そして、ミサトと黒川の部下達との言い争いがヒートアップしていく。
ヘリの中である事を忘れ、ミサトが手を出すのは時間の問題だろう。
因みに、今回、黒川が連れてきた部下は、全員、尉官クラス以上であり、ミサトより階級が高いし、ミサトが命令できるどころか、逆に全員がミサトに命令できる立場で、更に死なない程度なら、攻撃を加えることも許可されている。
「はやり・・・マジで、転職を考えるかな・・・
(いや、それとも部下を連れてにげるか・・・)」
段々ヒートアップしていく後部の者達(約一名を除く)を横目で見ながら、黒川は小さく呟いたのであった。
第二十三話 第16独立連隊の護衛艦隊
presented by とりもち様
国連軍・第16・全域・特殊特務独立連隊・第3輸送護衛部隊・旗艦“白木馬”・ブリッジ
「山岸准将、ネルフ所属らしきヘリが着艦を求めてきました。
直接、挨拶をしたいとの事です」
通信兵が、提督席に座っている女性、山岸マユミ准将にそう言った。
(シンの階級が上がった時、レイ、マナ、カヲルと一緒に出世し、それぞれ、階級が上がっている)
そう、この輸送護衛隊の責任者、というか、全輸送部隊の責任者は、マユミなのである。
とは言っても、部下達が優秀だし、連絡は密にやっているし、マユミも他にやる事があるし、来ようと思えば(某方法で)直ぐに合流できるし、マユミ自身、シンジの傍に居たい為、居ない事が多々あるが・・・
(他にも受け持っている部隊が居るしね)
だが、ミサト達が、向かうと知っていたので、態々、来たのである。
「必要ありません。
着艦も却下します。
音声を上げて、ハッキリ答えてあげなさい。
あ、騒ぐかもしれないから、ヘッドホンを外して置くように・・・」
マユミはアッサリそう言った。
「イエス、マム。
そちらの着艦は認められない。
挨拶も不要、即座に、帰還されたし」
通信兵も、理由を聞かず、アッサリ、そう返事をして、言われた通りにした。
『&%△&○$%#$◇$’!!』
「・・・騒いでいますね」
少しして、通信兵が顔を顰めつつ、そう言った。
「あら、やっぱりですか?
(聞こえたようですね♪)」
少し面白そうに、マユミはそう言った。
「えぇ、先程の者と代わって、女性らしき声が怒鳴っています。
暴れている様でもあります」
かなり煩いらしく、通信兵は、耳を押さえ、更に受信の音量を下げているのだが、それでも、充分、マユミの所まで聞こえるくらい、大声で怒鳴っているのである。
「この艦の任務は、エヴァ肆号機、伍号機、それにフィフス・チルドレンを、安全に新横須賀港にまで、送り届ける事です。
ネルフにはそこで受け渡しと言う事になっており、途中であなた方が合流すると言う契約は、一切、結んでいませんし、連絡も受けていません。
本人である確認も出来ませんし、やる気も無いので、安全の為にも、許可は絶対にしません。
そう伝えなさい」
「イエス、マム・・・」
通信兵はそのまま、マイクに向かって、そう言った。
「良いのですか?」
この艦の艦長兼、この艦隊の副提督でもある男、水城亮二がそう言った。
(マユミが居ない時の責任者でもあり、マユミに忠実な部下の1人でもある)
「えぇ、本物であろうと無かろうと、向こうはネルフを名乗っているのですよ。
余計な事をされないように気をつけなければなりません。
何せ、チルドレンの護衛とか称して、こちらに強引に乗り込んできたというか、無理矢理潜入してきた多重スパイモドキさんの行動が、行動でしたでしょ」
ニコリとしながらマユミがそう言った。
「まぁ、そうですなぁ〜
(やはり分かって挑発しているのですね)」
水城は頷きながらそう言った。
何せ、あの男は、互いの艦には、有事の際以外、乗り込まないと言う契約をネルフの方からしてきたのに、無断で、こちらの艦に潜入してきたのである。
昼間、無理やりヘリで乗り込もうとした時、速射砲で撃たれ・・・
(無論、警告はあった・・・女性の声で)
その後、それに反省した?のか、今度は時間を夜にして、救命ボートで横付けしようとして、ガトリングで威嚇と言うか、救命ボートを沈められ・・・
(これは警告が無かった)
最後は泳いで潜入するようにしたので、数回成功したらしい。
