違う場所で 〜三国の歴史〜

第十五話

presented by 鳥哭様


さてどうするかな?


様子見・・・にしてはやられ過ぎたけど大体の実力の程度はわかった。


即席だけど連携攻撃がかなり上手い。そこらの山賊とかよりもずっとずっと。


なら対策は戦力を分断させる事だけど、素手で一人じゃ無理か?


やっぱり「正面突破しかないかな?」


その一言がきっかけになったのか孫尚香が一人だけで突っ込んでくる。


さっきは尚香(シンジは孫尚香の事を呼ぶ時そう言う様に孫尚香に言われた)を目隠し


にしての3段攻撃。


次も同じ手か?それとも別?


受身にはならない。さっきは考え方が受身の態勢になっていた。


彼女達相手に受身になったら一気にやられる!!


勝負は一瞬・・・。


「シンジ!!いくわよ!!」


まずは右手でシンジの出方を窺うようなパンチの連打。


まだだ・・・大技を放つ瞬間が来たとき、それがチャンスだ。


別にこの程度の攻撃だったら全部を無理して避ける必要はないから、最初から何発かは


くらうつもりでいった方がいい。


「これで御終い!!」


今度は一転、両より質に攻撃を変換しての強烈な左拳がシンジの顔面に向かっていく。


やっぱり速いな。ギリギリでかわせるってところかな?


シンジの予想通りそれはギリギリシンジの顔の前を素通りしていく。


強烈な一撃は外れたらスキが出来やすい。そして今孫尚香はその例に通りに最大のスキが


出来ている様に見えるだろう。左肩を相手に向けて半身になっているからである。


チャンスだ。


シンジはそれを罠ではなく好機と認識した。


「かかったぁ!!」


孫尚香はその体勢から、半ば無理矢理に腰を捻り宙に浮き、右足での回し蹴りをしてくる。


シンジの右頬には孫尚香の踵が当たる寸前まで迫っていた。


だが、シンジに当たる事は無かった。


後数cmのところでシンジは辛うじて足を受け止めていた。


「すっご〜〜い、これも受け止めちゃうなんて。兄様だって止まれなかった


攻撃だったのに・・・シンジは私が知っている人の中では一番強いかもね。」


孫尚香は極度の緊張で少し乾いた自分の唇をペロリと舐め上げると、一旦シンジとの


距離を置く。


「ありゃりゃ・・・余計やる気出てきてるよ。」


それにしてもなんて蹴りだよ。あの体勢から強引に持って来たのにも関わらず


この威力。まともにくらったら骨が折れるかな?右手が完全に痺れてる。


でも引かない、いや引けない。次の先手はこっちだ。


シンジは一瞬で孫尚香との距離をつめる。


孫尚香がそれを察して後ろに飛ぶ。


それとすれ違いで、さっきまでは後ろで見ていただけだった甄姫が攻め込んでくる。


さっきは攻撃をかわした勢いで攻撃されたから、今度はそこを失念しない様にしなきゃ


いけないな。よし・・・反撃を受けないためには確実に死角をついて一撃で沈めるしか


思いつかないな・・・一気に後ろに回り込もう。


超低姿勢で自分に向かってくる甄姫の横をすり抜けるシンジ。


相手からしたら消えた様にしか見えない。


もらった!!シンジはそう確信した。


シンジの視界には完璧に自分を見失った甄姫の背中があるからだ。


首元をトンと叩き、甄姫を倒せるはずだった。


1対1ならばだが。


「甘いですわ。シンジ様」


がら空きの後頭部に貂蝉の踵落としをする。


その瞬間、僕の頭を強烈な痛みが襲う。


「ぅぉぉおおおお!!!!」


だけど痛みもこの叫びも貂蝉の攻撃を受けたからじゃない。


いきなり物凄い耳鳴りと頭痛が僕を蝕んだ。


そして声が聞こえた。そう『僕』の声だ。


「困るんだよ・・・この程度じゃ。」


どういう事さ。


「この程度の実力の人に苦戦して貰っている様じゃ困るんだよ。」


仕方ないじゃないか。実際彼女達は強い。


「確かに彼女達は強い。でも困るんだ。それじゃ奴らには勝てない。」


奴ら?


「いずれわかるさ。それより良い機会だ。殺し合いの最中に覚えさせようと思ったけど


こっちの方が安全だ。」


何が?


