日本・某所・・・

 そこは、ある村だが、住んでいる人は少ない。

 まぁ、過疎化が進んでいる村かと聞かれれば、そうではない。

 むしろ、住人?は数ヶ月前より遥に増えていて、活気がある。

 因みに、観光地にもなっているらしく、結構、観光客がやってくる村だ。

 その村はとある部隊と財団の庇護下にあり、最近、某観光会社のツアー企画に上がってから、人気爆発中の観光地になっている。

 その村の名は・・・

 ペンギン・ヴィレッジと言う。










新起動世紀ヱヴァンガル改

第二十一話 ペンギン達の問題?

presented by とりもち様











 名前でお分かりいただけると思うが、この村の住人?の殆どが、セカンド・インパクト以降、地殻変動の為、自然界には居なくなったと言われているペンギン達である。

 無論、人も住んでは居るが、ペンギン達ほどではない。

 比率的には、ペンギンが40に対し、人が1であろうか・・・

 ヴィレッジ(村)と言う名になっているのは、住んでいる人間の数が少ないからである。

 つまり、村とは言っても、結構な羽数が住んでいるのだ。
(世界中に散らばっていた殆どの実験用の温泉ペンギンの成体、幼体、卵は、某財団と某軍の力により、このペンギン・ヴィレッジに回収されている)

 ココに住んでいるペンギン達は、普通のペンギンと違い、暖かいところでも平気な温泉ペンギンである。

 一般には知られてはいないが、自然発生ではない人間の実験により生まれたとされる種族である。

 普通のペンギンは、氷の浮かぶような冷たいプール付の場所で暮らしているが、この温泉ペンギンは、殆ど常温、しかも陸地で生活する。

 しかも、冷たい水のプールではなく、温かい温泉に自ら喜んで入るのだ。

 まぁ、寝る部屋とかはクーラーの効いている涼しい所が多いが・・・
(ペンギン達の部屋というか、控え室は、巨大な冷蔵庫のようになっている)

 更に知能が高い為、色々な仕事も自分達でこなしており、観光客に人気がある。

 何せ、芸をするどころか、お風呂(温泉)で背中を流してくれるし、文字を書くプレートやレコーダー等を使って、観光案内をしてくれるし、迷子の(迷子センターへの)案内や、相手もしてくれる。

 見回りなども確りやっている。
(無論、有事の際に現れるのは人間の警備員だが、ペンギン達だけでも撃退できるらしい。
 どこかで訓練していると言う噂も・・・)

 食堂での給仕などもできるし、土産屋の店員もしているし、チャンと金勘定も出来る。
(ペンギン達で、料理をしているかどうかは不明だが・・・)

 帳簿も確りつけているし、(財団連盟関連の大きな)銀行に売り上げを預けている。

 小さいものや車輪付であれば、荷物も運んでくれるし、ベッドメイクもしてくれる。

 農作業もしているし、生け簀で魚を養殖しているし、なぜか、小さいペンギンの学校もある。

 特に小さいペンギン達の仕草は可愛く、お子様や女性に大人気になっている。

 子供のペンギンの姿は小さいだけでなく、大人だと黒い部分が赤い色である為、皆、珍しがっており、更に女性達に人気爆発状態である。

 時々、連れて帰りたがる観光客も居るが、それは全面的に禁止である。

 ペンギンたちにも、家族が居るし、そもそも、彼等はペットではないからだ。

 極稀に、無理矢理攫おうとする輩が出る事は出るのだが・・・
(闇のペット業界で売ろうと考えている輩が・・・)

 子ペンギンたちは、そう言う邪まな考えの者を敏感に察知する為、近付けば逃げ出すし、よしんば、捕まえることが出来ても、直ぐに、隙を見付けられ逃げだされる。

 また、薬か何かで眠らせることが出来たとしても、途中で、親ペンギン達に見付けられ、集団での修正を受ける事となる。

 更に、それを回避できたとしても、村を出る前に某軍の警備隊によって、捕まり、処罰されているのである。
(近くというか、実は、その場所は、某連隊の基地の一つの敷地内であるのだが・・・)

 しかも、そこには温泉街でもある為、ペンギン達に興味が無くとも、老人や、仕事に疲れたお父さん達にも、保養地として大人気である。

 故に、今、ホットな観光地となっている。
(何故か、第三新東京市の旅行代理店には、ココの案内は無いらしい)

