第二十五話 フィフスチルドレン着任
presented by とりもち様
ネルフ本部・司令執務室
「<ラミ=スパーダ特務大尉、ネルフ・アメリカ第二支部より、ネルフ本部に着任いたしました>」
あからさまに不機嫌そうな顔で、ラミと名乗る少女は、司令席の隣に立つ冬月にそう着任の挨拶を英語でした。
(注:セリフ内の<>内は英会話と思ってください)
ゲンドウは、病院内で"謎の襲撃"を何度も受けていたらしく、入院期間が微妙?に延び、まだ病室に居るので、ここには居ない。
尤も、ゲンドウは、実はすでに完治しているものの、仕事をしたくないから、無理やり院長を脅して、入院していると言う噂もあるが・・・
ともかく、司令が不在の為、副司令である冬月が代理として、着任挨拶を受けているのである。
「う、うむ・・・<着任、ご苦労>」
着任挨拶をする新しいチルドレンの不機嫌な様子に、怪訝そうな顔をしつつも、冬月はそう返した。
「<それだけですか?>」
睨むように冬月を見ながら、ラミが英語でそう訊いた。
「?・・・<他に何か?>」
意味の分らない冬月がそう訊きかえすと・・・
「ふ、ふざけないで下さい!
私はそう言う約束で、我慢して、
こんな所にまで来たんですよ!」
ラミが、今度は日本語でそう冬月に怒鳴った。
どうやら、彼女は少々どころではなく、完璧に日本語を話せるらしい。
そんなことはさておき、冬月は、怒鳴ってくるラミの迫力に圧され、若干、引く。
「<お、おい、落ち着くんだ。
この方は、本部の副司令なんだぞ!>」
横にいた護衛と言うか、監視役らしい黒服が、慌てて、そう言って、まさに冬月に飛び掛らんとするラミを止めた。
「<そのなの、関係ないハズでしょ!
アレはネルフ全体での契約って、支部長も言ったわ!
それなのに、旅の途中から、
話どころか、忙しいからと言って、
声も聞かせてくれなかった!>
どういう事なの!
本部の副司令ならわかるでしょ!」
抑えられつつも、ラミは英語で黒服に怒鳴った後、即座に冬月に日本語でそう怒鳴った。
ちなみに、肆号機搬出後、即座に閉鎖予定だったアメリカ第二支部は、第一支部同様、まだ閉鎖されずに、存在している。
なぜなら、あくまでも裏・死海文書の記述に拘る某ボケ老人クラブさん達が、エヴァ参号機を放出した第一支部と同じように他の国のエヴァを作成中だった支部を閉鎖させ、技術者と肆号機の代わりに他の支部で建造中だったエヴァの素体を運び込み、強引にまだエヴァの建造中であると、引き伸ばしを謀ったからである。
本来なら、そんな強引な言い訳がまかり通るわけが無いのだが・・・
某髭司令と某作戦(妨害)部長の暴走が、予想の斜め上を二次曲線状にダッシュして超えるほど、酷かった為・・・
某連盟と某部隊、そして、某軍の上層部が某老人クラブを逃がさず潰す為に、お目こぼしをしてあげた結果である。
無論、ネタを消化してないとか、遊び足らないと言う事もあるらしいが・・・
某ボケ老人クラブ達にかなりの財産の放出をさせている。
(その資金は、貧困に喘ぐ国等の復興支援に当てている)
「ど、どういう事とは・・・
いったい、どういう事かね?」
そのラミの興奮した様子に、冷や汗をかきつつも、冬月はその黒服にそう尋ねた。
「そ、その・・・実は・・・」
半ば興奮状態にあるラミを抑えつつ、彼女の様子をチラチラ見ながら、黒服が言い辛そうにしているので、冬月は、チルドレンに聞かせられない事情があると察した。
どうやら、彼も日本語を話せるようである。
(まぁ、日本に派遣されるくらいだし)
「いや、簡単でよいから、説明したまえ」
冬月は、手でとある合図をしながら、そう言った。
「で、では・・・」
黒服は日本語で、それもチルドレンの前でも出来る範囲だけは口にしつつ、後はコアの内情を知る者のみが使う符丁をジェスチャー等で交えて、説明をしていった。
口にだしたのは・・・
1年ほど前に、彼女の母親が行方不明となり、彼女の父親が捜索していると言う事。
そして、彼女も、父親と一緒に母親を探したかったのだが、それと“同時期”、彼女にチルドレンの才能が有る事が判明した事。
彼女が嫌がったので、特務権限を使い、強制的に第二支部に所属させた事。
(まだ第三使徒戦前の時点です)
そして、そのやり方がかなり強引だったので、当然のごとく、彼女は、ネルフに非協力的だった事。
それゆえ、母親の捜索の協力する事等を条件に、訓練や実験に協力するようにさせた事。