「すぐわかる。『僕』の言うとおりにしてね。」


わかった・・・。


「まず全身の力を振り絞るんだ!!僕の今までにない力を・・・。


無意識の内に使わなかった力を・・・これからの闘いで使わなければいけない力・・・


自分でも自覚はしていたと思う。また一人ぼっちになるのが嫌だから使わなかった力。


他人に嫌われるのが嫌で使わなかった力。力・・・それは正義ではないし、僕も正義


じゃない。僕は何でもいい・・・大事な者を二度と失わない力が手に入るならば。


この機に完璧にこれを見極めるんだ!!


もしかしたら、彼女達を怪我させてしまうかもしれない。でも、少しでも慣れるんだ!!


力に、そして・・・赤という色に。」


シンジの瞳が黒から赤に変わっていく。


それと共に底知れぬ闘気が全身より放たれる。


その瞬間僕は今だ体験した事の無い高揚感に包まれた。


これが僕?いや何か違う。どちらかといえば『僕』に近い。


力が漲って、自分が素直に出せそうな感じがする。


シンジの目が完璧に赤に染まる。


それに伴い闘気の量が格段に上がる。


「なっ!!!」


「これは?」


攻撃を今まさに決めようとしていた貂蝉も、攻撃を受ける寸前だった甄姫。


その両方がこの闘気に怯んでいる。


「これが力か。」


シンジはまず狙い通り甄姫の首を手刀で叩き、即座に意識を奪う。


もちろんそれにより貂蝉からの攻撃には無防備になる。


だが、シンジは瞬足を使いその場から姿を消す。


そのスピードはもう『目にも留まらぬ早さ』ではなく『目にも映らない早さ』である。


全く認識が出来ない。


無論、貂蝉の踵落としは不発に終わり、足は空を切り地面に当たる。


「残念。」


その一言と同時に貂蝉も意識を失う。


シンジの的確な手刀によって。


「あと・・・一人。」


(な、何よあれ!!いきなり目の色変わるし、姿は見えないし。・・・どうしましょう?


目で追えないし、あんまり一撃に力籠めても避けられて、あの二人と同じ結果になるし・・・。


もしかして打つ手なし?困ったわね。)


孫尚香はとりあえず打開策を必死で考えるが、何も有効なものは浮かばない。


むしろ、考えれば考える程あまりの力の差に自分の負けしか想像できない。


その相手からは先ほどの様な闘気が感じられない。


だが今は圧倒的な存在感がある。


それが返って恐ろしい。


「いくよ・・・尚香。」


シンジのその声は寂しさに包まれていた。


拒絶されるかもしれない恐さのせいであろう。


それとも自分が自分でないみたいな事への恐ろしさだろうか?


(くる!!!)