 この村の村長も、名前からして、ペンギンであると言う噂が流れているが・・・

 外部の人は、アトラクションの何かと思って、気にしない。

 つまり、この村の村長が、ペソペソ=ホットスプリング(本名:ペンペン)となっていても、誰も気にしないのだ。

 尤も、村長室のある役場には滅多な事では入れないし、普通、入ろうともしないので、関係ないだろうが・・・
(入り口がペンギン用の小さいものなので、子供ぐらいしか入れないだろうが・・・)







 そんなわけで、その村長室では、数匹のペンギンが話をしていた。

「ぎゃわ・・・くわわ(今週も黒字だな・・・これで、累計赤字も全てなくなったな)」

 結果報告書を見ながら、ペソペソ事、村長であるペンペンがそう言った。

 因みに、ペンペンは自力で村長に選ばれている。
(一番、頭が良かったし、実は、腕っ節も強いし、しかも、コネがあるので・・・)

「ぎゃわわ(良い事です、後はお借りしたモノを返していくだけですね)
 くぅ〜わ(半分位は税金で持っていかれるでしょうけど・・・)」

 横に座るペギペギも嬉しそうにそう言った。

「ぎゃわわ?(何か不満みたいなのは出ていないか?)」

 ペンペンは他のペンギンたちにそう尋ねた。

「ぎょわわ(今のところ、私の部には、特に無いですね)」

 お土産等の販売関係代表のペンギンがそう言った。


 作者注:面倒なので、次からそのまま訳します。(^^;)


「他は、問題は出ていないか?」

「食糧生産部からですが・・・
 生け簀担当のペレペレさんが、最近、盗み食いをしているペンギンが居るらしいと・・・」

 ペンペンの言葉に、食糧生産部代表のペンギンがそう答えた。

「全く・・・本能のおもむくままに行動したのでは、良くないのだがな・・・」

 呆れたようにペンペンが呟く。

 食料は十分に行きわたっているものの、勝手に摘み食いするものが居るのだ。

「仕方ないです。
 元々、我々のように、マトモに教育を受けていた温泉ペンギンは少ないのですから・・・」

 実際上、大人のペンギンであっても、人間相手に仕事が確り出来るのは、半分も居ないのである。
(ペンペンを始めとする上位ペンギンによる教育で、増えているが・・・)

 まぁ、元々、実験動物だったし・・・
(セカンドインパクト後、極端に減ったサル、チンパンジーの代わりだったらしい)

「そこで提案なのですが、もう少し、教育の場を増やしませんか?」

 眼鏡をかけた教育部代表のペンギンがそう言った。

「ふむ、増やすといってもな」

 腕を組みつつ、ペンペンは考える。

 他のペンギンにも、同じように考えているペンギンも居るが・・・

「年齢に関係なく、テスト制にするのです」

「つまり、ある程度の常識がないと、上には上がれないと言う事か?」

「逆に、体が赤く幼くても、実力があれば飛び級出来るようにするのです」

 教育部代表のペンギンが熱く語り始める。

 おそらく、アメリカとかの教育関係を調べ、研究したのであろう。

「ふむ・・・だが、それでは根本的ではないと思うぞ」

 聞き終わった後、ペンペンはそう言った。

「どう言う事です?」

 そのペンペンの言葉に、教育部代表のペンギンが不満そうに訊く。

「私は、狩の場を作ってやらねばならんと思うのだ」

「狩・・・ですか?」

 怪訝そうに教育部代表のペンギンがそう言った。

「我々、温泉ペンギンは、人間を除く他の動物に比べれば、確かに、本能を強く抑える事が出来る種族だ。
 しかし、それは人間に比べると、やはり弱い。
 故に、抑えられた野生が爆発すれば色々と問題が起こると思うのだ。
 特に、教育が不充分だったものはその傾向が強いし、私でも、多少はその本能がある」