下手に出まくって、彼女に協力を求めなければ、地元警察やCIA、更には、ICPO(世界警察機構)にまで色々と支部内を強制捜査されるようなオオゴトになっている事。
(当然そうなったら、非常に拙いのは冬月も解っている)
そして、遥か離れた日本に独りで来る事を了承させる為、条件として、
『一日一回以上、父親と会話させる事』と、
『母親が見付かったら、両親を彼女の傍に送り、一緒に暮らさせ、安全を保障する事』を
約束して、彼女がネルフに所属させ、また、本部へ移動する為に行なった追加の諸条件を話した。
それなのに、日本への航海途中から、第二支部と連絡は取れても、彼女の父親と話をさせなかった事も・・・
ここで、疑問に感じた人も居るだろう。
彼女はチルドレンであるのに、母親が“最近”まで、居たと言う事に・・・
チルドレンであるはずなら、片親、もしくは、両親が居ないはずである。
(チルドレンを乗せるエヴァのコアに親を溶け込ませている為・・・)
それ以外の存在は、チルドレンとは違い、ユイのレポートだけにあったエヴァに直接シンクロできる存在、真の適格者もしくは、エヴァ、いや、使徒と同等、いやそのモノのハズである。
だが、真の適格者は、ゲヒルン時代から、 エヴァの研究の中核を担ってきた者達の間でさえも、絵空事で、存在しないとされていた。
残りは、使徒である可能性だが、現時点でそれをゼーレが送ってくるハズがないし、使徒なれば、両親が居るはずもない。
「(どう言う事だ・・・まさか・・・いや、そんな事は無いハズ・・・)」
当然、冬月も、彼女を真の適格者かと、疑問に思った。
何せ、ゼーレですら、真の適格者という存在は知らないハズである。
なぜなら、その存在が記されていたユイのレポートを、どこぞの馬鹿が、考え無しに全て処分してしまったのである。
その為、実際に、誰もインストールされていない生のコアに強制シンクロさせて、一か八か、生か死かの確認をする以外に、彼の存在を判別する方法がない。
それゆえ、報告の意味がないと、ゲンドウが言った為、それに関係する事は、一切、ゼーレに報告していなかったからである。
尤も、碇ユイ自身か、ドイツにいた惣流キョウコ=ツェッペリンがユイと同じ理論を見出して、彼女が上司にレポートを出し・・・
その上司がゼーレに報告していたと可能性もなくはないが・・・
最近、色々とあって、精神的にも、肉体的にも、あまり余裕の無い冬月はそのような事は思いつかなかった。
「(と言う事は・・・なるほど、やはり、そう言う事か・・・
そして、彼女が新たなゼーレの依り代候補でもあると言うわけか)」
だが、黒服が言った彼女が選抜された経緯や、諸条件等をきき・・・
更に、黒服が話し終わった後、彼女の後ろで、彼女には見えないように出している符丁を読み、納得できる理由を自分の中でも、見付け出していた。
つまり、この少女の母親を攫った真犯人は、アメリカ第二支部の裏の作業をする諜報特殊監査部であり・・・
既に、彼女の母親は、ネルフ第二支部の地下秘密実験場で、彼女と一緒に着いたエヴァ肆号機のコアに溶け込まされており、地球上のどこを探しても見付かるはずがないと言う事。
そして、彼女曰く、母親を探しているという父親は、ネルフ・アメリカのエージェント達に見張られているか・・・
ネルフ・アメリカ第二支部、もしくは、第一支部の地下牢にでも監禁され、ネルフとゼーレに都合の良い洗脳教育を受けているのだろう事を・・・
(まぁ、現在は、某方々と、某OP部隊の手により・・・)
事実、この日本本部でも、似たような手法でチルドレン候補を作り出し、コード707に入れているのだ。
勿論、この少女の母親みたいに、極秘裏に攫って、行方不明にし、意識不明にして、すぐコアに溶け込ませの為、色々と調整などの手間がかかる?というようなマネはせずに・・・
ランダム?に“某司令好みの”女性を突然の事故死や病死等に見せかけて、攫ったり、夫の頬を札束で叩いたり、弱みを握ったりして、差し出させ・・・
某所の某地下施設に監禁し、どこぞの某髭司令とその忠実なる部下達が、存分にお楽しみ・・・
いや、全く口外できないような事に、利用できるだけ利用しつくし、精神と自我をイイ具合に破壊し、溶け込ませやすくした後で、コアに溶け込ませているが・・・
(外道・・・って言うか、もっと手間がかかっているような・・・)
「(しかし、彼女のような、ある意味、危険な爆弾となりかねない存在を送ってくるとは・・・)」
冬月は頭を抱えたくなる。