(まぁ、変な事が成功する前に捕まったが・・・)
因みに、潜入すると、平然と左手の薬指に指輪をはめている女性隊員を強引にナンパしようとするわ・・・
(現在、ネルフのタンカーには、女性隊員が1人も居ないのに比べ、第16側には、かなりの数の女性隊員が乗っている。
また、全員、かなりのレベルの美女であるが、恋人がいたり、既婚者だったりする)
あまつさえ、人気の無いところに連れて行き、押し倒そうとするわと、色々とやったのである。
無論、押し倒したり、壁際に押し付けたりした途端、即座に現れた憲兵隊に捕まり、袋叩きにされたが・・・
まぁ、最初はコネの無い第16独立連隊に何とか、コネと言うか、ツテを(強引に)作る積りだったのだろうが・・・
途中から、何とかこの航海中に、女性を堕そうと意地になっていたりもする。
無論、コッソリ仕掛けたつもりの発信機や盗聴器は、全て即座に見付かって、破棄されている。
まぁ、後で、証拠と供に、国連経由でネルフと日本政府の内諜に、証拠つきで抗議が行く事になっているが・・・
(無論、信用がなくなり、内諜からの仕事と協力が減る事となる)
また、加持がそんな事をしている内に、コッソリ、第16のエージェントが逆に潜り込み、彼の部屋にあった例のブツは偽物と交換していたりする。
(因みに、その姿は人ではなかったとか・・・)
「アレで間諜活動をしているつもりなのでしょうから、たまりませんな。
途中から、何を目的にしているのか・・・
趣旨が変っているように見られますし」
「しかも、自分では超一流と思っているらしいですよ。
まぁ、ゼーレの思考操作もあるでしょうが・・・
ネルフも質の良いエージェントが居ませんから・・・」
「良いトコ、腕は二流止まりです。
しかも、アレには、信用も無いですから、評価も良くて三流以下ですし・・・
ですが、自分で気付かないのですかねぇ〜
アレだけ失敗しておいて・・・」
「未熟すぎる者はレベルの高すぎる相手と自分との差が判らないと言う事がありますからね。
それが思考操作の影響と重なって、自分の本来のレベルが分からないのでしょうね」
こんな事を言っているが、一般的に見て、加持のレベルは高い。
基準となっているのが、この第16独立連隊の隊員達のレベルなので、高過ぎるだけなのである。
(訓練が終わって正式な任務に就く者は、全員超一流以上の腕前である)
「世も末です」
水城が呆れたように頭を振っていると、通信兵が報告をしてきた。
「マム、燃料が足りないので、給油だけでもと言っていますが?」
強引に乗り込む理由か、もしかしたら、本当に燃料をケチってきたのかもしれない。
「そうですねぇ〜
『本当にネルフの関係者であるなら、ネルフ側のタンカーの方に、本人であるという照合と着艦の許可を求め、本人と照合され、更に許可も出て、その連絡がこちらに来れば、そちらに、着艦し、給油してもかまわない。
しかし、こちらの艦に降りようとしたら、再三、契約違反をしようとしたのは、ネルフの総意という事で、契約違反、以後、ネルフを敵とみなし、即座に貴官等も撃ち落し、護衛も契約不履行と言う事で、今後のネルフからの依頼の護衛は、一切行わない』
と伝えるように・・・
あ、ついでに、あのヘリ、全砲門で狙っておきますか」
マユミがそう言った。
「「イエス、マム!!」」
そして、通信兵達はそう伝え、各部署に通達が行き、高射砲を始めとする空母や他の艦の全砲門が、ミサト達の乗るヘリに向いたのであった。
(元々、二、三台向いていたけど・・・)
ヘリの中・・・
「ど、どういうことよ!」
ヘリの中で、返事を聞いたミサトが怒鳴った。
「まぁ、元々、受け渡しは新横須賀港で行う予定だったのに、いきなりやってきた状態だからな。
それに互いの艦には有事の際には乗り込まないと言う契約をこちらからしているんだ。
当たり前だと思うぞ」
黒川がそう言った。
(空母の方に乗り込むと言い出したのはミサトである)
「ネルフの作戦部長が態々来てやって、直接会ってやるって言っているのに!」
ミサトが憤慨するようにそう言った。
「それは、お前が書類をギリギリになるまで作成しなかったからだろうが・・・
そのお陰で、連絡もいってなかったようだな・・・
それに、相手と自分の階級の事を考えているのか?
