新起動世紀ヱヴァンガル改

第十四話 下準備?

presented by とりもち様





 ゲンドウが下がっていった後、発令所では・・・・

 今更、ミサトが、青葉や日向の換わりに入った新しいオペレーターに蹴りを加えながら、 ダミーバルーンなどをだし、威力偵察を行わせていた。

 そんな中で、我に返ったリツコは、マヤにアスカの安否を確かめさせていた。

「チョッと、リツコ!
 ただでさえ、人手が欲しい時に、
何、勝手な事をやっているのよ!」


 3人のメインオペレーターの内、1人を、自分に何の断りも無く、 リツコが勝手に使っているので、ムッとしたミサトがそう怒鳴った。

 その目はかなり濁っている。

 使徒殲滅、復讐を自分の手で出来ると言う可能性が復活したので、狂気が復活し始めたのだろう。

「アスカの安否を確かめているのよ。
 急いで確認しないと・・・」

 その目を確認せず、アスカの安否を気遣うリツコはそう言った。

「何よ、それ!」

 ミサトにとっては、自分の命令を聞かず、使途の攻撃を避けず、 弐号機を大破させたと思っているアスカを気遣って、 自分の行動の阻害になる事を指示しているリツコの行動は、許せるものではなかった。

 尤も、本当は、全てミサトの所為なのだが、ミサトの中では、既にそう言う改竄が始まっていた。
(凄まじい進化?である・・・流石・・・)

「そんな使えないもの、 後回しに」

 パン!

 そのいいように、流石に頭にきたリツコが、ミサトの頬をたたいた。

「な!」

 叩かれた頬を押さえつつ、ミサトが驚いた表情をする。

「落ち着いて自分の言ったことを考え、周りを見なさい」

「え?・・・」

 ミサトが周りを見ると、かなり冷たい目で見られていた。

「貴女の所為で、アスカはあんな状態になったのよ!
 忘れたの?!」

「え・・・うっ・・・何よ・・・それ」

 リツコの言葉と、周りの白い目に、ミサトは怯む。

 作戦を自分で立てられると言う嬉しさと狂気の中、そんな事、すっかり忘れていた。
(そんな事では普通済まないが・・・)

 自分が、殺しかけたというのに・・・

「いい加減にしなさい!
 アスカがあぁなったのは、貴女の責任!」


「な!

 あれは、アスカが私のめ」

「拘束を解除せず!
 弐号機は動く事なんか出来なかった!
 その身動きできないままの状態で、
アスカに命令しても、
動けるはずないでしょうが!」


 ミサトの脳内で記憶の改竄を行いかけていたものが・・・
(避けるという命令を聞かなかったアスカが悪いという不条理な・・・)

 そのリツコの言葉で、一気に元通りに戻ってしまった。

「先輩、アスカちゃんは、民間の病院に保護されたようです」

 そこに、マヤが報告を入れた。

「それで・・・」

「まだ、意識が無いそうです。
 ダメージが酷かったらしく、現在、応急手当を受け、市外の病院に搬送しているそうです」

 マヤはアスカの状況を報告した。

「そう、では、私は、受け入れの準備と、本格的な治療の準備をするから・・・
 急いで、ジオフロント内の特別病院に、移送するように指示を出し・・・
 いえ、流石に、使徒進行中の今は拙いはね・・・
 その病院が確りしている所のなら、使徒殲滅後まで、預かっていて貰っていて・・・
 その方が安全だわ」

 リツコがそう言って、横を見ると、何故か発令所を出ようとするミサトがいた。

 ゴス!