孫尚香は身構えるが、一向にシンジの気配が探れない。


シンジは落ち着いて、孫尚香の後ろに回りこんだ。


「終わりだよ。尚香。」


「え?」


シンジは決まったと思った瞬間に膝に力が入らなくなり、孫尚香の目の前で膝を折り


うつ伏せに倒れてしまった。


「あれ?力が入らない・・・それに気持ち悪い・・・。」


「ちょ・・・ちょっとどうしたのよ!!」


孫尚香もシンジの異変に気づき背中をさすりながらシンジに問いかける。


尚香の声と一緒に頭の中で声が聞こえる。


「まだまだか。それがこの力の反動だよ。よ〜く覚えておくんだね。使いどころを


間違えう。これ、即ち死。僕、今回『僕』がこんな行動をしたのはこの先絶対にこの


力を使わなきゃならない相手とあうからさ。力を何度も使ったり、戦闘の経験を積めば


もっと使用できる時間は長くなる。でもその分反動は厳しくなるけどね。それと反動で


死に至る事もない。ただ眩暈や吐き気、頭痛、腹痛、扁桃腺、口内炎、その他諸々が一斉


に僕を襲うはずさ。ちなみに今回は最初という事で反動もかなり酷いはずだよ。


そうだね。2日間は物凄い頭痛に苛まれるはずだ。『僕』はそういった事をを彼から


教わっているから君に教える義務がある。」


頭痛と尚香の声を思考の片隅に追いやり、『僕』との会話に専念する。


「彼?」


「それは言えないんだ。ごめん・・・でもいずれ知るさ。力について知りたかったら


またその力を使いなよ。大体コツはつかめただろう?」


コツと言ってもそんなの全然つかめてない。


「いや、それがさっぱり。」


正直に言っておく。


「あら?おかしいな。仕方ない・・・なら一旦死んでみなよ。そうしたら嫌でも覚えるよ・・・


反動が恐らく凄い事になるけどね。


まあとりあえず『僕』と話すのはこれまでだ。僕の大切な人が心配してるから。じゃあね。」


『僕』の気配が消える。それと同時に襲ってくる、強烈な頭痛。


本当に万力で頭を締め付けられている様だ。


「ちょっと!!シンジ!!?」


声が聞こえる。誰だろう?痛みで視界もぼやけている。


この声はそうだ。さっき尚香が僕に話しかけていたっけ。でも返事を返す気力がないや。


「ねえ!!返事してよ!!ねえったら!!」


孫尚香は懸命にシンジの体を揺すりながら呼びかける。


だがシンジも聞こえているが答える事ができない。


っ!!!!!!酷いな、これは。でも我慢しないと・・・この力を会得できたなら必ず


僕は今より何段階も上に行ける。そうしたら彼女達を守る事だって確実に楽になるんだ。


今の力だけじゃこの先どうなるかわからない・・・。それに頂角にやられた痛みの方が


数段上だ・・・これしきの事で何時までもへこたれている訳にはいかないんだ。


ゆっくりとだが手に力を入れて、少しずつ起き上がる。


「シンジ!?ちょっと無理しないでよね!!」


語気は荒いが、慎重にシンジの手を肩に回して起き上がる手助けをしている。


「ごめんね尚香・・・昨日知り合ったばかりなのに馴れ馴れしくしちゃって。」


どうやらシンジは女性と体が触れ合う事をかなり嫌っている。


それはサードインパクトを自分が引き起こした事から来る、自分の超過少評価と自己嫌悪。


そして周りの人への恐怖心が以前よりの内向化。確かに以前よりは明るくもなったし


自分の意思を伝えるようになったシンジだが、本当の自分の気持ちを述べた事は一度


たりともない。それも自分との会話によって多少は緩和されたが、それでも某髭の策略の


名を借りた虐待行為も影響しているのか、昔のトラウマも相成って早々変わるものでも


ない。ましてやサードチルドレン・・・壊れるための人形の様に幼少から育てられて


来た子供だ。ちょっとやそっとの事で改善できるものではない。さらに真実の上辺を


シンジは知っている。それがさらにシンジの心を傷つけている。彼女達の生活でその傷も


少しは癒えてきてはいる・・・だがそう遠くない未来、シンジは鬼畜道に堕ちた父との


闘いが待っているのだ。シンジの心はそれを更に耐えなくてはならない。元々脆弱な心