教えると、いろんな意味でヤバイ人間(チルドレンに近い所員達や、後先、何も考えずに偽憤?にすぐ萌える某偽善暴走牛作戦部長)には、一切、こう言った内情はいかないようにしているし、知っている者も裏の関係者の極少数にしているから、その危険性は少ないものの・・・
(偽憤は誤字に非ず・・・その場のみ、しかも自分に不利益で無い条件でなら発生する偽善的な憤慨だし・・・)
もし、ひょんな事から彼女が母親の事を知ったら、エヴァ肆号機を使って暴れる可能性が高い。
無論、彼女以外にも、アメリカ第二支部には、チルドレン候補は居る。
いや、表沙汰にはしていないだけで、少なくとも、エヴァを建造しいている支部では、極秘裏にチルドレン候補をそれなりに抱えているのである。
当然、そういう支部も、上の人類補完委員会、つまり、ゼーレに“日本の本部へは極秘裏に”として、報告している。
尤も、ゼーレ経由でその事を知った三足以上の草鞋を履く某馬鹿尻尾が、他の支部には、(表向き)極秘?なつもりで、本部にその情報を報告している。
まぁ、三足以上の草鞋を履く某馬鹿尻尾が自分の興味本位の為に、支部の極秘情報を簡単にゼーレやゲンドウに喋る事は、支部内ではある意味、有名であるのだが・・・
つまり、他にチルドレン候補を支部が抱えている事が、本部にバレている事など、支部でもわかっているハズなのに、こんな危険分子を送ってくるのは、当然、それなりの理由があると言う事なのである。
何せ、アメリカ第二支部の支部長が、エヴァ肆号機をチルドレン付で本部に送る際・・・
『表向きの存在理由である使徒殲滅をさせる為に、本部の戦力をUPさせる為、多少問題があっても、確実に即戦力になりうる存在を送るように・・・』
と、アメリカ・ネルフ統括支部長と一緒に、直接指示を出したからである。
ゼーレの老人から直接と言う事は、いわゆる、支部長(もしくは部長)以上の者にとっては、逆らう事は許されない絶対的命令なのである。
そんな訳で、彼女を送ってきたと言う事は、アメリカ第二支部どころか、アメリカ第一支部にも、彼女以上にシンクロ率の高い、即戦力になりえる存在・・・
いや、彼女のシンクロ率の半分程度は出せて、更にかろうじて戦力になりえる存在すら、居ないと言う事なのである。
なぜ、そんな支部が状態なのか・・・
当然、両アメリカ支部も、他のチルドレン候補は、日本と同じように、幼い頃から片親であるか、両親が居ない状態である。
(親をコアに溶け込ませているし・・・)
だが、昔ながらのアメリカの教育方式、アメリカの風土と言うか、お国柄等から考えると・・・
幼い頃から、片親だったり、親が居なかったりする子供の場合、比較的早く自立するようになり、更に、精神的にも、早く親離れする可能性が大きいのである。
特に、セカンドインパクト以降、あの国も、某事情等により、いろんな意味でかなり余裕がなくなっている。
その為、なおさら、子供達の自立心を促してしまうのだ。
そして、本当の意味で自立心が強い、つまり、親離れをしかかっていて、甘える気持ちのない子供をチルドレンにした場合、そのチルドレンは、肉親を溶け込ませたとは言え、そのコアに対するシンクロ、依存度が上がり難い存在となってしまう。
いや、下手をすれば、シンクロしても、エヴァの起動が出来るレベルにまで、シンクロ率が達しないのである。
つまり、彼女以外、戦力にならないチルドレンとなっているのであろう。
ちなみに、アスカの場合は、計画の為、自立しているどころか、無理やり、背伸びをしようとして、極端に他人を突き放そうとしつつ、実は他人を求めると言う矛盾な状態にワザとされていたのだ。
その内、アスカ自身の精神を壊したり、周りのチルドレンの精神を壊したりする為に・・・
それが偶然、功を奏したのである。
そして、他の国の支部の殆どのチルドレン候補は、精神が自立しかかっているのだから、その精神も、壊し難いし、利用しにくいし、依り代になり難い。
本部というか、ゲンドウも、シンクロ率関係のその辺の情報、つまり、成長が不十分で親に甘えたい心、親への依存心がシンクロ率を上げる要因である事を、一切、教えてなかったし・・・
ゼーレも最終的に依り代にする為にチルドレンの心を砕く事等は、もしもの時の戦力の為に存在するチルドレンを抱える支部には関係ないと考え、一切支部には教えていなかった。
その為、他の支部では、その辺の事がわからず、かなり、無駄な事をしていた、もしくは、未だしている所が多いのである。