「いったぁ〜!!」

 思いっきり、後ろからミサトの頭をリツコが殴った。

「どこに行く気よ!」

 リツコが、頭を押さえて、蹲るミサトに、怒鳴った。

「え?
 私は、その病院に行って、アスカの様子を」

 事態を理解していないミサトはそう答えた。

「貴女!
 今、自分が何をするべきか、わかっているの?!」


「え?・・・」

 リツコの言葉に、訳が分からないと言う顔をするミサト・・・

 今度は、格好をつける為に、仕事を忘れたようだ。

 本当に目先のモノしか見えていないようである。

「今は、少しでも早く、 あの使徒を倒す作戦を立てないといけないんじゃないの?!」

「そ、そりわ・・・」

 リツコに言われて思い出し、ミサトはしどろもどろになった。

 勿論、ミサトは、アスカが危篤的状態である事が、やっと頭に入ったので、 その偽善的な回路が働き、早速、見舞いに行こうと考えたのだ。

 だが、アスカが居るのは市外の病院・・・

 気軽に行って戻って来れるだけの距離ではない。

 その事は頭に入っていなかった。

「貴女がアスカの所に行って、何ができると言うの?!
 単なる格好つけなら止めなさい!
 無駄よ!」


 ミサトの事をある程度知るリツコは、ある程度、その行き当たりばったりな思考を読めたので、 即座にそう怒鳴ったのであった。

「な、何を」

 ハッキリ、図星を指されたので、ミサトは慌てて反論し様とするが・・・

「貴女が、今、できる事は、
あの使徒を倒す作戦を30分以内、いえ、既に25分以内に考える事!
 勘違いしないで!

 私は、参号機の方を見てくるわ。
 マヤ、貴女も終わりしだい手伝って・・・
(今回も、向こうに持っていかれるわね・・・
 仕方ないわ・・・うちの上はこんな状態だし・・・
 何とか、鈴原君に被害が来ないようにしないと、本当に拙い状態になるわね)」

 リツコは、前半はミサトにそう怒鳴り、後半はマヤにそう言うと、考え事をしながら、1人で出て行った。

「な、なによ、自分だけ・・・」

 ミサトは文句を言うが、他のオペレーター達は無視をしつつ、情報を整理している。
(既に、データは取り終わったらしい)






 某所

「くわ?」

 ペソペソ特務二佐が、監督席に座っているシンジに声を掛けた。

「あぁ、良い演技だったよ」

 シンジは、とある椅子に座って、メガホンを持ったまま、ニコニコしながらそう言った。

「えぇ、アドリブも利かせたから、かなり上出来」

 何故か、小さな黒板の付いたモノを持っているレイが、ニコリとしながらそう言った。

「最高だよ」

 カメラを動かしていたマナが親指を立てて、そう言った。

「えぇ、無駄な雑音も殆どありませんでしたし」

 音響の装置の前に居るマユミも微笑みながらそう言った。

 因みに、照明を持っていたカヲルはニコニコして、頷いている。

「くわぁ?」

 だが、ペソペソ特務二佐は不安そうに首をかしげた。

「ん?・・・大丈夫だよ、コッチの準備は終わっているし」

 シンジは、ニコニコしながら、そう言った。

「えぇ、後は、どんな作戦を持ち出してくるか楽しみね・・・」

 レイもそう言った。

「もしかして、あの作戦かな?」

 不安そうにマナがそう呟く。

「あの作戦って、何ですの?」

 マユミが不思議そうにそう訊いた。

 ネルフに所属した事が無いはずのマナが、ネルフの作戦を知っている事に疑問を感じたのだ。

「うん、日本中を停電させる作戦・・・」

 嫌な思い出があるのか、マナは少し暗い表情でそう言った。

「あぁ、ヤシマ作戦の事だね」

 照明を床において、カヲルがそう言った。

「うん、シンジとレイさんには悪いけど、私はあんまり良い思い出が無いの」

 マナはそう言った。

 確かに、シンジとレイには、あの作戦後、良い思い出があったが、マナは違った。

「どんな事があったのですか?」

 マユミがそう訊いた。

「うん、あの作戦の所為で、電気が止められて、技術者でもあった担当の先生が、 その準備の為に、無理やり連れて行かれて・・・
 友達が死んじゃったから・・・
 電気さえあれば、時間が延ばせて・・・
 いえ、先生さえ居れば、手術が出来て、助かったのに・・・」