「なるほど、つまりその野性の本能を発散する場を作るのですね?」

 興味深そうに他のペンギンがそう言った。

「そうだ。
 事実、その摘み食いの被害は、田畑、つまり、農業部の方では、殆ど出ていないだろう?」

「確かに、かなり少ないですね。
 しかも被害は、身内ではなく、烏や他の動物です」

 農業部代表である恰幅のいいペンギンがそう答えた。

「故に、公的な狩場を作って、狩をすると言う欲求を満たしてやれば良いと考える。
 無論、観光部門に取り入れられるなら、プログラム化するのだ」

「「「なるほど、流石です」」」

 他のペンギンが納得する。

 教育部代表のペンギンは、不満そうな顔をするが・・・

「無論、教育部の提案は、それに関係なく、実行に移すべきだとも考える」

「本当ですか?!」

 教育部代表のペンギンが驚いたようにそう言った。

 てっきり、このまま、自分の案は却下されると考えていたからである。

「勿論、良いアイデアだからね。
 それに、使える労働力は大いにこした事無い。
 今の我々は労働力不足なのだから・・・」

 確かに、幾ら働けるペンギンが多いと言っても、全体的に見れば、重要な部分、つまり、販売や案内などが出来るペンギンが少ないのである。

「では、案を纏めたら提出してくれ。
 見直しが必要なら会議を、必要なければ、直ぐにでも始めるから・・・」

「分かりました!
 今日中に提出します!」


 嬉しそうに教育部代表のペンギンがそう言った。

 因みに、この学校、希望すれば、子供達も体験できるアトラクションとなるのだが、何故か、赤毛の金髪の少女が最初から子ペンギン達と一緒に授業を受ける事になったりする。

 更に、教師役の先生には、人間の女性が2人ほどおり、その内1人は、その少女とかなり似ているらしい。

「では、今月の会議は、以上だ。
 私は今回の結果を、司令の方に出し、通してもらうように説得する」

「「「「お願いします」」」」

 そして、各自は持ち場に戻り、ペンペンは第一秘書官兼第一夫人のペギペギを連れて、シンジの所に向かうのであった。




 ココで補足説明をすると、このペンギン・ヴィレッジでは、ペンギン達自ら稼いだお金で、人間の労働力をシンジ達経由で雇ったり、食料や稚魚や作物の種等を買って、育てたりして、自給自足を目指している。
(特殊ペンギン部隊の給与も、一部というか、大半含まれているらしい)

 無論、安くして貰っていると言っても、確り地代も払っているし、将来の為に、貯金もしているのである。
(その内、市民?権を得る為に、自分達で直接税金も払いだすかも)

 自立を目指す、確りモノのペンギン達なのである。

 これは、ペンペンとシンジの話し合いで決まったことである。

 何せ、飼い主に任せっぱなしだと、大変な目に遭うことを知ったペンペンは、自分達でも生活できるようにしなければならないと考えたからだ。
(飼い主が特別だったからとも言えるが・・・)

 無論、シンジ達も、これに賛成した。
(最初は難色を示したものの、ペンペンの説得により、賛成する事にした)

 大規模な状態で、一気に行うと色々と弊害が出てくるだろうが、少しずつ、ゆっくりとそう言う場所を広げれば、ある程度どうにかできるのではという考えもあったからである。

 因みに、(ココだけでの設定なのだが)温泉ペンギン達は、一回に卵を産むのは二個だが、そのうち孵化するのは、通常一個だけである。

 稀に自然に二つとも孵化する事もあるが、本当に稀であり、しかも、注意しないと、両方死んでしまう事が多いのである。

 まぁ、尤も、この確り統制されたペンギン・ヴィレッジでは、孵化したら、余程の事が無い限り、2羽とも大丈夫だが・・・

 そして、体が成人というか、成鳥となるのは、通常の鳥よりも時間がかかるのである。
(寿命は人間並みに長いらしい)

 これは、知恵がついた為か、人間に感化された為か、教育などの為に時間がかかるのであろう。
(それでも、人間より、大人になるのは早いが・・・)

 しかも、子供を生むと、普通は、数年間、滅多に次の子を生まない。

 この辺はまだよく判っていないが、子育てに関係があるらしい。

 まぁ、卵は産まれて数ヶ月と経たない内に、孵化するし、子供達の教育も、村にきてからは、そこまで手がかからなったので、簡単な仕事なら、出来るし、気の多いペンギンが、小さい子供が居るのに、産むメスもいることは居る。

 事実、研究所に居て、子育てを人間任せにしていたものは、シンジ達に保護されるまで、毎年、二回ほど産んでいたと言う記録がある。
(ただし、孵化率は悪かったようだ)

 因みに、子ペンギン達は、孵化して数週間くらいで、公開学校で、文字や基本的な事を習い、ある程度、覚えたら、自分の適性や希望に応じて、それぞれの専門教育(こっちは非公開)へ、進む事になっている。