だが、近年、アメリカ第二支部は、自立している子供はシンクロしにくいと言う事に自力で気付いたのである。
まぁ、チョッとしたセカンドインパクトの偽装データを餌に、三足以上の草鞋を履く某馬鹿尻尾から、本部や他の全支部の候補者達と、高シンクロ率をたたき出すセカンドチルドレンを擁するドイツ支部との様々なデータを得て・・・
候補者達の担当となった心理学のライセンスを持つ学者が、ドイツ支部の教育プログラムなどを見ながら・・・
『もしかしたら、シンクロ率が上がるのは、自立しきらない子供か、精神的に病んでいる子供なのかもしれない』
と言う推論を出したのがきっかけだったらしい。
その為、今までとは別方式のチルドレンを産み出す為、急遽、両親が揃っており、円満な家庭で、子供が両親に甘えていて、家族愛溢れる一家を襲い、チルドレン候補に仕立てたのである。
当然、その家族は、偶々、第二支部の近くに住んでいただけで、今まで、ゼーレどころか、ネルフともまったく関係のない家族であった。
そして、いきなり、母親と引き離された彼女は、目論見通り、情緒不安定になり、居なくなった母親を求める心が強くなった。
また、父親とも離された為、家族を求める心と情緒不安定さが、更に強くなった。
結果、アメリカ両支部が、今までに作り出していたどのチルドレン候補達よりも、シンクロ率が遥かに上がり、エヴァを動かす戦闘では、トップとなったのであった。
むしろ、意地をはり、本当の心を覆い隠し、必死に自立しようと表向きにはしているドイツのセカンドよりも、最初から、高シンクロ率を出したのである。
更に、いきなり、ポッと出の新米が、(当事者も)理由も判らず、前から居た候補者達を軒並み追い越したのだから、当然、彼女は他の候補連中から、嫉妬を受け、村八分で虐めの対象となり・・・
それ故、更に家族、保護者であった両親を求める心が強くなり、シンクロ率が上がり、それに比例して、エヴァでの戦闘力が上がり、そして、心も砕きやすくなり、依り代最有力候補にもなったのである。
無論、アメリカ支部が偶然作り出した依り代最有力候補ではあるが、戦力にもなる存在なので、もしもの為にも、すぐ壊すわけにはいかない。
その為、それとなく、カバーが行くようにしたり、肉体的な暴行もあまり受けないように隔離したりもしていた。
(その代わり、無視されたり、陰口をグチグチと聞えるように言われたりするという陰湿な虐めを彼女は受けていた)
はっきり言って、ネルフの内情を知れば知るほど、鬼畜外道な所業を本部支部共に多々やりまくっているのである。
当然、今、やっていた事がバレたりでもすれば、一発で弱くなったとは言え、まだ辛うじてある特務権限どころか、ネルフという存在自体が吹き飛ぶであろう。
下手をすれば、人類補完委員会の全てを巻き込んで・・・
(そんな事を認めていたと言う事実で・・・)
何しろ、自分達で唯一の使徒迎撃組織とうたって、十年間以上も、膨大な予算を毟り取り、更に、(特にゲンドウとミサトが)特務権限で、好き勝手し放題をしてきたくせに・・・
実際、危惧していた使徒戦が始まって見れば、使徒を倒すどころか、最低限の仕事もせず・・・・
(無論、某司令や某作戦部長が仕事をサボりまくっている)
むしろ、無理やり徴用した子供達に負担をかけ、イビリ殺そうとしており、更に付近の被害を拡大させている。
加えて、他の真っ当な組織が、代わりに被害最小で使徒を倒していて、自分達は役立たずどころか、有害の烙印をおされているにも関らず、厚顔無恥にも超多大な追加予算を要求し、強引に毟り盗っているのだから・・・
(ある意味、誤字に非ず)
無論、現在、追加予算を出しているのは、ゼーレ直轄の強力な政府が根付いている国のみだが・・・
まぁ、その国々からは、宣言通り、財団連の企業が撤退し始め、ドンドン衰退し、何も知らない国民は難民として、他の国に逃げ出し始めている。
(結果、最近、足らない分を主にゼーレ上層部以外の、つまり、老人達の部下達の私財から強引に出させているらしい・・・)
その為、幾ら、ゼーレ直轄の国とはいえ、今の世情では、政権のトップとしても、流石にそのまま黙って無条件に出すわけにもいかない状況になっている。
それ故、他の国々と供に、追加予算の使用用途などを、今までの予算流用の内容も合わせて、求めるも・・・
その提出書類の殆どが、特務権限(ネルフ司令とネルフ副司令と落ち目の事務総長のサイン付)で、機密とされ、黒く塗り潰され、その用途どころか、書かれている内容すらわからないようにしてあった。