(この馬鹿アマは・・・)」
ミサトを呆れたように見つつ、黒川はそう言った。
実は、本来、前もって書類を向こうに送るはずだったが、ミサトに代わって書類を自分から作ってくれるようなお目出度い存在はおらず・・・
(冬月、リツコは忙しすぎて失念していた)
また、散々催促されたのに、ミサトがギリギリで作成した書類は、とても書類とは言えるようなものでなかった為、結局、出せず、いきなりの訪問になっているのである。
(よく行く気になったな)
無論、冒頭の事件の後、書いていなかったのを咎められてから、やっと書いたのであるが・・・
尤も、行く連絡は、冬月が忙しすぎた為、出し忘れていると言う話もあるが・・・
(ミサト関係の仕事のフォローをしてくれる存在も居ないし)
「ぐぅ・・・」
黒川の言葉に、ミサトが言い返せず呻いた。
「「「だから、不気味だって・・・」」」
即座に黒服の男達から、突っ込みが入った。
「ねぇ、使って良い?
使って良い?
これ、新作なの」
「だから、それはここでは危ないでしょうが・・・」
「む〜」
その突っ込みの後ろで変な会話が聞こえるが・・・
また、向こうの責任者は、艦隊司令であるので、元が私兵団とは言え、どんなに低く見積もっても、中佐以上の上級仕官であり、下手をすれば、将官である。
(実際、今居る最高位は准将である)
現在、ミサトは、表向きにも仕官どころか、准士官でもありはしない。
(対外的にも正式に、特務伍長に降格した)
つまり、ミサトは部長職であるとは言え、階級的には、天と地ほどの差があるのである。
更に、相手は、ある意味、ネルフと同規模以上の軍を任されているようだし・・・
しかも、同じ?国連の組織であるとは言え、向こうは一軍で、国連と同格以上とも言われて、更に、親派の多い組織なのに対し、こっちは、非公開であるとはいえ、国連下部組織でしかも落ち目で、嫌われ者・・・
つまり、地位的にも、立場的にも、組織的にも、向こうが遥かに上位なのである。
文句を言うどころか、そんな事をしたら、ある意味、反逆罪と取られてもおかしくない。
それなのに、この態度とは・・・
やはり、まだネルフの特務権限に拘っているのだろうか?
元々、(この世界では)絶対的なものでもなかったし、今はかなり縮小され、制限も浮けまくっているのに・・・
(しかも、元から、向こうには、昔のネルフ以上の権限があり、今は更に強化されている)
そして、ヘリの後ろの方で、ミサトと部下達が、また言い争いを始めていた。
(部下達がおびき寄せたらしい)
このままでは、ミサトが暴れだすのも、時間の問題のような気もした。
「ねぇ、ねぇ、黒川課長、あれ、煩いし、これ、使っちゃっていいですか?