 また、メスの比率が高く、実力のある雄ペンギンは、複数の奥さんを持つ。

 これは、自然の摂理というか、自然にそうなっている。

 とは言っても、この村が出来て、一年も経っていないので、ココで生まれた子供は殆ど、孵化してそんなに経っておらず、親元にいるか、公開学校に所属している。

 因みに、ペンペンより先に保護されていた温泉ペンギンも存在するが、環境の所為か、ペンペン程、賢い固体は居なかった。
(ペンペンの環境が一番、酷かったと言う事である)

 まぁ、ペンペンが来てから、急速に温泉ペンギン達に文化が広まったと言う話もある。
(ペンペンの教育?で)

 因みに、個体数を比較すると、現在は赤子(卵)>大人>子供という数関係である。

 それ故、ペンギン・ヴィレッジは、深刻な労働ペンギン不足なのである。

 尤も、後、数年と経たずに、解消されるだろうが・・・

 まぁ、鳥?口が爆発的に増えるしだろうし、また、彼らをサポートする人間の人口が増加するだろうから・・・

 その時は、名前をペンギン・タウン(町)に変える話も出ている。

 もっと大きくなった時は、ペンギン・シティ(都市)と改名するか、他の国(温泉のある場所)に、新たなペンギン・ヴィレッジ(村)、もしくは、タウン(町)を作る可能性もあるだろうが・・・
(某世界的な遊園地のように?)

 だが、そこまで増えるかどうかは謎である。

 なぜなら、今は数が少ないのと、メスの数の方が多い影響で、生まれる個体も多いが、段々と、教育が進んでいけば、ある程度の数で、止まるかも知れないからだ。
(ペンギンたちも研究所に居た時よりも、卵を産もうと言う本能は少なくなっている)

 そうなれば、この地域だけの存在になるのかもしれないからだ。

 話は変わるが、国連軍・第16軍・特別全域方面軍・特殊特務独立連隊には表向きには、特殊部隊として、温泉ペンギン部隊が存在している事になっているが、実情は、ペソペソ(ペンペン)を始めとした十数羽のみである。
(大道具係とか・・・)

 故に架空の存在(温泉ペンギン)が居るのだが・・・
(某所等で本格的な訓練をしている候補ペンギンもいるが・・・)

 元々、国連から予算は出ていないし、その部隊の維持費は、シンジ達のポケットマネーと、ペンギン・ヴィレッジの財団関係の(観光とか、宣伝俳優とかの)契約金等からなので、特に査察が入る事も無いので、問題はないだろう。
(某所のように、他所からとりつつ、更に水増しや架空請求するようなマネはしないし・・・)

 それに、数年と経たずに、本当に出来ているだろうし・・・
(技能に優れたペンギンが、本格的な実地訓練中である。
 某市に潜入したり、某ターゲットを気付かれないように攻撃したり・・・)

 因みに、シンジ達から出たお金の部分は、ペンペン達自身で、確りチェックしており、チャンとローンを組んで、将来的には全て返す積りでいたりもする。
(故に貯金をしているのだ)