更に、何とか報告させた部分も、その本来の金額をどう高く見積もっても、金額が数十倍以上のドンブリ・・・いや、穴あき大笊勘定なのだから、大変である。
(この為、ゼーレの草である落ち目の事務総長の立場が益々危うくなっている)
ある意味、ゼーレの下層構成員(それでも、地位的にはかなり上)の精神的ゼーレの老人達離れが加速し、なんだかんだと理由をつけ、ネルフを庇わなくなってきている国が増えだしている。
(ゼーレの求心力がドンドン低下している)
そんな状態で、裏で非人道的な人体実験をやりまくっていると知れれば、存在自体の消滅も・・・
(既に秒読み段階だろうが・・・)
また、あの時は、それしか方法がなかった等と言っても・・・
実際、第十六独立連隊が、通常?兵器を使って、使徒を殲滅している事実により、そんな言葉には、説得力など皆無であり・・・
むしろ、今まで、全人類をだまして、非道の限りを尽くしていたとか、実はセカンドインパクトの実行犯ではないかと疑われる可能性も出るので・・・
(とはいっても、セカンドインパクトの“計画犯”も“実行犯”もネルフ本部に居るのだが・・・)
よくて、組織は即時解体、上級幹部は、公開死刑、もしくはタバシリの最下層逝きと言うか、投下・・・
(バイオチップを植えられ、上空からパラシュートを渡しただけで、一番深い最下層目掛けて落とされる)
中級幹部は執行猶予無しの(タバシリで)無期懲役か死刑(最下層付近逝き)・・・
下級幹部は部署により、最低でも、一般?刑務所で、数十年以上の懲役・・・
その時点でまだ残っている一般所員達は実名公開で、放逐(社会的に抹殺)されるだろう。
悪けりゃ、一般所員の一族も含めて、タバシリ逝きになってしまう。
ついでに言えば、現在、ネルフ権限を何とか護らねば色々とヤバイ人類補完委員会も、ネルフ本部(というか、ゲンドウとミサト)の所為で、現在、あちらこちらから、責められ、自分達の権限を守るために、日々奔走しているとか・・・
「と、ともかく、通達のミスか何かで、こちらにはまだその報告が来てなかったようだ」
「2ヶ月以上前から、何度も日本支部に行っていたはずよ!!
しかも、私が出発する直前にも、私の目の前で、書類を航空便で送ったわ!
当然、私も、念のためにコピーを別便で送ったわよ!」
宥めようとする冬月の言葉に、ラミはそう怒鳴った。
「な・・・(まさか・・・)」
冬月は嫌な汗をかき、油が切れかけているようなロボットの首のような硬い様子で、ラミを抑えている黒服の顔を見る。
「・・・あの、ここの作戦部長経由で、本部司令部にも何度も行っているはずですが?
数ヶ月前になりますが、最初の通信の時、出てきた所員を押しのけて、
『チルドレンに関する事はすべて自分の仕事』
と怒鳴られたと聞き及んでおります・・・
勿論、その通信だけでなく、書類の方も、返事が中々来ないので、途中から毎日、つまり、既に何十回も出していたと記憶していますが・・・」
少し、言い辛そうに、黒服がそう言った。
「や・・・やはり・・・
(出来ん事・・・いや、しもしないを・・・自分から)」
案の定だと思った冬月は頭が痛くなった。
本部の戦力不足というか、無いのが明らかになった時・・・
元々、第六使徒から、戦力となるべく?調整?されたアスカと弐号機をドイツ支部から急遽、日本本部に送ったのである。
その為、裏・死海文書の記述に沿う為には、別のエヴァを太平洋経由で日本に送る行動をとらなければならなくなったのである。
その帳尻あわせの為、更には、戦力増強の為、弐号機の代わりに、アメリカ第二支部のまだS2機関を搭載していないが、素体は完成していた肆号機に急遽、正式な拘束具をつけ、ガギエルの記述に合わせて送ることが決まったのである。
(代わりに記述通りに、第二支部でS2の事故を起こす為に、漆号機の素体材料を第二支部に送る手続きをとったが・・・)
そして、当時、まだ候補者であったが、一番、シンクロ率の高かったラミ(使徒っ娘のほうではなく、アメリカのチルドレン本人の方)との(日本に行かせる為の)契約が決まり、それを通信で先に本部に報告させていたのだが・・・
その時、偶々、通信装置の近くを歩いていたミサトが、(通信兵を殴り倒して)横からしゃしゃり出て・・・
『チルドレンに関することは、
全て本部作戦部長である私の管轄よ!
勝手なことをやってんじゃないわよ!