このままだと、幾ら大きいとは言っても、このヘリも危ないですし、直ぐ静かになりますよぉ〜♪」
頭痛がしてきた黒川に、なぜか、黒服ではなくネルフの制服を着た女性が怪しげなものを手に持って嬉しそうに、そう声をかけてきた。
「あぁ、まぁ、程々で頼む・・・
しかし、再三と言う言葉が気になるな。
第一輸送タンカーの方に降りると両方に連絡を入れてくれ」
黒川は頭を押さえつつ、騒ぐミサトを、彼女に任せ、ヘリのパイロットにタンカーに降りるように指示を出した。
因みに、ミサトの方を見ないようにしていた為、何を持ち出したかは見ていない。
『『『『『『『『〜〜〜!!〜〜〜!!』』』』』』』』
そして、なぜ?か、フラッシュのような光が起こり、ミサト(と男連中)の悲鳴が聞こえ、後から十数回の打撲音が聞こえ、ヘリもかなり揺れたような気もしないではない。
「(・・・何を使ったんだ?)」
「(鶴亀、鶴亀・・・)」
黒川とパイロットは、見ないフリをして、安全の為、ユックリと時間をかけて、タンカーに向かっていった。
暫くして、ネルフの第一輸送タンカーのブリッジ
黒川達はタンカーに連絡を居れ、着艦許可を貰い、ブリッジに来て、艦長に挨拶をした後、何が起こっているかを聞いた。
因みに、ミサトはここにいない。
気絶しているわけでもないし、怪我をしているわけでもない。
居ても邪魔になると判断した黒川が、見張りつきで、ココの食堂に置いて来たのである。
『【えびちゅ】ミニ缶(180ml缶)6本』と言う餌を使って・・・
(無論、見張り付きである)
「・・・・・・そ、それは、本当なのか?」
そして、それを聞いた後、黒川が呆れたようにそう言った。
「はい、現在、加持リョウジ特務二尉は、本艦の特別室に厳重に閉じ込めています。
まぁ、出すように文句を言っては居ますが、今回の原因は全てあの男にありますので・・・」
「奴は何を考えているんだ?」
「わかりません。
ともかく、国連軍上層部の忠告通り、ネルフ側の女性隊員は、全員、ドイツ港で降ろし、今回の輸送部隊には加えませんでしたので、被害が出なかった事が不幸中の幸いでした」
因みに、某所から国連経由で、直接、艦長へ忠告があったのである。
「(工作員としては優秀と聞いていたが・・・
それ以上に女癖が悪すぎるようだな)」
艦長の報告を聞いて、黒川は頭をおさえつつ、そう感じた。
「ところで、フィフス・チルドレンは?」
黒川はそう訊いた。
ミサトの前に会っておこうと考えたからである。
先にミサトにあわせたら、あの女が何をやりだすかわからないから・・・
「向こうに預かってもらっています」
だが、艦長はそう言った。
「どういうことだ?
ネルフに所属する者は、立ち入り禁止だろう?」
艦長の言葉に、黒川は怪訝そうな顔をした。
「いえ、フィフス・チルドレンは、まだ、ネルフ本部の所属ではありません。
それに、まだ子供でありますし・・・
また、女の子だったので、ドイツに入港前にですが、特別に許可が出ました。
と言うか、日本へ、彼女を無事に送り届けたいなら、アレとは離して置くべきである言う要請が・・・
そうしないと、安全を確約できないと・・・
無論、向こうでは、護衛と言う名の監視がついているそうですが・・・」
因みにフィフスの少女は、最近、アメリカで選ばれていたりする。
「・・・・・・・・・
もしかして、アイツがドイツから乗って来るのと、チルドレンが女の子だったと言うのが、預かってくれた最大の理由か?」
ドイツを出る前と聞いて、黒川は引きつりながらそう訊いた。
「はい、あの性獣、もとい、加持リョウジ二尉の傍に置いておくのは、色々と倫理的に拙いだろうと言う事で・・・
幾ら子供でも、この航海中に何をやらかすか判りませんので・・・
チルドレンを安全に運ぶ為には、それしかないと向こうからも言われまして・・・
(実際に、理由を無理矢理作っては向こうに潜入しようとしていたし)」
「・・・・・・そこまで有名なのか?」
一呼吸置いて、黒川はそう尋ねた。
「えぇ、まぁ・・・
どうも、ネルフとは関係ない裏では、強引に女性の弱みを握って事を進めようとする『発情狐』と言われているらしいですね。
しかも、気分しだいで、雇い主を裏切ったこともあるとか・・・
私もその話を聞いて、最初は疑いましたが・・・