 中々、確りしたペンギン達である。







 国連軍・第16軍・特別全域方面軍・特殊特務独立連隊・第一極東基地・司令室

「あぎゃ!」

 ノックをして、ペンペンが声を上げると、ドアが開いた。

「いらっしゃい」

 そこには、シンジ、レイ、マナ、カヲルが居た。

 ココにいる面々は、書類整理をしているのである。

 部隊関係のモノだけでなく、財団関係のモノもあるので、日頃からやっていても多いのだ。

 因みに、マユミは、既に終わらせており、アスカとキョウコの世話をしにいっている。

「あぎゃ」

 ペンペンはそう言って、レイ経由でシンジに資料を渡す。

「ごくろうさん、今回はどうなったのかな」

 そう言って、レイから渡されたペンギン・ヴィレッジの資料を見る。

 因みに、シンジとレイは、今日、自分達が処理するべき書類は、殆ど終わらせている。

 マナは、書類関係は苦手らしく、近くの机でまだ悪戦苦闘している。

 だが、ミサトのようにサボったり、部下任せにせず、全部、自ら進んでやるのである。

 その為、苦手とは言っても、彼女の処理能力は、一般のそれより、高くなっている。

 因みに、こう言う事務処理関係の仕事は、マユミが一番上手く、早かったりもする。

 そして、カヲルは、処理能力はマユミと同じくらい高いのであるが、参謀職である為、目を通さないといけない資料が、一番多い。

 その為、もう少しかかりそうだが、第九をハミングしつつやっているので、もう少しで終わりそうだ。

「ふむ、なるほど・・・
 無理はないね。
 あ、レイ、あの拡張計画はどうなっている?」

「第八人工島の拡張は次回で終了、予定よりも10%も土地が多いわ」

 シンジの問いにレイが即座に答える。

「その内、8%を、ペンペン達の新たな教育施設に出来る?」

「そうね・・・
 元々、余る予定の土地だから、十分、可能よ。
 それに、作る施設によっては、設備投資として、補助が出せるわ」

 軽く考えて、レイはそう答えた。

「ペンペン、この計画の一部だけど、ココの部分は、ペンギン・ヴィレッジでやるよりも、こっちの人工島で行ったほうが良いと思うんだ」

【確かに、そうだが・・・
 一部のとなると、その家族などの関係はどうなります?】

 ペンペンがサイドボートにそう書いて訊いた。

「おそらく、大人は出張、子供は留学という事になるかな?」

【むぅ・・・】

 シンジの答えに、ペンペンは考える。

「外の事を知る事になるから、プラス面もあるよ。
 ヘタな場所よりも安全だし、それに、定期便はあるんだから、帰省もし易いと思うし・・・
 海底温泉もくみ上げているから温泉もある。
 もしもの時は、逆に、観光の部分以外を、そっちに移しても良いし、第二のヴィレッジか、タウンにしての良い」

【多分、それで良いとは思いますが・・・
 一応、話し合いをして見ます。
 私だけで、そのような重要な事を決める訳にはいけませんから・・・
 観光部門との兼ね合いもありますし、まだそこまで我らの数も増えていませんから・・・】

 トップとは言え、傲慢な支配者ではなく、代表者であると自覚しているペンペンはそう言った。

「でも、長い目で見れば必要になるだろうし、下手なところに拡張するわけにもいかないだろ?
 本格的に利用するまでは空き地としてとって置くから、地代も取らないよ
 元々余剰なんだし・・・」

【確かに、そうれなら・・・】

「じゃぁ、出来れば、2、3日の間に返事と、希望する施設とかの草案を出してくれ。
 今のうちに計画を作っておいた方がいいだろう」

【了解、連絡し、明日にでも、緊急会議をさせてもらいます】

 ペンペンが答えると、秘書の役割も持つペギペギがとっていたメモに、赤で急ぎと言う印をつけた。

 そんな具合に、シンジ達とペンペン達の話し合いは進む。







「ところで、報告だけど、いいかな?」

 ペンペンとの話が終わり、しばらくして、書類整理が終わったカヲルがシンジ達に声をかけた。

「なんだい?」

 シンジが答え、レイとマナも顔をカヲルの方に向ける。

「やはり、アレには引っかからなかったようだよ」

 最後に処理した書類を手に持って、カヲルがそう言った。

「えぇ〜せっかくレイちゃんと態々あんな事をしたのに〜」

 それを聞いたマナが不満そうに言った。

「まぁ、まぁ、最初からプレッシャーの積りでやっただけなんだし」

「そうね、アレに引っかかったら、それでネルフは終わりになるから、つまらないわ。
 ゼーレの重鎮も陰に隠れる可能性が高いし・・・」

 シンジがニコニコしながら宥め、レイが冷静な口調でそう言った。

「それだけどね。
 どうやら、病院にいる事を良い事に、鬚の方には話していないようだよ。
 むしろ、積極的に隠しているね」

 カヲルがそう口を挟んだ。

「誰が止めたの?」

「電柱とマッド・・・
 つまり、髭とメインスタッフの間に、ある種の溝を広げる事には成功したって事さ。 因みに、モドキは地下に封印中・・・まぁ、その内忘れるだろうけど・・・」