全部、私を通しなさい!・・・ひっく
これは本部総司令からの絶対命令と同じよ!・・・うぃっく』
とトンでも無い事を加えつつ、真っ赤な顔で怒鳴ったらしい。
(無論、片手には、某アルコール飲料水の缶が握られていたらしい)
その後、本部に何度も送ったチルドレン関係の文書、書類は、司令部に直で行くはずの書類や、電子書類に関しても、ご丁寧に大元を消しつつ、フロッピィに入れられ、何ゆえか、全て作戦本部長であるミサトの机上の某山脈や、セカンドハウスの某山脈に逝ってしまったのだ。(誤字にあらず)
まぁ、その裏には、某ペンギン達(OP部隊)の影の存在や、なぜか、見たこともない作戦部の者が書類をワザワザ運んでいくと言う話もあるところにはあるが・・・
(無論、あの方々です・・・作戦部は偽造ID・・・)
ともかく、今頃は、それら書類は、他と同じように、某所か、第二某所の某紙山脈の土?に変わっており、フロッピィに関しては、某アルコール飲料水の影響等で、殆ど使い物にならない状態で埋まっているのであった。
発掘作業をするにしても、大変そうだし、紙の書類でさえ、無事なのがあるかどうか・・・
まぁ、メールで送ったのは、彼女のメールボックスに残っているかもしれないが・・・
尤も、殆ど開けない、もしくは開けられる状態ではなかった為、悪戯メール・宣伝メール・カミソリメール等による満杯状態で、受け取れない状況になっているかもしれないが・・・
ともかく、それ以後は、アメリカ第二支部からのどころか、他の支部の書類も合わせ、チルドレン以外の重要書類も、いくらか逝ってしまっており・・・
只でさえ、問題視していたネルフ本部支部間の亀裂の増加が、かなり加速したという話もあったりする。
ちなみに、一度くらいは、ゲンドウにアメリカ第二支部の支部長から、直接連絡がつながっていたかもしれないが・・・
無視するか、お決まりのセリフを吐くだけで、内容を聞かず、内容を覚えるどころか、知らない可能性が高い。
(色々とあったし・・・)
尤も、その件に関して、支部長がゲンドウを問いただそうとしても、(主に冬月の)小言等を聞きたくないゲンドウは、のらりくらりと誤魔化すだろうが・・・
(そのスキルだけは劣化せず、逆に強化されているようだ)
それに、その事実(支部からの連絡すらも、総司令がロクに聞いていない)を他の支部の支部長達に知られたら、いろんな意味で、ゲンドウの解任(その後、即タバシリへ投下)の可能性も加速度的に上がるに違いない。
また、冬月も、副司令のクセに、その程度の管理?(監視?)もしていなかったのかと言う事で、ゼーレから同罪とみなされる可能性もある。
ゼーレからは、ゲンドウの監視命令も極秘でされているが、元々、冬月はゲンドウの腹心(というか、目的がほぼ一緒)だったので、ロクにやっていなかった所為ではある。
「何をしているんですか?!
早く、ダディと話をさせてください!」
「(かなり、精神が不安定になっているな・・・・
だ、大丈夫なのか?
ともかく、アメリカ第二支部に連絡をとってみるか・・・
その前に、落ち着かせるか・・・)
まぁ、落ち着いてくれたまえ。
君はまだここについてすぐだろう。
それに向こうとは時差がある」
黒服が必死にラミを抑えようとしているのを見つつ、冬月も、そう考えつつ、日本語でそう宥めようとした。
「こちらから詳しい事情をアメリカ第二支部の支部長に聞くから・・・
それに、ここと支部なら、発令所のモニターを使えば、顔を見て話が出来るぞ」
冬月は、さらにそう付け加えた。
「・・・・・・本当ですか?」
顔を見て話せると聞き、ラミはしばし考えて、そう言い、冬月をじっと見る。
「あぁ、まぁ、お父上が、第二支部に居ない時は無理だが、居れば優先的に使えるようにしてあげよう」
冬月は似非紳士の笑顔で、ラミにそう言った。