 マナはそう答えた。

「え?
 自家発電装置は?」

 シンジが驚いたように訊いた。

 普通、戦自等の基地や、大きな病院には、必ずと言っていいほど、 緊急時の為の自家発電装置があるからである。

「ネルフの徴発って事で、自家発電装置が作り出す電力も取られたの・・・」

 マナはそう言った。

 この世界では、セカンド・インパクトの被害で、多くの発電所などが壊れ、 それを復旧させ時、西と東のHz(周波数)などの違いを廃止し、統一した。

 そのおかげで、ヤシマ作戦で、日本中の電力を掻き集めても、電気の周波数等の問題は無い。

 だが、あの時は、この世界のように、財団連合みたいな復興支援に力を注いだ企業が少なかった。

 その為、いくら、世界の中でも、復興が最も進んでいた国の一つである日本といえども、 復旧率はそんなに無く・・・

 また、立ち直るのに時間がかかった為、セカンド・インパクトの人口もかなり少なかった。

 つまり、いくら、電気自動車などが増えたとは言え、発電させ電力量も、 必要とされる電力量も、セカンド・インパクト前よりも少なかったのは、分かりきった事である。

 つまり、電力公団や電力会社が作る総電力量だけでは、 ヤシマ作戦の目標の規定量に足りなかった。
(また、周波数も、生き残ったり、復旧させた発電所などを利用した所が多いので、 セカンド・インパクト以前と変わりない)

 その為、特例を出し、戦自の基地や、付近の自家発電を持つ病院などから、電気を強引にかき集めさせ、 途中の電気の収束所、つまり、双子山に送るための分岐点などには、戦自や民間の技術者を徴兵し、 無理矢理協力させたのである。
(ネルフの技術者が働いたのは、第三新東京市付近と、支部のある松代付近だけである)

 それは、ミサトが言った事を、日向が中心となり、必死に推し進めた結果であるが・・・

 そう、本当に、ミサトが言ったように、ネルフの権限で、日本中から、電力や途中で必要な機材や技術者を、 掻き集めたのだ。

 それゆえに、人工呼吸器などの機械に頼って、治療を受けていた患者達や、 緊急手術が必要になった患者などが、数百人単位で死亡したのである。
(死ななかったものの、障害がでた者もいる)

 勿論、この事は、書類でミサトの机の上に置かれたが・・・

 案の定、ミサトは、使徒殲滅が自分の作戦で出来た事に喜び、浮かれてしまい、 自分が命令した結果をロクに知らなかったし、知ろうともしなかった。

 つまり、その書類をサボるだけではなく、見もしなかったのである。

 事後処理のための書類に認印すら、しなかった為、その件に関して、 被害者や協力(させた)者に対する保障は一切無かった。

 ネルフ権限の為、ネルフが認可しないと、その分の予算は国連からでないし、 政府も国連が出すと思っていたから、出さなかったのだ。

 いや、書類が別系統だったため、ネルフが自分の所の被害の分だけの追加予算を搾り取る事になったので、 政府には、出す余裕が無かったのだ。
(ネルフが作戦で出した被害は作戦部、それ以外のネルフが徴収する追加予算は、司令部な為・・・)

 つまり、ヤシマ作戦の所為で死んだ人達の遺族達や無理やり働かされた外部の技術者達には、 本来あるべき、保障等が、一銭もされず、泣き寝入りをするしかなかったのだ。

 こう言う事も、ネルフが嫌われ、不審に思われた原因の一つである。
(無論、政府には抗議が殺到した・・・国連から出るハズとしか言えなかったが・・・)

「まぁ、でも、今回は、ヤシマ作戦はないだろうね」

 シンジがそう言った。

「なぜ?」

 マナがそう訊いた。

「だって、弐号機があんな状態で、誰が盾を持ち、誰が撃つのさ?
 弐号機のパイロットが無事だって、そんなに簡単に零号機に乗せられるハズがないでしょ?
 まぁ、一応、上手い事、病院に搬入されたけど、まだ意識がハッキリしないらしいし・・・
 無茶があり過ぎるって・・・」

 確かに、パイロットは助かったとは言え、意識不明・・・

 弐号機は、辛うじて、コアは無事だが、大破である。

「でも・・・(あの凶牛は、前の時よりも、拙そうだし)」

 マナが不安そうに呟く。

「まぁ、それ以前に、ウチがあるから、国連も、日本政府も電気の徴収を認めないだろうし、 戦自も陽電子砲を渡さないだろうしねぇ〜」

 カヲルが、そう言った。

「そこまで強い、徴発権限も、ネルフにはなくないハズですしね」

 マユミも、補足するようにそう言った。

 実は、使徒殲滅に失敗ばかりしているネルフの権限はかなり低下している。
(未だ1体も殲滅した事はなく、被害を拡大させただけである)