 マナの問いに、カヲルはそう言った。

 やはり、ネルフ内に仕込があるようだ。

「なるほど、流石、ネルフで最も優秀な人材と言われている副司令と技術部長というところか・・・
(これは鬚の入院を引き伸ばさせる必要は無かったかな?)」

 シンジが納得したようにそう呟くと・・・

 コンコン

 誰かがドアをノックした。

「誰?」

 レイがそう言った。

「マユミです」

 ドアの外から、マユミがそう言った。

「あぁ、入ってきていいよ」

 シンジがそう言うと、ドアが開き、マユミ(大人バージョン)が入ってきた。

「失礼します」

 そう言って、ドアを閉めると、マユミの姿が、瞬間的に中学生バージョンになった。

「どうしたの?」

「ネルフドイツ支部とアメリカ支部から、財団経由で、 第16ウチに、こんな依頼が正式に来ました」

 マユミはそう言って、シンジにとある書類を渡した。

 どうやら、緊急で連絡が入ったらしいので、こちらに来たらしい。

 因みに、もろもろの事情でサルベージされたキョウコは、ある程度回復しているし、ペンペンの部下達もいる為、アスカの世話を付きっ切りでする必要は無いのだ。(まぁ、それでも、会いに行ってあげないと、アスカは寂しがるのである)

「・・・エヴァのパーツおよび、肆号機と伍号機の輸送の護衛?
 態々、ネルフで準備したタンカーを改造した船に載せるから、海路を行かせろ?
 航路はアメリカ、ドイツで、最後が日本?
 しかも、開始日は・・・急だね」

 シンジが呆れたような声を出しながら、書類を読み上げ、レイに渡した。

 レイはそれを見て、呆れた表情をすると、直ぐにマナに渡す。

「・・・怪しんでくださいと言わんばかりだね」

 マナもそれを見て、呆れたようにそう言った。

 なぜなら、財団に輸送を頼むのなら、態々、海路を指定しなくとも、空路で十分に運べるし、その方が安上がりだからだ。
(第16にも、エヴァ3、4台なら、余裕で運べる空中空母もある)

「多分、裏・死海文書に拘っているんじゃないかな?
 空中で、しかもあのスピードじゃガギエルも襲う暇がないだろうし・・・」

 カヲルがそう言った。

「ココまで記述と違う事を起こしているのに?」

 マナが眉を顰めながらそう言った。

「まぁ、大まかな流れはあっているからね。
 それに、タンカーは向こうのだから、少しでも利益を貪ろうと考えているんじゃないかな?」

 マナから書類を貰って、サッと読んで見たカヲルが肩を竦めつつそう言った。

「後の会議で話そうと思っていたのだけど・・・
 補完委員会以外の老人会メンバーの中には、碇家のように、ゼーレから抜ける事を考えている一族が出ているようよ。
 極秘裏に、財団、いえ、碇家と皇神家に接触を求めてきているらしいわ」

 レイが思い出したかのようにそう言った。

「やっと出てきたの?」

 マナがそう言った。

「まぁ、先代が病死というか、原因不明?の機械の故障で延命処置が停止した為、急遽、代替わりしたからですね」

 調べていたらしいマユミがそう言った。

「それで、計画を知り、それに固執する老人達への不信感が強くなったんだ。
 でも、良くそれで、老人ホームゼーレ12使徒に居れるね」

 不思議そうにマナがそう言った。

 ゼーレの中に残っているなら判るが、ある意味、無謀ともいえる人類補完計画の監視者兼責任者でもある補完委員やゼーレ12使徒の中に、代替わりしたばかりの者がそのまま居れるとは考え難かったからである。

「代替わりしている事を黙っているようです。
 先代の声色を機械で作り出し、フリをしているようです。
 まぁ、代替わりすると、議長の家系か、継ぐ者が余程の功績をあげてない限り、問答無用でナンバーが落ちたり、長の行動が制限されますから・・・」

 マユミがそう答えた。

「なるほど・・・
 でも、それだけの情報で、頭ごなしに信用するわけには行かないから・・・」

 シンジがパチンと指を鳴らした。

 すると、天井から、1人の少女が現れた。

 因みに忍者服を着ている。
(注:クノ一のではなく、普通の忍者装束)

「何でしょう?」

「サキ、その幹部のところに潜れる?」

 シンジはニコニコしながらそう言った。

 そう、わかる人にはわかるだろうが、この少女は、サキエルのコアから、人間に転生した娘である。
(某方々、お待ちかねの使徒っ娘である)

「・・・えぇ、大丈夫ですが、離れていてよろしいのですか?」

 サキは少し考えて、そう答えた。

「いいよ、多分、暫くは大丈夫だし・・・
 まぁ、一週間ほどで出来うる限り調べてきて」

「判りました。
 では・・・」

 そう言って、サキは飛び上がって、天井にあけてある穴に飛び込んでいった。

「・・・シンジ君」

 カヲルが声をかけた。

「なんだい?」

「何故、指を鳴らしたら彼女が現れたのかな?
 それに、彼女の出入り口を、態々、天井にしたの?
 後、何で忍者服?」

「・・・・・・(汗)」

「・・・リリン化した時、お爺様のところで見ていたTV番組の影響で、サキのマイブームが忍者モノだから・・・」

 答え辛そうなシンジの代わりに、レイがそう答えた。










To be continued...