「本当ですね?」
しつこく、確認するように、ラミがそう聞いた。
「無論だよ」
ラミの顔を見つつ、冬月は笑顔でそう答えた。
ココで目を逸らす訳にはいかないので、しばらく、ラミは冬月の目を見詰め、冬月は、心の中で冷や汗を流しつつも、今までの権謀陰謀等の経験から、何とか目線を外さず、笑顔を崩さず、にこやか?にしていた。
「分りました・・・
今日は引いておきます」
しばらくして、まばたきをする以外、ずっと冬月の目を見続けた後、ラミはそう言って引いた。
「では、軽く、本部施設を回り、関係部署に軽く挨拶をして、施設課で部屋を教えてもらい、今日はゆっくり休みたまえ・・・(め、目が乾きかけた・・・)
あぁ〜案内は・・・」
誤魔化す為にも、目を反らす訳にはいかなかった冬月は、開けたままだった為、若干乾いた目を少しまばたかせながら、黒服にそういった。
「大丈夫であります。
先ほど、私と彼女のPDAに案内図をいただきましたので、本部の施設に関しても、第三新東京市内に関しても大まかにですが、把握しておりますし、調べられます」
黒服が敬礼をしつつ、そう答えた。
「(なるほど、彼は彼女の監視・・・と言うわけか・・・道理で彼女の扱いに慣れているハズだ)
分った。
では、何かあったら、保安部か、庶務課、もしくは発令所所員に連絡を入れてくれたまえ」
冬月はそういった。
「了解しました。
では失礼します」
黒服はそう言って、再敬礼すると、ラミを伴って、出て行った。
「ふ〜やっと終わったか・・・
さて・・・
どういう事情なのか、聞いてみるか・・・
しかし、葛城君に重要書類を回すとは・・・
それがどういう意味か、分っているのか?」
目頭を揉みつつ、ある意味、身勝手にも、冬月はそう呟きながら、アメリカ第二支部の支部長の寝室にホットラインを繋ぐ為、自分の執務室に戻るのであった。
(注:ミサトが無能であるということは、 “ドイツ支部の上層部”と“日本本部の上層部”では有名でも、他の支部には、諸事情により、極秘にしてあり、なるだけ漏れないようにしている・・・
まぁ、薄々気付かれているだろうが・・・)
そして、再び頭を抱える事となるのだった。
ネルフ本部廊下
PDAで、本部内の地図を見ながら黒服が歩いており、そのすぐ後ろというか、横をラミが歩いていた。
「しかし、ラミさんや・・・
少し、やりすぎだったんじゃないかね?」
黒服が小声で、そう言った。
「いやぁ〜本物の彼女が、予定通りの精神状況だったら、あのくらいやったと思うし♪」
黒服の後ろで、不機嫌そうな顔をしているラミも、小声で表情を変えずにそう言った。
そう、分っている事だろうが、(本当に)久々なので、もう一度説明すると、
彼女は、本物のフィフスチルドレンたるラミ=スパーダ特務大尉ではない。
第五使徒ラミエルがリリン化した使徒っ娘なのである。
無論、黒服も、本物の監視役ではなく、入れ替わった第十六の特殊エージェントである。
本物のラミ=スパーダは、某所にある某テーマパークの村?で、家族一緒に仲良く幸せに暮らしている。
また、ラミ(本物)は、ある意味、解き放たれた赤っぽい金髪で、若干見かけより、性格がかなり幼く感じられる少女と非常に仲良くなり、一緒に某子ペンギン達の世話をしながら、楽しくしているらしい。
(スパーダ一家は、そのままペンギンヴィレッジに就職した)
ついでに、本物の監視役は・・・
まぁ、それなり?に外道だったので、涅槃に旅立ってもらっているとか・・・
「それは、ある程度、ココのシナリオとやらが進んでからだと思いますが?」
黒服が、小声であきれたようにそう言った。
「気にしない気にしない。
どうせ、色々混乱があるでしょ♪」
無論、表情は変えずに、ラミがそう小声で言った。
「それはそうですが・・・
よかったですね、あの髭外道じゃなくて・・・」
「うにゃ?
