妄想中)。
次話を心待ちにしましょう♪
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