 それゆえ、他組織からの武器徴発は出来ないし、出来ても、要請だけである。

 つまり、無理強いは出来ない。

 それに、要請だろうと、徴発だろうと、それを行う為には、書類を出さなければならない。

 それをミサトの代わりに作っていた日向は、 既にタバシリ逝き(遺棄いき)が決まって、本部に居ないし・・・

 残っている部下も、ミサトの命令では、ロクに働かない為、 ミサトが自分自身で作らなければならないのだが・・・

 ミサトが自分でするとは思えない。

 書類整理でさえ、嫌がってサボるのに、自発的にそう言う書類を製作するとは思えないし、 今まで、部下(日向)任せに慣れきっている分、忘れているだろう。

「それに、陽電子砲始めとして、前もって、色々と手を打っておいたわ。
 マナ協力してくれたでしょ」

 レイがニヤリとしながらそう言った。

「そうだったね・・・
 じゃぁ、どんな作戦を考えてくるんだろ?」

 マナも、ほっとしながら、そう言った。

「(まぁ、コレでアスカは完璧にネルフに対して、不快感を持っただろうし、交渉次第では取り込めるかな?
 しかし、こんなに早く事態が進むとはね・・・予想以上に無能だったな)」









 コンフォート17・ミサトの部屋

「か、課長、ココなんですか?」

「ほ、本当に女の部屋かよ・・・」

「は、鼻が曲がりそうっす」

「特殊装備一式もって来るんでしたね」

「ガスマスクが欲しい」

 黒服達が、腐界を前にしてそう言った。

 ミサトの部屋は、シンジが居ない為、腐界度がかなり進み、更には、一応、ミサトより、 家事能力がありそうなアスカにも逃げられてしまった為、片付ける存在が居なかった。

 また、止めに、使徒戦が始まってからと言うもの、ミサトには、ストレスが溜まりまくり、 結果、暴れるだけ暴れて、散らかしていたのだから、その内容は、かなり酷い。

 因みに、二つ隣のアスカの部屋は、引っ越した後、 業者が片付け、キーを変えた為、ミサトは住み着けなかったらしい。

「と、ともかく、冷蔵庫をだな・・・」

 そう言いつつ、課長と呼ばれた男が、ゴミの中にある獣道?を通り、 小さい方の冷蔵庫の前に行って、それを開ける。

「「「「「・・・・・・・・・」」」」」

 それを覗き込んだ全員が、沈黙する。

 そこには、えびちゅビールと、チョッとした摘みしか入って居なかった。

「コッチの大きいほうじゃないですか?」

 黒服Aが、大きい方の冷蔵庫を開ける。

 なぜか、タオルや小さな椅子のようなモノが入っていた。

「・・・確かに、コッチみたいですが・・・
 もぬけの空ですね」

 開けた黒服Aが、振り向いてそう言った。

 何かが棲んでいた後はあるものの・・・

 ココ最近は使ってなかったようにも見える。

「ココに、本当に居るんですか?」

 黒服Bが腐界を見ながら、そう言った。

 一応、入って来た時は鍵がかかっていたからだ。
(因みに、珍しく、掛けて行ったらしい)