どういう事だ?」
黒服の言葉に、不思議そうに、ラミが(アクマでも)小声で訊いた。
「だって、下手をすれば、それを理由に身体を要求される可能性が・・・」
確かに、アレは餓えている可能性があるから、弱みを持つ少女を見付けたら・・・
「そ、それは、嫌過ぎ・・・」
それが少し進んだ情景が頭の隅に浮かんだらしく、ラミは、(表情は変えずとも)顔色を青くしつつ、そう言った。
本気で嫌なのだろう。
(まぁ、わかるが・・・)
肩も微妙に震えている。
と言うか、特殊な趣味を持つ者以外、あの髭相手は嫌だろう。
「でも、この設定を、あの副司令が、髭親父にチクっ・・・」
「そ、それよりも、噂の“本部で教育を受けているらしい”候補生達は、ほんとに居るのかなぁ〜?」
ラミは、(小さいものの)声だけ引き攣った笑顔?(ちなみに顔は不機嫌な仏頂面のまま)で話を変えようと、そう言った。
「ふむ・・・コード707は、9割以上逃がしているハズなのに、まだあれだけ居るとは・・・
しかし、ココで渡されたPDAにはそれらしい施設は書いてありませんね。
他の支部からつれてきたという話はないですし、やはり、予算獲得の為のブラフ(嘘)でしょうかねぇ〜」
シンジ達が、色々な手を使い、親がネルフの暗部に関係ない生徒達を解放した為、コード707、つまり、2−Aの生徒達は、殆ど居なくなっているのである。
ネルフの手元に残っているのは、現チルドレンであるトウジを残せば・・・
父親がネルフの諜報部に所属している(妻をゲンドウに売った)者の子供の2、3人と・・・
父親が謎?の失踪をして以来、学校には出てきていないが・・・
ネルフ本部所属の某特殊?な趣味のタフガイ?に囲われて・・・
先日、等々新たな(薔薇の)喜び?に目覚めてしまったらしい(爆)化粧が濃くなった(核爆)ケンスケくらいである。
では、何故、多くのチルドレン候補生が本部に居ることになっているか・・・
それは、あまりにも追加予算の確保が難しくなっている為、マルドゥック機関が大量に見付けてきたチルドレンの養成と言って、無理やり追加予算をもぎ取ろうとした手段であったりする。
(その所為で、後でバレて色々拙い事になるが・・・)
無論、実際に作っても、チルドレンとして囲う余裕等、あるわけが無いだが・・・
(ただでさえ、ゲンドウが横領するし・・・)
その為、残っている諜報部の子供達や、架空の子供達を候補生として、登録だけしているのである。
(因みにケンスケは行方不明な状態なだが、登録だけはされているようだ)
「ま、予測どおり、予算を水増しする為だったんでしょ」
無論、予定よりは少ない金額(それでも、莫大な金額である)だが、しっかり確保しているのである。
委員会の力を使って・・・
本部内どころか、実際には、登録だけで訓練どころか、殆どいないチルドレン候補に、査察が入ったら色々と拙いだろうが・・・
バレて、承認させた(流石にまだダミーの訓練生を作っていないとは考えてもいなかったらしい)委員会の立場も、かなりやばい状況になるが・・・
「後で、監査官のご一行に秘匿メールを出しておきましょう。
それでは、予定通り、本部のチルドレンの状態を見ておきますか」
当然、予定外の査察が来る事になり、まだダミーの準備が出来ていなかった冬月達は大慌てする事となる。
「彼女達も早く来られるしね♪
ついでにネルフ上層部への不信感を強めておきましょう♪」
そんな他の所員、特に諜報部員に聞かれたら、ヤバイ事を、(当然だが)小声で話しつつ、ラミと黒服は一通りネルフ本部を回るのだった。
無論、ネルフ本部だけでなく、支部もというか、ネルフ全体の上層部についても、不信感を強めようと、演技をするのだったが・・・
数時間後・・・
「・・・思うのですが・・・
本部は上層部に対するイエス・マンを中心に集めたはずでしたよね?
それなのに、ここの上層部って・・・(汗)」
「・・・よ、よく、この組織が存続できているねぇ〜(汗)
まぁ、だから、ワザワザ、延命策が必要なのだろうけど・・・」
2人が回った所は、一般部署を始め、実働部隊(チルドレン、整備部、部長を除く作戦部、技術部)にいたるまで、ゲンドウ達上層部(ゲンドウ、ミサト、ついでに彼らを任命した上層部)に対する不信感が強かったりすることを知り、この組織の存続を敵対組織のスパイ?ながら、不安になるのであった。
ちなみに、2人は、周っている間に、一般所員たちに、チルドレン候補達の話も、それとなく聞いたが、やはり、(根回しが出来なかったので)誰も知らなかった。
その結果、聞かれた者達を含め、全員、この組織について、心底不安になったらしい。
To be continued...
(久々のたわごと♪)
ども、むちゃくちゃ久々のとりもちです。
色々とあっていた(今はかなり収まっているけど)ので、しばらく書いていませんでした(^^;)
いやぁ〜あそこまで苛烈だと、本当にやる気が消えますね。
ブラフで某人の名前(もしくは弟子)を騙っているから、やることが酷過ぎ・・・
ネットカフェとか使っているし・・・
(お陰で、パソコン、メイン・ノート・ハード、リムーバー色々逝っちゃった)
ゆえに、メールアドレスを変えました。
以後、変更した新アドレスのみの対応とさせていただきます。
たぶん、リハビリもあるし、実生活も忙しいので、ペースがかなり落ちていますが、何とか最後まで続ける予定ですので、気長に待っていてください。
それでは、また♪
(ながちゃん@管理人のコメント)
とりもち氏復活!
もう半ば読めないと諦めておりましたが、待っていた甲斐がありました。一読者として嬉しい限りです。
またネルフ(の一部分)を強烈に皮肉って下さいね!
ではでは(…やっぱ読み直さないといろいろ忘れちゃってるなぁ……汗)。
作者(とりもち様)へのご意見、ご感想は、または
まで