に育て上げたのは他ならぬゲンドウだ。勿論シンジの心の弱み等は知っているし、それを


何の躊躇いもなくやってのけるであろう・・・。いや少し話が脱線し過ぎた様だ。


二人の会話にもう一度耳を傾けよう。


「何言ってるのよ!!シンジにはお〜〜〜っきい恩があるんだから。ちょっとぐらい


は構わないわよ。それに私もシンジの事結構気に入ってるし。」


シンジは頭痛の痛みにも慣れてきたのか普通に会話できる様になっていた。


「気に入ってる?僕なんかを?」


「ええそうよって・・・大丈夫?」


シンジが話の途中で足に力が入らなくなり、孫尚香が支えなおす。


「ごめん・・・座って話そう。二人が起きるまでさ。」


苦笑いしながら、気絶して眠っている二人を指差すシンジ。


「ええいいわよ。ゆっくり・・・ゆっくりよ。」


いくら下が草でフカフカだとはいえ、シンジの体調が悪いのを考慮して、ゆっくりシンジ


を座らせる。


「ありがとう。少し楽になったよ。」


だが誰がどう見てもやせ我慢にしか見えない。


「はあ・・・まあいいか。じゃあ、さっきの話しましょうか。」


「うん。」


「私がシンジの事気に入ってるって話だったわね。」


「うん・・・。」


「そりゃあ私強い男って好きだし、いちよ〜命の恩人でもあるし、貞操の危機も


救ってくれた、私の救世主ですもの。」


ニシシと言った擬音が付きそうな笑いでシンジを見る。


「はあ〜〜〜・・・からかわないでよ尚香。」


「からかうって・・・確かに少し冗談半分で言った事もあったけど、本当に感謝してるし


今まで会ってきた男の中ではシンジが一番まともよ。これは本気だからね。」


少し頬を膨らめて拗ねた感じで反論した。


「ぼくが??」


本当に驚いているシンジ。


「ええ、まだ知り合って一日だけど、シンジの近くって何となく温かいというか・・・


ん〜〜〜〜〜私はよく解らないけどあの二人はそれが良く解ってると思うわ。私だって


凄い居心地いい感じするもん今のこの時間が。って何ぼけ〜〜っとしてるのよ。さっき


までは苦しんでいたと思えば・・・。」


「いや・・・人からそんな事言われるの初めてだったから。」


「初めて?二人には言われた事ないの?」


「え?だってあの二人は行くところがないし・・・昔の事があって仕方なく僕に付いて来


たのがきっかけで今に至った訳で・・・」


シンジは心にも思ってないことを言っているのか、自分でも本心を言ったのかが解らない。


長年独りで生きてきた由縁なのだろうか?


(鈍感なのねえ〜〜〜シンジって。これは二人が苦労する訳ね。会って一日の私だって


二人がシンジに向けている気持ちは気づいたっていうのに・・・。)


「もっと自信持ってみたら?昨日の夜のやり取りでシンジの実力の少しは解ったつもりよ。


私の知っている人の中ではたぶんシンジが一番強いわ。兄様も強いけどシンジと比べたら


たぶんシンジの方が強いわ。でも・・・。」


孫尚香は何か思いついた風な顔でシンジを面白そうに見つめる。


「でも・・・何?」


「私だってかなり強いのよ。そこら辺の男をボコボコにできるぐらいのね。」


「ボコボコって・・・。」


「あら?女の子だからってそういう言葉使っちゃダメって訳でもないでしょ?」


「それは・・・まあそうだけどさ。」


「ならいいじゃない。」


「うん。」


何処となくアスカに似てるな。尚香って・・・でもアスカより心が強い、ずっとずっと。


今考えたら僕やアスカが強いわけないんだよな・・・最初から壊れるために生かされて


いたんだもんな。そんな僕が・・・そうだいくら『僕』があんな事言ったってどうせ僕


なんて・・・


また自己嫌悪の渦に陥りそうになったシンジだがさっきより強力な頭痛がそれを阻む。


「あがっ!!!!!!!!!」


自分の頭を抑えながら苦悶する。


だがそんな事でシンジの頭痛が治まる訳もない。


「シンジ・・・大丈夫?」


静かにゆとりのある声で囁く孫尚香。


「うん、何とか・・・。ちょっと痛みが増しただけだよ。」


何かネガティブに陥りそうになる度、頭が痛くなるな・・・。『僕』のせい?