「時間が無い、ゴミを、ゴミ袋に放り込みながら、探すぞ。
 ゴミの中に隠れているかも知れんからな。
 誰か、その辺で、ゴミ袋を調達して来い」

 課長は、手袋をしながらそう言った。

 確かに、片付けながら行ったほうが、見付け易いだろう。

「マジッすか?!」

 黒服Cが驚いたようにそう言った。

 だが、この腐界を片付けるのは、かなり骨が折れるし、 時間内に目的物であるペンギンを見つけられるとは考えられないからだ。

「少なくとも、何か証拠になる行動を出さなければ、あの司令に何をされるか分からん」

 諜報特殊監査部は確かにゲンドウの子飼いで、脛に傷を持つ者達だが、 それ以上に、命令を遂行できなかったり、反抗したりした者達の末路は死しかなかった。

 つまり、恐怖支配もしているのである。

「課長、なら、時間内に終わらせる為にも、応援を呼びましょう」

 黒服Dがそう提案した。

 確かに、ココを5人でやるよりも建設的である。

 それに、人海戦術でやって、見つかればよし、 見つからなくても、サボってない証人も増えるし、 責任を分散させ、ある程度軽く出来る。

「そうだな・・・
 確かに、時間内に終わらせるのは難しいからな・・・」

 課長はそう言いつつ、携帯についているカメラで、腐界を映すと、 上司の部長に送り、応援とゴミ袋及びガスマスクを要求した。

 流石に腐界の写真を見た部長は、事態を理解し、 自分の失点を作らない為にも、かなりの人員を送る事にした。




 暫くして・・・




「くそ!
 居やしねぇ!」


「既に逃げ出しているじゃないのか?」

「本当に居るのか?!」

 ガスマスクをした黒服達が、愚痴を言う。

 既にリビングと台所のゴミは無くなっている。

 多少、床は散らかってはいるが・・・

 無論、台所の調理器具や洗っていない皿などは廃棄した。

 どうせ、使っていないだろうから・・・

 因みに、部屋の中には20人、外には、10人の黒服が動いていた。

 外の10人は、溜まったゴミを捨てに行っている。

 中々礼儀正しいようだ。
(だから、こう言う事にまわされたのかな?)

 まぁ、部屋の中に土足で居るが・・・

 台所やリビングにあった腐った生ゴミなどをある程度片付けた為、臭いもかなり薄まっている。

「課長!
 コッチに来てください!」


 一番奥のミサトの寝床の部屋で何かが発見されたらしく、課長が呼ばれた。

「どうした!」

 課長がその部屋に行くと・・・

 数人の男達が何かをしており、その中の1人が、課長のところに来る。

「課長、あの女のペンギンって、名前はペンペンか、ペンツーですかね?」

「よく分からんが、多分・・・
 それが、どうしてだ?」

 部下の質問に、実は名前を教えてもらっていない課長はそう答えた。

「コレを見てください」

 部下が、ある金属製のプレートを渡した。

 そのプレートは、何かで汚れていた。

「これは・・・」

 その汚れているプレートには【PEN】と言う刻印がしてあった。

「どう言う事だ?」

 課長がそう呟くと・・・

「コレで完成かな?」

「まぁ、多少足りないが、こういう形だろうな・・・」

「だったら、やっぱり、これで正解だ!」

 黒服の塊から、そんな声が発せられた。

「どうしたんだ?」

 課長がそう言うと・・・

「見てください!」

 黒服達がスペースを開けて、課長に床に並べたあるものを見せた。

 それは・・・

 白いものだった・・・

 細く・・・

 長く・・・

 特殊な形をしていた・・・

 その形は、ある鳥類に似ていた・・・

 そう、それは、ペンギンの骨に・・・・・・

 課長は呆然としていた。

「その・・・骨とか散乱していましたので・・・」

「更に、奥のゴミ箱から、プレートを見つけまして・・・」

「イヤァ〜な予感がしまして・・・」

「近くにあった食べ残しらしい骨や、この部屋のゴミ袋を捨てるのを、一旦止めて・・・」

「骨を一箇所に集めまして・・・」

「その、趣味で、そう言うのが得意な奴に組み立てさせたら・・・」

「その、どう見ても・・・」

「ペンギンにソックリでしょ?」

「大きいですけど」

 組み立てていた黒服達は顔を蒼くしながらそう説明していった。

 最初に片付けた台所のゴミの中には、ペンギンの羽があったのかもしれない。

 あの時は、ただ、邪魔なゴミを出しただけだったので、調べなかったが・・・



 そして、暫く、沈黙が支配した・・・



 嫌な沈黙だった・・・



 飼っていたんじゃなかったのか?



 そんな疑問も浮かぶ・・・



 中には・・・・



 まさか、この為に?