(あとがき)

 ども! 無茶苦茶久しぶりのとりもちです♪

 いやぁ〜仕事が忙しくて、中々出せませんでした(;´Д`A ```

 メールのお返事を時々出すだけで、後は出来なかったという話もありますが・・・

 実は、この話、html化してないだけで、かなり前に完成していたりして・・・(^^;)

 因みに、お返事が来ていないよという方、実は、とりもちがパソコンに触れていなかった期間が長すぎて、読む前に消えてしまっている可能性が御座います(;´ω`)

 よろしければ、もう一度送ってくださると、助かります。
(お返事は必ず出しますゆえ・・・)

 と言うワケで、あとがきのホンチャンスタートです♪

 今回出てきた特選隊もとい、特殊ペンギン部隊の給与ですが、部隊のペンギン達が自分達、自ら進んで出しています。

 ペンペンの自立計画に賛同して・・・

 現在、温泉ペンギン達の社会は、どちらかと言うと、皆で一緒に働いて、食べ物も分け合う共同体、つまり、理想的な社会主義的なモノに近いですね。

 無論、働いているペンギン達には、それなりの給与を貰っていますが、ペンギン達は殆ど使わないので、そのまま、ヴィレッジ(行政府?)に寄付しています。

 なにせ、食べ物は、量産?したり、買ったりした後、皆で分け合っていますし、住むところも皆で協力して維持していますからね。
(精神的には、お金と言う概念の無かった時代の昔の村の住民に近いかも・・・)

 まぁ、その内というか、未来では、財産を貯めようと考える固体が出るかもしれませんが、今のところ、出てきていない状態です。

 全て一族皆の共有財産ということです。

 そして、次からガギエル編に突入です。

 その次は全然謎にはなっていないでしょうが、ながちゃんさんおまちかねのアレの予定です。

 まぁ、ガギエルが終わってから、その話になるのですが・・・

 あまりにも期待されていた方が多かったし、出なかったら、残念がった方が多かったし、かなり期間が長かったので、前もって出ることを予告した方が良いかなと考えまして・・・

 チャンと表舞台に出てくるよと・・・

 それと謎の・・・の起動時の歌ですが・・・

 う〜む、誰か考えてくれないかなぁ〜(;´▽`lllA``

 それと、前回のミサトの一尉の件ですが・・・実は、完全にミスです(汗)

 本当は二尉のハズだったりして・・・(^^;)

 ココで、『何で特務伍長じゃないの?』とおっしゃる方、実は、更に色々な説明を入れるのを忘れていました。

 入れ忘れです、混乱させてすいませんm(。_。;)m ゴメンナサイ
(自分の脳内だけで終わっていました)

 そんなわけで、矛盾の無いように、以下のシーンを書きました。




(補完シーン)

「は?・・・」

 副司令執務室に呼ばれたリツコは冬月から、ある事を聞いて、目を点にした。

「いや、流石にあのような公の場に出る者が、あの階級では、色々と問題がね」

 渋い顔をしつつ、冬月はそう言った。

 建前上、幾ら、非公開組織とは言え、世界各国にある組織、その一部門の責任者、しかも、本部という事で、統括責任者とも言える者の階級が、高々、特務伍長では、対外的に何かと軽んじられるからである。

「それで、外に出すついでに、一尉に戻すんですか?」

 同じように渋い顔をしつつ、リツコはそう言った。

 ミサトを一尉に戻すのは、冬月の本意ではなく、実は、ゼーレからの命令であった。

 このまま順調に?降格が進むと、ミサトを自分達のシナリオ通りにネルフ本部の作戦部長にしておくどころか、ネルフ本部に所属させる事自体、不可能になると考えられたからである。
(今でも、かなり無理をしている)