(ネルフ内のトップクラスのエージェントって事だったが・・・
おそらく、それ以外の腕でだな・・・多分)
その武勇伝?を調べ、更に、アレのこの航海中の行動で、それが事実だと理解しましたよ。
まったく、ネルフは本当に井の中の蛙だったんですね」
「・・・・・・・・・」
黒川は呆れて何も言えなかった。
「ともかく、伍号機はチルドレンが居ませんし、完成もしていません。
また、肆号機の調整も不十分ですので、チャンと動くか不安ですから、この航海中は動かす事は出来無いでしょう。
それに、もしもの時は、第16さんが確り護ってくれるので大丈夫ですよ。
使徒を殲滅した実績もありますし・・・」
安心しきったように、船長はそう言った。
実は、アメリカを出港した後、ドイツに着くまで、何度か海賊に襲われかけたのである。
しかし、海賊達は、第16の護衛艦隊を見た途端、脱兎のごとく逃げ出すか、襲い掛かっても、逆に、1分と経たずに壊滅させられたのである。
それを実際に自分の目で見てきているので、この艦長はすっかり、第16の護衛艦隊を信用しているのである。
無論、第16にダメージを与えようと、護衛の事を言わずに海賊にネルフの物資輸送をリークした何も考えていない奴が病院に居たが・・・
まぁ、人外に襲われて入院期間が延びているだろう。
(良い実地訓練である)
それに、今までの使徒を倒したのは全て第16だし・・・
「では、チルドレンとは会えないのか?」
「直接、会えませんが、毎日、顔を会わせていますよ。
通信ですがね。
此方より、居心地がよさそうですね。
(アメリカを出てからはあんなに暗かったのに、向こうに移ってからは、多少なりとも元気になったようだし)
まぁ、その時、偶然、覗いていたヤツが向こうに女性が居る事を知って、馬鹿な行動をしまくったのですがね。
チルドレンと直接会うとか、自分は護衛だとか言ってね」
船長はかなり呆れた顔でそう言った。
「なるほど・・・わかった。
一応、後、7時間ほどだから、我々も、このタンカーで日本に戻ることにするよ。
燃料の節約にもなるし・・・」
黒川はそう言って、ブリッジを出て行こうとした。
「わかりました。
くれぐれも、向こうと問題を起こさないでくださいね。
アレの所為で、立場が悪くなっているんですから・・・」
艦長は、出て行こうとする黒川に、心配そうに、そう言った。
「当た・・・善処する」
黒川は、当たり前だと言おうとしたが、ミサトの事を思い出し、冷や汗を一筋流して、即座に言い直した。
艦長はその答えに、少し・・・いや、かなり不安になったのであった。
某所・・・
そこには、3つの影があった。
「・・・は、本当に大丈夫なのですか?」
影の1人がそう言った。
「えぇ、大丈夫ですよ」
「大丈夫なのだ。
既にお父さんの方は既に助け出したのだ」
2つの影がそう答えた。
片方の影は、最初に口を開いた影に似ているような気がする。
「でも・・・」
「あぁ、お母様も大丈夫ですよ。
何処にいるのかも、既に分かっていますので、直ぐに、しかも、安全に助け出せます」
「ですが・・・」
「大丈夫。
チャンと本部についているデータも改竄済みですから、直ぐにはバレませんよ。
それに、元々アメリカからの人達も、そんなに親しくなかったのでしょう?」
「それに、データがあっても、支部の方がもう閉鎖されているから、確認しようがないのだ」
「でも、向こうのスタッフが・・・
今は居なくても、後でドイツから来る事になっている人の中には・・・」
「それも大丈夫、チャンと出来ているのだ」
「はぁ・・・」
不安そうな事を言う最初の影に残りの影が安心させるように説得をしているようだ。
どうやら、最初の影は、家族を人質にとられて、何かをされていたらしい。
「それに、貴女達一家は、我々の保護下に入るのですから・・・
もし、気付かれても、あいつ等は何の手出しもできませんよ」
「でも、貴女は大丈夫なのですか?」
「平気なのだ♪
そう言う訓練は確り出来ているのだ♪
それに、姿は殆ど同じだから、あいつ等にはバレっこないのだ♪」
「わ、わかりました。
よろしくお願いします」
そして、最初の影はお辞儀をした。
因みに、この上の会話は英語だったりして・・・
その頃、第一輸送タンカーの食堂では・・・
「はぁ?