 等と言う思考も浮かんでいた・・・



 その骨を眺めていた者達は、その沈黙を、かなり長く感じた・・・実際は数分位であるが・・・


 ピピピピピ

 課長の腕時計が鳴った。

 全員が我にかえった。

 中間報告の時間だ。

「と、ともかく、この骨とプレートを司令に届けるぞ。
 お前は、部長に今から戻ると報告しろ。
 それとお前、司令の前でもう一度組み立てろ」

 課長は、それらの骨を、新しいビニール袋に集めながら、そう指示を出した。

「「「「は!」」」」

「ところで、この部屋はどうします?」

「このままで撤収だ。
 態々、元通りにする必要もないし、これ以上、片付けてやる必要も無い」

 課長はそう言って、プレートと骨の入ったビニール袋を持って、 ネルフ本部、司令執務室に向かうために、部屋を出て行った。

 無論、部屋はそのままである。

 後日、ミサトは部屋が、一部を除き片付いているのを別に不審には思わず、 無くなったものがあっても、(えびちゅ以外なので)特に気にもせず、 再び、散らかし始める事になるだろうが・・・






 その頃・・・

「目標のレンジ外、超長距離からの射撃か」

 作戦の説明を聞いたゲンドウがそう聞き返した。

 因みに冬月が居ない為に、自分で喋る事を余儀なくされて居る。

 しかし、ミサトの持ってきた作戦は、シンジ達の予想に反して、 なんと、あのヤシマ作戦と、ほぼ同じものであった。

「はい。
 目標のA・Tフィールドを中和せず、高エネルギーによる一点突破・・・
 それしか方法はありません」

 ミサトはハッキリそう言った。

「MAGIはなんといっているんだ?」

 ゲンドウがそう訊いた。

「それは・・・・」

 流石に自分では言い難いのか、ミサトが言いよどむ。

「スーパーコンピューターMAGIによる回答は・・・」

 そこで、リツコが少し呆れたような口調で答えようとすると・・・

 なぜか、ミサトが、リツコの方を横目で見る。

「・・・条件付き賛成が1、反対が1、無回答が1でした」

 ため息を吐きつつ、リツコはそう言った。

 アスカが来る前に、作戦について、色々とミサトに引っ張られ、 作戦の成功率を出すように言われ、更に説明の手伝いをさせられているのだ。
(結局、アスカは使徒殲滅後に戻ってくる事になった)

 自分の作戦が選ばれるようにと・・・

 ハッキリ言って、偽証をさせているのだ。

 因みに、本当のマギの答えは違う。

【大量の条件付で賛成してもいいかな?】が1、
【絶対に反対】が1、
【作戦発案者は一辺死んで来い!】が1である。

 無論、するにしても、条件もかなり多い。
(どれがどれか分かるかな?・・・って、既に当てた人居るけど)

【作戦発案者が、自分で、全ての許可を取ってこられたら・・・】
【あの加粒子砲に2分耐えられる盾を、複数、最低でも、5枚以上準備できたら・・・】
【エヴァを4機準備できたら・・・】
【更に、その一番目の盾の前面に作戦発案者を括り付けてもいいなら・・・】
【他組織との連係を確りとるなら・・・】

 など等・・・

 無論、ミサトには一番、最初の条件以外教えていないが・・・

 ハッキリ言って、素直に反対してくれた方がマシな条件だった。

「成功率は約2厘か・・・(汗)」

 ゲンドウが呟く。

 因みに、2厘とは、0.2%の事である。

 勿論、コレもサバを読んでいるが・・・
(本当は0.1%を余裕で切っている)

「最も高い数値です」

 何故か、ミサトは自信満々に、胸を張って、そう言った。

 前回は成功率が一割未満だったのだが、今回は、使えるエヴァが一台しかなく、 しかも、最近乗り始めて、未だ上手く動かせないトウジな為、0.1%を割る成功率になっている。

 因みに、成功率に関しては、ミサトは知っているハズだ。

 どこから、その自信が来るのか、非常に知りたい。

 もしかして、他の案は、全会一致で反対されたからだろうか?

 それとも、割(10%代)、分(1%代)、厘(0.1%代)のあらわす単位が分からなかったのだろうか?

 可能性はある。

出来るものなら、反対する理由はない。
 時間内に、自分で条件を満たしてみたまえ葛城特務伍長」

「はい!」

 ミサトはうれしそうにそう言って執務室を出て行った。

 何気に階級が下がっているのに気が付いていない。

「・・・い、いいのですか?」

 ミサトが出て行った後、リツコが焦った様にそう言った。

 因みに、ゲンドウには確り、本当の事をレポートで報告してある。

「コレは罰だ・・・」

 ゲンドウはハッキリそう言った。

 無論、ゲンドウは、ミサトがそう言う交渉が出来るとは、 ミジンコの繊毛程も考えておらず、おそらく、様々な所から、叩き出されると言う事を予測していた。

 まぁ、それが後で後悔を呼ぶ事になるが・・・

「では、使徒はどうするのです?」

 リツコがそう言ったとき、内線がなった。

「・・・私だ・・・あぁ、直ぐにもってこい」

 ゲンドウはそう言ってニヤリとした。

「どうしたのですか?」

 リツコが不思議そうにそう訊いた。

「切り札が届いただけだ」

 ゲンドウはニヤリとしながら、そう言った。

 リツコは首を傾げる。

 だが、ゲンドウは十数分後、目論見が外れ、非常に混乱する事となる。










To be continued...