まさかね。


「ところで・・・さ。」


ちょっと間を置いて孫尚香が話しかける。


「何?」


「シンジってこれからどうするの?ずっとあそこで三人で暮らし続けるの?」


「え?そういえばあんまり深く考えてなかったな。」


「じゃあさ。私の故郷に来てみない!?」


「尚香の?」


「うん。父様も兄様もシンジ達なら歓迎してくれるはずよ!!私の命の恩人だし、強いし


良い人だし。他の二人は超美人だし、大丈夫よ!!」


「何で・・・。」


「何か言った?」


「いや・・・人から好意を向けられる事に慣れてないし、それに僕を僕として接して


くれる人があんまりいなかったからさ。向こうじゃ・・・。」


「向こう?」


『向こう』シンジが本来居たはずの時代。


死んだはずだった。


何故か目を覚ますとこの時代にいた。


自分の中じゃ世界が2つある様に感じる楊にシンジは思っている。


「ううん。何でもない。」


「気になるわね・・・ま、いいわ。そのうち教えてもらうから。」


「そのうち?」


「そう、そのうち。何となくだけどさ、何かシンジとは長い縁になりそうだと私は思って


いるわ。何かこう・・・言葉にはできないんだけど、そんな感じがするわ。女の勘よ。


案外当たるわよ?女の勘って。」


「勘・・・か。僕もそんな感じがする。あの二人と初めてあった時の様な感じだったんだ。


尚香と初めて会ったときもね。だからきっと・・・尚香の勘は当たってると思うよ。」


「ふうん・・・ちょっと意外ね。」


「何が?」


「ふふ、秘密。」


「・・・気になるけど、それはまた今度でいいや。もう限界・・・。」


シンジはずっと続いていた苦痛によって、気絶してしまった。


「無理してたのよね・・・。」


それからしばらくして、シンジ達は小屋のほうへ戻っていった。






























一方こちらは仙人界のとある場所。


「これぞ・・・第二次封神計画じゃ。」


ある一人の老人が一つの巻物を握り締めながらそう呟いた。


「いいのですか?一度は仙人界の頂点にたった人物が、仙人・・・いや全世界を裏切る


事になっても。」


その正面には男が立っている。


「なら御主も息子を殺す・・・いやそれ以上に鬼畜な事をしなければならぬ。それでも


よいのか?」


「息子?化け物を息子に持った覚えなどありませぬ。あれは使い捨ての消耗品。


いえそれにも劣ります。多少知恵の付いたゴミと同じですよ。」


(想像以上の非人道ぶりじゃのう・・・まあ、その方が事を運びやすいか。)


「息子をゴミ呼ばわりか・・・御主の今は亡き妻がその言葉を聞いたらどう思うかのう?


碇ゲンドウよ。」


「どうも思いはしません・・・ユイには私さえいればいいのです。他の男はいりませんよ。


それにあのゴミの傍に居る女も、ゴミには勿体無さ過ぎる美女だ。」


「ほう・・・だからどうすると?」


「解りきった事を・・・奪うまでです。ゴミは生きる価値はありません。さっさと死んで


もらいましょう。ユイもそれを望んでいます。」


本当に『碇ユイ』がそんな事を望んでいるのだろうか?


碇ゲンドウが勝手に思い描いた『碇ユイ』はそう望んでいるのだろう。


だがそれは所詮妄想だ。


(自分の子供を殺されて喜ぶ母親もいるかもしれん。だが恐らくは碇ユイは違うはずじゃ。


この男は一体どこまで堕ちていくのじゃろうかて。)


「『酒池肉林』・・・それが御主の国の主、董卓の願いだったか。だからか?呉の姫を


下賎の賊に攫わせようとしたのは。」


「何時の時代も有能な者には女と酒と金は付き物です。それにもうじき二喬も我が手中に


入り、ゴミの世話を焼いている女も、手に入れそこなった呉の女も私に平伏すでしょう。


そして董卓亡き後には私が『唯』を治めます。そのために伝説の殺人兵器まで手に入れた


のですから。仙人が束になっても勝てぬ最強の兵器を・・・。」


(確かにこの男、外道で鬼畜で残酷かつ卑怯。しかし、負の感情ほど強い力がないのも


また事実。この男実に恐ろしい・・・だが最後に笑うのはこの元始天尊ただ一人じゃ。)


この二人がそれぞれどの様な思惑を秘めているのか?


それはまだ誰も知らない。


「それに・・・」


「ん?」


「もうゴミを倒す術は考えてあります。」


「ほう・・・御主自ら殺すのか?」


「まさか・・・ゴミ如きにそこまでする気はありませぬ。腕に覚えのある水賊に命令して


ゴミの抹殺を命じたのですよ。但し女は生け捕りにしろと言いましたがね。」


「水賊か・・・だがそこら辺の水賊では返り討ちにされて仕舞いじゃろうて。」


「普通の水賊ならそうでしょうね・・・ですが私の命令した水賊は普通じゃない。」


「もしや・・・甘寧率いる錦帆賊か?」


「察しの通りです。」


「じゃがどうやって奴らに命令等を?金などで動く男ではなかろうに。」


「なあに何人か部下を攫って脅迫したら、苦々しくも了承しましたよ。」


「成功したら部下を返すという事か。」


「口実上は・・・もう奴の部下はこの世にはいませんよ。私の事を辱めた罰です。


何人たりとも私に逆らう事は許しませんよ。」


「全く恐ろしい男じゃよ・・・碇ゲンドウ。」


「お褒めいただき光栄ですよ。」


こうして男達の会談は終了した。


シンジ達の安息はもう終わろうとしていた。






To be continued...

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