 それに、あのままだと、同じ部の部下でさえ、彼女よりも階級が高すぎる状態になっているので、流石に、トップが軍事組織に関して、門外漢の学者出身であるという理由にしたとしても、無理がありすぎるのである。
(つまり、司令が学者で組織運営の事が分かっていないと言う事が、ミサトが作戦部長と言う地位に居られる要因のひとつだったらしいが・・・)

 このままいけば、この矛盾だらけの役立たずな金食い虫の我侭組織は、少なくとも、数週間後には、ゼーレのコマである司令部の全員が、総取替えされ、某所にぶち込まれる事になり、全てあんな人事をしたゼーレの表向きの顔である人類補完委員会とは関係ない、真っ当な人材に替えられる事になるのは自明の理である。

 無論、補完委員会も責任と言う事で、解散させられ、前任者達とは関わりのない新たな委員が選ばれる事となるだろう。

 と言うか、既に、ゼーレの爺さん達には気付かれないように、国連ではそう言う動きが極秘裏に動いているらしいが・・・

「うむ、今までの降格は、殆ど無かった事になっている。
 まぁ、元々、殆どの降格処分も、六文儀の奴が口で言うだけで、その後、まともに書類すら、出してなかったからね。
 実は、彼女は、書類上、つまり、対外的には二尉のままなだったのだよ」

 因みに、その給与の差額は、ゲンドウがポッケに入れようとも考えていたらしいが・・・

 それ以上に、ミサトがネルフ内だけで出した損害だけでも、遥かにその金額を上回っている為、差額はそのままその補填に使われている状態である。
(冬月の指示で・・・まぁ、溶岩に水一滴のような状態だが・・・)

「大丈夫なんですか?」

「一応、対外的には二尉にしかなっていないので、一尉に戻すのはさほど問題は無いと思うが?」

「いえ、階級を戻す事により、葛城作戦部長が調子に乗って・・・」

 リツコの言葉に、冬月は嫌な汗を流した。

「そ、その時は、それを理由に、即座に書類を提出し、対外的にも本格的に降格させ、部下の数も減らし、役職も、作戦係長にでもするよ。
(むしろ、部下はゼロにして、非常勤作戦係り補佐辺りにでもするかな・・・
 普段はあそこに常駐させて・・・)」

 冬月はそう言った。

 しかし、考えている事を、即実行したほうが無難だろうが・・・

「では、この書類にサインをさせればいいのですね?」

 数枚の書類を手に、リツコがそう言った。

「あぁ、それで一応、受理されるから・・・」

 冬月はそういいつつも、一抹の・・・いや、多大な不安を感じずにはいられなかった。

 まぁ、その不安は当然の如く、的中する事になるのだが・・・

 因みに、冬月は、既に、ある書類を準備していたりする。

 それらは、ミサトの降格だけでなく、今後の為、作戦部縮小させる関係書類である。

 ゼーレの依頼で、あくまでもミサトがトップと言う体面?を保つ為、役に立たない等と言う、様々な理由をつけて作戦部を縮小させる為に・・・
(役に立たないと言うか、害なのはミサトなのだが・・・)

 これは、問題の先送りであり、新たな問題の発生原因になるのだが・・・

「やはり、ワシから委員会に進言して、この
対処最終手段を実行に移すべきか・・・
 しかし・・・そうなると」

 いつの間にか、リツコが退出した部屋で、冬月は、とある書類棚を見つつ、独り、そう呟いた。





 上記のようなシーンがあったことにしてください(汗)
<(_ _;)>オネガイシマス

 後で、ながちゃんさんに19話の冒頭辺りにでも、このシーンは入れてもらう事としましょう。
(無責任?)

 では、最後に、今回のペンギン村の元ネタであるAK.さんに感謝しつつ、またです♪



(ご要望にお応えして、ながちゃん@管理人のコメント)

温泉ペンギンって、かなり高度な社会性を持ってたんですねぇ、吃驚しました。知的レベルも、殆ど人間と同じじゃないですか。ペンペンだけが特別なのかなと思ってましたよ。
しかしペンギン村っすか。どこにあるんだろう?湯河原とか堂ヶ島あたりかな?
ミサトの一尉の件は、全然気付きませんでした(汗)。不覚です。
補完シーンについては、第十九話の冒頭に捻じ込んでおきました。
今さら「冗談だったのに〜」というオチはなしですよ?(笑)

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