(初版 2004.12.25)
(改訂一版 2005.01.03)


(あとがき⇒悪あがき?)

 はい、一部の方に質問のあった交渉時のカメラワークですが・・・

 監督:シンジ
 助監督:レイ
 カメラマン:マナ
 照明:カヲル
 音響:マユミ
 主演:ペソペソ=ホットスプリング特務二佐(♂)asペンペン
 助演:ペギペギ特務二尉asペギペギ(♀)
 大道具、その他:ペンペンの愉快な同胞達

 となっております♪

 ペギペギは、シンジ達が探し出してきた温泉ペンギンの生き残りの内の一匹で、 ペンペンの彼女です。
(奥さんと言っても差し支えは無いでしょうが)

 因みに、世界中の生き残っていた温泉ペンギン達は、 ペンペンの要望で、出来うる限り、保護した模様。

 今回の事で、一箇所に集めて、温泉ペンギン村を某敷地内に作った模様。

 現在、楽しく住んでいます。

 無論、温泉も涌いています。

 更に、温泉ペンギンは、皆、賢く、働き者な為、色々な雑用を手伝っています。

 マスコットとなっているらしいです。

 ついでに黒服さん達が見つけた骨ですが、発見した時には、 既にお亡くなりになっていた温泉ペンギンの死体(の骨)を身代わりにと、 プレートと共にミサトの寝室に置いていった物です。

 まぁ、偽装工作ですね。
(無論、食べられたように偽装した)

 因みに大きさが、若干違うんですが、まぁ、バレ無いだろうと言うことで・・・

 では、また!

P.S1 励ましのメールをくださった方々へ、ありがとうございます。

P.S2 某チャンネラーの方々、偽メールなどを送り、
     無責任に煽らないでください。
     名前を騙っている人もいましたが、メアドが違うので、バレていますよ。
     いい加減、ウィルス付きのメールも止めてください。
     これ以上されるなら、知り合いの業者さんに頼んで、
     しかるべき処置を取らせていただきます。
     また、そんなに私の作品が、嫌なら、読まないようにしてください。

P.S3 偽メールや煽りメールにカッとし、
     掲示板に勘違いし易い事を書いた事をお詫び申し上げます。
     私は、盗作をしていませんし、
     相手の方もしていないと言う意味で、
     書いた積りだったのですが・・・書き方が悪かったですね。
     当時、色々なメールでかなり頭に血が上っていました。(反省しています)
     件の作品を、読みにいって見ました。
     確かに、その部分の会話は似ています。(かなり驚きました)
     ですが、前後の内容等を読んでいただければ、違う作品ですし、
     その状況から、その部分(台詞)が、似たようなものになるのは、
     許容範囲になると思うのですが?
     (原作のあるキャラクターの性格などを考えていれば)
     ともかく、後は先方と私の問題ですので、
     これ以上、煽らないでください。
     また、意見があるようでしたら、普通のメールでお願いします。
     ただし、ウィルス等がついていると思われるメールは、
     問答無用で読まずに廃棄します。

 追加P.S

P.S4 すいません、電圧と周波数を間違えて書いていました。σ(^_^;)アセアセ…
     ご指摘、ありがとうございます。

P.S5 メールを送り、返事が返って来ました。
     D−エッジさんとの話し合いは一応の決着がつきました。
     私も、D−エッジさんも、これ以上、
     この話題で騒がれたくないという考えです。
     よって、これ以上は、この掲示板で騒ぐのは止めてください。
     そういうことをする人は、どんな理由をつけようとも、
     荒らしを目的とした人以外の何者でもありません。
作者(とりもち様)へのご意見、ご感想は、メール または 感想掲示板 まで