ど、どういうことよ!」
ミサトが怒鳴っていた。
「だから、この船にはチルドレンは乗っていないそうだ」
黒川はアッサリそう言った。
今度は『チルドレンに会う』とか、ミサトが言い出したのである。
因みに、現在、ミサトには、黒服を着た男の部下が3人、ネルフの制服を着た女性が1人、見張りとしてついていたりする。
しかも、女性は、何故か、鞭のような得物と、大きな口径の銃らしき物をつけているようにみえるが・・・
(因みに、彼女の後ろに立っている男が大きなバックを持っている)
「じゃぁ、向こうのタンカーにいるの?」
「いや、チルドレンは向こうが丁重に預かっていてくれているそうだ」
席を立ちながら尋ねるミサトに黒川はアッサリそう言った。
「ど、どう言う事よ!
ネルフ関係者はあっちの船には乗れないんじゃなかったの!」
「何故、そうなったかは、加持二尉でも訊いてみるんだな」
黒川は怒鳴るミサトにそう言った。
「げ、何でアイツが来ていんのよ!」
心底嫌そうな顔をしつつ、ミサトがそう言った。
「(チルドレンの護衛とか言っていたようだが・・・
それなら、アメリカから乗っているハズだよな。
それなのに、ドイツから・・・つまり、それは建前と・・・ふむ)
知らんな、それも本人に訊くんだな」
黒川はそう言った。
「ぐ・・・」
加持にあまり会いたくないミサトは言葉に詰まった。
無論、昔、付き合っていた男だし、色々とある為、ただでさえ、普通の時でもあまり会いたく無いのに、今の自分の頭は・・・だからである。
「そう言うわけだから、おとなしくしてろ」
「課長、帰らないんですか?」
部下の1人がそう言った。
「上からの命令でな。
このまま、一緒に帰って来いとさ」
「何故ですか・・・(問題が発生しそうなのに)」
不満顔でえびちゅの空き缶を弄っているミサトをチラリと不安そうに見ながら、部下の1人がそう訊いた。
「燃料代の節約じゃないか?」
少し呆れたように黒川はそう返した。
確かに、ネルフの予算はかなり削られており、潰れた支部から、資金や資材等をかき集めている状態なのである。
「だったら、最初から、こんな所まで来なければ良いと思いますが?」
同じように、呆れた口調で、部下の1人がそう言った。
「さぁ?・・・上の考えはよく分からん・・・
(まさか、愛人に出張費を渡す為か?)」
小声で愚痴を言い出したミサトをチラリと見て、黒川はそんな事を考えた。
因みに、【葛城ミサト作戦部長=六文儀ゲンドウ司令の愛人or肉奴隷】の噂は、オフィシャルなモノとして、ネルフ本部に根付いていたりする。
(無論、一部の支部でも・・・)
「ともかく、ここでの詳しい事はわからん。
故に、自分で加持二尉にでも、訊くのだな。
言っとくが出すんじゃないぞ。
俺達にはそんな権限はないし、そんな事をしたら、ネルフの立場も悪くなるからな」
「は、はぁ・・・」
黒川の言葉に、部下の男は首を傾げる。
「さてと、ココにはどんなメニューがあるのかな」
黒川はミサトにそう言ってから、席を立ち、食堂の受付に向かった。
今の時間はお昼過ぎ・・・黒川は遅めの昼を採る事にしたのである。
因みに、部下達は先に交代で摂るように言われていたので、先に摂っていたりする。
ついでに、ミサトに与えられたのは、一番安いカップ麺だったらしいが、【えびちゅ】があった為、文句は言わなかったらしいが・・・
(でも、ココの食堂って、無料のセルフでないのかな?)
黒川が食べ始めると、ミサトは思い出したかのように文句を言い出して、女性の見張りから、鞭でシバかれ、しびれて黒くなったのは、別の話かもしれない。
(どうやら、鞭は電流か何かが流れる代物だったらしい)
To be continued...
(あとがき)
ちょっと短い気もしないではありませんが、きりが良いので続きます♪
因みに、女性の新キャラズの正体はお分かりでしょ?
(ご要望にお応えして、ながちゃん@管理人のコメント)
加持登場(話だけ)。
なんかミサトとお似合いな設定ですな〜(笑)。
コンビ組んで色々とポカやってくれそうです。期待してます。
作者(とりもち様)へのご意見、ご感想は、または
まで